説明

予測センサを有する膨張タンク

膨張タンクは、所定の容積容量を有するタンクと、タンク容積を、液体を保持するための液体収容部と、液体収容部が所定の液体容積を保持する場合における正常な加圧ガス容積を画定する、加圧下でガスを保持するためのガス収容部とに仕切る、タンク内の膨張可能なダイヤフラムと、ガス収容部においてタンクに取り付けられており、ガス収容部の容積が縮小された場合に警報信号を発するように構成されている近接センサとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年8月8日に出願された米国特許出願番号第11/500,219号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、循環水式冷暖房システム(hydronic system)等における膨張タンクに関する。特に、本発明は、循環水式冷暖房システム等の部品である膨張タンクにおける予測センサに関する。
【背景技術】
【0003】
循環水式冷暖房は、暖房及び冷却システムの伝熱媒体としての水の使用を指す。循環水式冷暖房システムは、一般に、冷暖房空調装置(HVAC)において利用される。代表的な循環水式冷暖房システムは、循環伝熱媒体ループ、関連した弁、ラジエータ、ポンプ、及び、所望の熱輸送を実施するボイラ又は冷却機を含む。循環水式冷暖房システムはまた、液体が冷却されたり加熱されたりするにつれて液体体積が収縮したり膨張したりするために、水等の様々な体積の伝熱媒液を収容する少なくとも1つの膨張タンクを含まなければならない。膨張タンクは、さらなるガス膨張又は圧縮によって液体容積の変動に対応するための空気等、圧縮ガスによって加圧される弾性体のダイヤフラムを利用し、循環水式冷暖房システムにおける制御圧に役立つ。
【0004】
膨張タンクは、通常、過剰液体を保持するダイヤフラムと、システム全体の圧力を制御する圧縮ガス部とを含む。過剰なシステム圧力又はタンクからのガス漏洩に起因してダイヤフラムが過剰に膨張された場合には、ダイヤフラムは、破裂して修理のために犠牲が大きいシステム停止を必要とすることがある。ダイヤフラムの破壊のようなシステム故障のみならず、例えば排水によるシステム圧力の低減等の補修工程が適時に行われない限り、ダイヤフラムが過剰に膨張させられて破裂しそうであるという状態も検出することは有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、膨張タンク内でのダイヤフラムの膨張を監視するために取り付けられた過剰ダイヤフラム動作警報手段を有する膨張タンクを提供することである。
【0006】
本明細書及び添付された特許請求の範囲において使用されるような用語「ダイヤフラム」は、タンクに架かってタンク(図8)の側壁に固定された弾性変形可能な膜もしくは薄膜、又は、タンク(図2)内に懸吊されて液体を保持するように構成された弾性ブラダ(bladder)を意味する。いずれの場合においても、膜又は薄膜は、ブラダと同様に、タンク内部を2つの区画又は部分、すなわち、加圧下でガスを閉じ込めるための閉じられたガス収容部と、システムから膨張する一部の液体を保持するための液体収容部とに仕切る。
【0007】
本発明のさらなる目的は、膨張タンク内のダイヤフラムを損傷しない膨張検出器を含む膨張タンクシステム及び使用方法を提供することである。
【0008】
可能性があるダイヤフラム故障の様態、すなわち、タンクの横溢及び/又はタンクダイヤフラムの過剰な伸展を検出することができるセンサ要素を有する膨張タンクを提供することも目的である。
【0009】
タンク連結具を介して直ちに設置され得る又は交換され得るようにモジュール形式の膨張タンク警報システムを提供することがさらに他の目的である。
【0010】
本発明の装置及び方法態様のこれらの及び他の目的及び利点は、膨張タンク技術における当業者にとって明らかになるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明を具体化した膨張タンクは、循環水式冷暖房システムにおけるタンクのダイヤフラムの異常な歪みや、タンク内のガス圧の平衡逸失等に起因する、膨張タンクにおける可能性がある故障状態を検出することができる。
【0012】
特に、本発明の膨張タンクは、所定の容積容量を有するタンクと、タンク内の膨張可能なダイヤフラムとを備える。膨張可能なダイヤフラムは、タンク容積を、液体を保持するための液体収容部と、タンクの液体収容部が所定の液体容積を保持する場合における正常な加圧ガス容積を画定する、加圧下でガスを保持するためのガス収容部とに仕切る。近接センサがガス収容部においてタンクに取り付けられており、ガス収容部がダイヤフラム膨張の結果として縮小された場合に、警報信号を発するように構成されている。
【0013】
タンク内に取り付けられたダイヤフラムの膨張を検出することができる多種多様な近接センサが利用可能である。実例となるのは、誘電タイプの容量式近接センサや導電タイプの容量式近接センサ等の容量式近接センサ、ストレインゲージ等の機械式近接センサ、電気機械式近接センサ等である。
【0014】
上述したように、ダイヤフラムは、タンク内部を仕切る弾性変形可能な膜もしくは薄膜、又は、タンクの液体収容部を画定するタンク内に取り付けられた弾性ブラダであり得る。
【0015】
本発明の方法態様は、膨張タンク内に配置された膨張可能なダイヤフラムの大きさを監視することに向けられ、近接センサを用いて所定のタンク壁部分の近くの膨張タンクダイヤフラムの存在を検出するステップと、近接センサから受信された信号に応じて警報を発生するステップとを備える。
【0016】
近接センサは、利用される近接センサのタイプに応じて、いくつかの方法でタンクに取り付けられ得る。容量式近接センサの場合には、これらのセンサは、適切な連結具を介して、タンクのガス収容部内に延在することができる、又は、タンク壁に設けられた覗き窓等を介して、膨張されたダイヤフラムの存在を検出することができる。機械的又は電気機械式近接センサの場合には、センサの少なくとも一部は、タンクのガス収容部内に延在する。機械的又は電気機械式近接センサは、ダイヤフラムとの物理的接触によって作動される。
【0017】
本発明によって想定される近接センサはまた、タンク内での横溢状態、すなわち、ダイヤフラムが破裂して膨張タンク内の液体がタンクのガス収容部内に侵入したときの状態を検出することができる。
【0018】
本発明に係るダイヤフラム近接センサを備える膨張タンクはまた、液体のシステム圧力の変動が構成されなければならない地方自治体の上下水道処理システム、水圧洗浄システム、逆浸透システム、燃料処理システム、防火システム等において使用するのに適切である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を具体化した膨張タンクを利用した閉ループ循環水式冷暖房システムの概略図である。
【図2】図1において示される膨張タンクの拡大正面図である。
【図3】循環水式冷暖房システムの空気隔離、及び、ブラダタイプのダイヤフラムが設けられた詳細な膨張タンクの概略図である。
【図4】タンク容積をガス収容部と液体収容部とに仕切る弾性膜の形態のダイヤフラムを利用した、本発明を具体化した液気圧式(hydropneumatic)膨張タンクの概略図である。
【図5】横溢状態において膨張タンクの壁に取り付けられた電気機械式近接センサの概略図である。
【図6】膨張タンクの壁に取り付けられた電気機械式近接センサの概略図である。
【図7】他のタイプの電気機械式近接センサの概略図である。
【図8】正常動作状態下における本発明を具体化した膨張タンクの概略図である。
【図9】異常で過剰なシステム圧力状態下における本発明を具体化した膨張タンクの概略図である。
【図10】ダイヤフラムが破裂して横溢した状態を示す本発明を具体化した膨張タンクの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において記述される本発明は、勿論、多くの形式の実施形態の余地がある。本発明の好ましい実施形態は、図面に示されて以下に詳細に記述される。しかしながら、本開示は本発明の本質の具体例であるが、示される実施形態に本発明を限定しないことが理解されるべきである。
【0021】
図1及び図2を参照すると、閉ループ暖房方式12は、近接センサ11を備える膨張タンク10と、タンク10に取り付けられた警報モジュール20とを含む。近接センサ11は、好ましくは、米国、ネバダ州89502、リノのStedham Electronics Corporationから市販されているモデルC1ALLAN1−P等の誘電タイプの容量式近接センサである。ボイラ14は、ポンプ26によってライン15、17、18、及び19を介してラジエータ13、16を通って循環される温水を供給する。ライン24は、ライン15及び膨張タンク20内のブラダタイプのダイヤフラム21と流体連通している。過剰なシステム水23は、ブラダタイプのダイヤフラム21内に保持されている。一般に1平方インチゲージあたり(psig)約12ポンドから約30ポンドであるシステム圧力は、ガス収容部22内での加圧ガスのために維持される。タンク10はまた、ガス収容部22内の圧力を調整するための空気充填弁27を備える。
【0022】
図3は、循環水式冷暖房システムの設備を示している。床面に取り付けられた垂直膨張タンク30は、過剰なシステム水34を保持する懸吊されたブラダ32を備える。圧力計36は、システム水圧を監視する。空気充填弁38は、タンク30のガス収容部40の加圧のためにタンク30に設けられる。近接センサ42は、タンク30に取り付けられており、ガス収容部40内の状態を監視する。ガス収容部40内のシステム圧力又は空気漏洩の異常な増加に起因して、ブラダ32が所定の限界を越えて膨張する場合には、近接センサ42は、そのような膨張を検出し、ブラダ32内で過剰な応力又は破裂圧力に到達する前にシステム水圧が軽減され得るように、適切な警報を起動させる信号を発する。ブラダ32の過剰な膨張がガス収容部40からの空気漏洩に起因する場合には、追加の空気圧力が空気充填弁38を介して供給され得る。
【0023】
空気セパレータ45は、水ライン49を介してポンプ(図示しない)の入力又は吸入側と通じている供給ライン47に設けられている。同様に、膨張タンク30及びそのブラダ32は、ライン51を介して水ライン49と流体連通している。T継手53は、必要に応じて他の並列膨張タンクとの接続を容易にするようにライン54に設けられている。システム圧力逃がし弁56もまた、水ライン49と通じて設けられている。
【0024】
図4は、床面に取り付けられた垂直膨張タンク58の代表的な設備を示しており、タンク58内でガス収容部62を画定する領域においてタンク58に取り付けられた近接センサ60が設けられている。薄膜64は、タンク58をガス収容部62と液体収容部66とに仕切る。タンク58はまた、空気充填弁68と、検査ポート59とを有する。
【0025】
液体収容部66は、ライン67を介して水システムと流体連通している。ライン67における圧力計69は、システム水圧を監視する。
【0026】
図5は、膨張タンク10における横溢状態を示している。ブラダタイプのダイヤフラム21が破裂し、液体収容部23内に保持される水がガス収容部22に流入している。タンクに取り付けられた近接センサ11は、水位の接近を検出し、順次、視覚表示灯82及びオン/オフ/リセットボタン84の他に音響警報器81を備える警報モジュール20に起動させる警報信号を発する。遠隔警報能力は、必要に応じて、同様に組み込まれ得る。
【0027】
図6は、膨張タンクの壁に取り付けられた警報モジュール90を備える電気機械式近接センサ70を示している。近接センサ70は、タンクのガス収容部内に延在しており、センサ70に付随する警報モジュール90は、膨張タンクの外部に配置されている。
【0028】
近接センサ70は、その末端に磁石75を担持するアーム74とともに略L字状片73を一体的に形成するアーム76の末端に取り付けられた浮き77を含む。L字状片73は、ハウジング98によって支持されたバー71に対して72において枢動可能に取り付けられている。膨張するブラダ又は水位の上昇によって浮き77に与えられる浮力のいずれかにより浮き77が上方に移動された場合、磁石75は、ハウジング98内の接点94、96に接近して密接に接触し、その結果、警報モジュール90内の警報回路を閉じる。この警報回路は、接点94、96に加え、リード線101、102と、バッテリ85等の電源と、音響警報器81と、視覚警報器82と、オン/オフ/リセットボタン84とを含む。
【0029】
図7は、本発明を実施するために適切な他の近接センサを図示している。
【0030】
この特定の実施形態において、浮き107は、導電性スリーブ111に取り付けられた線バネ109の末端に添着されているが、そこから電気的に絶縁されている。リード線119、121は、それぞれ、線バネ109及び導電性スリーブ111と、図6において示されるものと同じ警報モジュールとに接続されている。線バネ109は、エポキシディスク117によって導電性スリーブ111の内部の適所に保持されている。浮き120が上方に付勢された場合には、膨張ダイヤフラム又は上昇する水位のいずれかと、導電スリーブ111に接触する線バネ109とにより、警報回路は、閉じられて警報信号が発せられる。
【0031】
図8、図9、及び図10は、様々な状態下における膨張タンク内のダイヤフラムの位置を示している。図8において、正常動作状態下における膨張タンク130が示されている。液体132は、タンク130内に保持されており、タンク容積の約40パーセントを占めている。加圧ガス134は、タンク容積の約60パーセントを占めており、ダイヤフラム136によって液体132から隔離されている。この特定の例において、システム水圧は、約12psigから約30psigの範囲にあり、加圧ガス134によって平衡がとられている。近接センサ140は、タンク130の壁に取り付けられている。センサ140に付随する警報モジュール142は、タンク130の外部にある。
【0032】
システム水圧が上昇した場合(図9)、より多くの液体132がタンク容積を占め、ダイヤフラム136が膨張し、近接センサ140を上方に移動させて警報を起動させる。同様に、ダイヤフラム136が破裂した場合には、図10において示されるように、タンク130内の上昇する水位が近接センサ140を上方の位置に維持する。
【0033】
循環水式冷暖房システムにおける正常動作状態下において、膨張タンク内の液体容積は、タンク総容積の約40パーセントであり、加圧ガス又は空気の容積は、タンク総容積の約60パーセントである。ダイヤフラムがその最大引っ張り又は破裂強度の近くまで膨張した場合に警報状態が生じる。勿論、破裂強度は、構造の材料及びダイヤフラムの厚みによって決まる。膨張タンクダイヤフラムは、ブチルゴム、天然ゴム、ニトリルゴム等である。
【0034】
好ましくは、タンクのガス収容部が正常値の少なくとも約40パーセントまで縮小した場合に警報信号が発せられるように、近接センサは、膨張タンクにおいて又は膨張タンク内に配置される。
【0035】
発せられた警報信号は、様々な方法で処理され得る。上述したように、警報信号は、音響警報又は視覚警報を起動させるように利用され得る。警報信号はまた、中央に配置されたモニタを有する遠隔場所、又は、1つの循環水式冷暖房システム又は複数のシステムにおける複数の膨張タンクから警報信号を受信することができるデータロガーに対して送信されることもできる。配置を監視する特定の膨張タンクの選択は、主に、関連する1つの循環水式冷暖房システム又は複数のシステムの大きさに依存する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の容積容量を有するタンクと、
タンク容積を、液体を保持するための液体収容部と、液体収容部が所定の液体容積を保持する場合における正常な加圧ガス容積を画定する、加圧下でガスを保持するためのガス収容部とに仕切る、タンク内の膨張可能なダイヤフラムと、
ガス収容部においてタンクに取り付けられており、ガス収容部の容積が縮小された場合に警報信号を発するように構成されている近接センサとを備える、膨張タンク。
【請求項2】
近接センサが、誘電タイプの容量式近接センサである、請求項1に記載の膨張タンク。
【請求項3】
近接センサが、導電タイプの容量式近接センサである、請求項1に記載の膨張タンク。
【請求項4】
近接センサが、タンクのガス収容部に配置された機械式センサである、請求項1に記載の膨張タンク。
【請求項5】
近接センサが、タンクのガス収容部に配置された電気機械式センサである、請求項1に記載の膨張タンク。
【請求項6】
膨張可能なダイヤフラムが、タンクの液体収容部を画定するタンク壁の一部と一体のブラダである、請求項1に記載の膨張タンク。
【請求項7】
近接センサが、ガス収容部の容積が正常な加圧ガス容積の少なくとも40パーセントまで縮小された場合に警報信号を発する、請求項1に記載の膨張タンク。
【請求項8】
膨張タンク内の膨張可能なダイヤフラムの大きさを監視する方法であって、
タンクのガス収容部を画定するタンク壁の近くの液体収容ブラダタイプのダイヤフラムの存在を、タンク壁に取り付けられた近接センサによって検出するステップと、
近接センサからの信号に応じて警報を発生するステップとを備える、方法。
【請求項9】
加圧下でガスを保持するための閉じられたガス収容区画と液体を貯留するための液体収容区画とを画定する前記タンクの壁部分と一体である、膨張タンク内の弾性体のダイヤフラムの膨張の度合いを決定する方法であって、
閉じられたガス収容区画内に近接センサを設けるステップと、
ダイヤフラムが所定の大きさままで膨張した場合に、弾性体のダイヤフラムを検出するための近接センサを配置するステップと、
近接センサによって発せられた検出信号に応じて警報を起動させるステップとを備える、方法。
【請求項10】
膨張可能なダイヤフラムを内部に有し且つタンク容積を液体収容部とガス収容部とに仕切る膨張タンクと、タンクに取り付けられ且つガス収容部の容積が所定量まで縮小された場合に、警報信号を発するように構成されたダイヤフラム近接センサとを含む、循環水式冷暖房システム。
【請求項11】
ダイヤフラムが、ブラダタイプのダイヤフラムである、請求項10に記載の循環水式冷暖房システム。
【請求項12】
ダイヤフラムが、タンクの周囲に固定された薄膜である、請求項10に記載の循環水式冷暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−500248(P2010−500248A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523829(P2009−523829)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/017601
【国際公開番号】WO2008/021114
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(509038913)ウエセルズ・カンパニー (1)
【Fターム(参考)】