説明

二重化電流出力装置

【課題】二重化切替時における外部機器への供給電流を調整できる二重化電流出力装置を提供する。
【解決手段】電流出力モジュール10および電流出力モジュール20は、ダイオード14およびダイオード24を突き合わせることで外部機器30に二重化接続されている。コントロール回路13およびスイッチ12のゲート間には調整回路15が、コントロール回路23およびスイッチ22のゲート間には調整回路25が、それぞれ接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電流出力モジュール間で制御権を切り替えることができる二重化電流出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセスオートメーション用制御機器(以下、外部機器という)に与える電流を出力する電流出力モジュールを2台用いることによりモジュールを二重化し、信頼性を向上させた装置が知られている。このような装置では、通常時には稼動側の電流出力モジュールから機器に電流を供給し、稼動側の動作に異常が発生した場合には、制御権を待機側の電流出力モジュールに切り替えて、待機側の電流出力モジュールから機器に電流を供給する。
【0003】
図5は、従来の装置の構成を示すブロック図である。
【0004】
図5に示すように、稼動側の電流出力モジュール110は、バルブ等の外部機器30への電流を出力する出力回路11と、外部機器30への電流の供給/非供給を切り替えるFETで構成されたスイッチ12と、出力回路11およびスイッチ12を制御するコントロール回路13と、出力回路11と外部機器30との間に挿入されるダイオード14とを備える。
【0005】
同様に、待機側の電流出力モジュール120は、外部機器30への電流を出力する出力回路21と、外部機器30への電流の供給/非供給を切り替えるFETで構成されたスイッチ22と、出力回路21およびスイッチ22を制御するコントロール回路23と、出力回路21と外部機器30との間に挿入されるダイオード24とを備える。
【0006】
電流出力モジュール110および電流出力モジュール120は、ダイオード14およびダイオード24を突き合わせることで外部機器30に二重化接続されている。
【0007】
通常時には、稼動側の電流出力モジュール110のスイッチ12がオフ、待機側の電流出力モジュール120のスイッチ22がオンになっている。制御権を待機側に切り替える場合には、スイッチ22をオフとすることで、出力回路21から出力された電流は外部機器30に供給される。また、スイッチ12をオンとすることで、出力回路11から出力された電流はスイッチ12に流れ、外部機器30に供給されることはない。
【0008】
【特許文献1】特開2002−62903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、二重化切替時のスイッチ12とスイッチ22の動作タイミングにタイムラグ(スイッチ12が遅くオンし、スイッチ22が早くオフする)があるため、両側のスイッチが同時にオフするタイミングがある。そのため外部機器30への供給電流が増加することがある。外部機器30への供給電流が増えることは、システムとしての誤動作を招く可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、二重化切替時における外部機器への供給電流を調整できる二重化電流出力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の二重化電流出力装置は、第1の電流出力モジュールおよび第2の電流出力モジュールと、前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュール間で制御権を切り替えるための信号を発生させる信号発生手段と、前記信号発生手段からの信号に基づいて前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュールからの出力電流をオン/オフするスイッチと、前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュールからの出力電流を合成して出力する電流合成手段と、を備える二重化電流出力装置において、前記スイッチに与える前記信号発生手段からの信号のタイミングを調整することで、前記第1の電流出力モジュールまたは前記第2の電流出力モジュールからの出力電流のオン/オフのタイミングを調整する調整手段を備えることを特徴とする。
この二重化電流出力装置によれば、スイッチに与える信号発生手段からの信号のタイミングを調整することで、第1の電流出力モジュールまたは第2の電流出力モジュールからの出力電流のオン/オフのタイミングを調整するので、二重化切替時における外部機器への供給電流を適切に調整できる。
【0012】
本発明の二重化電流出力装置は、第1の電流出力モジュールおよび第2の電流出力モジュールと、前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュール間で制御権を切り替えるための信号を発生させる信号発生手段と、前記信号発生手段からの信号に基づいて前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュールからの出力電流をオン/オフするスイッチと、前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュールからの出力電流を合成して出力する電流合成手段と、を備える二重化電流出力装置において、前記スイッチに与える前記信号発生手段からの信号の変化を調整することで、前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュールからの出力電流の和を調整する調整手段を備えることを特徴とする。
この二重化電流出力装置によれば、スイッチに与える信号発生手段からの信号の変化を調整することで、第1の電流出力モジュールおよび第2の電流出力モジュールからの出力電流の和を調整するので、二重化切替時における外部機器への供給電流を適切に調整できる。
【0013】
前記電流合成手段は、2つのダイオードを突き合わせて構成されていてもよい。
【0014】
前記調整手段は、回路の時定数を用いて前記信号を調整してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の二重化電流出力装置によれば、スイッチに与える信号発生手段からの信号のタイミングを調整することで、第1の電流出力モジュールまたは第2の電流出力モジュールからの出力電流のオン/オフのタイミングを調整するので、二重化切替時における外部機器への供給電流を適切に調整できる。
【0016】
本発明の二重化電流出力装置によれば、スイッチに与える信号発生手段からの信号の変化を調整することで、第1の電流出力モジュールおよび第2の電流出力モジュールからの出力電流の和を調整するので、二重化切替時における外部機器への供給電流を適切に調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1〜図4を参照して、本発明による二重化電流出力装置の一実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態の二重化電流出力装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の二重化電流出力装置は、バルブ等のフィールド機器である外部機器30に電流を供給する電流出力モジュール10および電流出力モジュール20を備える。
【0020】
電流出力モジュール10は稼動側モジュールとして機能し、通常時には電流出力モジュール10に制御権が与えられ、電流出力モジュール10から外部機器30に電流が供給される。一方、電流出力モジュール20は待機側モジュールとして機能し、電流出力モジュール10での制御に異常が生じた場合に、電流出力モジュール20に制御権が切り替えられ、電流出力モジュール20から外部機器30に電流が供給される。
【0021】
図1に示すように、電流出力モジュール10は、外部機器30への電流を出力する出力回路11と、外部機器30への電流の供給/非供給を切り替えるFETで構成されたスイッチ12と、出力回路11およびスイッチ12を制御するコントロール回路13と、出力回路11と外部機器30との間に挿入されるダイオード14とを備える。
【0022】
スイッチ12がオフの場合には、出力回路11からの電流が外部機器30に供給される。スイッチ12がオンすると、出力回路11からの電流はスイッチ12に流れ、外部機器30に電流は供給されない。
【0023】
同様に、電流出力モジュール20は、外部機器30への電流を出力する出力回路21と、外部機器30への電流の供給/非供給を切り替えるFETで構成されたスイッチ22と、出力回路21およびスイッチ22を制御するコントロール回路23と、出力回路21と外部機器30との間に挿入されるダイオード24とを備える。
【0024】
スイッチ22がオフの場合には、出力回路21からの電流が外部機器30に供給される。スイッチ22がオンすると、出力回路21からの電流はスイッチ22に流れ、外部機器30に電流は供給されない。
【0025】
電流出力モジュール10および電流出力モジュール20は、ダイオード14およびダイオード24を突き合わせることで外部機器30に二重化接続されている。
【0026】
図1に示すように、コントロール回路13およびスイッチ12のゲート間には調整回路15が、コントロール回路23およびスイッチ22のゲート間には調整回路25が、それぞれ接続されている。
【0027】
図2は、調整回路15および調整回路25の構成を示す回路図である。
【0028】
図2に示すように、調整回路15および調整回路25は、所定の時定数を構成する抵抗51およびコンデンサ52と、抵抗51に並列接続されたダイオード53とを備える。
【0029】
図3は、本実施形態の二重化電流出力装置の動作を示すタイミングチャートである。図3の例では、稼動側の電流出力モジュール10から待機側の電流出力モジュール20に制御権が切り替えられた場合の動作を示している。
【0030】
制御権が電流出力モジュール10にあるとき、電流出力モジュール10のスイッチ12はオフ、電流出力モジュール20のスイッチ22はオンになっている。この状態から制御権を待機側に移すとき、スイッチ12をオンに、スイッチ22をオフにする。この際、スイッチ12およびスイッチ22のオン、オフを制御するコントロール信号を生成する回路構成に依存したコントロール信号のタイムラグにより、スイッチ12あるいはスイッチ22をオン状態からオフさせる動作時間(T1)よりも、オフ状態からオンさせる動作時間(T2)が長い場合を示している(図3)。
【0031】
図2に示すように、本実施形態の二重化電流出力装置では、スイッチ22をオン状態からオフさせる場合、抵抗51の抵抗値およびコンデンサ52の容量で決まる時定数に従ってゲート電圧が徐々に低下する。このため、図3の点線55により示すように、電流出力モジュール20からの供給電流は徐々に増加し、所定の電流値に到達するタイミングを遅らせることができる。一方、スイッチ12をオフ状態からオンさせる場合には、実質的にダイオード53の順方向のインピーダンスは無視できるため、調整回路15がない場合と同様、ゲート電圧は速やかに上昇する。このため、図3に示すように、電流出力モジュール10からの供給電流はコントロール信号に従って比較的迅速に遮断される。
【0032】
外部機器30への供給電流は、電流出力モジュール10および電流出力モジュール20からの供給電流の和となるため、図3の点線56により示すように、外部機器30への供給電流は、電流出力モジュール20からの供給電流に対応して調整回路25で決まる時定数との関係に従い増加する。このため調整回路15,25がない場合の電流値(図3の実線)に比べてグリッチを減少させることができる。また、電流増加時の変化を調整できるので、外部機器30への悪影響を抑制できる。
【0033】
なお、制御権を電流出力モジュール20から電流出力モジュール10に切り替える場合には、調整回路15によって電流出力モジュール10からの電流供給のタイミングが遅らされるとともに、その供給電流の立ち上がりが調整回路15で決まる時定数との関係に従い増加する。このため、図3に示す場合と同様、グリッチを減少させることができるととともに電流増加時の変化を調整することで、外部機器30への悪影響を抑制できる。
【0034】
以上のように、本実施形態の二重化電流出力装置によれば、調整回路15および調整回路25によって電流出力装置10および電流出力装置20からの電流供給のタイミングあるいはその立ち上がりを調整することにより、二重化切替時における外部機器30への供給電流を適切に制御することができる。
【0035】
なお、調整回路15,25を変更することで、スイッチ12,22のスイッチングのタイミングを自由にコントロールすることができる。例えば、抵抗51の抵抗値あるいはコンデンサ52の容量を変えることで時定数を変更でき、スイッチングのタイミングや供給電流の変化速度を変えることができる。
【0036】
また、ダイオード53の向きを反転させることで、スイッチ12,22がオフからオンになるタイミングのみを遅らせることができる。この場合、スイッチ12,22をオフ状態からオンさせる場合、抵抗51の抵抗値およびコンデンサ52の容量で決まる時定数に従ってゲート電圧が徐々に上昇する。このため、電流出力モジュール10または電流モジュール20からの供給電流は徐々に減少し、供給電流が所定値まで減少するタイミングを遅らせることができる。一方、スイッチ12,22をオン状態からオフさせる場合には、実質的にダイオード53の順方向のインピーダンスは無視できるため、ゲート電圧は速やかに下降する。このため、電流出力モジュール10または電流出力モジュール20からの供給電流はコントロール信号に従って比較的迅速に上昇する。
【0037】
また、例えば、ダイオード53と直列に抵抗を挿入すれば、スイッチオンからオフ、およびオフからオンのタイミングや供給電流の変化を自由に設定できる。
【0038】
さらに、調整回路の構成は、抵抗やコンデンサによる時定数を用いたもの、あるいはダイオードによりスイッチングの方向により調整パラメータを変化させるものに限定されることはない。例えば、コントロール回路13,23内で動作スピードを調整するようにしてもよい。
【0039】
供給電流の立ち上がりや立下りを独立して制御することにより、制御権の切り換え時における外部機器30への供給電流の変動をさらに減少させることも可能である。
【0040】
図4は、供給電流の変化のタイミングを調整することにより、外部機器への供給電流を一定にする概念を示す図である。図4の例では、制御権の切り換え時における電流出力モジュールからの出力電流の和を一定とするように、スイッチングのタイミングを調整している。ここでは、切り換えにより制御権が与えられるモジュールからの出力電流の増加と、制御権を失うモジュールからの出力電流の減少とが、同様に変化するため、出力電流の合成値の変化が生じない。このため、二重切り換え時における外部機器への電流供給が変化せず、理想的な動作を確保できる。
【0041】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、複数の電流出力モジュール間で制御権を切り替えることができる二重化電流出力装置に対し、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】一実施形態の二重化電流出力装置の構成を示すブロック図。
【図2】調整回路の構成を示す回路図。
【図3】二重化電流出力装置の動作を示すタイミングチャート。
【図4】供給電流の変化のタイミングを調整することにより外部機器への供給電流を一定にする概念を示す図。
【図5】従来の二重化電流出力装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0043】
10 電流出力モジュール
20 電流出力モジュール
12,22 スイッチ
14,24 ダイオード(電流合成手段)
15,25 調整回路(調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電流出力モジュールおよび第2の電流出力モジュールと、
前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュール間で制御権を切り替えるための信号を発生させる信号発生手段と、
前記信号発生手段からの信号に基づいて前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュールからの出力電流をオン/オフするスイッチと、
前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュールからの出力電流を合成して出力する電流合成手段と、
を備える二重化電流出力装置において、
前記スイッチに与える前記信号発生手段からの信号のタイミングを調整することで、前記第1の電流出力モジュールまたは前記第2の電流出力モジュールからの出力電流のオン/オフのタイミングを調整する調整手段を備えることを特徴とする二重化電流出力装置。
【請求項2】
第1の電流出力モジュールおよび第2の電流出力モジュールと、
前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュール間で制御権を切り替えるための信号を発生させる信号発生手段と、
前記信号発生手段からの信号に基づいて前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュールからの出力電流をオン/オフするスイッチと、
前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュールからの出力電流を合成して出力する電流合成手段と、
を備える二重化電流出力装置において、
前記スイッチに与える前記信号発生手段からの信号の変化を調整することで、前記第1の電流出力モジュールおよび前記第2の電流出力モジュールからの出力電流の和を調整する調整手段を備えることを特徴とする二重化電流出力装置。
【請求項3】
前記電流合成手段は、2つのダイオードを突き合わせて構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の二重化電流出力装置。
【請求項4】
前記調整手段は、回路の時定数を用いて前記信号を調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の二重化電流出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−108103(P2008−108103A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290978(P2006−290978)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】