説明

二軸配向フィルム、二軸配向積層フィルムおよび磁気記録媒体

【課題】 寸法安定性に優れた、デジタルデータストレージなどの磁気記録媒体のベースフィルムに適した二軸配向フィルムおよびそれを用いた磁気記録媒体の提供。
【解決手段】 芳香族ポリエステル(a)40〜98重量%とポリオレフィン(b)2〜60重量%との熱可塑製樹脂組成物からなるフィルムであって、フィルムの製膜方向および幅方向のヤング率がともに5GPa以上で、かつ両者の合計が高々22GPaである二軸配向フィルムおよびそれを用いた磁気記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法安定性に優れたポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは、寸法安定性に優れた磁気記録媒体用、特にディジタルデータストレージテープ用に適した二軸配向フィルムおよびそれをベースフィルムとする磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは優れた熱、機械特性を有することから磁気記録媒体用など広い分野で用いられている。磁気記録媒体、特にデータストレージ用磁気記録媒体においては、テープの高容量化、高密度化がかなり進み、それに伴ってベースフィルムへの特性要求も厳しいものとなっている。QIC、DLT、さらに高容量のスーパーDLT、LTOのごとき、リニアトラック方式を採用するデータストレージ用磁気記録媒体では、テープの高容量化を実現するために、トラックピッチを非常に狭くしており、そのためテープ幅方向の寸法変化が起こると、トラックずれを引き起こし、エラーが発生するという問題をかかえている。これらの寸法変化には、温湿度変化によるものと、高張力下で高温高湿の状態で繰り返し走行させたときに生じる幅方向の経時収縮によるものとがある。この寸法変化が大きいと、トラックずれを引き起こし、電磁変換時のエラーが発生する。なお、説明の便宜上、フィルムの製膜方向を、縦方向、長手方向またはMD方向と称し、製膜方向に直交する面内方向を、横方向、幅方向またはTD方向と称することがある。
【0003】
このような寸法変化を解決するために、特開平5−212787号公報(特許文献1)には、縦方向のヤング率(EM)および横方向のヤング率(ET)がそれぞれ550kg/mm以上および700kg/mm以上であり、両ヤング率の比(ET/EM)が1.1〜2.0であり、70℃相対湿度が65%に無荷重下で1時間保持したときの縦方向の収縮率が0.02%以下であり、縦方向の温度膨張率(αt)が10×10−6/℃以下であり、そして縦方向の湿度膨張係数(αh)が15×10−6/%RH以下である二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムが開示されている。また、国際公開第99/29488号(特許文献2)には、横方向の熱膨張係数αt(×10−6/℃)、横方向の湿度膨張係数αh(×10−6/%RH)および縦方向に荷重を負荷したとき該荷重に対する横方向の収縮率P(ppm/g)とを特定の範囲にした二軸配向ポリエステルフィルムが開示されている。さらにまた、国際公開第00/76749号(特許文献3)には、縦方向に荷重を付加して放置したときの幅方向の寸法変化、横方向の熱膨張係数αt(×10−6/℃)、横方向の湿度膨張係数αh(×10−6/%RH)および縦方向に荷重を負荷したとき該荷重に対する横方向の収縮率P(ppm/g)とを特定の範囲にした二軸配向ポリエステルフィルムが開示されている。
【0004】
しかしながら、これらの公報で提案されている方法は、延伸条件やその後の熱固定処理条件を特定の範囲にすることで達成するものであり、例えば、縦方向に荷重をかけたときの幅方向の経時収縮は、ベースフィルムの縦方向ヤング率を大きくすることで改善することができるが、他方ではポリマー特性と製膜性の点から、縦方向のヤング率を大きくすればするほど、横方向のヤング率の上限は小さくなり、根本的な解決には至っていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平5−212787号公報
【特許文献2】国際公開第99/29488号パンフレット
【特許文献3】国際公開第00/76749号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、寸法安定性優れた、磁気記録媒体、特にデジタルデータストレージなどのベースフィルムに適した二軸配向フィルムおよびそれを用いた磁気記録媒体の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ポリエステル樹脂にポリオレフィンを特定量共存させることで、力学的特性を維持しつつ、寸法変化を縮小できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
かくして本発明によれば、芳香族ポリエステル(a)40〜98重量%とポリオレフィン(b)2〜60重量%との熱可塑製樹脂組成物(c)からなるフィルムであって、フィルムの製膜方向および幅方向のヤング率がともに5GPa以上で、かつ両者の合計が高々22GPaである二軸配向フィルムが提供される。
【0009】
また、本発明によれば、本発明の好ましい二軸配向フィルムとして、芳香族ポリエステル(a)がポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであること、ポリオレフィンがシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体であること、平均粒径0.01〜1.0μmの不活性粒子を、熱可塑製樹脂組成物(c)の重量を基準として、0.01〜1.0%含有すること、熱可塑性樹脂組成物(c)が、さらに芳香族ポリエステル(a)とポリオレフィン(b)の中間の溶解性パラメーターを有する熱可塑性非晶性樹脂(d)を熱可塑性樹脂組成物の重量を基準として0.1〜10重量%含むこと、熱可塑性非晶性樹脂(d)が、アクリル酸共重合ポリオレフィンまたはビニルオキサゾリン共重合ポリオレフィン系樹脂であること、フィルムの幅方向の湿度膨張係数が0.1×10−6〜13×10−6%/RH%の範囲にあること、フィルムの幅方向の温度膨張係数が−10×10−6〜15×10−6%/℃の範囲にあること、フィルム厚みが2〜10μmの範囲にあることおよび磁気記録媒体のベースフィルムとして用いることの少なくともいずれかひとつを具備する二軸配向フィルムも提供される。
さらにまた、本発明によれば、本発明の二軸配向フィルムと、その片面に設けられた磁性層とからなる磁気記録媒体も提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、芳香族ポリエステル(a)とポリオレフィン(b)とが特定の配合比率で混合された熱可塑製樹脂組成物(c)を2軸配向フィルムにすることによって、従来のポリエステルフィルムに比べ、ヤング率などに基づく寸法安定性は維持しつつ、湿度変化などに対する寸法変化を小さくすることができ、磁気記録媒体のベースフィルムに好適な2軸配向フィルムおよびそれからなる磁気記録媒体を提供することができ、その工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の二軸配向フィルムは、後述の芳香族ポリエステル(以下、芳香族ポリエステル(a)と称することがある。)とポリオレフィン(以下、ポリオレフィン(b)と称することがある。)との混合物である熱可塑製樹脂組成物(以下、熱可塑性樹脂組成物(c)と称することがある。)から形成される。芳香族ポリエステル(a)とポリオレフィン(b)の存在量は、フィルムを形成する熱可塑性樹脂組成物(c)の重量を基準として、芳香族ポリエステル(a)が40〜98重量%、好ましくは45〜97重量%、さらに好ましくは50〜95重量%、特に好ましくは75〜95重量%、ポリオレフィン(b)が2〜60重量%、好ましくは3〜55重量%、さらに好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは5〜25重量%の範囲である。芳香族ポリエステル(a)の存在量が上限を超えるか、ポリオレフィン(b)の存在量が下限を下回ると、目的とする湿度変化に対する寸法安定性向上効果が乏しく、一方、芳香族ポリエステル(a)の存在量が下限を下回るか、ポリオレフィン(b)の存在量が上限を越えると、得られる二軸配向フィルムが力学的特性の乏しいものとなる。
【0012】
<芳香族ポリエステル(a)>
本発明における芳香族ポリエステル(a)は、ジオールと芳香族ジカルボン酸との重縮合によって得られるポリマーである。かかる芳香族ジカルボン酸として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸が挙げられ、またジオールとして、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。これらの中でも、力学特性の観点から、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましく、特にポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
【0013】
本発明におけるポリエステル樹脂は、単独でも他のポリエステルとの共重合体、2種以上のポリエステルとの混合体のいずれであってもかまわないが、力学特性の観点からは、単独の方が好ましい。共重合体または混合体における他の成分は、繰返し構造単位のモル数を基準として10モル%以下、さらに5モル%以下であることが好ましい。共重合成分としては、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分が挙げられる。
【0014】
本発明におけるポリエステル樹脂の固有粘度は、ο−クロロフェノール中、35℃において、0.40以上であることが好ましく、0.40〜0.80であることがさらに好ましい。固有粘度が0.4未満ではフィルム製膜時に切断が多発したり、成形加工後の製品の強度が不足することがある。一方固有粘度が0.8を超える場合は重合時の生産性が低下する。
【0015】
本発明におけるポリエステル樹脂の融点は、240〜300℃であることが好ましく、更には260〜290℃であることが好ましい。融点が下限に満たないとポリエステルフィルムの耐熱性が不十分な場合がある。また融点が上限を超える場合はポリオレフィン(b)と混合が難しくなることがある。
【0016】
<ポリオレフィン(b)>
本発明におけるポリオレフィン(以下、ポリオレフィン(b)と称することがある。)としては、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリビニル−t−ブタン、1,4−トランス−ポリ−2,3−ジメチルブタジエン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリジメチルスチレン、ポリブチルスチレンなどが挙げられる。これらの中でも、耐熱性および力学特性の点から、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体(以下、シンジオタクチックスチレン系重合体と称することがある。)が好ましい。
【0017】
本発明におけるシンジオタクチックスチレン系重合体は、立体化学構造がシンジオタクチック構造を有するポリスチレンであり、核磁気共鳴法(13C−NMR法)により測定されるタクティシティーが、ダイアッド(構成単位が2個)で75%以上、好ましくは85%以上、ペンタッド(構成単位が5個)で30%以上、好ましくは50%以上である。
【0018】
かかるシンジオタクチックスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)として、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(プロピルスチレン)、ポリ(ブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)が挙げられ、これらのうち、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン)が好ましく例示される。本発明におけるシンジオタクチックスチレン系重合体は、単独であっても、2種以上併用であってもよい。
【0019】
また、本発明におけるシンジオタクチックスチレン系重合体は、重合平均分子量が10,000以上、さらに50,000以上であることが好ましい。重合平均分子量が下限に満たない場合、耐熱性や機械特性が不十分である。一方、重合平均分子量の上限は500,000以下であることが好ましい。かかる上限を超える場合、製膜性に乏しくなることがある。
【0020】
本発明におけるポリオレフィンの融点は、230℃〜280℃であることが好ましく、更には240〜275℃であることが好ましい。融点が下限に満たないと得られる二軸配向ポリエステルフィルムの耐熱性が不十分な場合がある。また融点が上限を超える場合は芳香族ポリエステルとの混合が難しくなることがある。
【0021】
<表面粗さと不活性粒子>
本発明の二軸配向フィルムは、表面粗さWRa(中心面平均粗さ)が1〜10nm、さらには2〜10nm、特に2〜8nmであることが好ましい。この表面粗さWRaが上限より大きいと、磁性層の表面が粗くなり、満足し得る電磁変換特性が得られなくなる。一方、この表面粗さWRaが下限未満であると、表面が平坦になりすぎ、パスロールまたカレンダーでの滑りが悪くなり、シワが発生し、磁性層をうまく塗布できなかったり、うまくカレンダーをかけられなかったりすることがある。
【0022】
前記表面粗さWRaは、フィルム中に不活性粒子、例えば、周期律表第IIA、第IIB、第IVA、第IVBの元素を含有する無機微粒子(例えば、カオリン、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素など)、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂粒子等のごとき耐熱性の高いポリマーよりなる微粒子などを含有させることで、あるいは微細凹凸を形成する表面処理、例えば易滑塗剤のコーティング処理によって調整することができる。
【0023】
不活性粒子を含有させる場合、その平均粒径は好ましくは0.01〜1.0μm、さらに好ましくは0.03〜0.8μmであり、特に好ましくは0.05〜0.6μmである。また不活性粒子の含有量は、対熱可塑性樹脂組成物(c)の重量を基準として、好ましくは0.01〜1.0重量%、さらに好ましくは0.03〜0.8重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。また、フィルム中に含有させる不活性粒子は単成分系でも多成分系でもよいが、特に非磁性層側のポリマーには、テープの電磁変換特性とフィルムの巻取性の両立から、2成分系あるいは、それ以上の多成分系の不活性粒子を含有させることが好ましい。フィルム表面のWRaの調整は、不活性粒子の平均粒径や添加量を上記の範囲から適宜選択することで行うとよい。
【0024】
また、易滑塗剤のコーティング(以下、塗布層と称することがある。)をする場合は、片面だけでなく両面に施しても良い。塗布層としてはそれ自体公知のもの、例えば特許文献3(WO00/76749号パンフレット)で例示したものを好適に採用できる。
【0025】
なお、本発明の二軸配向フィルムは、単層フィルムだけに限られず、他のフィルム層を片面に積層したものであっても良い。例えば、磁性層側をより平坦な表面にするために、実質的に不活性粒子を含有しないポリエステルフィルム層を、本発明の二軸配向フィルムの磁性層側表面に積層しても良いし、走行面(非磁性層)側をより走行性に優れた表面にするために、含有させる不活性粒子を比較的大きくしたり、量を多くしたりしたポリエステルフィルム層を、本発明の二軸配向フィルムの非磁性層側表面に積層しても良い。このような積層フィルムは、磁気記録媒体としたときに、電磁変換特性とフィルムの巻取性とを両立させるのが容易である点から好ましい。
【0026】
<ヤング率>
本発明の二軸配向フィルムは、フィルムの製膜方向(以下、縦方向、長手方向またはMD方向と称することがある。)および幅方向(以下、横方向またはTD方向と称することがある。)のヤング率がともに5GPa以上であることが必要である。どちらか一方でもヤング率が下限よりも小さいと、湿度変化による寸法変化が小さくても、磁気記録媒体としたときに係る負荷に耐えられなかったり、温湿度変化で変形してしまう。また、製膜方向と幅方向のヤング率の和は、高々22GPaである。製膜方向のヤング率と幅方向のヤング率の和が、上限を超えると、フィルム製膜時、延伸倍率が過度に高くなり、フィルム破断が多発し、製品歩留りが著しく悪くなる。好ましい製膜方向と幅方向のヤング率の和の上限は、20GPa以下、さらに18GPa以下である。
【0027】
ところで、リニアトラック方式の磁気テープ用として供する場合、製膜方向の伸びを少なくする観点からは、製膜方向のヤング率が幅方向のヤング率より大きいことが好ましい。好ましいヤング率は、製膜方向のヤング率が幅方向のヤング率より大きく、製膜方向のヤング率が6GPa以上、7GPa以上、特に8GPa以上であり、幅方向のヤング率が、5GPa以上、さらには6GPa以上、特に7GPa以上である。また、幅方向の伸びを極めて少なくする観点から、幅方向のヤング率が製膜方向のヤング率より大きいことが好ましい。好ましいヤング率は、幅方向のヤング率が製膜方向のヤング率より大きく、幅方向のヤング率が7GPa以上、8GPa以上、特に9GPa以上であり、製膜方向のヤング率が、5GPa以上、さらには6GPa以上、特に7GPa以上である。さらにまた、製膜方向と幅方向の伸びをともに少なくする観点からは、製膜方向のヤング率が幅方向のヤング率の差が2GPa以下、特に1GPa以下で、製膜方向のヤング率が6GPa以上、7GPa以上、特に8GPa以上であり、幅方向のヤング率が、6GPa以上、さらには7GPa以上、特に8GPa以上であることが好ましい。
【0028】
<湿度膨張係数>
本発明の二軸配向フィルムは、フィルムの幅方向の湿度膨張係数αhが0.1×10−6〜13×10−6/%RHの範囲にあることが好ましい。好ましいαhは、0.5×10−6〜10×10−6/%RH、特に1×10−6〜8×10−6/%RHの範囲である。αhを下限よりも小さくするには、過度にポリオレフィン(b)を存在させたりすることになり、製膜性が低下し、一方上限を超えると、湿度変化によってフィルムが伸びてしまい、トラックずれなどを惹起することがある。このようなαhは、測定方向のヤング率を延伸により向上させ、かつポリオレフィンを混在させることによって達成される。
【0029】
<温度膨張係数>
本発明の二軸配向フィルムは、フィルムの幅方向の温度膨張係数αtが−10×10−6〜+15×10−6/℃の範囲にあることが好ましい。好ましいαtは、−8×10−6〜+10×10−6/℃、特に−5×10−6〜+5×10−6/℃の範囲である。αtが、下限よりも小さいと収縮してしまい、一方上限を超えると、温度変化によってフィルムが伸びてしまい、トラックずれなどを惹起することがある。このようなαtは、測定方向のヤング率を延伸により向上させ、かつポリオレフィンの存在量を前述の上限以下にすることによって達成される。
【0030】
<フィルム厚み>
本発明の二軸配向フィルムは、フィルム全体の厚みが2〜10μm、さらに3〜7μm、特に4〜6μmであることが好ましい。この厚みが上限を超えると、テープ厚みが厚くなりすぎ、例えばカセットに入れるテープ長さが短くなったりして、十分な磁気記録容量が得られないことがある。一方、下限未満ではフィルム厚みが薄いが故に、フィルム製膜時にフィルム破断が多発したり、またフィルムの巻取性が不良となったりすることがある。
【0031】
<熱可塑性樹脂組成物(c)中のポリオレフィン(b)の分散状態)
本発明において、熱可塑性樹脂組成物(c)は、芳香族ポリエステル(a)とポリオレフィン(b)との混合物により形成され、ポリオレフィン(b)が島状に分散していることが好ましい。ここで「島状の分散形状」とは、球状、楕円状、棒状のいずれでも良い。本発明においては、MD方向に引き伸ばされた棒状の分散形状が多く観察され、MD方向の平均長さが20μm以下であることがより好ましい。かかる平均長さは、得られたフィルムのMD方向と厚み方向とに平行な断面を光学顕微鏡(Nikon社製OPTPHOT−2)を用いて200倍で観察し、100個のオレフィン(b)からなる分散相のMD方向の長さを測定して平均することで求められる。
【0032】
MD方向の平均長さは、さらに好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。平均長さが上限を超えると、フィルムの延伸工程において破断しやすくなることがある。またフィルム厚みが薄くなるに従って分散相の大きさの影響が顕著になり、フィルムの延伸工程において破断しやすくなる。
【0033】
MD方向の平均長さを20μm以下にする方法としては、混練方法による物理的方法や、相溶化剤等の化学的方法が挙げられる。特に既存の装置で対応できることから、熱可塑性樹脂組成物(c)に相溶化剤をさらに含有させることがより好ましい。
【0034】
ここで相溶化剤とは、通常の相溶化剤の定義に加えて、ポリオレフィン(b)からなる分散相のサイズを小さくする機能を有するものを含む。そのような機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば芳香族ポリエステル(a)とポリオレフィン(b)の中間の溶解性パラメーター(以下、SP値と略記することがある)を有する熱可塑性非晶性樹脂(d)が挙げられる。芳香族ポリエステル(a)およびポリオレフィン(b)のSP値は、用いる樹脂の種類および共重合成分によって定まるものである。一例を挙げると、芳香族ポリエステル(a)のうち、ポリエチレンテレフタレートは、Fedor法により算出されたSP値(以下、Fedor法と略記する)が23.6(MJ/m0.5であり、ポリエチレン−2,6−ナフタレートは24.8(MJ/m0.5(Fedor法)、またポリオレフィン(b)のうち、ポリスチレンは20.7(MJ/m0.5(Fedor法)である。
【0035】
熱可塑性非晶性樹脂(d)は、例えばアクリル酸共重合ポリオレフィン、ビニルオキサゾリン共重合ポリオレフィン系樹脂などが挙げられ、該共重合体のうち、オレフィン成分を構成する単量体は、スチレンであることがさらに好ましい。また、該共重合体のうち、アクリル酸成分を構成する単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが例示される。熱可塑性非晶性樹脂(d)は、相溶化効果を高めるために、さらにエポキシ基が導入されていてもよい。
【0036】
熱可塑性非晶性樹脂(d)は、熱可塑性樹脂組成物(c)の重量を基準として0.1〜10重量%の範囲で含有されることが好ましい。熱可塑性非晶性樹脂(d)の含有量は、さらに好ましくは0.2〜5重量%、特に好ましくは0.3〜3重量%である。含有量が下限に満たない場合、相溶化剤としての効果が発現しないため、ポリオレフィン(b)の平均長さが所望の範囲になりにくく、製膜性の向上効果が乏しくなる。一方、含有量が上限を超える場合、架橋反応によるゲルが発生することがある。
【0037】
本発明において、熱可塑性樹脂組成物(c)からなるフィルムは、ボイドを有さないことが好ましい。ここで、ボイドとは、マトリックス相を形成する芳香族ポリエステル(a)と島相を形成するポリオレフィン(b)との界面に生じる空洞を指す。ボイドは、ポリオレフィン(b)の平均長さを求める方法と同様に、光学顕微鏡(Nikon社製OPTPHOT−2)を用いて200倍で観察して求めることができる。また、「ボイドを有さない」とは、上述の光学顕微鏡による観察において、100個のオレフィン(b)からなる分散相のうち、分散相のまわりにボイドが観察される分散相数が10個以下、さらに好ましくは5個以下の状態を指す。
【0038】
ボイドが存在すると、フィルムの延伸工程においてフィルムが破断しやすくなることがある。また、フィルム厚みが薄くなるに従い、ボイドの部分が欠陥となって、力学的特性が低下したりすることがある。
【0039】
ボイドを有さないためには、芳香族ポリエステル(a)のガラス転移点(Tg)よりも低いTgを有するポリオレフィン(b)を選択し、かつフィルムの延伸温度が芳香族ポリエステル(a)のTg以上であることが好ましい。また、ポリオレフィンの中でも芳香族ポリエステルに近い相溶性パラメーターを有する樹脂を用いることが好ましい。さらに、相溶化剤を含有させることによってもボイドをなくすことが可能である。
【0040】
<製膜方法>
本発明の二軸配向フィルムは、以下の方法にて製造するのが好ましい。
本発明の二軸配向フィルムは、優れた湿度変化に対する寸法安定性を付与する目的で、芳香族ポリエステル(a)とポリオレフィン(b)との、さらに要すれば相溶化剤との混合体である熱可塑性樹脂組成物(c)からなる。混合体であることによって、ポリオレフィン(b)による優れた湿度変化に対する寸法安定性と芳香族ポリエステル(a)による優れた力学特性と製膜性とを発現できる。また、前述の通り、本発明の2軸配向フィルムは、本発明の目的を達成する範囲内において、上述の混合体からなる層を少なくとも1層有する積層フィルムであってもよい。
【0041】
本発明の二軸配向フィルムは、上述の芳香族ポリエステル(a)とポリオレフィン(b)とを原料とし、これを溶融状態でシート状に押出した後、テンター法、インフレーション法など公知の製膜方法を用いて製造することができ、例えば芳香族ポリエステル(a)とポリオレフィン(b)とを所定量混合し、乾燥後、300℃に加熱された押出機に供給して、Tダイよりシート状に成形する方法が挙げられる。好ましくは芳香族ポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度で押出し、急冷固化して未延伸フィルムとし、さらに該未延伸フィルムを一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(但し、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で所定の倍率に延伸し、次いで上記延伸方向と直交する方向(一段目が縦方向の場合には二段目は横方向となる)にTg〜(Tg+70)℃の温度で所定の倍率に延伸し、さらに熱処理する方法を用いて製造することができる。その際、延伸倍率、延伸温度、熱処理条件等は上記フィルムの特性から選択、決定される。面積延伸倍率は15〜35倍、さらには20〜30倍にするのが好ましい。熱固定温度は190〜250℃の範囲内から、また処理時間は1〜60秒の範囲内から決めるとよい。
【0042】
かかる逐次二軸延伸法のほかに、同時二軸延伸法を用いることもできる。また逐次二軸延伸法において縦方向、横方向の延伸回数は1回に限られるものではなく、縦−横延伸を数回の延伸処理により行うことができ、その回数は限定されるものではない。例えば、さらに機械特性を上げたい場合には、熱固定処理前の上記二軸延伸フィルムについて、(Tg+20)〜(Tg+70)℃の温度で熱処理し、さらにこの熱処理温度より10〜40℃高い温度で縦方向または横方向に延伸し、続いてさらにこの延伸温度より20〜50℃高い温度で横方向または縦方向に延伸し、縦方向の総合延伸倍率を3.0〜7.0倍、横方向の総合延伸倍率を3.0〜6.0倍にとすることが好ましい。
【0043】
共押出し法により積層フィルムを製造する場合、2種以上の溶融ポリエステルをダイ内で積層してからフィルム状に押出し、好ましくはそれぞれのポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度で押出し、または2種以上の溶融ポリエステルをダイから押出した後に積層し、急冷固化して積層未延伸フィルムとし、ついで単層フィルムの場合と同じ方法、条件で二軸延伸、熱処理を行って積層二軸配向フィルムとする。
また、塗布層を設ける場合、前記した未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムの片面または両面に所望の塗布液を塗布するのが好ましい。
【0044】
<磁気記録媒体>
本発明によれば、本発明の上記二軸配向フィルムをベースフィルムとし、その片面上に磁性層を有する磁気記録媒体が同様に提供される。
磁気記録媒体としては、上記本発明の二軸配向フィルムをベースフィルムとしていれば特に限定されず、例えば、QICやDLTさらには高容量タイプであるS−DLTやLTO等のリニアトラック方式のデータストレージテープなどが挙げられる。なお、ベースフィルムが温湿度変化による寸法変化が極めて小さいので、テープの高容量化を確保するためにトラックピッチを狭くしてもトラックずれを引起こし難い高密度高容量化に好適な磁気記録媒体となる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基いて本発明をさらに説明する。なお、本発明における種々の物性値および特性は、以下のようにして測定されたものであり、かつ定義される。
(1)ヤング率
フィルムを試料幅10mm、長さ15cmに切り、チャック間100mmにして引張速度10mm/min、チャート速度500mm/minでインストロンタイプの万能引張試験装にて引張り、得られる荷重−伸び曲線の立上り部の接線よりヤング率を計算する。なお、測定方向が試料の長手方向であり、ヤング率は10回測定し、その平均値を用いた。
【0046】
(2)表面粗さ(WRa)
WYKO社製非接触式三次元粗さ計(NT−2000)を用いて測定倍率25倍、測定面積246.6μm×187.5μm(0.0462mm)の条件にて、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトにより、中心面平均粗さ(WRa)を次式にて求める。なお、それぞれの測定は、10回繰り返し、それらの平均値を用いた。
【数1】

Zjkは測定方向(246.6μm)、それと直行する方向(187.5μm)をそれぞれM分割、N分割したときの各方向のj番目、k番目の位置における3次元粗さチャート上の高さである。
【0047】
(3)不活性粒子の平均粒径
島津製作所製CP−50型セントリフュグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)を用いて測定する。得られる遠心沈降曲線をもとに算出する各粒子の粒径とその存在量との累積曲線から、50マスパーセント(mass percent)に相当する粒径を読み取り、この値を上記平均粒径とする。
【0048】
(4)温度膨張係数(αt)
フィルムサンプルを、幅方向が測定方向となるように長さ15mm、幅5mmに切り出し、真空理工製TMA3000にセットし、窒素雰囲気下(0%RH)、60℃で30分前処理し、その後室温まで降温させる。その後25℃から70℃まで2℃/minで昇温し、各温度でのサンプル長を測定し、次式より温度膨張係数(αt)を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値を用いた。
【数2】

ここで、L40:40℃のときのサンプル長(mm)
60:60℃のときのサンプル長(mm)
△T:20(=60−40)℃
0.5×10−6:石英ガラスの温度膨張係数である。
【0049】
(5)湿度膨張係数(αh)
フィルムサンプルを、幅方向が測定方向となるように長さ15mm、幅5mmに切り出し、真空理工製TMA3000にセットし、30℃の雰囲気下で、窒素雰囲気下から、湿度30%RH、および湿度70%RHの一定に保ち、その時のサンプルの長さを測定し、次式にて湿度膨張係数を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値をαhとした。
【数3】

ここで、L30:30%RHのときのサンプル長(mm)
70:70%RHのときのサンプル長(mm)
△H:40(=70−30)%RHである。
【0050】
(6)融点、ガラス転移点
芳香族ポリエステル(a)およびポリオレフィン(b)それぞれ10mgを、測定用のアルミニウム製パンに封入し、TAinstruments社製示差熱量計DSC2920を用いて25℃から300℃まで20℃/minの昇温速度で測定し、それぞれの融点(芳香族ポリエステル(a)の融点:Tma、ポリオレフィン(b)の融点:Tmb)およびガラス転移点(芳香族ポリエステル(a)のガラス転移点:Tga、ポリオレフィン(b)のガラス転移点:Tgb)を求めた。
【0051】
(7)トラックずれ
ヒューレットパッカード社製、LTO1のドライブを用いて、10℃、10%RHの温湿度下で記録した後30℃、80%RHの温湿度下で再生し、温湿度変化による磁気テープの磁気ヘッドに対するトラックずれ幅を測定した。
これらのずれ幅の絶対値が少ないほど良好であることを示す。
【0052】
(8)製膜性
製膜時の状況を観察し、以下の基準でランク分けする。
◎:製膜する上で切断などの問題がなく、12時間以上の連続製膜が可能。
○:製膜可能である条件が狭く限定されるが、長尺のロールの採取は可能。
×:連続製膜性に劣り、極短時間でしか製膜ができない。
【0053】
[比較例1]
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチルおよびエチレングリコールを酢酸マンガンの存在下、常法によりエステル交換反応を行った後、トリエチルフォスフォノアセテートを添加した。次いで三酸化アンチモンを添加して、常法により重縮合させてポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂(固有粘度(オルソクロロフェノール、35℃)0.62)を得た。本樹脂中の各元素の濃度を原子吸光法によって測定した結果、Mn=50ppm、Sb=300ppm、P=50ppmであった。なお、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート中には、重合段階で、樹脂組成物の重量を基準として、あらかじめ平均粒径0.5μmのシリコーン粒子を0.02重量%、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.3重量%添加した。
【0054】
得られたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂を180℃で6時間乾燥後、300℃に加熱された押出機に供給し、T型押出ダイを用いて押出し、表面仕上げ0.3S、表面温度60℃に保持したキャスティングドラム上で急冷固化せしめて、未延伸フイルムを得た。この未延伸フイルムを75℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で14mm上方より830℃の表面温度の赤外線ヒーターにて加熱してフィルムの製膜方向に5.1倍に延伸し、急冷し、続いてステンターに供給し、125℃にて横方向に4.8倍延伸した。さらに引き続いて240℃で10秒間熱固定した後、120℃にて横方向に1.0%弛緩処理をし、厚み4.5μmの二軸配向フィルムを得た。 得られたフィルムのヤング率は縦方向8GPa 、横方向6.5GPaであった。
【0055】
一方、下記に示す組成物をボールミルに入れ、16時間混練、分散した後、イソシアネート化合物(バイエル社製のデスモジュールL)5重量部を加え、1時間高速剪断分散して磁性塗料とした。
磁性塗料の組成:
針状Fe粒子 100重量部
塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体 15重量部
(積水化学製エスレック7A)
熱可塑性ポリウレタン樹脂 5重量部
酸化クロム 5重量部
カーボンブラック 5重量部
レシチン 2重量部
脂肪酸エステル 1重量部
トルエン 50重量部
メチルエチルケトン 50重量部
シクロヘキサノン 50重量部
この磁性塗料を上述のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムの一方の面に塗布厚さ0.5μmとなるように塗布し、次いで2,500ガウスの直流磁場中で配向処理を行い、100℃で加熱乾燥後、スーパーカレンダー処理(線圧2,000N/cm、温度80℃)を行い、巻き取った。この巻き取ったロールを55℃のオーブン中に3日間放置した。
【0056】
さらに下記組成のバックコート層塗料を、上述のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムの他方の面に厚さ1μmに塗布し、乾燥させ、さらに12.65mm(=1/2インチ)に裁断し、磁気テープを得た。
バックコート層塗料の組成:
カーボンブラック 100重量部
熱可塑性ポリウレタン樹脂 60重量部
イソシアネート化合物 18重量部
(日本ポリウレタン工業社製コロネートL)
シリコーンオイル 0.5重量部
メチルエチルケトン 250重量部
トルエン 50重量部
得られた二軸配向フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0057】
[実施例1]
比較例1のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂を、該ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂90重量%とシンジオタクチックポリスチレン(出光石油化学株式会社製、グレード;130ZC)10重量%を均一にブレンドした熱可塑性樹脂組成物(c1)に変更し、延伸倍率を変更して、縦方向のヤング率8GPa、横方向のヤング率6.5GPa、厚み4.5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。なお、熱可塑性樹脂組成物(c1)中には、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂の重合段階で、熱可塑性樹脂組成物(c1)の重量を基準として、あらかじめ平均粒径0.5μmのシリコーン粒子を0.02重量%、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.3重量%添加しておいた。
得られた二軸配向フィルムに、比較例1と同様な操作を繰り返し、磁気テープを作成した。
得られた二軸配向フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0058】
[実施例2]
熱可塑性樹脂組成物(c1)の代わりに、シンジオタクチックポリスチレン(出光石油化学株式会社製、グレード;130ZC)の含有量を10重量%から30重量%に変更した熱可塑性樹脂組成物(c2)を用い、かつ延伸倍率を変更した以外は実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0059】
[実施例3]
熱可塑性樹脂組成物(c1)の代わりに、シンジオタクチックポリスチレン(出光石油化学株式会社製、グレード;130ZC)の含有量を10重量%から50重量%に変更した熱可塑性樹脂組成物(c3)を用い、かつ延伸倍率を変更した以外は実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0060】
[実施例4]
延伸倍率を変更して、縦方向のヤング率8GPa、横方向のヤング率8GPa、厚み4.5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た以外は実施例2と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0061】
[実施例5]
延伸倍率を変更して、縦方向のヤング率5.5GPa、横方向のヤング率12GPa、厚み4.5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た以外は実施例2と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0062】
[実施例6]
熱可塑性樹脂組成物(c1)の代わりに、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂の含有量を90重量%から89重量%に変更し、相溶化剤としてエポキシ基含有アクリル酸共重合ポリスチレン(東亜合成株式会社製、アルフォンUG−4070、SP値21.5(Fedor法))を1重量%加えた熱可塑性樹脂組成物(c4)を用いた以外は実施例1と同様な操作を繰り返した。なおPENのSP値は24.8(Fedor法)、シンジオタクチックポリスチレンのSP値は20.7(Fedor法)であった。
得られた二軸配向フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0063】
[実施例7]
熱可塑性樹脂組成物(c2)の代わりに、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂の含有量を70重量%から69重量%に変更し、相溶化剤としてオキサゾリン基含有ポリスチレン(日本触媒株式会社製、エポクロスRPS−1005、SP値22.2(Fedor法))を1重量%加えた熱可塑性樹脂組成物(c5)を用いた以外は実施例2と同様な操作を繰り返した。なおPENのSP値は24.8(Fedor法)、シンジオタクチックポリスチレンのSP値は20.7(Fedor法)であった。
得られた二軸配向フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0064】
[比較例2]
熱可塑性樹脂組成物(c1)の代わりに、シンジオタクチックポリスチレン(出光石油化学株式会社製、グレード;130ZC)の含有量を10重量%から70重量%に変更した熱可塑性樹脂組成物(c4)を用い、かつ延伸倍率を変更した以外は実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0065】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の2軸配向フィルムは、従来のポリエステルフィルムに比べ、ヤング率などに基づく寸法安定性は維持しつつ、湿度変化などに対する寸法変化を小さくすることができ、磁気記録媒体のベースフィルムに好適に利用でき、特にQICやDLTさらに高容量タイプであるS−DLTやLTO等のリニアトラック方式のデータストレージテープなどのベースフィルムとして公的に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリエステル(a)40〜98重量%とポリオレフィン(b)2〜60重量%との熱可塑製樹脂組成物(c)からなるフィルムであって、フィルムの製膜方向および幅方向のヤング率がともに5GPa以上で、かつ両者の合計が高々22GPaであることを特徴とする二軸配向フィルム。
【請求項2】
芳香族ポリエステル(a)がポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである請求項1記載の二軸配向フィルム。
【請求項3】
ポリオレフィン(b)がシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体である請求項1記載の二軸配向フィルム。
【請求項4】
熱可塑製樹脂組成物(c)が、平均粒径0.01〜1.0μmの不活性粒子を、0.01〜1.0%含有する請求項1記載の二軸配向フィルム。
【請求項5】
熱可塑性樹脂組成物(c)が、さらに芳香族ポリエステル(a)とポリオレフィン(b)の中間の溶解性パラメーターを有する熱可塑性非晶性樹脂(d)を熱可塑性樹脂組成物(c)の重量を基準として0.1〜10重量%含む請求項1に記載の二軸配向フィルム。
【請求項6】
熱可塑性非晶性樹脂(d)が、アクリル酸共重合ポリオレフィンまたはビニルオキサゾリン共重合ポリオレフィン系樹脂である請求項5に記載の二軸配向フィルム。
【請求項7】
フィルムの幅方向の湿度膨張係数が0.1×10−6〜13×10−6%/RH%の範囲にある請求項1記載の二軸配向フィルム。
【請求項8】
フィルムの幅方向の温度膨張係数が−10×10−6〜15×10−6%/℃の範囲にある請求項1記載の二軸配向フィルム。
【請求項9】
フィルム厚みが2〜10μmの範囲にある請求項1記載の二軸配向フィルム。
【請求項10】
磁気記録媒体のベースフィルムとして用いる請求項1〜9記載の二軸配向フィルム。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の二軸配向フィルムと、その片面に設けられた磁性層とからなることを特徴とする磁気記録媒体。

【公開番号】特開2006−2142(P2006−2142A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142616(P2005−142616)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】