説明

二重層皮膜を有するペレットを含有するベンラファキシン組成物

本発明は、a)塩酸ベンラファキシンを含むペレットコア、b)親油性層又は難水溶性層を含む第一皮膜及びc)水不溶性ポリマー又はポリマー混合物を含む第二皮膜を含む被覆されたペレットを提供する。他の側面に於いて、本発明は、この被覆されたペレットを含む組成物を提供する。別の側面に於いて、本発明は、少なくとも第二皮膜のための有機溶媒の使用を回避する、被覆されたペレットの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベンラファキシン(venlafaxine)の薬物組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンラファキシンは、1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノールについての非私有名称であり、鬱病、不安、パニック異常症及び疼痛を含む多数の異常症を治療する際に有用である。ベンラファキシンは、鬱病を治療する際に塩酸ベンラファキシンとして投薬される。ザ・メルク・インデックス(The Merck Index)、第12版、登録第10079号参照。
【0003】
欧州特許出願公開第797 991A号明細書には、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースで被覆された、塩酸ベンラファキシン、微結晶性セルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む回転楕円体を含有する、硬質ゼラチンカプセルを含む、塩酸ベンラファキシンのカプセルに入れた延長放出配合物が開示されている。被覆工程で使用される溶媒には、塩化メチレン及び無水メタノールが含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、従来公知のベンラファキシンの配合物の欠点を克服することを探求してきた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、一つの側面に於いて、本発明は、コアペレットが、有機溶媒の不存在下又は実質的不存在下における少なくとも一回の被覆工程を受ける、遅延及び/又は延長放出配合物において使用するための、ベンラファキシンを含む被覆されたコアペレットを提供する。
【0006】
他の側面に於いて、本発明は、
a)塩酸ベンラファキシンを含むペレットコア、
b)親油性層又は難水溶性層を含む第一皮膜及び
c)水溶性又は水不溶性ポリマーを含む第二皮膜
を含む被覆されたペレットを提供する。
【0007】
このペレットコアは、更に、担体、例えば微結晶性セルロースを含んでよい。このペレットコアは、更に、バインダー、例えばセルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含んでよい。本出願者らは、例えば、グレードK4MのHPMCが、本発明に於いて使用するために適切な粘度を有することを見出した。
【0008】
このペレットコアは、形状に於いて回転楕円形であってよく、典型的に、被覆されたとき、約0.5mmから2mm、例えば、0.7から1.75mm、例えば0.8mmから1.5mmの直径を示す。
【0009】
第一皮膜及び第二皮膜は、それぞれ、コアの周り(第一皮膜)の又は第一皮膜の周り(第二皮膜)の、少なくとも60%、例えば70%以上、例えば80から95%の表面被覆を与えるように、完全であるか又は実質的に完全であり得る。完全な皮膜が好ましい。
【0010】
第一皮膜は、第一被覆されたペレットコアの0.5から5重量%、例えば1から4重量%からなっていてよい。
【0011】
第二皮膜は、二重被覆されたコアの全重量基準で8から30重量%、例えば10から25重量%からなっていてよい。
【0012】
第一皮膜は、貯蔵中及び使用中の両方で、ペレットコアを水分から保護することに役立つ。
【0013】
親油性層は、脂肪、脂肪アルコール又はワックスを含み得る。親油性層は、好ましくは、セトステアリルアルコール、ひまし油又はフタル酸ジブチルを含む。
【0014】
難水溶性層は、炭水化物又は糖の濃度が、少なくとも約0.1g/mL、例えば0.15から0.25g/mL又はそれ以上、例えば0.28g/mLから0.4g/mL又はなおそれ以上、例えば0.41から0.6g/mL、例えば0.43から0.5g/mLである、水性懸濁液の形の、炭水化物又は糖、例えばラクトースを含み得る。
【0015】
スプレー被覆によって形成することができる難水溶性層は、約30重量%から40重量%以下の量のラクトースを含み得る。
【0016】
第一皮膜は、エチルセルロースを含まないか又は実質的に含まなくてよい。
【0017】
水溶性又は水不溶性ポリマーは、アクリル系水性分散液、エチルセルロース水性分散液及びポリ酢酸ビニル水性分散液から選択することができる。従って、第二皮膜は水性であり、延長放出効果を与えることに役立つ。
【0018】
水不溶性ポリマーが好ましく、これはベンラファキシンの放出を制御することに役立つことができる。水不溶性ポリマーは、pHに無関係な溶解度を示すことができ、これには水不溶性ポリマー混合物が含まれていてよい。
【0019】
本明細書で使用されるとき、用語「水不溶性」は、100mg/リットル未満、例えば20mg/リットル以下、例えば10mg/リットル以下、例えば1mg/リットル以下の、室温での水中のポリマー溶解度を意味する。
【0020】
好ましい側面に於いて、本発明のペレットコア及び/又は皮膜は、ポリビニルピロリドンを含まないか又は実質的に含まない。
【0021】
他の側面に於いて、本発明は、本明細書に記載したような被覆されたペレットを含む組成物を提供する。この組成物は、錠剤形、硬質ゼラチンカプセル形又はサッシェ形であってよい。
【0022】
他の側面に於いて、本発明は、
a)30から60重量%の量の塩酸ベンラファキシン、40から65重量%の量の微結晶性セルロース及び0.3から0.8重量%の量のHPMC K4M(それぞれの重量は、二重被覆されたコアに対するものである)を含有するコア、
b)第一被覆されたペレットコアの1.0から4.0重量%、例えば1.7から3.5重量%の量のセトステアリルアルコールを含有する第一皮膜並びに
c)二重被覆されたコアの全重量基準で9から25重量%、例えば9から13重量%の量のアクリル系ポリマー及び二重被覆されたペレットコアの全重量基準で2から15重量%、例えば3から8重量%の量のタルクを含有する第二皮膜
からなる又は本質的になる、被覆されたペレットを提供する。
【0023】
適切なアクリル系ポリマー又はpHに無関係な溶解度を有する水不溶性ポリマーは、例えば、独国レーム社(Roehm company)から、乾燥ポリマーとして、商標オイドラギット(EUDRAGIT)、ズレレアーゼ(SURELEASE)又はアクアコート(AQUACOAT)(例えば、オイドラギットNE30D、オイドラギットRL30D、オイドラギットRS30D又はコルコート(KOLLCOAT)SR)として市販されている。
【0024】
第二皮膜は、更に、例えば、乾燥ポリマーの5から35重量%、例えば10から30重量%の量の、クエン酸トリエチル又はフタル酸ジブチルと含んでよい。
【0025】
別の側面に於いて、本発明は、本明細書に記載したような被覆されたペレットからなる又は本質的になる組成物を提供する。この組成物は、錠剤形、硬質ゼラチンカプセル形又はサッシェ形であってよい。
【0026】
別の側面に於いて、本発明は、本明細書に記載したようなペレットの製造方法であって、
Ai)塩酸ベンラファキシンと水又はバインダーの水溶液とを含むペレットコア混合物を形成する工程、
Aii)この混合物を押し出し、及び球状化し、続いて乾燥する工程、
Aiii)第一皮膜を適用する工程、
Aiv)第二皮膜を適用し、及び続いて篩い分けして、所望のサイズ範囲内の被覆されたペレットを得る工程
を含み、前記方法は、少なくとも第二層内に、如何なる有機溶媒も不存在下又は実質的不存在下で実施される方法を提供する。
【0027】
被覆工程Aiii)及びAiv)は、一般的な流動床プロセスを使用することができる。あるいは、第一被覆層を、スプレーメルトプロセスを使用して又は接線コーティングプロセスを使用することによって適用することができる。
【0028】
他の実施態様に於いて、第一被覆層を、有機溶媒媒体、例えば塩化メチレン又はメタノール中に溶解させ、ペレットコアの上にスプレーすることができる。
【0029】
別の側面に於いて、本発明は、本明細書に記載したようなペレットの製造方法であって、
Bi)塩酸ベンラファキシン、微結晶性セルロース及びHPMCと、水又はバインダーの水溶液とを含むペレットコア混合物を形成する工程、
Bii)この混合物を押し出し、及び球状化し、続いて乾燥させる工程、
Biii)更に処理するために、0.8mmから1.75mmのコアペレットを集める工程、
Biv)第一皮膜を適用する工程、並びに
Bv)第二皮膜を適用する工程
を含み、前記方法は、少なくとも第二層内に、如何なる有機溶媒も不存在下又は実質的不存在下で実施する方法を提供する。
【0030】
被覆工程Biv)及びBv)は、一般的な流動床プロセスを使用することができる。あるいは、第一被覆層を、スプレーメルトプロセスを使用して又は接線被覆プロセスを使用することによって適用することができる。
【0031】
上記の方法のそれぞれの好ましい実施態様は、方法を、第一被覆層及び第二被覆層の両方内に、如何なる有機溶媒も不存在下又は実質的不存在下で実施されるようなものである。
【0032】
塩酸ベンラファキシンは、スペイン国のメディケム社(Medichem company)から供給される。このベンラファキシンは、全ての多形相、例えばフォームI又はフォームIIとして知られている形で使用することができる。本発明の組成物は、1日当たり75mgから350mgのベンラファキシンの範囲内の用量で成人に投薬することができる。
【0033】
下記のものは、本発明の組成物の実施例のみの手段による説明である。
【0034】
(実施例1)
下記の組成に従ったペレットを製造し、及び硬質ゼラチンカプセルの中に充填する。
【0035】
I コアペレット カプセル当たりの量(mg)
ベンラファキシンHCl 169.70
微結晶性セルロース 199.0
HPMC K4M 1.85
II ワックス皮膜
セトステアリルアルコール 9.26
III ポリマー皮膜
オイドラギットNE30D 56.97
タルク 28.49
被覆されたペレットの全重量 476.90
【0036】
このコアペレットは、上記の成分を少量の、即ち、ベンラファキシンを溶解することなくペーストを形成するために十分な水と、Iの下で混合し、続いて押出球状化によって製造される。ワックス皮膜を、流動床プロセスを使用して、被覆層の融点で又はこの付近で適用する。続くポリマー(遅延放出)皮膜を、流動床プロセスによって適用する。得られた被覆されたペレットを篩い分けして、0.85mmから1.75mmの所望のペレットサイズ範囲を得る。
【0037】
(実施例2)
ペレットを、実施例1に於けるものと同様の方法によって、ワックス皮膜を0.15g/mLの濃度のラクトースの水性懸濁液に置き換えることによって、製造する。この懸濁液は、穴をあけたパン又は流動床プロセスを使用して、コアの上にスプレーする。
【0038】
第一被覆工程に含まれる少量の水のために、ベンラファキシンのごく僅かの溶解が起こり、ペレットコアと第二皮膜との間に保護層が形成される。
【0039】
(実施例3a)及び3b))
下記の組成に従ったペレットを製造し、硬質ゼラチンカプセルの中に充填する。
【0040】
I コアペレット カプセル当たりの量(mg)
ベンラファキシンHCl 169.70
微結晶性セルロース 193.27
HPMC K4M 1.85
II ワックス皮膜
セトステアリルアルコール 10.03
III ポリマー皮膜
オイドラギットNE30D 70.10
タルク 35.05
被覆されたペレットの全重量 480.00
【0041】
このコアペレットは、上記の成分を少量の、即ち、ベンラファキシンを溶解することなくペーストを形成するために十分な水と、Iの下で混合し、続いて押出球状化によって製造される。0.8mmから1.75mmのサイズを有するペレットを集める。ワックス皮膜を、実施例3a)に於いて流動床プロセスを使用して、及び実施例3b)に於いて接線コーターを使用して、被覆層の融点で又はこの付近で適用する。続くポリマー(遅延放出)皮膜を、流動床プロセスによって適用する。
【0042】
(実施例4a)及び4b))
ペレットを、実施例1に於けるものと同様の方法によって、ワックス皮膜を0.43g/mLの濃度のラクトースの水性懸濁液に置き換えて、製造する。この懸濁液は、4a)穴をあけたパン又は4b)流動床プロセスを使用して、コアの上にスプレーする。
【0043】
第一被覆工程に含まれる少量の水のために、ベンラファキシンのごく僅かの溶解が起こり、及びペレットコアと第二皮膜との間に保護第一層が形成される。
【0044】
(実施例5)
下記の成分量で実施例1に於けるものと同様の方法で、カプセル組成物を製造する。
【0045】
I コアペレット %での量
ベンラファキシンHCl コアペレットの37.3重量%
微結晶性セルロース コアペレットの62.1重量%
HPMC K4M コアペレットの0.5重量%
II ワックス皮膜
セトステアリルアルコール コアペレットの2.5重量%
III ポリマー皮膜
オイドラギットNE30D(乾燥) 第一皮膜を有するペレットの15重量%
タルク 乾燥ポリマーの50重量%
下記の溶解プロフィールが、USP装置1を使用して、精製水中100rpmで37℃にて観察される。
【0046】
【表1】

【発明の効果】
【0047】
本発明のペレット及び組成物の主な利点には、少なくとも第二皮膜の適用のために有機溶媒媒体を使用しないが、市販の製品と同様に有効なベンラファキシンの放出プロフィールが含まれる。更なる利点は、被覆されたペレット中に如何なる有機溶媒残留物も存在しないことである。
【0048】
この方法は、従来公知の方法よりも、一層コスト効率的であり、及び危険性が低い。
【0049】
従って、本発明の被覆されたペレットは、ベンラファキシンについての従来公知の方法よりも、一層経済的で及び環境的に魅力のある方法を使用して製造される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)塩酸ベンラファキシンを含むペレットコア、
b)親油性層又は難水溶性層を含む第一皮膜及び
c)水不溶性ポリマー又はポリマー混合物を含む第二皮膜
を含む被覆されたペレット。
【請求項2】
コアが、追加的に、担体、例えば微結晶性セルロースを含む、請求項1に記載のペレット。
【請求項3】
コアが、更にバインダーを含む、請求項1又は請求項2に記載のペレット。
【請求項4】
バインダーが、セルロース誘導体を含む、請求項3に記載のペレット。
【請求項5】
バインダーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、請求項3又は請求項4に記載のペレット。
【請求項6】
親油性層が、脂肪、脂肪アルコール又はワックスを含む、請求項1又は請求項2に記載のペレット。
【請求項7】
親油性層が、セトステアリルアルコール、ひまし油又はフタル酸ジブチルを含む、請求項1から6の何れか1項に記載のペレット。
【請求項8】
難水溶性層が、糖、例えばラクトースを、糖の濃度が少なくとも0.3g/mLである水性懸濁液の形で含む、請求項1又は請求項2に記載のペレット。
【請求項9】
水不溶性ポリマーが、ポリメタクリレート分散液、エチルセルロース分散液及びポリ酢酸ビニル分散液から選択される、請求項1から8の何れか1項に記載のペレット。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項に記載のペレットを含む組成物。
【請求項11】
錠剤形、硬質ゼラチンカプセル形又はサッシェ形である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
被覆されたペレットコアの製造方法であって、
i)塩酸ベンラファキシンと水又はバインダーの水溶液とを含むペレットコア混合物を形成する工程、
ii)この混合物を押し出し、及び球状化し、乾燥し、及び篩い分けする工程、
iii)第一皮膜を適用する工程、並びに
iv)第二皮膜を適用する工程
を含み、前記方法は、少なくとも第二皮膜内に、如何なる有機溶媒媒体も不存在下又は実質的不存在下で実施される、前記方法。
【請求項13】
ペレットコア混合物が、更に、微結晶性セルロース及びHPMCを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、第一皮膜及び第二皮膜の両方内に、如何なる有機溶媒媒体も不存在下又は実質的不存在下で実施される、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項12から14の何れか1項に記載の方法によって製造された、被覆されたペレット。
【請求項16】
a)30から60重量%の量の塩酸ベンラファキシン、40から65重量%の量の微結晶性セルロース及び0.3から0.8重量%の量のHPMC K4M(それぞれの重量は、二重被覆されたコアに対するものである)を含有するコア、
b)第一被覆されたペレットコアの1.7から3.5重量%の量のセトステアリルアルコールを含有する第一皮膜並びに
c)二重被覆されたコアの全重量基準で9から13重量%の量のアクリル系ポリマー及び二重被覆されたペレットコアの全重量基準で3から8重量%の量のタルクを含有する第二皮膜
からなる又は本質的になる、被覆されたペレット。
【請求項17】
請求項16に記載のペレットを含む組成物。

【公表番号】特表2006−521328(P2006−521328A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504881(P2006−504881)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003255
【国際公開番号】WO2004/091580
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(305008042)サンド・アクチエンゲゼルシヤフト (54)
【Fターム(参考)】