説明

互いに異なる厚さのセラミック素子で形成されたセラミック層を備える超音波プローブおよびそれを用いた超音波システム

【課題】変換素子内のセラミック素子の厚さを異にしてセラミック層を形成することによって、フォーカスの特性および低周波数帯域幅(bandwidth)を拡大させることができる超音波プローブおよびそれを用いた超音波システムを提供すること。
【解決手段】本発明における超音プローブは、セラミック層を備える少なくとも1つの変換素子を備え、前記セラミック層は、複数の異なる厚さのセラミック素子を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波システムに関し、特に、互いに異なる厚さのセラミック素子で形成されたセラミック層を備える超音波プローブ及びそれを用いた超音波システムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波システムは、無侵襲および非破壊特性を有しており、対象体内部の情報を得るために医療分野で広く用いられている。超音波システムは、対象体を直接切開して観察する外科手術の必要がなく、対象体の内部組織を高解像度の映像で医師に提供することができるため、医療分野で非常に重要なものとして用いられている。
【0003】
超音波システムは、超音波信号を対象体に送信し、対象体から反射される超音波信号(即ち、超音波エコー信号)を受信する超音波プローブを備える。超音波プローブは、電気的信号と超音波信号を相互に変換する少なくとも1つの変換素子(transducer element)を備える。
【0004】
変換素子は、電気的信号に応答して超音波信号を生成し、超音波エコー信号に応答して電気的信号を生成するために、圧電(piezoelectric)素子のようなセラミック層を備える。電気的信号に応答して各変換素子から出力される送信超音波ビームは、セラミック層の特性に応じて高周波または低周波特性を示すようになる。
【0005】
送信超音波ビームが高周波特性を有する場合、超音波プローブから近い領域、即ち対象体の浅い領域に対しては超音波ビームの集束特性が良好であるため、解像度が高い映像を得ることができる。一方、超音波プローブから遠い領域、即ち対象体の深い領域に対しては相対的に超音波ビームの浸透が難しいため、送信集束の特性が低下して解像度が落ちる。
【0006】
これとは反対に、送信超音波ビームが低周波特性を有する場合、超音波プローブから近い領域、即ち対象体の浅い領域に対しては高周波特性の送信超音波ビームに比べて解像度が落ちるのに対し、超音波プローブから遠い領域、即ち対象体の深い領域に対しては相対的に超音波ビームの浸透が容易であるため、改善された解像度の映像を得ることができる。従って、対象体の浅い領域だけでなく、深い領域でも改善された解像度の映像を得ることができる超音波プローブが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−296055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、少なくとも1つの変換素子を備え、変換素子におけるセラミック層を異なる厚さの複数のセラミック素子で形成することによって、送受信超音波信号のフォーカス特性および低周波数帯域幅(bandwidth)を拡大させることができる超音波プローブおよびそれを用いた超音波システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における超音波プローブは、セラミック層を備える少なくとも1つの変換素子を備え、前記セラミック層は、複数の異なる厚さのセラミック素子を備える。
【0010】
また、本発明における超音波システムは、セラミック層を備える少なくとも1つの変換素子を備え、超音波信号を送受信する超音波プローブを備え、前記セラミック層は、複数の異なる厚さのセラミック素子を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、異なる厚さのセラミック素子で形成されたセラミック層を備える超音波プローブを用い、さらに長い集束領域(focal zone)および帯域幅(bandwidth)を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例における超音波システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例における超音波プローブの断面を概略的に示す図面である。
【図3】本発明の実施例における各変換素子において、セラミック層の構成を概略的に示す図面である。
【図4】本発明の実施例によって、変換素子から送信される超音波信号のビームプロファイルを示す例示図である。
【図5】本発明の他の実施例によって、変換素子から送信される超音波信号のビームプロファイルを示す例示図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施例における超音波システムの構成を示すブロック図である。図1を参照すると、超音波システム10は、超音波プローブ100、ビーム形成部200、信号処理部300、スキャン変換部400、映像処理部500およびディスプレイ部600を備える。超音波システム100は、メモリのような格納部(図示せず)をさらに備える。
【0015】
超音波プローブ100は、少なくとも1つの変換素子110を備える。超音波プローブ100は、送信信号生成部(図示せず)から出力される電気的信号である送信信号に応答して超音波信号を対象体に送信し、対象体から反射されたエコー信号を受信する。超音波プローブ100は、受信したエコー信号に応答して電気的信号である受信信号を出力する。
【0016】
ビーム形成部200は、超音波プローブ100から出力される受信信号を受信集束して受信集束ビームを形成する。信号処理部300は、ビーム形成部200から出力される受信集束ビームに対して包絡線検波処理などを行って超音波映像データを形成する。
【0017】
スキャン変換部400は、信号処理部300から出力される超音波映像データを表示可能なデータフォーマットに変換(スキャン変換データ)し、映像処理部500は、スキャン変換部400から出力されるスキャン変換データを加工して映像を形成しディスプレイ部600に伝達する。そして、ディスプレイ部600は、映像処理部500で形成された映像を表示する。
【0018】
図2は、本発明の実施例における超音波プローブの断面を概略的に示す。図2を参照すると、超音波プローブ100は、少なくとも1つの変換素子110を備える。また、超音波プローブ100は、超音波集束のためにレンズおよびメンブレンカバー120などをさらに備える。
【0019】
各変換素子110は、電気的信号と超音波信号を相互に変換するためのセラミック層112を備える。セラミック層112は、不規則な方向に配列された微細結晶の混合物からなり、電気的信号または超音波信号に応答して分極(polarization)される圧電特性を示すことによって、超音波を送信および受信することができる。セラミック層112は、PZT(lead zironate titanate)などの圧電素子で形成される。
【0020】
また、各変換素子110は、セラミック層112が電気的信号である送信パルス信号に応答して励起された時、すぐにセラミック層112の振動およびセラミック層112から出力されて超音波プローブの超音波送信方向の反対方向に伝播される超音波信号を吸収するための吸音層(backing layer)111を備える。吸音層111は、セラミック層112を形成する圧電素子と類似の音響インピーダンス(acoustic impedance)を有する物質で形成され、吸音層110に伝達される超音波を吸収する特性を有するように形成される。
【0021】
また、各変換素子110は、セラミック層112と対象体との間の音響インピーダンス差を減らすために、セラミック層112を覆う第1整合層(matching layer)113および当該第1整合層113上に設けられる第2整合層114をさらに備える。
【0022】
本実施例において、第1整合層113および第2整合層114の厚さは、音響インピーダンスの差を最小化するために、実質的に超音波波長の1/4となり、第1および第2吸音層113、114の音響インピーダンス値は、セラミック層112のインピーダンスと対象体の音響インピーダンスとの中間値を有するように形成することが望ましい。
【0023】
図3は、本発明の実施例における各変換素子において、セラミック層の構成を概略的に示す図面である。図3を参照すると、セラミック層112は、異なる厚さを有する複数のセラミック素子112−1、・・・、112−nからなる。ここで、複数のセラミック素子112−1、・・・、112−nは、セラミックス素子112の真ん中に位置したセラミック素子112−cを中心に、セラミック層112の長手方向でセラミックス素子112−cの両側方向に沿って対称的に形成される。セラミック素子の厚さは、セラミック層112での超音波信号の送信方向と垂直な方向、即ち、変換素子の長手(elevation)方向の厚さである。
【0024】
一般に、セラミック素子の特性上、厚さが厚ければ高周波の特性より低周波の特性が目立つようになる。従って、単一のセラミック素子を用いてセラミック層を形成する場合、単一の周波数範囲の送信および受信特性を有するようになるのに対し、本発明の実施例のように、互いに異なる厚さを有する複数のセラミック素子112−1〜112−nを用いてセラミック層を形成する場合、複数の周波数範囲の送信および受信特性を有するようになる。
【0025】
本実施例において、各セラミック素子の厚さがセラミック層112の真ん中のセラミック素子112−cを基準に、セラミック素子112−cの両側方向に次第に薄くなるように形成することができる。すなわち、セラミック素子112−cからセラミック素子112−1およびセラミック素子112−nに向かって、各セラミック素子の厚さが徐々に薄くなるように形成することができる。
【0026】
また別の形態では、セラミック素子112−cからセラミック素子112−1およびセラミック素子112−nに向かって、セラミック素子の厚さが段階的に薄くなるように形成することができる。具体的には、セラミック素子112−cからセラミック素子112−1およびセラミック素子112−nに向かってセラミック素子の厚さが薄くなるが、セラミック素子112−(c−1)および112−(c−2)の厚さ、セラミック素子112−(c−3)および112−(c−4)の厚さ・・・・セラミック素子112−3および112−2の厚さが同じであるように形成することもできる。
【0027】
またさらに、他の形態では、各セラミック素子の厚さと、各セラミック素子を構成する材料との組合せによって、前記複数の周波数範囲の送信および受信特性を得ることもできる。
【0028】
図4は、本発明の実施例によって、セラミック層112の両端に行くほどセラミック素子の厚さを薄く形成した時、変換素子から送信される超音波信号のビームプロファイルを概略的に示す図面である。
【0029】
図4に示すように、セラミック層112を形成するようになれば、相対的に厚さが厚い真ん中に位置したセラミック素子112−cから出力される超音波信号は、低周波特性を有するようになって深い領域で送信集束となり、真ん中のセラミック素子112−cを基準にセラミック層112の両側方向に相対的に薄く形成されたセラミック素子112−1〜112−nから出力される超音波信号は、高周波特性を有するようになって浅い領域で送信集束となる。従って、真ん中のセラミック素子112−cから出力される超音波信号で不十分な高周波特性を、両側のセラミック素子112−1〜112−nから出力される高周波特性の超音波信号を用いて補償することができる。即ち、送信超音波ビームの低周波特性によって相対的に対象体の浅い領域で超音波映像の解像度が低下することを補償することができる。
【0030】
また、本発明の他の実施例において、各セラミック素子の厚さがセラミック層112の真ん中のセラミック素子112−cを基準に、セラミック層112の長手方向でセラミックス素子112−cの両側方向に沿って次第に厚く形成することもできる。図5は、本発明の実施例によって、セラミック層112の両端に行くほどセラミック素子の厚さを厚く形成した時、変換素子から送信される超音波信号のビームプロファイルを概略的に示す図面である。
【0031】
図5に示すようにセラミック層112を形成するようになれば、相対的に厚さが薄い真ん中に位置したセラミック素子112−cから出力される超音波信号は、高周波特性を有するようになって浅い領域で送信集束となり、真ん中のセラミック素子112−cを基準にセラミック層112の両側方向に相対的に厚く形成されたセラミック素子112−1〜112−nから出力される超音波信号は、低周波特性を有するようになって深い領域で送信集束となる。従って、真ん中のセラミック素子112−cから出力される超音波信号で不十分な低周波特性を、両側のセラミック素子12−1〜112−nから出力される低周波特性の超音波信号を用いて補償することができる。即ち、送信超音波ビームの高周波特性によって相対的に対象体の深い領域で超音波映像の解像度が低下されることを補償することができる。
【0032】
なお、本発明の他の実施例においても、本発明の実施例の別の形態のように、セラミック素子の厚さが段階的に厚くなるように形成することもできる。
【0033】
本発明は、望ましい実施例によって説明および例示をしたが、当業者であれば添付した特許請求の範囲の事項および範疇を逸脱することなく、様々な変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 超音波システム
100 超音波プローブ
200 ビーム形成部
300 信号処理部
400 スキャン変換部
500 映像処理部
600 ディスプレイ部
110 変換素子
111 吸音層
112セラミック層
112−1〜112−n セラミック素子
112−c 真ん中のセラミック素子
113 第1整合層
114 第2整合層
120 レンズ、メンブレン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波信号を送受信する超音波プローブであって、
セラミック層を備える少なくとも1つの変換素子を備え、
前記セラミック層は、複数の異なる厚さのセラミック素子を備えることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記セラミック層は、
前記セラミック層の中心に位置する第1セラミック素子と、
前記第1セラミック素子を中心に超音波信号の送信方向と垂直な方向で前記第1セラミック素子の両側方向に沿って形成される複数の第2セラミック素子と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記複数の第2セラミック素子は、前記第1セラミック素子を基準に前記両側方向に厚さが次第に薄く形成されることを特徴とする請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記複数の第2セラミック素子は、前記第1セラミック素子を基準に前記両側方向に厚さが次第に厚く形成されることを特徴とする請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記セラミック層は、圧電素子からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記変換素子は、
前記セラミック層の振動および前記セラミック層から出力されて前記超音波信号の送信方向の反対方向に伝播される超音波信号を吸収するための吸音層と、
前記セラミック層と対象体との間の音響インピーダンス差を減らすための整合層と
を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記整合層は、前記セラミック層上に設けられる第1整合層および該第1整合層上に設けられる第2整合層を備え、
前記第1および第2整合層の厚さは、超音波波長の1/4となり、
前記第1および及び第2整合層の音響インピーダンス値は、前記セラミック層の音響インピーダンスと前記対象体の音響インピーダンスとの中間値であることを特徴とする請求項6に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
セラミック層を備える少なくとも1つの変換素子を備え、超音波信号を送受信する超音波プローブを備え、
前記セラミック層は、複数の異なる厚さのセラミック素子を備えることを特徴とする超音波システム。
【請求項9】
前記セラミック層は、
前記セラミック層の中心に位置する第1セラミック素子と、
前記第1セラミック素子を中心に超音波信号の送信方向と垂直な方向で前記第1セラミック素子の両側方向に沿って形成される複数の第2セラミック素子と
を備えることを特徴とする請求項8に記載の超音波システム。
【請求項10】
前記複数の第2セラミック素子は、前記第1セラミック素子を基準に前記両側方向に厚さが次第に薄く形成されることを特徴とする請求項9に記載の超音波システム。
【請求項11】
前記複数の第2セラミック素子は、前記第1セラミック素子を基準に前記両側方向に厚さが次第に厚く形成されることを特徴とする請求項9に記載の超音波システム。
【請求項12】
前記セラミック層は、圧電素子からなることを特徴とする請求項8ないし11のいずれかに記載の超音波システム。
【請求項13】
前記変換素子は、
前記セラミック層の振動および前記セラミック層から出力されて前記超音波信号の送信方向の反対方向に伝播される超音波信号を吸収するための吸音層と、
前記セラミック層と対象体との間の音響インピーダンス差を減らすための整合層と
を備えることを特徴とする請求項8ないし12のいずれかに記載の超音波システム。
【請求項14】
前記整合層は、前記セラミック層上に設けられる第1整合層および該第1整合層上に設けられる第2整合層を備え、
前記第1および第2整合層の厚さは、超音波波長の1/4となり、
前記第1および及び第2整合層の音響インピーダンス値は、前記セラミック層の音響インピーダンスと前記対象体の音響インピーダンスとの中間値であることを特徴とする請求項13に記載の超音波システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96033(P2012−96033A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240437(P2011−240437)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(597096909)三星メディソン株式会社 (269)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG MEDISON CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】114 Yangdukwon−ri,Nam−myun,Hongchun−gun,Kangwon−do 250−870,Republic of Korea
【Fターム(参考)】