説明

乾燥装置

【課題】大型ガラス基板の洗浄後の乾燥工程において、基板の搬送スピードが向上し、メンテナンス性に優れ、生産性の向上を図ることが可能な乾燥装置を提供する。
【解決手段】温水シャワーノズル22とエアーナイフ20とを有し、温水シャワーノズル22から噴出される温水34と、次にエアーナイフ20から噴射される圧縮エアーとにより洗浄後のガラス基板32を乾燥する。さらに温風ノズル24を有し、温風ノズル24は、エアーナイフ20の圧縮エアー噴射に続いて、温風を噴出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の洗浄後の乾燥に係り、詳しくは、大型ガラス基板の洗浄後の乾燥工程において、基板の搬送スピードが向上し、メンテナンス性に優れ、生産性の向上を図ることが可能な乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの用途は小型携帯端末用から大型TV用まで多岐にわたり、大型化においては、基板サイズが2200mm×2400mmクラス、フォトマスクサイズが1200mm×1400mmクラスと、益々大型化が進んでいる。このような大型基板の洗浄処理後の乾燥においては、大面積の基板表面を均一に乾燥することが難しく、十分な乾燥を得るには時間を要するか、構成が複雑となっている。このため、基板の搬送スピードが上がらない、又はメンテナンス性が悪い等の生産性向上を妨げる要因となっている。
【0003】
図2は、引用文献1における基板洗浄装置の概略図である。図2において、洗浄室から搬送されてきた液晶ディスプレイ基板11は、液体噴射部であるアクアナイフ10から純水が噴射されている。また、ダムローラー9のローラー部の回転面と、基板11の上面との隙間は上限値が2mmであり、基板11の表面の水の量を一定にしている。
【0004】
このため、圧縮気体噴射部であるエアナイフ8により、処理された液晶ディスプレイ基板11の表面を水滴が走ることなく乾燥することができる。これにより飛散した水滴の乾燥痕が取れずに残るという問題を解決できる。なお、エアナイフ8は隣接して二つ設けられ、液晶ディスプレイ基板11の搬送方向に対して、エアナイフ8の長辺方向を、垂直方向よりもやや傾きのある方向で設けてある。
【特許文献1】特開2002−14308号公報
【0005】
このように特許文献1の発明においては、ガラス基板の大きさについての記載は無いものの、洗浄室から搬送されてきた液晶ディスプレイ基板11の乾燥効果を向上させることが可能となる。ところ基板が大型であるため、長尺のダムローラーを清浄に保つための定期的な点検、又は交換などのメンテナンスに負担が増えることが想定される。また同様に、乾燥を早めて基板速度を上げるために長尺のエアーナイフを複数用いると、構造が複雑となりコストも加算されることが想定される。
【0006】
また、仕上げ洗浄、及び乾燥効果を上げるため、アクアナイフ10等からシャワーされる純水の加熱については、例えば、50L/minの水を50℃に加熱するためには、約100kWのヒータが必要となり、コスト負担が増えることになる。また、このヒータには通常SUSパイプヒータが用いられるため、有機物発生の原因となり汚染を誘発させやすくなる。このため、常温で流量を100L/minに増やし、仕上げ洗浄に重点を置くことが優先されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、大型ガラス基板の洗浄後の乾燥工程におけるメンテナンス性に優れ、基板の搬送スピードを向上させ、生産性の向上を図ることが可能な乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乾燥装置は、洗浄後のガラス基板を乾燥する乾燥装置において、温水シャワーノズルとエアーナイフとを有し、温水シャワーノズルから噴出される温水と、次にエアーナイフから噴射される圧縮エアーとにより洗浄後のガラス基板を乾燥することを特徴とする。
【0009】
本発明の乾燥装置の温水シャワーノズルとエアーナイフは、互いに平行、且つ、ガラス基板の進行方向に対して所定の角度を有して配置されることを特徴とする。
【0010】
本発明の乾燥装置の温水シャワーノズルから噴出される温水は、30〜80℃、1〜10L/minで噴出されることを特徴とする。
【0011】
本発明の乾燥装置の温水シャワーノズルとエアーナイフとは、5〜30cmの間隔を有して配置されることを特徴とする。
【0012】
本発明の乾燥装置はさらに温風ノズルを有し、温風ノズルは、エアーナイフの圧縮エアー噴射に続いて、温風を噴出することにより洗浄後のガラス基板を乾燥することを特徴とする。
【0013】
本発明の乾燥装置の温風ノズルから噴出される温風は、30〜80℃で噴出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、温水シャワーノズルから噴出される温水と、エアーナイフから噴射される圧縮エアーとにより大型ガラス基板の乾燥を効率よく行い、さらに温風ノズルから温風を噴出することで乾燥速度を一層向上できるため、大型ガラス基板の乾燥工程における基板の搬送スピードが向上し、メンテナンス性に優れ、生産性の向上を図ることが可能な乾燥装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明による乾燥装置の概略構成図である。図1において、乾燥装置は、エアーナイフ20と温水シャワーノズル22とを有し、さらに、温風ノズル24を有しても良い。配置においては、矢印方向で示されるガラス基板32の進行方向に沿って、温水シャワーノズル22、エアーナイフ20、温風ノズル24の順に配置される。
【0016】
エアーナイフ20と温水シャワーノズル22とは互いに平行で、且つ、矢印方向で示されるガラス基板32の進行方向に対し、所定の角度αを成して配置されている。また、エアーナイフ20と温水シャワーノズル22との配置間隔Lは、5〜30cmに設定されている。温風ノズル24の配置角度に特別の制約はないが、エアーナイフ20の配置角度αに合わせて配置されることが望ましい。
【0017】
ガラス基板32は、所定の洗浄を終了すると矢印方向に搬送され、ファイナル純水シャワーノズル30の位置に達すると、ファイナル純水シャワーノズル30から100L/minの純水が噴出されて、最終洗浄が行なわれる。ガラス基板32が温水シャワーノズル22の位置に達すると、温水シャワーノズル22からは温水である30〜80℃、1〜10L/minの純水34が噴出され、エアーナイフ20の位置に達すると、エアーナイフ20から圧縮乾燥エアーが噴射される。
【0018】
この発明によれば、洗浄処理されたガラス基板32をエアーナイフ20によって乾燥処理する前に加熱した純水34を噴射するため、ガラス基板32の板面に残留する洗浄処理時のファイナル純水シャワーノズル30の純水が、加熱した純水34に置き換わる。純水34は30〜80℃に加熱されているため、常温であるファイナル純水シャワーノズル30の純水に比べ、ガラス基板32表面での乾燥速度が速く、エアーナイフ20による乾燥効果が著しく向上する。このため、ファイナル純水シャワーノズル30だけの場合、ガラス基板32の搬送速度が8m/minであるのに対し、12m/minの搬送速度を得ることができる。または、乾燥処理時にエアーナイフ20から噴射される圧縮乾燥エアーの量を低減することが可能となる。
【0019】
温水シャワーノズル22に必要な50℃、3L/minの純水34を得るには、8kW程度のヒータでよいため、石英ヒータを利用することが可能となる。このため、SUSパイプヒータにおける有機物やパーティクル等の汚染源の発生をなくすることができる。長尺のダムローラーを必要としないため、定期的な点検、又は交換などのメンテナンス負担が増えることがない。また長尺のエアーナイフは1本で良く、必要に応じて、複数本のエアーナイフに代わり1本の温風ノズルを用いることで、同等又はそれ以上の効果が得られ、コスト負担も軽減される。つぎに、さらに、温風ノズル24を設けた場合について、説明する。
【0020】
ガラス基板32が温風ノズル24の位置に達すると、30〜80℃の温風がガラス基板32表面に噴出される。このときエアーナイフ20は、噴射している常温の圧縮乾燥エアーに当該温風を引き込んで、約30度の圧縮乾燥エアーとなって純水34を押しやるため、より高速の乾燥速度が得られる。また、エアーナイフ20で取り切れないごく薄い水膜が発生した場合、これを瞬時に乾燥させることができる。
【0021】
以上説明したように本発明によれば、温水シャワーノズルから噴出される温水と、エアーナイフから噴射される圧縮エアーとにより大型ガラス基板の乾燥を効率よく行い、さらに温風ノズルから温風を噴出することで乾燥速度を一層向上できるため、大型ガラス基板の乾燥工程における基板の搬送スピードが向上し、メンテナンス性に優れ、生産性の向上を図ることが可能な乾燥装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による乾燥装置の概略構成図。
【図2】従来の基板洗浄装置の概略図。
【符号の説明】
【0023】
20 エアーナイフ
22 温水シャワーノズル
24 温風ノズル
30 ファイナル純水シャワーノズル
32 ガラス基板
34 加熱された純水
L エアーナイフと温水シャワーノズルの配置間隔
α ガラス基板の搬送方向に対するエアーナイフの設置角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄後のガラス基板を乾燥する乾燥装置において、温水シャワーノズルとエアーナイフとを有し、
前記温水シャワーノズルから噴出される温水と、次に前記エアーナイフから噴射される圧縮エアーとにより前記洗浄後のガラス基板を乾燥することを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記温水シャワーノズルと前記エアーナイフとは互いに平行、且つ、前記ガラス基板の進行方向に対して所定の角度を有して配置されることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記温水シャワーノズルから噴出される前記温水は、30〜80℃、1〜10L/minで噴出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記温水シャワーノズルと前記エアーナイフとは、5〜30cmの間隔を有して配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記乾燥装置はさらに温風ノズルを有し、前記温風ノズルは、前記エアーナイフの圧縮エアー噴射に続いて、温風を噴出することにより前記洗浄後のガラス基板を乾燥することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記温風ノズルから噴出される温風は、30〜80℃で噴出されることを特徴とする請求項5に記載の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−216325(P2009−216325A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61492(P2008−61492)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】