説明

二重液圧機械トランスミッション

モジュラートランスミッションは、その中でピストンを往復運動させるそれぞれのシリンダの軸方向長さと実質上同じ長さの本体部分を備えたピストンを有する、顕著に改善された容積効率のたった一対の小型で軽量の液圧機械を使用する。2つの液圧機械は閉ループとなって作動し、一方は車両のエンジンにより駆動されるポンプとして使用され、他方はモータとして使用される。各機械は完全に関節運動する斜板を有する。コンピュータ制御により、2つの機械の斜板の角度は、始動から、市街運転、負荷及び急峻度に応じて変化する登坂及び高速道路のためのオーバードライブまでのすべての状態に対してエンジン/車輪速度の適切で最適な比率を提供するように無限的に変化する。この完全な車両作動は、車両のエンジンが比較的一定の速度及び比較的低いRPMで作動を続ける間、達成される。

【発明の詳細な説明】
【関連する出願に対するリファレンス】
【0001】
この出願は、現在放棄されている「長ピストン液圧機械」という名称の2002年8月28日に出願された親特許出願番号第10/229,407号の一部継続出願である現在放棄されている「長ピストン液圧機械」という名称の2003年8月25日に出願された出願番号第10/647,557号の一部継続出願である「長ピストン液圧機械」という名称の2006年1月10日に発行された米国特許第6,983,680号の一部継続出願である「二重液圧機械トランスミッション」という名称の2005年6月15日に出願された継続中の米国出願第11/153,111号に対する優先権を主張する。上記の特許及び特許出願は参照としてここに組み込む。
【0002】
この出願はまた「歯車オーバードライブを伴う軌道トランスミッション」という名称の2005年6月15日に出願された継続中の米国出願番号第11/153,112号に対する優先権をも主張する。その出願は参照としてここに組み込む。
【技術分野】
【0003】
本発明は車両の運動のために使用される液圧トランスミッション及び比較的「ヘビーデューティの」自動車用途に適した液体液圧ポンプ/モータ機械に関する。特に、本発明は自動車のための全液圧トランスミッションに関する。
【背景技術】
【0004】
全液圧トランスミッションは当業界で知られている。1965年8月10日に出願された「静圧駆動子」という名称の米国特許第3,199,286号明細書においては、モジュラー液圧駆動子は無段加速を提供するために4つの車輪の各々に対して別個のモータを駆動する単一のポンプを使用する。液圧駆動子は各車輪において制御弁を有し、低い流体をリチャージする。1975年2月15日に出願された「静圧車両トランスミッション」という名称の米国特許第3,641,765号明細書においては、4輪静圧駆動子は差動を許容し、前方及び後方の車軸間の牽引制御を提供するために一方向弁と絞り接続部との特殊なセットを有する。
【特許文献1】米国特許第3,199,286号明細書
【特許文献2】米国特許第3,641,765号明細書 当業界においては、ガソリンエンジン車両の効率を増大させ、車の重量及び製造コストを減少させるために、トルク損失の少ない証明されているが著しく低速度のエンジンへの戻りを許容するトランスミッションの要求がある。また、当業界においては、エンジンが一層一定の速度で作動している間に、車の速度変化を許容するトランスミッションの要求がある。大半の自動車に現在使用されているトランスミッションは加速中に低速と極めて高速との間でのエンジンサイクルを必要とするが、エンジンは一定速度で運転しているときに一層燃費が少ない。
【0005】
全液圧トランスミッションはトラクタのような低速重労働機械及びゴルフカートや全地域型車両(ATV)のような軽量車両に有効に使用されてきた。全液圧トランスミッションは自動車のために使用されてきたが、従来の液圧トランスミッションの非効率性が自動車での使用を実践的ではないものにしていた。自動車に使用するための従来の液圧トランスミッションを縮小しても、許容できない大型で重く騒音の大きなトランスミッションを生じさせてしまい、このようなトランスミッションは自動車に現在使用されているトランスミッションよりも一層大型で、一層重く、一層騒音が大きい。
【0006】
内燃エンジンは米国における自動車のための産業規格であるが、いくつかの大手の自動車製造業者は均等な給気/圧縮/点火(HCCI)エンジンを探求している。従来のガソリンエンジンにおいては、空気/燃料混合物は動力を発生させるために点火プラグにより点火される。HCCIエンジンにおいては、ディーゼルエンジンと同様に、ピストンが空気/燃料混合物を圧縮して、その温度を点火するまで増大させる。HCCIエンジンは標準のガソリン内燃エンジンについて燃料経済性を30%増大させることができるものと見積もられる。しかし、自動車においてHCCI技術を履行するための主要な障害は低速及び高速の双方のエンジン速度での燃焼の制御が困難なことである。
【0007】
当業界において、HCCIエンジンにおける燃焼を一層容易に制御できるような比較的狭い低ないし適度レンジにそのエンジン速度を維持するのを許容しながら、自動車を運転するのに必要なパワーを提供するトランスミッションの要求がある。このようなトランスミッションはガソリン動力車両での一層燃費の少ないHCCIエンジンの実行を許容する。
【0008】
液圧ポンプ及びモータはまた周知であり、幅広く使用されており、シリンダブロック内に形成されたそれぞれのシリンダ内に装着され、駆動素子の回転軸線のまわりにおいて第1の半径方向の距離で円周方向に位置する往復運動ピストンを有する。このようなポンプ/モータ機械の多くは可変容量形能力を有し、これらは一般に2つの基本的なデザインのものである。第1の基本的なデザインにおいては、ピストンは可変的に傾斜するかさもなければ固定の斜板に接して回転するシリンダブロック内で往復運動する。第2の基本的なデザインにおいては、ピストンは回転及び転頭運動を行うロータの表面上で摺動する回転せずに転頭運動のみを行う「揺動体」を含むようにしばしば分割される可変的に傾斜した回転する斜板に接して固定のシリンダブロック内で往復運動する。ここでの本発明はこれら両方のデザインに適用できるが、ピストンが固定のシリンダブロック内で往復運動するような後者の形式の機械における改良のために特に適し、ここではそれを説明する。
【0009】
本発明に利用されここで説明するポンプ及びモータは液体形式の液圧機械であり、全体を通じてここで使用するような流体及び加圧流体という用語は、圧縮可能なガスではなく非圧縮性の液体を特定することを意図することを理解すべきである。液体の非圧縮性のため、このような2つの異なる形式の液圧機械の圧力及び負荷デューティサイクルは、ガス圧縮形式の機械のためのデザインが液体形式の機械において使用するのに不適当であり及びその逆も真であるというように、根本的に異なる。それ故、以下の意見は、液体形式の液圧機械及び、主として、上述のようなヘビーデューティの自動車用途に対して向けられ適用できることをすべで理解すべきである。
【0010】
固定のシリンダブロックを備えた液圧機械は重量のある回転シリンダブロックを支持及び保護しなければならない機械よりも一層軽量及び小型に形成できる。しかし、このような軽量の機械は装着及び支持が困難な回転及び転頭運動を行う斜板組立体を必要とする。高圧/高速使用に対しては、斜板組立体は、非回転ピストンのヘッドと回転及び転頭運動を行う斜板の対応する表面との間の相対運動を許容するような方法で、支持されなければならない。このような従来の斜板はしばしば、回転及び転頭運動を行うロータ部分と、転頭運動のみを行う揺動体部分とに分割され、後者は接続「ドッグボーン」を介して非回転ピストンのヘッドと番い合うポケットを有する。
【0011】
すなわち、このような固定シリンダブロック式の機械は、今まで、各ピストンの一端を転頭運動するが回転しない揺動体の表面に相互接続するために「ドッグボーン」延長ロッド(即ち2つの球状端部を備えたロッド)を使用してきた。ドッグボーンの球状の一端はピストンのヘッド端部内に枢着され、一方、球状の他端は普通、非回転ピストンのヘッドと転頭運動する斜板のポケットとの間のすべての相対運動中、斜板揺動体のポケット内に常に保持される。当業界で周知のように、このような相対運動は0°から離れるような斜板のすべての傾斜において生じる可変の非円形経路を追従する。このようなドッグボーンはこのような軽量の回転斜板の複雑さ及び製造コストを大幅に増大させる。
【0012】
ドッグボーンロッドはまた時には各ピストンの一端を回転シリンダブロックを備えた液圧機械の傾斜する(が回転しない)斜板に相互接続するために使用される。しかし、一層頻繁には、この後者の形式の機械はこのようなドッグボーンを省略し、代わりに細長いピストンを使用し、各ピストンは斜板の非回転の平坦な表面に有効に接触する(これまた、枢着された普通のシュー素子により普通覆われる)球状のヘッドを一端に有する。このような細長いピストンは、各ピストンの軸方向の円筒状部分の実質的な部分がピストンの最大ストローク中でさえそのそれぞれのシリンダの壁により常に支持された状態を維持するように、設計される。このような細長いピストンに対するこの付加的な支持は、ピストンがそのシリンダブロック内で回転する際に球状のピストンヘッドが傾斜するが回転しない斜板上で摺動するときに、各球状のピストンヘッドの最小の横方向の変位を保証するように、設計される。
【0013】
一般に、このような細長いピストンは主として「ブローバイ」により潤滑される、すなわち、往復運動ピストンが高圧流体を駆動するか又はこれにより駆動されるときに、各シリンダの壁と各ピストン本体の外側周辺部との間で強制される高圧流体の部分により、潤滑される。このようなブローバイは、シリンダの壁とピストンの長い円筒状部分との間の十分な流体の流れを許容する公差がある場合にのみ、良好な潤滑を提供し、良好な潤滑を保証するのに十分なブローバイはしばしばポンプ又はモータ機械の容積効果に悪影響を与える。例えば、10立方インチの機械はブローバイのために毎分4ガロンもの多くの流体を使用することがある。ブローバイを減少させるために一層小さな公差をしばしば使用することができるが、このような公差の減少は機械の圧力及び労働負荷のサイズと共に増大する十分な潤滑の要求により制限される。もちろん、このようなブローバイは、仕事を達成すべくピストンを駆動するか又はピストンにより駆動されるために使用される流体を使用することにより、達成される。それ故、すぐ前で説明した例においては、ブローバイ潤滑のために使用される毎分4ガロンの流体は機械の容積効率を減少させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以下に説明する本発明は、同時にピストンの適当な潤滑、及び、ピストンと斜板との間の接触を維持するために使用される装置の簡単化を保証しながら、このような細長いピストン式の機械の容積効率を改善することに、向けられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
モジュラートランスミッションは、その中でピストンを往復運動させるそれぞれのシリンダの軸方向長さと実質上同じ長さの本体部分を備えたピストンを有する、顕著に改善された容積効率のたった一対の小型で軽量の液圧機械を使用する。2つの液圧機械は閉ループとなって作動し、一方は車両のエンジンにより駆動されるポンプとして使用され、他方はモータとして使用される。各機械は完全に関節運動する斜板を有する。コンピュータ制御により、2つの機械の斜板の角度は、始動から、市街運転、負荷及び急峻度に応じて変化する登坂及び高速道路のためのオーバードライブまでのすべての状態に対してエンジン/車輪速度の適切で最適な比率を提供するように無限的に変化する。この完全な車両作動は、車両のエンジンが比較的一定の速度及び比較的低いRPMで作動を続ける間、達成される。
【0016】
液圧機械の種々の実施の形態を使用してモジュラートランスミッションを説明するが、これらの実施の形態のすべては、固定のシリンダブロック内で往復運動する細長いピストン、ユニークな潤滑くぼみを備えたシリンダ及び(ドッグボーン無しで)各ピストンに直接取り付けられ、回転及び転頭運動を行う斜板に又は好ましくは分割型斜板の転頭運動のみを行う揺動体に摺動接触するシューを含む、簡単な構造上の特徴の新規な組み合わせを共有する。試験の結果、このような簡単な構造上の特徴は顕著に増大した容積効率、及び
機械を完全に組立てたときに12立方インチほどの大きな能力の機械の駆動シャフトさえ手動で容易に旋回させることのできるこのような増大した機械的な効率を相乗的にもたらすことが証明された。各開示された機械はポンプ又はモータとして作動できる。
【0017】
このような固定シリンダブロック式の液圧機械は同様の仕様を有する従来の回転ブロック式の液圧機械よりも一層小型かつ軽量に製造することができる。その細長いピストンの改善された潤滑により、無限可変自動トランスミッションとしての自動車での使用に必要な高速/高圧仕様を満たすようにこのような小型で軽量の液圧機械を使用することができる。
【0018】
各機械は完全に関節運動できる斜板を有し、コンピュータプログラムにより、2つの機械の斜板の角度は、始動から、市街運転、負荷及び急峻度に応じて変化する登坂及び高速道路のためのオーバードライブまでのすべての状態に対して無限可変歯車比の等価物を提供するためにエンジン/車輪速度の適切で最適な比率を提供するように無限的に変化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
最初に、本発明の次の重要な特徴を説明する:
同時に燃料の現在の世界的な割り当て量における重大な障害を生じさせるような変更を必要とせずに、オイルの保存のための世界的な要求を満たすため、本発明は既知の及び試験された液圧及び電子素子を使用する全液圧式の歯車無し無限可変トランスミッションを提供する。
【0020】
本発明のトランスミッションの液圧装置が極めて低いエンジンRPM(回転数)で作業トルクを提供するので、車両の元来のトルクコンバータトランスミッションの代わりに本発明を組み込んだガソリンエンジン車両は一層低いエンジン速度で作動する。この特徴が得られるのは、静止のシリンダブロック、及び、好ましくは−25°から+25°までの幅広い連続的な角度にわたって変化する回転斜板を有する液圧機械を使用することにより達成される顕著な効率のためである。
【0021】
本発明のトランスミッションは、速度の減少を伴わずに、ガソリン動力車両のエンジンに直接結合される。本発明のトランスミッションは車両の既存のトランスミッションと完全に交換し、同じ空間内に取り付けられるが、元来のトランスミッションよりも実質上小さな容積及び重量を有する。車両のエンジンと本発明との間にクラッチ又はトルクコンバータは必要ではなく、これは「閉ループ」液圧流れとして接続されたポンプ及びモータとしてそれぞれ作動する2つの液圧機械を含む。車両のエンジンにより直接駆動されるポンプは液圧流体の斜板制御流れを生じさせ、この流れは付随するモータ内へ直接送られる。モータは車両の車輪のための駆動シャフトに直接結合され、そのそれぞれの斜板を選択的に位置決めすることにより、駆動車輪抵抗トルクに応答して運転手により要求されるトルクを生じさせる。
【0022】
すなわち、本発明のトランスミッションは、自動車が運転手の入力に応答する方法を基本的に変更する。手動又は自動減速トランスミッションのいずれかを備えた自動車においては、運転手がガスペダルを押すことにより加速を要求したとき、エンジンの速度を増大させることにより車輪駆動シャフトへの動力が増大する。加速を続けると、エンジンがある高速に達したとき、トランスミッションは、自動的に又は運転手の入力によりクラッチを介して、一層大きな歯車比にシフトし、エンジン速度は低下する。本発明の歯車無しトランスミッションでは、運転手がガスペダルを押すことにより加速を要求したとき、トランスミッション内の斜板比を変更することにより動力が増大し、エンジン速度は比較的一定に維持される。加速を続けると、斜板比がある値に達したときにのみ、エンジン速度は新たな僅かに一層高いレベルに増大し、必要な付加的な動力を提供する。
【0023】
トランスミッションの電子制御は著しく単純である。エンジン速度及び出力駆動シャフト速度は、燃料消費及び運転手のスロットル及びブレーキ表示と一緒に監視され、制御される変数は液圧ポンプ/モータにおける斜板の角度のみ及び希にはエンジン回転数である。
【0024】
本発明のプロトタイプでは、液圧トランスミッションは、860RPMのエンジン速度を維持しながら、動力計でシミュレーションした平坦な路面上で、自動車を30MPHに迅速に加速するのに十分な動力をスポーツ実用車両(重量5575ポンド)の車輪駆動シャフトに提供した。この予備的な試験では、25:1ないし0.67:1超の無限可変トランスミッション比を通して車両を作動させた。自動車が一層高い速度に加速すると、エンジンが一定の速度で維持され、燃料効率を改善する時間を最大にするために、エンジン速度の漸進的な段階的増大が可能となる。プロトタイプの液圧トランスミッションは、2200RPMを越えるまでエンジン速度を増大させることなく、自動車を高速道路速度に加速するのに十分な動力を提供できた。また、本発明のトランスミッションは始動して、2RPM(即ち毎分ほんの16フィート(約4.8m)の速度)で安定した車両速度を維持でき、これは容積式流量計により測定したようなそのような加速中に50%の燃料消費の減少を伴って10MPH/秒より大きなピークを持つ加速率を達成した。更に、車両のブレーキを使用せずに車両を完全に停止させるために、満足できる減速は20MPH/秒で達成された。
【0025】
本発明のトランスミッションはエンジン速度に対する最小の変化で駆動シャフトの速度を変化させることができる。従って、本発明は、エンジン速度を、最近提案されたHCCIエンジンにおける燃焼を一生容易に制御できると予測されるような比較的狭い低ないし適度(中)レンジに維持するのを許容する。本発明のトランスミッションはガソリン動力車両での一層燃費の少ないHCCIエンジンの履行と大いに両立できる。
【0026】
更に、本発明は証明されている一層低速/一層高トルクのエンジンへ戻ることのできる自動車産業の可能性を切り開き、一層軽量で一層安価なエンジンで一層大きな効率改善さえ達成できるようにする。
【0027】
本発明のトランスミッションの液圧部分を生じさせるために使用できる形式の液圧機械の作動は周知であるが、次に、好ましい対のそのような液圧機械をある程度詳細に説明する。上述のように、各開示された機械は適当に組み合わされたポンプ又はモータにより周知の「閉ループ」液圧システムに接続されることが考えられる。本発明のトランスミッションにおける両方の液圧機械は好ましくは構造上同一であり、一方はポンプとして使用され、他方はモータとして使用される。
【0028】
好ましい実施の形態においては、本発明のトランスミッションは燃費を改善するようにアキュムレータと組み合わせて使用される。
長ピストン液圧機械
図1を参照すると、可変液圧機械110はモジュラー式の固定シリンダブロック112を有する。シリンダブロック112は複数のシリンダ114(1つのみを示す)を有し、その中で、対応する複数の適合するピストン116はピストン116の引き戻された位置と可変の伸長位置(最大の伸長はピストン116´の位置として示す)との間で往復運動する。各ピストンは各それぞれのシリンダ114の長さと実質上同じ長さの細長い軸方向の円筒状本体部分122の端部におけるネック部120に装着された球状ヘッド118を有する。各球状のピストンヘッド118はロータ128の表面に形成された平坦な面126上で摺動するそれぞれのシュー124内に嵌合し、ロータはシリンダブロック112の中心におけるボア内で軸受により支持された駆動素子即ちシャフト130に枢着される。
【0029】
液圧機械110はモジュラー弁組立体133を具備し、この組立体はモジュラーシリンダブロック112の左端にキャップとしてボルト止めされ、シリンダ114に対しての流体の出入り送給を規制する複数のスプール弁134(1つのみを示す)を有する。
【0030】
機械110はポンプ又はモータとして作動できる。モータとしての作動に対しては、駆動シャフト130の各1回転の第1の半分中、入口136からの高圧流体はポート137を通して各それぞれのシリンダ114の弁端部へ入り、各それぞれのピストンをその引き戻し位置からその完全に伸長した位置へ駆動する。各1回転の第2の半分中、各ピストンがその完全に引き戻された位置へ戻るときに、低圧流体はポート137及び流体出口139を通って各それぞれのシリンダから戻される。
【0031】
ポンプとしての作動に対しては、駆動シャフト130の各1回転の半分中、各ピストン116が伸長位置へ移動するときに、低圧流体は入口136を通して循環液圧流体の「閉ループ」からポート137へ入り、各それぞれのシリンダ114内へ引き戻される。各1回転の次の半分中、その完全に引き戻された位置へ戻る各それぞれのピストン116の駆動が、出口139を通してポート137から液圧閉ループ内へ高圧流体を導く。次いで、高圧流体は適当な閉ループパイプ(図示せず)を通して上述の適合する液圧機械例えば液圧機械110へ送給され、適合する機械のピストンを、当業界で周知の方法で送給される高圧流体の容積(毎分ガロン)に応じて変化する速度で移動させる。
【0032】
モジュラーシリンダブロック112における各シリンダ114の円筒状の壁はその中で円周方向に形成されたそれぞれの潤滑チャンネル140により半径方向で横断される。複数の通路142はシリンダブロック112内に連続的な潤滑経路を形成するようにすべての潤滑チャンネル140を相互接続する。
【0033】
各それぞれの潤滑チャンネル140は各ピストンの全ストローク中各それぞれのピストン116の軸方向の円筒状本体122により実質上閉じられる。すなわち、各円筒状本体122の外側周辺部は各それぞれの潤滑チャンネル140を常に囲む壁として作用する。従って、ピストン116が最大ストロークにわたって往復運動しているときさえ、すべての潤滑チャンネル140を相互接続する連続的な潤滑通路は実質上閉じたままである。連続的な潤滑通路140、142はシリンダブロック112内で簡単かつ経済的に形成される。
【0034】
液圧機械110の作動中、すべての相互接続された潤滑チャンネル140は、ポート137を通して各シリンダ114へ入りシリンダの壁と各ピストン116の外側周辺部との間で強制送給される、入口136からの高圧流体の最小流れによりほぼ瞬間的に満たされる。各潤滑チャンネル140からの潤滑流体の損失は各シリンダ114の開いた端部の近傍に位置する取り巻きシール144により制限される。それにも拘らず、潤滑チャンネル140のこの閉じた連続的な潤滑通路内の潤滑流体は、ピストン往復運動時のピストンの運動及び駆動シャフト130の回転の各半サイクルにおける変化する圧力に応答しての各シリンダの各それぞれの円筒状の壁と各それぞれのピストンの軸方向の円筒状本体との間の流体の連続的な最小流れの結果、適度ではあるが連続的に流れる。各シリンダ114内の圧力が各ピストン116の帰還ストロークにおいて低圧へ減少すると、閉じた潤滑通路140、142内の高圧流体は各シリンダ114の壁と各ピストン116の本体部分122の外側周辺部との間で再度駆動されて、このような圧力減少を体験している各シリンダ114の弁端部へ入る。
【0035】
閉じた連続的な潤滑通路140、142内の潤滑流体の流れは適度のものであるが、ピストンの運動及び、ピストンの往復運動時の駆動シャフト130の回転の各半サイクルにおいて変化する圧力に応答した補助的な最小流体流れの結果、連続的となる。
【0036】
ポンプ110のロータ128は軸線132に垂直な軸線129のまわりで駆動シャフト130に枢着される。それ故、ロータ128が駆動シャフト130と一緒に回転している間、軸線130に関するその傾斜角度は好ましくは0°(即ち垂直)から±25°まで変化できる。図1においては、ロータ128は+25°で傾斜している。この可変の傾斜は次のように制御される:軸線129のまわりでのロータ128の枢動が、駆動シャフト130を取り囲みこれに関して軸方向に移動できる摺動カラー180の位置により決定される。制御リンク182は、駆動シャフト130の表面上でのカラー180の軸方向の運動が軸線129のまわりでロータ128を枢動させるように、カラー180をロータ128に接続する。例えば、カラー180が図1で右に移動すると、ロータ128の傾斜は、図示の+25°の傾斜から0°(即ち垂直)に戻り、次いで−25°まで、連続的に全体にわたって変化する。
【0037】
カラー180の軸方向の運動は、ヨーク186がヨーク制御アーム188の関節運動によりヨークシャフト190の軸線のまわりで回転するときに、ヨーク186のフィンガ184により制御される。ヨーク186はヨークアーム188の底部に接続された普通のリニアサーボ機構(図示せず)により作動される。ヨーク186の残りの素子はすべてモジュラー斜板ハウジング192内に収容され、ヨークシャフト190はハウジング192に固定された軸受内で支持されるが、ヨーク制御アーム188はハウジング192の外部に位置する。斜板ロータ128は、制御リンク182と実質上同じであってカラー180に同様に接続されるがカラー180の全く反対側の位置にあるシャドウリンク194により、平衡される。
【0038】
図1及び図2の双方を参照すると、各シリンダ114の円筒状の壁はその中で円周方向に形成されたそれぞれの潤滑チャンネル140により半径方向で横断される。複数の通路142はシリンダブロック112内に連続的な潤滑通路を形成するようにすべての潤滑チャンネル140を相互接続する。各それぞれの潤滑チャンネル140は、各ピストンの全ストローク中、各それぞれのピストン116の軸方向の円筒状本体122により実質上閉じられる。すなわち、各円筒状本体122の外側周辺部は各それぞれの潤滑チャンネル140を常に包囲する壁として作用する。従って、ピストン116が最大ストロークにわたって往復運動する場合でさえ、すべての潤滑チャンネル140を相互接続する連続的な潤滑通路は実質上閉じた状態を維持する。連続的な潤滑通路140、142は、流体チャンネル及び接続通路の相対寸法を明瞭のために誇張して示した図2の概略図から最良に認識できるように、シリンダブロック112内に簡単かつ安価に製造される。
【0039】
液圧機械110の作動中、すべての相互接続された潤滑チャンネル140は、ポート137を通って各シリンダ114に入りかつシリンダの壁と各ピストン116の外側周辺部との間で強制される、入口136からの高圧流体の最小の流れによりほぼ瞬時に満たされる。各潤滑チャンネル140からの潤滑流体の損失は各シリンダ114の開いた端部の近傍に位置する取り巻きシール144により制限される。それにも拘らず、潤滑チャンネル140のこの閉じた連続的な潤滑通路内の潤滑流体は適度に流れるが、ピストンの運動及び、ピストンの往復運動時の駆動シャフト130の回転の各半サイクルにおいて変化する圧力に応答した、各シリンダのそれぞれの円筒状の壁の各々と各それぞれのピストンの軸方向の円筒状本体との間の流体の連続的な最小流れの結果、連続的に流れる。各シリンダ114内の圧力が各ピストン116の帰還ストローク時に低圧へ減少すると、閉じた潤滑通路140、142内の高圧流体は各シリンダ114の壁と各ピストン116の本体部分122の外側周辺部との間で駆動されて、このような圧力減少を体験している各シリンダ114の弁端部へ入る。
【0040】
図3A、3Bを参照すると、液圧機械のための押さえ組立体は複数の円形開口160を備えた押さえ素子154を有し、各開口はそれぞれのピストン116のネック部120を取り囲む。斜板は図3A、3Bにおいては+25°の角度にある。図3Aはロータ128のシャフトを見下ろした斜視図からの又は図1の面3A−3Aからの押さえ板154を示す。複数の特殊なワッシャ156はそれぞれ押さえ素子154と各ピストンシュー124との間に位置する。各ワッシャ156はシューをロータ128の平坦な面126に常に接触維持させるようにそれぞれのシュー124の外側周辺部に接触する延長部158を有する。各それぞれのシュー空洞は適当なシューチャンネル162及びピストンチャンネル164を介して接続され、シュー/ロータの対面に存在する流体圧力が各ピストン116のヘッドにおける流体圧力と常に等価になることを保証する。
【0041】
流体圧力はロータ128の方向にピストン116を絶えず偏倚し、その負荷を支えるために図示のスラスト板組立体を設ける。しかし、自動車用途に必要な作動速度(例えば4000rpm)においては、ピストンシュー124とロータ128の平坦な面126との間の常時の接触を保証するために、付加的な偏倚負荷が必要になる。可変液圧機械は3つの簡単なバネ偏倚押さえ組立体の1つを使用することによりこのような付加的な偏倚を提供する。
【0042】
液圧機械110のための第1の押さえ組立体は、シャフト130のまわりに位置し、軸線132のまわりで円周方向にシリンダブロック112内に形成された適当な裂け目152内に受け入れられたコイルバネ150を有する。コイルバネ150は、これまたシャフト130及び軸線132のまわりで円周方向に位置する押さえ素子154を偏倚する。押さえ素子154は複数の円形開口160を具備し、各開口はそれぞれのピストン116のネック部120を取り囲む。複数の特殊なワッシャ156はそれぞれ押さえ素子154と各ピストンシュー124との間に位置する。各ワッシャ156はシューをロータ128の平坦な面126に常に接触維持させるようにそれぞれのシュー124の外側周辺部に接触する延長部158を有する。
【0043】
ロータ128の傾斜が機械の作動中に変化したとき、斜板及びピストンシュー押さえ組立体の位置は互いに関して変化する。0°の傾斜でのこれらの部品の相対位置を参照すると、各ピストンチャンネル164は押さえ素子154の各それぞれの円形開口160に関して同じ半径方向の位置を有する。0°以外のすべての傾斜においては、各ピストンチャンネル164の相対的な半径方向位置は各開口160に対して異なり、各特殊なワッシャ156の相対位置も異なる。9個の開口160の各々における異なった相対位置は、ロータ128が各傾斜において完全な1回転にわたって回転及び転頭運動を行うときに、それ自体絶えず変化する。例えば、図3Aに示す25°の傾斜において、ロータ128の各1回転中に、押さえ素子154の頂部(即ち12時位置)での開口160のみを通して生じる運動を観察した場合、頂部開口160内で見える部品の相対位置は他の8個の開口160の各々内で見える相対位置と適合するように連続的に変化する。
【0044】
0°以外の傾斜においては、ロータ128の各1回転中、同時に各シュー124がロータ128の平坦な面126上をスリップするときに、各特殊なワッシャ156は押さえ素子154の表面上でスリップする。これらの部品の各々は他の8個の開口160の各々において見ることのできる種々の位置の各々にわたってそれ自身の開口160に関して変化する。各々は斜板ロータ128の角度傾斜及び固定のシリンダブロック112内の各ピストン116の水平位置に従って寸法を変化させる(レムニスケート即ち「8の字」を辿ると思われる)周期的な経路を追従する。各それぞれのシュー124とロータ128の平坦な表面126との間の適正な接触を保証するため、寸法は好ましくは、開口160の縁がロータ128のすべての傾斜に対して各1回転中各特殊なワッシャ156の表面の半分以上と常に接触維持するように、各開口160の境界に対して選択される。
【0045】
第2の押さえ組立体は、液圧機械210の単一のピストンの拡大部分断面図として図4に概略的に示す。各ピストン216はモジュラー固定シリンダブロック212においてシリンダ214内に位置し、シリンダはその中で円周方向に形成されたそれぞれの潤滑チャンネル240により半径方向で横断される。既に詳述した他の液圧機械に関して説明したような方法と同じ方法で、各潤滑チャンネル240はシリンダブロック212内に連続的な潤滑通路を形成するように機械の他のシリンダ内の同様のチャンネルと相互接続する。各潤滑チャンネル240からの潤滑流体の損失を更に最少にするために、随意の取り巻きシール244を各シリンダ214の開いた端部の近傍に配置することができる。
【0046】
固定シリンダブロック212は大きな軸方向における円周方向のコイルバネも、これを保持するための軸方向における円周方向の裂け目をも有しない。液圧機械210のモジュラー固定シリンダブロック212はモジュラー固定角度斜板組立体又はモジュラー可変角度斜板組立体のいずれかに接続することができるが、いずれの場合も、液圧機械210は一層簡単な押さえ組立体を提供する。すなわち、この実施の形態の押さえ組立体はそれぞれのコイルバネ250のみと組み合わせた各ピストン216のためのそれぞれの普通のピストンシュー224のみを有し、コイルバネはまた各それぞれのピストン216に関連する。
【0047】
各ピストンシュー224は第1の押さえ組立体における普通のシューと同様であり、機械の斜板ロータ228の表面に形成された平坦な面226上で摺動するようにピストン216の球状ヘッド218上に装着される。各コイルバネ250はそれぞれ各それぞれのシリンダ214の弁端部における液圧弁ポート237のまわりにおいて円周方向で着座し、各それぞれのピストン216の本体部分内に位置する。
【0048】
各シュー224は、各ピストン216の水平位置及び軸線232に関するロータ228の傾斜に応じて寸法を変化させるレムニスケート運動で、ロータ228の平坦な面226上でスリップする。液圧機械210の通常の作動中、シュー224は液圧圧力により斜板の平坦な面226に接触維持される。それ故、コイルバネ250により提供されるバネ偏倚は最小となるが、各それぞれのシリンダ214の弁端部での液圧圧力が存在しない場合でも各シュー224と平坦な面226との間の有効な摺動接触を維持するのに十分なものとなる。バネ250の最小偏倚は組立てを容易にするのみならず、組立て中に生じ、磨耗により発生する小さなほこりや金属屑の滞留をも阻止する。
【0049】
図5を参照すると、液圧機械310のための第3の押さえ組立体は改善された普通の分割型斜板構成を有する。それぞれの摺動シュー324を有する複数のピストン316はシリンダブロック112と同じシリンダブロック312に形成されたそれぞれのシリンダ314内で往復運動する。各シュー324は揺動体327に形成された平坦な面326上で摺動し、この揺動体は、ロータ328が当業界において周知の方法で回転及び転頭運動の双方を行う間に揺動体327が回転せずに転頭運動できるようにする適当な軸受372、374により対応するロータ328に装着される。軸線329のまわりでの揺動体327及びロータ328の傾斜は摺動カラー380、制御リンク382及び平衡シャドウリンク394の位置により制御される。
【0050】
シュー324は第1の押さえ組立体と実質上同じ押さえ組立体により押さえられるが、大きな単一のコイルバネ150の代わりに、複数の小さな個々のコイルバネを使用する。
押さえ板354は揺動体327に固定される。各シュー324はそれぞれの特殊なワッシャ356の円周方向の延長部を受け入れ、各ピストン316のネック部は押さえ板354を通って形成された対応する複数のそれぞれの開口360の1つ内に位置する。揺動体327がロータ328と一緒に回転しないので、揺動体327の転頭運動はロータ328の転頭運動と同一となり、それ故、シュー324と揺動体327の平坦な表面326との間の相対運動も第1の押さえ組立体における相対運動と同一となる。
【0051】
複数の個々のコイルバネ350は、各シリンダ314の弁端部において液圧圧力が存在しない場合に、各シュー324と揺動体327の平坦な面326との間の有効な摺動接触を維持するための最小のバネ偏倚を提供する。各コイルバネ350は各シュー324のまわりで円周方向に位置し、各特殊なワッシャ456と各シュー324の底部のすぐ上に形成されたカラーとの間で捕捉される。
【0052】
図6を参照すると、モータ又はポンプであっても、各液圧機械は好ましくは、周知の「閉ループ」構成として、対応するポンプ又はモータである別の液圧機械と対をなす。たとえば、液圧機械110の出口139から出る高圧流体は対応する液圧機械110´の入力136´に直接送給され、一方、液圧機械110´の出口139´から出る低圧流体は対応する液圧機械110の入力136に直接送給される。液圧機械110及び液圧機械110´は、液圧機械110がポンプとして使用され、液圧機械110´がモータとして使用される点を除いて、構造上同一とすることができる。この閉ループシステム内の流体の一部は「ブローバイ」のため連続的に失われ、サンプに収集され、流体は閉ループ内で所定の容積の流体を常に維持するためにサンプから閉ループへ戻るように自動的に送給される。
液圧トランスミッション
1つの実施の形態では、二重液圧機械は図7Aに示すように縦に接続して配置され、別の実施の形態では、二重液圧機械は図7Bに示すように並置接続して配置される。縦接続の実施の形態においては、ポンプ400はポンプシリンダブロック406内の長いピストンを駆動するポンプ斜板404を駆動するポンプシャフト402を有する。液圧回路408はポンプ400をモータ410に接続する。液圧回路408はポンプシリンダブロック406とモータシリンダブロック412との間の流体連通を提供する。ポンプ400からの加圧液圧流体はモータピストンを駆動し、モータピストンはモータ斜板414を駆動して、モータ駆動シャフト416を旋回させる。並置接続の実施の形態においては、液圧回路418は互いに隣り合った2つのシリンダブロック406、412を接続するように再形状づけられる。この実施の形態においては、ポンプ400及びモータ410はポンプ/モータユニットに安定性を提供するためにその共通の側部に沿って構造的に接続することができる。
【0053】
縦接続の構成は一層簡単で一層軽量であり、ポンプをモータに接続するのに一層少数の部品を必要とするが、並置接続の構成は長さが著しく短い。縦接続の12立方インチのプロトタイプは25インチの長さ、10インチの直径及び150ポンドの重量を有する。並置接続の12立方インチのプロトタイプは17インチの長さ及び20インチの幅を有する。両方のプロトタイプは完全ポンプスワッシュにおいて1回転当り12立方インチの加圧液体をポンピングする。両方のプロトタイプは、熱によりエネルギが殆ど失われないという点で有効である。作動全体にわたって、シリンダブロックは従来の液圧機械と比較して冷えた状態を維持する。両方のプロトタイプは同様に作動中かなり静かである。
【0054】
前述のように、トランスミッションの電子制御は著しく簡単である。エンジン速度、作業流体圧力及び出力駆動シャフト速度は燃料消費並びに運転手のスロットル及びブレーキ表示と共に監視され、制御される変数はエンジンのRPM並びに液圧ポンプ及び液圧モータにおける斜板の角度のみである。更に、高速道路速度に達した後、モータ斜板は1:1ないし0.5:1の連続可変オーバードライブを提供するように変化する。
【0055】
本発明の実施の形態においては、液圧トランスミッションはモジュラーである。ここで使用するような「モジュラー」という用語は現在使われているか又は設計された車両の既存のトランスミッションと交換するために「そのまま」使用できるユニットを述べることを特に意図する。本発明に係るモジュラートランスミッションは、現在のガソリンエンジン車両が同様の寸法のディーゼルエンジン車両により達成できる燃料効率に比べて増大した燃料効率を伴って作動できるのを可能にする。
【0056】
図8Aは前輪タイヤ405a、405b間で後輪タイヤ405c、405dの前方に位置する「イースト/ウエスト」エンジン401を示す、前輪駆動自動車の比較的一定の縮尺とした概略図である。車両のトランスミッションは取り外され、図7Aに示す本発明の縦接続のモジュールの実施の形態と交換されており、すなわち、液圧ポンプ400は液圧回路408を介して液圧モータ410に接続されている。このモジュールはエンジン401に関する1つの可能な位置において示され、ポンプシャフト402はベルト411によりエンジン401の補助的素子駆動シャフト403aに接続される。接続機構424はモータ駆動シャフト416からの液圧モジュールの出力を前輪駆動シャフト422に接続する。
【0057】
好ましくは、出力は車両の元来のトランスミッションの出力を受け取っていた同じ機構を介して車両の前輪に接続される。1つの実施の形態においては、接続機構424は前輪駆動シャフト422に対する単なるモータ出力シャフト416の機械的なカップリングである。別の実施の形態においては、接続機構424は前輪駆動シャフト422に動力を提供するためにエンジン出力403bを備えた機械的に組み合わされたモータ出力416を有する。両方の実施の形態において、車輪駆動シャフト422に供給される動力は液圧モジュールの出力を変更するように液圧設定を変更することにより、主として変更される。両方の実施の形態においては、車輪駆動シャフト422に供給される動力はエンジン401の速度を変更することにより二次的に変更することができる。第2の実施の形態においては、接続機構424は、モータシャフト416からの動力出力をエンジン駆動シャフト403bからの出力と組み合わせるための単一のオービターを有することができる。
【0058】
図8Bは前輪タイヤ405a、405b間に位置する「ノース/サウス」エンジン401aを示す、後輪駆動自動車の比較的一定の縮尺とした概略図である。車両のトランスミッションは取り外されて、図7Aに示す本発明の縦接続のモジュールの実施の形態と交換されており、すなわち、液圧ポンプ400は液圧回路408を介して液圧モータ410に接続されている。このモジュールはエンジン401に関する1つの可能な位置において示され、ポンプシャフト402はベルト411によりエンジン401の補助的素子駆動シャフト403aに接続される。接続機構428はモータ駆動シャフト416からの液圧モジュールの出力を後輪駆動シャフト426に接続する。
【0059】
好ましくは、出力は車両の元来のトランスミッションの出力を受け取っていた同じ機構を介して車両の後輪に接続される。1つの実施の形態においては、接続機構428は後輪駆動シャフト426に対する単なるモータ出力シャフト416の機械的なカップリングである。別の実施の形態においては、接続機構428は後輪駆動シャフト426に動力を提供するためにエンジン出力403bを備えた機械的に組み合わされたモータ出力416を有する。両方の実施の形態において、車輪駆動シャフト426に供給される動力は液圧モジュールの出力を変更するように液圧設定を変更することにより、主として変更される。両方の実施の形態においては、車輪駆動シャフト426に供給される動力はエンジン401の速度を変更することにより二次的に変更することができる。第2の実施の形態においては、接続機構428は、モータシャフト416からの動力出力をエンジン駆動シャフト403bからの出力と組み合わせるための単一のオービターを有することができる。
【0060】
同様に、図9A、9Bは車両の前輪タイヤ405c、405d間に位置する従来の「ノース/サウス」エンジン401aを示す、従来の後輪駆動自動車の比較的一定の縮尺とした概略頂面図及び概略端面図である。これまた、車両のトランスミッションは取り外されて交換されているが、この例では、図7Bに示す本発明の並置接続のモジュラーの実施の形態である。液圧ポンプ400はモジュールの後部において液圧回路408を介して液圧モータ410に依然として接続されるが、モジュールの前部は装着板419を備えた接続箱407を含む。モジュールはエンジン401aの後部においてはずみ車ケーシング409にボルト止めされる。液圧ポンプ400のポンプシャフトは普通の手段(図示せず)によりエンジン401aの主要な駆動シャフトに接続され、液圧モジュールの出力はまた接続箱407内の普通の手段(図示せず)により出力シャフト417に接続され、この出力シャフトは車両の元来のトランスミッションの出力を受け取っていた同じ機構を介して車両の車輪に接続する。第2の実施の形態においては、接続箱407はモータシャフト402(図7B)からの動力出力をエンジン駆動シャフトからの出力に組み合わせるための単一のオービターを有することができる。
【0061】
車両の作動
車両のエンジンの作動は、車両のシフトレバーが「駐車」の状態で、普通の方法により開始される。(注:車両のシフトレバーは「駆動モードセレクタ」として以後参照する。)エンジンが例えばほぼ750RPMのアイドリングで通常運転しており、車両が依然として「駐車P」状態にあるとき、トランスミッション及びそのコンピュータコントローラはスタンバイモードにある。エンジンはガスペダルの作動によりニュートラルで空転することができる。駆動モードセレクタが「駐車P」から移動した直後に、コンピュータコントローラは次のリアルタイム入力に基づきエンジン速度及び車両速度の双方の制御を開始する:
a)駆動モードセレクタの位置
b)アクセルペダルの位置
c)ブレーキペダルの位置
d)エンジン出力シャフト速度及び車輪駆動シャフト速度に基づく車両速度
e)エンジンへの燃料流量
f)ポンプ/モータの斜板の位置
g)液圧回路圧力。
【0062】
コンピュータコントローラは次の素子対してリアルタイム出力を生じさせるようにこれらの入力を使用する:
a)ポンプ/モータの高圧液圧安全弁
b)ポンプ/モータの斜板サーボ位置弁
c)最適なエンジン速度に調整するためのエンジンスロットル。
【0063】
コンピュータコントローラと自動車の種々の素子との間の通信は図10に概略的に示す。車両のエンジンがオンしたときにはいつでも、コンピュータコントローラ450は運転手からの入力即ち駆動モードセレクタ452の位置、ブレーキペダル454の位置及びガスペダル456の位置を連続的に監視する。コンピュータコントローラはまた駆動シャフト458の速度を変更させる調整が必要か否かを決定するためにエンジン駆動シャフト458の速度を監視する。運転手の入力452、454、456が駆動シャフト速度458の所望の変化を表示したとき、コンピュータコントローラは(a)エンジン速度の間接的な尺度としてのエンジン460への燃料の流量、(b)ポンプ及びモータにおける液圧圧力462の値、(c)ポンプ斜板464aの位置及び(d)モータ斜板464bの位置を決定する。
【0064】
次いで、コンピュータコントローラ450は駆動シャフト速度458の所望の変化を最も有効に達成するために所定のアルゴリズムを使用する。これは次の変更のうちの1又はそれ以上を行うことにより達成される:コンピュータコントローラ450はエンジン460への燃料の流量を変更するためにエンジンスロットル466を調整することができ及び(又は)ポンプ及びモータ斜板464a、464bの一方又は双方の位置を調整するために斜板サーボ弁470を調整することができる。
【0065】
本発明のトランスミッションを組み込んだ車両は好ましくは次の特徴を有する:
1.駆動モードセレクタが「駐車P」から「ドライブD」又は「ニュートラルN」へ移動するが、ブレーキが依然として適用されているとき、システムはポンプ斜板を0°位置に維持することにより閉ループシステム内での液圧圧力のいかなる形成をも回避する。
【0066】
2.駆動モードセレクタが「駐車P」から「ドライブD」又は「ニュートラルN」へ移動し、圧力がブレーキペダルから除去されたとき、ポンプ斜板は依然として0°で維持され、モータ斜板は+25°で維持される。ポンプ斜板が0°で維持される限り、閉ループ内のすべての流体は「不流れ」状態を維持する。これは車輪駆動シャフトを「係止」位置に維持し、「丘保持」(hill holding)特性を提供する。車両が極端な上り坂又は下り坂状態になった場合、車両は係止された後輪駆動シャフトにも拘らず重力により移動し、ポンプ斜板は0MPHの車両速度を維持するために+方向又は−方向において流体の流れを僅かに増大させるように指令される。
【0067】
3.駆動モードセレクタが「ドライブD」状態にあり、ブレーキが適用されていないとき、アクセルが押されている限り、牽引抵抗トルクに打ち勝つのに必要なもの以上の液圧圧力/トルクを必要とし、ポンプ斜板の角度は+方向へと着実に増大し、流体をモータへ移動させ、その回転及び車両駆動シャフトの回転を増大させ、車両を加速する。このような状態の下では、液圧圧力/トルクが地面上での車両の車輪の牽引抵抗トルクに等しくなるまで、車両は加速し続ける。アクセル上の圧力が減少した場合、一層低い圧力設定点が必要となり、ポンプ斜板の角度は、設定点に達するまで車両の加速を低下させるように減少する。
【0068】
本発明のトランスミッションは基本的に、自動車が運転手の入力に応答する方法を変更する。標準の又は自動歯車トランスミッションを備えた自動車においては、運転手がアクセルを押すことにより加速を要求したとき、エンジン速度を増大させることにより車輪駆動シャフトへの動力が増大する。加速を続けた場合、エンジンがある高速度に達したときに、トランスミッションは運転手の入力により自動的に又はクラッチを介して一層高い歯車へとシフトし、エンジン速度が低下する。本発明の歯車無しトランスミッションを備えた自動車においては、運転手がガスペダルを押すことにより加速を要求したとき、トランスミッション内の斜板比を変更することにより動力が増大し、エンジン速度は一定に維持される。加速を続けた場合、斜板比がある値に達したときにのみ、エンジン速度は一層の動力を提供するように増大する。
【0069】
本発明のトランスミッションの液圧手段が極めて低いエンジンRPMで作業トルクを提供するので、車両の元来のトルクコンバータトランスミッションの代わりに本発明を組み込んだガソリンエンジン車両は一層低いエンジン速度で作動する。この特徴は、静止のシリンダブロック及び少なくとも−25°ないし+25°の好ましい連続にわたって変化する回転斜板を有する液圧機械を使用することにより達成される顕著な効率のためである。
【0070】
本発明のトランスミッションはエンジン速度の最小の変化で駆動シャフトの速度を変更することができる。従って、本発明は比較的狭い低ないし適度(中程度)レンジ内にエンジン速度を維持させることができ、この場合、HCCIエンジンにおける燃焼を一層容易に制御できる。本発明のトランスミッションはガソリン動力車両の一層の燃料効率のHCCIエンジンの履行と大いに両立できる。
【0071】
本発明のポンプ/モータは好ましくは「ドッグボーン」を使用しない。これらは好ましくは、好ましくは毎分1ガロン以下である最小「ブローバイ」を有する。これらは好ましくは「閉ループ」として接続される。ポンプ/モータは好ましくは伝統的な分割型斜板を有し、この斜板は転頭運動/回転を行うロータ部材上で転頭運動のみを行う揺動体部分を支持するための軸受を付加することにより修正される。本発明の1つの実施の形態においては、これらの軸受はニードル軸受である。これらは好ましくは機械的な弁システムを有する。各ポンプ/モータは好ましくは複数のバネにより偏倚された押さえ板を有し、各バネはそれぞれ各ピストンのヘッドに関連する摺動シューのまわりで円周方向に位置する。分割型斜板と押さえ素子とのこの組み合わせはシューと斜板との間の相対運動の表面速度を大幅に減少させ、それにより、磨耗及びコストを減少させ、機械の効率を大幅に増大させる。
例:2004チェビー・タホー(Chevy Tahoe) 全液圧トランスミッションの設置及び評価
モジュラー特性を強調し、本発明の全液圧トランスミッションの燃料効率の量を定めるため、2004チェブロレット・タホー(Chevrolet Tahoe)の自動トランスミッションを取り外し、本発明のトランスミッションをその適所に設置した。
【0072】
GM5.3LV8エンジンからなる車両の動力列は非減速歯車を介して無限可変トランスミッションに直接結合された。ポンプ及びモータからなるトランスミッションは液圧流れによってのみ結合された。エンジンにより駆動されるポンプは必要な斜板制御流れを生じさせ、この流れは液圧モータに導かれた。その斜板の位置により駆動され車両の駆動車輪のための駆動シャフトに直接結合されたモータは、駆動車輪抵抗トルクに対して反応する必要なトルクを生じさせた。
【0073】
車両制御モジュールから無限可変トランスミッションのコントローラへの次の入力を使用した:
1.駐車P、後進R、ニュートラルN、ドライブD及び駐車係止位置を備えた駆動モードセレクタ
2.所望の動力の運転手表示のためのアクセルペダル位置センサ
3.完全オフ位置における運転手ペダルでの余剰制御のためのオフアイドルスイッチ
4.速度の加速された減少の運転手表示のためのブレーキペダルセンサ
コンピュータコントローラへの入力のための次のトランスミッション素子を設置した:
1.高圧ポンプ、モータ及びチャージ回路圧力を監視するための3つの液圧圧力トランスデユーサ
2.エンジンからのトランスミッション入力及び後輪駆動シャフトへの出力速度を監視するための2つの速度センサ
3.エンジン供給及び帰還のための2つの燃料流量計
4.2つのポンプ及びモータ斜板位置LVDT
5.液圧チャージ回路流量計
コンピュータコントローラからの出力:
6.高圧液圧安全ソレノイド弁
7.2つの高圧ポンプ及びモータ斜板サーボ弁
コンピュータコントローラにより計算された種々のアクセルペダル/斜板角度設定比率はすべて最初に計算され、それ故、動力計のデータで試験を行う。プロトタイプに対しては、初期の計算はエンジンアイドル状態に対して200PSIのシステム圧力を設定し、差動圧力の各1,000PSIの変化当り167lb/ftのトルクを伴って3,800PSIの最大値を形成する。プロトタイプのタホー車両に対しては、予備的な計算は25:1(低/低)ないし0.67:1(オーバードライブ)のトランスミッション比の限界を伴って750ないし2,200のエンジンRPMレンジ限界を示す。このプロトタイプの意図は、すべてのEPA試験に対して十分なトルクを維持しながら、エンジンをその最低のRPMで作動維持させることである。要求される与えられた量のトルクに対して、エンジンはRPM及び燃料送給レンジにわたってその量を生じさせることができるので、コンピュータコントローラのアルゴリズムは最高の燃料経済性を達成するように選択される。
【0074】
本発明はガスエンジン車両の既存のトランスミッションと交換するためにモジュラー的に使用することを意図するものであるが、本発明は工場設置ユニットとして及び同様にディーゼルエンジンにおいて使用できることを指摘すべきである。
【0075】
これに関し、本発明が既に有しているか又はその現在の高速ガソリンエンジンを1960−70年代に流行したような低速/高トルクエンジンとモジュラー的に交換できる車両と一緒に使用される場合、ガス効率の増大は顕著に大きくなる。
【0076】
従って、本発明のトランスミッションは軽量で、簡単で、製造費が安価であるのみならず、ディーゼルエンジンにより達成できる燃料消費に比べて燃料消費を改善しながら、世界がその巨大なガスエンジンインフラを維持するのを許容し、それによって、世界の燃料割り当て量における付随した混乱を伴うことなく、一層必要なエネルギ保存を達成する。
【0077】
本発明は証明されている一層低速/一層高トルクのエンジンへ戻ることのできる自動車産業の可能性を切り開き、一層軽量で一層安価なエンジンで一層大きな効率改善を達成できるようにする。
【0078】
従って、ここで述べた本発明の実施の形態は本発明の原理の適用の単なる例示であることを理解すべきである。ここでの図示の実施の形態の詳細の参照は、本発明にとって本質的であるものと思われるこのような特徴をそれ自体列挙する特許請求の範囲の要旨を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】可変の斜板角度を備えた液圧機械の部分概略断面図である。
【図2】図を明瞭にするために一部を図示省略した状態での、面2−2における図1の液圧機械の部分概略断面図である。
【図3】図3Aは図1の面3A−3Aから見たような、斜板が+25°で傾斜した場合の、押さえ板の部分概略図であり、図3Bは図3Aの面3B−3Bにおける斜板及びピストン押さえ組立体の部分断面図である。
【図4】長いバネを備えた単一のシリンダの断面図である。
【図5】分割型の斜板を備えた液圧機械の部分概略断面図である。
【図6】従来既知のような2つの液圧機械の「閉ループ」構成を示す図である。
【図7】図7Aは本発明のトランスミッションの液圧モジュールの縦接続の実施の形態において組み合わされたポンプ及びモータの概略図であり、図7Bは本発明のトランスミッションの別の液圧モジュールを形成するように並置接続の実施の形態において組み合わされた同じポンプ及びモータの概略図である。
【図8】図8Aは前輪駆動車両におけるトランスミッションとして使用される状態を示す、図7Aの液圧モジュールの比較的縮小した概略図であり、図8Bは後輪駆動車両におけるトランスミッションとして使用される状態を示す、図7Aの液圧モジュールの比較的縮小した概略図である。
【図9】図9Aは従来の後輪駆動車両におけるトランスミッションとして使用される状態を示す、図7Bの液圧モジュールの比較的縮小した概略頂面図であり、図9Bは図9Aの液圧モジュールの比較的縮小した概略端面図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるコンピュータコントローラの好ましい入力及び出力のブロック線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、車両速度の所望の変化を表すためのアクセルと、車両速度の所望の減速を表すためのブレーキと、車両の車輪を駆動するための出力駆動子とを有する車両に使用するのに適したモジュラートランスミッションにおいて、
上記トランスミッションが、
−複数の液圧機械であって、各々が回転シャフトと、静止のシリンダブロック内に形成されたシリンダ内で往復運動する細長いピストンと、角度的に調整可能な斜板とを有し、上記ピストンが上記斜板の角度調整により所定の最大値まで変化できるストロークを有するような複数の液圧機械を備え;
−上記液圧機械がそれぞれ、(a)上記車両の上記エンジンにより回転できるそれぞれの液圧ポンプシャフトを備えた液圧ポンプとして作動でき、(b)当該車両の上記出力駆動子を回転させるように作動的に接続されたそれぞれの液圧モータシャフトを備えた液圧モータとして作動でき及び(c)液圧閉ループに相互接続されており;
−上記車両の上記出力駆動子の相対速度を決定するためのコントローラを更に備え、同コントローラが、上記車両のエンジンの作動の開始に続き作動可能で、
−上記液圧ポンプシャフトの速度;
−上記液圧モータシャフトの速度;及び
−上記アクセル及び上記ブレーキの作動により表される車両速度の所望の変化;
に応答でき;
上記コントローラが、
−上記液圧ポンプの上記斜板の上記角度調整;
−上記液圧モータの上記斜板の上記角度調整;及び
−上記エンジン速度;
を決定し;
−上記コントローラが、車両負荷の変化及び上記車両が走行している地面の変化を保証し、かつ、燃料経済性に関する所定のパラメータを最大にするように上記エンジン速度を自動的に調整しながら、上記アクセル及び上記ブレーキにより表されるような車両速度の上記所望の変化に従って当該車両の作動を修正する;
ことを特徴とするモジュラートランスミッション。
【請求項2】
上記コントローラが、
上記比が1に達するまで、上記液圧ポンプシャフトに関する上記車両の上記出力駆動子の速度の無限可変増大;及び
上記比が1に達した後の、上記液圧ポンプシャフトに関する上記車両の上記出力駆動子の速度の無限可変増大;
を変更し、
それによって、上記比が1に達した後のオーバードライブ中を含む上記車両の作動の全体にわたって、燃料経済性に関する上記所定のパラメータを最大にする;
ことを特徴とする請求項1に記載のモジュラートランスミッション。
【請求項3】
上記コントローラが上記車両エンジンの作動の開始に続いて作動することができるとき、上記アクセル及び上記ブレーキの作動により表されるような車両速度の上記所望の変化が上記エンジン速度の変化に直接関連しない上記車両速度の変化をもたらし、当該エンジン速度が上記モジュラートランスミッションにより決定されることを特徴とする請求項1に記載のモジュラートランスミッション。
【請求項4】
上記エンジンが均等な給気/圧縮/点火形式のエンジンであることを特徴とする請求項1に記載のモジュラートランスミッション。
【請求項5】
エンジンと、同エンジンにより駆動されるエンジン駆動シャフトと、自動車を運動させるために複数の車輪を駆動するための車輪駆動シャフトとを有する自動車のための液圧トランスミッションにおいて、
上記トランスミッションが、
液圧閉ループとなって接続された液圧ポンプ及び液圧モータを有し;上記ポンプ及びモータの各々が、
その中に形成された複数のシリンダを備えた非回転シリンダブロックであって、上記シリンダが駆動素子の回転軸線のまわりにおいて第1の半径方向の距離で円周方向に位置するような非回転シリンダブロックと;
上記シリンダ内で往復運動自在に装着された複数のそれぞれの長ピストンであって、各長ピストンがピストン本体及び同ピストン本体に接続された球状のヘッドを有し、各それぞれのシリンダがそこを越えて上記ピストンヘッドを常に延びさせる開いたヘッド部分を有するような複数の長ピストンと;
上記駆動素子により駆動され、回転及び転頭運動を行う可変傾斜ロータ及び転頭運動のみを行う平坦な面を備えた揺動体を有する分割型斜板と;
を有し;
各上記ピストンのストロークが上記斜板の傾斜に応じて所定の最大値まで変化し;
上記液圧ポンプの上記駆動素子が上記エンジン駆動シャフトにより駆動され;
上記液圧モータの上記駆動素子がトルク及び動力を上記車輪駆動シャフトに伝達し;
上記エンジンが比較的一定の速度及び比較的低いRPMで回転しているとき、上記液圧ポンプ及び上記液圧モータが、いかなる形式のいかなる中間の伝動装置の変更をも伴わずに、連続的な加速運動で自動車を静止の停止状態から高速道路速度へと運動させるのに十分なトルク及び動力を上記車輪駆動シャフトに提供する;
ことを特徴とするトランスミッション。
【請求項6】
各それぞれの液圧機械が更にいかなる中間のドッグボーンをも伴わずに各上記ピストンヘッドに枢着され直接取り付けられたそれぞれの摺動シューを有し、各上記それぞれの摺動シューが、上記ピストンと上記平坦な面との間のすべての相対回転運動中に、上記揺動体の当該平坦な面との直接の摺動接触を維持することを特徴とする請求項5に記載のトランスミッション。
【請求項7】
上記斜板の角度が−25度から+25度まで変化することを特徴とする請求項5に記載のトランスミッション。
【請求項8】
各それぞれの液圧機械が更に、
上記シリンダブロック内の各シリンダの円筒状の壁内に形成された、加圧流体を保持するためのそれぞれの潤滑チャンネルを有し;
上記潤滑チャンネルのすべてが上記シリンダブロック内に連続的な潤滑通路を形成するように相互接続され;
上記加圧流体が、各ピストンの全ストローク中に各それぞれのピストンの軸方向の円筒状の本体の外側表面による各それぞれの潤滑チャンネルの実質的な閉鎖により、上記連続的な潤滑通路内に維持され、当該連続的な潤滑通路により受け取られた加圧流体の唯一の源が各シリンダの各それぞれの円筒状の壁と各それぞれのピストンの上記軸方向の円筒状の本体との間の上記流体の最小流れであり;
上記閉じた連続的な潤滑通路が上記シリンダブロック内で全体的に形成され、各上記シリンダを横断し、当該シリンダが上記駆動素子の上記回転軸線のまわりでセンタリングされたときに、実質上同じ半径方向の距離で円周方向においてセンタリングされる;
ことを特徴とする請求項5に記載のトランスミッション。
【請求項9】
各それぞれの液圧機械が更に各摺動シューを上記揺動体の上記平坦な面の方へ偏倚するための押さえ組立体を有することを特徴とする請求項5に記載のトランスミッション。
【請求項10】
上記エンジンが均等な給気/圧縮/点火形式のエンジンであることを特徴とする請求項5に記載のトランスミッション。
【請求項11】
エンジンと、同エンジンにより駆動されるエンジン駆動シャフトと、自動車を運動させるために複数の車輪を駆動するための車輪駆動シャフトとを有する自動車のトランスミッション井戸において自動トランスミッションを交換する方法において、
a)上記エンジン駆動シャフト及び上記車輪駆動シャフトから上記自動トランスミッションを接続解除する工程と;
b)上記トランスミッション井戸から上記自動トランスミッションを取り外す工程と;
c)ポンプ及びモータを有する液圧トランスミッションを上記トランスミッション井戸内に完全に配置する工程と;
d)上記エンジン駆動シャフトを上記ポンプに取り付け、上記車輪駆動シャフトを上記モータに取り付ける工程と;
e)上記液圧トランスミッションの作動を制御するためにコンピュータ制御を提供する工程と;
を有し、
上記液圧トランスミッションが上記自動トランスミッションと交換され、静止状態から高速度へ上記自動車を運動させるのに十分なトルク及び動力を上記車輪駆動シャフトに提供するために上記エンジンからのトルク及び動力を変換する;
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
上記エンジンが均等な給気/圧縮/点火形式のエンジンであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
エンジンと、駆動モードセレクタと、アクセルペダルと、ブレーキペダルと、調整可能な斜板角度を有するポンプ斜板及び調整可能な斜板角度を有するモータ斜板を備えたトランスミッションとを具備する自動車の車輪駆動シャフトへの動力を制御するための方法において、
a)駆動モードセレクタ位置、アクセルペダル位置及びブレーキペダル位置を測定する工程と;
b)エンジン速度及び自動車速度を測定する工程と;
c)上記ポンプ斜板角度及び上記モータ斜板角度の所定の値内で一定のエンジン速度を維持しながら、上記駆動モードセレクタ位置、上記アクセルペダル位置、上記ブレーキペダル位置、上記エンジン速度及び上記自動車速度に基づき、当該ポンプ斜板角度及び当該モータ斜板角度を制御する工程と;
を有することを特徴とする方法。
【請求項14】
上記エンジンが均等な給気/圧縮/点火形式のエンジンであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
d)上記ポンプ斜板角度及び上記モータ斜板角度が所定の値に達し、上記車輪駆動シャフトへの一層多い動力が要求されたときにのみ、上記エンジン速度を増大させる工程と;
e)上記エンジン速度がアイドリング速度以上になり、上記車輪駆動シャフトへの一層少ない動力が要求されたときにのみ、当該エンジン速度を減少させる工程と;
を更に有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
エンジンの前部から延び同エンジンにより駆動される補助の駆動シャフトと、上記エンジンの後部から延び同エンジンにより駆動される主要な駆動シャフトとを備えたエンジンを有する自動車の車輪駆動シャフトへの動力を制御するための方法において、
a)液圧モータから液圧出力を生じさせるために上記補助の駆動シャフトを使用して、上記液圧モータと閉ループをなす液圧ポンプを備えた液圧モジュールを駆動する工程と;
b)上記車輪駆動シャフトへの動力を提供するように上記液圧出力を当該車輪駆動シャフトに機械的に結合する工程と;
c)ポンプ斜板角度及びモータ斜板角度を調整することにより、上記車輪駆動シャフトへの動力を無限変化させる工程と;
を有することを特徴とする方法。
【請求項17】
上記主要な駆動シャフトを上記車輪駆動シャフトに機械的に結合する工程を更に有し、上記液圧出力及び当該主要な駆動シャフトからの出力が、当該車輪駆動シャフトへの動力を提供するためのトランスミッション出力を生じさせるように、機械的に組み合わされることを特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−546958(P2008−546958A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517099(P2008−517099)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/023285
【国際公開番号】WO2006/138447
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(501050955)トーヴェック・インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】