説明

二次電池用組成物、二次電池用電極、及び二次電池

【課題】本発明は、電極層と集電体との接着強度が優れ、かつ電気導電性を有する電極層を形成することができる二次電池用組成物、該二次電池用組成物を用いた二次電池用電極、及びそれを用いた二次電池の提供を課題とする。
【解決手段】少なくとも下記一般式(1)で表される熱硬化性化合物と、導電性材料と、を含む二次電池用組成物であり、分子量が500以下の熱硬化性成分の比率が5%以下である二次電池用組成物。(一般式(1)において、Xは熱架橋性基を、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、又は置換基を表し、Rは二価の連結基を、m1〜m4はそれぞれ独立に0〜4の整数を、nは1〜20の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用組成物、二次電池用電極、及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタやリチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスに用いられる電極は、一般的に、電極活物質とバインダー(結着剤)樹脂とを含む電極用組成物を、集電体に塗布、乾燥して作製される。バインダー樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の含フッ素樹脂が一般的に用いられている。
【0003】
電気二重層キャパシタは、分極性電極と電解液との界面に形成される電気二重層に電荷を蓄積することを原理としたものであり、その電気二重層キャパシタの容量密度を向上させるため、分極性電極には高比表面積の活性炭、カーボンブラック等の炭素材料、金属又は導電性金属酸化物の微粒子等が用いられている。これらの高比表面積の分極性電極は、効率よく充電及び放電するため、集電体と呼ばれる金属や黒鉛等の抵抗の小さい層又は箔と接合されている。集電体としては、通常電気化学的に耐食性の高いアルミウム等のバルブ金属、SUS304、SUS316L等のステンレス鋼等が使用される。
電気二重層キャパシタの電解液としては有機電解液と水電解液があるが、作動電圧が高く充電状態のエネルギー密度を大きくできることから、有機電解液を用いた電気二重層キャパシタが注目されている。
【0004】
分極性電極としては、主に活性炭が主成分として使用されるが、活性炭は通常粉末状であり、例えば上記バインダー樹脂と混合してあらかじめシート状に成形し、これを集電体と電気的に接続させて電極体として用いる。この際、活性炭を含む電極シートと集電体との接合強度が強く、かつ電気的な接触抵抗が小さくなるように、例えば導電性接着層を電極シートと集電体の間に介在させる。
【0005】

一方、携帯型ビデオカメラや携帯型パソコン等の携帯型電子機器の普及に伴い、移動用電源としての電池の需要が急増している。電池としては一般的に、一次電池(マンガン電池、アルカリマンガン電池、フッ化黒鉛リチウム電池、二酸化マンガンリチウム電池、固体電解質電池、注水電池、熱電池など)、二次電池(鉛蓄電池、ニッケルカドニウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル鉄蓄電池、酸化銀亜鉛蓄電池、二酸化マンガンリチウム二次電池、コバルト酸リチウム炭酸系二次電池、バナジウムリチウム二次電池など)が利用されている。また、電池の小型化、軽量化、高エネルギー密度化の要求が非常に高まりつつあり、リチウム又はリチウム合金を負電極に用いた二次電池の研究開発が盛んに行われている。
【0006】
リチウム二次電池は、高いエネルギー密度を有し、自己放電も少なく、しかも軽量であるという優れた特徴を有している。例えば、負極活物質であるリチウムを化学的、物理的方法により負極活物質担持体である炭素材料に担持させたものを負電極とし、正極活物質であるリチウムの複合酸化物を正電極とした非水電解質二次電池が注目されている。
しかしながら、これら電気二重層キャパシタや電池等の蓄電デバイスに用いられる電極に含フッ素系バインダー樹脂を用いた場合、電極層と集電体との接合強度が弱く、電極層と集電体とが電極巻回時に剥離したり、充放電を繰り返すうちに剥離したりするという問題があった。
【0007】
このような問題を解決すべく、近年、接着性や耐熱性に優れた、ポリイミド樹脂をバインダー樹脂として用いた電極を備えた蓄電デバイスが開発されている。例えば、ポリイミド樹脂をバインダー成分として含む二次電池(例えば、特許文献1参照)や電気二重層コンデンサ用電極(例えば、特許文献2参照)が開示されている。また、炭素質粉末とポリイミド樹脂を含む混合物と集電体とが一体化されてなる分極性電極を備えた電気二重層キャパシタが開示されている(例えば、特許文献3、4参照)。更には、ポリイミド樹脂をバインダー樹脂としたケイ素系負極活物質を含むリチウム二次電池が開示されている(例えば、特許文献5〜7参照)。
【0008】
これらの先行技術文献に開示された電極では、電極活物質のバインダーや電極層と集電体との接着層構成材料として、ポリイミド樹脂等が使用されているため、含フッ素樹脂をバインダー樹脂として用いた場合よりも、電極層と集電体との接着強度に優れている。
【0009】
また、熱架橋性化合物については既に知られている(例えば特許文献8〜9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−163031号公報
【特許文献2】特開平9−270370号公報
【特許文献3】特開平11−102845号公報
【特許文献4】特開2006−253450号公報
【特許文献5】特開2005−285563号公報
【特許文献6】特開2005−317309号公報
【特許文献7】特開2008−34352号公報
【特許文献8】特開昭60−42457号公報
【特許文献9】特開平10−310619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これらのバインダー樹脂を用いたとしても、電極層と集電体との接着強度は未だ充分とは言えない。特に、活性炭をはじめとした、比表面積1000m/g以上の多孔質材料を電極活物質とする場合や、多少濡れ性に劣る金属を集電体とする場合には、電極層と集電体との接着強度が不充分であり、長期使用時に電極層と集電体の間で剥離が生じ二次電池として充放電サイクル寿命が低下してしまうという問題がある。従って、更なる電極層と集電体との接着強度の改良が求められている。
【0012】
電極層と集電体間などの被着体間の接着強度に優れ、かつ硬化後の優れた電気導電性を有する二次電池用組成物、並びに前記二次電池用組成物を用いた二次電池用電極、及びそれを備えた二次電池を提供することが本発明の目的であり、本発明は該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の事情に鑑み鋭意研究した結果、特定の熱硬化性化合物と、導電性材料と、を含む二次電池用組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題は以下の手段により達成することができる。
【0014】
<1> 少なくとも下記一般式(1)で表される熱硬化性化合物と、導電性材料と、を含む二次電池用組成物であり、分子量が500以下の熱硬化性成分の比率が5%以下であることを特徴とする二次電池用組成物。(一般式(1)において、Xは熱架橋性基を、R〜Rはそれぞれ独立に置換基を表し、Rは二価の連結基を、m1〜m4はそれぞれ独立に0〜4の整数を、nは1〜50の整数を表す。)
【0015】
【化1】

【0016】
<2> 前記一般式(1)におけるXが下記一般式(2)〜(7)で表されることを特徴とする前記<1>に記載の二次電池用組成物。(下記一般式(2)〜(7)において、Rは置換基を表し、Rは二価の連結基を、A、Aはそれぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−、−CO−、−CONH−、炭素数1〜6のアルキレン基、又は炭素数2〜6のアルケニレン基を表す。mは0〜10の整数、mは0〜4の整数を表す。)
【0017】
【化2】

【0018】
<3> 前記一般式(1)におけるXが下記一般式(2)で表されることを特徴とする前記<1>に記載の二次電池用組成物。(一般式(2)において、Rは置換基を表し、Rは二価の連結基を、A、Aはそれぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−、−CO−、−CONH−、炭素数1〜6のアルキレン基、又は炭素数2〜6のアルケニレン基を表す。mは0〜10の整数、mは0〜4の整数を表す。)
【0019】
【化3】

【0020】
<4> 前記一般式(2)におけるAが酸素原子を表し、mが0、mが0であることを特徴とする前記<3>に記載の二次電池用組成物。
【0021】
<5> 前記導電性材料がカーボンブラックであることを特徴とする前記<1>から前記<4>のいずれかの1つに記載の二次電池用組成物。
【0022】
<6> 前記一般式(1)で表される熱硬化性化合物の組成物全質量に対する含有量が1質量%以上95質量%以下であることを特徴とする前記<1>から前記<5>のいずれかの1つに記載の二次電池用組成物。
【0023】
<7> 前記<1>から前記<6>のいずれかの1つに記載の二次電池用組成物を硬化した層を集電体上に有することを特徴とする二次電池用電極。
<8> 前記<1>から前記<6>のいずれかの1つに記載の二次電池用組成物を塗布し、硬化した層を金属箔上に有することを特徴とする二次電池用電極。
【0024】
<9> 前記<7>、または<8>に記載の前記二次電池用電極を備えた二次電池。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、電極層と集電体との接着強度に優れ、かつ電気導電性を有する電極層を形成することができる二次電池用組成物の提供、並びに前記二次電池用組成物を用いて作成される二次電池用電極、及びそれを用いた二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の二次電池用組成物は、少なくとも下記一般式(1)で表される熱硬化性化合物と、導電性材料と、を含む二次電池用組成物であり、分子量が500以下の熱硬化性成分の比率が5%以下であることを特徴とする。
【0027】
【化4】


一般式(1)において、Xは熱架橋性基を表し、加熱により架橋反応性を示す官能基であれば特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)から一般式(7)で表される基が挙げられる。
【0028】
【化5】

【0029】
上記一般式(2)から一般式(7)において、Rは置換基を表し、Rは二価の連結基を、A、Aはそれぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−、−CO−、−CONH−、炭素数1〜6のアルキレン基、又は炭素数2〜6のアルケニレン基を表す。mは0〜10の整数、mは0〜4の整数を表す。但し、mが0の場合は、Aは単結合ではないものとする。
【0030】
上記一般式(1)から一般式(7)において、R〜R及びRはそれぞれ独立に置換基を表すが、該置換基としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−Iなど)、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、アルキルアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、モノアリールホスフォノ基、ジアルキルホスフォノオキシ基、ジアリールホスフォノオキシ基、アルキルアリールホスフォノオキシ基、モノアルキルホスフォノオキシ基、モノアリールホスフォノオキシ基、モルホリノ基、シアノ基、ニトロ基が挙げられる。
【0031】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。アラルキル基としては、上記のアルキル基に上記のアリール基が置換したものを挙げることができる。
【0032】
これらのうち、R〜R及びRとしては、それぞれ独立に原料の入手性や製造の容易性の観点で、好ましいものとしては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl)、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、シアノ基が挙げられる。
【0033】
これらのうち、より好ましいものとしては水素原子、ハロゲン原子(−F、−Cl)、アルキル基(メチル基、トリフロロメチル基、エチル基、トリフロロエチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基)、アリール基(フェニル基、トリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基)、アリーロキシ基(フェノキシ基)、アシルオキシ基(アセトキシ基、プロピオニルオキシ基)、アセチル基、アセトキシ基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基、アシルアミノ基(アセチルアミノ基)が挙げられる。
中でも水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフロロメチル基、エチル基、トリフロロエチル基、フェニル基、トリル基、メシチル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ベンジル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、アセチル基、アセトキシ基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基、アセチルアミノ基が更に好ましく、特に無置換が好ましい。
【0034】
一般式(1)において、Rは二価の連結基を表すが、該二価の連結基としては、該連結基内にベンゼン環を含有する炭素数6〜20の二価の連結基が挙げられる。該連結基内に含まれるベンゼン環は更に置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、前記R〜R及びRとして挙げられた置換基が挙げられ、好ましい置換基も前記R〜R及びRとしての好ましい置換基と同様である。Rとしては、例えば、下記で表される連結基が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
これらの中でも、原料の入手性、一般式(1)で表される熱硬化性化合物の合成の容易性、熱架橋反応性、二次電池に用いた時の化学的安定性や耐久性等から、炭素数6〜15の二価の連結基が好ましく、炭素数6〜12の二価の連結基がより好ましく、更に、
【0038】
【化8】


が好ましく、特にフェニレン基が好ましい。
【0039】
一般式(1)において、m1〜m4はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、原料の入手性、一般式(1)で表される熱硬化性化合物の合成の容易性、熱架橋反応性等から、m1〜m4はそれぞれ独立に0〜2が好ましく、更にそれぞれ独立に0が好ましい。、m1〜m4が複数の場合、R〜Rで表される置換基はそれぞれ独立に同じであっても、または、異なっていてもよい。
【0040】
一般式(1)において、nは1〜50の整数を表すが、一般式(1)で表される熱硬化性化合物の合成の容易性、熱架橋反応性、二次電池に用いた時の化学的安定性や耐久性、そして塗布の際に使用する溶媒に対する溶解性等から、nは1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。更に1〜5が好ましく、特に1〜3が好ましい。nが複数の場合、一般式(1)中の大括弧内で表される基は互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0041】
前記一般式(2)から一般式(7)において、Rは二価の連結基を表すが、該二価の連結基としては、該連結基内にベンゼン環を含有する炭素数6〜20の二価の連結基が挙げられる。該連結基内に含まれるベンゼン環は更に置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、前記R〜R及びRとして挙げられた置換基が挙げられ、好ましい置換基も前記R〜R及びRとしての好ましい置換基と同様である。Rとしては、例えば、下記で表される連結基が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
【化9】

【0043】
【化10】

【0044】
これらの中でも、原料の入手性、一般式(1)で表される熱硬化性化合物の合成の容易性、熱架橋反応性、二次電池に用いた時の化学的安定性や耐久性等から、炭素数6〜15の二価の連結基が好ましく、炭素数6〜12の二価の連結基がより好ましく、更に、
【0045】
【化11】


が好ましく、特にフェニレン基が好ましい。
【0046】
前記一般式(2)〜一般式(7)において、A、Aはそれぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−、−CO−、−CONH−、炭素数1〜6のアルキレン基、又は炭素数2〜6のアルケニレン基を表す。該炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、パーフロロプロピリデン基、ブチレン基、ヘキシレン基などが、該炭素数2〜6のアルケニレン基としては、例えば、エテニレン基、プロペニレン基、イソプロペニレン基、ブテニレン基などが挙げられる。
【0047】
これらの中でも、A、Aは原料の入手性、一般式(1)で表される熱硬化性化合物の合成の容易性、熱架橋反応性、二次電池に用いた時の化学的安定性や耐久性等から、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、−SO−、−CO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン基が好ましく、単結合、酸素原子、−SO−、−CO−、炭素数1〜3のアルキレン基がより好ましく、酸素原子、−SO−が更に好ましく、特に酸素原子が好ましい。
【0048】
前記一般式(2)〜一般式(7)において、mは0〜10の整数、mは0〜4の整数を表すが、原料の入手性、一般式(1)で表される熱硬化性化合物の合成の容易性、熱架橋反応性、二次電池に用いた時の化学的安定性や耐久性等から、mは0〜4の整数、mは0〜2の整数が好ましく、より好ましくは、mは0〜2の整数、mは0〜2の整数であり、更に、mは0〜1の整数、mは0が好ましく、特にmは0、mは0が好ましい。mが複数の場合、−A−R−で表される基は互いに同じであっても、異なっていてもよい。また、mが複数の場合、−Rで表される基は互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0049】
前記一般式(1)におけるXで表される熱架橋性基としては、前記一般式(2)から一般式(7)で表される基が挙げられるが、中でもXとしては、原料の入手性、一般式(1)で表される熱硬化性化合物の合成の容易性、熱架橋反応性、二次電池に用いた時の化学的安定性や耐久性等から、前記一般式(2)〜一般式(4)及び一般式(6)で表されるXが好ましく、前記一般式(2)又は一般式(4)で表されるXが好ましく、特に前記一般式(2)で表されるXが好ましい。
【0050】
前記一般式(2)から一般式(7)で表される熱架橋性基の具体例としては、例えば、下記に示すものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
【化12】

【0052】
【化13】

【0053】
【化14】

【0054】
【化15】

【0055】
【化16】

【0056】
【化17】

【0057】
【化18】

【0058】
本発明において、ベンゼン環からの任意の結合様式は、置換可能な任意の位置を表す。また、既にある置換基で置換されている場合は、残りの置換可能な任意の位置を表す。例えば、
【0059】
【化19】


の場合で更に説明すると、この場合は下記の3種のいずれかを表すことを意味する。
【0060】
【化20】


本発明では、それらが混合物となっていてもよい。
【0061】
本発明の一般式(1)で表される熱硬化性化合物の具体例としては、例えば下記の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
【化21】

【0063】
【化22】

【0064】
【化23】

【0065】
【化24】

【0066】
【化25】

【0067】
【化26】

【0068】
【化27】

【0069】
【化28】

【0070】
本発明の二次電池用組成物中に含まれる熱硬化性化合物の割合は、得られる電極の機械的強度や二次電池としての耐久性に優れることから、溶媒を含まない場合は、30〜99質量%が好ましく、さらに好ましくは40〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%である。溶媒を含む場合は、溶液の安定性と塗布特性に優れることから、1〜80質量%が好ましく、さらに好ましくは2〜50質量%、特に好ましくは5〜30質量%である。
【0071】
本発明の二次電池用組成物は、少なくとも導電性材料を含有する。該導電性材料としては、特に限定されるものではなく、各種蓄電デバイスに用いられる従来公知の電極活物質から、目的とする蓄電デバイスに応じたものを適宜選択して用いればよい。なお、蓄電デバイスとは、化学的、物理的または物理化学的に電気を蓄えることのできる装置または素子等をいい、例えば、リチウム電池、リチウムイオン電池等の二次電池、電気二重層キャパシタなどの充放電可能なデバイスが挙げられる。該導電性材料としては、黒鉛粉末、活性炭粉末、アセチレンブラック、カーボンブラック等の炭素材料、金属又は導電性金属酸化物の微粒子などが挙げられる。前記導電性金属酸化物としては、例えば、TiO、Vなどの酸化物、TiS、MoSなどの金属カルコゲン化物、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiCrO、LiMnなどのLi含有複合酸化物などが挙げられる。これらの中でも本発明の二次電池用組成物中での均一分散性、低含水率、電極成形性、二次電池に用いた時の化学的安定性や耐久性等の点から、カーボンブラックを主体とした炭素材料が好ましい。
これら導電性化合物の配合量は、得られる二次電池特性に優れることから、1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。
【0072】
例えば、リチウム電池およびリチウムイオン電池の場合、正極に含まれる正極活物質と
しては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMnなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、MnO、Vなどの遷移金属酸化物、MoS、TiSなどの遷移金属硫化物、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物、ポリ(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)などのジスルフィド化合物などが用いられる。
【0073】
負極に含まれる負極活物質としては、リチウム金属、リチウムアルミニウム合金等のリ
チウム合金、リチウムを吸蔵・放出できる炭素質材料、黒鉛、フェノール樹脂、フラン樹脂、炭素繊維、ガラス状炭素、熱分解炭素、活性炭などが用いられる。
【0074】
電気二重層キャパシタの場合、電極として一対の分極性電極が用いられ、この分極性電
極を構成する材料としては、電気化学的に不活性な高比表面積の材料であれば、特に限定
はなく、活性炭, カーボンブラック等の炭素質材料、ポリアセン、金属微粒子、導電性金属酸化物微粒子等を用いることができる。中でも、非水電解液に対して電気化学的に不活性であるとともに、適度の導電性を有することから、炭素材料が好適に用いられる。
【0075】
本発明の二次電池用組成物は、前記一般式(1)で表される熱硬化性化合物を有機溶媒に溶かした溶液に、炭素粉末等の導電性材料及び必要に応じて他の導電剤粉末、更には必要に応じて他のバインダーや添加剤を混合してスラリーとした後、ドクターブレード法等にて集電体金属上に塗布、或いは、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法のごとき成形方法等により配設し、乾燥して有機溶媒を蒸散させた後、加熱硬化させることにより二次電池用の負極や正極等の電極、或いは電気二重層キャパシタの分極性電極等の作製に用いられる。
【0076】
前記電極等の作製に用いられる有機溶媒としては、前記一般式(1)で表される熱硬化性化合物を溶解、あるいは分散できる有機溶媒であれば特に限定されないが、例えば、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドンなど)、スルホン系溶媒(例えばスルホランなど)、スルホキシド系溶媒(例えばジメチルスルホキシドなど)、ウレイド系溶媒(例えばテトラメチルウレアなど)、エーテル系溶媒(例えばジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソールなど)、ケトン系溶媒(例えばアセトン、シクロヘキサノンなど)、炭化水素系溶媒(例えばトルエン、キシレン、n−デカンなど)、ハロゲン系溶媒(例えばテトラクロロエタン,クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルムなど)、ピリジン系溶媒(例えばピリジン、γ―ピコリン、2,6−ルチジンなど)、エステル系溶媒(例えば酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ラクトン系溶媒(例えばγ−ブチロラクトン等)、セロソルブ系溶媒(ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、カーボネート系溶媒(例えばプロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等)およびニトリル系溶媒(例えばアセトニトリルなど)を単独或いは併用して用いる。このうち好ましくはアミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ウレイド系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン系溶媒、セロソルブ系溶媒、カーボネート系溶媒、およびニトリル系溶媒であり、更に好ましくはアミド系溶媒、ケトン系溶媒、カーボネート系溶媒、およびニトリル系溶媒であり、更に好ましくはアミド系溶媒およびケトン系溶媒である。これらの溶媒は単独又は二種類以上を混合して用いても良い。
【0077】
これらの電極は通常、集電体と呼ばれる金属や黒鉛などの電子伝導性の抵抗の小さい単体や層や箔と接合されている。これらの集電体には通常電気化学的に耐食性のアルミウム、チタン、タンタルなどのバルブ金属、SUS304、SUS316Lなどのステンレス鋼、金、白金などの貴金属、黒鉛、グラッシーカーボン、カーボンブラックを含む導電性ゴムなどの炭素系材料などが用いられる。
【0078】
前記箔として用いられる金属箔としては電極を製造する際に用いられるものであれば、その組成や形状等は特に制限されず、通常用いられている1〜200μmのものを使用できる。アルミニウム、銀、金、クロム、銅、鉄、マンガン、ニッケル、スズ、鉛、チタン、タングステン、モリブデン、亜鉛等の箔などが挙げられる。また、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等を中間層とし、この両面に0.5〜15μmの銅層と10〜300μmの銅層を設けた3層構造の複合箔あるいはアルミニウムと銅箔を複合した複合箔を用いることもできる。
これらの中でも金属箔としては、銅、アルミニウム、金、銀の金属箔が好ましく、特にアルミニウム箔、銅箔が好ましい。
【0079】
本発明の二次電池用組成物には、前記導電性材の結合性や得られる電極の耐久性、電極層と集電体との接着性などの点から、必要に応じて更に、樹脂成分を含有してもよい。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルベンザールなどのアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ尿素樹脂、メラミン樹脂、ナイロン−6、ナイロン−11、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリ弗化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアリレート樹脂、エポキシ樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シェラック、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等などがあげられる。
【0080】
本発明の二次電池用組成物は、前記一般式(1)で表される熱硬化性化合物のフラグメントやその他の分子量が500以下の熱硬化性成分の比率が該二次電池用組成物の全固形分当り5質量%以下であることを要する。前記分子量が500以下の熱硬化性成分の比率が5質量%以下であることにより、前記二次電池用組成物を用い硬化して得られる電極における導電性材料の結着性の向上や、電極層と集電体との接着性の向上、電極を構成要素とする蓄電デバイスの耐久性の改善等を図ることができる。前記分子量が500以下の熱硬化性成分の比率は、3質量%以下であることより好ましく、更に2質量%であることが好ましい。
【0081】
本発明の二次電池用組成物は、基本的に無触媒で加熱架橋硬化し得るものであるが、必要に応じて、少量のラジカル発生剤やジアミン化合物等の多価アミン化合物等の硬化促進助剤を添加してもよい。ラジカル発生剤としては、前記一般式(1)で表される熱硬化性化合物の硬化反応を開始、進行させる機能を有し、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤、放射線吸収剤の励起電子を受容してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤、又は、励起した放射線吸収剤に電子移動してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤など、エネルギーを付与することでラジカルを生成させるものであればいかなる化合物を用いてもよい。
【0082】
ラジカル発生剤として、具体的には、例えば、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジド、活性ハロゲン化合物、オニウム塩化合物、オキシムエステル化合物、トリアリールモノアルキルボレート化合物などが挙げられる。これら複数の異なるラジカル発生機構を有する化合物を併用して用いてもよい。
【0083】
前記ラジカル発生剤を使用する場合は、前記一般式(1)で表される熱硬化性化合物に対して前記ラジカル発生剤を0.001質量%〜10質量%、より好ましくは0.01質量%〜5質量%、更に好ましくは0.05質量%〜2質量%程度添加して用いられる。
【0084】
本発明の二次電池用組成物には、接着剤、コーティング剤やその他の適用目的に応じて、上記バインダー樹脂および溶剤のほかに、酸化防止剤、界面活性剤、UV吸収剤、染料、顔料、着色剤、香料、帯電防止剤、難燃剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐候性安定剤、可塑剤、離形剤、滑剤、ブロッキング防止剤、シランカップリング剤、加工助剤、耐衝撃助剤等の各種添加剤や炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、マイカ、ケイ酸カルシウムなどの無機充填材、有機充填材、フィラー等を配合してもよい。
添加量は二次電池用組成物固形分に対して、通常0.01質量%〜50質量%程度配合されるが、0.1質量%〜70質量%程度配合することが好ましい。より好ましくは0.2質量%〜80質量%程度配合することが望ましい。
【0085】
<硬化物を形成するための硬化条件>
本発明の二次電池用組成物を硬化させるに必要な条件は、特に限定されないが、紫外線や可視光等の電磁波や電子線、熱、ラジカルや酸、塩基等を添加する方法等が利用可能であるが、特に添加剤を使用しないことや反応効率に優れる点から、熱による硬化反応が好ましい。
【0086】
熱による硬化反応を行う場合、好ましい温度条件は、反応の効率が高くなることや得られた硬化物が機械特性に優れること、電極層と集電体との接着性などの観点から硬化温度は低温が望ましく、具体的温度範囲としては100℃〜400℃が好ましく、さらに好ましくは150℃〜350℃、より好ましくは200℃〜300℃である。硬化時の処理温度が100℃未満であった場合には硬化反応が不充分となって電池としての耐久性が不足し、400℃を超えると集電体の酸化が起こって抵抗値が大きくなり易く、また、二次電池用組成物の熱分解が起こりやすくなるために好ましくない。
【0087】
本発明の二次電池用組成物を用い硬化して得られる電極を構成要素とするリチウム電池等の二次電池や、電気二重層キャパシタなどの蓄電デバイスには通常電解液組成物が用いられる。該電解液組成物には、蓄電デバイスの耐久性等の観点から、非水系の有機電解液組成物が好ましい。該有機電解液は特に限定されず、公知の有機溶媒にイオン解離性の塩類を含む有機電解液を使用できる。中でも第4級アンモニウムカチオンや第4級ホスホニウムカチオン等の第4級オニウムカチオンと、BF- 、PF- 、ClO- 、CFSO- 等のアニオンとからなる塩を有機溶媒に溶解させた有機電解液を使用するのが好ましい。
【0088】
上記有機電解液用の有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドン等のアミド系溶媒又はこれらの混合溶媒が好ましく使用できる。
【0089】
本発明の一般式(1)で表される熱硬化性化合物の製造方法としては、特に制限されないが、US4550210公報、US4547592公報、US4356325公報、特開昭60−42457公報、特開平10−310619公報等に記載の方法を参考にして公知の方法により製造することができる。
【0090】
本発明の一般式(1)で表される熱硬化性化合物の分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、光散乱法、遠心沈降法、粘度測定法等公知の方法により測定することができる。例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)では(東ソー(株)製「RI−8020」等)に、有機溶媒系SEC等のカラムを装着し、標準試料としてポリスチレンを用い、テトラヒドロフラン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を溶離液として行うことができる。本発明の分子量値は重量平均分子量(Mw)である。
【0091】
本発明では、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。また、条件としては、試料濃度を0.045mg/mL、流速を0.35mL/min、サンプル注入量を10μL、測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行なった。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製した。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0093】
<合成例1>
4,4’−フルオロジフェニルスルホンを2.543(10.0mmol)gと、レゾルシノールを0.551g(5.00mmol)とをジメチルアセトアミド(以下DMAC)15mlとトルエン20mlに溶解し、炭酸カリウムを2.76g(20.0mmol)加えて窒素気流下、130℃で1時間還流した。その後、170℃に昇温し、トルエンを留出し、さらに2時間反応させた。反応後、水へ再沈殿させ、濾過、乾燥させて微桃色の粉末状のフッ素末端ポリマーを得た。得られたフッ素末端ポリマーを3g、3−エチニルフェノールを0.47g(3.98mmol)、炭酸カリウムを0.83gとをフラスコに入れ、DMAC15ml、トルエン20mlを加え、窒素気流下、120℃で1時間還流し、165℃に昇温しトルエンを留出した後、2時間反応させた。反応後、水へ再沈殿し、濾過、乾燥して、化学式(i)で示される分子量780の硬化性化合物1を得た。
【0094】
<合成例2>
4,4’−フルオロジフェニルスルホンを2.288g(9.00mmol)に、レゾルシノールを 0.661g(6.00mmol)に変更した以外は合成例1と同様にして反応を行い、分子量1100の硬化性化合物2を得た。
【0095】
<合成例3>
4,4’−フルオロジフェニルスルホンを2.179g(8.57mmol)に、レゾルシノールを0.708g(6.43mmol)に変更した以外は合成例1と同様にして反応を行い、分子量1400の硬化性化合物3を得た。
【0096】
<合成例4>
4,4’−フルオロジフェニルスルホンを2.006g(7.89mmol)に、レゾルシノールを0.782g(7.11mmol)に変更した以外は合成例1と同様にして反応を行い、分子量3500の硬化性化合物4を得た。
【0097】
<合成例5>
4,4’−フルオロジフェニルスルホンを1.910g(7.52mmol)に、レゾルシノールを0.824g(7.48mmol)に変更した以外は合成例1と同様にして反応を行い、分子量8600の硬化性化合物5を得た。
【0098】
<合成例6>
レゾルシノールを、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン1.430g(6.43mmol)に変更した以外は合成例3と同様にして反応を行い、分子量1500の硬化性化合物6を得た。
【0099】
<合成例7>
レゾルシノールを、ビスフェノールA1.468g(6.43mmol)に変更した以外は合成例3と同様にして反応を行い、分子量1500の硬化性化合物7を得た。
【0100】
<合成例8>
3−エチニルフェノールを、3−アリルフェノール0.534g(3.98mmol)に変更した以外は合成例3と同様にして反応を行い、分子量1500の硬化性化合物8を得た。
【0101】
<合成例9>
3−エチニルフェノールを、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド0.753g(3.98mmol)に変更した以外は合成例3と同様にして反応を行い、分子量1600の硬化性化合物9を得た。
【0102】
<合成例10>
3−エチニルフェノールを、N−(4−ヒドロキシフェニル)ナジイミド1.016g(3.98mmol)に変更した以外は合成例3と同様にして反応を行い、分子量1700の硬化性化合物10を得た。
【0103】
<合成例11>
4−ブロモフェニルエーテルを6.56g(0.02モル)を50mlのトリエチルアミンに溶かし、窒素気流下、3.55g(0.05モル)の2−メチル−3−ブチン2−オールを加えた。その後、トリフェニルフォスフィンを0.12g、ヨウ化銅を0.03g、パラジウム触媒を0.03g添加し、80℃で20時間、窒素気流下で反応させた。その後、反応液を濾過し、その濾過物をトリエチルアミンで洗浄し、濾液から溶媒をエバポレータで除去し、クロロホルムを加えた後、5%HSO水溶液で洗浄した後、水洗した。その後、クロロホルムを除去し、真空乾燥して黄色粉末状のブチンアダクト体を得た。得られたブチンアダクト体の6.9g(0.02モル)を40mlのトルエンに溶解し、さらに20mlのメタノールを加えて完全に溶解した。これに、窒素気流下で2.4g(0.06モル)のNaOHを加え、100℃で30分間、還流した後、温度を120℃に上げ、メタノールを徐々に留出した後、2〜3時間攪拌しながら十分に反応させた。反応後、クロロホルムを加え、水洗後、クロロホルム層を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過し、エバポレータで溶媒を除去して、黒色の液体を得た。この液体を常温で真空乾燥させると徐々に固化し、茶色のジ(4−エチニルフェニル)エーテル(低分子量の硬化性化合物11)を得た。
【0104】
[負極の調製]
1)電極用組成物の調製
負極活物質として活性炭(MSP−20、BET比表面積2000m/g、関西熱化学(株)製)、導電性カーボンとしてHS−100(電気化学工業(株)製)、そしてバインダー樹脂としてポリフッ化ビニリデン樹脂(ガラス転移温度−30℃、アルドリッチ社製)、溶媒としてNMPを、活物質/導電性カーボン/バインダー樹脂=90/5/5、固形分33%となる割合で混合してペースト状にし、電極用組成物を調製した。
2)負極の調製
得られたペースト状の電極用組成物を銅箔(10μm)上に塗布して80℃で30分溶媒を乾燥させた後、さらに窒素雰囲気下で300℃×2時間熱処理し負極を作製した。
【0105】
<実施例1>
1)正極集電体の調製
バインダー成分として合成例1で得られた硬化性化合物1を20部を溶剤であるシクロヘキサノン100部で均一に溶解した。ただし、硬化性化合物4および5はシクロヘキサノンへの溶解性が低く、硬化性化合物4の10部に対してシクロヘキサノン100部を、硬化性化合物5の5部に対してシクロヘキサノン100部を使用した。
次いで、このバインダー成分70重量%に対し、ケッチェンブラックEC−600JDを30重量%配合し、これをアルミニウム板(厚さ0.1mm)上に塗布し、105℃/30分、次いで250℃×1時間の熱処理を行い、アルミニウム箔と接着及び熱硬化させた。
【0106】
2)正極の調製
正極活物質と導電性付与剤とを混合し、結着剤を溶解させたNMP中に均一に分散させスラリーを作製した。正極活物質としてはLiMnを用い、導電性付与剤にはカーボンブラックを用い、結着剤としてPVDFを用いた。そのスラリーを、上記正極集電体上に塗布後、NMPを蒸発させることにより正極層を形成し正極を作製した。正極合剤層中の固形分比率は、正極活物質/導電性付与剤/結着剤=80/10/10(質量%)とした。
【0107】
3)二次電池の調製
上記で得られた正極と負極とをポリエチレンおよびポリプロピレンからなるセパレータを介して積層し、ポリプロピレン樹脂(融着層、厚さ70μm)、ポリエチレンテレフタレート(20μm)、アルミニウム(50μm)、ポリエチレンテレフタレート(20μm)の順に積層した構造を有するアルミラミネートフィルム2枚を用いて上記の電極積層体を挟み、電極積層体の周囲を熱融着させてラミネート型電池を作製した。電解液として、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=30/70(体積%)に、電解質として1mol/LのLiPFを溶解させたものを、最後の1辺を熱融着封口する前に電極積層体に含浸させ、ラミネート型電池を作製した。
【0108】
<実施例2〜5>
実施例1において用いた硬化性化合物1をそれぞれ硬化性化合物2〜10に変更した以外は実施例1と同様にしてそれぞれ実施例2〜10の電池を作製した。
【0109】
<比較例1>
実施例1において用いた硬化性化合物1を低分子量の硬化性化合物6に変更した以外は実施例1と同様にして比較例1の電池を作製した。
【0110】
<比較例2>
実施例1において用いた硬化性化合物1を、硬化性化合物1と低分子量の硬化性化合物との3/7(重量比)の混合物に変更した以外は実施例1と同様にして比較例2の電池を作製した。
【0111】
<比較例3>
実施例1において用いた硬化性化合物1を、硬化性化合物1と低分子量の硬化性化合物との9/1(重量比)の混合物に変更した以外は実施例1と同様にして比較例3の電池を作製した。
【0112】
<比較例4>
実施例1において、電極用組成物のバインダー樹脂として用いた硬化性化合物1の替わりに、ポリフッ化ビニリデン樹脂(ガラス転移温度−30℃、アルドリッチ社製)をNMPに溶解させた液を用い、熱処理を80℃で4時間(300℃の熱処理無し)の熱処理に変更した以外は実施例1と同様にして比較例4の電池を作製した。
【0113】
上記各実施例および比較例で得られた二次電池について下記耐久性試験を行った。結果を表1に示す。
【0114】
[1]電解液浸漬試験
正極(比較例4は加熱処理なし)の厚さ(c)を測定した後、上記電解液に50℃にて100時間浸漬する電解液浸漬試験を行い、電解液より取り出した正極をジエチルカーボネートにて洗浄、自然乾燥させた後の正極合剤層の厚さ(d)を測定し、厚さ変化率(%)=(d−c)/cとして算出し、表1に示した。(2%以下を合格とした)
【0115】
[2]充放電サイクル試験
調製した電池を用い、エスペック社製「二次電池充放電試験装置」を用いて、室温(25℃)にて、電流値100mAの定電流および定電圧にて終止電圧4.3Vまで5時間充電し、次に電流値100mAの定電流下、終止電圧3.0Vまで放電した後、充放電サイクル試験として、充電レート1C、放電レート1Cにて、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0Vの条件にて充放電サイクル試験を行い、容量維持率(%)=500サイクル後の放電容量/10サイクル目の放電容量 として算出し、表1に示した。(90%以上を合格とした)
【0116】
【表1】

【0117】
表1の結果より、実施例1〜5で得られた電池は、比較例1〜4の電池に比べて耐久性が大きく向上した。電解液浸漬試験での厚み変化が少ないこと、即ち本発明の重合体をバインダー樹脂として用いた正極の極めて膨潤が少ないことが、耐久性の向上をもたらしたものと推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(1)で表される熱硬化性化合物と、導電性材料と、を含み、分子量が500以下の熱硬化性成分の比率が5%以下であることを特徴とする二次電池用組成物。(一般式(1)において、Xは熱架橋性基を、R〜Rはそれぞれ独立に置換基を表し、Rは二価の連結基を、m1〜m4はそれぞれ独立に0〜4の整数を、nは1〜50の整数を表す。)
【化1】

【請求項2】
前記一般式(1)におけるXが下記一般式(2)〜(7)で表されることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用組成物。(下記一般式(2)〜(7)において、Rは置換基を表し、Rは二価の連結基を、A、Aはそれぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−、−CO−、−CONH−、炭素数1〜6のアルキレン基、又は炭素数2〜6のアルケニレン基を表す。mは0〜10の整数、mは0〜4の整数を表す。)
【化2】

【請求項3】
前記一般式(1)におけるXが下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用組成物。(下記一般式(2)において、Rは置換基を表し、Rは二価の連結基を、A、Aはそれぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−、−CO−、−CONH−、炭素数1〜6のアルキレン基、又は炭素数2〜6のアルケニレン基を表す。mは0〜10の整数、mは0〜4の整数を表す。)
【化3】

【請求項4】
前記一般式(2)における、Aが酸素原子を表し、mが0、mが0であることを特徴とする請求項3に記載の二次電池用組成物。
【請求項5】
前記導電性材料がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかの1項に記載の二次電池用組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される熱硬化性化合物の組成物全質量に対する含有量が1質量%以上95質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかの1項に記載の二次電池用組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかの1項に記載の二次電池用組成物を硬化した層を集電体上に有することを特徴とする二次電池用電極。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかの1項に記載の二次電池用組成物を塗布し、硬化した層を金属箔上に有することを特徴とする二次電池用電極。
【請求項9】
請求項7、または請求項8に記載の二次電池用電極を備えた二次電池。

【公開番号】特開2011−165480(P2011−165480A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26908(P2010−26908)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】