説明

二層炭素発泡体集電体を含む鉛酸バッテリ

鉛酸バッテリは、本体と、前記本体の内部に配設された少なくとも1つのセルと、を含む。いずれのセルも、少なくとも1つの陽極板と、少なくとも1つの陰極板と、陽極板と陰極板の間の体積中に配設された電解液と、を含む。前記少なくとも1つの陰極板は、基本的には基板上に配設された炭素発泡体の層からなる集電体と、前記集電体上に配設された化学的活性材料と、を本質的に含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には蓄電装置の構成に関し、より詳しくは1つ以上の炭素発泡体集電体(carbon foam current collector)を含む鉛蓄電池の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉛酸バッテリやニッケルバッテリなどの電気化学バッテリは、少なくとも1つの陽極集電体と、少なくとも1つの陰極集電体と、電解液と、を含むことはよく知られている。例えば、鉛酸バッテリにおいては、陽極集電体と陰極集電体はいずれも鉛から構成される。これらの鉛集電体の役割は、充放電過程の間にバッテリ端子に向け、及びバッテリ端子から、電流を流すことである。鉛酸バッテリ内の電気エネルギの貯蔵及び放出は、集電体上に配設された化学的活性材料(chemically active material)に生じる化学反応によって可能とされる。この化学的活性材料で被覆された陽極集電体と陰極集電体は、それぞれ陽極板と陰極板と称される。鉛酸バッテリの耐久性を著しく減縮するものは集電体やバッテリの他の部品の腐食である。
【0003】
鉛酸バッテリの寿命を延長する1つの方法は、バッテリに含まれる部品の腐食抵抗を増加させることである。鉛酸バッテリにおける腐食過程を抑制するためのいくつかの方法が提案されている。炭素は鉛酸バッテリが通常動作する温度では酸化しないため、これらの方法の中には、鉛酸バッテリの有害な腐食の進行を遅らせるか、または、防ぐために種々の形で炭素の使用を取り入れているものがある。例えば、米国特許第5512390号(以下、’390特許と呼ぶ)は、鉛の代わりに黒鉛板から作られた集電体を含む鉛酸バッテリを開示している。黒鉛板は、集電体として機能するのに十分な導電性を有し、鉛より大きな腐食抵抗を有する。したがって、鉛集電体の代わりに黒鉛板を用いることは、鉛酸バッテリの寿命を延ばす。
【0004】
’390特許のバッテリは腐食を低減することによって潜在的に寿命を延ばすが、’390特許の黒鉛板には問題がある。例えば、’390特許に記載の黒鉛板は密度が高く、それぞれが比較的小さな表面積を有する平板部材である。電極板の利用可能な表面積を増大するために一般的には格子状構造に形成された従来の鉛酸バッテリの鉛電極板とは異なり、’390特許の黒鉛板は模様のない滑らかな平板である。鉛酸バッテリにおいて、集電体の表面積の増大はバッテリの固有のエネルギ及び電力を増加させ、それゆえ、バッテリ性能を向上させる。また、集電体の表面積が大きいほど、バッテリの充放電に必要な時間の減少につながる。’390特許の黒鉛板の比較的小さな表面積は、結果的に充電時間の遅い劣性能のバッテリをもたらしている。
【0005】
加えて、’390特許の黒鉛板は、鉛集電体のもつ強靭性が不足している。密度が高い’390特許の黒鉛板は脆く、物理的な衝撃や振動を受けると破砕しやすい。そのような物理的な衝撃や振動は、例えば車両での使用の際には普通に生じる。黒鉛板の破砕は、黒鉛板の通電能力の低下を招く。それゆえ、腐食に対する抵抗力の増大をもたらすにしても、’390特許の黒鉛板の脆い性質は、実際には、通常の非炭素系材料を使用する場合よりもバッテリの寿命を短縮させる結果となっている。
【0006】
本発明は、従来技術に存在する問題や不都合の1つ以上を克服することを目的とする。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一実施形態は鉛酸バッテリを含む。この鉛酸バッテリは、本体と本体内部に配設された少なくとも1つのセルを含む。上記少なくとも1つのセルは、少なくとも1つの陽極板と少なくとも1つの陰極板を含む。電解液は陽極板と陰極板の間の体積中に配設される。上記少なくとも1つの陰極板は、基板上に配設された本質的に炭素発泡体の層からなる集電体と、集電体上に配設された化学的活性材料を含む。
【0008】
本発明のもう1つの実施形態は、鉛酸バッテリを含む。この鉛酸バッテリは、本体と本体内部に配設された少なくとも1つのセルを含む。上記少なくとも1つのセルは、少なくとも1つの陽極板と少なくとも1つの陰極板を含む。電解液は陽極板と陰極板の間の体積中に配設される。上記少なくとも1つの陽極板は、基板上に配設された本質的に炭素発泡体の層からなる集電体と、集電体上に配設された化学的活性材料を含む。
【0009】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、本体を含む鉛酸バッテリを含む。少なくとも1つのセルは、本体内部に配設され、少なくとも1つの陽極板と少なくとも1つの陰極板を含む。約1重量%から約8重量%のシリカ粒子を含み平均粒径が約1ミクロン未満のシリカゲル電解液が、陽極板と陰極板の間の体積中に配設される。上記少なくとも1つの陰極板は、鉛格子基板上に配設された本質的に炭素発泡体の層からなる集電体と、集電体上に配設された化学的活性材料を含む。上記少なくとも1つの陽極板は鉛格子集電体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の典型的な実施形態におけるバッテリの断面図である。
【図2】本発明の典型的な実施形態における集電体内に含まれ得る炭素発泡体の多孔質構造の拡大図である。
【図3】A〜Cは本発明の典型的な実施形態における基板上に配設された炭素発泡体を含む集電体の図を提供する。
【図4】本発明の他の典型的な実施形態における基板上に配設された炭素発泡体を含む集電体の図を提供する。
【図5】Aは本発明の典型的な実施形態における鉛格子集電体の平面図を提供し、Bは本発明の典型的な実施形態における鉛格子集電体の斜視図を提供する。
【図6】Aは本発明の典型的な実施形態における鉛格子集電体の平面図を提供し、Bは本発明の典型的な実施形態における鉛格子集電体の斜視図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の例示的な実施形態によるバッテリ10を示す。バッテリ10は、本体11と本体11の外部端子12を含む。少なくとも1つのセル13が本体11内部に配設される。セル13は少なくとも1つだけは必要であるが、複数のセルを直列または並列に接続して、バッテリ10の所望の総電位を提供することができる。
【0012】
各セル13は交互に配設された陽極板と陰極板とからなり、電解液は陽極板と陰極板の間の体積中に配設される。加えて、電解液は、陽極板と陰極板に含まれる材料内の気孔の一部、もしくは全部を塞ぐことができる。一実施形態では、電解液には、陽極板と陰極板が浸される硫酸水溶液を含む。この電解液の組成は、個々のバッテリの性質に応じて選ぶことができる。例えば、鉛酸バッテリにおいて、電解液は硫酸と蒸留水を含むことができる。しかし、本願で開示されたバッテリの電解液を形成するために他の酸が使用されてもよい。
【0013】
他の実施形態によれば、電解液はゲルを含むことができる。例えば、ゲル電解液はシリカゲルを含むことができる。シリカゲルを用意するために、一次粒径が約1ミクロン未満のシリカ粒子を上述の水性電解液に加えることができる。ある実施形態では、硫酸と蒸留水の溶液にシリカ粒子を約1重量%から約8重量%加えてゲル電解液を形成することができる。このゲル電解液を、陽極板と陰極板の間、またはセル13のプレートの間の体積を少なくとも一部満たすように、バッテリ10に加えることができる。
【0014】
それぞれのセル13の陽極板と陰極板は、化学的活性材料により包まれた、または覆われた集電体を含むことができる。バッテリの集電体上に配設された化学的活性材料内での化学反応は、充放電を可能とする。集電体の材料ではなく、この化学活性材料の組成により、特定の集電体が陽極板として機能するか陰極板として機能するかが決まる。
【0015】
また、化学的活性材料の組成はバッテリ10の化学的性質によって決まる。例えば、鉛酸バッテリは、鉛の酸化物や塩を含む化学的活性材料を含むことができる。ある実施形態では、化学的活性材料は酸化鉛(PbO)を含むことができる。また、化学的活性材料は、例えば、様々な割合の遊離鉛(free lead)と、構造用繊維(structural fibers)と、導電体と、炭素と、バッテリの寿命期間中体積変化を調整する増量剤と、を含む添加物も含むことができる。ある実施形態では、鉛酸バッテリの化学的活性材料の成分は、ペースト、スラリー、またはその他の任意のコーティング材を形成するために、硫酸と水に混合されてもよい。
【0016】
ペーストやスラリー状の化学的活性材料を、例えば、陽極板や陰極板の集電体に塗布することができる。化学的活性材料は、浸漬や塗装、又はその他のどの適切なコーティング技術により集電体に塗布されてもよい。
【0017】
バッテリ10の陽極板と陰極板は、電極作成用の対応する集電体上に化学的活性材料を付着させることにより形成される。全ての塗布に必要なわけではないが、ある実施形態では、集電体上に付着させた化学的活性材料は、硬化処理(curing process)または乾燥処理、もしくはその両方を施されてもよい。硬化処理は、化学的活性材料の化学的または物理的、もしくはその両方の性質の変化を促すために、例えば、化学的活性材料を高温または多湿、もしくはその両方へ曝すことを含むことができる。
【0018】
バッテリ10のセル13を形成するために陽極板と陰極板を組み立てた後、バッテリは充電(すなわち形成)過程を施されることができる。この充電過程の間、化学的活性材料の組成は、セルの陽極板と陰極板の間の電気化学ポテンシャルを提供できる状態に変化してもよい。例えば、鉛酸バッテリにおいて、陽極板のPbO活性材料は、二酸化鉛(PbO)まで電気的に押しやられ、陰極板の活性材料は、スポンジ鉛へ変換されてもよい。反対に、それに続く鉛酸バッテリの放電中に、陽極板と陰極板の化学的活性材料は硫酸塩に変換されてもよい。
【0019】
図2は、セル13の陽極板または陰極板、もしくはその両方に含まれる炭素発泡体材料20の拡大図を提供する。この炭素発泡体材料は、任意の炭素またはある程度の気孔率を示す炭素系材料(carbon-based materials)を含むことができる。ここで開示された実施形態の炭素発泡体は、電解液や、陽極板または陰極板の電位へ曝されても腐食に耐えることができる。炭素発泡体は、それぞれの集電体に対し大きな表面積を提供する気孔のネットワークを含む。炭素発泡体により構成された集電体は、従来の集電体の2000倍を超える表面積を呈する。
【0020】
開示された発泡体材料はストラット(strut)と気孔の三次元ネットワークを有する任意の炭素系材料を含むことができる。発泡体は、天然の材料または人工的に抽出された材料、もしくはその両方を含むことができる。ある実施形態では、炭素発泡体は、1センチメートルあたり約4個から約50個の気孔を含み、気孔の平均サイズは少なくとも約200ミクロンとすることができる。しかし、他の実施形態では、気孔の平均サイズはもっと小さくてもよい。例えばある実施形態では、気孔の平均サイズは少なくとも約20ミクロンとすることができる。さらに他の実施形態では、気孔の平均サイズは少なくとも約40ミクロンとすることができる。
【0021】
炭素発泡体材料の気孔の平均サイズに関わらず、炭素発泡体の全気孔率値は少なくとも60%である。言い換えれば、炭素発泡体構造の少なくとも60%は図2に示された気孔21の内部に含まれる。さらに、炭素発泡体は少なくとも70%の開放気孔率値を有する。気孔21の少なくとも70%は近接した気孔に対して開放しているので、気孔21のネットワークは略開放ネットワーク(open network)を形成する。ある実施形態では、気孔21のこの開放ネットワークは、集電体上に付着した活性材料を炭素発泡体構造内部に浸透可能とする。気孔21のネットワークに加えて、炭素発泡体は、炭素発泡体に支持体を与える構造要素22のウェブ(web)を含む。炭素発泡体の気孔21のネットワークと構造要素22は全体として炭素発泡体に対し約0.6gm/cm未満の密度をもたらす。
【0022】
ここで開示された実施形態の炭素発泡体は、少なくともある程度の電気伝導性を示すことができる。いくつかの実施形態では、炭素発泡体は、約1ohm‐cm未満の面積抵抗値を示すことができる。さらに他の実施形態では、炭素発泡体は、約0.75ohm‐cmより小さい面積抵抗値を示すことができる。
【0023】
炭素発泡体に加えて、黒鉛発泡体もまた、セル13の陽極板または陰極板、もしくはその両方の集電体に使用されることができる。PocoFoamTMという商標名で取引されるそのような黒鉛発泡体の1つは、Poco Graphite社から入手できる。黒鉛発泡体の密度および気孔構造は、炭素発泡体とよく似ている。しかし、黒鉛の性質により、黒鉛発泡体は炭素発泡体と比較して高い伝導率を示す。例えば、黒鉛発泡体は約100micro‐ohm‐cmから約2500micro‐ohm‐cmの電気抵抗値を示す。
【0024】
本発明に係る炭素発泡体および黒鉛発泡体は、様々な有機材料に対し炭化または黒鉛化、もしくはその両方の処理を行うことにより手に入れることができる。例示的な一実施形態では、炭素発泡体材料を得るために、様々な材種に対し炭化または黒鉛化、もしくはその両方が行われる。木材は天然の気孔ネットワークを含む。これらの気孔は細長く直線状に配向されている。その上、水を運搬するそれらの性質により、木材内部の気孔は略開放構造を形成する。特定の材種は少なくとも約70%の開放気孔率値を示す。木材の気孔の平均サイズは材種により異なるが、本発明の例示的な一実施形態では、炭素発泡体を形成するために使用される木材の気孔の平均サイズは少なくとも約20ミクロンである。
【0025】
多くの材種が本発明の炭素発泡体を形成するために使用できる。一般的な分類として、ほとんどの硬材は本発明の炭素発泡体集電体に使用するのに適した気孔構造を有する。炭素発泡体を作るために使用できる典型的な材種として、オーク(oak)、マホガニー(mahogany)、チーク(teak)、ヒッコリー(hickory)、エルム(elm)、ササフラス(sassafras)、ブビンガ(bubinga)、パーム(palms)、及びその他多くの種類の木材が含まれる。炭素発泡体作りに使用するために選択される木材は、随意に熱帯成長地方(tropical growing area)産であってもよい。例えば、顕著な季節変動がある気候で育つ木材と違い、熱帯地方産の木材は年輪構造があまり明確ではない。結果として、熱帯地方産の木材の多孔質ネットワークは、年輪の存在により生じる得る不均一が少ない。
【0026】
炭素発泡体を生産するために、木材は、炭化木材(carbonized wood)(例えば炭素発泡体材料)を作るための炭化処理を施される。例えば、約800℃から約1400℃の間の温度に木材を加熱することは、木材から揮発性成分を取り除く効果を有する。木材は、木材の少なくとも一部を炭素マトリックス(carbon matrix)に変換するのに十分な時間、この温度範囲に保たれる。この炭化木材は、木材由来の多孔質構造を含む。しかし、その炭素マトリックスの結果、炭化木材は導電体であり、また腐食抵抗体であり得る。炭化処理の間、木材に所望の割合で加熱と冷却を行う。しかし、一実施形態では、木材や炭化木材のひび割れを最小限にするか、もしくは防ぐために、木材は十分にゆっくりと加熱され、冷却される。また、木材の加熱は不活性環境で行われてもよい。
【0027】
炭化木材は付加的な処理なしで使用されてもよい。しかし、随意に、炭化木材に黒鉛化処理を施して、黒鉛化木材(例えば黒鉛発泡体材料)を作ることができる。黒鉛化木材とは、少なくとも炭素マトリックスの一部が黒鉛マトリックス(graphite matrix)に変換されている炭化木材である。前述の通り、黒鉛構造は、黒鉛炭素構造でないものと比べて、高い電気伝導性を示す。炭化木材の黒鉛化は、炭化木材の炭素マトリックスの少なくとも一部を黒鉛マトリックス変換するために十分な時間、炭化木材を約2400℃から約3000℃の間の温度に加熱することにより達せられる。炭化木材の加熱と冷却は所望の割合で行うことができる。しかし、一実施形態では、ひび割れを最小限にするか、もしくは防ぐために、炭化木材は十分にゆっくりと加熱され、冷却される。また、炭化木材の加熱は不活性環境で行うことができる。
【0028】
図3A〜図3Cは、例示的な実施形態にかかる集電体31の図表示を提供する。集電体31は、基本的には基板32上に配設された炭素発泡体30の層を含む二層構造からなる。図3Aは集電体31の組立部を図示する斜視図を提供する。図3Bは組み立てられた集電体31の断面図を提供し、図3Cは任意の機械式締結システム37を示す集電体31のもう1つの断面図を提供する。集電体31は二層構造として述べられているが、その二層はそれぞれ1つ以上の、材料などの副層を含むことに注意が必要である。例えば、炭素発泡体層30は複数の、炭素発泡体の副層を含む。同様に、基板32は、基板を作るために使用された特定の材料の副層を複数含む。
【0029】
集電体31において、炭素発泡体層30は上述した任意の炭素発泡体材料を含むことができる。さらに、炭素発泡体層30は、上述の物理的性質の任意の組み合わせを呈するように組み立てることができる。
【0030】
基板32は、いくつかの異なった材料と物理的な構成を含むことができる。例えば、ある実施形態では、基板32は電気伝導性材料、ガラスまたはポリマーを含むことができる。ある実施形態では、基板32は鉛またはポリカーボネートを含むことができる。基板32は、図4に示されるように、材料の単一の平板として形成されてもよい。あるいは、基板32は図3Aに示されるように、例えば横材(cross member)34とストラット36を有する格子模様などの開放構造を含んでもよい。
【0031】
基板32は集電体31への電気的な接続を確立するためのタブ38を含婿とができる。あるいは、基板32がポリマーまたは電気伝導性の低い材料を含む実施形態では特に、炭素発泡体層30は、集電体31との電気的な接続を確立するための材料のタブ38(図示省略)を含むように構成されている。そのような実施形態においては、炭素発泡体層30上にタブを形成するために使用された炭素発泡体は、鉛、銀、もしくは炭素発泡体層30への機械的及び電気的な接続の向上を支援するのに適したその他の金属などの金属を含浸されることができる。
【0032】
基板32が炭素発泡体層30を支えられるように、炭素発泡体層30は、基板32に物理的に取り付けられることができる。一実施形態では、炭素発泡体層30は基板32に積層(laminate)されてもよい。例えば、炭素発泡体層30と基板32は適した積層工程を施されてもよい。積層工程は、炭素発泡体層30が基板32に物理的に取り付けられるように、熱または圧力、もしくはその両方の適用を含んでもよい。ある実施形態では、積層工程において、熱または圧力、もしくはその両方に敏感な積層フィルムまたは接着剤が、補助のために使用されることができる。
【0033】
他の実施形態では、炭素発泡体層30は、図3Cに示される機械式締結システム37により基板32に物理的に取り付けられることができる。この締結システムは、炭素発泡体層30を支持体32へ留めることできる任意の適した種類の締結を含む。例えば、炭素発泡体層30は、ステープル(staples)、ワイヤー(wire)、またはプラスチックループ締結(plastic loop fasteners)、リベット(rivets)、加締締結(swaged fasteners)、螺子(screws)などを使用して支持体32に結合される。あるいは、炭素発泡体層30は、金属製の糸または他の種類の糸を使用して支持体32に縫い付けられることができる。
【0034】
上記の通り、炭素発泡体層30に含まれる炭素発泡体材料は、少なくとも60%の全気孔率値を有することができる。注意すべきはこの気孔率値は炭素発泡体の材料特性だけでなく(すなわち、炭素発泡体自体は60%より大きい全気孔率値を有する)、炭素発泡体層全体の有効気孔率もまた含む(すなわち、炭素発泡体層は、炭素発泡体自体の基本的な材料特性を変更することなく、炭素発泡体層全体へ有効気孔率を導入する任意の機械構造もしくは他の層構造を含む)ということである。
【0035】
上記の二層集電体31に加えて、ここで開示される実施形態は、二層集電体と組み合わせる他の種類の集電体を含むことができる。例えば、ここで開示される実施形態に使用するのに適した集電体は、実質的に炭素発泡体単独で形成されることができる。すなわちこの実施形態に基づく炭素発泡体集電体は支持体による補強が不足する。しかし、炭素発泡体集電体は、例えば、炭素発泡体集電体との電気的接触の確立を補助するために炭素発泡体の表面上の一部に配設された金属などの他の材料を含むことができる。
【0036】
他の集電体は例えば鉛などの電気伝導性材料から略形成されることができる。図5Aは、セル13の1つ以上の電極板に組み込むことができる集電体50の平面図を提供し、図5Bは斜視図を提供する。集電体50は鉛から作られてもよく、横材52とストラット54の格子模様を含むように形成される。一実施形態では、集電体50は、ストラット54が横材52を斜めに横切る放射状の格子模様を含む。図5Aに図示したように、ストラット54は、外見上集電体50の頂部から下端部へ放射状に移動するように配向されることができる。また、集電体50は、集電体への電気的な接続を確立するのに有用なタブ56を含むことができる。
【0037】
図6Aは、セル13の1つ以上の電極板に組み込むことができる1つの集電体60の平面図を提供し、図6Bは斜視図を提供する。この実施形態において、集電体60は鉛から作られてもよく、六角形格子模様を含むように形成されることができる。特に、集電体60の構造要素は、複数の六角形状の隙間が六方最密な配列で形成されるように、形状が決められてもよい。また、集電体60は、集電体への電気的な接続を確立するのに有用なタブ64を含むことができる。
【0038】
本発明に係るセル13は、いくつかの異なった集電体の配列を含むよう構成されてもよい。第一の実施形態では、セル13の1つ以上の陰極板は、基板32上に配設された炭素発泡体層30を有する集電体31を含むことができる。この実施形態において、セル13の1つ以上の陽極板は、炭素発泡体集電体(例えば、基板を含んでいない炭素発泡体層)または鉛格子集電体(例えば、炭素発泡体の層を含んでいない鉛格子集電体)を含むことができる。
【0039】
もう1つの実施形態では、セル13の1つ以上の陽極板は、基板32上に配設された炭素発泡体層30を有する集電体31を含むことができる。この実施形態では、セル13の1つ以上の陰極板は、炭素発泡体集電体(例えば、基板を含んでいない炭素発泡体層)または鉛格子集電体(例えば、炭素発泡体の層を含んでいない鉛格子集電体)を含むことができる。
【0040】
さらに第三の実施形態では、1つ以上の陰極板と1つ以上の陽極板のいずれも、基板32上に配設された炭素発泡体層30を有する集電体31を含むことができる。従って、この実施形態では、二層集電体31は、陽極板と陰極板のいずれにも組み込まれてよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
バッテリ10の陽極板または陰極板、もしくはその両方に炭素を組み込むことにより、集電体の腐食は抑制される。結果として、本発明に係るバッテリは有意に長い耐用年数を示すことができる。
【0042】
加えて、炭素発泡体材料に付随する大きな表面積により、大量の固有の電力値及びエネルギ値を有するバッテリが実現する。特に、炭素発泡体材料のもつ開放セルと多孔質ネットワークと比較的サイズが小さい気孔とにより、陽極板と陰極板の化学的活性材料は、集電体と密接に一体化され得る。それゆえ、化学的活性材料の反応部位は、1つ以上の導電性のある炭素発泡体構造要素22と近接することができる。それゆえ、化学的活性材料内の特定の反応部位に生じた電子が、特定の集電体の多くの導電性構造要素22のうちの1つに遭遇するのに、ペーストを介してほんの短い距離を移動するだけでよい。結果として、炭素発泡体を組み込んでいる集電体を含むバッテリは、向上した固有の電力値と固有のエネルギ値を示す。言い換えれば、これらのバッテリは、負荷が加わった時に、鉛や黒鉛板などで作られた従来の集電体を含むバッテリより長い時間、規定の閾値を超える電圧を維持することができる。
【0043】
本発明に係るバッテリにより増加した固有の電力値は、充電時間の短縮につながる。それゆえ、開示されたバッテリは、限られた時間内での充電となる使用に適する。例えば、車両では、多量のエネルギが通常の制動中に失われる。この制動エネルギを回生し、例えばハイブリッド車のバッテリ充電に使用する。しかし、制動エネルギは短期間(すなわち制動がかけられている間)しか使用することができない。従って、制動エネルギのバッテリへの移送は、制動中に起こらなければならない。充電時間の短縮という観点からすれば、本発明に係るバッテリはそのような制動エネルギを蓄える効率的な手段を提供する。
【0044】
加えて、開示された炭素発泡体集電体は柔軟であり、それゆえ、黒鉛板や他の脆い材料から作られた集電体と比較して、振動や衝撃の影響を受け難い。炭素発泡体集電体を含むバッテリは、車両内での使用や、その他振動や衝撃が一般的なところで使用される場合によい性能を示す。
【0045】
さらに、バッテリ10の集電体の少なくともいくつかに炭素発泡体を含むことにより、炭素密度が低下し、その結果、バッテリ10は鉛集電体や黒鉛板集電体だけを含むバッテリより大幅に軽くなる。本発明の他の態様と特徴は、図面と明細書と添付された特許請求の範囲を検討することにより得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体内部に配設され、少なくとも1つの陽極板と少なくとも1つの陰極板を含む少なくとも1つのセルと、
前記陽極板と前記陰極板の間の体積中に配設された電解液と、
を含んで構成され、
前記少なくとも1つの陰極板または前記少なくとも1つの陽極板は、
炭素発泡体の層と、第一表面と前記第一表面の反対側の第二表面を有する基板と、を含む集電体と、
前記集電体上に配設された化学的活性材料と、
を含み、
前記炭素発泡体の層は専ら前記基板の前記第一表面上に配設され、前記基板の前記第二表面上には配設されない鉛酸バッテリ。
【請求項2】
前記基板が電気伝導性材料を含んで構成される、請求項1に記載された鉛酸バッテリ。
【請求項3】
前記基板の前記電気伝導性材料は鉛格子を含む、請求項2に記載された鉛酸バッテリ。
【請求項4】
前記基板がガラスまたはポリマーを含んで構成される、請求項1に記載された鉛酸バッテリ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの陽極板は、鉛格子集電体の形で単層集電体を含む、請求項1に記載された鉛酸バッテリ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの陽極板は、炭素発泡体集電体の形で単層集電体を含む、請求項1に記載された鉛酸バッテリ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの陰極板は、鉛格子集電体の形で単層集電体を含む、請求項1に記載された鉛酸バッテリ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの陰極板は、炭素発泡体集電体の形で単層集電体を含む、請求項1に記載された鉛酸バッテリ。
【請求項9】
前記電解液は硫酸水溶液を含む、請求項1に記載された鉛酸バッテリ。
【請求項10】
前記電解液は、平均粒径が約1ミクロン未満のシリカ粒子を約1重量%から約8重量%含むシリカゲルを含む、請求項1に記載された鉛酸バッテリ。
【請求項11】
前記炭素発泡体は、少なくとも60%の全気孔率値と少なくとも70%の開放気孔率値を有する、請求項1に記載された鉛酸バッテリ。
【請求項12】
前記炭素発泡体は、約1ohm‐cm未満の抵抗率値を有する、請求項1に記載された鉛酸バッテリ。
【請求項13】
前記炭素発泡体の層は前記基板にラミネートされた、請求項1に記載された鉛酸バッテリ。
【請求項14】
前記炭素発泡体の層は機械式締結システムによって前記基板に取り付けられる、請求項1に記載された鉛酸バッテリ。
【請求項15】
前記機械式締結システムは、前記炭素発泡体と前記基板を結合する金属製の糸を含む、請求項14に記載された鉛酸バッテリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−503829(P2011−503829A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534929(P2010−534929)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/002731
【国際公開番号】WO2009/067126
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(504430798)ファイアフライ エナジー インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】FIREFLY ENERGY INC.
【Fターム(参考)】