説明

二元PPARα/γアゴニストとアンギオテンシンIIのI型受容体アンタゴニストを使用する併用療法

本発明は、有効成分の医薬適合性の塩及び溶媒和物を含む、二元PPARα/γアゴニスト及びアンギオテンシンIIのI型受容体アンタゴニストの組合せの治療的有効量の投与による、高血圧及び2型糖尿病、代謝症候群又は前糖尿病状態の治療に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体のα及びγサブタイプ(PPARα/γ)の二元アゴニストである医薬活性化合物と、アンギオテンシンIIのI型受容体(A−2)アンタゴニストのような高血圧を低下させる上で活性な他の化合物との組合せの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病とは、多数の原因因子に由来する疾患過程を指し、空腹状態又は経口ブドウ糖負荷試験におけるグルコース投与後の血漿中グルコースの高いレベル(高血糖)を特徴とする。顕症糖尿病(例えば空腹状態で血液中グルコース濃度≧126mg/dL)は、高く且つ早期の心臓血管罹病率及び死亡率に結びつき、また脂質、リポタンパク質及びアポリポタンパク質代謝の変調を含む様々な代謝状態に直接及び間接的に関係する。インスリン非依存性糖尿病(2型糖尿病)又は2型糖尿病を有する患者(糖尿病患者の約95%)は、しばしばコレステロール及びトリグリセリドなどの血清脂質の高いレベルを示し、高レベルのLDL−コレステロールと低レベルのHDL−コレステロールを伴う劣悪な血液−脂質プロフィールを有する。2型糖尿病を有する患者は、それ故、冠動脈心疾患、卒中、末梢血管疾患、高血圧症(例えば安静状態で血圧≧130/80mmHg)、腎症、ニューロパシー及び網膜症を含む、大血管及び細小血管合併症を発症する危険度が特に高い。
【0003】
2型糖尿病を有する患者は、特徴的に、非糖尿病患者と比較して高い血漿中インスリンレベルを示す;これらの患者は、主要なインスリン感受性組織(筋肉、肝臓及び脂肪組織)においてグルコース及び脂質代謝のインスリン刺激に対する抵抗性を発現する。それ故2型糖尿病は、少なくとも疾患の自然進行の初期には、主としてインスリン産生の低下ではなくインスリン抵抗性によって特徴付けられ、それは、筋肉におけるグルコースの不十分な取り込み、酸化及び貯蔵、脂肪組織における脂肪分解の不適切な抑制、及び肝臓による過剰のグルコース産生と分泌をもたらす。インスリンに対する感受性低下の正味の影響は、血漿中グルコースの適切な低下を伴わない(高血糖症)血液中の循環インスリンの高いレベルである。高インスリン血症は高血圧を発症する危険因子であり得、また同時に、独立して血管疾患に寄与すると思われる。
【0004】
代謝症候群(X症候群とも称される)は、2型糖尿病を罹患する個体が示すものに類似したいくつかの表現型を有する疾患である。個体が以下の判定基準:空腹時血糖異常(又は耐糖能異常)、低いLDLレベル、高トリグリセリド血症、高血圧症及び肥満、の3つ以上を満たす場合、その個体は代謝症候群を有する。さらに、類似の前糖尿病状態を有する患者、すなわち2型糖尿病及び代謝症候群に類似した疾患を有するが、代謝症候群についての診断判定基準を満たさない患者は、典型的には、インスリン応答の低下とグルコース代謝異常を示す。そのような前糖尿病状態にある患者の例は、空腹時血糖値が平均より高いが、まだ高血糖症よりは低い、すなわち<126mg/dLである耐糖能異常を示す個体、又は空腹時トリグリセリド値が平均より高いが、まだ高脂血症よりは低い、すなわち<150mg/dLである脂質代謝異常を示す個体を含む。代謝症候群を有する個体ならびに類似の前糖尿病状態にある個体は、心臓血管疾患ならびに糖尿病の他の合併症を発症する危険度が高い。
【0005】
2型糖尿病及び代謝症候群の発生率及び有病率は世界中で急速に上昇しつつあるので、脂質代謝、インスリン感受性及び高血圧の治療的制御がこれらの疾患の臨床管理、予防及び治療において決定的に重要である。
【0006】
2型糖尿病のための従来の治療には周知の制約がある。身体運動と食事性カロリー摂取の低減は糖尿病状態を劇的に改善しうるが、広く確立されている長時間座ったままのライフスタイルと過剰の食物消費のために、この治療へのコンプライアンスは一般的に低い。臨床医はさらに、糖尿病における4つの主要問題領域:高血圧、脂質代謝異常(dyslipidemia)、高血糖及び肥満のすべてを治療するという困難な課題に直面する。高血糖の治療のためには、膵β細胞を刺激してより多くのインスリンを分泌させるスルホニル尿素(例えばトルブタミド及びグリピジド)の投与によって、及び/又はスルホニル尿素に対する応答の効果が低下し、最終的に無効になったときにはインスリンの注射によって、インスリンの血漿中レベルを上昇させることができる。しかし、これら最後の2つの治療からは危険なほど低い血漿中グルコースレベル(低血糖症)が生じることがあり、また血漿中インスリンレベルの上昇と体重増加に応答してインスリン抵抗性が悪化することがある。ビグアニドはインスリンに対する応答を改善し、高血糖症のある程度の矯正をもたらしうるが、2つのビグアニド剤、フェンフォルミンとメトフォルミンは、どちらも乳酸アシドーシス及び吐気/下痢を生じることがある。
【0007】
チアゾリジンジオン(すなわち5−ベンジルチアゾリジン−2,4−ジオン)は、2型糖尿病の多くの症状を改善する上で新規作用機構を有する、最近開発されたクラスの化合物に属する。これらの作用物質は、2型糖尿病患者の筋肉、肝臓及び脂肪組織におけるインスリン感受性を実質的に上昇させ、典型的には低血糖症の発生を伴わずに、グルコースの高い血漿中レベルの部分的又は完全な矯正をもたらす。さらに、一部の新たに開発されたPPARアゴニストは、インスリン感受性を改善するだけでなく、PPAR−γアゴニズムを介して2型糖尿病又は代謝症候群に付随する脂質代謝の局面も改善する。前記PPARアゴニストはまた、前糖尿病状態の患者、すなわち2型糖尿病に類似した疾患を有するが、症状の強度が低いか又は2型糖尿病と診断するのに必要な特定判定基準に合致しない個体に付随する、脂質代謝の疾患も軽減しうる。
【0008】
脂質代謝の疾患(脂質代謝異常)は、1つ以上の脂質(すなわちコレステロール及びトリグリセリド)、及び/又はアポリポタンパク質(すなわちアポリポタンパク質A、B、C及びE)、及び/又はリポタンパク質(すなわち、低密度リポタンパク質(LDL)、超低密度リポタンパク質(VLDL)及び中密度リポタンパク質(IDL)などの、脂質が血液中を循環することを可能にする、脂質とアポリポタンパク質によって形成される高分子複合体)の異常濃度によって特徴付けられる様々な状態を包含する。コレステロールは主として低密度リポタンパク質(LDL)によって運搬される;LDLコレステロールの上昇は冠動脈心疾患の危険度と密接に相関するので、LDLコレステロールは一般に「悪玉」コレステロールと称される。コレステロールは高密度リポタンパク質(HDL)にも結合し、HDLは動脈壁に沈着したコレステロールやじゅく状硬化斑と結合してコレステロールを肝臓に逆輸送するので、一般に「善玉」コレステロールと称される。それ故、LDLコレステロールの高レベルを低下させ、同時にHDLコレステロールのレベルを上昇させることが望ましい。一般に、HDLの高レベルは冠動脈心疾患(CHD)のより低い危険度に結びつくことが認められている。例えば、Gordonら、62 Am.J.Med.707−714(1977);Stampferら、325 N.England J.Med.373−381(199);Kannelら、90 Ann.Internal Med.85−91(1979)。HDL上昇薬の一例はニコチン酸であるが、HDLを上昇させるのに有効な用量は潮紅などの有害作用にも結びつくので、この薬剤の有用性は限られている。
【0009】
脂質代謝異常は、当初、6つの表現型(すなわちI、IIa、IIb、III、IV及びV)を含むFredricksonシステムに従って分類され、その最も一般的なものは、通常総コレステロール及びLDLコレステロールの濃度上昇を伴う孤立性高コレステロール血症(又はIIa型)である。高コレステロール血症の初期治療は、しばしば、適切な身体運動と組み合わせた、脂肪とコレステロールの低い食事への食生活改善である。しかし、前述したように、運動レジメン及び食事療法へのコンプライアンスは低く、そのためしばしば薬剤治療が必要となる。
【0010】
2番目に一般的な形態の脂質代謝異常は、「混合型又は複合型高脂血症」(Fredrickson分類に基づくIIb及びIII型)として知られる。この脂質代謝異常は、2型糖尿病、肥満及び代謝症候群を有する個体において罹病率が高い。IIb及びIII型脂質代謝異常では、小さくて密なLDLコレステロール粒子、VLDL及び/又はIDL(すなわちトリグリセリドに富むリポタンパク質)、及び総トリグリセリドのより著明な上昇を伴う、LDLコレステロールの控えめな上昇が存在する。さらに、しばしばHDLの濃度が低く、そのためこれらの個体ではコレステロール沈着物がより高い割合で蓄積する。
【0011】
PPARアゴニストは、肝及び腎ペルオキシソームの大きさと数の劇的な上昇を惹起する、構造的に多様な群の化合物を形成する。ペルオキシソームの増殖は、高脂肪食及び低温気候順化などの食事及び生理的因子も引き金となる。さらに、PPARアゴニストは、ベータ酸化サイクルの酵素の高発現を介して脂肪酸を代謝するペルオキシソームの能力を上昇させる。前記チアゾリジンジオン(5−ベンジルチアゾリジン−2,4−ジオン)は一般に、PPARへの結合及び脂質生成、インスリン感受性及び脂質代謝に関与する遺伝子の転写を制御することを通してその作用を及ぼすと考えられる。Hulinら、2 Current Pharm.Design 85−102(1996)参照。
【0012】
PPARの3つの主要サブタイプが発見され、記述されている:ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、及びペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δ(PPARδ)。PPARαは多くの媒体及び長鎖脂肪酸及びフィブレートによって活性化され、脂肪酸酸化の刺激及び血清脂質の仲介作用に関与する。実際に、各々がPPARαアゴニストであるクロフィブレート、フェノフィブレート、ベザフィブレート及びゲンフィブロジルなどのフィブリン酸誘導体は、血漿中トリグリセリドの実質的な低下ならびにHDLの多少の上昇を生じさせる。LDLコレステロールレベルへの前記化合物の作用は一貫しない(おそらく分子、モデル及び/又は脂質代謝異常の表現型に依存する)ので、PPARαのアゴニストは主として高トリグリセリド血症(すなわちFredricksonのIV及びV型)及び/又は混合型高脂血症(すなわちFredricksonのIV及びV型)を治療するために使用される。これらのフィブリン酸誘導体は一般にPPARγ受容体への親和性が低く、それ故インスリン感受性を調節しない(下記参照)。
【0013】
PPARγ受容体サブタイプは、肝臓におけるペルオキシソーム増殖の刺激ではなく、脂肪細胞分化のプログラムの活性化とインスリン感受性に関与する。プロスタグランジンJ誘導体及び様々な長鎖脂肪酸がPPARγサブタイプの潜在的天然リガンドとして特定されている。2,4−チアゾリジンジオン(TZD)及び2,4−オキサゾリジンジオン(OZD)を基剤とする抗糖尿病薬ならびに一部のプロスタノイドは、PPARγ受容体に高い親和性を有する。PPARγ受容体の活性化はインスリン感受性の上昇と高脂血症の低下をもたらし、またPPARα受容体へのPPARγ活性化化合物の低い親和性のゆえに、大部分の2,4−TZD及び2,4−OZDベースの抗糖尿病薬は血液脂質プロフィールに直接作用を及ぼさない。
【0014】
ヒト核内受容体遺伝子PPARδ(hPPARδ)は、ヒト骨肉腫細胞cDNAライブラリーからクローン化されており、Schmidtら、6 Molecular Endocrinology 1634−1641(1992)によって詳細に記述されている。PPARδの正確な役割は他のPPARサブタイプほどにはよく理解されていない。
【0015】
現在、糖尿病の治療における使用が承認されている2つのTZD(ロシグリタゾン及びピオグリタゾン)はPPARγアゴニストである。PPARγに作用する第三のグリタゾン、トログリタゾン(Rezulin(登録商標))は市場から撤収された。最近になって、PPARα及びγ受容体の両方を活性化するその能力が著明な、構造的に異なるグリタゾンが開発された。先行PPARγ選択的アゴニストである、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン及びトログリタゾンと異なって、これらの新しい二元アゴニストは、PPARα受容体との付加的な相互作用を介して脂質プロフィールを改善する。それ故、単一化合物が、複合PPARα/γアゴニズムによって、糖尿病死亡率への4つ(高血圧、高脂血症及び脂質代謝異常)の主要寄与因子のうち2つ(高脂血症及び脂質代謝異常)を十分に治療することができる。
【0016】
二元PPARα/γアゴニスト活性を有する有望なクラスのグリタゾンが、杏林製薬に譲渡された米国特許第6,030,990号、同第6,001,862号及び同第6,147,101号に述べられている。これらの特許に記述されている化合物は、PPARα及びPPARγサブタイプの両方を活性化するので、PPARα/γ二元アゴニストである。それらは、2型糖尿病患者における血清中グルコース上昇及び脂質上昇を治療する上で有効であり、それ故伝統的なTZD、OZD及び他の単一PPARアゴニストを上回る利点を提供する。これらの二元アゴニストは、劣悪な血液−脂質プロフィールと結合したインスリン抵抗性という特異的な組合せを治療できるので、これまでいくつかの化合物が必要であった状態を治療するため、及び薬剤相互作用と肝毒性の可能性を低下させるために有用である。
【0017】
レニン−アンギオテンシン−アルドステロン系(RAAS)を調節するもののような抗高血圧薬も、2型糖尿病、代謝症候群、並びに高脂血症及びアテローム性動脈硬化症に罹患した前糖尿病個体などの高血圧関連疾患の治療において重要な治療上の利点を有する。実際に、遍在レニン−アンギオテンシン系のオクタペプチドメディエイターであるアンギオテンシンIIは、強力な血管収縮機能を有し、様々な循環疾患の第一メディエイターとみなされる。さらに、高血圧症及び冠動脈疾患への強力な寄与因子であるアテローム硬化性病変は、アンギオテンシンシグナル伝達の拮抗作用によってRAASの阻害時に抑制されることが報告されている。例えば、Chobaniaら、15 Hypertension 327−331(1990)。しかし、抗高血圧化合物の主たる標的であるアンギオテンシン変換酵素(ACE)はブラジキニン炎症反応の抑制の役割も担うので、ACEアンタゴニストは喀痰を伴わない咳を引き起こすことが知られている。そこで、アンギオテンシンIIのI型受容体(A−2)阻害因子の最近の開発は、炎症反応を伴わないRAASの特異的不活性化を可能にし、糖尿病患者、前糖尿病患者及び代謝症候群に罹患した患者において高血圧を管理する方法を臨床医に提供する。これらの非ペプチドA−2阻害因子の最初の薬剤がロサルタン(Cozaar(登録商標))であり、その後カンデサルタン、イルベサルタン及びゾラサルタンなどの数多くの他の「サルタン」が出現した。
【0018】
一般的なクラスのA−2アンタゴニストは、E.I.Du Pont de Nemours and Companyに譲渡された米国特許第5,138,069号に述べられている。より特殊なサルタンは、Merck & Co.,Inc.に譲渡された米国特許第5,266,583号及び同第5,264,447号に記述されている。糖尿病患者及び前記状態に罹患している他の患者における高血圧は、しばしば高脂血症、脂質代謝異常及び高血糖症に関係するので、血管収縮を低下させる薬剤(A−2アンタゴニスト)と、脂質及び血糖プロフィールの両方を改善する薬剤(PPARα/γアゴニスト)の組合せは測り知れない利点を有する。実際に、この併用療法及び/又は医薬組成物は、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患及び糖尿病の死亡率への寄与因子(高血圧、高血糖及び脂質代謝異常)の3つ(高血圧、高血糖及び脂質代謝異常)を対象とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
二元PPARα/γアゴニスト及びアンギオテンシンIIのI型受容体アンタゴニストを、高血圧及び2型糖尿病、代謝症候群又は前糖尿病状態を治療するのに有効な量で患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする哺乳動物患者において高血圧及び2型糖尿病、代謝症候群又は前糖尿病状態を治療する方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、以下で述べる有効成分の組合せの投与による、2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病又は2型糖尿病)及び2型糖尿病に関連する様々な疾患の治療に関する。本発明はさらに、以下で述べる有効成分の組合せの投与による、2型糖尿病に関連する高血圧症、高血糖症及び高脂血症の治療又は改善に関する。本発明はさらに、以下で述べる有効成分の組合せの投与による、前糖尿病状態に関連する又は代謝症候群の一部である高血圧症、高血糖症及び脂質代謝異常の治療又は改善に関する。本発明はさらに、以下で述べる有効成分の組合せの投与による、混合型又は糖尿病性脂質代謝異常、孤立性高コレステロール血症、LDL−C及び/又は非HDL−C上昇、高アポBリポタンパク質血症、高トリグリセリド血症、トリグリセリドに富むリポタンパク質上昇、及び低いHDLコレステロールなどの脂質疾患を含む、しばしば2型糖尿病に付随する1つ以上の他の疾患又は状態の治療に関する。本発明はさらに、以下で述べる有効成分の組合せの投与による高血糖症、アテローム性動脈硬化症及び肥満の治療又は改善に関する。前記に列挙した疾患は、1つ以上の有効成分の医薬適合性の塩を含む、治療的有効量のPPARα/γ二元アゴニストと治療的有効量のA−2アンタゴニストの組合せの投与によって治療又は制御される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
ここで開示する組合せは、2型糖尿病、代謝症候群及び関連疾患の治療において有用であり、2型糖尿病又は代謝症候群を有する患者において高血圧を低下させるため、及び同時に高血糖症及び/又は脂質代謝異常、高脂血症、高コレステロール血症及び糖尿病患者においてしばしば起こる他の脂質疾患を制御又は改善するために、食事療法と運動の補助治療として使用しうる。特に、前記組合せは、Fredrickson分類のIIa、IIb、III、IV及びV型高脂血症又は代謝症候群を伴う又は伴わない、2型糖尿病を有する患者を治療するために有効である。さらに、前記組合せは、血圧、インスリン抵抗性、高血糖、高い総コレステロール、LDLコレステロール、非HDLコレステロール、アポリポタンパク質B及びTGを低下させるため、及び血清HDL−C及びアポリポタンパク質A−I及びA−IIレベルを上昇させるために有用である。
【0022】
要約すると、前記で定義した組合せは、2型糖尿病、前糖尿病状態又は代謝症候群に関連する高血圧を治療する上で、及びしばしば前記に付随する以下の状態を同時に治療するために有用である:
(1)脂質疾患;
(2)高脂血症;
(3)肥満;
(4)高コレステロール血症;
(5)高トリグリセリド血症;
(6)脂質代謝異常;
(7)高血糖症;
(8)インスリン抵抗性;
(9)低いHDLコレステロール;及び
(10)アテローム性動脈硬化症、及び狭心症、跛行、心臓発作及び卒中などのアテローム性動脈硬化症の続発症。
【0023】
本発明は、A−2アンタゴニストと組み合わせた二元PPARα/γアゴニストを、前記疾患を治療する、予防する又は発症の危険度を最小限に抑えるのに有効な量で患者に投与することにより、そのような治療を必要とする哺乳動物患者において前記疾患を治療する、予防する又は発症の危険度を最小限に抑える方法を包含する。
【0024】
本発明の好ましい実施態様は、以下で述べるような平衡型二元PPARα/γアゴニストの使用を含む。これらの二元PPARα/γアゴニストは、シンナメート及びジヒドロシンナメート、L−チロシン誘導体、フェニルプロパン酸及び他のプロパン酸誘導体、プロピオン酸誘導体、イソオキサゾリジンジオン及びオキサゾリジンジオン誘導体、チアゾリジンジオン、三環式化合物、カルボン酸、マロン酸、オキソベンジルグリシン誘導体、アルカノエート誘導体、ベンズアミド誘導体、グリタゾン、フェニルアルキルオキシフェニル誘導体及びイソプレノールから成る群より選択されうる。
【0025】
本発明において使用する最も好ましい二元PPARα/γアゴニストは、ベンズアミド誘導体、KRP−297、又はその医薬適合性の塩又は溶媒である。
【0026】
前述した併用療法のもう1つの好ましい実施態様は、アビテサルタン、ベンジルロサルタン、エリサルタン、エンブサルタン、エノルタソサルタン、フォンサルタン、フォラサルタン、グリシルロサルタン、ミルファサルタン、オルメサルタン、オポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、サプリサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、ゾラサルタン及びロサルタンから選択されるサルタンクラスのA−2アンタゴニストの1つの投与を含む。本発明における使用のための最も好ましいA−2アンタゴニストは、ロサルタン又はその種々の塩である。本発明の中で述べる併用療法の極めて好ましい実施態様は、ロサルタンと組み合わせたKRP−297又はその塩の投与を含む。
【0027】
さらに、PPARα/γアゴニスト、好ましくはKRP−297又はその塩と、A−2アンタゴニスト、好ましくはロサルタンの組合せと共に、1つ以上の付加的な化合物を投与しうる。選択しうる付加化合物の例は、ACE阻害因子;単一PPARγアゴニスト、タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害因子及びジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害因子を含むインスリン増感剤;インスリン又はインスリンミメティック;スルホニル尿素;α−グルコシダーゼ阻害因子;単一PPARαアゴニスト、胆汁酸吸収抑制剤(bile acid sequestrants)、ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害因子及び抗酸化薬などのコレステロール低下薬;PPARδアゴニスト;抗肥満化合物;回腸胆汁酸輸送体阻害因子;非ステロイド系抗炎症薬、糖質コルチコイド、アズルフィジン、シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害因子などの抗炎症薬;血小板の活性化及び凝集を阻害することを意図する薬剤;利尿薬、カルシウムチャネル遮断薬、β−アドレナリン遮断薬、レニン阻害因子、α−アドレナリンアンタゴニスト、交感神経遮断薬、アトリオペプチド阻害因子、セロトニン阻害因子、A2−アデノシン受容体アゴニスト、カリウムチャネルアゴニスト、レセルピン、ミノキシジル、グアネチジン、塩酸ヒドララジン及びニトロプルシドナトリウムを含む抗高血圧薬を包含する。
【0028】
本発明の二元PPARα/γアゴニストとA−2アンタゴニストの併用療法と共に投与する好ましい付加薬剤は、HMG CoAレダクターゼ阻害因子、好ましくはシンバスタチンである。
【0029】
2型糖尿病及び高血圧を治療する、予防する又は発症の可能性を最小限に抑えるのに使用するためのもう1つの好ましい付加化合物は、腸からのコレステロールの吸収又は再吸収を阻止するエゼチミブである。PPARα/γアゴニスト及びA−2受容体アンタゴニストを使用する併用療法と1つ以上の前記薬剤の組合せは、2型糖尿病、代謝症候群、及び脂質代謝異常、並びに血小板凝集及び高血糖症などの前糖尿病状態に関連する疾患の治療のために特に有用である。
【0030】
さらに、本発明は、A−2アゴニストと組み合わせたPPARα/γ二元アゴニスト及び医薬適合性の担体から成る、2型糖尿病、代謝症候群及び前糖尿病状態に関連する高血圧の治療のために有用な医薬組成物を含む。これに関して有用な二元PPARα/γアゴニストの例は、シンナメート及びジヒドロシンナメート、L−チロシン誘導体、フェニルプロパン酸及び他のプロパン酸誘導体、プロピオン酸誘導体、イソオキサゾリジンジオン及びオキサゾリジンジオン誘導体、チアゾリジンジオン、三環式化合物、カルボン酸、マロン酸、オキソベンジルグリシン誘導体、アルカノエート誘導体、ベンズアミド誘導体、グリタゾン、フェニルアルキルオキシフェニル誘導体及びイソプレノールから成る群より選択される。これらのカテゴリーの化合物の説明及びそのような化合物の例を表1に列記する。以下の表で特定する化合物のクラスは、記載の特許、主要文献及び特許公開に従って定義している。それ故、例えばL−チロシン誘導体は、国際公開公報第WO00/57001号及び国際公開公報第WO00/18002号に示されている。好ましいチロシン誘導体の一例はGW−409544である。
【0031】
前記医薬組成物において使用する最も好ましい二元PPARα/γアゴニストは、ベンズアミド誘導体、KRP−297又はその塩である。
【0032】
好ましいA−2アンタゴニストは、アビテサルタン、ベンジルロサルタン、エリサルタン、エンブサルタン、エノルタソサルタン、フォンサルタン、フォラサルタン、グリシルロサルタン、ミルファサルタン、オルメサルタン、オポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、サプリサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、ゾラサルタン及びロサルタンから成る群より選択される。本発明における使用のためのより好ましいA−2アンタゴニストは、ロサルタン又はその種々の塩である。本発明の医薬組成物の極めて好ましい実施態様は、KRP−297又はその塩と、ロサルタン又はその種々の塩の組合せを含む。
【0033】
【表1】

【0034】
付加的な化合物を、PPARα/γアゴニスト、好ましくはKRP−297、及びA−2アンタゴニスト、好ましくはロサルタンの組合せと共に投与しうる。そのような付加的化合物の例は、ACE阻害因子;単一PPARγアゴニスト、タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害因子及びジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害因子を含むインスリン増感剤;PPARγ又はαアゴニスト;インスリン又はインスリンミメティック;スルホニル尿素;α−グルコシダーゼ阻害因子;HMG−CoAレダクターゼ阻害因子、胆汁酸吸収抑制剤、ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、アシル補酵素A:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害因子(ACTA)及び抗酸化薬などのコレステロール低下薬;抗肥満化合物;回腸胆汁酸輸送体阻害因子;非ステロイド系抗炎症薬、糖質コルチコイド、アズルフィジン、シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害因子などの抗炎症薬;血小板の活性化及び凝集を阻害することを意図する薬剤;利尿薬、カルシウムチャネル遮断薬、β−アドレナリン遮断薬、レニン阻害因子、α−アドレナリンアンタゴニスト、交感神経遮断薬、アトリオペプチド阻害因子、セロトニン阻害因子、A2−アデノシン受容体アゴニスト、カリウムチャネルアゴニスト、レセルピン、ミノキシジル、グアネチジン、塩酸ヒドララジン及びニトロプルシドナトリウムを含む抗高血圧薬を包含する。
【0035】
二元PPARα/γアゴニスト及びA−2アンタゴニストの組合せと併用する好ましい付加薬剤は、HMG CoAレダクターゼ阻害因子、好ましくはシンバスタチンである。
【0036】
2型糖尿病及び高血圧を治療する、予防する又は発症の可能性を最小限に抑えるのに使用するためのもう1つの好ましい付加化合物は、腸からのコレステロールの吸収又は再吸収を阻止するエゼチミブである。
【0037】
PPARα/γアゴニスト及びA−2アンタゴニストから成る医薬組成物と1つ以上の前記薬剤の組合せは、高血圧症、及び2型糖尿病、代謝症候群、及び脂質代謝異常、血小板凝集、耐糖能異常及び高血糖症などの前糖尿病状態に関連する様々な疾患の治療のために特に有用である。
【0038】
PPARアゴニストは、PPARI及びPPARK受容体のアゴニストとしての化合物の相対的効力に基づいて、I、K又はα/γ二元アゴニストのいずれかに分類される。PPARγアゴニストは、強力なPPARγアゴニストであるロシグリタゾンのヒトPPARγへの最大作用の50%以上を示す化合物である。PPARαアゴニストは、強力なPPARαアゴニストであるフェノフィブレートのヒトPPARαへの最大作用の50%以上を示す化合物である。濃度効力は、無細胞コアクチベーター結合アッセイを使用して測定することができる。
【0039】
PPARα/γ二元アゴニストは、hPPARγの活性化のための半最大濃度効力(EC50)とhPPARαの活性化のための半最大濃度効力(EC50)の差が30倍未満である、有意のPPARα及びPPARγの両方のアゴニズムを示す化合物である。
【0040】
hPPARγの活性化のための半最大濃度効力(half−maximal concentration potency)(EC50)とhPPARαの活性化のための半最大濃度効力(EC50)の差が30倍未満である、前記で定義したような有意のPPARα及び/又はPPARγアゴニズムを示す化合物は、選択的PPARα又は選択的PPARγアゴニストと定義される。
【0041】
例えば、ヒトPPARγへのロシグリタゾンの最大作用の50%以上を示し、それ故有意のPPARγアゴニズムを発揮する化合物であって、hPPARγの活性化のための半最大濃度効力(EC50)がhPPARαの活性化のためのその半最大濃度効力(EC50)よりも30倍以上高い化合物は、選択的PPARγアゴニストと定義される。ロシグリタゾンはそのような化合物の一例である。同様に、ヒトPPARαへのフェノフィブレートの最大作用の50%以上を示し、それ故有意のPPARαアゴニズムを発揮する化合物であって、hPPARαの活性化のための半最大濃度効力(EC50)がhPPARγの活性化のためのその半最大濃度効力(EC50)よりも30倍以上高い化合物は、選択的PPARαアゴニストと定義される。フェノフィブレートはそのような化合物の一例である。
【0042】
本発明における使用のための好ましいPPARα/γ二元アゴニストは、hPPARγの活性化のための半最大濃度効力(EC50)とhPPARαの活性化のための半最大濃度効力(EC50)の差が20倍未満である、前記で定義したような、有意のPPARα及びPPARγの両方のアゴニズムを示す化合物である。
【0043】
本発明における使用のためのより好ましい群のPPARα/γ二元アゴニストは、hPPARγの活性化のための半最大濃度効力(EC50)とhPPARαの活性化のための半最大濃度効力(EC50)の差が10倍未満である、前記で定義したような、有意のPPARα及びPPARγの両方のアゴニズムを示す化合物である。これらは、「平衡型PPARα/γ二元アゴニスト」である。
【0044】
PPARKアゴニストは一般にインスリン感受性を改善し、それによって2型糖尿病の症状である高血糖を低下させる。PPARIアゴニストは、トリグリセリドを低下させ、LDLを低下させ、及び潜在的にHDLを上昇させることによって脂質代謝を改善する。PPARI/K二元アゴニストは、それ故、2型糖尿病に関連する高血糖と脂質代謝異常を制御又は改善しうる。本発明における抗高血圧薬との併用療法のための好ましいPPARI/K二元アゴニストは、前記で定義したような「平衡型(balanced)」PPARI/K二元アゴニスト」である。これらは、PPARIとPPARK受容体サブタイプの両方のアゴニズムに関してほぼ等しい効力を有する(10以内の係数)。
【0045】
PPARα/γ二元アゴニストの例は、米国特許第6,030,990号などの前記で引用した杏林特許の中で開示され、特許請求されている。二元PPARα/γアゴニズム活性を有する他の既知の化合物は表1に例示されており、次のものを含む:(S)−2−エトキシ−3−[4−[2−(4−メチルスルホニルオキシフェニル)エトキシ]フェニル]−プロパン酸(AZ−242)などのジヒドロシンナメート誘導体;2−(4−[2−(3−[2,4−ジフルオロフェニル]−1−ヘプチルウレイド)エチル]フェノキシ)−2−メチル酪酸(GW−2331)などの一部のフィブレート;Takahashiら、FEBS Letters 514,315(2002)によって記述されているファルネソールなどのイソプレノール;N−[(1Z)−1−メチル−3−オキソ−3−フェニル−1−プロペニル]−O−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エチル]−L−チロシン(GW−409544)などのL−チロシン誘導体;(−/+)3−[4−[2−(フェノキサジン−10−イル)エトキシ]フェニル]−2−エトキシプロパン酸(DRF−2725)及びLiuら、Biorg.And Med.Chem.Letters,11,2385(2001)によって述べられているものなどのフェニルプロパン酸誘導体;LY4−65608及びSaubergら、J.Med.Chem.45,789−804(2002)によって述べられているものなどのプロピオン酸誘導体;4−[4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エトキシ]ベンジル]−3,5−イソキサゾリジンジオン(JTT−501)及びJTT−601のようなそれらの塩などの一部のイソキサゾリジンジオン誘導体;(+)−5−[[6−(2−フルオルベンジル)−オキシ−2−ナフィ]メチル]−2,4−チアゾリジンジオン(MCC−555)及びFulkulら、Diabetes,49,759(2000)によって記述されている(+/−)−5−[(7−ベンジルオキソ−3−キノリル)メチル]−2,4−チアゾリジンジオン(NC−2100)などの二元PPARα/γグリタゾン;DRF−544158などのアルカノエート誘導体;BMS−298585などのオキソベンジルグリシン誘導体;及びそれらに加えて、表1に列挙されているカルボン酸、マロン酸及び三環式化合物。
【0046】
本発明における使用のための好ましい化合物は、hPPARγの活性化のための半最大濃度効力(EC50)とhPPARαの活性化のための半最大濃度効力(EC50)の差が30倍未満である、前述したような有意のPPARα及びPPARγの両方のアゴニズムを示す二元PPARα/γアゴニストである。
【0047】
本発明における使用のためのより好ましい化合物は、hPPARγの活性化のための半最大濃度効力(EC50)とhPPARαの活性化のための半最大濃度効力(EC50)の差が20倍未満である、前述したような有意のPPARα及びPPARγの両方のアゴニズムを示す二元PPARα/γアゴニストである。
【0048】
本発明における使用のためのさらに一層好ましい化合物は、hPPARγの活性化のための半最大濃度効力(EC50)とhPPARαの活性化のための半最大濃度効力(EC50)の差が10倍未満である、前述したような有意のPPARα及びPPARγの両方のアゴニズムを示す化合物である平衡型二元PPARα/γアゴニストであり、米国特許第6,001,862号及び同第6,030,990号に開示されているN−ベンジルジオキソチアゾリジルベンズアミド誘導体を含む。
【0049】
本発明のための最も好ましい平衡型PPARα/γアゴニストは、米国特許第6,030,990号の実施例39に開示されている。この化合物は、KRP−297、又は5−[(2,4−ジオキソ−5−チアゾリジニル)メチル]−2−メトキシ−N−[[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ベンズアミドとして知られる。その構造を以下に示す:
【0050】
【化1】

【0051】
本発明のPPARα/γ二元アゴニストは、A−2アンタゴニスト類から成る群より選択される抗高血圧薬と組み合わせて使用する。A−2アンタゴニストはレニン−アンギオテンシン系のシグナル伝達を妨げて、血管拡張を生じさせ、それによって血圧低下をもたらす。A−2アンタゴニストとPPARI/K二元アゴニストの組合せは、血圧を低下させる作用、及び前糖尿病患者、糖尿病患者及び代謝症候群に罹患している患者において認められる劣悪な脂質プロフィールと高血糖を改善する作用を有する。この組合せはまた、アテローム性動脈硬化症、及び脂質代謝異常及び高血圧を伴う他の疾患の治療においても治療上の利点を有する。
【0052】
A−2アンタゴニストの例は、米国特許第5,138,069号において開示され、特許請求されている。本発明における使用のための好ましいA−2アンタゴニストは、アビテサルタン、ベンジルロサルタン、エリサルタン、エンブサルタン、エノルタソサルタン、フォンサルタン、フォラサルタン、グリシルロサルタン、ミルファサルタン、オルメサルタン、オポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、サプリサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、ゾラサルタン等のような「サルタン」である。
【0053】
本発明における使用のためのより好ましいA−2アンタゴニストは、米国特許第5,138,069号に開示されている非ペプチド置換イミダゾール誘導体である。
【0054】
本発明のための最も好ましいA−2アンタゴニストは、米国特許第5,266,583号に開示されている置換イミダゾール誘導体である。この化合物は一般に、ロサルタン(Cozaar(登録商標))、又は一カリウム塩の形態で提供される2−ブチル−4−クロロ−1−[p−(o−1H−テトラゾール−5−イルフェニル)−ベンジル]イミダゾール−5−メタノールとして知られる。その構造を以下に示す:
【0055】
【化2】

【0056】
前記組合せの使用は、高血圧症及び高血糖症及び/又はインスリン抵抗性及び/又は高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、高脂血症、アテローム性動脈硬化症及び脂質代謝異常などの脂質疾患を有する患者にとって有益である。
【0057】
「併用」療法又は薬剤の「組合せ」という用語は、2つ以上の有効成分をほぼ同時に、又は両方の薬剤が同日の一定時点に治療的又は準治療的であるのに十分なレベルで患者の体内に存在する十分に近接した時点で、患者に投与することを意味する。併用療法はまた、2つの薬剤を同時に又は同日中の異なる時点で投与するときにも起こりうる。それ故に併用療法は、2つの活性薬剤を異なる重複スケジュールで投与する治療法も包含する。実施可能であるときには、2つの薬剤を含有する医薬組成物が好ましい。
【0058】
「医薬組成物」という用語は、有効成分及び担体、ならびに前記成分のいずれかの組合せ、複合体化又は凝集から直接又は間接的に生じる何らかの生成物を包含する。従って、本発明の医薬組成物は、本組合せの化合物と医薬適合性の担体を混合することによって生成される組成物を包含する。
【0059】
(光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異生体)
本発明の組合せにおける有効成分は、1つ以上の不斉中心を含みうる。個々の有効成分は、それ故、ラセミ混合物、単一鏡像異性体、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとして生じうる。本発明はそのような異性体形態のすべての組合せを包含する。
【0060】
ここで述べる化合物の一部は、ケトン及びエノールなどの互変異生体として存在しうる。個々の互変異生体及びそれらの混合物は、ここで述べる化合物と共に包含される。
【0061】
(塩)
「医薬適合性の塩」という用語は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む医薬適合性の非毒性塩基又は酸から生成される塩を指す。ロサルタンはカリウム塩として市販されているので、代替的な塩に基づく形態を提供し、使用することが可能であり、本発明の範囲内である。無機塩基から誘導される塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛塩等を含む。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩が特に好ましい。固体形態の塩は、2個以上の結晶構造として存在してもよく、また水和物の形態であってもよい。医薬適合性の有機非毒性塩基から誘導される塩は、第一級、第二級及び第三級アミン、天然に生じる置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、及びアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等のような塩基性イオン交換樹脂の塩を含む。
【0062】
本発明において使用する化合物が塩基性であるとき、塩は、無機及び有機酸を含む医薬適合性の有機非毒性酸から生成しうる。そのような酸は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンホルスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、塩酸、臭化水素酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモイン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等を含む。特に好ましいのは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸である。ここで使用するとき、ここで述べる組合せにおいて使用する化合物への言及はその医薬適合性の塩も包含することが意図されていることは了解される。
【0063】
(投与及び用量範囲)
本発明において使用する化合物の有効用量をヒト患者に提供するために、いかなる適切な投与経路も使用しうる。例えば、経口、直腸、局所、非経口、眼、肺、鼻等が使用しうる。投与形態は、錠剤、トローチ、分散、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エーロゾル等を含む。好ましくは、投与方法は経口である。
【0064】
用いる有効用量は、使用する個々の化合物、投与様式、治療する状態及び治療する状態の重症度によって異なりうる。そのような用量は当業者によって容易に確認されうる。
【0065】
糖尿病及び/又は高血糖症又は高トリグリセリド血症又はここで述べる化合物が適用される他の疾患を治療する場合、本発明の化合物を約0.1mgから約100mg/kg体重の通常1日用量で、好ましくは1日1回用量として又は1日2から6回の分割用量で、又は持続放出形態として投与するとき、一般に満足しうる結果が得られる。大部分の患者に関しては、これらの薬剤についての総1日用量は、約0.1mgから約1000mg、好ましくは約1mgから約50mgの範囲である。70kgの成人の場合は、各々の化合物の総1日用量は一般に約1mgから約350mgである。この用量レジメンは、使用する特定化合物を考慮に入れて、患者のために最適治療応答を与えるよう治療する医師によって調節されうる。
【0066】
KRP−297及びロサルタンの1日用量の好ましい例は、例えば:KRP−297については、1mg、3mg、5mg、10mg又は20mg;及びロサルタン(Cozaar(登録商標))については、1mg、5mg、10mg、20mg、50mg又は100mgを含む。
【0067】
(医薬組成物)
ここで述べる医薬組成物は、前述した化合物及び医薬適合性の担体を含有する。前記組成物は、典型的には経口、直腸、局所、非経口(皮下、筋肉内及び静脈内を含む)、眼、又は肺(鼻又は口腔吸入)投与に適する。所与の症例における最も適切な経路は、治療する状態の性質と重症度及び有効成分の性質に依存する。それらは、単位投与形態として好都合に提供することができ、製薬技術における周知の方法によって製剤しうる。
【0068】
本発明の化合物は、従来の製薬混合手法に従って緊密な混合物として医薬担体と組み合わせることができ、又は担体内で共に組み合わせることができる。担体は、例えば経口又は非経口(静脈内を含む)投与のための所望製剤形態に依存して極めて多様な形態をとりうる。経口投与形態のための組成物を製造するとき、油性液体製剤、例えば懸濁液、エリキシル及び溶液の場合は、例えば水、グリコール、油、アルコール、香味料、防腐剤、着色料等のような通常の製薬媒質のいずれか;あるいは、例えば粉末、硬及び軟カプセル及び錠剤などの経口固形製剤の場合は、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等のような担体が使用でき、固体経口製剤が液体製剤よりも好ましい。
【0069】
投与の容易さのゆえに、錠剤及びカプセルが最も好都合な経口投与形態である。所望する場合は、錠剤を標準水性又は非水性手法によって被覆しうる。これらの組成物中の活性化合物のパーセンテージは、言うまでもなく、変化させることができ、好都合には重量/重量ベースで投与単位の約1%から約90%でありうる。
【0070】
錠剤、カプセル等はまた、典型的にはその担体物質中に、トラガカント、アカシア、トウモロコシデンプン又はゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;及びスクロース、ラクトース又はサッカリンなどの甘味料を含む。
【0071】
様々な被覆物が含まれうる。例えば、錠剤をシェラック、糖又はその両方で被覆しうる。シロップ又はエリキシルは、甘味料としてスクロース、防腐剤としてメチル及びプロピルパラベン、サクランボ又はオレンジ風味などの染料及び香味料を含みうる。
【0072】
これらの活性化合物の非経口溶液又は懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合して水中で製造しうる。分散液も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及び油中でのそれらの混合物中で製造しうる。通常の保存及び使用条件下では、これらの製剤は、微生物の増殖を予防するための防腐剤を含みうる。
【0073】
注射剤はまた、無菌水溶液又は分散液、及び無菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための無菌粉末を包含する。担体は、例えば水、エタノール、ポリオル(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散媒質でありうる。
【0074】
(第三の治療用化合物との組合せ)
本発明は、場合により、本発明の組合せが有用である疾患又は状態の治療、抑制又は改善において有用と考えられる他の薬剤を含む。そのような他の薬剤は、前述した組合せと同時に又は連続的に投与しうる。また、1つ以上の他の有効成分と組み合わせて使用するとき、本発明の化合物及び前記の他の有効成分は、各々を単独で使用するときよりも低い用量で使用しうると想定される。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の組合せの化合物に加えて、1つ以上の他の有効成分を含有するものを包含する。
【0075】
別個に又は同じ医薬組成物中で、本発明の薬剤の組み合わせと共に投与しうる他の有効成分の例は次のものを含む:
(a)(i)グリタゾン(例えばトログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、ロシグリタゾン等)などの単一PPARγアゴニスト、及び国際公開公報第WO97/27857号、同第97/28115号、同第97/28137号及び同第97/27847号に開示されている化合物、(ii)メトフォルミン及びフェンフォルミンなどのビグアニド、(iii)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害因子、及び(iv)ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害因子、を含むインスリン増感剤;
(b)インスリン又はインスリンミメティック;
(c)トルブタミド及びグリピジドなどのスルホニル尿素;
(d)α−グルコシダーゼ阻害因子(アカルボースなど);
(e)(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害因子(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、リバスタチン、イタバスタチン、ZD−4522及び他のスタチン)、(ii)吸収抑制剤(sequestrant)(コレスチラミン、コレスチポール及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)例えばアバシミブなどのアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害因子、(v)PPARαアゴニスト、及び(vi)プロブコールなどの抗酸化薬、などのコレステロール低下薬;
(f)国際公開公報第WO97/28149号に開示されているもののようなPPARδアゴニスト;
(g)フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、マジンドール、オルリスタット、リパーゼ阻害因子、神経ペプチドY5阻害因子、メラノコルチン−4受容体アゴニスト、甲状腺受容体β薬、食欲抑制薬、CCKAアゴニスト、レプチン阻害因子及びβアドレナリン作用性受容体アゴニスト;
(h)回腸胆汁酸輸送体阻害因子;及び
(i)アスピリン、非ステロイド系抗炎症薬、糖質コルチコイド、アズルフィジン及びシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害因子などの炎症状態における使用を意図する薬剤;及び
(j)クリオピドグレル及びチクロピジンなどの血小板の活性化及び凝集を阻害することを意図する薬剤;及び
(k)ACE阻害因子;
(l)アミロリド、クロロチアジド、ベンズチアジド、チクリナフェン、アセタゾールアミド、シクロチアジド、トリクロロメチアジド、シクロペンチアジド、ヒドロクロロチアジド、メチクロチアジド、ヒドロクロロチアジド誘導体、ペンフルチアジド、エチアジド、ヒドロフルメチアジド、ポリチアジド、クロフェナミド、クロルタリドン、シクロチアジド、フルメチアジド誘導体、メチクラン、トリパミド、メトラゾン、インダパミド、キネタゾン、フロセミド、ブメタニド、メフルシド、アゾセミド、エタクリン酸、エタクリン酸ナトリウム、ピレタニド、カンレノ酸カリウム、キネタゾン、トリアムテレン、メチルクロチアジド、アトリオペプチン及びスピロノラクトンなどの利尿薬;
(m)塩酸ジルチアゼム、塩酸テロリジン、塩酸ニカルジピン、塩酸バルニジピン、塩酸フルナリジン、塩酸ベラパミル、塩酸マニジピン、シンナリジン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、フェロジピン、ニルジピン、ニモジピン、ペニジピン、ベニジピン、アムロジピン、イスラジピン及びベラパミルなどのカルシウムチャネル遮断薬;及び
(n)チモロール、アテノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ナドロール及びピンドロールなどのβアドレナリン遮断薬;
(o)(i)A−69729、FK906及びFK744などのレニン阻害因子;及び
(ii)プラゾシン、ドキサゾシン及びテラゾシンなどのαアドレナリンアンタゴニスト;及び
(iii)メチルドーパ、クロニジン及びグアナベンズなどの交感神経遮断薬;及び
(iv)UK−79300などのアトリオペプチド阻害因子(単独又はANPと共に);及び
(v)ケタンセリンなどのセロトニンアンタゴニスト;及び
(vi)CGS22492CなどのA2−アデノシン受容体アゴニスト;及び
(vii)ピナシジル及びクロマカリムなどのカリウムチャネルアゴニスト;及び
(viii)レセルピン、ミノキシジル、グアネチジン、塩酸ヒドララジン及びニトロプルシドナトリウム
から選択される抗高血圧薬。
【0076】
二元PPARα及びγアゴニスト、特に平衡型PPARアゴニストは、高血圧及び2型糖尿病、代謝症候群又は前糖尿病状態の治療のためのA−2アンタゴニストとの組合せでは開示されていなかった。これまでの組合せは、2型糖尿病のための部分的治療しか提供せず、本発明とは異なって、脂質代謝を調節するために付加的な化合物を含むことを必要する。
【0077】
最近の試験は、二元PPARアゴニズムがI型アンギオテンシンII受容体の転写低下をもたらすことを指示しているので、A−2アンタゴニストとPPARアゴニストの組合せは、他の薬剤の組合せでは示されない相乗作用を生じると期待される。Sugawaraら、Endocrinology.142,3125−34(2001)。それ故、二元PPARアゴニスト/A−2アンタゴニストの組合せは、血液中インスリン及び血液中脂質レベルを調節することに加えて、転写及び機能の両レベルでのI型アンギオテンシンII受容体の修飾を介して高血圧を低下させることができる。
【0078】
最後に、現在の多くの方法は、高血圧及び2型糖尿病、代謝症候群又は前糖尿病状態の特定罹患状態、すなわち脂質代謝異常及び/又はインスリン抵抗性を伴う高血圧症を治療せず、むしろアテローム性動脈硬化症、腎症、脳血管及び抹消循環機能不全、肥満、高血糖症又はケトアシドーシスなどの疾患を対象とする。それ故、これらの発明は、糖尿病患者の20−60%を占め、糖尿病による死亡の80%以上に寄与する、極めて一般的な共存症である2型糖尿病に関連する高血圧を治療するという緊急の必要事項を特定していない。Arauz−Pachecoら、25 Diabetes Care 134−147(2002)。本発明は、平衡型二元PPARα/γアゴニストのインスリン及び脂質改善作用をA−2アンタゴニストの抗高血圧作用と組み合わせることにより、2型糖尿病、代謝症候群又は前糖尿病状態を伴う高血圧という特定且つ一般的な事態を治療するための、求められている極めて効率的な方法を特定する。
【0079】
(インビボアッセイ)
雄性db/dbマウス(10−11週齢C57B1/KFJ、Jackson Labs,Bar Harbor,ME)を1ケージ当たり5匹ずつ収容し、粉砕したPurinaげっ歯類飼料と水を自由に摂取させた。動物及びその飼料を2日ごとに計量し、賦形剤(0.5%カルボキシメチルセルロース)±指示用量の被験化合物を強制栄養によって毎日投与した。薬剤懸濁液は毎日調製した。試験期間中3−5日間隔で尾採血によって得た血液から血漿中グルコース及びトリグリセリド濃度を測定した。グルコース及びトリグリセリドの測定は、生理食塩水で1:6(v/v)希釈したヘパリン添加血漿を使用してBoehringer Mannheim Hitachi 911自動分析器(Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)で実施した。除脂肪動物は、同じように飼育した年齢を適合させた異型接合マウスであった。
【0080】
体重約150gの雄性Golden Syrianハムスターを使用して被験化合物の脂質調節作用を測定する。ハムスターを箱に収容し(1箱当たり5匹)、標準げっ歯類飼料を与え、水は自由に摂取させる。化合物を0.5%メチルセルロースに懸濁し、9日間毎日ハムスターに強制栄養として投与する(各群当たり10匹のハムスター)。10日目の朝に、ハムスターを二酸化炭素で安楽死させ、心臓穿刺によって血液試料を得る。総コレステロール及びトリグリセリドの血清中レベルを測定する。
【0081】
平均体重約15kgの成熟雄性ビーグル犬を使用して被験化合物の脂質調節作用を測定する。イヌを個体別に収容し、コレステロール不含飼料を与え、水は自由に摂取させる。実験の開始前に、頸静脈から週に1回試料を採取し、血清中コレステロールレベルを測定する。血清中コレステロールへの化合物の作用を調べるために、化合物を0.5%メチルセルロースに懸濁し、2週間毎日イヌに強制栄養として投与する(各群当たり5匹のイヌ)。投与期間中及び投与期間後に血液試料を採取し、総コレステロール及びトリグリセリドの血清中レベルを測定する。
【0082】
(無細胞コアクチベーター結合アッセイ)
このアッセイは、Creb結合タンパク質(CBP)又はステロイド受容体コアクチベーター(SRC−1)などのコアクチベーター分子である(又はそれから誘導される)タンパク質(又はタンパク質の部分)とPPARγ(又はその単離されたリガンド結合ドメイン)又はPPARα(又はその単離されたリガンド結合ドメイン)との結合を促進する化合物の能力を測定し、PPARα及びPPARγの両方のアゴニストの活性を有する化合物を同定するために使用できる。このアッセイは、Zhouら、Nuclear receptors have distinct afiinities for co−activators:characterization by fluorescence resonance energy tranfer.Mol Endocrinol,12,1594−1604(1998)に述べられている。
【0083】
(ヒトPPARα及びPPARγ結合アッセイ)
細胞ベースのトランス活性化アッセイ又は無細胞コアクチベーター結合アッセイにおいて化合物のアゴニスト活性を測定することの代替法は、化合物がPPARα及びPPARγの両方に結合することによってリガンドとして機能しうるかどうかを判定することである。hPPARγ対PPARαへの放射性リガンド結合の置換に関する半最大濃度効力(IC50又はKI)の差が30倍未満、好ましくは10倍未満である化合物は、二元リガンドとみなすことができる。これらのアッセイのために、以下で述べる方法が使用できる(Bergerら、Novel peroxisome proliferator−activated receptorγ(PPARγ)及びPPARδ ligands produce distinct biological effects,J Biol Chem,274,6718−6725(1999))にも記述されている)。
【0084】
ヒトPPARK及びヒトPPARIを大腸菌においてGST−融合タンパク質として発現させた。PPARKについてのヒト完全長cDNAをpGEX−2T発現ベクター(Pharmacia)にサブクローニングした。PPARIについてのヒト完全長cDNAをpGEX−KT発現ベクター(Pharmacia)にサブクローニングした。それぞれのプラスミドを含む大腸菌を増殖させ、誘導して、遠心分離によって収集した。再懸濁したペレットをフレンチプレスで破砕し、デブリを12,000Xgで遠心分離して除去した。組換えヒトPPAR受容体をグルタチオンセファロースでのアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。カラムに適用して1回洗った後、受容体をグルタチオンで溶出した。グリセロール(10%)を加えて受容体を安定化し、アリコートを−80℃で保存した。
【0085】
各々のアッセイに関して、0.1%脱脂乾燥乳及びPPARγ受容体に結合する10nM[]L−746,962(21Ci/mmole)、±被験化合物を加えたTEGM(10mMトリス、pH7.2、1mM EDTA、10%グリセロール、7μL/100ml β−メルカプトエタノール、10mMモリブデン酸ナトリウム、1mMジチオトレイトール、5μg/mLアプロチニン、2μg/mLロイペプチン、2μg/mLベンズアミジン及び0.5mM PMSF)中で受容体のアリコートをインキュベートした。アッセイ反応物を最終容量150μL中4℃で約16時間インキュベートした。100μLデキストラン/ゼラチン被覆木炭と共に氷上で10分間インキュベートして非結合リガンドを除去した。4℃で10分間、3000rpmで遠心分離した後、上清分画50μLをTopcountで計数した。このアッセイでは、L−746,962についてのKは≒1nMであった。
【0086】
ヒトPPARα結合アッセイでは、0.1%脱脂乾燥乳及びPPARα受容体に結合する5.0nM[]L−783483、±被験化合物を加えたTEGM(10mMトリス、pH7.2、1mM EDTA、10%グリセロール、7μL/100ml β−メルカプトエタノール、10mMモリブデン酸ナトリウム、1mMジチオトレイトール、5μg/mLアプロチニン、2μg/mLロイペプチン、2μg/mLベンズアミド及び0.5mM PMSF)中で受容体のアリコートをインキュベートした。アッセイ反応物を最終容量150μL中4℃で約16時間インキュベートした。100μLデキストラン/ゼラチン被覆木炭と共に氷上で約10分間インキュベートして非結合リガンドを除去した。4℃で10分間、3000rpmで遠心分離した後、上清分画50μLをTopcountで計数した。
【0087】
(細胞増殖アッセイ)
このアッセイは、AQueous細胞増殖アッセイキット(Promega,Madison,WI)を使用して、MTSテトラゾリウムをホルマザンに変換する細胞の能力を測定する。この変換はおそらく、代謝的に活性な細胞中のデヒドロゲナーゼ酵素によって産生されるNADPH又はNADHによって実施される。前記アッセイは、Shuら、Biochem Biophys Res Comm,267,345−349(2000)に述べられている。
【実施例】
【0088】
以下の実施例は本発明を例示するために提供するものであり、いかなる意味においても本発明を限定すると解釈されるべきではない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0089】
1.カプセル
(1)KRP−297 3−5mg
(2)ロサルタン(Cozaar(登録商標)) 50mg
(3)ラクトース 19mg
(4)微結晶セルロース 70mg
(5)ステアリン酸マグネシウム 10mg
1カプセル 150mg
(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)の1/2を混合し、次に顆粒化した。その顆粒に(5)の残りを加え、全体をゼラチンカプセルに充填した。
【0090】
2.錠剤
(1)KRP−297 3−5mg
(2)ロサルタン(Cozaar(登録商標)) 50mg
(3)ラクトース 46.4mg
(4)トウモロコシデンプン 20mg
(5)ポリエチレングリコール 2.6mg
(6)ヒドロキシプロピルセルロース 4mg
(7)カルメロースカルシウム 5.6mg
(8)ステアリン酸マグネシウム 0.4mg
1錠 130mg
(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)の2/3、(7)の2/3及び(8)の1/2を混合し、次に顆粒化した。その顆粒に(6)、(7)及び(8)の残りを加え、その後混合物を圧縮成形に供した。
【0091】
3.注射剤
(1)KRP−297 3−5mg
(2)ロサルタン(Cozaar(登録商標)) 50mg
(3)イノシトール 59mg
(4)ベンジルアルコール 20mg
1アンプル 130mg
(1)、(2)、(3)及び(4)を注射用蒸留水に溶解して、全体容量2mlとし、それをアンプルに充填した。全体の過程を無菌条件下で実施した。
【0092】
特定の好ましい実施態様をここで詳細に説明したが、数多くの代替的な実施態様が本発明の範囲内に含まれると想定される。ここで提示するすべての文献は本明細書中に参考として援用されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高血圧及び2型糖尿病、代謝症候群又は前糖尿病状態を、そのような治療を必要とする哺乳動物患者において治療する方法であって、二元ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α/γ(PPARα/γ)アゴニスト及びアンギオテンシンIIのI型受容体(A−2)アンタゴニストを、高血圧及び2型糖尿病、代謝症候群又は前糖尿病状態を治療するのに有効な量で患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記二元PPARα/γアゴニストが平衡型二元PsPARα/γアゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二元PPARα/γアゴニストが、その有効成分の1つ以上の医薬適合性の塩を含む、ジヒドロシンナメート及びシンナメート誘導体、L−チロシン誘導体、フェニルプロパン酸及びプロパン酸誘導体、イソオキサゾリジンジオン及びオキサゾリジンジオン誘導体、チアゾリジンジオン、三環式化合物、カルボン酸及びマロン酸誘導体、オキソベンジルグリシン誘導体、フィブレート、キノリン誘導体、アルカノエート誘導体、フェニルアルキルオキシフェニル誘導体、ベンズアミド誘導体及びイソプレノールから成る群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記二元PPARα/γアゴニストが、KRP−297又はその医薬適合性の塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
A−2アンタゴニストが、ロサルタン、アビテサルタン、ベンジルロサルタン、エリサルタン、エンブサルタン、エノルタソサルタン、フォンサルタン、フォラサルタン、グリシルロサルタン、ミルファサルタン、オルメサルタン、オポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、サプリサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン及びゾラサルタン又はその医薬適合性の塩又は溶媒和物から成る群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記A−2アンタゴニストが、ロサルタン又はその医薬適合性の塩に基づく代替物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ACE阻害因子;単一PPARγアゴニスト、タンパク質チロシンホスファターゼ−1B阻害因子、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害因子を含むインスリン増感剤;インスリン又はインスリンミメティック;スルホニル尿素;α−グルコシダーゼ阻害因子;単一PPARαアゴニスト、胆汁酸吸収抑制剤(bile acid sequestrants)、ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、アシル補酵素A:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害因子及び抗酸化薬から選択されるコレステロール低下薬;PPARδアゴニスト;抗肥満化合物;回腸胆汁酸輸送体阻害因子;アスピリン、非ステロイド系抗炎症薬、糖質コルチコイド、アズルフィジン及びシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害因子から選択される抗炎症薬;血小板の活性化及び凝集を阻害することを意図する薬剤;カルシウムチャネル遮断薬、β−アドレナリン遮断薬、レニン阻害因子、α−アドレナリンアンタゴニスト、交感神経遮断薬、アトリオペプチド阻害因子、セロトニン阻害因子、A2−アデノシン受容体アゴニスト、カリウムチャネルアゴニスト、レセルピン、ミノキシジル、グアネチジン、塩酸ヒドララジン及びニトロプルシドナトリウムから選択される抗高血圧薬、から成る群より選択される化合物を患者に投与することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害因子がシンバスタチン又はその医薬適合性の塩又は溶媒和物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記投与化合物がエゼチミブ又はその医薬適合性の塩又は溶媒和物である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
高血圧及び2型糖尿病、代謝症候群又は前糖尿病状態、及び脂質代謝異常、高脂血症及び高コレステロール血症から選択される脂質疾患を治療する、遅延させる又は改善する方法であって、そのような治療を必要とする患者において有効な量のKRP−297及びロサルタンを投与することを含む、高血圧及び2型糖尿病、代謝症候群又は前糖尿病状態を治療、遅延又は改善し、及びさらに前記脂質疾患を治療、遅延又は改善する方法。
【請求項11】
医薬適合性の担体と組み合わせて二元PPARα/γアゴニスト及びアンギオテンシンIIのI型受容体アンタゴニストを含有する医薬組成物。
【請求項12】
前記二元PPARα/γアゴニストが平衡型二元PPARα/γアゴニストである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記アンギオテンシンIIのI型受容体アンタゴニストが、ロサルタン、アビテサルタン、ベンジルロサルタン、エリサルタン、エンブサルタン、エノルタソサルタン、フォンサルタン、フォラサルタン、グリシルロサルタン、ミルファサルタン、オルメサルタン、オポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、サプリサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン及びゾラサルタン、及びその医薬適合性の塩又は溶媒和物から成る群より選択される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記アンギオテンシンIIのI型受容体アンタゴニストがロサルタンである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記二元PPARα/γアゴニストが、その医薬適合性の塩又は溶媒和物を含む、ジヒドロシンナメート及びシンナメート誘導体、L−チロシン誘導体、フェニルプロパン酸及びプロパン酸誘導体、イソオキサゾリジンジオン及びオキサゾリジンジオン誘導体、チアゾリジンジオン、三環式誘導体、カルボン酸及びマロン酸誘導体、オキソベンジルグリシン誘導体、フィブレート、キノリン誘導体、アルカノエート誘導体、フェニルアルキルオキシフェニル誘導体、ベンズアミド誘導体及びイソプレノールから成る群より選択される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記二元PPARα/γアゴニストが、KRP−297又はその医薬適合性の塩又は溶媒和物である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
その医薬適合性の塩又は溶媒和物を含む、ACE阻害因子;単一PPARγアゴニスト、タンパク質チロシンホスファターゼ−1B阻害因子及びジペプチジルペプチダーゼIV阻害因子から選択されるインスリン増感剤;インスリン又はインスリンミメティック;スルホニル尿素;α−グルコシダーゼ阻害因子;HMG−CoAレダクターゼ阻害因子、単一PPARαアゴニスト、胆汁酸吸収抑制剤、ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、アシル補酵素A:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害因子及び抗酸化薬から選択されるコレステロール低下薬;PPARδアゴニスト;抗肥満化合物;回腸胆汁酸輸送体阻害因子;アスピリン、非ステロイド系抗炎症薬、糖質コルチコイド、アズルフィジン及びシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害因子などの抗炎症薬;血小板の活性化及び凝集を阻害することを意図する薬剤;単一PPARαアゴニスト、カルシウムチャネル遮断薬、β−アドレナリン遮断薬、レニン阻害因子、α−アドレナリンアンタゴニスト、交感神経遮断薬、アトリオペプチド阻害因子、セロトニン阻害因子、A2−アデノシン受容体アゴニスト、カリウムチャネルアゴニスト、レセルピン、ミノキシジル、グアネチジン、塩酸ヒドララジン及びニトロプルシドナトリウムを含む付加的な抗高血圧薬、から成る群より選択される成員をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害因子が、その医薬適合性の塩又は溶媒和物を含むシンバスタチンである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
エゼチミブ又はその医薬適合性の塩又は溶媒和物をさらに含有する、請求項12に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2006−500378(P2006−500378A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−531003(P2004−531003)
【出願日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/025434
【国際公開番号】WO2004/017896
【国際公開日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】