説明

二酸化炭素を精製する方法

【課題】半導体工業において使用するのに十分な純度を達成するためのCOの精製方法を提供する。
【解決手段】汚染物の除去に適した条件下で、COの流れを少なくとも1種の金属の混合金属酸化物と接触させる。該混合金属酸化物は1種または複数の金属の少なくとも2つの酸化状態、あるいは異なる化学的性質を有する、類似の比較的高い酸化状態の2種の金属を含む。次いで、各吸着剤を除染/活性化することにより、吸着剤を混合酸化状態に戻し、さらなる回数の除染を可能にする。各吸着剤は、互いに補完し合い、別々の汚染物を選択的に吸着するように選択される。加えて、各吸着剤は、再生時に金属の一部のみが還元され、その1種の吸着剤が元の状態に戻されるように、異なる程度の還元を受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、2002年10月17日に出願された米国特許仮出願第60/419,390号の優先権の恩恵を主張する。本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、「限定された二酸化炭素の精製方法」という名称の、2002年10月17日出願の米国特許出願第10/ に関連する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO)は、飲料の炭酸化から半導体の生産に至るまでの広範囲にわたるさまざまな工業的工程および製品において使用される。COの工業的な利用には、ウエハの洗浄、残留フォトレジストの除去、低誘電率絶縁体(low K dielectric)のアニールおよび洗浄、レーザガスとしての使用、粒子の除去およびプラズマ発生が含まれる。そのような超高純度用途において汚染物が存在すると、半導体用途の場合は使用できない製品を、またはその他の関連する用途においては光学素子およびレーザの損傷が生じる可能性がある。COのさまざまな相、液体、気体および超臨界が、用途に応じて使用される。
【0003】
COは本質的に湿っているので、COを高水準に精製することは困難である。≧99.999%の純度(汚染物≦百万分の10部、ppm;超高純度)を有する気体を容易に得ることができる。しかし、現在のアメリカ半導体工業会(Semiconductor Industry Asociation)のガイドラインを満足するためには、≦10億分の5部(ppb)の汚染物になるまで、気体をさらに精製する必要がある。汚染物が≦1ppb、好ましくは≦0.1ppbであることというさらなる要求が生じるであろう。半導体工業が関心を持つ汚染物には、湿気、炭化水素、粒子および金属が含まれる。その他の汚染物には、O、NO、SO、COS、およびPO、ただしx≦3、などの、酸素、窒素、硫黄、およびリン含有化合物、ならびに対応する有機ヘテロ原子誘導体が含まれており、ヘテロ原子には、これに限らないが、酸素、窒素、硫黄、リン酸塩、およびケイ素が含まれる。
【0004】
二酸化炭素が超臨界状態で使用されるときには、COの高度な精製が一層不可欠とになる。超臨界流体とは、流体の臨界温度および臨界圧力を超えた状態で存在する流体であって、気相および液相が溶解して1つの媒体となり、相転移することなしに密度が広範囲に変化することができる。これにより、例えば、通常、主として無機または極性物質の溶媒としての役割を果たす物質が、有機または無極性材料の有効な溶媒になりうる。COの超臨界状態は、31.3℃(88.3°F)および74バール(1070psi)の臨界点において、比較的穏やかな条件下で到達されうる。
【0005】
超臨界COは、表面の小さなフィーチャおよび多孔質の内部表面に入り込み、汚染物、エッチングされたフォトレジストおよびその他の望ましくない材料を基板から除去することができるので、洗浄剤として有用である。しかし、また、この性質により、COの流れに存在している汚染物を、ウエハおよび他の高純度基板内に充満させることになる可能性がある。加えて、流体が高圧および高温であるために、一部の汚染物はより悪質となりうる。例えば、超臨界COの環境における水および酸素は、高度に腐食性となりうるものであり、それによってウエハ上の所望の構造フィーチャは性能低下を被り易い。
【0006】
また、半導体工業で使用される装置は、汚染物源としての役割を果たしうる。ステンレス鉄鋼成分は、鉄、クロムまたはニッケルを含む金属を金属錯塩または金属イオンとして浸出することがある。浸出された金属は、ppbから1兆分の数部(ppt)の低濃度で揮発され、気相で容易に捕獲されて、シリコンウエハまたは他の高純度製品の汚染をもたらす可能性がある。従って、半導体製造工程において使用される装置はすべて、完全に洗浄して、表面汚染物となる可能性を除去しなければならない。
【0007】
Spiegelmanら(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,361,696号)は、二層装置においてCOを連続精製するために、高シリカゼオライトを使用することを教示している。高シリカゼオライトは、COから重炭化水素を効率的に除去することができるが、その他の汚染物の除去には制限がある。Lansbarkisら(米国特許第6,511,528号)は、半導体工業において使用するCOを始めすべてのものから一連の汚染物を除去するために、一連の材料を使用することを教示している。材料を、単一または多数の容器に設置することができる。どちらの配置でも、複雑なシステムになる。材料を単一容器に設置する場合は、もっとも安定性の低い精製材料が破損すると、容器を廃棄しなければならない。多数の容器を使用する場合は、COの全体の純度を確保するために、複雑な交換スケジュールを守らなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,361,696号明細書
【特許文献2】米国特許第6,511,528号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、半導体工業において使用するのに十分な純度を達成するための、COの精製方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この方法は、COの流れ、気体、液体または超臨界流体を、少なくとも1種の混合金属酸化物と接触させることを含み、該混合金属酸化物は、1種または複数の金属の少なくとも2つの酸化状態、あるいは異なる化学的性質を有する、類似の比較的高い酸化状態の2種の金属を含む。本発明は、いくつかの汚染物を低水準にするために、単一の材料混合物を使用することを含む。COの除染は、層および吸収缶装置を備えたいくつかの精製装置のいずれにおいても、行われうる。第1に関心のある汚染物は、O、水、金属、含硫汚染物、特にCOS、リン含有汚染物、ケイ素含有汚染物および非メタン炭化水素(NMHC)である。第2に関心のある汚染物は、窒素汚染物、特にNHおよびNO、ただし1≦x≦2、およびその他の無機化合物である。全汚染物水準は、本発明の方法を使用して、100ppb未満に減少される。
【0011】
本発明により、広範囲にわたる汚染物をCOから除去することが可能となる。被酸化性汚染物は、材料の高酸化状態の部分に吸収され、被還元性汚染物は材料の低酸化状態の部分に吸着される。金属の選択および比率は、除去すべき汚染物と共に除染すべきCOの供給源によって決まる。
【0012】
さらに、本発明は、さまざまな汚染物の隔離を可能にする、多数の酸化状態を吸着剤に提供するために、金属酸化物を活性化および再生する方法に関する。活性化および再生は、金属をほぼ完全に酸化するある一定時間、吸着剤を比較的高温で酸素に曝すことを含む。次いで、吸着剤は冷却され、吸着剤を部分的に還元するのに十分な時間、窒素(N)またはアルゴン(Ar)などの不活性ガス中に存在する1〜5%の水素(H)などの還元剤に曝される。混合金属酸化物を生成するだけではなく、活性化および再生段階では、吸着剤から汚染物をパージする。活性化および再生の的確な方法は、層の種類、使用される吸着剤およびCO中の主要な汚染物によって決まる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】O除去試験のマニホールドを示す図である。
【図2】本発明のNi/NiO媒体の酸素除去能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、100ppb未満の、好ましくは10ppb未満の、もっとも好ましくは1ppb未満の汚染物を含有する、半導体工業において使用するための、高度に精製されたCOを製造する方法である。第1に関心のある汚染物は、O、水、金属、含硫汚染物、特にCOS、リンおよびケイ素含有汚染物および非メタン炭化水素(NMHC)である。第2に関心のある汚染物は、窒素化合物、特にNHおよびNOおよびその他の有機化合物である。
【0015】
COは通常、大抵の吸着材料(例えば、金属酸化物)と反応して、吸着材料を不活性にするので、COの精製は著しく困難である。実際、COは、安全のために、出荷に先立って高活性の還元金属を不動態化するのに一般的に使用される。本発明は、以下にさらに記述される活性化法を適切に選択することにより、本質的に異なる化学的性質を利用する混合金属の組み合わせを用いて、CO2の抑制的な性質を克服する。
【0016】
本発明は、多数の酸化状態の少なくとも1種の金属を、吸着剤として使用することを含む。多数の酸化状態は、次のように定義される:
+M ただし、1≦n≦8で、Mは金属である。
吸着剤は、高および低酸化状態の両方の金属の特性を併せもつ。本発明との関連では、混合金属酸化物は、多数の酸化状態にある少なくとも1種の金属、または類似の比較的高い酸化状態にあって、電気陰性度や配位環境などの化学的性質が異なる2種以上の金属を含む組成物として定義される。本発明との関連では、混合金属酸化物の成分の1種は、金属状態(例えば、Ni/NiO)であってもよい。本発明の混合金属酸化物の組み合わせを例証するいくつかの例を示す。いくつかの材料について作用の機構が示唆されるが、本発明は、提案された機構に拘束されず、それらの機構は本発明の限定となるものではない。
【0017】
第一に、異なる酸化状態の2種以上の金属を組み合わせることができる(例えば、Cu/ZnO、Fe/MnO)。第二に、十分に異なる化学的性質を有する、類似の酸化状態にある2種以上の金属を組み合わせることができる(例えば、NiO/TiO、PdO/CeO)。第三に、金属全体を通して変化する酸化状態を有する単一金属を使用することができる(例えば、Ni/NiO、V、ただし1≦y≦5)。xの取り得る値は、化合物に応じて変化し、整数であることもないこともある。当業者なら、それぞれの場合に、xの取り得る値が分かるはずである。1種または2種以上の適切な吸着剤を選択するために考慮すべき事柄を以下で考察する。
【0018】
本発明の材料は安定であり、十分な溶媒特性を有する液体および超臨界COに曝されても、吸着特性が効果を失うことはない。加えて、少なくとも約10,000psiまでの圧力および少なくとも約60℃までの温度を含む標準精製条件により、本発明の材料の安定性または吸着特性が変更させられてはならない。材料の安定性は、少なくとも6ヶ月間、COの除染を所望の水準に維持することによって証明される。
【0019】
本発明の材料を精製吸収缶または層に装填する前に、個別に調製し、混合することができる。この材料は、含浸、共沈、昇華または関連するその他の技術により調製される、非常によく混合された混合物であってもよい。この材料は、表面積を増大し、構造を一層完全にし、流量を改善するために、または他の物理的・機械的要件を受け入れるために、これに限らないが、シリカ、アルミニウムまたはゼオライトを含む無機酸化物上に支持するか、あるいはそれらの無機酸化物と混合してもよい。また、支持体は、精製、特に水の除去を助長する。好ましい実施形態においては、吸着剤は、少なくとも50m/gの表面積を有し、COの3種の流体相のすべてに関連する高圧に耐えなければならず、流体の流れに載せられることまたは流体の流れの中に追加の汚染物を持ち込むことをしてはならない。この材料の表面積は、通常、高多孔質吸着剤の特徴である外面表面および内面表面の両方を考慮に入れるべきである。混ぜ合わされた(つまり、よく混合された)吸着剤の使用によって、異なる層または容器を介した多段階の除染を実施する必要なしに、一段階でさまざまな汚染物を除去することが可能になる。
【0020】
これに限らないが、吸収缶と多層および一層装置とを含むさまざまな精製装置が知られている。好ましい実施形態においては、本発明の方法は、二層装置を用いて実行される。精製は、除染が望ましい水準になるのに十分な時間、吸着材料をCOの流れに接触させることを含む。時間、圧力、流量および温度などの除染に必要な事項は、当業者によって容易に決定されうるものであり、通常、それぞれの吸着剤について一件ごとに考慮される。
【0021】
COの除染は、吸着材料の再生と交互に行われる。好ましくは、このサイクルは、CO精製の単位コストを最小にするように、何回も繰り返される。吸着材料を再生する頻度と持続時間は、吸着剤の表面積の大きさ、気体源の汚染水準および当業者にはよく知られている、その他のいくつかの要因に応じて決まる。再生には、硫黄およびその他の汚染物の吸着材料を調製するための酸化および酸素吸着材料を調製するための還元が含まれる。的確な再生方法は、使用される吸着剤およびCOから除去された汚染物によって決まる。そうした考慮すべき事項を、以下で考察する。
【0022】
混合酸化状態を得るための吸着剤の活性化および再生は、本発明の重要な側面である。吸着剤を取り替えるのではなく再生することにより、コストが減少し、本発明の方法が利用し易くなる。金属および金属状態の組み合わせは、さまざまな除染特性を有するように選択されるように、それらの組み合わせは、また、酸素と一緒に加熱または冷却して汚染物のすべてを吸着剤からパージし、次いで、吸着剤の一部だけが還元されるような特定の条件下で還元することができる、異なる活性/再生特性を有するように選択される。
【0023】
活性化/再生手順の一例は、最初に材料を、酸化剤の再生ガス(例えば、O、空気、O/CO混合物、O/不活性ガス混合物)と、すべての被酸化性汚染物の除去を行うのに十分な時間、十分な温度において接触させることである。この酸化段階は、約300〜550℃、好ましくは約400℃という比較的高温において、約12〜24時間実行される。酸化後、吸着剤は約100〜250℃まで冷却され、NまたはArなどの不活性ガスまたはH/CO中に約1〜5%Hを含有する還元性ガスに十分な時間、通常、約12〜24時間曝され、その結果、材料は部分的に還元されて混合酸化状態が得られる。好ましい実施形態においては、再生およびパージガスは、両者ともCOをベースとしている、つまり、酸化用のO/CO混合物および還元用のH/CO混合物である。
【0024】
本発明の吸着剤および方法により、CO中の汚染物の水準を効果的に減少することができる。本発明の方法の根底をなす化学的機構に関する特定のいかなる理論にも拘泥するつもりはないが、以下の反応は、この方法において重要であると考える。
【0025】
本発明の第1の実施形態においては、吸着剤は、異なる酸化状態にある2種以上の金属を含むことができる。Cu/ZnOおよびFe/MnOは、そのような組み合わせの例である。好ましい材料は、材料のより高い酸化状態の部分が一定の汚染物に対して反応性があり(例えば、COを発生するメタセシス反応においてCOSを除去することにより)、他方で材料のより低い酸化状態の部分は、他の一定の汚染物に対して反応性がある(例えば、酸素、水素、または一酸化炭素を吸収することにより)、材料である。そのような反応は、不活性ガスの存在下で生じることが知られているが、CO存在下におけるこの反応は、驚くべきことである。特に有利な材料は、酸素が容易に材料の酸素欠乏部と結合し(例えば、速度論的な理由から)、次いで、選択的に酸素と結合する材料の混和部へ拡散する(例えば、熱力学的理由から)材料である。吸着剤の互いに対する割合は、除去すべき汚染物および当業者にはよく知られている他のパラメータに応じて広範囲に変化しうる。
【0026】
Cu/ZnOは、金属銅と酸化亜鉛との組み合わせとして存在しており、銅は実質的に還元された状態で存在していることが知られている。材料は、上記の如く酸化アルミニウムなどの無機酸化物上に保持されうる。ZnOは、安定な、十分酸化されたZn”であり、金属酸化物はNMHCを吸着する。CO精製法の間中、反応は次のように進行しうる:
Cu+1/2O→CuO
ZnO+COS→ZnS+CO
MO+NMHC→(MO・NMHC)
従って、NMHCはCOの流れから除去される。Cu/ZnOは、O、SO、COS、トルエンおよび水を、COから除去することが証明されている。
【0027】
広範囲に変化する酸化状態にある鉄およびマンガンの酸化物と混合されている、実質的に金属鉄の性質を有する材料であるFe/MnOを使用することにより、類似の反応が可能である。酸素欠乏FeはOと反応し、Feおよびマンガンの酸化物はCOの流れから硫黄含有汚染物を除去する。
【0028】
2FeO+1/2O→Fe
MO+COS→MSOx−1+CO
Fe/MnOの組み合わせは、非メタン炭化水素(NMHC)の除去には理想的であり、化学吸着された酸素および硫黄がFeからバルクのMn酸化物中へ移動するのに特に適している。MnO/Feは、液体および気体のCOからCOSを除去することが証明されている。
【0029】
本発明の第2の実施形態においては、吸着剤は、対応する金属に対して、類似の比較的高い酸化状態で存在する2種以上の金属を含んでよいが、その中の2種の金属は化学的性質が相当異なっている。NiO/TiOおよびPdO/CeOは、そのような組み合わせの例である。前述の吸着特性は、この材料にも当てはまり、この材料の2つの部分は、異なる相補的な吸着特性(例えば、異なる配位環境)を有する。配位環境は、配位数および配位子型に選択性を生じる金属周囲の電子的環境である。酸化状態に差のある類似の金属によって、異なる吸着仕事が行われるのではなく、材料の異なる部分が、類似の比較的高い酸化状態にある。異なる吸着特性は、大きく異なる金属の存在から生まれる。一例は、後周期遷移金属酸化物と前周期遷移金属酸化物との混合物である。前の場合のように、特に有利な材料は、材料のある部分で吸着された汚染物が材料の他の部分へ拡散することにより、ある程度の自己再生を受けるものである。さらにまた、そのような反応は不活性ガスの存在下で生じることが知られているが、CO存在下におけるこの反応は、驚くべきことである。お互いに対する吸着剤の割合は、除去すべき汚染物および当業者によく知られているその他のパラメータに応じて、広範囲に変化されうる。
【0030】
TiOは酸素空孔を有すことができ、即ち、露出した金属性活性サイトに酸素を吸着することができる。COの精製方法の間に、反応は以下のように進行することができる:
TiO+1/2O→TiOx+1
Ti+O→[TiO・O
ここで、は、Tiが金属錯体中に存在することを示す。この形は、部分的に還元されたチタニア表面上で酸化還元反応を受けるのではなく、配位子として作用する、橋かけ二酸素を含んでいる可能性がある。
【0031】
また、NiOも、完全にまたは部分的にNiに還元されうるものであり、この場合は、材料のNi含有部分を含む酸化還元反応が生じる可能性がある。加えて、NiOは、以下の反応に示すように、硫黄の捕捉に関与することができる:
NiO+COS→NiS+CO
ニッケル硫化物/酸化物は、以下に示される反応などの不均化反応を、さらに受けることが知られている:
xNiO+NiS→Ni(SO)+xNi
この反応により、さらに還元されたニッケル活性サイトが生成されることになるかも知れない。
【0032】
NiO+NMHC→(NiO・NMHC)
CeOの酸素欠乏酸化物のさまざまな酸化状態はよく知られており、それらの反応性は、上述したようにTiOおよびTiOに類似していると考えられる。セリアに関するPdおよびPdOの挙動はよく知られており、周期表の同じ属にあるNiと同様に、さまざまな汚染物に対して反応性を示す。この例における材料の組み合わせは、異なる吸着および再生特性を生じる異なる反応性をもたらすことにより、前の例の組み合わせと同様に作用する。Ni/NiOは、水、O、ニッケル、アルミニウム、鉄、クロム、亜鉛およびマグネシウムを含む金属;硫黄含有化合物、および大小取り混ぜたいくつかのNMHCを含む広範囲にわたるさまざまな汚染物を、COから除去することが立証されている。
【0033】
本発明の第3の実施形態においては、吸着剤は、金属の酸化状態が金属の至る所で変化する単一の金属酸化物を含有することができる。Vはいくつかの酸化状態で存在しており、そのような金属の例である。前述の吸着特性は、やはり、この材料に関連があり、この材料の2つの部分は、異なる、相補性の吸着特性(つまり、異なる酸化状態)を有する。材料中に異なる酸化状態で存在する同一金属は、異なる吸着の仕事を遂行する。例えば、材料の低い酸化状態の部分は、酸素を吸着する可能性があり、高い酸化状態の部分は、NMHCまたは含硫汚染物を選択的に吸着する可能性がある。
【0034】
バナジウムが漸増するくつかの酸化状態で存在する、バナジア系材料が知られている。例えば:
VO+1/2O→VO→V→V
また、酸化バナジウムに類似の硫化バナジウムも可能である。バナジアの電気陽性の表面は、チタニアに類似しているが、酸化特性は異なっており、次の反応を可能にする:
NMHCの吸着に関して、
VO+NMHC→(VO・NMHC)
バナジウムの酸化水準は、本発明の再生工程の間に制御することができる。
【0035】
鉄は、ゼロから+4までのいくつかの酸化状態を有することが知られており、バナジウムと類似したいくつかの酸化状態で存在することができる。Feは、トルエン、HS、COS、ベンゼン、アセトアルデヒドおよび水を含むいくつかの汚染物を除去することが証明されている。
【0036】
本明細書において示されたすべての引用は、全体が参照により組み込まれる。すべての百分率は、他に規定されない限り、重量規準である。汚染物の量部は、容積量部である。
【実施例】
【0037】
シリカ支持体上の約60重量%の数日間空気に曝して予備酸化したNi/NiO混合物を含有する吸着媒体により、試験精製装置を充填した。0ポンド/平方インチのゲージ圧(psig)で1標準リットル/分(slm)の、5%H/95%Arのパージガスを使用して、周囲温度で29時間の間、精製装置を活性化した。その後、Aeronex SS−500−KF−A−4R精製装置により精製した気体のCOによって、精製装置をパージした。温度を監視して、各媒体がCOとの反応を終了する時期を示した。
【0038】
図1は、実験装置の構成を示す。Oを15ppm含有する挑戦ガスが得られるように、質量流量制御器(MFC)を使用して、944ppmのO標準および精製された窒素(N)の流量を維持した。背圧レギュレータを使用して排気を行い、試験用マニホールドをパージする間の圧力を維持した。ナノトレース酸素分析器(Nanotrace Oxygen Analyzer)(Delta−F)を使用してO濃度を測定した。酸素分析器の下限検出限界は、0.2ppb±0.5ppbである。第2の精製Nラインを使用して、測定器をパージした。ロータメータを使用して、酸素分析器へ流れる気体の圧力を維持した。精製装置には、Oを1ppm含む負荷ガスが、周囲温度で30psigの圧力下で、3slm流された。精製装置を出る気体の酸素水準を分析し、図2に示したように、媒体の酸素除去能を求めた。除去能は、1ppbを突破する前は、媒体1リットル当たりの酸素量が8.10〜8.76リットル(L/L)の間にあり、10ppbを突破する前は、11L/Lを超えることが示された。
【0039】
本発明の例示的な実施形態を、単に例として上述したが、添付した特許請求の範囲により定義される本発明の範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に変更を加えることができることを、当業者なら理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素(CO)の流れを、ある分量の少なくとも1種の混合金属酸化物に、ある一定時間接触させて、前記流れの汚染物含有量を減少させることを含む、COの流れから汚染物を除去する方法。
【請求項2】
汚染物含有量を、10億分の100部(100ppb)以下に減少する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
汚染物含有量を、10ppb以下に減少する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
汚染物含有量を、1ppb以下に減少する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
混合金属酸化物が、異なる酸化状態を有する金属を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
混合金属酸化物が、異なる電気陰性度を有する金属を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
混合金属酸化物が、異なる配位環境を有する金属を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
混合金属酸化物が、銅(Cu)および酸化亜鉛(ZnO);鉄(Fe)および酸化マンガン(MnO);酸化ニッケル(NiO)および酸化チタン(TiO);酸化パラジウム(PdO)および酸化セリウム(CeO);ならびに酸化バナジウム(VO)を含む群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
吸着剤を第1温度に加熱して、そこに吸着された汚染物を放出すること、
加熱された吸着剤を酸化剤に曝して前記吸着剤を酸化すること、
前記吸着剤を第2温度に冷却すること、および
冷却された吸着剤を還元剤に曝して混合酸化物を生成すること
を含む、二酸化炭素(CO)精製用の混合金属酸化物吸着剤の活性化および再生のための方法。
【請求項10】
前記第1温度が、約300℃から約550℃の間にある請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1温度が、約400℃である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
酸化剤が酸素(O)を含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第2温度が、約100℃から約250℃の間にある請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記還元剤が、水素(H)および不活性ガスの混合物を含む請求項9に記載の方法。
【請求項15】
水素ガスが、前記混合物の約1容積%から約5容積%を占める請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記不活性ガスが、窒素(N)およびアルゴン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項17】
二層精製装置の第1層内での請求項1に記載の方法によるCOの精製、
同時に行う、前のステップにおけるCOの精製の間に、請求項9に記載の方法による、前記二層精製装置の第2層における吸着剤の再生、その後、
請求項9に記載の方法による第1層の吸着剤の再生と同時に行われる、請求項9に記載の方法による吸着剤の再生の完了後の、前記第2層内での請求項1に記載の方法によるCOの精製、および
連続精製のために前記ステップを繰り返すこと
を含む二酸化炭素(CO)の連続精製法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−102006(P2012−102006A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−234634(P2011−234634)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【分割の表示】特願2004−545470(P2004−545470)の分割
【原出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(505307471)インテグリス・インコーポレーテッド (124)
【Fターム(参考)】