説明

二重扉における障害物検出装置

【課題】簡単な構成で広い領域の障害物を検出する。
【解決手段】二重扉の中間位置の開口部両側に縦方向に配置した1対の反射鏡4a、4bと、一方の反射鏡4aの下端に設けた投光器1と、他方の反射鏡4bの上端に設けた受光器2とから構成し、入射ビームを順次高さをずらして反射するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ等に見られる二重扉における障害物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物のエレベータや地下鉄駅などに見られるホームドア等の二重扉には、二重扉の中間で乗客が挟まれたことを検知してエレベータのかごや列車の移動を阻止する安全装置が設けられている。
エレベータの場合、かご側の引き戸の先端部分にセーフティシューと呼ばれる可動部材が取り付けられており、挟まれた乗客あるいは物体がこれを押すことにより存在が検知される構造の安全装置は早くから知られているが、感度が悪く、スイッチが作動するまでに時間がかかるという問題点があった。特許文献1には、セーフティシュー方式の問題点を解消するため、かご側の引き戸の先端部分に取り付けられている「戸先ゴム」の内部に可撓性の圧電センサを設けて時間遅れなしに物体を検知することが記載されている。
【0003】
また特許文献2には、光学式の距離センサを設けて所定の領域内の物体の有無を検出することが記載されている。
一方、近年地下鉄をはじめとする高速鉄道の駅プラットホームには、転落防止壁(固定壁)および乗降用のホームドアを設けることが推進されている。これについても、二重扉の中間で挟まれる事故に対する安全対策が必要であり、特許文献3には、固定壁の列車側に2組の光電センサを配置することが記載されている。第1の光電センサはホームドアに沿って設置される透過形のものであり、第2の光電センサはこれよりも列車寄りのプラットホーム上を検知領域とする反射形のものである。
【0004】
また特許文献4には、ホーム側のスライドドアの先端に列車に向けて光を照射する光学式の測距センサを取り付け、スライドドアが閉じる際の移動に伴ってホームドアと列車との間を走査して乗客を検知することが記載されている。
【特許文献1】特開2004−189431号公報
【特許文献2】特開2007−31103号公報
【特許文献3】特開2002−37056号公報
【特許文献4】特開2004−182077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の検出装置では、身長のさまざまに異なる大人、幼児、さらには荷物などをもれなく検知するためには縦方向に複数の圧電センサを設けなければならず、またこれら圧電センサは戸先ゴムの裏側で作動するため感度が悪いという問題点がある。
特許文献2に記載の検出装置では、投光器と受光器が各1基であるため、本来検出範囲は検出ビームの照射方向だけであるが、エレベータドアの開閉時間に対して十分に短い周期で検出ビームを水平方向に掃引することによって広い範囲での検出を可能としている。しかしこの検出装置は、単なる投光器、受光器以外に偏光手段、撮像手段、距離検出手段、掃引手段などを必要とするきわめて複雑なもので、経済的な理由のみを考えても実現性に乏しい。
【0006】
一方、特許文献3に記載の安全装置は、プラットホームを含む線路脇の構造物に適用される建築限界をクリアするため、列車に近い部分を検知領域とする第2の光電センサを反射式としたものであるが、このために降雨時などのプラットホーム表面状態によってノイズが発生するという問題点がある。
特許文献4に記載の安全システムは、測距センサの高さが一定であるため、高さの異なる障害物の検出を行うには縦方向に複数のセンサを設けなければならないなどの問題点がある。
【0007】
本発明は、これらの問題点を解消し、簡単な構成で広い領域の障害物を検出できる二重扉における障害物検出装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ところで、本出願人はさきに多重反射形光電式エリアセンサを発明し、特開2006−170793号公報において公開されている。これは図5に示すように、1対のガイド3a、3bにそれぞれ1基以上の反射鏡4a、4bを取り付け、投光器1から照射された光が反射鏡4a、4b間で複数回の反射を行い、高さをずらしながら受光器2に到達するように構成する。図6は反射鏡4を取り付けたガイド3の部分拡大図で、各反射鏡4は同じ傾斜角度で互いに平行である。これにより、従来複数組の投光器、受光器を必要とした広いエリアの障害物の検知を1組の投光器と受光器によって行うことができる。
【0009】
本発明はこのエリアセンサを二重扉における障害物検出に応用したものである。すなわち、二重扉の中間位置の開口部両側に配置した1対の反射鏡と、一方の反射鏡の一方の端部に設けた投光器と、他方の反射鏡の前記端部とは反対側の端部に設けた受光器とから構成され、前記反射鏡が、入射したビームを反対側の反射鏡に位置をずらして反射するように設定されており、前記投光器と前記受光器との間で複数回の反射が行われることを特徴とする二重扉における障害物検出装置であり、望ましくは前記投光器と受光器が使用しているビームの光源がレーザ光である前記の二重扉における障害物検出装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1組の投光器と受光器で幅広いエリアの障害物検出が可能であり、設置費用が安く、メンテナンスも簡単なので二重扉における安全性が向上するというすぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明においては投光器から照射されたビームが二重扉両側の反射鏡の間で高さをずらしながら複数回の反射を繰り返すので、複数組の投光器と受光器を使用した場合に相当し、広いエリアの障害物を検出することができる。
【実施例1】
【0012】
本発明の第1の実施例を、エレベータの場合で図1ないし図3により説明する。図1はエレベータのかご5の正面図、図2は建物6を含む平面図で、51a、51bはかごの扉、52はかごを吊っているロープ、61a、61bは建物の扉である。かごの扉51a、51bと、建物の扉61a、61bで二重扉を構成している。特に説明しないが両者は連動して開閉する。通常、何らかの安全装置により、二重扉の両方が完全に閉じた状態を検知してかごが移動するようになっている。
【0013】
1は投光器、2は受光器、4a、4bはかご5の両脇に縦方向に取り付けられた細長い反射鏡で、図2に示すようにこれらは同じ垂直平面内になるよう配置される。
図3は図1におけるビームの経路を示す正面図で、縦方向に細長い1対の反射鏡4a、4bと、一方の反射鏡4aの下端に設けられた投光器1と、他方の反射鏡4bの上端に設けた受光器2とから構成され、反射鏡4a、4bは平行にセットされ、投光機は仰角αで上向きにビームを照射する。反対側の反射鏡4bでは法線に対して下方から角度αでビームが入射するのでビームは再び仰角αで反射され、順次位置をずらしながら複数回の反射を繰り返して受光器2に到達する。投光器1、受光器2の位置を逆にしてもよい。
【0014】
なお、光源としてレーザ光を使用すると、光束の広がりがほとんどなしに受光器まで到達するので感度が良好に保たれて都合がよい。ただし人体に危険のないマイクロレーザとすべきである。
この実施例で4a、4bを細長い1対の反射鏡としたが、細長い鏡を精度よく仕上げるのは困難な場合には、必要な個所だけの小さい反射鏡を複数枚配置するようにしてもよい。
【0015】
投光機以下の検出装置は、建物側に設置しても機能的には変わらないが、建物の階数だけ検出装置が必要である。図示したようにかご側に設置すれば、1基のエレベータに対して1組でよい。
【実施例2】
【0016】
第2の実施例の反射鏡部分を図4により説明する。第1の実施例では反射鏡は平面で、ビームの入射角によって反射位置をずらしているが、第2の実施例では反射鏡は水平面に対して45度傾斜した1対のものをユニットとして使用する。入射角は水平方向である。入射ビームに対して鏡の間隔であるhだけ高い位置から反射される。ビームの経路に筒体41を設けると鏡面の汚れを防止できる。
【0017】
以上2つの実施例について、エレベータと建物の例で説明したが、鉄道車両とホームドアの例に置き換えても全く同じである。この場合はかごが鉄道車両、建物がプラットホームに相当するが、投光機以下の検出装置はホームドア側に設置するのが順当である。
以上、水平方向に検知する例で説明したが、反射鏡を水平方向とし、縦方向の検知を行うこともできるし、斜め方向など、任意の方向に検知を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施例の障害物検出装置を示すエレベータかごの正面図である。
【図2】第1の実施例の障害物検出装置を示すエレベータかご周辺の平面図である。
【図3】図1におけるビームの経路を示す正面図である。
【図4】第2の実施例の反射鏡部分を示す部分正面図である。
【図5】本発明に係わる公知の多重反射形光電式エリアセンサの正面図である。
【図6】図5におけるガイド部分を示す部分正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 投光器
2 受光器
3、3a、3b ガイド
4、4a、4b 反射鏡(ユニット)
5 かご
6 建物
41 筒体
51a、51b (かごの)扉
52 ロープ
61a、61b (建物の)扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重扉(51a、51b、61a、61b)の中間位置の開口部両側に配置した1対の反射鏡(4a、4b)と、一方の反射鏡(4a)の一方の端部に設けた投光器(1)と、他方の反射鏡(4b)の前記端部とは反対側の端部に設けた受光器(2)とから構成され、前記反射鏡(4a、4b)が、入射したビームを反対側の反射鏡に位置をずらして反射するように設定されており、前記投光器(1)と前記受光器(2)との間で複数回の反射が行われることを特徴とする二重扉における障害物検出装置。
【請求項2】
前記投光器(1)と受光器(2)が使用しているビームの光源がレーザ光である請求項1に記載の二重扉における障害物検出装置。
【請求項3】
前記二重扉がエレベータのかごの扉と建物の扉である請求項1または2に記載の二重扉における障害物検出装置。
【請求項4】
前記二重扉(51a、51b、61a、61b)が鉄道車両の側扉とプラットホームのホームドアである請求項1または2に記載の二重扉における障害物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−12940(P2009−12940A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176986(P2007−176986)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(390027292)根本企画工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】