説明

二段圧縮機

【課題】低段側マフラー空間に潤滑油が溜まるのを抑制する共に、リアヘッドの変形を抑制する。
【解決手段】二段圧縮機1は、低段側圧縮機構11と、低段側圧縮機構11で圧縮された冷媒をさらに圧縮する高段側圧縮機構12と、これら2つの圧縮機構を収容するケーシング2とを備えており、低段側圧縮機構11は、低段側圧縮室23aを有する低段側シリンダ23と、低段側シリンダ23の下側に配置されるリアヘッド22と、リアヘッド22の下側に配置され、リアヘッド22との間に低段側マフラー空間M1を形成するリアマフラー21とを備えている。リアマフラー21には、低段側マフラー空間M1内の冷媒をケーシング2の外に吐出させる低段吐出管14が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低段側圧縮機構と高段側圧縮機構とを備える二段圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、低段側圧縮機構と、高段側圧縮機構と、これら2つの圧縮機構を収容するケーシングとを備える二段圧縮機が知られている(例えば特許文献1参照)。低段側圧縮機構で圧縮された冷媒は、ケーシングの外部に吐出された後、外部マフラー等を経て、高段側圧縮機構に供給される。高段側圧縮機構で圧縮された冷媒は、ケーシング内に吐出されてから、ケーシングの外に排出される。また、ケーシング内の下部には、圧縮機構の摺動部の動きを滑らかにするための潤滑油が貯留されている。潤滑油は、冷媒と共に低段圧縮機構および高段圧縮機構を通過した後、ケーシングの下部に戻される。
【0003】
低段側圧縮機構は、低段側圧縮室を有する低段側シリンダと、低段側シリンダの下側に配置されたリアヘッドと、リアヘッドの下側に配置されたリアマフラーとを有する。リアヘッドとリアマフラーとの間には、低段側圧縮室で圧縮された冷媒が吐出される低段側マフラー空間が形成されている。低段側マフラー空間は、冷媒の吐出脈動の抑制と、冷媒の吐出に伴う騒音の低減のために設けられている。特許文献1の二段圧縮機では、リアヘッドの側部には、低段側マフラー空間内の冷媒を吐出するための低段吐出管が接続されている。また、リアヘッドとリアマフラーは、リアシリンダにボルトで固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−223190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リアヘッドの側部に低段吐出管を接続する構成では、低段側マフラー空間の底が低段吐出管よりも低い位置になる。そのため、低段側マフラー空間内の低段吐出管よりも低い位置にある潤滑油を低段吐出管から排出することができず、低段側マフラー空間に潤滑油が溜まってしまう。
低段側マフラー空間に潤滑油が溜まると、低段側マフラー空間の有効容積が小さくなるため、冷媒の吐出脈動の抑制および騒音低減の効果が低下する。また、低段側マフラー空間に溜まった潤滑油によって冷媒が加熱されるため、圧縮機効率が低下する。また、ケーシングの下部に貯留される潤滑油の量が低減するため、圧縮機構に十分な量の潤滑油を供給できない場合があり、信頼性が低下する。
【0006】
また、リアヘッドの側部には低段吐出管を接続するための孔が形成されるため、リアヘッドをリアシリンダにボルト締結したときに、リアヘッドが孔の近傍で変形しやすいという問題も生じる。
【0007】
そこで、本発明は、低段側マフラー空間に潤滑油が溜まるのを防止できると共に、リアヘッドの変形を抑制できる二段圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る二段圧縮機は、低段側圧縮機構と、前記低段側圧縮機構で圧縮された冷媒をさらに圧縮する高段側圧縮機構と、これら2つの圧縮機構を収容するケーシングとを備える二段圧縮機であって、前記低段側圧縮機構は、低段側圧縮室を有する低段側シリンダと、前記低段側シリンダの下側に配置されるリアヘッドと、前記リアヘッドの下側に配置され、前記リアヘッドとの間に低段側マフラー空間を形成するリアマフラーとを備え、前記リアマフラーに、前記低段側マフラー空間内の冷媒を前記ケーシングの外に吐出させる低段吐出管が接続されていることを特徴とする。
【0009】
この二段圧縮機では、リアマフラーに低段吐出管が接続されるため、リアマフラーの上方に配置されるリアヘッドに低段吐出管が接続される場合に比べて、低段側マフラー空間のより低い位置から冷媒と潤滑油を吐出させることができる。したがって、低段側マフラー空間内に潤滑油が溜まるのを防止できる。
また、リアヘッドに低段吐出管を接続するための孔を設けなくてよいため、孔を設けた場合よりもリアヘッドの剛性が高くなる。そのため、ボルト締結によるリアヘッドの変形を抑制できる。
【0010】
第2の発明に係る二段圧縮機は、第1の発明において、前記低段側マフラー空間内の冷媒が、前記低段側マフラー空間の下部から吐出されるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この二段圧縮機では、低段側マフラー空間内に潤滑油が溜まるのをより確実に防止できる。
なお、「低段側マフラー空間の下部から吐出される」とは、低段側マフラー空間を取り囲む面のうち、底面に形成された開口から冷媒が吐出されるか、または、低段側マフラー空間を取り囲む面のうち、側面の下端に形成された開口から冷媒が吐出されることである。
【0012】
第3の発明に係る二段圧縮機は、第2の発明において、前記リアヘッドは、前記低段側圧縮室内の冷媒を前記低段側マフラー空間に吐出させる吐出口を有しており、前記低段側マフラー空間内の冷媒が、前記低段側マフラー空間の下部において、前記リアヘッドの前記吐出口と対向しない位置から吐出されるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
この二段圧縮機では、リアヘッドの吐出口から低段側マフラー空間に吐出される冷媒の噴出力によって、潤滑油が低段側マフラー空間から排出されにくくなるのを防止できる。
【0014】
第4の発明に係る二段圧縮機は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記低段吐出管が、前記リアマフラーの側部に接続されていることを特徴とする。
【0015】
この二段圧縮機では、低段吐出管をケーシングの側部に設けた場合、低段吐出管のケーシング内の部分を直線状とすることができるため、ケーシング内のリアマフラーに低段吐出管を接続しやすい。
【0016】
第5の発明に係る二段圧縮機は、第1〜第4のいずれかの発明において、前記リアマフラーが、前記低段側マフラー空間と前記低段吐出管とを連通させる吐出路を有しており、前記吐出路の入口が、前記リアマフラーの上面に形成されていることを特徴とする。
【0017】
この二段圧縮機では、低段側マフラー空間内の冷媒を、低段側マフラー空間の下部から吐出させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0019】
第1の発明では、リアマフラーに低段吐出管が接続されるため、リアマフラーの上方に配置されるリアヘッドに低段吐出管が接続される場合に比べて、低段側マフラー空間のより低い位置から冷媒と潤滑油を吐出させることができる。したがって、低段側マフラー空間内に潤滑油が溜まるのを防止できる。
また、リアヘッドに低段吐出管を接続するための孔を設けなくてよいため、孔を設けた場合よりもリアヘッドの剛性が高くなる。そのため、ボルト締結によるリアヘッドの変形を抑制できる。
【0020】
第2の発明では、低段側マフラー空間内に潤滑油が溜まるのをより確実に防止できる。
【0021】
第3の発明では、リアヘッドの吐出口から低段側マフラー空間に吐出される冷媒の噴出力によって、潤滑油が低段側マフラー空間から排出されにくくなるのを防止できる。
【0022】
第4の発明では、低段吐出管をケーシングの側部に設けた場合、低段吐出管のケーシング内の部分を直線状とすることができるため、ケーシング内のリアマフラーに低段吐出管を接続しやすい。
【0023】
第5の発明では、低段側マフラー空間内の冷媒を、低段側マフラー空間の下部から吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る二段段圧縮機の断面図である。
【図2】リアヘッドを下から見た図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る二段段圧縮機の断面図である。
【図5】(a)は本発明の他の実施形態に係る二段段圧縮機の部分断面図であり、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の二段圧縮機1は、ケーシング2と、ケーシング2内に配置される圧縮ユニット10および駆動機構6とを備えている。圧縮ユニット10は、低段側圧縮機構11および高段側圧縮機構12を有する。この二段圧縮機1では、低段吸入管13から導入された冷媒(例えばCO冷媒)を低段側圧縮機構11で圧縮した後、さらに高段側圧縮機構12で圧縮して、吐出管16から吐出するようになっている。
【0026】
ケーシング2は、両端が塞がれた円筒状の容器であって、ケーシング2の内部には、駆動機構6と圧縮ユニット10が上下に並んで配置されている。また、ケーシング2内の下部には、圧縮ユニット10の摺動部の動作を滑らかにするための潤滑油Lが貯留されている。また、ケーシング2の側部には、圧縮ユニット10の低段側圧縮機構11に冷媒を吸入するための低段吸入管13、低段側圧縮機構11で圧縮された冷媒をケーシング2の外部に吐出させるための低段吐出管14、および高段側圧縮機構12に冷媒を吸入するための高段吸入管15が設けられている。ケーシング2の上部には、高段側圧縮機構12から吐出された冷媒(ケーシング2内の冷媒)を吐出するための吐出管16と、駆動機構6の後述する固定子7bのコイルに電流を供給するためのターミナル端子3とが設けられている。図1では、コイルとターミナル端子3とを接続する配線は省略して表示している。また、ケーシング2の下部には、複数の脚部4が設けられている。ケーシング2は、この脚部4によって、例えば空気調和機の室外機の底面板に固定されている。
【0027】
駆動機構6は、圧縮ユニット10の低段側圧縮機構11および高段側圧縮機構12を駆動するために設けられており、駆動源となるモータ7と、このモータ7に取り付けられたシャフト8とから構成されている。なお、図1は、モータ7の断面を示すハッチングを省略して表示している。
【0028】
モータ7は、ケーシング2の内周面に固定されている略円環状の固定子7bと、この固定子7bの径方向内側にエアギャップを介して配置される回転子7aとを備えている。回転子7aは磁石(図示省略)を有し、固定子7bはコイルを有している。モータ7は、コイルに電流を流すことによって発生する電磁力によって、回転子7aを回転させる。また、固定子7bの外周面は、全周にわたってケーシング2の内周面に密着しているわけではなく、固定子7bの外周面には、上下方向に延び且つモータ7の上下の空間を連通させる複数の凹部(図示省略)が、周方向に並んで形成されている。
【0029】
シャフト8は、回転子7aの内周面に固定されており、回転子7aと一体的に回転する。また、シャフト8は、後述する低段側圧縮室23a内となる位置、および高段側圧縮室26a内となる位置に偏心部8a、8bをそれぞれ有している。偏心部8a、8bは、いずれも円柱状に形成されており、その軸心がシャフト8の回転中心から偏心している。この偏心部8a、8bには、圧縮ユニット10のピストン24、27がそれぞれ装着される。
【0030】
また、シャフト8の下側略半分の内部には、給油路8cが形成されている。給油路8cは、上下方向に延在していると共に数箇所でシャフト8の径方向に枝分かれしている。シャフト8の下端には、シャフト8の回転に伴って潤滑油Lを給油路8c内に吸い上げる螺旋羽根形状のポンプ部材(図示省略)が設けられている。ポンプ部材によって給油路8cの下端から吸い上げられた潤滑油Lは、シャフト8の側面から排出されて、圧縮ユニット10に供給される。
【0031】
圧縮ユニット10は、リアマフラー21、リアヘッド22、低段側シリンダ23、低段側シリンダ23内に配置されたピストン24、ミドルプレート25、高段側シリンダ26、高段側シリンダ26内に配置されたピストン27、フロントヘッド28、およびフロントマフラー29を有する。低段側圧縮機構11は、低段側シリンダ23、ピストン24、ミドルプレート25、リアヘッド22、およびリアマフラー21によって構成されている。また、高段側圧縮機構12は、低段側圧縮機構11の上方に配置されており、高段側シリンダ26、ピストン27、ミドルプレート25、フロントヘッド28、およびフロントマフラー29によって構成されている。
【0032】
低段側シリンダ23、ミドルプレート25、および高段側シリンダ26は、ケーシング2の内周面に固定されている。低段側シリンダ23、ミドルプレート25、および高段側シリンダ26は、上下方向から見て低段側圧縮室23aと高段側圧縮室26aの径方向外側において、冷媒と潤滑油Lを通過させるための油戻し通路(図示省略)を有している。
【0033】
低段側シリンダ23の中央部には、円形孔である低段側圧縮室23aが形成されている。低段側圧縮室23a内には、ピストン24が配置されている。ピストン24は、ローラと、ローラの外周面から径方向外側に突出するブレードとからなるものであって、このピストン24によって低段側圧縮室23aは2つの空間に区画される。また、低段側シリンダ23には、低段側圧縮室23a内に冷媒を導入するための吸入路23bが形成されている。この吸入路23bには、低段吸入管13の先端が内嵌されている。
【0034】
高段側シリンダ26には、低段側シリンダ23と同様に、高段側圧縮室26aと吸入路26bが形成されている。高段側圧縮室26a内には、ピストン24と同様のピストン27が配置されている。吸入路26bには、高段吸入管15の先端が内嵌されている。
【0035】
ミドルプレート25は、低段側シリンダ23と高段側シリンダ26との間に配置されており、低段側シリンダ23の低段側圧縮室23aの上端を閉塞すると共に、高段側シリンダ26の高段側圧縮室26aの下端を閉塞している。ミドルプレート25は、ボルトによって低段側シリンダ23と高段側シリンダ26に固定されている。
【0036】
リアヘッド22は、低段側シリンダ23の下側に配置されており、リアヘッド22の下側にはリアマフラー21が配置されている。図2および図3に示すように、リアマフラー21およびリアヘッド22は、複数のボルト孔41、33を有しており、これに挿通された複数のボルト50によって低段側シリンダ23に固定される。なお、図3は、図1のA−A線断面図であるが、ケーシング2、低段吸入管14、およびシャフト8を省略して表示している。
【0037】
リアヘッド22は、略円環状の部材であって、その中央の孔には、シャフト8が回転可能に挿通されている。リアヘッド22の上面は、低段側シリンダ23の低段側圧縮室23aの下端を閉塞している。図2に示すように、リアヘッド22には、低段側圧縮室23aにおいて圧縮された冷媒を吐出するための吐出孔30が形成されている。また、リアヘッド22の下面には凹溝31が形成されている。この凹溝31の底部に、吐出孔30の出口(吐出口)30aが形成されている。また、凹溝31内には、低段側圧縮室23a内の圧力に応じて吐出孔30の出口30aを開閉する弁機構32が設けられている。
【0038】
リアマフラー21は、リアヘッド22の下側に配置されており、リアヘッド22の凹溝31との間に低段側マフラー空間M1を形成している。リアマフラー21は、円環板状の部材である。リアマフラー21には、低段側マフラー空間M1内の冷媒を吐出するための吐出路40が形成されている。
【0039】
吐出路40の入口40aはリアマフラー21の上面に形成されている。つまり、低段側マフラー空間M1内の冷媒は、低段側マフラー空間M1の下部から吐出されるようになっている。また、図3に示すように、リアマフラー21の吐出路40の入口40aは、リアヘッド22の吐出孔の出口(吐出口)30aと対向しない位置に形成されている。
【0040】
また、吐出路40の出口40bはリアマフラー21の側面に形成されている。吐出路40の出口40b側部分は、水平方向に延在している。吐出路40の出口40bには、低段吐出管14の端部が内嵌されている。したがって、低段吐出管14はリアマフラー21の側部に接続されている。吐出路40の出口40bと、ケーシング2の側部に形成された低段吐出管14が挿通される孔とは対向しており、低段吐出管14は水平方向に延在している。
【0041】
フロントヘッド28は、高段側シリンダ26の上側に配置されている。フロントヘッド28は、略円環状の部材であって、その中央の孔にシャフト8が回転可能に挿通されている。フロントヘッド28の下面は、高段側シリンダ26の高段側圧縮室26aの上端を閉塞している。フロントヘッド28には、高段側圧縮室26aにおいて圧縮された冷媒を吐出するための吐出孔(図示省略)が形成されている。また、フロントヘッド28の上面には、高段側圧縮室26a内の圧力に応じて上述の吐出孔の出口を開閉する弁機構(図示省略)が取り付けられている。
【0042】
フロントマフラー29は、フロントヘッド28の上面にボルトで取り付けられており、フロントヘッド28との間に高段側マフラー空間M2を形成している。フロントマフラー29は、2重構造となっている。また、フロントマフラー29には、高段側マフラー空間M2内の冷媒を吐出するためのマフラー吐出孔(図示省略)が形成されている。
【0043】
次に、二段圧縮機1の動作について説明する。
この圧縮ユニット10においては、まず、低段吸入管13を介して低段側圧縮機構11の低段側圧縮室23a内に冷媒が供給される。低段側圧縮室23aで圧縮された冷媒は、低段側マフラー空間M1内に吐出された後、低段吐出管14を介してケーシング2の外へ送り出される。この冷媒は、図示しない外部マフラーや中間冷却器を通過した後、高段吸入管15を介して高段側圧縮機構12の高段側圧縮室26a内に供給されて、高段側圧縮室26aでさらに圧縮される。高段側圧縮室26aで圧縮された冷媒は、高段側マフラー空間M2に吐出された後、フロントマフラー29のマフラー吐出孔(図示省略)から圧縮ユニット10の外に吐出され、その後、吐出管16を介してケーシング2の外に吐出される。
【0044】
低段側圧縮機構11においては、モータ7の駆動によりシャフト8が回転することで、シャフト8の偏心部8bに装着されたピストン24のローラが、低段側圧縮室23aの周壁面に沿って移動し、これにより、低段側圧縮室23aで冷媒が圧縮される。高段側圧縮機構12においても低段側圧縮機構11と同様に、シャフト8の偏心部8aに装着されたピストン27が、高段側圧縮室26aの周壁面に沿って移動することで、高段側圧縮室26aで冷媒が圧縮される。
【0045】
本実施形態の二段圧縮機1では、リアマフラー21に低段吐出管14が接続されているため、リアマフラー21の上方に配置されるリアヘッド22に低段吐出管14が接続されている場合に比べて、低段側マフラー空間M1のより低い位置から冷媒と潤滑油Lを吐出させることができる。したがって、低段側マフラー空間M1内に潤滑油Lが溜まるのを防止できる。
【0046】
また、リアヘッド22に低段吐出管14を接続するための孔を設けなくてよいため、孔を設けた場合よりもリアヘッド22の剛性が高くなる。そのため、リアマフラー21とリアヘッド22を低段側シリンダ23にボルト締結した際に、リアヘッド22の変形を抑制できる。
【0047】
また、本実施形態では、リアマフラー21の上面に吐出路40の入口40aが形成されており、低段側マフラー空間M1内の冷媒が、低段側マフラー空間M1の下部から吐出されるように構成されているため、低段側マフラー空間M1内に潤滑油Lが溜まるのをより確実に防止できる。
【0048】
また、本実施形態では、低段側マフラー空間M1に冷媒を供給するための吐出口30aと、低段側マフラー空間M1から冷媒を排出するための吐出路40の入口40aとは、対向しない位置(シャフト8の軸方向から見て重ならない位置)に形成されており、低段側マフラー空間M1内の冷媒が、リアヘッド22の吐出口30aと対向しない位置から吐出されるように構成されている。仮に、低段側マフラー空間M1内の冷媒が、リアヘッド22の吐出口30aと対向する位置から吐出されるように構成されている場合、吐出口30aから低段側マフラー空間M1に吐出される冷媒の噴出力によって、低段側マフラー空間M1内の潤滑油Lがリアマフラー21の吐出路40から排出されにくくなるが、本実施形態では、低段側マフラー空間M1内の冷媒が、リアヘッド22の吐出口30aと対向しない位置から吐出されるように構成されているため、潤滑油Lが低段側マフラー空間M1から排出されやすい。
【0049】
また、本実施形態では、低段吐出管14は、リアマフラー21の側部に接続されると共に、ケーシング2の側部を貫通している。そのため、低段吐出管14のケーシング内の部分を直線状にすることができるため、ケーシング内のリアマフラー21に低段吐出管14を接続しやすい。
【0050】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態の二段圧縮機101は、リアマフラー121と低段吐出管114の構成が第1実施形態と異なっており、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0051】
リアマフラー121には、低段側マフラー空間M1内の冷媒を吐出するための吐出路140が形成されている。吐出路140の入口は、リアマフラー121の上面に形成されている。そのため、低段側マフラー空間M1内の冷媒は、低段側マフラー空間M1の下部から吐出される。吐出路140は、リアマフラー121を上下方向に貫通するように形成されている。吐出路140の出口には、低段吐出管114の端部が内嵌されている。低段吐出管114は、ケーシング2の側部を水平方向に貫通しており、リアマフラー121からケーシング2までの部分は曲がった形状となっている。
【0052】
本実施形態の二段圧縮機101では、低段吐出管114の入口がリアマフラー121の上面に形成されているため、低段側マフラー空間M1内の冷媒を、低段側マフラー空間M1の下部から吐出させることができる。また、本実施形態では、吐出路140の形状が、リアマフラー121を上下方向に貫通する形状であるため、吐出路140を形成しやすい。その他、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成は、上記実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0054】
上記第1および第2実施形態では、低段吐出管14、114がケーシング2の側部を貫通するように構成されているが、低段吐出管がケーシング2の底部を貫通するように構成されていてもよい。第2実施形態のように、低段吐出管がリアマフラー121の下部に接続されている場合には、低段吐出管のリアマフラー121からケーシング2までの部分を上下方向に延在する直線状とすることができるため、ケーシング2内のリアマフラー121に低段吐出管を接続しやすい。
【0055】
上記第1および第2実施形態では、リアヘッド22に形成された凹溝31とリアマフラー21の上面によって低段側マフラー空間M1が形成されているが、この構成に限定されるものではない。例えば図5に示すように、リアマフラー221に形成された凹溝242と円形板状のリアヘッド222の下面によって低段側マフラー空間M1が形成されてもよい。この変更形態の場合、リアヘッド222には、低段側圧縮室23aで圧縮された冷媒を低段側マフラー空間M1に吐出するための吐出孔230が形成され、吐出孔230の出口(吐出口)230aはリアヘッド222の下面に形成される。また、リアマフラー221には、低段側マフラー空間M1内の冷媒を吐出するための吐出路240が形成される。
【0056】
図5では、吐出路240の入口240aは、凹溝242の側部の下端に形成されている。つまり、入口240aは、低段側マフラー空間M1を取り囲む面のうち、側面の下端に形成されており、低段側マフラー空間M1内の冷媒は、低段側マフラー空間M1の下部から吐出される。なお、吐出路240の入口240aは、凹溝242の底面に形成されていてもよく、凹溝242の側部の下端よりも上方に形成されていてもよい。
【0057】
また、図5では、吐出路240の出口240bは、リアマフラー221の側部に形成されており、低段吐出管214は、リアマフラー221の側部に接続されているが、吐出路240の出口240bがリアマフラー221の下面に形成され、低段吐出管214がリアマフラー221の下部に接続された構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明を利用すれば、低段側マフラー空間に潤滑油が溜まるのを抑制できると共に、リアヘッドの変形を抑制できる。
【符号の説明】
【0059】
1 二段圧縮機
2 ケーシング
11 低段側圧縮機構
12 高段側圧縮機構
14 低段吐出管
21 リアマフラー
22 リアヘッド
23 低段側シリンダ
23a 低段側圧縮室
30a、230a 吐出孔の出口(吐出口)
40、140、240 吐出路
40a、240a 吐出路の入口
M1 低段側マフラー空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低段側圧縮機構と、前記低段側圧縮機構で圧縮された冷媒をさらに圧縮する高段側圧縮機構と、これら2つの圧縮機構を収容するケーシングとを備える二段圧縮機であって、
前記低段側圧縮機構は、
低段側圧縮室を有する低段側シリンダと、
前記低段側シリンダの下側に配置されるリアヘッドと、
前記リアヘッドの下側に配置され、前記リアヘッドとの間に低段側マフラー空間を形成するリアマフラーとを備え、
前記リアマフラーに、前記低段側マフラー空間内の冷媒を前記ケーシングの外に吐出させる低段吐出管が接続されていることを特徴とする二段圧縮機。
【請求項2】
前記低段側マフラー空間内の冷媒が、前記低段側マフラー空間の下部から吐出されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の二段圧縮機。
【請求項3】
前記リアヘッドは、前記低段側圧縮室内の冷媒を前記低段側マフラー空間に吐出させる吐出口を有しており、
前記低段側マフラー空間内の冷媒が、前記低段側マフラー空間の下部において、前記リアヘッドの前記吐出口と対向しない位置から吐出されるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の二段圧縮機。
【請求項4】
前記低段吐出管が、前記リアマフラーの側部に接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二段圧縮機。
【請求項5】
前記リアマフラーが、前記低段側マフラー空間と前記低段吐出管とを連通させる吐出路を有しており、前記吐出路の入口が、前記リアマフラーの上面に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二段圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104341(P2013−104341A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248177(P2011−248177)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】