説明

乾燥装置

【課題】取り扱い性やメンテナンス性が良好であり、稼働中に廃ガスや煤煙などが発生せず、騒音も小さい、乾燥装置を提供する。
【解決手段】乾燥装置10は、管状軸体9の外周に螺旋状の搬送羽根8を有する一対のスクリューコンベア98が略平行に収容された筒形筐体7と、スクリューコンベア98を回転させる駆動手段であるモータ11と、予め加熱された熱媒体である水蒸気を管状軸体9内に通すため管状軸体9の両端部を回転自在に軸支するロータリジョイント22と、を備えている。筒形筐体7の底部7bは略U字溝形状をなしており、この底部7bの下面に、加熱手段である加熱チューブ14が付設され、筒形筐体7上面の中央付近には熱交換器15が付設されている。スクリューコンベア98の始端98a側の筒形筐体7上には投入機1が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温水蒸気を熱源として使用し、木材チップ、木材ペレット、竹材チップあるいは汚泥などを乾燥する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
間伐材あるいは間伐後、放置されている林地残材などから形成された木材チップをボイラー燃料として利用する場合、燃焼性を高めるために、木材チップの含水率を減少させる必要がある。この場合、間伐材や林地残材を生木のままで天日乾燥させたり、破砕機でチップ化した後、天日乾燥させたりしているが、天日干しを行うには、広い干し場が必要であり、乾燥するまでに長期間を要するだけでなく、天候にも左右される。
【0003】
そこで、天候に左右されることなく、比較的短時間で木材チップを乾燥させるため、加熱手段を備えた乾燥装置や、乾燥用熱源として過熱蒸気を用いる熱処理設備などが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−214768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱手段を備えた乾燥装置においては、バーナ燃料として化石燃料が使用されることが多いので、燃焼反応に伴って発生する廃ガスや煤煙などが空中に飛散するのを防止するための処理設備(廃ガス処理装置、サイクロンあるいはバグフィルタなど)が必要である。
【0006】
一方、特許文献1記載の熱処理設備は、乾燥用熱源として過熱蒸気を利用するので、廃ガスや煤煙などの処理設備は不要であるが、ロータリーキルン方式は構成部品が多く、複雑な機構となるため、処理作業中の騒音が大きく、取り扱い性やメンテナンス性も良くない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、取り扱い性やメンテナンス性が良好であり、稼働中に廃ガスや煤煙などが発生せず、騒音も小さい、乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乾燥装置は、管状軸体の外周に螺旋状の搬送羽根を有する少なくとも一対のスクリューコンベアが略平行に収容された筒形筐体と、前記スクリューコンベアを回転させる駆動手段と、予め加熱された熱媒体を前記管状軸体内に通すため前記管状軸体を回転自在に軸支するロータリジョイントと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、管状軸体内に供給される加熱媒体で昇温した状態にある、少なくとも一対のスクリューコンベアの始端側に投入された被乾燥物は、当該スクリューコンベアの回転に伴い搬送羽根で撹拌されながら終端側に向かって移動していき、この移動過程中に昇温状態にある羽根や管状軸体と接触して加熱されることによって乾燥されていく。従って、被乾燥物の種類、性状あるいは含水率などに応じて加熱媒体の温度を調整してスクリューコンベアの温度や搬送速度などを適切に設定すれば、被乾燥物を効率的に乾燥させることができる。
【0010】
本発明の乾燥装置は、筒状筐体内に収容された少なくとも一対のスクリューコンベアを回転させる機構と、昇温させる機構と、を備えた比較的簡素な構造であるため、取り扱い性やメンテナンス性が良好であり、騒音も小さい。また、スクリューコンベアの昇温手段として、予め加熱された熱媒体を使用するので、稼働中に廃ガスや煤煙などが発生することもない。
【0011】
ここで、前記筒形筐体に加熱手段を付設することが望ましい。このような構成とすれば、筒形筐体内に投入された被乾燥物に対する加熱作用が高まるので、水分蒸発が早まり、乾燥機能が向上する。
【0012】
また、前記筒形筐体内の一部領域から取り出した気体を加熱して前記筒形筐体の他の領域へ送り込む加熱送風手段を設けることが望ましい。このような構成とすれば、筒形筐体内の気温上昇及び排熱の有効利用を図ることができるので、乾燥機能の向上及び省エネルギに有効である。
【0013】
さらに、前記筒形筐体内で発生した蒸気を排出する排気手段を設けることが望ましい。このような構成とすれば、スクリューコンベアで搬送されながら乾燥されている被乾燥物から発生した蒸気が筒形筐体内に滞留するのを防止することができるため、乾燥機能の向上に有効である。
【0014】
一方、管状軸体の外周に複数の円板が同軸上に配列された少なくとも一対の回転部材が略平行に収容された箱形筐体と、前記回転部材を回転させる駆動手段と、前記管状軸体内に加熱媒体を通すため前記管状軸体を回転自在に軸支するロータリジョイントと、を備えた投入機を前記スクリューコンベアの始端側の前記筒形筐体上に配置することもできる。
【0015】
このような構成とすれば、昇温した状態にある、少なくとも一対の回転部材により、被乾燥物を細分化しながら予備加熱する機能を有する投入機が、スクリューコンベアの前段階に配置された状態となる。従って、投入機に投入された被乾燥物は、当該投入機を通過することにより、昇温及び細分化された状態でスクリューコンベアの始端側に投入されることとなるので、乾燥効率がさらに向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、取り扱い性やメンテナンス性が良好であり、稼働中に廃ガスや煤煙などが発生せず、騒音も小さい、乾燥装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態である乾燥装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1における矢線A方向から見た概略図である。
【図3】図1におけるB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、乾燥装置10は、管状軸体9の外周に螺旋状の搬送羽根8を有する一対のスクリューコンベア98が略平行に収容された筒形筐体7と、スクリューコンベア98を回転させる駆動手段であるモータ11と、予め加熱された熱媒体である過熱水蒸気を管状軸体9内に通すため管状軸体9の両端部を回転自在に軸支するロータリジョイント22と、を備えている。搬送一対のスクリューコンベア98の管状軸体9の配置間隔は、搬送羽根8の外径より小さく設定されている。また、モータ11の駆動軸11aに取り付けられたスプロケットホイール12aと、管状軸体9の片方の端部9aに取り付けられたスプロケットホイール12bと、の間にチェーン13が掛け渡されている。
【0019】
図1,図3に示すように、筒形筐体7の底部7bは略U字溝形状をなしており、この底部7bの下面に、加熱手段である加熱チューブ14が付設され、筒形筐体7上面の中央付近には熱交換器15が付設されている。加熱チューブ14及び熱交換器15,18は、外部から供給される過熱水蒸気によって加熱機能を発揮する。スクリューコンベア98の始端98a寄りの筒形筐体7上面には、筒形筐体7内の始端98a寄り領域と連通するダクト20と、ダクト20を経由して筒形筐体7内の気体を吸い込んで外部へ排出するための送風機21と、が配置されている。また、図3に示すように、スクリューコンベア98の搬送羽根8には、管状軸体9を中心に90度ごとに略V字状の切欠部8aが複数設けられている。
【0020】
スクリューコンベア98の終端98b付近の筒形筐体7上面には、筒形筐体7内の終端領域と連通するダクト16と、ダクト16を経由して吸い込んだ筒形筐体7内の気体を、熱交換器18,ダクト19及び熱交換器15を通して、再び筒形筐体7内の略中央領域へ送り込む送風機17と、が配置されている。熱交換器15は、ダクト20とダクト16との間に位置している。ダクト16を経由して吸い込まれた筒形筐体7内の気体は熱交換器18,15を通過することによって段階的に加熱された後、再び筒形筐体7内へ送り込まれる。従って、筒形筐体7内の気体は、熱交換器18,ダクト19及び熱交換器15を経由して常に循環しながら、木材チップの乾燥に供される。
【0021】
図1,図2に示すように、スクリューコンベア98の始端98a側の筒形筐体7上には投入機1が配置されている。投入機1は、管状軸体3の外周に複数の円板2が同軸上に配列された一対の回転部材23が略平行に収容された箱形筐体1aと、回転部材23を回転させる駆動手段であるモータ4と、予め加熱された熱媒体である水蒸気を管状軸体3内に通すため管状軸体3の両端部を回転自在に軸支するロータリジョイント6と、を備えている。
【0022】
図1に示すように、回転部材23を構成する複数の円板2には、それぞれ管状軸体3を中心に90度間隔で略V字状の切欠部2aが複数設けられている。モータ5は2本のチェーン5を介して一対の回転部材23を回転駆動している。一対の回転部材23の管状軸体3の配置間隔は、円板2の外径より小さく設定されている。
【0023】
箱形筐体1aの上面開口部1uにはホッパ1bが設けられ、箱形筐体1aの下面開口部1dは、スクリューコンベア98の始端98a側の筒形筐体7の上面開口部7aに接続されている。スクリューコンベア98の終端98b側の筒形筐体7の下面には排出口7cが設けられている。
【0024】
ここで、乾燥装置10による木材チップ(図示せず)の乾燥作業について説明する。まず、モータ4,11を稼働させることにより、投入機1の回転部材23及びスクリューコンベア98を回転させるとともに、蒸気ボイラ(図示せず)などから排出される過熱水蒸気を、投入機1の回転部材23のロータリジョイント6及びスクリューコンベア98のロータリジョイント22へ送り込む。
【0025】
回転部材23の一方のロータリジョイント6及びスクリューコンベア98の一方のロータリジョイント22へ供給された過熱水蒸気は、それぞれ管状軸体3,9内を通過して他方のロータリジョイント6,22から排出され所定の回収手段へ移動する。過熱水蒸気で昇温した管状軸体3,9からの熱伝導により回転部材23及びスクリューコンベア29も加熱され、所定温度まで昇温する。回転部材23及びスクリューコンベア29が所定温度に達したら、送風機17,21を稼働させ、筒形筐体7内の気体の循環及び排気を開始する。
【0026】
この後、被乾燥物である木材チップを投入機1の上面開口部1uからホッパ1bに向かって投入すると、昇温した状態で回転する一対の回転部材23の間を木材チップが通過する際に切欠部2a付きの円板2によって加熱及び細分化された後、箱形筐体1aの下面開口部1d及び筒形筐体7の上面開口部7aを通過して、箱形筐体7内に位置する一対のスクリューコンベア98の始端98a側に投入される。
【0027】
一対のスクリューコンベア98の始端98a側に投入された木材チップは、昇温した状態で回転するスクリューコンベア98の搬送羽根8によって撹拌されながら終端98b側に向かって移動していく。この移動過程において、昇温状態にある搬送羽根8や管状軸体9に木材チップが接触して加熱されることによって乾燥されていき、スクリューコンベア98の終端98b付近の排出口7cから排出される。
【0028】
従って、被乾燥物である木材チップの種類、性状あるいは含水率などに応じて、管状軸体3,9内に供給される過熱水蒸気の温度を調整して回転部材23及びスクリューコンベア98の温度を適切に設定するとともに、スクリューコンベア98の搬送速度などを適切に設定すれば、木材チップを効率的に乾燥させることができる。
【0029】
図1に示すように、乾燥装置10は、筒状筐体7内に収容された一対のスクリューコンベア98を回転させるモータ11と、過熱水蒸気を通過させる管状軸体9及びロータリジョイント22などからなる昇温機構と、を備えた比較的簡素な構造であるため、取り扱い性やメンテナンス性が良好であり、騒音も小さい。また、スクリューコンベア98の昇温手段として、予め加熱された熱媒体(過熱水蒸気)を使用するので、稼働中に廃ガスや煤煙などが発生することもない。
【0030】
また、筒形筐体7の下面に加熱チューブ14を付設したことにより、筒形筐体7内に投入された木材チップに対する加熱作用が高まり、水分蒸発が早まるので、優れた乾燥機能を発揮する。
【0031】
さらに、筒形筐体7内のスクリューコンベア98の終端98b付近の領域から取り出した気体を熱交換器18,15で加熱した後、筒形筐体8内のスクリューコンベア98の中央付近の領域へ送り込む送風機17を設けたことにより、筒形筐体7内の昇温機能の向上及び排熱の有効利用を図ることができるので、乾燥機能の向上及び省エネルギに有効である。
【0032】
さらに、筒形筐体7内で発生した水蒸気を排出する排気手段としてダクト20及び送風機21を設けているため、スクリューコンベア98で搬送されながら乾燥される木材チップから発生した水蒸気が、当該筒形筐体7内に滞留するのを防止することができ、乾燥機能の向上に有効である。
【0033】
一方、投入機1をスクリューコンベア98の始端98a側の筒形筐体7上に配置したことにより、箱形筐体1aの上面開口部1uから投入された木材チップは、昇温状態で回転する一対の回転部材23により細分化されながら予備加熱された後、スクリューコンベア98の始端98a側に投入されるので、乾燥効率がさらに向上する。
【0034】
なお、本実施形態においては乾燥装置10を用いて木材チップを乾燥させる場合について説明しているが、本発明の乾燥装置の用途を限定するものではないので、木材チップ以外の被乾燥物(例えば、木材ペレット、竹材チップあるいは汚泥など)も効率良く乾燥させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の乾燥装置は、木材チップ、木材ペレット、竹材チップあるいは汚泥などの乾燥手段として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 投入機
1a 箱形筐体
1b ホッパ
1d 下面開口部
1u,7a 上面開口部
2 円板
2a,8a 切欠部
3,9 管状軸体
4,11 モータ
5,13 チェーン
6,22 ロータリジョイント
7 筒形筐体
7b 底面
7c 排出口
8 搬送羽根
9a 端部
10 乾燥装置
11a 駆動軸
12a,12b スプロケットホイール
14 加熱チューブ
15,18 熱交換器
16,19,20 ダクト
17,21 送風機
23 回転部材
98 スクリューコンベア
98a 始端
98b 終端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状軸体の外周に螺旋状の搬送羽根を有する少なくとも一対のスクリューコンベアが略平行に収容された筒形筐体と、前記スクリューコンベアを回転させる駆動手段と、予め加熱された熱媒体を前記管状軸体内に通すため前記管状軸体を回転自在に軸支するロータリジョイントと、を備えたことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記筒形筐体に加熱手段を付設した請求項1記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記筒形筐体内の一部領域から取り出した気体を加熱して前記筒形筐体の他の領域へ送り込む加熱送風手段を設けた請求項1または2記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記筒形筐体内で発生した蒸気を排出する排気手段を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項5】
管状軸体の外周に複数の円板が同軸上に配列された少なくとも一対の回転部材が略平行に収容された箱形筐体と、前記回転部材を回転させる駆動手段と、予め加熱された熱媒体を前記管状軸体内に通すため前記管状軸体を回転自在に軸支するロータリジョイントと、を備えた投入機を前記スクリューコンベアの始端側の前記筒形筐体上に配置した請求項1〜4のいずれかに記載の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−137613(P2011−137613A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298521(P2009−298521)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(506143366)研機株式会社 (4)
【Fターム(参考)】