説明

亜鉛錯体とプロスタグランジン等からなる外用剤

【課題】創傷及び皮膚疾患に対して優れた治癒促進作用を有する外用剤の提供を目的とする。
【解決手段】有効成分として、亜鉛錯体と、プロスタグランジン類,プロスタグランジン類誘導体及びプロスタグランジン類産生促進剤のうちいずれか1つ以上とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷治癒促進作用及び脂漏性湿疹等の皮膚疾患治癒促進作用を有する外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
外用としての褥瘡、皮膚潰瘍治療剤としてプロスタグランジンE製剤が公知である(非特許文献1)。
本発明者は、ステロイド長期内服により皮膚委縮が認められる患者が皮膚潰瘍になった事例にてプロスタンデイン(登録商標)軟膏0.003%を創部に塗布したが、治癒の変化が認められなかった。
ところが、内服薬としては公知のプロマック(登録商標)D錠75(非特許文献2)をすりつぶしてプロスタンデイン軟膏に混ぜて使用したところ、非常に優れた治癒効果が認められたことから本発明に至った。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】添付文書、プロスタンデイン軟膏0.003%、2009年9月改訂(第10版)、小野薬品工業株式会社
【非特許文献2】添付文書、プロマックD錠75、2009年6月改訂、ゼリア新薬工業株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、創傷及び皮膚疾患に対して優れた治癒促進作用を有する外用剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る外用剤は、有効成分として、亜鉛錯体と、プロスタグランジン類,プロスタグランジン類誘導体及びプロスタグランジン類産生促進剤のうちいずれか1つ以上とを含有する。
【0006】
ここで、亜鉛錯体は医薬品であるL−カルノシン亜鉛錯体が好ましい。
L−カルノシンは天然に存在し、無害で強力な抗酸化能を有することが知られており、β−アラニンとヒスチジンからなるジペプチドである。
本発明において亜鉛錯体は、付着浸透性、創傷治癒における皮膚環境のバランス改善等に寄与しているものと推定され、食品添加物であるマルトール,生体物質であるアミノ酸,ピコリン酸及びその誘導体であるピコリンアミド又は6−メチルピコリン酸等を配位子した亜鉛錯体であってもよい。
【0007】
また、本発明にてプロスタグラジン類とは、主にプロスタグランジンE(PGE),プロスタグランジンE(PGE)をいい、プロスタグランジン類の誘導体の例としては、アルプロスタジル アルファデクスが挙げられ、プロスタグランジン類の産生促進剤の例としては、レバミピドが挙げられる。
本発明にあっては、細菌の殺菌作用をする硫酸ゲンタマイシンを添加してもよい。
【0008】
ここで、アルプロスタジル アルファデクスは、プロスタグランジンE・αシクロデキストリン包接化合物であり、7-{(1R,2R,3R)-3-Hydroxy-2-[(1E,3S)-3-hydroxy-oct-1-en-1-yl]-5-oxocyclopentyl}heptanoic acid-α-cyclodextrinである。
また、構造式を下記式(1)に示す。
【化1】

L−カルノシン亜鉛錯体は、ポラプレジンクとも称され、catena-(S)-[μ-[Nα-(3-aminopropionyl)histidinato(2-)-N1,N2,O:Nτ]-zinc]である。
構造式を下記式(2)に示す。
【化2】

【0009】
本発明において外用剤は、医薬品用の皮膚外用剤や化粧品の形態を含む。
褥瘡、皮膚欠損創、皮膚潰瘍等の治癒に使用するには、軟膏剤やクリーム剤の形態が好ましく、特に乾燥化や刺激が少ない親油性のプラスチベース基剤を用いたものがよい。
脂漏性湿疹等の皮膚疾患にはスプレー剤、乳液剤、洗浄料等の形態が好ましい。
従って本発明においては、医薬品用の皮膚外用剤や化粧品等に一般的に用いられる他のゲル化炭化水素、乳糖水和物、界面活性剤、増粘剤、色剤等を適宜配合できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る外用剤にあっては、実施例にて詳細に説明するとおり、優れた皮膚潰瘍等の治癒作用を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ケガした傷口が壊死した状態を示す。
【図2】洗浄とゲンタシン(登録商標)軟膏を使用した状態を示す。
【図3】PGE単独で使用した状態を示す。
【図4】創部の左半分にPGE+PPz+GMを使用し、右半分にGMを使用した状態を示す。
【図5】創部の右半分にPPz+GMを使用した状態を示す。
【図6】創部の右半分にPPz+PGE+GMを使用した状態を示す。
【図7】(a)は38日経過、(b)は46日経過、(c)は6ヶ月経過後の状態を示す。
【図8】(a)は脂漏性湿疹患者の状態、(b)は本発明の塗り薬使用後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の外用剤の使用例について以下、具体的に説明する。
本発明の実施例として、プロスタンデイン軟膏0.003%(小野薬品工業)10gに対して、すりつぶしたプロマックD錠75(ゼリア新薬工業株式会社,ポラプレジンク口腔内崩壊錠)を3錠(ポラプレジンク75mg×3)を混合し、これにゲンタシン軟膏(シェリング・プラウ株式会社,主成分:硫酸ゲンタマイシン)を混合したものを実施例外用剤とした。
【0013】
次に実施例外用剤を他の塗り薬と比較したので説明する。
1989年にSLEの診断、2000年にループス腎炎由来の慢性腎不全と診断され、血液透析開始したステロイド長期内服により皮膚委縮が認められる47歳女性が、乗っていた自転車の転倒により救急病院で縫合されたが、壊死状態になった傷口の写真を図1(a)に示す。
図1(b)は白黒写真のために分かりにくいが、壊死部分を除去した状態を示し、赤くただれた潰瘍になっていた。
図2に示すように23日間、洗浄とGM(ゲンタシン軟膏)を使用したが、治癒の傾向が認められなかった。
そこで、図3に示すようにPGE(プロスタンデン軟膏)を14日間使用したが、大きな変化が認められなかった。
【0014】
創部がチョウのような形状をしていたので、図4に示すように向かって左半分に実施例外用剤[PPz(プロマック)+PGE+GM]を使用し、右半分はGMのみ使用した。
その結果、図4(b)は6日後、(c)は9日後の創部を示すように実施例外用剤を使用した左半分のみに治癒の傾向が認められた。
次に、右半分にPPz(プロマック)をGMとともに使用した結果を図5に示す。
2週間使用し経過を見たが、右半分の創部の大きさが0.5mm程度縮小しているのにとどまった。
次に図6に示すように右半分にも実施例外用剤を使用したところ、(b)は5日後、(c)は12日後、図7(a)は38日後、(b)は46日後、(c)は6ヶ月後の状態を示すようにほぼ完治した。
【0015】
以上のことから、GM(硫酸ゲンタマイシン)は、細菌の殺菌を目的とすることを考えると直接的な治癒はPPz+PGEの組み合せ(本実施例外用剤)にて約1週間で明らかな治癒傾向を見せたのに対して、PGE単独あるいはPPz単独では約2週間の経過観察でも治癒の傾向を示さなかったことになる。
【0016】
その他の実施例として、図8(a)に示す脂漏性湿疹患者に本実施例外用剤を3日塗り使用しただけで(b)に示すように治癒が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、亜鉛錯体と、プロスタグランジン類,プロスタグランジン類誘導体及びプロスタグランジン類産生促進剤のうちいずれか1つ以上とを含有する外用剤。
【請求項2】
前記亜鉛錯体は、L−カルノシン,アミノ酸,ピコリン酸及びその誘導体であるピコリンアミド又は6−メチルピコリン酸及びマルトールのうちいずれかの亜鉛錯体である、請求項1記載の外用剤。
【請求項3】
プロスタグランジン類は、アルプロスタジル アルファデクスである、請求項1又は2記載の外用剤。
【請求項4】
さらに、硫酸ゲンタマイシンを含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の外用剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−236186(P2011−236186A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111492(P2010−111492)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(510132912)
【出願人】(507189460)学校法人金沢医科大学 (8)
【Fターム(参考)】