説明

二次電池用電極の製造方法

【課題】活物質が膨張・収縮により微粉化する問題の発生を効果的に抑制し、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池用電極を提供する。
【解決手段】活物質5a、5bを含む活物質スラリーを、担体となる多孔質部材4の少なくとも一方の面に塗布して活物質層3を形成する工程と、該多孔質部材4に担持された活物質層3を集電体2に接合する工程とを含む事を特徴とする。前記多孔質部材4の平均孔径は、前記活物質5a、5bの累積粒度分布におけるd50よりも小さく、d10よりも大きいものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用電極の製造方法に関する。特に、本発明は、活物質の膨張・収縮による問題の発生を抑制するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、および高いエネルギー密度を発揮することが求められている。したがって、全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、一般に、バインダを用いて正極活物質等を集電体の表面に塗布した正極と、バインダを用いて負極活物質等を集電体の表面に塗布した負極とが、電解質を含む電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
【0005】
かようなリチウムイオン二次電池に用いられる活物質として、例えば、負極では、炭素・黒鉛系負極材料や、リチウムと合金化しうるケイ素(Si)やスズ(Sn)等の合金系負極材料が用いられうる。特に、合金系負極材料は、炭素・黒鉛系負極材料と比較して高いエネルギー密度を達成することができるため、車両用電池の候補として期待されている。
【0006】
上記合金系負極材料は、リチウムイオンの吸蔵・放出に伴う膨張・収縮が特に大きく、例えば、リチウムイオンを吸蔵した場合の体積膨張は、黒鉛では約1.2倍であるのに対し、ケイ素系負極材料では約4倍にも達する。このように活物質が大きく膨張すると、充放電を繰り返した場合に活物質が崩壊して微細化し、電極から活物質が脱離する虞がある。また、薄膜状の活物質層の体積変化に伴って集電体に大きな応力が作用し、電極自体が大きくうねり変形する虞もある。これらの現象は、電池を構成した場合にサイクル特性の低下をもたらす可能性がある。
【0007】
該問題に対処するための技術として、特許文献1では、金属集電体の表面に、シリコン(ケイ素)を内包した金属発泡体が積層されてなる負極が開示されている。該文献によると、かような構成とすることにより、充放電サイクルにおける活物質の脱離が抑制され、電池の充放電サイクル特性が向上しうるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−259636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を以ってしても、活物質の膨張・収縮による問題の発生を十分に抑制できない場合があるという問題点を有していた。
【0010】
そこで本発明は、活物質の膨張・収縮による問題の発生を十分に抑制することができる、二次電池用電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の二次電池用電極の製造方法は、活物質を含む活物質スラリーを多孔質部材の一方の面に塗布して活物質層を形成する工程と、活物質層を集電体に接合する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、活物質層を構成する活物質のうち、多孔質部材の孔内に粒子径の小さいものが選択的に入り込み、多孔質部材の孔外に位置する活物質層は粒子径の大きな活物質で構成される。したがって、多孔質部材の孔外における活物質同士間の空隙が大きくなり、活物質の膨張代を確保することができる。これにより、活物質の膨張・収縮による問題の発生を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態にかかる二次電池用電極を模式的に表す断面図である。
【図2】図1の二次電池用電極の一部を拡大した図である。
【図3】本発明の他の一実施形態にかかる二次電池用電極を模式的に表す断面図である。
【図4】図3の二次電池用電極の一部を拡大した図である。
【図5】本形態に係る双極型でない積層型のリチウムイオン二次電池の全体構造を模式的に表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい形態を説明する。なお、以下では、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明するが、本発明はリチウムイオン二次電池以外の二次電池にも適用可能である。
【0015】
<電極の製造方法>
本形態は、活物質を含む活物質スラリーを多孔質部材の一方の面に塗布して活物質層を形成する第1の工程と、活物質層を集電体に接合する第2の工程と、を含む二次電池用電極の製造方法に関する。
【0016】
第1の工程では、まず、活物質を含む活物質スラリーを調整する。活物質スラリーは、活物質を溶媒等に分散させることによって調製されうる。また、活物質のほかにも、必要により導電助剤およびバインダなどの添加剤が活物質スラリーに添加されうる。
【0017】
[活物質]
活物質とは、可逆的にリチウムイオンを挿入および脱離することによって、電気エネルギーを生み出す機能を有するものをいう。正極を製造する場合には正極活物質を用いて活物質スラリーを調製する。一方、負極を製造する場合には負極活物質を用いて活物質スラリーを調製する。
【0018】
(正極活物質)
正極活物質は、放電時にリチウムイオンを吸蔵し、充電時にリチウムイオンを放出する組成を有する。好ましい一例としては、遷移金属とリチウムとの複合酸化物であるリチウム−遷移金属複合酸化物が挙げられる。具体的には、LiCoOなどのLi・Co系複合酸化物、LiNiOなどのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMnなどのLi・Mn系複合酸化物、LiFeOなどのLi・Fe系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したものなどが使用できる。これらリチウム−遷移金属複合酸化物は、反応性、サイクル特性に優れ、低コストな材料である。そのためこれらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池を形成することが可能である。この他、正極活物質としては、LiFePOなどの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V、MnO、TiS、MoS、MoOなどの遷移金属酸化物や硫化物;PbO、AgO、NiOOHなど、を用いることもできる。上記正極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0019】
正極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、正極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、二次電池は、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、正極活物質が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径が10nm〜1μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、正極活物質が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくても良いことはいうまでもない。かかる正極活物質の粒径および1次粒子の粒径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径を使用できる。なお、正極活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
【0020】
(負極活物質)
負極活物質は、放電時にリチウムイオンを放出し、充電時にリチウムイオンを吸蔵できる組成を有する。負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵および放出できるものであれば特に制限されないが、負極活物質の例としては、SiやSnなどの金属、あるいはTiO、Ti、TiO、もしくはSiO、SiO、SnOなどの金属酸化物、Li4/3Ti5/3もしくはLiMnNなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、Li−Pb系合金、Li−Al系合金、Li、または天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、もしくはハードカーボンなどの炭素材料などが好ましく挙げられる。このうち、リチウムと合金化する元素を用いることにより、従来の炭素系材料に比べて高いエネルギー密度を有する高容量および優れた出力特性の電池を得ることが可能となる。上記負極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。上記のリチウムと合金化する元素としては、以下に制限されることはないが、具体的には、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn、H、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等が挙げられる。
【0021】
上記活物質のうち、炭素材料、ならびに/またはSi、Ge、Sn、Pb、Al、In、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素を含むことが好ましく、炭素材料、Si、またはSnの元素を含むことがより好ましい。これらの負極活物質は、容量およびエネルギー密度に優れた電池を構成できる反面、充放電時の活物質の膨張・収縮による体積変化も大きく、活物質層が変形したり、電極から活物質が脱離しやすいという問題も有していた。よって、かような負極活物質を含む電極に本発明を適用することによって、活物質の膨張・収縮による上記問題を十分に抑制できるという本発明の効果がより顕著なものとなる。なお、これらの負極活物質は1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
なお、負極活物質の粒子径や形状は、特に制限されず、上述の正極活物質と同様の形態を取りうるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0023】
[溶媒]
活物質スラリーには、該スラリーの粘度を調整するために溶媒が添加されうる。かようなスラリー粘度調整溶媒としては、特に制限されることはないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0024】
[導電助剤]
導電助剤とは、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト等のカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF;登録商標)等の種々の炭素繊維、膨張黒鉛などが挙げられる。しかし、導電助剤がこれらに限定されないことはいうまでもない。
【0025】
[バインダ]
バインダは、活物質層中の構成部材同士または活物質層と集電体とを結着させて電極構造を維持する目的で添加される。バインダとしては、特に制限はないが、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリイミド、PTFE、SBRなどの合成ゴム系バインダ等が挙げられる。しかし、バインダがこれらに限定されないことはいうまでもない。
【0026】
活物質スラリーはホモジナイザーまたは混練装置などを用いて活物質を含む固形分および溶媒よりインク化される。活物質ならびに必要に応じて添加されうる導電助剤および結着剤などの各成分を混合・分散する順序は特に制限されない。これらの全ての成分を同時に混合・分散してもよいし、成分毎に段階的に混合・分散するようにしてもよい。なお、各成分の配合比は二次電池用電極についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
【0027】
上記活物質スラリーを調製した後、これを多孔質部材の一方の面に塗布し、活物質層を形成する。
【0028】
[多孔質部材]
多孔質部材は、活物質層中に含まれる活物質のうち、粒子径が小さいものを保持できる形状であれば特に制限はなく、多孔質膜状、メッシュ状などの従来公知の形状を適宜採用することができる。また、多孔質部材の材料も特に制限はなく、例えば、金属、金属酸化物、および合金、高分子材料、ならびに炭素材料などが挙げられる。
【0029】
金属、金属酸化物、および合金に含まれる金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Sb、およびKを用いることが好ましい。かような金属、金属酸化物、または合金は耐熱性に優れるため、電極製造時の加熱に十分耐えることができる。このうち、耐電位性の観点から、Al、Ni、またはCuを含むことが好ましい。
【0030】
高分子材料としては、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE))、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリスルホン(PSF)、ポリアリレート(PAR)およびなどの熱可塑性樹脂;アラミド、ポリイミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびアルキド樹脂などの熱硬化性樹脂;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、およびポリオキサジアゾールなどの導電性高分子材料などが挙げられる。このうち、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド、およびポリイミドからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0031】
炭素材料としては、例えば、炭素繊維などが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0032】
なお、これらの金属、金属酸化物、および合金、高分子材料、ならびに炭素材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いても構わない。
【0033】
多孔質部材の平均孔径は、使用する活物質の粒子のサイズおよび分布により適宜選択することができる。好ましくは、多孔質部材の平均孔径が活物質の累積粒度分布におけるd50よりも小さく、d10よりも大きくなるものを使用する。平均孔径がかような範囲にある多孔質部材を採用することによって、多孔質部材の孔内に適度な大きさおよび量の活物質粒子を充填させることができるために、活物質層の変形や、電極からの活物質の脱離を効果的に抑制することができる。もしも、多孔質部材の平均孔径が過度に小さすぎると、多孔質部材の孔内に活物質が入り込めなくなる虞がある。これにより、多孔質部材の孔外にも粒子径の小さい活物質が配置される可能性がある。また、多孔質部材の平均孔径が過度に大きすぎても、粒子径の小さな活物質を選択的に多孔質部材の孔内に充填することが困難となる。よって、この場合も多孔質部材の孔外に粒子径の小さい活物質が配置されることとなる。これらの原因により、活物質同士間の空隙が小さくなってしまい、膨張代が確保できなくなるので、活物質の変形や、活物質の微細化を伴う活物質の脱離を抑制する効果が十分に発揮されない虞がある。なお、本明細書において、「累積粒度分布」は、レーザー回折・散乱法の粒度分布測定装置により計測されたものを採用する。該累積粒度分布におけるd50は、累積値が50%を示す粒子径を意味し、d10は累積値が10%を示す粒子径を意味する。ここでいう「粒子径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味する。かような累積粒度分布は、例えば、日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置(型式HRA9320−X100)等を用いて測定することができる。
【0034】
多孔質部材の空孔率は、より多くの活物質を充填させることができる観点から大きいほうが好ましいが、多孔質部材の構造上の問題から上限は98%程度である。
【0035】
活物質スラリーを多孔質部材の一方の面に塗布する方法は、特に制限はなく、ダイコーター法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法などの従来公知の方法を適宜採用することができる。そして、塗布した活物質スラリーから溶媒を乾燥させることにより、活物質層を形成する。
【0036】
このように、活物質スラリーを多孔質部材の表面に塗布することにより、活物質スラリーに含まれる活物質のうち、粒子径が小さいもの多孔質部材の孔内に選択的に保持させることができる。よって、多孔質部材の孔外に位置する活物質は、粒子径が大きく、隣り合う活物質同士の空隙も大きくなる。これにより、活物質の膨張代を確保することができるため、活物質の膨張・収縮に伴う活物質層の変形や、電極からの活物質の脱離を抑制することができる。
【0037】
なお、多孔質部材の一方の面に活物質層を形成した後、多孔質部材の他方の面に同様に活物質スラリーを塗布して乾燥させることにより、活物質層の中間に多孔質部材を配置してもよい。
【0038】
本形態の製造方法における第2の工程では、上記第1の工程で形成した活物質層を集電体に接合する。
【0039】
[集電体]
集電体は導電性材料から構成され、その一方の面または両面に活物質層が配置される。集電体を構成する材料に特に制限はなく、例えば、金属や、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された導電性を有する樹脂が採用されうる。
【0040】
金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス鋼、および銅が好ましい。
【0041】
また、導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。
【0042】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE))、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、およびポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
【0043】
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Sb、およびKからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はないが、アセチレンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、5〜35質量%程度である。
【0044】
本形態にかかる集電体は、上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加されてなる樹脂から構成される、導電性を有する樹脂層を含むことが好ましい。導電性を有する樹脂層は、金属からなる集電体よりも面方向の電気抵抗が高いために、電池に釘などの金属棒が刺さった場合であっても、金属棒への電流集中を抑制することができ、電池の加熱または発火などを防ぐことができる。また、導電性を有する樹脂層は、活物質層との接触抵抗が高いために、活物質層が変形したり、活物質が脱離したりした場合に、金属からなる集電体と比較して電極の電気抵抗が急増しやすいという問題点を有していた。しかしながら、本発明によると、活物質の膨張による活物質の微細化を防ぐことができるため、導電性を有する樹脂層を集電体としても用いた場合であっても、活物質層の変形や、集電体から活物質の脱離が抑制され、電極の電気抵抗の急増を防ぐことができる。特に、後述の双極型二次電池においては面厚方向の電気抵抗の低減が重要である。よって、導電性を有する樹脂層を集電体とする双極型電極に本発明を適用することによって、本発明の効果が顕著に発揮されうる。
【0045】
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はないが、通常は1〜100μm程度である。
【0046】
活物質層と集電体との接合方法は、特に制限はなく、従来公知の方法を適宜採用することができる。例えば、活物質層と集電体との間に接着剤を塗布して張り合わせることによって接合してもよいし、ホットプレスによって熱融着することによって接合してもよい。
【0047】
以上の二次電池用電極の製造方法によって製造される電極および該電極を用いた二次電池もまた、本発明の技術的範囲に属する。以下、図面を参照しながら、本形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0048】
<電極>
本形態の二次電池用電極は、集電体と、活物質を含む活物質層と、多孔質部材と、が順次配置されてなる。そして、活物質の少なくとも一部が、多孔質部材の孔内に存在し、多孔質部材の孔外に存在する活物質の平均粒子径が、多孔質部材の孔内に存在する活物質の平均粒子径よりも大きい。
【0049】
図1は、本発明の一実施形態にかかる二次電池用電極を模式的に表した断面図である。図1によると、電極1Aは、集電体2の一方の面に負極活物質層3および多孔質部材4が順次配置されてなる。集電体2はポリプロピレンに導電性フィラーとしてのケッチェンブラック(図示せず)が分散されてなる導電性を有する樹脂層からなる。負極活物質層3は負極活物質としてケイ素粉末(図示せず)を含む。多孔質部材4は、ポリエチレン製の多孔質フィルムからなる。図1に示すように、負極活物質層3の一部が多孔質部材4の孔内に入り込んだ構造を有している。
【0050】
図2は、図1の電極1Aの一部を拡大した図である。図2によると、負極活物質層3にはケイ素粉末(5a、5b)が含まれる。ここで、多孔質部材4の孔外に存在するケイ素粉末5aは、多孔質部材4の孔内に存在するケイ素粉末5aよりも平均粒子径が大きい。すなわち、粒子径が小さいケイ素粉末5bが選択的に多孔質部材4の孔内に充填された状態で配置されるために、多孔質部材4の孔外の粒子径が大きいケイ素粉末5a同士間の空隙が大きくなる(ケイ素粉末5bがケイ素粉末5a間の空隙を埋めない)。該空隙はケイ素粉末5aの膨張代としての役割を果たすため、充放電によってケイ素粉末5aが膨張した場合でも、隣り合うケイ素粉末5aに力がかかりにくくなる。よって、負極活物質層3の変形や、電極からのケイ素粉末5aの脱離が抑制される。
【0051】
また、図1および2の電極1Aにおいては、多孔質部材4が集電体2と対向する側の最外層に位置し、該多孔質部材4の孔の上部分(紙面の上側)にはケイ素粉末5bが充填されていない。かような構造を有することにより該多孔質部材4は、隣りあう電極同士の接触による短絡を防ぐセパレータとしての機能も併せ持つ。このように、多孔質部材がセパレータとしての機能する場合には、多孔質部材の厚さは100〜150μm程度とすることが好ましい。
【0052】
図3は、本発明の他の一実施形態にかかる二次電池用電極を模式的に表した断面図である。図1によると、電極1Bは、集電体2の一方の面に負極活物質層3および多孔質部材4が順次配置され、負極活物質層3の中間に多孔質部材4が配置された構造を有する。
【0053】
図4は、図3の電極1Bの一部を拡大した図である。図4によると、負極活物質層3にはケイ素粉末(5a、5b)が含まれる。ここで、多孔質部材4の孔外に存在するケイ素粉末5aは、多孔質部材4の孔内に存在するケイ素粉末5aよりも平均粒子径が大きい。電極1Bにおいても、上記図2の電極1Aと同様に、ケイ素粉末5a同士間の空隙は膨張代としての役割を果たす。よって、ケイ素粉末5aが膨張した場合であっても、負極活物質層3の変形や、電極からのケイ素粉末5aの脱離が抑制される。
【0054】
また、図3および4のように負極活物質層3の中間に多孔質部材を配置することにより、結果的に、多孔質部材4の孔外に位置する部分の負極活物質層3の厚みが小さくなる。これにより、多孔質部材4の孔内にケイ素粉末5bが充填されることによって生じるアンカー効果がより向上し、負極活物質層3の変形や、電極からの活物質の脱離が効果的に抑制される。このように、多孔質部材が活物質層の中間に位置する場合には、多孔質部材の厚さは10〜50μm程度とすることが好ましい。
【0055】
なお、本明細書において、「集電体と、活物質を含む活物質層と、多孔質部材と、が順次配置」とは、集電体と活物質層とが接する面よりも活物質層側に多孔質部材が存在することを意味する。よって、上述の図1のように、活物質層の集電体と接していない面側に多孔質部材が存在する形態であってもよいし、図3のように活物質層の中間に多孔質部材が存在する形態であってもよい。また、図1および図3の形態においては、活物質層は集電体の一方の面にのみ形成されているが、他方の面に活物質層が形成される形態ももちろん含まれる。
【0056】
電極に含まれる各構成部材については、上記二次電池用電極の製造方法で説明したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0057】
<二次電池>
図5は、本形態に係る双極型でない積層型のリチウムイオン二次電池(以下、単に「リチウムイオン電池」とも称する)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
【0058】
図5に示すように、本実施形態のリチウムイオン電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素17が、電池外装材であるラミネートフィルム22の内部に封止された構造を有する。詳しくは、高分子−金属複合ラミネートフィルムを電池外装材として用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、発電要素17を収納し密封した構成を有している。
【0059】
発電要素17は、正極集電体11の両面(発電要素の最下層用および最上層用は片面のみ)に正極活物質層12が配置された正極と、電解質層13と、負極集電体14の両面に負極活物質層15が配置された負極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの正極活物質層12とこれに隣接する負極活物質層15とが、電解質層13を介して対向するようにして、正極、電解質層13、負極がこの順に積層されている。
【0060】
これにより、隣接する正極、電解質層13および負極は、1つの単電池層16を構成する。したがって、本実施形態のリチウムイオン電池10は、単電池層16が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。また、単電池層16の外周には、隣接する正極集電体11と負極集電体14との間を絶縁するためのシール部(絶縁層)が設けられていてもよい。発電要素17の両最外層に位置する最外層正極集電体11aには、いずれも片面のみに正極活物質層12が配置されている。なお、図5とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素17の両最外層に最外層負極集電体が位置するようにし、該最外層負極集電体の片面のみに負極活物質層が配置されているようにしてもよい。
【0061】
正極集電体11および負極集電体14には、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板18および負極集電板19がそれぞれ取り付けられ、ラミネートフィルム22の端部に挟まれるようにラミネートフィルム22の外部に導出される構造を有している。正極集電板18および負極集電板19は、必要に応じて正極端子リード20および負極端子リード21を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体14に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。ただし、正極集電体11が延長されて正極集電板18とされ、ラミネートフィルム22から導出されていてもよい。同様に、負極集電体14が延長されて負極集電板19とされ、同様に電池外装材22から導出される構造としてもよい。
【0062】
なお、二次電池の他の形態としては、集電体の一方の面に正極活物質層が形成され、他方の面に負極活物質層が形成されてなる双極型電極が、電解質層を介して積層された双極型二次電池が挙げられる。上記リチウムイオン二次電池10と該双極型二次電池とは双方の電池内の電気的な接続形態(電極構造)が異なることを除いては、基本的には同様である。
【0063】
以下、本形態のリチウムイオン二次電池を構成する部材について簡単に説明するが、下記の形態のみに制限されることはなく、従来公知の形態も同様に採用されうる。
【0064】
[電解質層]
電解質層は、正極活物質層と負極活物質層との間の空間的な隔壁(スペーサ)として機能する。また、これと併せて、充放電時における正負極間でのリチウムイオンの移動媒体である電解質を保持する機能をも有する。
【0065】
電解質層を構成する電解質に特に制限はなく、液体電解質、ならびに高分子ゲル電解質および高分子固体電解質などのポリマー電解質が適宜用いられうる。
【0066】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート類が挙げられる。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiN(SO、LiN(SOCF、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSOCFなどの電極の活物質層に添加されうる化合物を同様に用いることができる。
【0067】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない高分子固体電解質に分類される。
【0068】
ゲル電解質は、リチウムイオン伝導性を有するマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。リチウムイオン伝導性を有するマトリックスポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体などが挙げられる。かようなマトリックスポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0069】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィンやポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素、ガラス繊維などからなる微多孔膜が挙げられる。なお、上述の図1で表される電極を用いた場合は、多孔質部材がセパレータの機能も兼ね備えるため、別途セパレータを配置せずに二次電池を構成することができる。ただし、かような形態の電極を用いた場合にさらにセパレータを用いる場合は、セパレータの破損による内部短絡をより効果的に防ぐことが可能となる。
【0070】
高分子固体電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が高分子固体電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0071】
高分子ゲル電解質や高分子固体電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発揮しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合などの重合処理を施せばよい。なお、上記電解質は、電極の活物質層中に含まれていてもよい。
【0072】
[集電板]
リチウムイオン二次電池においては、電池外部に電流を取り出す目的で、集電体に電気的に接続された集電板(正極集電板および負極集電板)が外装材であるラミネートフィルムの外部に取り出されている。
【0073】
集電板を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板と負極集電板とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0074】
[正極端子および負極端子リード]
図5に示すリチウムイオン電池10においては、正極端子リード20および負極端子リード21をそれぞれ介して、集電体は集電板と電気的に接続されている。
【0075】
正極および負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン電池で用いられるリードを用いることができる。なお、電池外装材から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
【0076】
[外装材]
外装材としては、従来公知の金属缶ケースを用いることができる。そのほか、図5に示すようなラミネートフィルム22を外装材として用いて、発電要素17をパックしてもよい。ラミネートフィルムは、例えば、ポリプロピレン、アルミニウム、ナイロンがこの順に積層されてなる3層構造として構成されうる。
【0077】
本形態の電極を用いた二次電池は、上述のように、活物質層の変形や、電極からの活物質の脱離を抑制できることから、従来の二次電池と比較してサイクル特性を著しく向上させることができる。
【0078】
また、上述の特許文献1の金属発泡体を使用した電極を用いて構成される二次電池では、金属発泡体と集電体が直接接する構造となっていたために、金属発泡体が集電体を突き破って穴あきが発生する虞があった。特に、双極型電極においては集電体が穴あきを起こすと隣りあう単電池層に電解液が流出入し、液絡を起こすという問題を有していた。また、電極がセパレータを介して積層されてなる構造を有する二次電池においても、金属発泡体とセパレータが直接接する構造となるために、セパレータの穴あきが発生する虞があった。セパレータの穴あきが発生すると、正極活物質層と負極活物質層とが直接接触することにより短絡を起こすという問題点も有していた。
【0079】
さらに、特許文献1の電極は、活物質層全体に金属発泡体が挿入されている構造を有している。金属発泡体自体は充放電反応に関与しないため、体積当たりの電池容量が小さくなってしまうという問題点も有していた。
【0080】
しかしながら、本形態の電極を用いた二次電池は、特許文献1のような金属発泡体を用いずに電極を構成できるために、上述のような問題点を解消することができる。
【実施例】
【0081】
<負極の作製>
[実施例1]
負極活物質としてケイ素粉末(累積粒度分布におけるd50が2μm、d10が0.1μm)を85質量部、導電助剤としてカーボン粉末を5質量部、バインダとしてポリイミド前駆体樹脂を10質量部、およびスラリー粘度調整剤としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量混合し、負極活物質スラリーを調製した。該負極活物質スラリーを多孔質部材としてのポリエチレンからなる多孔質フィルム(大きさ3cm×3cm、厚さ25μm、平均孔径0.5μm)に、ダイコーターを用いて塗布、乾燥して、多孔質部材−活物質層積層体を得た。
【0082】
銅集電箔(大きさ3cm×3cm、厚さ20μm)の一方の面に、導電性フィラーとしてのカーボンファイバー「VGCF」(登録商標(気相法炭素繊維)、昭和電工社製)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)分散液を、VGCF:PVDFが1:1(質量比)となるように混合して作成した接着剤溶液を塗布した。そして、この接着剤を塗布した面に、上記で作製した多孔質部材−活物質層積層体の活物質層側を張り合わせ、接合することによって、負極を完成させた。
【0083】
[実施例2]
集電体として、ポリプロピレンに、導電性フィラーとしてのケッチェンブラックが10質量%分散されてなる、導電性を有する樹脂層を用いた。そして、集電体と多孔質部材−活物質層積層体とを、ホットプレスを用いて接合した。これ以外は実施例1と同様の方法で負極を作製した。
【0084】
[比較例1]
多孔質部材を用いずに、集電体に負極活物質スラリーを直接塗布、乾燥したことを除いては、実施例1と同様の方法で負極を作製した。
【0085】
[比較例2]
ニッケル製発泡金属(空孔率90%、大きさ3cm×3cm、厚さ100μm)を負極活物質スラリーを含浸、乾燥することによって、活物質が発泡金属の孔内に担持されてなる発泡金属−活物質複合体を得た。該発泡金属−活物質複合体を多孔質部材−活物質層積層体に換えて用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で負極を作製した。
【0086】
[比較例3]
多孔質部材を用いずに、集電体に負極活物質スラリーを直接塗布、乾燥したことを除いては、実施例2と同様の方法で負極を作製した。
【0087】
<正極の作製>
正極活物質としてニッケル酸リチウム粉末を90質量部、導電助剤としてカーボンブラックを5質量部、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を5質量%、およびスラリー粘度調整剤としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量混合し、正極活物質スラリーを調製した。アルミニウム集電箔(大きさ3cm×3cm、厚さ20μm)の一方の面に該正極活物質スラリーをダイコーターを用いて塗布、乾燥、圧延することによって、正極を作製した。
【0088】
<電池の作製>
電解液として、エチレンカーボネート(EC):ジエチレンカーボネート(DEC)=2:3(体積比)の混合溶媒に、リチウム塩であるLiPFが1.0モル/リットルの濃度で溶解した溶液を準備した。
【0089】
上記で作製した正極および負極を、セパレータ(ポリエチレン多孔質膜)を介して積層し、積層体をアルミラミネートフィルムからなる袋に入れ、上記電解液を注入し、封止・成形することによって積層型のリチウムイオン二次電池を完成させた。
【0090】
<充放電特性試験>
上記で作製したリチウムイオン二次電池について充放電特性試験を行った。各電池を25℃の恒温槽中で、定電流定電圧方式(CCCV、電流0.5C、セル電圧4.2V)で充電して、10分間休止後、定電流方式(CC、電流0.5C)でセル電圧2.5Vまで放電した。これを1サイクルとして、1サイクル後の放電容量に対する30サイクル後の放電容量維持率(%)を求めた。なお、Cは時間率を示す。時間率1Cとは、電池の全容量を1時間で充電/放電させるだけの電流量をいう。例えば、0.5Cの電流とは、2時間(=1/0.5時間)で電池の全容量が充電/放電される電流量をいう。
【0091】
結果を下記表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
表1の結果より、実施例1および2の多孔質部材を含む電極を用いた二次電池は、30サイクル後であっても放電容量維持率が著しく高く、優れたサイクル特性を示した。これは、活物質層の変形や、電極からの活物質の脱離が効果的に抑制されたことによるものと考えられた。
【0094】
一方、比較例1〜3は、30サイクル後の放電容量維持率が低かった。特に比較例2は、金属発泡体が集電体を突き破ることによって穴あきが発生した。
【符号の説明】
【0095】
1A、1B 電極、
2、 集電体、
3、15 負極活物質層、
4 多孔質部材、
5a,5b ケイ素粉末、
10 リチウムイオン電池、
11 正極集電体、
11a 最外層正極集電体、
12 正極活物質層、
13 電解質層、
14 負極集電体、
16 単電池層、
17 発電要素、
18 正極集電板、
19 負極集電板、
20 正極端子リード、
21 負極端子リード、
22 ラミネートフィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質を含む活物質スラリーを多孔質部材の一方の面に塗布して活物質層を形成する工程と、
前記活物質層を集電体に接合する工程と、を含む、二次電池用電極の製造方法。
【請求項2】
前記多孔質部材の平均孔径が、前記活物質の累積粒度分布におけるd50よりも小さく、d10よりも大きい、請求項1に記載の二次電池用電極の製造方法。
【請求項3】
集電体と、
活物質を含む活物質層と、
多孔質部材と、が順次配置されてなり、
前記活物質の少なくとも一部が、前記多孔質部材の孔内に存在し、
前記多孔質部材の孔外に存在する活物質の平均粒子径が、多孔質部材の孔内に存在する活物質の平均粒子径よりも大きい、二次電池用電極。
【請求項4】
多孔質部材の一方の面に活物質を含む活物質スラリーを塗布して活物質層を形成した後、前記活物質層を集電体に接合することにより形成されてなる、二次電池用電極。
【請求項5】
前記多孔質部材が、前記集電体と対向する側の最外層に位置する、請求項3または4に記載の二次電池用電極。
【請求項6】
前記多孔質部材の平均孔径が、前記活物質の累積粒度分布におけるd50よりも小さく、d10よりも大きい、請求項3〜5のいずれか1項に記載の二次電池用電極。
【請求項7】
前記集電体が、導電性を有する樹脂層を含む、請求項3〜6のいずれか1項に記載の二次電池用電極。
【請求項8】
前記活物質が、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質である、請求項3〜7のいずれか1項に記載の二次電池用電極。
【請求項9】
前記3〜8のいずれか1項に記載の二次電池用電極を含む、二次電池。
【請求項10】
前記二次電池用電極と、セパレータと、が積層されてなる、請求項9に記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−60521(P2011−60521A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207536(P2009−207536)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】