説明

二重殻タンクシステム

【課題】本発明は二重殻タンクの漏洩検出を外部に液を流出させずに行なうことを課題とする。
【解決手段】二重殻タンクシステム10は、内殻タンク20と、外殻タンク30と、漏洩検出空間40と、漏洩検出管路50と、遮断弁60と、気体圧力設定手段70と、圧力検出手段80と、表示手段90とを有する。圧力検出手段80は、漏洩検出空間内40の気体圧力を検出する。表示手段90は、圧力検出手段80により検出された圧力検出データを受信する受信器92と、圧力検出データを表示する表示器94と有する。表示器94は、圧力検出手段80により検出された気体圧力値を表示したり、あるいは、圧力検出手段80により検出された気体圧力の変化に基づいて内殻タンク20または外殻タンク30で漏洩が発生したことを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二重殻タンクシステムに係り、特にガソリン等の液体燃料が貯蔵される二重殻タンクの漏洩を検出するよう構成された二重殻タンクシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の燃料タンクにガソリン等の液体燃料を供給する給油所においては、二重殻タンクからなる地下タンクが地下に埋設されている。この地下タンクの一例を説明すれば、内部に燃料油を貯蔵するFRP製(繊維強化プラスチック製)の内殻タンクの外側に、所定の間隙を有してFRP製(繊維強化プラスチック製)の外殻タンクを一体的に設け、内殻タンクと外殻タンクとの間に漏洩検出用の漏洩検出空間を隔成した構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1では、漏洩検出用の漏洩検出空間に液体が充填されており、圧力センサにより漏洩検出空間内の液圧を検出することで、地下タンクの漏洩の有無を監視している。例えば、外殻タンクにピンホール(小孔)が発生した場合、漏洩検出空間内の液が外部に流出して漏洩検出空間の圧力が低下し、内殻タンクにピンホール(小孔)が発生した場合、漏洩検出空間内にタンク内の液が流入して漏洩検出空間の圧力が増大する。そのため、漏洩検出空間の圧力変化に基づいて二重殻タンクの内側と外側のどちらで漏洩が発生したかを判別することも可能である。
【特許文献1】特2007−191172
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の漏洩検出方法では、外殻タンクにピンホールが発生した際に漏洩検出空間の液体が地下タンクの周囲に流出してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した二重殻タンクシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
【0007】
本発明は、内部に液体を貯留する内殻タンクと、該内殻タンクとの間に空間を隔成すべく、前記内殻タンクの外側に設けられた外殻タンクと、前記内殻タンクの内周と前記外殻タンクの外周との間に隔成された漏洩検出空間と、該漏洩検出空間に連通された管路と、該管路途中に設けられ、管路内外を連通又は遮断可能な遮断弁と、前記管路及び前記遮断弁を介して前記漏洩検出空間内の気体圧力を所定の減圧状態又は所定の加圧状態に設定する気体圧力設定手段と、該気体圧力設定手段により設定された前記漏洩検出空間内の気体圧力を検出するよう設けられた圧力検出手段と、該圧力検出手段により検出された気体圧力を表示する表示手段と、を備えることにより、上記課題を解決するものである。
【0008】
本発明は、一端が前記漏洩検出空間内のタンク底面に対面するように漏洩検出空間内に挿入され、他端が上方に伸びる液吸い上げ管と、該液吸い上げ管の他端が接続される液回収部と、液回収部に接続され、前記液吸い上げ管を介してタンク底面の液を吸引する負圧源と、を備えることにより、上記課題を解決するものである。
【0009】
本発明は、前記液吸い上げ管が、前記管路を兼ねるように構成されることにより、上記課題を解決するものである。
【0010】
本発明は、一端が前記漏洩検出空間内のタンク底面に対面するように漏洩検出空間内に挿入され、他端が上方に伸びる液吸い上げ管と、該液吸い上げ管の他端が接続される液回収部と、液回収部に接続され、前記液吸い上げ管を介してタンク底面の液を吸引する負圧源と、前記漏洩検出空間内の温度を検出する温度検出手段と、前記圧力検出手段により検出された圧力及び前記温度検出手段により検出された温度に基づいて前記内殻タンク及び前記外殻タンクにおける漏洩の有無を判定する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記漏洩検出空間の圧力変化が正常範囲内にあるときは、前記表示手段に安全の旨の表示を行い、前記漏洩検出空間の圧力変化が異常範囲内にあるときは、前記負圧源を起動させ、前記液回収部に前記タンク底面の漏洩液を回収させるよう制御することにより、上記課題を解決するものである。
【0011】
本発明は、内部に液体を貯留する内殻タンクと、該内殻タンクとの間に空間を隔成すべく、前記内殻タンクの外側に設けられた外殻タンクと、前記内殻タンクの内壁を内側から覆うように形成された樹脂製袋と、前記樹脂製袋の外周と前記内殻タンクの内周との間に隔成された漏洩検出空間と、下端が該漏洩検出空間に連通されるように、前記内殻タンクの内部に挿入された管路と、該管路を遮断する遮断弁と、前記管路及び前記遮断弁を介して前記漏洩検出空間内の気体圧力を所定の減圧状態又は所定の加圧状態に設定する気体圧力設定手段と、該気体圧力設定手段により設定された前記漏洩検出空間内の気体圧力を検出するよう設けられた圧力検出手段と、該圧力検出手段により検出された気体圧力を表示する表示手段と、を備えることにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧力検出手段により漏洩検出空間内の気体圧力を検出し、検出された気体圧力の変化によって漏洩による異常発生を判定することができ、外殻タンクの漏洩が発生した場合、漏洩検出空間が減圧されているときは漏洩検出空間内が進入した流体によって増圧が検出され、漏洩検出空間が加圧されているときは漏洩検出空間内の気体が流出して減圧が検出されるため、周囲の土壌に圧力検出用の液体が外部に流出することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明による二重殻タンクシステムの実施例1を示す構成図である。図1に示されるように、二重殻タンクシステム10は、内殻タンク20と、外殻タンク30と、漏洩検出空間40と、漏洩検出管路50(漏洩検出空間に連通された管路)と、遮断弁60と、気体圧力設定手段70と、圧力検出手段80と、表示手段90とを有する。
【0015】
内殻タンク20は、内部に液体を貯留する空間を有するように円筒形状に形成された鉄製タンクからなる。
【0016】
外殻タンク30は、内殻タンク20の外側に設けられた強化プラスチック(例えば、FRP:Fiber Reinforced Plastics)により円筒形状に形成されたタンクからなる。すなわち、内殻タンク20は、外周を耐食性の高い外殻タンク30によって覆われている。このように、内殻タンク20の外側を外殻タンク30によって覆うように構成された二重殻タンク100は、例えば、ガソリンや軽油等の液体燃料を貯蔵する給油所の地下タンクとして使用される。
【0017】
漏洩検出空間40は、内殻タンク20の内周と外殻タンク30の外周との間に隔成された微小な隙間からなる空間であり、長手方向からみると内殻タンク20と外殻タンク30との全周のうち頂部を除くC字状に形成された領域を有する。また、漏洩検出空間40は、内殻タンク20及び外殻タンク30の周方向だけでなく、長手方向の両端部分を含むように延在形成されている空間である。
【0018】
漏洩検出管路50は、下端が漏洩検出空間40に連通されるように、二重殻タンク100の上部に設けられた検査用マンホール110から内殻タンク20の内部に垂直に挿入された管路である。この漏洩検出管路50は、必ずしも、内殻タンク20内を貫通して設ける必要はなく、下端が漏洩検出空間40の上端側に接続され、上端が上方に伸びる構成でも良い。要は漏洩検出空間40に接続されるものであれば良い。
尚、二重殻タンク100の上部には、液体燃料の荷卸し行なう注油管、内殻タンク20の気相領域に連通される通気管、計量機に液体燃料を供給する給液管路などが連結されるメインマンホール120も設けられている。図1では、メインマンホール120に設けられる各管路を省略してある。漏洩検出管路50は、メインマンホール120から内殻タンク20の内部に挿入させる構成としても良い。
【0019】
遮断弁60は、手動操作される開閉弁からなる。遮断弁60は、通常、閉弁操作されて漏洩検出管路50を遮断しており、漏洩検出空間40の気体圧力を設定する際、あるいはタンク底面に溜った水を回収する際に開弁操作される。
【0020】
気体圧力設定手段70は、漏洩検出管路50及び遮断弁60を介して漏洩検出空間40内の気体圧力を所定の減圧状態又は所定の加圧状態に設定する真空ポンプまたはコンプレッサ(空気圧縮機)からなる。気体圧力設定手段70が真空ポンプからなる場合は、漏洩検出管路50及び遮断弁60を介して漏洩検出空間40の気圧を大気圧以下に減圧することになる。そして、漏洩検出空間40内の気圧は、その所定圧力(大気圧以下の圧力)に達した時点で遮断弁60が閉弁操作されることで、所定圧力に保持される。すなわち、遮断弁60が漏洩検出管路50を遮断すると、漏洩検出空間40は、密閉された気密空間になり、気体(空気)の流入、流出が生じない一定圧力状態に保持される。
【0021】
また、漏洩検出空間40を大気圧以下(真空状態)に減圧した場合、内殻タンク20の内周と外殻タンク30の外周との隙間が狭くなり、殆ど内殻タンク20と外殻タンク30とが密着する。これにより、二重殻タンク100は、内殻タンク20と外殻タンク30とが一体化されてタンク強度がより高められる。
【0022】
気体圧力設定手段70がコンプレッサからなる場合は、漏洩検出管路50及び遮断弁60を介して漏洩検出空間40の気圧を大気圧以上に増圧することになる。そして、漏洩検出空間40内の気圧は、減圧の場合と同様に、その所定圧力(大気圧以上の圧力)に達した時点で遮断弁60が閉弁操作されることで、所定圧力に保持される。
【0023】
圧力検出手段80は、例えば、圧力に応じた電気信号を出力する圧力センサからなり、気体圧力設定手段70により設定された漏洩検出空間内40の気体圧力を検出するよう設けられている。また、圧力検出手段80は、検出した圧力検出データを有線または無線による信号として送信する圧力伝送器82に接続されている。
【0024】
表示手段90は、給油所の任意の場所(例えば、事務所内あるいは検査用マンホール110の近傍など)に設置されており、圧力伝送器82からの圧力検出データを受信する受信器92と、受信器92に接続され圧力検出データを表示する表示器94とから構成されている。また、表示器94は、例えば、液晶モニタなどからなり、圧力検出手段80により検出された気体圧力値を表示したり、あるいは、圧力検出手段80により検出された気体圧力の変化に基づいて内殻タンク20または外殻タンク30で漏洩が発生したことを表示する。
【0025】
従って、給油所の係員またはメンテナンス担当者は、表示手段90の表示内容を確認することにより、二重殻タンク100における漏洩の有無を確認することができる。これにより、二重殻タンクシステム10においては、周囲の土壌に圧力検出用の液体が外部に流出することを防止できる。
【0026】
図2は図1中X−X線に沿う二重殻タンク100の縦断面図である。図2に示されるように、内殻タンク20の内周面には、少なくとも内殻タンク20の最大許容液面高さ位置まで油液に対して非溶解の素材、例えば、エポキシ樹脂等をコーティングした耐食層22が形成されている。これにより、内殻タンク20は、内周面からの腐食を防止することが可能になっている。尚、耐食層22としては、上記樹脂材に限らず、例えば、耐食性を有するステンレス材による薄肉のシートを少なくとも内殻タンク20の最大許容液面高さ位置まで接着剤により貼付する構造としても良い。
【0027】
内殻タンク20と外殻タンク30との間には、薄い樹脂製シート(例えば、厚さ0.5ミリのビニロンクロス)等からなる空間確保部材140が介在している。この空間確保部材140は、内殻タンク20と外殻タンク30との隙間より薄いフィルム状素材により形成されているため、内殻タンク20の外周面に密着することで、より微小な隙間からなる漏洩検出空間40を外殻タンク30の内周面との間に形成することができる。尚、空間確保部材140には、樹脂製シート以外にもシート状のものを用いても良い。
【0028】
漏洩検出管路50は、内殻タンク20を上下方向に貫通するように垂直に取り付けられている。また、漏洩検出管路50は、下端52が内殻タンク20の底部開口21を介して漏洩検出空間40に連通し、上端54が二重殻タンク100の頂部より上方に突出してフランジ管150の内部に挿通された状態で上端54と一体的に結合されている。この漏洩検出管路50の上端54は、遮断弁60を取り付けるためのフランジ56を有する。このフランジ56の端面には、シール部材(パッキン)が密着するように保持されており、遮断弁60に連通された管路のフランジとの間が気密に封止される。
【0029】
二重殻タンク100は、最大許容液面高さ位置Hmaxが全タンク容量の90%となるように決められている。従って、二重殻タンク100は、最大許容液面高さ位置Hmaxに達するまで油液をタンクローリ車から荷卸しされる。
【0030】
また、外殻タンク30は、内殻タンク20の全周ではなく、最大許容液面高さ位置Hmaxより上方の頂部130を除く外周を覆うように形成されている。従って、漏洩検出空間40も最大許容液面高さ位置Hmaxを上限として形成されている。
【0031】
図3は図2に示すA部を拡大して示す縦断面図である。図3に示されるように、内殻80の頂部130には、漏洩検出空間40が形成されておらず、最大許容液面高さ位置Hmaxよりも下方となる内殻タンク20と外殻タンク30との間にシート状の空間確保部材140が介在している。そして、漏洩検出空間40の上端では、内殻タンク20の外周に外殻タンク30の縁部32が直接固着されているので、漏洩検出空間40の気体がそれ以上上方に移動しないように気密構造になっている。さらに、外殻タンク30の縁部32の表面及び内殻タンク20の頂部130の表面には、FRP等の樹脂材150がコーティングされているので、例えば、雨水などが漏洩検出空間40に侵入できないように内殻タンク20の頂部130と外殻タンク30の縁部32との間がシールされている。
【0032】
図4は図2に示すB部を拡大して示す縦断面図である。図4に示されるように、漏洩検出管路50の下端52は、多孔質部材160に当接している。この多孔質部材160は、漏洩検出管路50の異物が漏洩検出空間40に侵入することを防止するフィルタとして機能しており、漏洩検出空間40が異物で詰まらないようにしている。さらに、多孔質部材160は、漏洩検出管路50の下端52と外殻タンク30の内周面との間隔を設定するスペーサとしても機能している。
【0033】
このように、漏洩検出空間40は、気密に封止されているため、気体圧力設定手段70により、例えば、大気圧以下に減圧された状態または大気圧以上に加圧された状態に保持される。
【0034】
ここで、内殻タンク20または外殻タンク30にピンホール(小孔)が発生した場合、減圧状態の漏洩検出空間40には、内殻タンク20の内部に貯留された燃料または二重殻タンク100の外周を囲む土壌に含まれる水または空気が進入し、圧力が上昇する。そのため、内殻タンク20または外殻タンク30にピンホール(小孔)が発生した時点で圧力検出手段80によって圧力上昇が検出されて、表示手段90に漏洩検知が表示される。これで、二重殻タンク100の漏洩が給油所の係員に報知される
また、内殻タンク20または外殻タンク30にピンホール(小孔)が発生した場合、加圧状態の漏洩検出空間40の気体が、内殻タンク20の内部または二重殻タンク100の外周を囲む土壌に流出し、漏洩検出空間40の圧力が低下する。そのため、内殻タンク20または外殻タンク30にピンホール(小孔)が発生した時点で圧力検出手段80によって圧力低下が検出されて、表示手段90に漏洩検知が表示される。これで、二重殻タンク100の漏洩が給油所の係員に報知される
図5は実施例1の変形例を示す縦断面図である。図5に示されるように、内殻タンク20及び外殻タンク30が共に強化プラスチックにより形成されている所謂FF二重殻タンク102の場合、二重殻タンク100の強度を補強するため、内殻タンク20の外周と外殻タンク30の内周との間にハニカム構造の補強部材142を介在させ、接着剤により両部材間を固着する。この補強部材142は、例えば、ステンレス材などの耐食性を有する金属材により形成されており、漏洩検出空間40の全域に挿入された状態で内殻タンク20の外周と外殻タンク30の内周に固着される。
【0035】
また、補強部材142は、金網のようなハニカム構造であるので、漏洩検出空間40における通気性を阻害しないように構成されている。
【0036】
従って、FF二重殻タンク102では、補強部材142を内殻タンク20の外周と外殻タンク30の内周との間に固着することでタンク強度をSFタンク並みに増強することができると共に、漏洩検出空間40の圧力変化による漏洩検出も正常に行なうことが可能になる。
【実施例2】
【0037】
図6は実施例2の構成を示すシステム構成図である。尚、図6において、前述した実施例1と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。図6に示されるように、実施例2の二重殻タンクシステム200は、タンク底部に溜った液体を回収する液回収部210を有する。
【0038】
液回収部210は、漏洩検出管路50の上端54のフランジ56にシール部材212を介して固定されたベース220と、ベース220を垂直方向に貫通する液回収筒230と、圧力電送器82から送信された圧力データに基づいてタンク漏洩の有無を判定する制御装置270と、制御装置270から制御信号により液回収部230を負圧にする負圧源280とを有する。
【0039】
液回収筒230は、漏洩検出管路50の内部で外周に接続されたL字状継手240と、上端がL字状継手240を介して回収筒230に連通される小径な液吸い上げ管250とを有する。液吸い上げ管250の下端は、タンク底部に設けられた多孔質部材160より僅かに離間した位置まで垂下方向に延在している。
【0040】
また、液回収筒230は、有底筒体からなり、L字状継手240の接続位置より下方の空間が液回収ための容器として機能する。液回収筒230の上端は、遮断弁60が接続されている。液回収を行なう際は、遮断弁60を開弁させる。
【0041】
ベース220には、前述した圧力検出手段80及び圧力伝送器82が取り付けられている。
【0042】
負圧源280は、例えば、空気を吸引する真空ポンプあるいは、液体を吸引する排水ポンプなどからなる。
【0043】
制御装置270は、受信器92及び表示器94と共に、漏洩検査ユニット260を構成する。制御装置270は、マイクロコンピュータからなり、圧力検出手段80により検出された圧力に基づいて内殻タンク20及び外殻タンク30における漏洩の有無を判定する制御プログラムA(制御手段)と、漏洩検出空間40の圧力変化が正常範囲内にあるときは、表示器94に安全の旨の表示を行い、漏洩検出空間40の圧力変化が異常範囲内にあるときは、負圧源280を起動させ、液回収部210にタンク底面の漏洩液を回収させるよう制御する制御プログラムB(制御手段)とがメモリに格納されている。
【0044】
ここで、内殻タンク20または外殻タンク30にピンホール(小孔)が発生した場合、減圧状態の漏洩検出空間40には、内殻タンク20の内部に貯留された燃料または二重殻タンク100の外周を囲む土壌に含まれる水または空気が進入し、圧力が上昇する。そのため、圧力検出手段80によって圧力上昇が検出されると、制御装置270は、表示手段90に漏洩検知を表示して給油所の係員に報知すると共に、負圧源280を起動させて漏洩検出管路50の下部に溜った漏洩液(地下水または燃料)を液吸い上げ管250により吸上げて回収筒230の内部に回収する。
【0045】
また、内殻タンク20または外殻タンク30にピンホール(小孔)が発生した場合、加圧状態の漏洩検出空間40の気体が、内殻タンク20の内部または二重殻タンク100の外周を囲む土壌に流出し、漏洩検出空間40の圧力が低下する。そのため、内殻タンク20または外殻タンク30にピンホール(小孔)が発生した時点で圧力検出手段80によって圧力低下が検出されると、制御装置270は、表示手段90に漏洩検知を表示して給油所の係員に報知すると共に、負圧源280を起動させて漏洩検出管路50の下部に溜った漏洩液(地下水または燃料)を液吸い上げ管250により吸上げて回収筒230の内部に回収する。これにより、二重殻タンクシステム200においては、周囲の土壌に圧力検出用の液体が外部に流出することを防止できる。
【0046】
ここで、図6に示す二重殻タンクシステム200の設置作業が終了した後に制御装置270が実行する制御処理について説明する。図7は制御装置270が実行する初期設定処理を示すフローチャートである。
【0047】
図7のS11で、制御装置270は、圧力検出手段80によって検出された圧力検出値P0(初期値)を読み込む。次のS12では、圧力検出値の初期値P0が大気圧以上か否かをチェックする。S12において、圧力検出値の初期値P0が大気圧以上であるときは(YESの場合)、漏洩検出空間40が大気圧以上に加圧されているものと判断し、S13に進む。S13では、加圧状態に対応した閾値P1,P2を上限値、下限値として設定する。この閾値P1,P2は、圧力検出値の初期値P0に応じて設定される。例えば、P=1.5Paであれば、P1=1.7Pa、P2=1.3Paを閾値として設定する。
【0048】
また、上記S12において、圧力検出値の初期値P0が大気圧未満である場合(NOの場合)は、漏洩検出空間40が大気圧未満に減圧されているものと判断し、S14に進む。S14では、減圧状態に対応した閾値P3、P4を上限値、下限値として設定する。この閾値P3、P4は、圧力検出値Pの初期値に応じて設定される。例えば、P=0.5Paであれば、P3=0.8、P4=0.3Paを閾値として設定する。
【0049】
尚、内殻タンク20及び外殻タンク30は、土壌温度及びタンクローリ車から荷卸しされた油液の温度によって収縮または膨張する。例えば、夏になるとタンクローリ車が太陽熱によって加熱されるため、加熱された油液が荷卸しされることになり、外殻タンク30が熱膨張するといった現象が起きる。また、冬になると、タンクローリ車が走行中の外気によって冷却されるため、低温とされた油液が荷卸しされることになり、外殻タンク30が収縮するといった現象が起きる。そのため、本実施例では、圧力検出値Pに対する閾値の上限値、下限値に所定範囲を設ける。
【0050】
図8は漏洩検出空間40が加圧状態の場合の制御処理1を示すフローチャートである。図8に示されるように、制御装置270は、S21で圧力検出手段80によって検出された圧力検出値Pを読み込む。次のS22では、加圧状態の閾値P1,P2を読み込んで、圧力検出値Pと比較する。圧力検出値Pが加圧状態の閾値P1,P2の範囲内に入っている場合(YESの場合)は、S23に進み、漏洩無いと判定する。そして、S24で「タンク正常」といったような判定結果を表示器94に表示して給油所の係員に報知する。
【0051】
また、上記S22において、圧力検出値Pが加圧状態の閾値P1,P2の範囲内に入っていない場合(NOの場合)は、S25に進み、内殻タンク20または外殻タンク30にピンホールが発生して漏洩検出空間40の気体が流出して下限値以下に圧力低下したり、あるいは地下水または貯留していた燃料が流入して上限値以上に圧力上昇したものと判断する。
【0052】
次のS26では、「タンク異常発生」または「タンク漏れ有り」といったような判定結果を表示器94に表示して給油所の係員に報知する。また、S26では、表示器94にタンク異常発生を表示すると共に、警報(アラーム)を発して給油所の全員に報知するようにしても良い。そして、表示器94のタンク異常発生の表示を見た給油所の係員は、遮断弁60を開弁操作する。
【0053】
次のS27では、負圧源280を起動させて回収筒230の内部空間を真空にすることで、漏洩検出管路50の下部に溜った漏洩液(地下水または燃料)を液吸い上げ管250により吸上げて回収筒230の内部に回収する。これにより、流入した地下水が貯蔵している油液(燃料)と混ざることが防止される。
【0054】
図9は漏洩検出空間40が減圧状態の場合の制御処理1を示すフローチャートである。図9に示されるように、制御装置270は、S31で圧力検出手段80によって検出された圧力検出値Pを読み込む。次のS32では、減圧状態の閾値P3,P4を読み込んで、圧力検出値Pと比較する。圧力検出値Pが減圧状態の閾値P3,P3の範囲内に入っている場合(YESの場合)は、S33に進み、漏洩無いと判定する。そして、S34で「タンク正常」といったような判定結果を表示器94に表示して給油所の係員に報知する。
【0055】
また、上記S32において、圧力検出値Pが加圧状態の閾値P3,P4の範囲内に入っていない場合(NOの場合)は、S35に進み、内殻タンク20または外殻タンク30にピンホールが発生して漏洩検出空間40の気体が流出して下限値以下に圧力低下したり、あるいは地下水または貯留していた燃料が流入して上限値以上に圧力上昇したものと判断する。
【0056】
次のS36では、「タンク異常発生」または「タンク漏れ有り」といったような判定結果を表示器94に表示して給油所の係員に報知する。また、S36では、表示器94にタンク異常発生を表示すると共に、警報(アラーム)を発して給油所の全員に報知するようにしても良い。そして、表示器94のタンク異常発生の表示を見た給油所の係員は、遮断弁60を開弁操作する。
【0057】
次のS37では、負圧源280を起動させて回収筒230の内部空間を真空にすることで、漏洩検出管路50の下部に溜った漏洩液(地下水または燃料)を液吸い上げ管250により吸上げて回収筒230の内部に回収する。これにより、流入した地下水が貯蔵している油液(燃料)と混ざることが防止される。
【実施例3】
【0058】
図10は実施例3の構成を示すシステム構成図である。尚、図10において、前述した実施例1、2と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。図10に示されるように、実施例3の二重殻タンクシステム300は、漏洩検出管路50に、前述した圧力検出手段80と、タンク底部に溜った液体を回収する液回収部310と、漏洩検出管路50の内部の温度を測定する温度検出手段340とを有する。
【0059】
液回収部310は、ベース220の上部に取り付けられた液回収容器320と、液回収容器320の内部底面に設けられた液面検出手段330とを有する。液回収容器320は、例えば、有底円筒状の容器からなり、上部外周に手動操作の容器側遮断弁324が接続されている。さらに、容器側遮断弁324は、管路322を介して遮断弁60の流出側に接続されている。本実施例では、液吸い上げ管250の上端が遮断弁60の流入側に接続されている。
【0060】
また、液回収容器320の上端には、吸引管路326の一端が接続されている。この吸引管路326の他端には、負圧源280が接続されている。
【0061】
液面検出手段330は、液吸い上げ管250を介して液回収容器320に回収された液面高さ位置を計測する液面計などからなり、例えば、液面高さに応じた静電容量に基づく計測値を出力する静電容量式液面計などが用いられる。液回収容器320の上面には、液面検出手段330によって測定された液面検出データを送信する液面伝送器332が取り付けられている。
【0062】
温度検出手段340は、漏洩検出管路50の内部の温度に応じた温度測定データを出力する温度センサであり、例えば、電気抵抗が温度に応じて変化するサーミスタを用いた温度センサからなる。温度検出手段340は、ワイヤ242によりベース220の下方に吊下されており、ほぼ漏洩検出管路50の高さ方向の中間位置に挿入されている。また、ベース220の上方には、温度検出手段340によって測定された温度検出データを送信する温度伝送器344が取り付けられている。
【0063】
液面伝送器332、温度伝送器344は、前述した圧力伝送器82と同様に液面検出データを有線または無線による信号として制御装置350に送信する。
【0064】
制御装置350は、前述した実施例2と同様に、圧力伝送器82から送信された圧力検出データ、温度伝送器344から送信された温度検出データに基づいて漏洩の有無を判定し、タンクの漏洩発生と判定した場合は、容器側遮断弁324及び遮断弁60が開弁された後、負圧源280を起動させてタンク底部に溜った漏洩液を液吸い上げ管250、遮断弁60、管路322、容器側遮断弁324を介して液回収容器320に回収する。
【0065】
液回収容器320は、ベース220に対して分離可能に固定されており、液面伝送器332から送信された液面検出データにより、回収された液体が液回収容器320の満タン位置(上限位置)に達した時点で液回収を中止して液回収容器320の交換作業を行なう。これにより、二重殻タンクシステム300においては、周囲の土壌に圧力検出用の液体が外部に流出することを防止できる。
【0066】
ここで、制御装置350が実行する制御処理について説明する。尚、初期設定処理は、本実施例でも前述した図7と同様であるので、その説明は省略する。
【0067】
図11は漏洩検出空間40が加圧状態の場合の制御処理2を示すフローチャートである。図11に示されるように、制御装置350は、S41で圧力検出手段80によって検出された圧力検出値Pを読み込む。次のS42では、加圧状態の閾値P1,P2を読み込んで、圧力検出値Pと比較する。圧力検出値Pが加圧状態の閾値P1,P2の範囲内に入っている場合(YESの場合)は、S43に進み、温度検出手段340によって検出された温度検出値を読み込む。
【0068】
次のS44では、温度の閾値T1,T2を読み込んで、温度検出値Tと比較する。温度検出値Tが閾値T1,T2の範囲内に入っている場合(YESの場合)は、S45に進み、漏洩無いと判定する。そして、S46で「タンク正常」といったような判定結果を表示器94に表示して給油所の係員に報知する。
【0069】
また、上記S44において、温度検出値Tが閾値T1,T2の範囲内に入っていない場合(NOの場合)は、S47でタンク温度が異常と判定し、S48で「タンク温度異常」といったような判定結果を表示器94に表示して給油所の係員に報知する。
【0070】
また、上記S42において、圧力検出値Pが加圧状態の閾値P1,P2の範囲内に入っていない場合(NOの場合)は、S49に進み、内殻タンク20または外殻タンク30にピンホールが発生して漏洩検出空間40の気体が流出して下限値以下に圧力低下したり、あるいは地下水または貯留していた燃料が流入して上限値以上に圧力上昇したものと判断する。
【0071】
次のS50では、「タンク異常発生」または「タンク漏れ有り」といったような判定結果を表示器94に表示して給油所の係員に報知する。また、S50では、表示器94にタンク異常発生を表示すると共に、警報(アラーム)を発して給油所の全員に報知するようにしても良い。そして、表示器94のタンク異常発生の表示を見た給油所の係員は、遮断弁60及び容器側遮断弁324を開弁操作する。
【0072】
次のS27では、負圧源280を起動させて液回収容器320の内部空間を真空にすることで、漏洩検出管路50の下部に溜った漏洩液(地下水または燃料)を液吸い上げ管250により吸上げて液回収容器320の内部に回収する。これにより、流入した地下水が貯蔵している油液(燃料)と混ざることが防止される。
【0073】
図12は漏洩検出空間40が減圧状態の場合の制御処理2を示すフローチャートである。図12に示されるように、制御装置350は、S61で圧力検出手段80によって検出された圧力検出値Pを読み込む。次のS62では、減圧状態の閾値P3,P4を読み込んで、圧力検出値Pと比較する。圧力検出値Pが減圧状態の閾値P3,P3の範囲内に入っている場合(YESの場合)は、温度検出手段340によって検出された温度検出値を読み込む。
【0074】
次のS64では、温度の閾値T1,T2を読み込んで、温度検出値Tと比較する。温度検出値Tが閾値T1,T2の範囲内に入っている場合(YESの場合)は、S65に進み、漏洩無いと判定する。そして、S66で「タンク正常」といったような判定結果を表示器94に表示して給油所の係員に報知する。
【0075】
また、上記S64において、温度検出値Tが閾値T1,T2の範囲内に入っていない場合(NOの場合)は、S67でタンク温度が異常と判定し、S68で「タンク温度異常」といったような判定結果を表示器94に表示して給油所の係員に報知する。
【0076】
また、上記S62において、圧力検出値Pが加圧状態の閾値P3,P4の範囲内に入っていない場合は、S69に進み、内殻タンク20または外殻タンク30にピンホールが発生して漏洩検出空間40の気体が流出して下限値以下に圧力低下したり、あるいは地下水または貯留していた燃料が流入して上限値以上に圧力上昇したものと判断する。
【0077】
次のS70では、「タンク異常発生」または「タンク漏れ有り」といったような判定結果を表示器94に表示して給油所の係員に報知する。また、S70では、表示器94にタンク異常発生を表示すると共に、警報(アラーム)を発して給油所の全員に報知するようにしても良い。そして、表示器94のタンク異常発生の表示を見た給油所の係員は、遮断弁60及び容器側遮断弁324を開弁操作する。
【0078】
次のS71では、負圧源280を起動させて液回収容器320の内部空間を真空にすることで、漏洩検出管路50の下部に溜った漏洩液(地下水または燃料)を液吸い上げ管250により吸上げて液回収容器320の内部に回収する。これにより、流入した地下水が貯蔵している油液(燃料)と混ざることが防止される。
【実施例4】
【0079】
図13は実施例4の構成を示すシステム構成図である。尚、図13において、前述した実施例1〜3と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。図13に示されるように、実施例4の二重殻タンクシステム400は、内殻タンク20の内壁に樹脂製シートにより袋状に形成された樹脂製袋410が漏洩検出空間420を介して対向している。樹脂製袋410は、漏洩検出空間420内を減圧されることで内殻タンク20の内壁に密着する。
【0080】
内殻タンク20内に挿入される各管路(例えば、通気管、油液を汲み上げるための給液管路など)は、樹脂製袋410を貫通して内部に延在しており、樹脂製袋410の貫通部分の外周は樹脂製袋410と隙間のない密着状態で接着される。
【0081】
また、樹脂製袋410は、内部に油液を貯蔵するため、耐油性を有する樹脂製シートにより一体成形されており、油液の圧力によっても内殻タンク20及び耐食層22の内壁に押圧されて密着する。
【0082】
図14に示されるように、樹脂製袋410は、フランジ管150の内部に挿入された筒部430を有する。そして、樹脂製袋410の筒部430とフランジ管150の内壁との間には、圧力検出手段80及び遮断弁60に連通される圧力取出し管440が接続されている。
【0083】
従って、内殻タンク20、外殻タンク30または樹脂製袋410にピンホールが発生した場合、漏洩検出空間420に地下水またはタンク内の油液が流入して圧力が上昇する。この漏洩検出空間420における圧力上昇は、前述した実施例1と同様に圧力検出手段80によって検出される。これにより、二重殻タンクシステム400においては、周囲の土壌に圧力検出用の液体が外部に流出することを防止できる。
【0084】
そのため、内殻タンク20、外殻タンク30または樹脂製袋410にピンホール(小孔)が発生した時点で圧力検出手段80によって圧力低下が検出されて、表示手段90に漏洩検知が表示される。これで、二重殻タンク100の漏洩が給油所の係員に報知される。
【実施例5】
【0085】
図15は実施例5の構成を示すシステム構成図である。尚、図15において、前述した実施例1〜4と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。図15に示されるように、実施例5の二重殻タンクシステム500は、内殻タンク20の内壁に樹脂製シートにより袋状に形成された樹脂製袋410が漏洩検出空間420を介して対向している。
【0086】
内殻タンク20に挿入された漏洩検出管路50の外周には、樹脂製袋410の上部側筒状部412、下部側筒状部414が密着した状態で接着されている。上部側筒状部412、下部側筒状部414は、ベローズのように伸縮可能な形状に形成されており、漏洩検出管路50の挿入位置に応じて漏洩検出管路50の半径方向に容易にずらすことができる。
【0087】
また、漏洩検出管路50の下端は、内殻タンク20の底面から僅かな隙間を介して離間しており、底面側の漏洩検出空間420と連通されている。さらに、内殻タンク20の底面側では、油液の圧力によって樹脂製袋410が内殻タンク20の内壁に押圧されている。
【0088】
そのため、負圧源280が起動された際に、漏洩検出管路50の内部が減圧された場合、樹脂製袋410が内殻タンク20の内壁から引き離されることが防止され、内殻タンク20の内壁及び耐食層22の内壁との密着状態は保持される。
【0089】
この二重殻タンクシステム500は、前述した図6と同様に、タンク底部に溜った液体を回収する液回収部210を有する。すなわち、内殻タンク20または外殻タンク30にピンホール(小孔)が発生した場合、減圧状態の漏洩検出空間420には、内殻タンク20の内部に貯留された燃料または土壌に含まれる水または空気が進入し、圧力が上昇する。そのため、圧力検出手段80によって圧力上昇が検出されると、制御装置270は、表示手段90に漏洩検知を表示して給油所の係員に報知すると共に、負圧源280を起動させて漏洩検出管路50の下部に溜った漏洩液(地下水または燃料)を液吸い上げ管250により吸上げて回収筒230の内部に回収する。
【実施例6】
【0090】
図16は第6の実施例を示す縦断面図である。図6に示されるように、この実施例6は、FF式の二重殻タンク、すなわち、内殻も外殻もFRPからなる二重殻タンクへの適応例を示すものである。
【0091】
ベース220上に設けられた機器構成は、前述した図10における構成と同様であるので、説明は割愛する。内殻と外殻の間に検知空間が形成されており、この検知空間40には、検知空間40内の気体の流通を許容しうる縦横無尽の流路を有する多孔質の弾性材からなる補強部材600が充填されている。該漏洩検出空間40に連通された管路610は、フレキシブルな樹脂性を有する配管からなり、一端が前記漏洩検出空間40内のタンク底面に対面するように漏洩検出空間40内に挿入され、他端がベース220を貫通し上方に伸びるように設けられている。ベース220の貫通部には、シール部材620が設けられており、気密にシールされている。
【0092】
つまり、この管路610は、図10の漏洩検出管路50と液吸い上げ菅250との双方の機能を兼ねるものである。なお、図示は省略するが、圧力検出手段80及び温度検出手段340は、漏洩検出空間40内に位置し、この部分の値を測定すれば良い。また、実施例6においても、前述した図10に示す実施例3と同様の効果を奏しうる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
上記実施例では、二重殻タンクに液体燃料を貯蔵する給油所を例に挙げて説明したが、これに限らず、燃料以外の液体(例えば、水、化学薬品、食品など)を貯蔵する施設にも適用することができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明による二重殻タンクシステムの実施例1を示す構成図である。
【図2】図1中X−X線に沿う二重殻タンク100の縦断面図である。
【図3】図2に示すA部を拡大して示す縦断面図である。
【図4】図2に示すB部を拡大して示す縦断面図である。
【図5】実施例1の変形例を示す縦断面図である。
【図6】実施例2の構成を示すシステム構成図である。
【図7】制御装置270が実行する初期設定処理を示すフローチャートである。
【図8】漏洩検出空間40が加圧状態の場合の制御処理1を示すフローチャートである。
【図9】漏洩検出空間40が減圧状態の場合の制御処理1を示すフローチャートである。
【図10】実施例3の構成を示すシステム構成図である。
【図11】漏洩検出空間40が加圧状態の場合の制御処理2を示すフローチャートである。
【図12】漏洩検出空間40が減圧状態の場合の制御処理2を示すフローチャートである。
【図13】実施例4の構成を示すシステム構成図である。
【図14】実施例4の二重殻タンクの縦断面図である。
【図15】実施例5の構成を示すシステム構成図である。
【図16】実施例6の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0095】
10,200,300,400,500 二重殻タンクシステム
20 内殻タンク
30 外殻タンク
40 漏洩検出空間
50 漏洩検出管路
60 遮断弁
70 気体圧力設定手段
80 圧力検出手段
82 圧力伝送器
90 表示手段
92 受信器
94 表示器
100 二重殻タンク
102 FF二重殻タンク
140 空間確保部材
142 補強部材
210,310 液回収部
220 ベース
230 液回収筒
250 液吸い上げ管
270,350 制御装置
280 負圧源
320 液回収容器
330 液面検出手段
332 液面伝送器
340 温度検出手段
344 温度伝送器
410 樹脂製袋
420 漏洩検出空間
430 筒部
600 補強部材
610 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯留する内殻タンクと、
該内殻タンクとの間に空間を隔成すべく、前記内殻タンクの外側に設けられた外殻タンクと、
前記内殻タンクの内周と前記外殻タンクの外周との間に隔成された漏洩検出空間と、
該漏洩検出空間に連通された管路と、
該管路途中に設けられ、管路内外を連通又は遮断可能な遮断弁と、
前記管路及び前記遮断弁を介して前記漏洩検出空間内の気体圧力を所定の減圧状態又は所定の加圧状態に設定する気体圧力設定手段と、
該気体圧力設定手段により設定された前記漏洩検出空間内の気体圧力を検出するよう設けられた圧力検出手段と、
該圧力検出手段により検出された気体圧力を表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とする二重殻タンクシステム。
【請求項2】
一端が前記漏洩検出空間内のタンク底面に対面するように漏洩検出空間内に挿入され、他端が上方に伸びる液吸い上げ管と、
該液吸い上げ管の他端が接続される液回収部と、
液回収部に接続され、前記液吸い上げ管を介してタンク底面の液を吸引する負圧源と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の二重殻タンクシステム。
【請求項3】
前記液吸い上げ管は、前記管路を兼ねるように構成されたこと特徴とする請求項2に記載の二重殻タンクシステム。
【請求項4】
一端が前記漏洩検出空間内のタンク底面に対面するように漏洩検出空間内に挿入され、他端が上方に伸びる液吸い上げ管と、
該液吸い上げ管の他端が接続される液回収部と、
液回収部に接続され、前記液吸い上げ管を介してタンク底面の液を吸引する負圧源と、
前記漏洩検出空間内の温度を検出する温度検出手段と、
前記圧力検出手段により検出された圧力及び前記温度検出手段により検出された温度に基づいて前記内殻タンク及び前記外殻タンクにおける漏洩の有無を判定する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記漏洩検出空間の圧力変化が正常範囲内にあるときは、前記表示手段に安全の旨の表示を行い、前記漏洩検出空間の圧力変化が異常範囲内にあるときは、前記負圧源を起動させ、前記液回収部に前記タンク底面の漏洩液を回収させるよう制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の二重殻タンクシステム。
【請求項5】
内部に液体を貯留する内殻タンクと、
該内殻タンクとの間に空間を隔成すべく、前記内殻タンクの外側に設けられた外殻タンクと、
前記内殻タンクの内壁を内側から覆うように形成された樹脂製袋と、
前記樹脂製袋の外周と前記内殻タンクの内周との間に隔成された漏洩検出空間と、
下端が該漏洩検出空間に連通されるように、前記内殻タンクの内部に挿入された管路と、
該管路を遮断する遮断弁と、
前記管路及び前記遮断弁を介して前記漏洩検出空間内の気体圧力を所定の減圧状態又は所定の加圧状態に設定する気体圧力設定手段と、
該気体圧力設定手段により設定された前記漏洩検出空間内の気体圧力を検出するよう設けられた圧力検出手段と、
該圧力検出手段により検出された気体圧力を表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とする二重殻タンクシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−113859(P2009−113859A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292455(P2007−292455)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000110099)トキコテクノ株式会社 (264)
【Fターム(参考)】