説明

二次電池

【課題】簡単な構造で電流の遮断が可能なエネルギー損失の少ない二次電池の提供。
【解決手段】二次電池10は、ケース11の内部に電池素子35を備えている。電池素子35には正極タブ25および負極タブ26が設けられている。正極タブ25および負極タブ26には、正極タブ接続板18および負極タブ接続板19がそれぞれ接続されている。正極タブ接続板18は、低融点合金20により正極端子16と当接するように保持され、負極タブ接続板19は、低融点合金20により負極端子17と当接するよう保持されている。ケース11内部の温度が低融点合金20の融点以上に上昇すると、低融点合金20は溶けて流れていく。低融点合金20が溶けて流れると、正極端子16および負極端子17と正極タブ接続板18および負極タブ接続板19は離間して、電流が遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や多くの家電製品に小型で高出力の二次電池が用いられている。また、電気自動車やハイブリッド車などでは、二次電池の電池セルを複数個繋げて、より高出力で容量の大きい電池モジュールを用いている。二次電池は、短絡などにより過大電流が集中し二次電池の温度上昇に繋がる虞がある。そのため、二次電池には、過大電流が流れたときに電流を遮断する機構が設けられている。例えば、特許文献1では、負極リードと負極端子との間に錫(Sn)合金膜を介在させ電気的に接続している。そして、過大電流が流れると、錫合金膜が溶融して負極リードと負極端子の接合を解除して電流を遮断している。
【0003】
また、特許文献2の非水電解液二次電池は、電池側端子の常閉側固定接点と負荷側端子の常閉側固定接点を接触板で接続している。接触板は、弾性体でカップ部に押し付けて保持されており、カップ部は、低融点の熱可溶金属でねじ棒に結合されている。ねじ棒は、電池内の充電部の温度を伝える感熱棒と接続されている。そして、電池内の温度上昇すると、感熱棒からねじ棒、熱可溶金属へと熱が伝わり、熱可溶金属が溶融するとカップ部とねじ棒の結合が解除されてカップ部が弾性体により接触板を押し上げる。接触板が押し上げられると、電池側端子の常閉側固定設定と負荷側端子の常閉側固定接点を遮断される。これにより、電池および負荷を安全に保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−211936号公報
【特許文献2】特開2000−182596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の錫合金膜は、負極リードや負極端子に比べ抵抗が高いという問題がある。錫は電極に用いられるアルミニウム(Al)や銅(Cu)に比べ抵抗が10倍以上高い。そのため、負極リードと負極端子との間を流れる電流は錫合金膜を通るため余分なエネルギー損失が発生している。また、特許文献2では、構造が複雑という問題がある。特許文献2の非水電解液二次電池では、電池内の温度を感熱棒でねじ棒を介して熱可溶金属へと伝えるものであり、構造が複雑である。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡単な構造で電流の遮断が可能なエネルギー損失の少ない二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、正極と、負極と、正極と負極との間に介在されたセパレータとを有する二次電池において、正極または負極に通電自在に接続され、正極または負極と当接される第一接続部材と、一方が第一接続部材と当接し、他方が外部機器と接続可能な第二接続部材とを有する接続部と、第一接続部材と第二接続部材との当接と離間を切替可能な切替部材とを備え、切替部材は、切替部材が所定温度を超えたときに、第一接続部材と第二接続部材とを離間することを特徴する。
【0008】
本発明は、切替部材により、第一接続部材と第二接続部材とを通電自在に当接した状態に保持する。さらに、切替部材が所定温度を超えると、第一接続部材と第二接続部材とを離間した状態に切替える。そのため、簡単な構造で電流の遮断が可能であり、エネルギー損失の少ない二次電池を提供することができる。
【0009】
また、本発明の二次電池における切替部材は、正極および負極より融点の低い合金からなり、所定温度は、合金の融点であることを特徴とする。これにより、切替部材が過電流などで加熱されたときに、正極および負極より先に切替部材である合金が溶融するので、正極および負極を過電流による加熱から保護することができる。
【0010】
また、本発明における第一接続部材には、第二接続部材に当接する部分に第一貫通孔が設けられ、第二接続部材には、第一貫通孔に対向する位置に第二貫通孔が設けられ、切替部材は、第一貫通孔および第二貫通孔に挿通可能なリベットであることを特徴とする。これにより、切替部材は、第一貫通孔および第二貫通孔に挿通すればよく、組付け性の良い簡単な構造を達成できる。さらに、本発明の切替部材は、形状記憶合金からなり、所定温度は、形状記憶合金の変態点の温度であることを特徴とする。これにより、形状記憶合金の種類により所定温度を所望の温度に変更できるとともに、形状記憶合金を何度でも再使用することができる。
【0011】
また、本発明の二次電池において、切替部材は、変態点の温度を超えたときに、第一接続部材と第二接続部材とを離間しつつ第二接続部材に係止されることを特徴とする。これにより、変態点の温度を超えたときに、電極タブ接続部材もしくは電極端子に係止される形状記憶合金が変態点を超えた場合でも、形状記憶合金が係止され続けるため、二次電池の電池素子などに接触して短絡などを招くことがない。
【0012】
また、本発明の二次電池において、第一接続部材には、第二接続部材に当接する部分に第一貫通孔が設けられ、第二接続部材には、第一貫通孔に対向する位置に第二貫通孔が設けられ、切替部材は、第一貫通孔および第二貫通孔に挿通される本体部と、本体部の両端に第二接続部材と第一接続部材とを当接もしくは離間するための開閉部が形成され、開閉部は、第一貫通孔および第二貫通孔よりも外周側の位置で開閉し、本体部が第一貫通孔および第二貫通孔に係止されることを特徴とする。これにより、形状記憶合金を確実に係止し続けることができ、形状記憶合金を保持する新たな部材を設ける必要が無い。また、本発明の二次電池において、正極および前記負極は、板状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、簡単な構造で電流の遮断が可能なエネルギー損失の少ない二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る二次電池を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る二次電池を示す断面図である。
【図3】図2のA−A断面を示す断面図である。
【図4】図2のB−B断面を示す断面図である。
【図5】図2のA−A断面における二次電池の作用を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る二次電池の断面図である。
【図7】図6に示す二次電池の作用を示す断面図である。
【図8】本発明の変更例1を示す断面図である。
【図9】本発明の変更例2を示す断面図である。
【図10】本発明の変更例3を示す断面図である。
【図11】本発明の変更例4を示す断面図である。
【図12】図11に示す二次電池の作用を示す断面図である。
【図13】本発明の変更例5を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る二次電池について図に基づき説明する。
図1に示すように、二次電池10は矩形のケース11を有した角型二次電池ある。ケース11は金属製の筐体である。本実施形態のケース11は、アルミニウム(Al)で形成されている。ケース11の上面には、電解液注入口14と圧力弁15が設けられている。電解液注入口14はケース11内に電解液を注入できるよう開閉自在である。また、圧力弁15は、ケース11内におけるガスの圧力が所定圧力以上に上昇したときに破断してガスをケース11の外部へ排気するものである。
【0016】
ケース11の上面には、電解液注入口14と圧力弁15を挟む位置に正極端子16と負極端子17が設けられている。正極端子16および負極端子17は、充放電を行う際に外部機器に接続可能な端子である。正極端子16と負極端子17は、それぞれ矩形の薄板状に形成されている。正極端子16は、本実施形態ではアルミニウムで形成されている。負極端子17は、銅(Cu)を用いて形成されている。正極端子16および負極端子17は、図2、図3、図4の縦方向の断面図に示すようにケース11を貫通するようにケース11の内部から上方に突出している。正極端子16および負極端子17は、図示しない絶縁部材を介してケース11に絶縁された状態で固定支持されている。なお、本実施形態の正極端子16と負極端子17は、発明の第二接続部材に相当する。
【0017】
正極端子16の下端には、正極タブ接続板18が面同士で当接するように接続されている。また、負極端子17の下端には、負極タブ接続板19が面同士で当接するように接続されている。正極タブ接続板18および負極タブ接続板19は、矩形の薄板状に形成されている。正極タブ接続板18は、アルミニウムから形成されている。負極タブ接続板19は、銅から形成されている。正極タブ接続板18は、正極端子16の下端から図2における右側に向かい水平に延びるよう配置されている。また、負極タブ接続板19は、負極端子17の下端から左側に向かい延びるよう配置されている。なお、本実施形態では、正極タブ接続板18と負極タブ接続板19は、発明の第一接続部材に相当する。また、正極端子16、負極端子17、正極タブ接続板18と負極タブ接続板19により本発明の接続部が構成されている。
【0018】
図3に示すように、正極端子16の下端には、板の厚み方向に貫通する第二貫通孔16Aが形成されている。そして正極タブ接続板18には、第二貫通孔16Aと対向する位置に板の厚み方向に貫通する第一貫通孔18Aが形成されている。なお、本実施形態では、第二貫通孔16Aと第一貫通孔18Aは同じ径の大きさである。正極端子16および正極タブ接続板18は、第二貫通孔16Aおよび第一貫通孔18Aが連通するように当接位置に配置されている。なお、本実施形態における負極端子17および負極タブ接続板19には、正極端子16、正極タブ接続板18と同様に、第一貫通孔17A、第二貫通孔19A(図4参照)がそれぞれ形成されている。
【0019】
第二貫通孔16Aおよび第一貫通孔18Aには、正極端子16と正極タブ接続板18との当接と離間を切替可能な切替部材として低融点合金20が挿通されている。低融点合金20は、正極端子16および正極タブ接続板18との当接により、正極端子16と正極タブ接続板18との間を通電している。また、負極端子17の第一貫通孔17Aと負極タブ接続板19の第二貫通孔19Aにも低融点合金20が挿通されている。低融点合金20は、例えば錫(Sn)とインジウム(In)の合金である。その他にも亜鉛(Zn)を含んでも良い。低融点合金20は、融点が摂氏80度から120度の範囲内の合金が好ましい。本実施形態では、融点摂氏100度の合金が選定されている。なお、低融点合金20の融点は、正極端子16、負極端子17、正極タブ接続板18、負極タブ接続板19の各融点よりも低い値に設定されている。
【0020】
低融点合金20は、一端が半球状の丸頭を有したリベットである。低融点合金20は、第二貫通孔16Aおよび第一貫通孔18Aに挿通したあと、他端を潰して半球状に形成する。負極端子17および負極タブ接続板19も、同様に半球状の丸頭を有したリベットである低融点合金により、面同士が当接した状態で保持されている。
【0021】
一端が正極端子16に接続された正極タブ接続板18の他端には、正極タブ25が接続されている。一端が負極端子17に接続された負極タブ接続板19の他端には、負極タブ26が接続されている。正極タブ接続板18および負極タブ接続板19は、正極タブ25と正極端子16、負極タブ26と負極端子17とを同じ高さ位置で通電自在に接続している。図3に示すように、正極タブ25は正極板31に接続されている。図4に示すように、負極タブ26は、負極板32に接続されている。正極板31および負極板32は、薄い矩形の板状である。正極板31および負極板32は、セパレータ33を介して絶縁されつつ積層状態に重ね合わせられている。本実施形態では、正極板31、負極板32がセパレータ33を介在して積層されて電池素子35を形成している。電池素子35は、図3において右からセパレータ33、負極板32、セパレータ33、正極板31、セパレータ33の順に積層されている。なお、本実施形態では、正極板31が発明の正極であり、負極板32が発明の負極に相当する。
【0022】
また、電池素子35は、積層された正極板31、負極板32、セパレータ33を2つ折りにしてケース11の内部に収容されている。図2の電池素子35は、下に凸状態に折曲げられたU字状である。正極板31、負極板32には、それぞれ正極タブ接続板18、負極タブ接続板19に接続されるように、U字状の上端部分に正極タブ25、負極タブ26が形成されている。本実施形態では、2枚の正極タブ25が重ねられて正極タブ接続板18に接続されている。また、負極側も同様に2枚の負極タブ26が負極タブ接続板19に接続されている。電池素子35は、図示しない絶縁フィルムにより全体を覆われて、ケース11内に収容されている。
【0023】
本実施形態の二次電池10では、正極タブ接続板18は、正極タブ25を介して電池素子35に通電自在に接続されている。また負極タブ接続板19は、負極タブ26を介して電池素子35に通電自在に接続されている。そして、正極端子16は正極タブ接続板18と外部機器を接続する。また、負極端子17は、負極タブ接続板19と外部機器を接続する。さらに、本実施形態では、正極板31、正極タブ25は、アルミニウムで形成されており、低融点合金20よりも融点が高い材料が選定される。負極板32、負極タブ26は、銅で形成されており、低融点合金20よりも融点が高い材料が用いられる。
【0024】
次に本実施形態の二次電池10における電流の遮断について作用を説明する。
二次電池10は、充放電を行うと、電流が正極端子16および負極端子17と電池素子35の間を流れていく。正極端子16と正極板31の間には、正極タブ接続板18、正極タブ25を介して電流が導かれる。また、負極端子17と負極板32の間には、負極タブ接続板19、負極タブ26を介して電流が流れる。ここで、内部短絡や過充電などが発生すると、二次電池10のケース11内で温度が上昇していく。そして、ケース11内で温度が低融点合金20の融点温度以上に高くなると、低融点合金20は、溶けて流れていく。
【0025】
正極端子16と正極タブ接続板18とを当接させ保持していた低融点合金20が溶けて流れると、正極端子16と正極タブ接続板18が離間した状態へ切替わる。すると、図5に示すように正極端子16と正極タブ接続板18との間にはわずかな隙間が発生する。正極端子16と正極タブ接続板18は、隙間により当接しない離間した状態となり、電流の流れは遮断される。また、負極端子17と負極タブ接続板19においても、低融点合金20が融点温度以上に加熱されると、溶けて流れていく。そして、負極端子17と負極タブ接続板19は、当接した状態から隙間が生じて離間した状態となり、電流の流れが遮断される。正極端子16および負極端子17では、電流の流れが遮断され、二次電池10の電池素子35でも充放電が停止する。そして、電池素子35における発熱が停止して徐々に周囲の空気により冷却されていく。
【0026】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)低融点合金20は、正極端子16と正極タブ接続板18とを当接した状態に保持することができ、低融点合金20を通さず電流を流すことができる。また、負極端子17と負極タブ接続板19も当接した状態に保持し電流を流すことができる。
(2)低融点合金20は、融点温度を超えると、溶けて流れるので、正極端子16と正極タブ接続板18とを当接した状態から離間した状態へ切替え、正極端子16と正極タブ接続板18の間に隙間が発生して電流の流れを遮断することができる。また、負極端子17と負極タブ接続板19とを当接した状態から離間した状態へ切替え、電流の流れを遮断できる。
【0027】
(3)低融点合金20は、正極板31、負極板32およびセパレータ33より低い融点の合金が使用されるので、正極板31、負極板32およびセパレータ33が溶ける前に電流の遮断ができる。これにより、正極板31、負極板32およびセパレータ33が温度上昇により損傷することを確実に防ぐことができる。
(4)正極端子16と正極タブ接続板18は、面同士が当接するように配置されている。また、負極端子17と負極タブ接続板19は、面同士が当接するように配置されている。そのため、抵抗の大きな低融点合金20を介して電流が流れることが無く、電極内部抵抗を低減して損失を抑えることができる。そして、電極の不均一反応を防止して出力密度を向上することができる。
【0028】
(5)正極タブ接続板18および負極タブ接続板19は、ケース11内で横方向に延びるように配置されている。そして正極タブ25および負極タブ26と正極端子16および負極端子17とを同じ高さ位置で通電自在に接続しているので、ケース11内において電池素子35の上方に発生するデッドスペースを最小限に抑え、二次電池10の体積エネルギー密度を向上することができる。
(6)低融点合金20は、リベットであるため、正極端子16と正極タブ接続板18との組付け、および負極端子17と負極タブ接続板19との組付けが容易である。
【0029】
(7)低融点合金20は、正極端子16および負極端子17のそれぞれを正極タブ接続板18および負極タブ接続板19に当接した状態に保持し、融点温度を超えたときに溶けて流れることにより当接した状態から離間した状態へ切替え。そのため、正極端子16もしくは負極端子17のどちらかの側でも低融点合金20が溶ける温度まで上昇すると、電流が遮断できる。
【0030】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図6、図7に基づき以下に説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態における金属部材としての低融点合金20を形状記憶合金40に変更したものである。なお、変更点以外は第1の実施形態と同じ構成であり、説明を省略する。さらに第1の実施形態と同一の部材は、同じ部材番号を使用し表記する。
形状記憶合金40は、図6に示すように、正極端子16の第二貫通孔16Aと、正極タブ接続板18の第一貫通孔18Aに相通されている。
【0031】
形状記憶合金40は、第二貫通孔16Aと第一貫通孔18Aに挿通される本体部40Aを有している。本体部40Aは、円筒状の棒部材である。本体部40Aの径は、第二貫通孔16Aおよび第一貫通孔18Aの径よりもわずかに小さく設定されている。本体部40Aの両端には、上下二つに分かれる開閉部40Bがそれぞれ設けられている。開閉部40Bは、L字状のフック形状である。形状記憶合金40の開閉部40Bは、所定温度より低い温度において図6に示すように上下に開いている。開閉部40Bは、上下に開いた状態で、正極端子16もしくは正極タブ接続板18に当接するよう設定されている。開閉部40Bが正極端子16および正極タブ接続板18が当接し、正極端子16および正極タブ接続板18が当接した状態となっている。
【0032】
本実施形態の形状記憶合金40は、所定温度以上に加熱されると、図7に示すように形状が変わる。形状記憶合金40は、所定温度以上で開閉部40Bが本体部40Aの端部から直線状に延びるような位置へと移動する。このとき、L字形状の開閉部40Bの先端は、本体部40Aの径の位置よりも外周側に突出する位置である。さらに、開閉部40Bの先端は、正極端子16の第二貫通孔16Aおよび正極タブ接続板18の第一貫通孔18Aの径よりも大きい径の位置に突出している。つまり、開閉部40Bは、正極端子16および正極タブ接続板18に引っ掛かる位置であり、本体部40Aは、第二貫通孔16Aおよび第一貫通孔18Aから抜け落ちることがない。
【0033】
本実施形態では、形状記憶合金40の変態点は、所定温度として摂氏100度に設定されている。形状記憶合金40の変態点の温度は、正極端子16や正極タブ接続板18の融点温度より低く設定されている。さらに、形状記憶合金40の変態点温度は、電池素子35における正極板31、負極板32、セパレータ33の温度よりも低い値である。また、本実施形態において、負極端子17および負極タブ接続板19は、正極端子16および正極タブ接続板18と同様に形状記憶合金40が切替部材として設けられている。形状は、図6および図7に示す正極端子16側と同じであり、配置は対称となっている。そのため、詳細な説明は省略する。
【0034】
次に本実施形態における電流の遮断について作用を説明する。
二次電池10は、充放電を行うと、電流が正極端子16および負極端子17と電池素子35の間をそれぞれ流れていく。正極端子16と正極板31の間には、正極タブ接続板18、正極タブ25を介して電流が導かれる。また、負極端子17と負極板32の間には、負極タブ接続板19、負極タブ26を介して電流が流れる。ここで、内部短絡や過充電などが発生すると、二次電池10のケース11内で温度が上昇していく。そして、ケース11内で温度が形状記憶合金40の変態点の温度である所定温度以上に上昇すると、形状記憶合金40は、開閉部40Bが閉じるように移動する。
【0035】
正極端子16および正極タブ接続板18は、図6に示すように形状記憶合金40の開閉部40Bにより当接するように保持されていたのが、図7に示すように形状記憶合金40に当接しない離間した状態に切替えられる。すると、正極端子16および正極タブ接続板18は、わずかな隙間を空けて離間して、電流を遮断する状態となる。なお、開閉部40Bが移動すると、形状記憶合金40の本体部40Aは、正極端子16の第二貫通孔16Aと正極タブ接続板18の第一貫通孔18Aを移動自在である。しかし、開閉部40Bの先端が、第二貫通孔16Aおよび第一貫通孔18Aの径より大きい径の位置であり、形状記憶合金40が正極端子16および正極タブ接続板18から抜け落ちることなく保持される。
【0036】
形状記憶合金40の開閉部40Bが移動して、正極端子16および正極タブ接続板18が自由状態となり電流が遮断されると、電池素子35および正極端子16、正極タブ接続板18などは、電流が流れなくなり、さらに温度上昇することはない。そして、二次電池10が周辺の空気中に放熱することにより、ケース11内の温度は徐々に低下していく。
なお、正極端子16および正極タブ接続板18における電流遮断の作用について説明したが、負極端子17および負極タブ接続板19における電流遮断も同じ作用であるので、説明を省略する。
【0037】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)、(4)、(5)に加え、以下の効果を得ることができる。
(8)形状記憶合金40は、変態点の温度である所定温度まで加熱されると、開閉部40Bが移動する。そのため、正極端子16および正極タブ接続板18とを当接した状態から離間した状態へ切替え、電流を遮断できる。また、負極端子17および負極タブ接続板19も同様に当接した状態から離間した状態へ切替え、電流を遮断できる。
(9)形状記憶合金40の変態点の温度は、正極端子16、負極端子17、正極タブ接続板18、負極タブ接続板19、正極板31、負極板32、セパレータ33のそれぞれの融点より低い値に設定されている。そのため、各端子や電池素子35を保護することができる。
【0038】
(10)形状記憶合金40は、本体部40Aが正極端子16の第二貫通孔16Aおよび正極タブ接続板18の第一貫通孔18Aに挿通されている。そのため、組み付けが容易である。
(11)形状記憶合金40の開閉部40Bは、変態点の温度以上に加熱されて移動した場合でも、第二貫通孔16Aおよび第一貫通孔18Aの径よりも大きな径の位置に存在するため、形状記憶合金40が正極端子16および正極タブ接続板18から抜け落ちることが無い。そのため、形状記憶合金40が電池素子35に接触して更なる短絡などを引き起こすことが無い。
【0039】
(12)形状記憶合金40は、合金の材質の種類や割合を変更することで所定温度である変態点の温度を設定できる。
(13)形状記憶合金40は、変態点の温度以上に加熱されて開閉部40Bが閉じるように移動した後も、変態点の温度以下に冷却すれば切替部材として再使用できる。
【0040】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に本発明の変更例について説明する。
○第1の実施形態において、第二貫通孔16Aおよび第一貫通孔18Aの形状は、変更しても良い。例えば、図8に示す変更例1のように貫通孔にテーパ面の傾斜を設けても良い。また、図9に示す変更例2のように図8とは逆方向の傾斜を設けても良い。なお、図9に示すように第二貫通孔16Aと第一貫通孔18Aが当接する面に向けて径が広がるテーパ面を設けると、低融点合金20が融点以上に加熱されたときに、正極端子16と正極タブ接続板18との当接する面の間を流れ落ちていき、より確実に両部材を離間させることができる。
○低融点合金20は、正極端子16および正極タブ接続板18の貫通孔に挿通しなくても良い。例えば、図10に示す変更例3のように、正極端子16および正極タブ接続板18の当接部を覆うように囲うC字状断面を有した形状でも良い。これにより、正極端子16および正極タブ接続板18に貫通孔を設ける必要が無く、加工工数を低減できる。つまり、正極端子16および正極タブ接続板18が直接当接する状態に保持できれば良い。
【0041】
○形状記憶合金40は、正極端子16および正極タブ接続板18を積極的に離間した状態となるよう支持しても良い。例えば、図11に示す変更例4のように、正極端子16および正極タブ接続板18の当接部に凹みを設ける。そして形状記憶合金40の本体部40Aに突部40Cを設ける。そして形状記憶合金40が変態点の温度以上に加熱されると、図12に示すように、突部40Cが二股に分岐して、正極端子16と正極タブ接続板18とが離間した状態となるよう、正極端子16と正極タブ接続板18の間に隙間を積極的に形成する構造としても良い。なお、負極側も同様の構成としても良い。
○電池素子35は、実施形態の構成に限定されない。例えば図13に示す変更例5のように巻回式の電池素子35であっても良い。この場合、正極タブ25および負極タブ26はケース11内で横方向に突出させて正極タブ接続板18および負極タブ接続板19を垂直方向に設ければ良い。また、電池素子35は別々の正極板31、負極板32、セパレータ33を幾重にも重ねた積層型でも良い。巻回式、積層型で、積層回数は限定されない。
【0042】
○実施形態では、切替部材として低融点合金20および形状記憶合金40を正極側および負極側のそれぞれに設けたが、正極側もしくは負極側のどちらか一方のみに設けても良い。
○正極端子16および正極タブ接続板18の間に、スプリングなどを設けても良い。切替部材として低融点合金20や形状記憶合金40が所定温度以上で正極端子16および正極タブ接続板18を自由状態に解放したときに、スプリングなどで積極的に正極端子16と正極タブ接続板18との間に隙間を形成すると、より確実に電流を遮断することができる。
【0043】
○低融点合金20は、融点が摂氏80度から120度の合金を選定したが、それ以外でも良い。正極端子16や正極タブ接続板18、正極板31、負極板32、セパレータ33の材質が変われば、変更する必要があり、低融点合金20の融点が正極端子16や正極タブ接続板18、正極板31、負極板32、セパレータ33の融点よりも低い値となるように設定すると良い。
○正極端子16、負極端子17、正極タブ接続板18、負極タブ接続板19は、板状の部材を用いたが、板以外の形状でも良い。
【0044】
○第2の実施形態における形状記憶合金40の開閉部40Bは、所定温度以上に加熱されたときに、形状記憶合金40の本体部40Aが第二貫通孔16Aおよび第一貫通孔18Aから抜け落ちる構成でも良い。その場合、形状記憶合金40がケース11などに接続されて引っ掛かるよう係止される構成とすると良い。
○実施形態における低融点合金20や形状記憶合金40により構成される切替部材は、金属に限定されない。例えば、切替部材が熱可塑性樹脂により形成されても良い。
○実施形態における正極タブ接続板18および負極タブ接続板19は、無くても良い。その場合、第一接続部材として正極タブ25と第二接続部材としての正極端子16を切替部材である低融点合金20などで接続しても良い。また、第一接続部材として負極タブ26と第二接続部材としての負極端子17を切替部材としての低融点合金20で接続しても良い。
【符号の説明】
【0045】
10 二次電池
11 ケース
14 電解液注入口
15 圧力弁
16 正極端子
16A 第二貫通孔
17 負極端子
18 正極タブ接続板
18A 第一貫通孔
19 負極タブ接続板
20 低融点合金
25 正極タブ
26 負極タブ
31 正極板
32 負極板
33 セパレータ
35 電池素子
40 形状記憶合金
40A 本体部
40B 開閉部
40C 突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在されたセパレータとを有する二次電池において、
前記正極または前記負極に通電自在に接続され、前記正極または前記負極と当接される第一接続部材と、一方が前記第一接続部材と当接し、他方が外部機器と接続可能な第二接続部材とを有する接続部と、
前記第一接続部材と前記第二接続部材との当接と離間を切替可能な切替部材とを備え、
前記切替部材は、前記切替部材が所定温度を超えたときに、前記第一接続部材と前記第二接続部材とを離間することを特徴する二次電池。
【請求項2】
前記切替部材は、前記正極および前記負極より融点の低い合金からなり、
前記所定温度は、前記合金の融点であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第一接続部材には、前記第二接続部材に当接する部分に第一貫通孔が設けられ、
前記第二接続部材には、前記第一貫通孔に対向する位置に第二貫通孔が設けられ、前記切替部材は、前記第一貫通孔および前記第二貫通孔に挿通可能なリベットであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記切替部材は、形状記憶合金からなり、
前記所定温度は、前記形状記憶合金の変態点の温度であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記切替部材は、前記変態点の温度を超えたときに、前記第一接続部材と前記第二接続部材とを離間しつつ前記第二接続部材に係止されることを特徴とする請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第一接続部材には、前記第二接続部材に当接する部分に第一貫通孔が設けられ、
前記第二接続部材には、前記第一貫通孔に対向する位置に第二貫通孔が設けられ、
前記切替部材は、前記第一貫通孔および前記第二貫通孔に挿通される本体部と、前記本体部の両端に前記第二接続部材と前記第一接続部材とを当接もしくは離間するための開閉部が形成され、
前記開閉部は、前記第一貫通孔および前記第二貫通孔よりも外周側の位置で開閉し、前記本体部が前記第一貫通孔および前記第二貫通孔に係止されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記正極および前記負極は、板状であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−54915(P2013−54915A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192298(P2011−192298)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】