説明

二色性ミラー

本発明は光学フィルターとしても知られる二色性ミラーに関する。特に、干渉性層の積層体でかつ金属反射体で被覆されたガラス基板を含むバックミラーに関する。層の積層体は基板から連続的に、i)1.9から2.8の範囲の高屈折率材料の一層、ii)1.2から2の範囲の低屈折率材料の一層、iii)3を越える屈折率を持つ半導体材料の一層、を含む。高屈折率材料の屈折率と低屈折率材料の屈折率は少なくとも0.2だけ異なり、かつ被覆基板は550nmで少なくとも6%、好ましくは少なくとも8%の透過率及び550nmで45%を越える、好ましくは50%を越える反射率を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルターとしても知られる二色性ミラーに関する。特に、本発明は干渉性層の積層体でかつ金属反射体で被覆されたガラス基板を含むバックミラーに関する。
【0002】
バックミラーをディスプレー、エミッター及び/またはミラー表面の背後に隠れた電磁センサと組合せたシステムを含む幾つかの構造が知られている。これらのシステムでは、ディスプレー/エミッターまたはセンサはミラーを通して作動し、一方ミラー自身は同時に(1)可視スペクトルの有意な部分を反射する能力を持ちかつ(2)ディスプレー/エミッターにより放射された及び/またはセンサにより吸収された電磁線の十分な量を透過することができる特別の被膜配列のおかげでその機能から予想されるものを反射する。
【0003】
道路車両に設置された全てのこれらのシステムは通常、35と55%の間の反射率(典型的にはSAE J964または均等な方法により測定される)を示し、観察者の位置に比べてミラーの前面に置かれた反射層(単数または複数)を持つように組立てられることが多い。この実施態様は反射率と透過率を同時に最大とし、それら両者が電磁スペクトルの大体同じ部分を覆わねばならないときの極めて魅力的な仕事を最大とする。ある場合には前面上の反射層を使用するシステム構造が有利ではなく、従って背面上の干渉性層の積層体を含む二色性ミラーに対する要求がある。背面構造を使用するとき、透過率は通常、反射率に代わって犠牲にされる。例えば反射体としてクロムの薄層を使用するとき、以下の値が得られることができることが知られている:

反射率と透過率はここではSAE J964法により測定された。それらは可視スペクトルに渡っての積算値を示す。
【0004】
いったん反射率が58−60%を越えると、殆ど光は透過されないことが理解されよう。
【発明の開示】
【0005】
基板の背面上に本発明による好適な金属反射体と干渉性層の積層体を使用することによって透過率と反射率の両者を高めることができることが発見された。
【0006】
本発明は、前面と背面を持つガラス基板であって、その背面上に、基板から連続的に、
i)1.9から2.8の範囲の高屈折率材料の一層、
ii)1.2から2の範囲の低屈折率材料の一層、
iii)3を越える屈折率を持つ半導体材料の一層、
を含む層の積層体により被覆され、
− 高屈折率材料の屈折率と低屈折率材料の屈折率が少なくとも0.2だけ異なり、
− 層i)の光学的厚さ(幾何学的厚さ×屈折率)が260nm未満、好ましくは250nm未満であり、層ii)の光学的厚さが240nm未満、好ましくは220nm未満であり、そして
− 被覆された基板が550nmで少なくとも6%、好ましくは少なくとも8%の透過率、及び550nmで45%を越える、好ましくは50%を越える反射率を持つ。
【0007】
有利には、本発明は従属請求項に開示されているようなものである。この被覆された基板は反射光に青味を持つことができるが、反射光に中性色を与えることもできる。この場合、表色系ハンター値aとbは好ましくは−10と+10の間を含み、色純度は好ましくは13%未満、より好ましくは10%未満である。
【0008】
このシステムは特にプリズム式内部昼間/夜間バックミラーにおいて重要である。この反射体は高反射率“昼間位置”を提供するためにはガラスの背後になければならない。ガラス自身の前面はそれ自身の屈折率により一般的に“夜間位置”と呼ばれる低反射率レベルを与える。同時に我々の発明によれば、透過率はミラーの背後に置かれたディスプレー/エミッター及び/またはセンサ装置の使用を可能とするのに十分なレベルに保たれる。本発明はまた、“自動調光”、ときには“エレクトロクロミック”と呼ばれる、自動昼間/夜間バックミラーで使用されることができ、そこではミラーの最高の可能な反射率が装置の光学範囲を増やすために必要である。かかるシステムは、好適な透明基板(例えばガラスまたはプラスチック)上に、かかる構造のためのあらゆる従来既知の手段により、例えば浸漬、化学蒸着(CVD)または物理蒸着(PVD)のような熱分解蒸着法またはこれらの技術のいずれかの組合せにより適用されることができる。
【0009】
我々の構成の別の重要な利点は、劣化なしに製造取扱いを可能とし(機械−引掻抵抗性)かつ腐食に対し実質的な自己保護性(気候安定性)を持つように丈夫であることである。
【実施例】
【0010】
以下の実施例では、二色性バックミラーは、ソーダ石灰ガラス基板の背面(観察者の反対面)を種々の層の積層体で被覆することによって形成された。層は磁気強化真空スパッター蒸着法により蒸着される。当業者により一般的に既知の方法で、ガラスは連続蒸着室を通過し、そこで適切な目標物質が真空下に衝撃される。
【0011】
実施例1:
被覆基板は観察者から見て:
ガラス2mm/TiO60nm/SiO50nm/Cr20nmからなる。
この構造は次の光学的特性を与える:
550nmでの反射率 63%
550nmでの透過率 6%
400nmでの透過率 8%
700nmでの透過率 12%
800nmでの透過率 15%
他の興味ある組合せは同じ材料でそれらのそれぞれの厚さが次の範囲内にあるときに現れる。
ガラス(0.4から6mm)/TiO(30から100nm)/SiO(30から100nm)/Cr(10から30nm)
【0012】
実施例2:
構造は実施例1の構造に似ているが、反射体としてクロムの代わりにシリシウム(Silicium:ケイ素)が用いられる。
ガラス2mm/TiO55nm/SiO100nm/Si30nm
次の光学的特性が得られる(図1のスペクトルデータ参照)。
550nmでの反射率 81%
550nmでの透過率 8%
400nmでの透過率 7%
700nmでの透過率 18%
800nmでの透過率 34%
可視及び近赤外スペクトルに渡るシリシウム屈折率及び吸収率はより薄い層が使用されることができるようなものである。
同時に他の興味ある組合せもまた、同じ材料によりそれらのそれぞれの厚さが次の範囲内にあるときに現れる。
ガラス(0.4から6mm)/TiO(55から100nm)/SiO(30から100nm)/Si(15から50nm)
【0013】
実施例3:
ガラス/TiO(60nm)/SiO(60nm)/Si(30nm)
次の光学的特性が得られる(図2のスペクトルデータ参照):
550nmでの反射率 70%
550nmでの透過率 12%
400nmでの透過率 10%
700nmでの透過率 31%
800nmでの透過率 56%
被覆基板は反射光に中性色を示す(a=−8、b=+9、色純度は8.5%)。
【0014】
実施例4:
ガラス2mm/TiO60nm/SiO60nm/Si15nm
次の光学的特性が得られる(図3のスペクトルデータ参照)。
550nmでの反射率 60%
550nmでの透過率 20%
400nmでの透過率 8%
700nmでの透過率 64%
800nmでの透過率 81%
【0015】
実施例5:
ガラス2mm/TiO60nm/SiO60nm/Si50nm
次の光学的特性が得られる(図4のスペクトルデータ参照)。
550nmでの反射率 65%
550nmでの透過率 11%
400nmでの透過率 1%
700nmでの透過率 19%
800nmでの透過率 32%
【0016】
実施例6:
ガラス2mm/TiO100nm/SiO30nm/Si30nm
次の光学的特性が得られる(図5のスペクトルデータ参照)。
550nmでの反射率 62%
550nmでの透過率 16%
400nmでの透過率 4%
700nmでの透過率 32%
800nmでの透過率 56%
【0017】
上記の実施態様に対する代替例はシリシウムの代わりに、15%未満の量の別の金属でドープされたシリシウムの使用からなる。かかる手段は、光学的性質が実質的に影響を受けない限り、PVDの従来技術におけるその蒸着工程を改善するための古典的選択であり、それがSiOまたはSi層であるかどうかにかかわらず、例えばシリシウムと組合された2%から12%のアルミニウムでドープされたシリシウムを使用することが好ましい。
【0018】
全ての我々の実施態様は、それらの最も遠くに離れた背面上に、それらの機械的/腐食/耐飛散挙動をさらに改善するために典型的には一ミクロンを越える厚さのペイント/エナメル/他の材料の被覆を受けることができる。要求次第でディスプレー/エミッター/センサの前方に好適な“窓”が局部的に置かれるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の被覆基板のスペクトルデータを示す。
【図2】本発明の被覆基板のスペクトルデータを示す。
【図3】本発明の被覆基板のスペクトルデータを示す。
【図4】本発明の被覆基板のスペクトルデータを示す。
【図5】本発明の被覆基板のスペクトルデータを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面と背面を持つガラス基板であって、その背面上に、基板から連続的に、
i)1.9から2.8の範囲の高屈折率材料の一層、
ii)1.2から2の範囲の低屈折率材料の一層、
iii)3を越える屈折率を持つ半導体材料の一層、
を含む層の積層体により被覆され、
− 高屈折率材料の屈折率と低屈折率材料の屈折率が少なくとも0.2だけ異なり、
− 層i)の光学的厚さが260nm未満、好ましくは250nm未満であり、層ii)の光学的厚さが240nm未満、好ましくは220nm未満であり、そして
− 被覆された基板が550nmで少なくとも6%、好ましくは少なくとも8%の透過率、及び550nmで45%を越える、好ましくは50%を越える反射率を持つことを特徴とするガラス基板。
【請求項2】
層i)の光学的厚さが85と240nmの間であり、好ましくは100と225nmの間であることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板。
【請求項3】
層ii)の光学的厚さが50と180nmの間であり、好ましくは60と170nmの間であることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス基板。
【請求項4】
700nmで38%以下、好ましくは35%以下の透過率と、700nmで少なくとも43%、好ましくは少なくとも45%の反射率を持つことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のガラス基板。
【請求項5】
800nmで62%以下、好ましくは60%以下の透過率と、800nmで少なくとも22%、好ましくは少なくとも25%の反射率を持つことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のガラス基板。
【請求項6】
半導体材料がケイ素、クロム、ゲルマニウム、チタン、アルミニウム、タングステン、ニッケルまたはこれらの材料の合金の少なくとも一つから選ばれることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のガラス基板。
【請求項7】
半導体材料が、ドープされていないまたは0から12%のAlでドープされたケイ素であり、かつ少なくとも部分的に結晶化されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載のガラス基板。
【請求項8】
高屈折率材料が酸化チタン、酸化ニオブ、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素の中から選ばれることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載のガラス基板。
【請求項9】
低屈折率材料が酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、酸化スズの中から選ばれることを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載のガラス基板。
【請求項10】
反射光に中性色を持つことを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載のガラス基板。
【請求項11】
反射光の色が13%未満、好ましくは10%未満の色純度を与えることを特徴とする請求項1から10のいずれか一つに記載のガラス基板。
【請求項12】
半導体材料の層が5と100nmの間、好ましくは10と75nmの間の厚さを持つことを特徴とする請求項1から11のいずれか一つに記載のガラス基板。
【請求項13】
層iii)がCr層であるとき、その幾何学的厚さが5と50nmの間、好ましくは10と40nmの間であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一つに記載のガラス基板。
【請求項14】
層iii)がSi層であるとき、その幾何学的厚さが5と75nmの間、好ましくは10と60nmの間であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一つに記載のガラス基板。
【請求項15】
層iii)の性質及び厚さが、基板が層iii)のみで被覆されたときにそれがその非被覆側で測定されると50%未満、好ましくは30%未満のLRを持つような方法で選ばれることを特徴とする請求項1から14のいずれか一つに記載のガラス基板。
【請求項16】
低屈折率材料の層が25と150nmの間、好ましくは30と120nmの間の幾何学的厚さを持つことを特徴とする請求項1から15のいずれか一つに記載のガラス基板。
【請求項17】
高屈折率材料の層が20と150nmの間、好ましくは25と125nmの間の幾何学的厚さを持つことを特徴とする請求項1から16のいずれか一つに記載のガラス基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−517867(P2008−517867A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538426(P2007−538426)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055605
【国際公開番号】WO2006/045835
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(507340245)フラベグ ホルディング ゲゼルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】