説明

二次監視レーダ応答信号解析装置及び二次監視レーダ応答信号解析方法

【課題】応答信号の受信異常の有無を通知することが可能な二次監視レーダ応答信号解析装置及び二次監視レーダ応答信号解析方法を提供する。
【解決手段】応答信号を解読し、これが正常な信号であるか否かを判定する信号解読部18と、応答信号の全ての内容及び判定の結果を時刻と共に表示する表示部23と、判定の結果を時刻と共に記録する記録部21とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のトランスポンダへ送信された質問信号に対する応答信号を受信し、この内容を解析する二次監視レーダ応答信号解析装置及び二次監視レーダ応答信号解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制に使用される航空機監視用レーダは、一次監視レーダ(PSR:Primary Surveillance Radar)と二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)とに大別される。
【0003】
上記のPSRは、地上から電波を発し、これの反射波を受信処理することにより航空機の位置情報を取得するものである。
【0004】
一方、SSRは、航空機に搭載されたトランスポンダに質問信号を送信し、これに対する応答信号を受信することにより航空機に関する各種情報を得るものである。
【0005】
なお、このSSRは、得ようとする情報の種別によりモードA、モードC、モードSに分類され、モードAは航空機の識別情報を得るためのものであり、モードCは高度情報を得るためのものであり、モードSは各航空機に付与されたID(24ビットアドレス)による個別選択呼び出し機能を有し、上記の情報(識別情報及び高度情報)に加えて進路情報や速度情報等を得ることができる(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】橋田芳男、大友恒、久慈義則「航空管制用二次監視レーダ−SSRモードS」、東芝レビューVol.59 No.2(2004)、p58-61
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、SSRにおいては、正常な応答信号のみを解析し、これに関する情報のみを記録・表示していた。このため、正当ではない信号を受信した場合や応答信号の受信が正常に行われていなかった場合、ユーザは異常の発生を知ることができず、その原因(反射波への応答等)を特定することもできない。
【0007】
上記の事情に鑑み本発明は、応答信号の受信異常の有無を通知することが可能な二次監視レーダ応答信号解析装置及び二次監視レーダ応答信号解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、航空機のトランスポンダへ送信された質問信号に対する応答信号を受信し、この内容を解析する二次監視レーダ応答信号解析装置であって、応答信号が正常な信号であるか否かを判定する判定手段と、応答信号の全ての内容及び判定の結果を時刻と共に表示する判定結果表示手段と、応答信号の全ての内容及び判定の結果を時刻と共に記録する判定結果記録手段とを有することを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の発明において、応答信号の送信位置の高度を算出する高度算出手段と、応答信号の送信位置との距離を算出する距離算出手段と、応答信号の送信位置の方位を算出する方位算出手段と、高度、距離及び方位を時刻と共に表示する算出結果表示手段と、高度、距離及び方位を時刻と共に記録する算出結果記録手段とを有することを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、航空機のトランスポンダへ送信された質問信号に対する応答信号を受信し、この内容を解析する二次監視レーダ応答信号解析方法であって、応答信号が正常な信号であるか否かを判定する判定工程と、応答信号の全ての内容及び判定の結果を時刻と共に表示する判定結果表示工程と、応答信号の全ての内容及び判定の結果を時刻と共に記録する判定結果記録工程とを有することを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の発明において、応答信号の送信位置の高度を算出する高度算出工程と、応答信号の送信位置との距離を算出する距離算出工程と、応答信号の送信位置の方位を算出する方位算出工程と、高度、距離及び方位を時刻と共に表示する算出結果表示工程と、高度、距離及び方位を時刻と共に記録する算出結果記録工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、応答信号が正常な信号であるか否かを判定し、判定の結果を時刻と共に記録・表示する。したがって、応答信号の受信異常の有無を通知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を提示しつつ本発明の二次監視レーダ応答信号解析装置及び二次監視レーダ応答信号解析方法について説明する。
なお、以下の実施例は、あくまでも本発明の説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば、これらの各要素又は全要素を含んだ各種の実施例を採用することが可能であるが、これらの実施例も本発明の範囲に含まれる。
また、以下の実施例を説明するための全図において、同一の要素には同一の符号を付与し、これに関する反復説明は省略する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例に係るSSR(二次監視レーダ)システム1の構成図である。このSSRシステム1は、航空機2に搭載されるトランスポンダ3及びアンテナ6と、地上に設置されるインタロゲータ7及び水平方向に360°回転可能に構成されたアンテナ10とからなる。
【0015】
トランスポンダ3は、アンテナ6に接続された送受信部4と、これに接続された信号処理部5とからなり、インタロゲータ7は、アンテナ10に接続された送受信部8と、これに接続された信号処理部(二次監視レーダ応答信号解析装置)9からなる。なお、本図においては、ユーザが操作を行うためのインタフェース部などの記載は省略している。
【0016】
質問信号11は、送受信部8及びアンテナ10により送信され、これを受信したトランスポンダ3は、これに対する応答信号12を送信し、この応答信号12は、アンテナ10及び送受信部8により受信され、信号処理部9により2値化処理される。
【0017】
図2は、図1の送受信部8及び信号処理部9の構成図である。この送受信部8は、質問信号11を送信する送信部13と、応答信号12を受信する受信部14とからなる。また、信号処理部9は、質問信号を生成する送信処理部15と、応答信号の受信処理を行う受信処理部16と、距離算出部17と、信号解読部18と、方位算出部19と、表示情報生成部20と、記録部21と、計時部22と、2表示部23とからなる。
【0018】
距離算出部17は、送信部13から基準信号を受信し、これに基づいて、応答信号12の送信位置、つまり航空機2との距離を算出する。
【0019】
信号解読部18は、受信された応答信号12を解読することにより航空機2のID(24ビットアドレス)を読み取り、信号に含まれる情報から高度を算出する。また、この応答信号12が正当な受信信号であるか否か、あるいは正常に受信された信号であるか否かを判定する。
【0020】
方位算出部19は、アンテナ10の方向及びビーム角から応答信号12の送信位置(航空機)、つまり航空機2の方位を算出する。
【0021】
前記の異常の有無、応答信号12の内容(航空機2のID等)、高度、距離、方位)、地図、計時部22から送信される時刻からなる表示情報を生成する。なお、この情報には、前記の判定結果に閣わらず、全ての応答信号の内容が反映される。つまり、従来のように正常な応答信号を解析し、これに関する情報のみを記録・表示するのではなく、正当ではない信号を受信した場合や応答信号の受信が正常に行われていなかった場合においても、これらに関する情報を記録・表示する。したがって、ユーザは異常の発生を知ることができ、また、この原因を特定することが可能となる。
【0022】
表示部23は、生成された情報を表示し、記録部21は、この情報を記録する。なお、上記の情報は、表形式、航空機2の位置がプロットされた地図の形式など様々な形式で表示・記録することが可能である。
【0023】
図3は、上記の処理により生成された応答信号の受信記録表示画面の一例を示す図であり、これには時刻、SSRのモード種別、航空機2のID(24ビットアドレス)、距離、方位、エラーの有無、高度等が表示される。
【0024】
また、図4は、垂直方向表示画面の一例を示す図であり、これには高度線や航空機2の位置や航跡を示す輝点が表示される。
【0025】
また、図5は、水平方向表示画面の一例を示す図であり、これには地形、距離線、方位線、航空機2の位置や航跡を示す輝点が表示される。
【0026】
また、図6は、図5の拡大表示画面の一例を示す図であり、これには航空機2の位置や航跡を示す輝点、時刻、ID(24ビットアドレス)、高度が表示される。
【0027】
なお、本実施例においては、垂直方向表示画面と水平方向表示画面とが別個に表示される画面を示したが、これに限定されず、3次元的に航空機の位置及び航跡を表示する構成とすることも可能である。
【0028】
また、表示部23には、上記の画面だけなく、図7に示すような設定画面を表示させることができる。これを用いて情報のフィルタリング等を行うことにより、航空機の運航状況の分析や、受信異常の原因究明をより簡易的且つ迅速に行うことが可能となる。
【0029】
なお、上記のような装置を用いる二次監視レーダ応答信号解析方法も本発明の範囲に含まれる。
【0030】
以上のとおり本発明においては、正常な応答信号のみならず、応答信号の受信異常も記録・表示するため、受信異常の有無をユーザに通知することができる。
【0031】
また、航空機を表す輝点をIDや高度と共に地図上に表示させるため、航空機の運航状況の分析や受信異常の原因究明を容易に行うことが可能となる。また、前記の用途に限らず、航空管制教育にも多大な効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例に係る二次監視レーダシステムの構成図である。
【図2】図1の信号処理部の詳細を示す図である。
【図3】応答信号の受信記録表示画面の一例を示す図である。
【図4】垂直方向表示画面の一例を示す図である。
【図5】水平方向表示画面の一例を示す図である。
【図6】水平方向拡大表示画面の一例を示す図である。
【図7】設定画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1…SSR(二次監視レーダ)システム、2…航空機2…トランスポンダ、4…送受信部、5…信号処理部、6…アンテナ、7…インタロゲータ、8…送受信部、9…信号処理部、10…アンテナ、11…質問信号、12…応答信号、13…送信部、14…受信部、15…送信処理部、16…受信処理部、17…距離算出部、18…信号解読部、19…方位算出部、20…表示情報生成部、21…記録部21…計時部、23…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のトランスポンダへ送信された質問信号に対する応答信号を受信し、この内容を解析する二次監視レーダ応答信号解析装置であって、
前記応答信号が正常な信号であるか否かを判定する判定手段と、
前記応答信号の全ての内容及び前記判定の結果を時刻と共に表示する判定結果表示手段と、
前記応答信号の全ての内容及び前記判定の結果を時刻と共に記録する判定結果記録手段と
を有することを特徴とする二次監視レーダ応答信号解析装置。
【請求項2】
前記応答信号の送信位置の高度を算出する高度算出手段と、
前記応答信号の送信位置との距離を算出する距離算出手段と、
前記応答信号の送信位置の方位を算出する方位算出手段と、
前記高度、前記距離及び前記方位を時刻と共に表示する算出結果表示手段と、
前記高度、前記距離及び前記方位を時刻と共に記録する算出結果記録手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載の二次監視レーダ応答信号解析装置。
【請求項3】
航空機のトランスポンダへ送信された質問信号に対する応答信号を受信し、この内容を解析する二次監視レーダ応答信号解析方法であって、
前記応答信号が正常な信号であるか否かを判定する判定工程と、
前記応答信号の全ての内容及び前記判定の結果を時刻と共に表示する判定結果表示工程と、
前記応答信号の全ての内容及び前記判定の結果を時刻と共に記録する判定結果記録工程と
を有することを特徴とする二次監視レーダ応答信号解析方法。
【請求項4】
前記応答信号の送信位置の高度を算出する高度算出工程と、
前記応答信号の送信位置との距離を算出する距離算出工程と、
前記当該応答信号の送信位置の方位を算出する方位算出工程と、
前記高度、前記距離及び前記方位を時刻と共に表示する算出結果表示工程と、
前記高度、前記距離及び前記方位を時刻と共に記録する算出結果記録工程と
を有することを特徴とする請求項3に記載の二次監視レーダ応答信号解析方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−10582(P2007−10582A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194313(P2005−194313)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】