説明

二次元位置検出装置

【課題】 画素寸法を小さくすることがなく、微細な特徴点を用いることにより、測定対象の位置を精度よく検出することができる位置検出装置を提供する。
【解決手段】 二次元検出器11と、特徴点Mの像を二次元検出器11に投影するための集光光学系12と、集光光学系12の焦点を調整する焦点調整部13と、二次元検出器11に投影された特徴点Mの像を画像として認識する画像認識部14と、画像認識部14により認識された特徴点Mの画像に基づいて特徴点Mの二次元位置を算出する特徴点位置算出部15と、焦点調整部13および画像認識部14および特徴点位置算出部15を制御して特徴点の二次元位置を算出する制御を行う特徴点位置算出制御部16とを備え、特徴点位置算出制御部16は、特徴点Mの像を焦点が外れた状態で二次元検出器11に投影することにより拡大された特徴点の像を形成するとともに、拡大された特徴点の像について認識した画像に基づいて、特徴点の二次元位置を算出する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特徴点(マーカー)を含んだ測定対象の画像を取得し、画像中に含まれる特徴点の像を利用して、特徴点の二次元位置、さらには測定対象の二次元位置を検出する二次元位置検出装置に関する。
本発明は、工業分野、医療分野、その他の幅広い分野で、測定対象の位置検出に適用することができる。本発明は、また、測定対象に点光源を取り付けて特徴点とし、この点光源の動きから測定対象の動きをモニタするモーションキャプチャーに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
二次元検出器の検出面を測定位置とし、測定対象から測定位置に向かう方向をZ軸方向とする。物体や人物等を測定対象とし、測定対象からZ軸方向に離れた二次元面(Z軸と直交するXY座標面)上への、測定対象の二次元投影座標位置を検出したい場合がある。
このような場合、従来から、測定対象の画像を二次元検出器(例えばCCDカメラ)により取り込んで、画像化し、画像データから測定対象の二次元位置を検出することがなされている。画像データを用いた位置検出では、位置検出を正確かつ容易に行うために、測定対象に、点光源、反射物体、傷、その他の位置基準となる微細な特徴点(マーカー)を設けておき、測定対象の位置を、微細な特徴点の位置を検出することで、特定するようにしていることが多い。ここでいう「微細」とは測定対象の大きさに比較して十分に小さいことを意味し、測定対象と同等あるいはそれ以上の大きさではないことを意味する。
【0003】
微細な特徴点の二次元位置を特定する技術としては、取得した測定対象の画像データを二値化(あるいは多値化)して、その画像データの特徴点の像を画像認識し、特徴点の像が検出器のどの位置座標(画素)に投影されているかを特定することによって、二次元検出器上の位置座標を特定する方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−68409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定対象の位置を、微細な特徴点(マーカー)を用いて検出する従来技術においては、その位置検出の精度は、二次元検出器の画素の寸法により制限されることになる。
例えば、特徴点(マーカー)の像を検出する場合を説明すると、集光レンズ12により、二次元検出器11の検出面に焦点を合わせて測定対象(およびこれに含まれる微細な特徴点)の鮮明な像を形成する(図3(a)参照)。このときに特徴点の像が投影される画素を検出する。微細な特徴点の像が、画素の寸法よりも小さければ、いずれか1つの画素(または近傍の画素)が微細像を検出することになる。このとき、二次元検出器は、画素寸法ごとの単位で検出分解能が定まるので、微細像の位置精度は、画素寸法単位で測定され、その検出値は離散的となる。
【0005】
二次元検出器による微細像の位置精度を高めるためには、さらに画素寸法を小さくする必要があるが、画素として機能するためには、形状的、構造的な制約があり、画素寸法を小さくするにしても限界がある。また、画素寸法を技術的に可能な極限まで小さくしたとしても、画素寸法を小さくすることにより、画素数が増大し、画像認識処理における演算処理の負荷が増大して、処理速度が遅くなるなどの弊害も生じる。
【0006】
一方、画素寸法を小さくすることなく、測定対象の検出位置精度を高める方法として、測定対象に取り付ける特徴点自体を、既知の形状で、かつ、画素寸法に比較して大きな寸法にすることが考えられる。例えば、特徴点の形状を円形にし、特徴点の二次元検出器への投影像が半径100画素程度になるようにする。このときの二次元検出器に投影された特徴点の輪郭を認識することにより、特徴点の位置座標(例えば重心位置座標)を求めるようにして、検出位置の精度を高めるようにする。
【0007】
この場合は、特徴点自体の面積を大きくする必要があるため、測定対象に対し、大きな特徴点を取り付けることとなり、物理的に取り付けが困難な場合がある。また、場合によっては測定対象の重量増加(特徴点の重量分が増加)などの問題が生じる。さらに、特徴点として点光源(LEDなど)を利用する場合には、光源の寸法に限界があることにより、特徴点を大きくすることができない場合もある。
【0008】
そこで、本発明は、画素寸法を小さくすることがなく、微細な特徴点を用いることにより、測定対象の位置を精度よく検出することができる位置検出装置を提供することを目的とする。
また、画素数を増大することによる画像処理速度の遅延を招くことなく、位置精度の高い検出が可能な位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の二次元位置検出装置は、二次元検出器と、測定対象に含まれる特徴点の像を二次元検出器に投影するための集光光学系と、集光光学系の焦点を調整する焦点調整部と、二次元検出器に投影された特徴点の像を画像として認識する画像認識部と、画像認識部により認識された特徴点の画像に基づいて特徴点の二次元位置を算出する特徴点位置算出部と、焦点調整部および画像認識部および特徴点位置算出部を制御して特徴点の二次元位置を算出する制御を行う特徴点位置算出制御部とを備え、特徴点位置算出制御部は、特徴点の像を焦点が外れた状態で二次元検出器に投影することにより拡大された特徴点の像を形成するとともに、拡大された特徴点の像について認識した画像に基づいて、特徴点の二次元位置を算出する制御を行うようにしている。
【0010】
この発明の二次元位置検出装置によれば、測定対象の像を二次元検出器に投影するための集光光学系が設けられ、集光光学系を焦点調整部で調整することにより、測定対象および測定対象に含まれる特徴点の像を二次元検出器上に結像できるようにしてある。
画像認識部は、二次元検出器に測定対象および特徴点の像が投影されると、測定対象および特徴点の像を画像として認識するようにしてある。特徴点位置算出部は、認識された画像に含まれる特徴点の画像に基づいて特徴点の位置を算出するようにしてある。
【0011】
特徴点位置算出制御部は、焦点調整部を制御して、二次元検出器に測定対象および特徴点の像を投影するとともに、画像認識部を制御して二次元検出器に投影された測定点および特徴点の画像を認識する制御を行い、認識された画像に基づいて特徴点の位置を算出し、算出した特徴点の位置から測定対象の位置を求める制御を行う。特徴点位置算出制御部は、位置検出のための制御を行う際に、二次元検出器上に特徴点像の焦点を合わせるのではなく、故意に焦点を外すことにより、二次元検出器上に拡大された(少しぼやけた)特徴点像を投影するように制御し、これにより、特徴点の像が画素寸法よりも大きくなるようにして、多数の画素において特徴点の像が検出されるようにする。画像認識部は、拡大された特徴点像について画像認識を行うようにする。さらに、特徴点位置算出部は、拡大された特徴点について画像認識された画像に基づいて位置を算出する。例えば、特徴点が検出される複数の画素の重心位置を求めるようにして、特徴点の位置を定める。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二次元位置検出装置によれば、測定対象に含まれる微細な特徴点を、精度よく特徴点の位置(重心位置)を検出することができる。また、画素を小さくして画素数を増大させる必要がないので、処理速度の低下を招くことなく、精度よく位置検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の位置検出装置について図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態である二次元位置検出装置の概略構成を示すブロック図である。
この二次元位置検出装置10は、二次元検出器11と、集光レンズ12(集光光学系)と、集光レンズ12の焦点位置を調整する焦点調整機構13(焦点調整部)と、画像認識部14と、特徴点位置算出部15と、特徴点位置算出制御部16とからなる。二次元位置検出装置10で検出する光は広義の意味で用いており、主として可視光であるが、必ずしも可視光である必要はなく、赤外光、あるいは、X線やガンマ線などの放射線であってもよい。そのため、測定しようとする光線の波長に合わせて、検出器などの各使用機器について適当なものを選択すればよい。
【0014】
二次元検出器11には、可視光ではCCDカメラ、C−MOSカメラ、フォトダイオードアレイ、X線であればイメージインテンシファイアが用いられる。二次元検出器11は、二次元的に配置された画素の集合からなる検出面を有し、特定の画素上に特徴点の像が投影されることにより、特徴点の投影位置に応じて二次元的な位置信号が出力されるようにしてある。
集光レンズ12は、可視光では光学レンズ系、X線であれば電子レンズ系が用いられ、焦点調整機構13により、焦点が調整できるようにしてある。
調整機構13は、可視光では、光学レンズを機械的に駆動する機械駆動機構、X線では電子レンズを電磁気的に駆動する機構が用いられる。
【0015】
画像認識部14、特徴点位置算出部15、特徴点位置算出制御部16は、いわゆるコンピュータ17(CPU・RAM・ROMなど)により構成される。
画像認識部14は、投影された特徴点Mの像に対応する二次元検出器11の出力信号から画像を形成し、画像認識を行うことにより、特徴点Mの画像を抽出できるようにしてある。特徴点Mの画像認識は、例えば二次元検出器11の各画素の検出信号を二値化、あるいは多値化し、特徴点Mに対応する信号の画素を特定することで、画像認識を行う。
特徴点位置算出部15は、画像認識部14により特定された画素に基づいて、統計的な計算処理を行うことにより、特徴点の重心位置を算出する。
【0016】
特徴点位置算出制御部16は、焦点調整機構13を駆動して集光光学系12の位置を調整し、特徴点Mの像を二次元検出器11に形成する制御を行う。
このとき、焦点光学系12の焦点を、二次元検出器11の検出面上に正確に合わせるのではなく、焦点を二次元検出器11から少し外れた位置に合わせて特徴点Mのぼやけた像を二次元検出器11の上に投影するように調整する制御を行う。この調整により、特徴点Mの像が複数画素に広がって投影されるようになる。さらに画像認識部14に対し、特徴点Mのぼやけた像についての画像認識を行う制御を行い、拡大された特徴点の画像を認識する制御を行う。さらに、特徴点位置算出制御部16は、拡大された特徴点についての認識画像に基づいて特徴点位置算出部15に、特徴点の位置を算出させる制御を行う。
【0017】
次に、位置検出装置10による動作について説明する。図2は位置検出装置10による測定動作例を説明するフローチャートである。
ここでは、点光源として機能する発光ダイオード(LED)を、測定対象の一部に取り付け、特徴点Mとしている。
まず、特徴点の大まかな位置を特定するため、二次元検出器11の検出面に集光レンズ12の焦点がくるように調整する(S101)。図3(a)は、集光レンズ12の焦点を二次元検出面に合わせて投影したときの特徴点Mの投影像を示す図である。このときの投影像は、点光源として用いた発光ダイオードの物理的サイズ(強度分布)と集光レンズ12の回折限界によって定まる微小範囲に集光される。この投影像が画像認識されて、画像化される。
【0018】
ここで、後の工程で特徴点Mの像を拡大したときに、像が二次元検出器の検出面から外れることがないように、投影像が検出器の中心付近にくるように、焦点調整機構13により集光レンズ12を移動し、このときの集光レンズ12の移動量を、位置検出の際に加減するようにする。
ただし、中心への移動操作は、二次元検出器の検出面の面積が十分大きく、特徴点Mの拡大された像が、決して二次元検出器の検出面を超えない場合は、必ずしも実行する必要はない。
【0019】
続いて、焦点調整機構13を駆動し、集光レンズ12を光軸方向に移動することで、集光レンズ12の焦点を二次元検出器11の検出面から外し、図3(b)に示すように、二次元検出器11の検出面上に、特徴点Mのぼやけた拡大像を投影するようにする(s102)。
ぼやけた拡大像の大きさは、例えば、画素寸法に比較して、半径100画素程度となるように焦点移動量を調整する。この調整は二次元検出器11の信号をモニタしながら焦点を調整することにより行われる。
【0020】
続いて、二次元検出器11の検出面に投影された特徴点Mのぼやけた拡大像についての画像認識を行い、さらに認識した画像から特徴点Mの重心の位置座標(xg,yg)を算出する(s103)。
位置座標xgの算出は、図3(b)に示すように、ぼやけた拡大画像中の各行iごとに、特徴点Mの輪郭のx座標xLiおよびxRiを検出し、これを統計的に平均化することで特徴点Mの重心のx座標xgを求める。
すなわち、xgを以下の式で求めることができる。

ここで、Nはぼやけた拡大像を検出した画素を含む最上行の番号、Mは最下行の番号を示す。
【0021】
同様に、y座標ygを以下の式で求めることができる。

ここで、nはぼやけた拡大像を検出した画素を含む最右列の番号、mは最左列の番号を示す。また、yUjとyLjとは、それぞれ、特徴点Mの各列ごとの輪郭のy座標(yUjとは最上段座標、yLjは最下段座標)を示す。
【0022】
したがって、上記式で求めた重心位置座標(xg、yg)とともに、先に求めた焦点移動量を加減することにより、特徴点の位置座標を検出することができる。
そして、測定対象と特徴点との位置関係を予め特定しておき、特徴点の位置検出を行うことで自動的に測定対象の位置も検出することができる(s104)。
【実施例】
【0023】
図4は、一例として、測定対象に取り付けた点光源の像を、直径で50画素に相当するようにぼやけさせた状態にし、この点光源を移動して、X方向に、点光源像が最大で5画素分移動したときに検出される重心位置の変化を示した図である。このときの変化を図4では「今回手法」として示す。
なお、比較のために、点光源像の焦点を二次元検出器11に一致させて、画素寸法以下にした場合の重心位置の変化を、図4では「従来手法」として示す。
さらに、理論的に求められる重心位置(真の重心位置)を図4では「理想結果」として示す。
【0024】
図4に示されるように、「従来手法」では、点光源のX方向への移動につれて、重心位置が階段状に変化し、画素ごとの離散値として検出され、検出精度も1ピクセル単位程度となっている。
これに対し、「今回手法」によれば、理論値である「理想結果」と同様に、ほぼ直線に沿って、滑らかに変化している。
図5は、「今回手法」と「理想結果」との誤差を示した図(図4を今回手法と理想結果の差を拡大した図)である。図に示されているように、誤差範囲は±0.06画素程度であり、「従来手法」に比して一桁程度も精度が向上している。
【0025】
なお、ぼやけ量を大きくして投影像を拡大するほど、位置の検出精度を向上させることができるが、二次元検出器の面積(測定可能領域)や検出能力に限界があるので、これらとの兼ね合いで投影像の拡大の程度を判断するのが望ましい。
【0026】
上記実施例では、点光源を用いたが、これに限らず、特徴点として反射板を取り付け、反射光を検出してもよい。あるいは、測定対象に付けた傷、刻印などを検出してもよい。また、X線装置等の透過光を検出するようにしてもよい。
また、測定対象に複数の特徴点を持たせて、それぞれの特徴点の位置検出を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、測定対象に付された特徴点を検出してその二次元位置を検出する位置検出装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態である二次元位置検出装置の構成を示す図。
【図2】本発明の一実施形態である二次元位置検出装置の動作を説明するフローチャート。
【図3】本発明の一実施形態である二次元位置検出装置における二次元検出器に投影される像を説明する図。
【図4】特徴点(点光源)の移動に伴う、二次元検出器に投影された特徴点の重心位置の変化を説明する図。
【図5】本発明による位置検出結果と理論値との誤差を示す図。
【符号の説明】
【0029】
10 二次元位置検出装置
11 二次元検出器
12 焦点光学系(レンズ)
13 焦点調整機構
14 画像認識部
15 特徴点位置算出制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元検出器と、測定対象に含まれる特徴点の像を二次元検出器に投影するための集光光学系と、集光光学系の焦点を調整する焦点調整部と、二次元検出器に投影された特徴点の像を画像として認識する画像認識部と、画像認識部により認識された特徴点の画像に基づいて特徴点の二次元位置を算出する特徴点位置算出部と、焦点調整部および画像認識部および特徴点位置算出部を制御して特徴点の二次元位置を算出する制御を行う特徴点位置算出制御部とを備え、
特徴点位置算出制御部は、特徴点の像を焦点が外れた状態で二次元検出器に投影することにより拡大された特徴点の像を形成するとともに、拡大された特徴点の像について認識した画像に基づいて、特徴点の二次元位置を算出する制御を行うことを特徴とする二次元位置検出装置。
【請求項2】
測定対象に、特徴点となる点光源または目標物体を取り付けることを特徴とする請求項1に記載の二次元位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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