説明

乾燥装置

【課題】シンプルな構造で、取り扱い性及びメンテナンス性が良好であり、処理対象物を効率良く乾燥減容並びに炭化処理することのできる乾燥装置を提供する。
【解決手段】乾燥装置10は、処理対象物Xを収容する内部ケーシング14及び外部ケーシング24などで形成された処理槽11と、処理槽11内に設けられた複数の撹拌手段12,13と、処理槽11内の処理対象物Xを昇温させるため処理槽11の内部ケーシング14の底部14b下面側に配置された加熱手段15と、処理槽11内へ高温水蒸気HSを送り込むための水蒸気供給手段16と、処理槽11内の水蒸気Sを排出する吸引排気手段17と、を備え、処理槽11内の水蒸気Sを処理槽11内で凝縮させて処理槽11外へ排出する凝縮排水手段18が設けられている。凝縮排水手段18は、貫通孔18cを有する天井部材18aと、天井部材18aの結露水を排出する排水経路18bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみや食品加工残渣などの有機性廃棄物を乾燥減容及び炭化する際に使用される乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生ごみや食品加工残渣などの有機性廃棄物の乾燥装置としては、従来、様々な方式が提案されているが、本願発明に関連するものとして、特許文献1記載の「廃棄物処理システム」がある。この「廃棄物処理システム」は、処理槽内に収容された廃棄物を加熱撹拌しながら乾燥させ、さらに、処理槽内へ高温水蒸気を供給して廃棄物を炭化熱分解させる機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−260548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の「廃棄物処理システム」においては、真空ポンプで処理槽内を強制排気することより、処理槽内の処理対象物(廃棄物)からの揮発物を乾留する方式が用いられている。しかしながら、実際には、加熱水蒸気によって昇温した被処理物から発生した水蒸気は真空ポンプによる強制排気のみでは排出されず、処理槽内の処理対象物に戻ることが多いので、乾燥時間を短縮して乾燥効率を高めることが困難である。
【0005】
また、真空ポンプによる強制排気システムを構築する場合、処理槽及び配管系統などを全て気密構造及び耐圧構造とする必要があるので、システムの複雑化を招来するだけでなく、取り扱い性やメンテナンス性も良くない。このため、小規模事業者などが簡単に導入することができない面がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、シンプルな構造で、取り扱い性及びメンテナンス性が良好であり、処理対象物を効率良く乾燥減容並びに炭化処理することのできる乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る乾燥装置は、処理対象物を収容する処理槽と、前記処理槽内に設けられた撹拌手段と、前記処理槽内を昇温させる加熱手段と、前記処理槽内へ高温水蒸気を送り込む水蒸気供給手段と、前記処理槽内の水蒸気を排出する吸引排気手段と、を備え、前記処理槽内の水蒸気を前記処理槽内にて凝縮させて前記処理槽外へ排出する凝縮排水手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
ここで、前記凝縮排水手段として、前記処理槽内に配置された通気性を有する結露発生部材と、前記結露発生部材に生じた結露水を前記処理槽外へ排出する排水経路とを設けることが望ましい。
【0009】
この場合、前記結露発生部材として、前記処理槽内に、貫通孔を有する天井部材を設けることができる。
【0010】
一方、前記撹拌手段として、前記処理槽内に配置された回転軸と、前記回転軸に放射状に設けられた複数の破砕促進羽根と、前記回転軸の周りに螺旋を描くような状態で前記破砕促進羽根に取り付けられたロッド状の撹拌羽根とを設けることが望ましい。
【0011】
また、前記処理槽内から前記吸引排気手段によって排出された水蒸気を液化する冷却手段を設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、シンプルな構造で、取り扱い性及びメンテナンス性が良好であり、処理対象物を効率良く乾燥減容並びに炭化処理することのできる乾燥装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態である乾燥装置を示す垂直断面図である。
【図2】図1中のA−A線付近における断面図である。
【図3】図1に示す乾燥装置の処理槽付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1,図2に示すように、本実施形態の乾燥装置10は、処理対象物Xを収容する内部ケーシング14及び外部ケーシング24などで形成された処理槽11と、処理槽11内に設けられた複数の撹拌手段12,13と、処理槽11内の処理対象物Xを昇温させるため処理槽11の内部ケーシング14の底部14b下面側に配置された加熱手段15と、処理槽11内へ高温水蒸気HSを送り込むための水蒸気供給手段16と、処理槽11内の水蒸気Sを排出する吸引排気手段17と、を備え、処理槽11内の水蒸気Sを処理槽11内にて凝縮させて処理槽11外へ排出する凝縮排水手段18が設けられている。また、加熱手段15として電気ヒータを使用しているが、これに限定するものではない。
【0015】
処理槽11の上面には、処理対象物Xの投入口20及びその開閉扉21と、吸引排気手段17による水蒸気排出通路となる排気経路17aに連通する排気口17bとが設けられている。処理槽11の内部ケーシング14は、処理対象物Xを保持する側壁部14a及び底部14bなどで構成され、底部14bの上方に、破砕羽根23を有する破砕排出スクリュウ22、撹拌手段12,13、蒸気噴出管19などが設けられている。処理槽11の外部ケーシング24と内部ケーシング14との間及び内部ケーシング14の底部14b下面側には断熱保温材25が設けられている。
【0016】
図3に示すように、凝縮排水手段18は、処理槽11内に配置された通気性を有する結露発生部材である天井部材18aと、天井部材18aに生じた結露水を処理槽11外へ排出する排水経路18bとを備えている。天井部材18aは、複数の貫通孔18cを有する金属板で形成され、処理槽11内の撹拌手段12,13及び蒸気噴出管19より高い位置に、排水経路18bに向かって下り勾配をなす状態で配置されている。
【0017】
撹拌手段12,13は、処理槽11の内部ケーシング14内に互いに平行をなすように略水平配置された回転軸12a,13aと、各回転軸12a,13aに放射状に設けられた複数の破砕促進羽根12b,13bと、各回転軸12a,13aの周りに螺旋を描くような状態で各破砕促進羽根12b,13bの先端部に取り付けられたロッド状の撹拌羽根12c,13cと、を備えている。撹拌手段12,13下方の中間に位置する破砕排出スクリュウ22の回転軸22aの先端側には、開閉式の排出口27が設けられている。
【0018】
撹拌手段12,13の回転軸12a,13a及び破砕排出スクリュウ22の回転軸22aはそれぞれギヤードモータ28,29により正転・逆転いずれの方向にも回転可能に駆動されている。なお、撹拌手段12,13の回転軸12a,13a及び破砕排出スクリュウ22の回転軸22aの回転方向、回転数はそれぞれ独立して制御可能である。
【0019】
図1に示すように、水蒸気供給手段16は、水道などからの供給水を加熱して水蒸気を発生させる蒸気発生部16aと、蒸気発生部16aで発生した水蒸気を加熱して低酸素の高温水蒸気HSを形成する加熱部16bと、を備えている。また、蒸気発生部16a内の水位を検出する水位センサ16cと、加熱部16b内の圧力を検出する圧力計16dが設けられている。加熱部16bで形成された低酸素の高温水蒸気HSは蒸気供給管26を経由して処理槽11に向かって送出され、処理槽11内に略水平配置された複数の蒸気噴出管19から処理槽11内の処理対象物Xに向かって噴出される。蒸気発生部16b及び加熱部16aの熱源として電気ヒータを使用しているが、これに限定するものではない。
【0020】
水蒸気供給手段16には加熱部16bから送り出される高温水蒸気の温度を検知する温度センサ30が設けられ、処理槽11の上方には、その内部温度を検出する温度センサ31が設けられ、処理槽11の下方には、その内部に収容された処理対象物Xの温度を検出する温度センサ32と、内部ケーシング14の底部14bの温度を検出する温度センサ33と、が設けられている。
【0021】
また、図1に示すように、処理槽11内から吸引排気手段17によって排出された水蒸気Sを液化する冷却手段34が設けられている。冷却手段34は、起立状態に配置された冷却水流動管34aと、冷却水流動管34a内に略同軸をなすように配置された排気管34bと、を備え、冷却水流動管34aの上端開口寄りには脱臭手段35及びオフガス燃焼手段36が配置されている。冷却水流動管34aの高さ方向の中央付近には、外部から供給される冷却水を冷却水流動管34a内に流入させる入水口34cが設けられ、冷却水流動管34aの下端部にはドレン34dが設けられている。
【0022】
冷却水流動管34内の排気管34bの上端開口部34dは、冷却水流動管34aの上端開口寄りの脱臭手段35よりも下方に位置し、排気管34bの高さ方向の中央付近に排気経路17aの下流側が連通されている。また、排気管34bの下端部には排水管37が接続されている。入水口34cから冷却水流動管34a内へ流入した冷却水は、排気管34bの上端開口部34dを越流して排気管34b内へ流れ込み、排気管34b内を落下した後、排水管37から排出される。
【0023】
次に、図1〜図3を参照しながら、乾燥装置10の機能及び作用効果などについて説明する。生ごみや食品加工残渣などの有機性廃棄物を含む処理対象物Xを、開閉扉21を開いて投入口20から処理槽11内へ投入し、開閉扉21を閉じる。このとき、開閉扉21は施錠することもできる。処理槽11内への処理対象物Xの投入が完了したら、加熱手段15、ギヤードモータ28,29及び水蒸気供給手段16を稼働させる。なお、加熱手段15の発熱温度は300〜350℃の範囲で調節可能であり、高温水蒸気HSは250℃〜600℃の範囲で調節可能である。
【0024】
これにより、処理槽11内の処理対象物Xは、加熱手段15によって加熱されながら撹拌手段12,13及び破砕排出スクリュウ22によって撹拌され、処理対象物Xに含まれていた水分が水蒸気Sとなって蒸発していく。また、処理対象物Xは破砕促進羽根12b,13bによって効率良く破砕されるとともに、撹拌羽根12c,13cによってムラ無く撹拌される。この過程において、水蒸気噴出管19から処理対象物Xに向かって噴出される低酸素の高温水蒸気HSによって処理対象物Xが加熱されるので、加熱手段15による加熱では蒸発しない処理対象物X中の水分が水蒸気Sとなって放出され、乾燥減容が進行する。処理対象物Xの乾燥減容が完了した後、さらに、加熱手段15及び高温水蒸気HSによる加熱を続行すると、処理対象物Xの炭化が進行し、最終的には、処理対象物Xは粉炭状の処理物となる。
【0025】
前述した工程において処理対象物Xから発生した水蒸気Sの一部は、天井部材18aの貫通孔18cを通過して吸引排気手段17により排気口17bから吸引排出されるが、その他の水蒸気Sは天井部材18aにて凝縮され結露水となる。結露水は天井部材18aの下り勾配に沿って流動し、排水経路18bを経由して冷却手段34の排気管34b内へ排出される。
【0026】
このように、加熱手段15及び高温水蒸気HSの加熱作用により、処理槽11内の処理対象物Xから発生した水蒸気Sは、吸引排気手段17によって排出されるとともに、凝縮排出手段18によって排出されるので、一旦発生した水蒸気Sが処理槽11内の処理対象物Xに戻ることがなく、処理対象物Xを、効率良く、乾燥減容及び炭化処理することができる。
【0027】
また、乾燥装置10が、処理槽11内の水蒸気Sを排出する手段として、吸引排気手段17に加え、凝縮排出手段18を具備したことにより、吸引排気手段17を、処理槽11内を真空化するような強制排気システムとする必要がないので、処理槽11及び配管系統などをシンプルな構造とすることができ、取り扱い性やメンテナンス性も良好であり、小型化も可能である。このため、乾燥装置10は、小規模事業者などでも比較的容易に導入することができる。
【0028】
さらに、処理槽11内部の温度を検出する温度センサ31、処理槽11内部に収容された処理対象物Xの温度を検出する温度センサ32及び内部ケーシング14の底部14bの温度を検出する温度センサ33による検出値を時間経過に沿って計測し、それぞれ折れ線グラフ化すると、例えば、温度センサ33による検出値のグラフは、処理対象物Xの乾燥減容が完了した時点や、その後、炭化が完了した時点などを境に上昇し、その他の部分は略水平状態の階段状となることが本願発明者の研究により判明している。
【0029】
従って、温度センサ33などによる検出値のグラフが略水平状態から上昇を開始したときを以て、処理槽11内の処理対象物Xを目視することなく、乾燥減容あるいは炭化が完了したことを確認することができる。また、温度センサ33などによる検出値グラフが上昇した時点で加熱手段15及び水蒸気供給手段16を自動停止する機構などを設ければ、乾燥装置10の自動運転化を図ることもできる。
【0030】
このように、温度センサ33などによる検出値を計測することにより、処理槽11内の処理対象物Xの乾燥減容あるいは炭化の進行状況を把握することができるので、処理対象物Xを、必要に応じた処理状態(乾燥状態あるいは炭化状態など)で取り出すことができる。なお、乾燥減容あるいは炭化処理が完了した処理対象物Xは、安全な温度まで冷却した後、排出口27を開いて破砕排出スクリュウ22を回転させることにより、容易に処理槽11から排出することができる。
【0031】
また、処理槽11内から排気経路17aを経由して排気管34b内へ流入した水蒸気混じりの排気ガスは、排気管34b内を上昇しながら排気管34b内を落下する冷却水によって冷却され、排気ガス中の水蒸気などは液化され冷却水に伴って落下し、排水管37から排出される。また、排水経路18bを経由して冷却手段34の排気管34b内へ排出さされた結露水も冷却水とともに落下し、排水管37から排出される。排水管37からの排水は、所定の排水処理手段などを経て無害化される。
【0032】
一方、排気管34b内で液化された後の排気ガスは、排気管34bの上端開口部34eを出て上昇し、脱臭手段35及びオフガス燃焼手段36を経て、無臭化及び無害化された後、放出されるので、大気汚染のおそれもない。
【0033】
なお、図1〜図3に示す乾燥装置10は本発明の一例を示すものであり、これに限定するものではないので、処理対象物の種類、必要とする乾燥レベルあるいは使用条件などに応じて構成部分を設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の乾燥装置は、生ごみや食品加工残渣などの有機性廃棄物を乾燥減容あるいは炭化する手段として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 乾燥装置
11 処理槽
12,13 撹拌手段
12a,13a,22a 回転軸
12b,13b 破砕促進羽根
12c,13c 撹拌羽根
14 内部ケーシング
14a 側壁部
14b 底部
15 加熱手段
16 水蒸気供給手段
16a 蒸気発生部
16b 加熱部
16c 水位センサ
16d 圧力計
17 吸引排気手段
17a 排気経路
17b 排気口
18 凝縮排水手段
18a 天井部材
18b 排水経路
18c 貫通孔
19 蒸気噴出管
20 投入口
21 開閉扉
22 破砕排出スクリュウ
23 破砕羽根
24 外部ケーシング
25 断熱保温材
26 蒸気供給管
27 排出口
28,29 ギヤードモータ
30,31,32,33 温度センサ
34 冷却手段
34a 冷水流動管
34b 排気管
34c 入水口
34d ドレン
34e 上端開口部
35 脱臭手段
36 オフガス燃焼手段
37 排水管
HS 高温水蒸気
S 水蒸気
X 処理対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を収容する処理槽と、前記処理槽内に設けられた撹拌手段と、前記処理槽内を昇温させる加熱手段と、前記処理槽内へ高温水蒸気を送り込む水蒸気供給手段と、前記処理槽内の水蒸気を排出する吸引排気手段と、を備え、前記処理槽内の水蒸気を前記処理槽内にて凝縮させて前記処理槽外へ排出する凝縮排水手段を設けたことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記凝縮排水手段として、前記処理槽内に配置された通気性を有する結露発生部材と、前記結露発生部材に生じた結露水を前記処理槽外へ排出する排水経路とを設けた特徴とする請求項1記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記結露発生部材として、前記処理槽内に、貫通孔を有する天井部材を設けたことを特徴とする請求項2記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記撹拌手段として、前記処理槽内に配置された回転軸と、前記回転軸に放射状に設けられた複数の破砕促進羽根と、前記回転軸の周りに螺旋を描くような状態で前記破砕促進羽根に取り付けられたロッド状の撹拌羽根とを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記処理槽内から前記吸引排気手段によって排出された水蒸気を液化する冷却手段を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−63088(P2012−63088A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208189(P2010−208189)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(505111502)井上製氷冷蔵株式会社 (3)
【出願人】(507152202)
【Fターム(参考)】