説明

交換レンズおよびカメラボディ

【課題】フォーカス制御に悪影響を与えることなく分光透過率データの送信が可能な交換レンズおよびカメラボディを提供する。
【解決手段】カメラボディが着脱可能に取り付けられる取付手段と、フォーカシングレンズを有する結像光学系と、フォーカシングレンズを駆動してフォーカシングレンズの被駆動状態を変化させる駆動手段と、第1の伝送路を介してカメラボディに結像光学系の分光透過率特性を表す分光透過率情報を送信する第1の送信手段と、第1の伝送路とは異なる第2の伝送路を介してカメラボディにフォーカシングレンズの被駆動状態を送信する第2の送信手段とを備え、分光透過率情報は、画像生成に使用される波長域の各波長に対応する、結像光学系の透過率を表す情報である交換レンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換レンズおよびカメラボディに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ交換可能なカメラシステムにおいて、交換レンズ側にレンズの光学特性等を予め記憶させておくことがある。カメラボディはこの光学特性等を参照し、交換レンズ毎に適切な制御を行う。例えば特許文献1に記載されているカメラシステムでは、レンズ制御CPU内に、分光透過率データを含む画像処理用データが格納されている。カメラ本体側のカメラ制御CPUは、レンズ制御CPUから分光透過率データを受信し、撮像素子の感度特性を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−354490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のカメラシステムには、分光透過率データの送信がフォーカス制御に悪影響を与える可能性があるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、カメラボディが着脱可能に取り付けられる取付手段と、フォーカシングレンズを有する結像光学系と、フォーカシングレンズを駆動してフォーカシングレンズの被駆動状態を変化させる駆動手段と、第1の伝送路を介してカメラボディに結像光学系の分光透過率特性を表す分光透過率情報を送信する第1の送信手段と、第1の伝送路とは異なる第2の伝送路を介してカメラボディにフォーカシングレンズの被駆動状態を送信する第2の送信手段とを備え、分光透過率情報は、画像生成に使用される波長域の各波長に対応する、結像光学系の透過率を表す情報であることを特徴とする交換レンズである。
請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の交換レンズが着脱可能に取り付けられるレンズ取付手段と、分光透過率情報を交換レンズから受信する受信手段と、被写体像を撮像し撮像信号を出力する撮像手段と、分光透過率情報に基づいて、撮像手段のゲインを調節するゲイン調節手段と、を備えることを特徴とするカメラボディである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、分光透過率データの送信がフォーカス制御に悪影響を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。
【図2】本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。
【図3】保持部102,202の詳細を示す模式図である。
【図4】コマンドデータ通信の例を示すタイミングチャートである。
【図5】ホットライン通信の例を示すタイミングチャートである。
【図6】分光透過率データの構成を示す図である。
【図7】結像光学系210の分光透過率特性の一例を示すグラフである。
【図8】第2の実施の形態における分光透過率データの一例を示す図である。
【図9】第3の実施の形態に係るレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。なお、図1では本発明に係わる機器および装置のみを示し、それ以外の機器および装置については図示と説明を省略する。カメラ1は、カメラボディ100と、カメラボディ100に着脱可能な交換レンズ200とから構成される。
【0009】
カメラボディ100には交換レンズ200が着脱可能に取り付けられるレンズマウント101が設けられている。カメラボディ100のレンズマウント101の近傍(レンズマウント101の内周側)の位置には、レンズマウント101の内周側に部分的に突出する状態で、接点を保持する保持部(電気的な接続部)102が設けられている。この保持部102には複数の接点が設けられている。
【0010】
また交換レンズ200には、ボディ側のレンズマウント101に対応する、カメラボディ100が着脱可能に取り付けられるレンズマウント201が設けられている。交換レンズ200のレンズマウント201の近傍(レンズマウント201の内周側)の位置には、レンズマウント201の内周側に部分的に突出する状態で、接点を保持する保持部(電気的な接続部)202が設けられている。この保持部202には複数の接点が設けられている。
【0011】
カメラボディ100に交換レンズ200が装着されると、複数の接点が設けられた保持部102が、複数の接点が設けられた保持部202に電気的に且つ物理的に接続される。両保持部102,202は、カメラボディ100から交換レンズ200への電力供給、および、カメラボディ100と交換レンズ200との信号の送受信に利用される。
【0012】
カメラボディ100内のレンズマウント101後方には、例えばCMOSやCCDなどの撮像素子104が設けられる。カメラボディ100の上方には、入力装置たるボタン107が設けられている。カメラボディ100が電源オフ状態のとき、ユーザによりボタン107が押下されると、カメラボディ100は電源オン状態になる。また、交換レンズ200の鏡筒側面にも、ボタン107と同様のボタン207が設けられている。カメラボディ100が電源オフ状態のとき、カメラボディ100に取り付けられている交換レンズ200のボタン207がユーザにより押下されると、カメラボディ100は電源オン状態になる。
【0013】
図2は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。交換レンズ200は、被写体像を結像させる結像光学系210を備える。結像光学系210は複数のレンズ210a〜210cおよび絞り211により構成されている。これら複数のレンズ210a〜210cには、被写体像のピント位置を制御するためのフォーカシングレンズ210bが含まれている。
【0014】
交換レンズ200はいわゆるズームレンズである。すなわち、結像光学系210は焦点距離が可変に構成されており、ユーザは例えば交換レンズ200に設けられた操作環を回転させる、あるいはカメラボディ100に設けられたボタン等の操作部材を操作する、等の所定の操作によって結像光学系210の焦点距離を変化させることができる。
【0015】
交換レンズ200内部には、交換レンズ200の各部の制御を司るレンズ制御部203が設けられている。レンズ制御部203は不図示のマイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。レンズ制御部203には、レンズ側第1通信部217、レンズ側第2通信部218、レンズ駆動部212、レンズ位置検出部213、ズーム位置検出部214、ROM215、およびRAM216が接続されている。
【0016】
レンズ側第1通信部217およびレンズ側第2通信部218は、保持部102、202の各通信接点を介して、カメラボディ100との間で信号の授受が可能に構成されている。このレンズ側第1通信部217とレンズ側第2通信部218はそれぞれ、交換レンズ200側の通信インターフェースである。レンズ制御部203はこれら通信インターフェースを使って、カメラボディ100(後述するボディ制御部103)との間で後述する各データ通信(ホットライン通信、コマンドデータ通信)を行う。受電部230は、カメラボディ100から保持部102、202の電力供給接点を介して、カメラボディ100からレンズ制御部203を含む各部の動作電流を受電する。
【0017】
レンズ駆動部212は例えばステッピングモータ等のアクチュエータを有し、レンズ駆動部212に入力された信号に応じてフォーカシングレンズ210bを駆動する。フォーカシングレンズ210bは、レンズ駆動部212により光軸方向に駆動される。レンズ位置検出部213は、例えばフォーカシングレンズ210bに接続されたエンコーダ等により構成され、フォーカシングレンズ210bの光軸方向の位置を検出する。同様に、ズーム位置検出部214は、例えば結像光学系210に含まれるズーミングレンズに接続されたエンコーダ等により構成され、現在のズーム位置を検出する。
【0018】
ROM215は不揮発性の記憶媒体であり、レンズ制御部203が実行する所定の制御プログラムや、後述する各種テーブル等が予め記憶される。RAM216は揮発性の記憶媒体であり、レンズ制御部203により各種データの記憶領域として利用される。
【0019】
撮像素子104の前面には、撮像素子104の露光状態を制御するためのシャッター115と、光学的ローパスフィルターや赤外線カットフィルターを組み合わせた光学フィルター116とが設けられている。結像光学系210を透過した被写体光は、シャッター115およびフィルター116を介して撮像素子104に入射する。
【0020】
カメラボディ100内部には、カメラボディ100の各部の制御を司るボディ制御部103が設けられている。ボディ制御部103は不図示のマイクロコンピュータ、RAMおよびその周辺回路等から構成される。ボディ制御部103には図1に示したボタン107が接続されており、ボタン107の押下操作を検知することが可能である。
【0021】
ボディ制御部103には、ボディ側第1通信部117およびボディ側第2通信部118が接続されている。ボディ側第1通信部117およびボディ側第2通信部118は共に保持部102に接続されており、交換レンズ200との間で信号の授受が可能である。ボディ側第1通信部117は、保持部102に設けられた複数の通信接点を介して、レンズ側第1通信部217とデータの授受を行うことができる。同様に、ボディ側第2通信部118はレンズ側第2通信部218とデータの授受を行うことができる。換言すれば、ボディ側第1通信部117とボディ側第2通信部118はそれぞれ、ボディ側の通信インターフェースである。ボディ制御部103はこれら通信インターフェースを使って、交換レンズ200(レンズ制御部203)との間で、後述する各通信(ホットライン通信、コマンドデータ通信)を行う。
【0022】
カメラボディ100の背面には、LCDパネル等により構成される表示装置111が配置される。ボディ制御部103はこの表示装置111に対し、撮像素子104の出力に基づく被写体の画像(いわゆるスルー画)や、撮影条件等を設定するための各種のメニュー画面を表示する。
【0023】
(保持部102,202の説明)
図3は保持部102,202の詳細を示す模式図である。なお図3において保持部102がレンズマウント101の右側に配置されているのは、実際のマウント構造に倣ったものである。すなわち、本実施形態の保持部102は、カメラボディ100のレンズマウント101のマウント面よりも奥まった場所(図3においてレンズマウント101よりも右側の場所)に配置されている。同様に、保持部202がレンズマウント201の右側に配置されているのは、本実施形態の保持部202が交換レンズ200のレンズマウント201のマウント面よりも突出した場所に配置されていることを表している。保持部102と保持部202がこのように配置されているので、レンズマウント101のマウント面とレンズマウント201のマウント面とを接触させて、カメラボディ100と交換レンズ200とをマウント結合させると、保持部102と保持部202とが接続され、両保持部に設けられている電気接点同士も接続することになる。このようなマウント構造については周知であるのでこれ以上の説明、図示を省略する。
【0024】
図3に示すように、保持部102にはBP1〜BP12の12個の接点が存在する。また保持部202には、上記の12個の接点にそれぞれ対応する、LP1〜LP12の12個の接点が存在する。
【0025】
接点BP1および接点BP2は、カメラボディ100内の送電部130に接続されている。送電部130は、接点BP1に、アクチュエータ等の駆動系を有し消費電力が比較的大きい回路(レンズ駆動部212等)を除く交換レンズ200内の各部の動作電圧を供給する。すなわち、接点BP1および接点LP1からは、上記の各駆動部を除く交換レンズ200内の各部の動作電圧が供給される。この接点BP1に供給可能な電圧値は、最小電圧値〜最大電圧値の範囲(例えば3V台での電圧幅)をもつが、標準的に供給される電圧値はその最大電圧値と最小電圧値の中間値近傍の電圧値である。そしてこれにより、カメラボディ100側から交換レンズ200側に供給される電流値は、電源ON状態において、約数10mA〜数100mAの範囲内の電流値である。
【0026】
接点BP2は、接点BP1に与えられる上記動作電圧に対応する接地端子である。すなわち、接点BP2および接点LP2は、上記の動作電圧に対応する接地端子電圧である。接点LP1および接点LP2は、交換レンズ200内の受電部230に接続されている。受電部230は、カメラボディ100から供給された電力を、レンズ制御部203を含む交換レンズ200内の各部に供給する。
【0027】
以下の説明では、接点BP1および接点LP1により構成される信号線を、信号線V33と呼ぶ。また、接点BP2および接点LP2により構成される信号線を、信号線GNDと呼ぶ。これらの接点LP1,LP2、BP1,BP2は、カメラボディ100側から交換レンズ200側へ電源供給するための、電源系接点を構成する。
【0028】
接点BP3,BP4,BP5,およびBP6は、ボディ側第1通信部117に接続されている。これらの接点に対応する交換レンズ200側の接点LP3,LP4,LP5,およびLP6は、レンズ側第1通信部217に接続されている。ボディ側第1通信部117とレンズ側第1通信部217は、これらの接点(通信系接点)を用いて、互いにデータの送受信を行う。ボディ側第1通信部117とレンズ側第1通信部217が行う通信の内容については、後に詳述する。
【0029】
なお以下の説明では、接点BP3および接点LP3により構成される信号線を、信号線CLKと呼ぶ。同様に、接点BP4および接点LP4により構成される信号線を信号線BDATと、接点BP5および接点LP5により構成される信号線を信号線LDATと、接点BP6および接点LP6により構成される信号線を信号線RDYと呼ぶ。
【0030】
接点BP7,BP8,BP9,およびBP10は、ボディ側第2通信部118に接続されている。これらの接点に対応する交換レンズ200側の接点LP7,LP8,LP9,およびLP10は、レンズ側第2通信部218に接続されている。レンズ側第2通信部218は、これらの接点(通信系接点)を用いて、ボディ側第2通信部118にデータの送信を行う。ボディ側第2通信部118とレンズ側第2通信部218が行う通信の内容については、後に詳述する。
【0031】
なお以下の説明では、接点BP7および接点LP7により構成される信号線を、信号線HREQと呼ぶ。同様に、接点BP8および接点LP8により構成される信号線を信号線HANSと、接点BP9および接点LP9により構成される信号線を信号線HCLKと、接点BP10および接点LP10により構成される信号線を信号線HDATと呼ぶ。
【0032】
接点BP11および接点BP12は、カメラボディ100内の電源回路140に接続されている。電源回路140は、接点BP12に、アクチュエータ等の駆動系を有し消費電力が比較的大きい回路(レンズ駆動部212等)の駆動電圧を供給する。すなわち、接点BP12および接点LP12からは、上記の各駆動部の駆動電圧が供給される。この接点BP12に供給可能な電圧値は、最小電圧値〜最大電圧値の範囲をもつが、その範囲はいずれも、前述した接点BP1に供給可能な電圧値範囲よりも大きい電圧値である(例えば、接点BP12に供給可能な最大電圧値は、接点BP1に供給可能な最大電圧値の数倍程度)。即ち接点BP12に供給される電圧値は、上述の接点BP1に供給される電圧値とは、その大きさが異なる電圧値である。なお接点BP12に標準的に供給される電圧値は、接点BP12に供給可能な最大電圧値と最小電圧値の中間値近傍の電圧値である。そしてこれにより、カメラボディ100側から交換レンズ200側に供給される電流は、電源ON状態において、約10mA〜数Aの電流値となる。
【0033】
接点BP11は、接点BP12に与えられる上記駆動電圧に対応する接地端子である。すなわち、接点BP11および接点LP11は、上記駆動電圧に対応する接地端子である。
【0034】
以下の説明では、接点BP11および接点LP11により構成される信号線を、信号線PGNDと呼ぶ。また、接点BP12および接点LP12により構成される信号線を、信号線BATと呼ぶ。これらの接点LP11,LP12、BP11,BP12は、カメラボディ100側から交換レンズ200側へ電源供給するための、電源系接点を構成する。
【0035】
なお、上述の接点BP12、接点LP12に供給される電圧値(電流値)と、接点BP1,LP1に供給される電圧値(電流値)との大小関係から明らかなように、それら各接点に供給される電圧にそれぞれに対する接地端子となる接点BP11および接点LP11を流れる電流の最大値と最小値との差は、接点BP2および接点LP2を流れる電流の最大値と最小値との差よりも大きくなっている。これは、アクチュエータ等の駆動系を有する各駆動部が消費する電力が、交換レンズ200内のレンズ制御部203等の電子回路に比べて大きいこと、ならびに、被駆動部材を駆動する必要がない場合には各駆動部が電力を消費しないことに拠る。
【0036】
(コマンドデータ通信の説明)
レンズ制御部203は、レンズ側第1通信部217を制御して、接点LP3〜LP6、すなわち信号線CLK,BDAT,LDAT,およびRDYを介して、ボディ側第1通信部117からの制御データの受信と、ボディ側第1通信部117への応答データの送信とを並行して、第1の所定周期(本実施形態では例えば16ミリ秒)で行う。以下、レンズ側第1通信部217とボディ側第1通信部117との間で行われる通信の詳細を説明する。
【0037】
なお、本実施形態において、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217と、ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117との間で行われる通信を「コマンドデータ通信」と称する。また、コマンドデータ通信に利用される4つの信号線(信号線CLK,BDAT,LDAT,およびRDY)から成る伝送路を第1伝送路と称する。
【0038】
図4は、コマンドデータ通信の例を示すタイミングチャートである。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117は、コマンドデータ通信の開始時(T1)、まず信号線RDYの信号レベルを確認する。信号線RDYの信号レベルはレンズ側第1通信部217の通信可否を表している。つまり、信号線RDYにはレンズ側第1通信部217から、データ通信の可否を表す通信可否信号が出力される。レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、通信できない状態である場合には、接点LP6からH(High)レベルの信号を出力する。すなわち、信号線RDYの信号レベルをHレベルにする。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117は、信号線RDYがHレベルである場合、これがLレベルになるまで通信開始しない。また通信中の次の処理を実行しない。
【0039】
信号線RDYがL(Low)レベルであれば、ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117は接点BP3からクロック信号401を出力する。すなわち、信号線CLKを介してレンズ側第1通信部217にクロック信号401を伝送する。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117はこのクロック信号401に同期して、接点BP4から制御データの前半部分であるボディ側コマンドパケット信号402を出力する。すなわち、信号線BDATを介してレンズ側第1通信部217にボディ側コマンドパケット信号402を伝送する。
【0040】
また、信号線CLKにクロック信号401が出力されると、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、クロック信号401に同期して接点LP5から応答データの前半部分であるレンズ側コマンドパケット信号403を出力する。すなわち、信号線LDATを介してボディ側第1通信部117にレンズ側コマンドパケット信号403を伝送する。
【0041】
レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、レンズ側コマンドパケット信号403の送信完了に応じて、信号線RDYの信号レベルをHレベルにする(T2)。レンズ制御部203は、受信したボディ側コマンドパケット信号402の内容に応じた処理である第1制御処理404(後述)を開始する。
【0042】
レンズ制御部203は第1制御処理404が完了すると、レンズ側第1通信部217に第1制御処理404の完了を通知する。レンズ側第1通信部217はこの通知に応じて、接点LP6からLレベルの信号を出力する。すなわち、信号線RDYの信号レベルをLレベルにする(T3)。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117はこの信号レベルの変化に応じて、接点BP3からクロック信号405を出力する。すなわち、信号線CLKを介してレンズ側第1通信部217にクロック信号405を伝送する。
【0043】
ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117はこのクロック信号405に同期して、接点BP4から制御データの後半部分であるボディ側データパケット信号406を出力する。すなわち、信号線BDATを介してレンズ側第1通信部217にボディ側データパケット信号406を伝送する。
【0044】
また、信号線CLKにクロック信号405が出力されると、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217はクロック信号405に同期して接点LP5から応答データの後半部分であるレンズがデータパケット信号407を出力する。すなわち、信号線LDATを介してボディ側第1通信部117にレンズ側データパケット信号407を伝送する。
【0045】
レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、レンズ側データパケット信号407の送信完了に応じて、信号線RDYの信号レベルを再びHレベルにする(T4)。レンズ制御部203は、受信したボディ側データパケット信号406の内容に応じた処理である第2制御処理408(後述)を開始する。
【0046】
以上のように、レンズ側第1通信部217は、カメラボディ100からクロック信号が出力される信号線CLKと、カメラボディ100からクロック信号に同期してデータ信号が出力される信号線BDATと、レンズ側第1通信部217からクロック信号に同期してデータ信号が出力される信号線LDATと、レンズ側第1通信部217からレンズ側第1通信部217のデータ通信の可否を表す通信可否信号が出力される信号線RDYと、を用いてカメラボディ100とのデータ通信を行う。
【0047】
ここで、レンズ制御部203が行う第1制御処理404、および第2制御処理408について述べる。
【0048】
例えば、受信したボディ側コマンドパケット信号402が、交換レンズ側の特定のデータを要求する内容であった場合について述べる。レンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402の内容を解析処理すると共に、当該要求されている特定データを生成する処理を実行する。更にレンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402に含まれているチェックサムデータを用いて、コマンドパケット信号402の通信にエラーがないか否かをデータバイト数から簡易的にチェックする通信エラーチェック処理をも実行する。この第1制御処理404で生成された特定データの信号は、レンズ側データパケット信号407としてボディ側に出力される。なお、この場合においてコマンドパケット信号402の後でボディ側から出力されるボディ側データパケット信号406は、レンズ側にとっては特に意味をなさないダミーデータ信号(チェックサムデータは含む)となっている。この場合にはレンズ制御部203は、第2制御処理408として、ボディ側データパケット信号406に含まれるチェックサムデータを用いた、上述の如き通信エラーチェック処理を実行する。
【0049】
また例えば、受信したボディ側コマンドパケット信号402が、レンズ側の被駆動部材を駆動する指示であった場合について述べる。例えば、コマンドパケット信号402がフォーカシングレンズ210bの駆動指示であり、受信したボディ側データパケット信号406がフォーカシングレンズ210bの駆動量であった場合について述べる。レンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402の内容を解析処理すると共に、その内容を理解したことを表す了解信号を生成する。更にレンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402に含まれているチェックサムデータを用いて、上述の如き通信エラーチェック処理をも実行する。この第1制御処理404で生成された了解信号は、レンズ側データパケット信号407としてボディ側に出力される。またレンズ制御部203は、第2制御処理408として、ボディ側データパケット信号406の内容の解析処理を実行すると共に、ボディ側データパケット信号406に含まれるチェックサムデータを用いた上述の如き通信エラーチェック処理を実行する。
【0050】
レンズ制御部203は第2制御処理408が完了すると、レンズ側第1通信部217に第2制御処理408の完了を通知する。これによってレンズ制御部203は、レンズ側第1通信部217に、接点LP6からLレベルの信号を出力させる。すなわち、信号線RDYの信号レベルをLレベルにする(T5)。
【0051】
なお受信したボディ側コマンドパケット信号402が、上述のようなレンズ側の被駆動部材(たとえばフォーカシングレンズ210b)を駆動する指示であった場合、レンズ制御部203は、レンズ側第1通信部217に信号線RDYの信号レベルをLレベルにさせつつ、レンズ駆動部212に対して、フォーカシングレンズ210bを当該駆動量だけ駆動する処理を実行させる。
【0052】
上述した時刻T1〜時刻T5に行われた通信が、1回のコマンドデータ通信である。上述のように、1回のコマンドデータ通信では、ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117により、ボディ側コマンドパケット信号402およびボディ側データパケット信号406がそれぞれ1つずつ送信される。すなわち、処理の都合上2つに分割されて送信されるものの、ボディ側コマンドパケット信号402およびボディ側データパケット信号406は2つ合わせて1つの制御データを構成する。
【0053】
同様に、1回のコマンドデータ通信では、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217によりレンズ側コマンドパケット信号403およびレンズ側データパケット信号407がそれぞれ1つずつ送信される。すなわち、レンズ側コマンドパケット信号403およびレンズ側データパケット信号407は2つ合わせて1つの応答データを構成する。
【0054】
以上のように、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、ボディ側第1通信部117からの制御データの受信と、ボディ側第1通信部117への応答データの送信とを並行して行う。コマンドデータ通信に利用される接点LP6および接点BP6は、他のクロック信号に同期しない非同期信号(信号線RDYの信号レベル/H(High)レベル、またはL(Low)レベル)が伝送される接点である。
【0055】
(ホットライン通信の説明)
レンズ制御部203は、レンズ側第2通信部218を制御して、接点LP7〜LP10、すなわち信号線HREQ,HANS,HCLK,およびHDATを介して、ボディ側第2通信部118へレンズ位置データを送信する。以下、レンズ側第2通信部218とボディ側第2通信部118との間で行われる通信の詳細を説明する。
【0056】
なお、本実施形態において、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218と、ボディ制御部103およびボディ側第2通信部118との間で行われる通信を「ホットライン通信」と称する。また、ホットライン通信に利用される4つの信号線(信号線HREQ,HANS,HCLK,およびHDAT)から成る伝送路を第2伝送路と称する。
【0057】
図5は、ホットライン通信の例を示すタイミングチャートである。本実施形態のボディ制御部103は、ホットライン通信を第2の所定周期(本実施形態では例えば1ミリ秒)毎に開始するように構成されている。この周期は、コマンドデータ通信を行う周期よりも短い。図5(a)は、ホットライン通信が所定周期Tn毎に繰り返し実行されている様子を示す図である。繰り返し実行されるホットライン通信のうち、ある1回の通信の期間Txを拡大した様子が図5(b)に示されている。以下、図5(b)のタイミングチャートに基づいて、ホットライン通信の手順を説明する。
【0058】
ボディ制御部103およびボディ側第2通信部118は、ホットライン通信の開始時(T6)、まず接点BP7からLレベルの信号を出力する。すなわち、信号線HREQの信号レベルをLレベルにする。レンズ側第2通信部218は、この信号が接点LP7に入力されたことをレンズ制御部203に通知する。レンズ制御部203はこの通知に応じて、レンズ位置データを生成する生成処理501の実行を開始する。生成処理501とは、レンズ制御部203がレンズ位置検出部213にフォーカシングレンズ210bの位置を検出させ、検出結果を表すレンズ位置データを生成する処理である。
【0059】
レンズ制御部203が生成処理501を実行完了すると、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218は接点LP8からLレベルの信号を出力する(T7)。すなわち、信号線HANSの信号レベルをLレベルにする。ボディ制御部103およびボディ側第2通信部118は、この信号が接点BP8に入力されたことに応じて、接点BP9からクロック信号502を出力する。すなわち、信号線HCLKを介してレンズ側第2通信部218にクロック信号を伝送する。
【0060】
レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218は、このクロック信号502に同期して、接点LP10からレンズ位置データを表すレンズ位置データ信号503を出力する。すなわち、信号線HDATを介してボディ側第2通信部118にレンズ位置データ信号503を伝送する。
【0061】
レンズ位置データ信号503の送信が完了すると、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218は接点LP8からHレベルの信号を出力する。すなわち、信号線HANSの信号レベルをHレベルにする(T8)。ボディ側第2通信部118は、この信号が接点BP8に入力されたことに応じて、接点LP7からHレベルの信号を出力する。すなわち、信号線HREQの信号レベルをHレベルにする(T9)。
【0062】
上述した時刻T6〜時刻T9に行われた通信が、1回のホットライン通信である。上述のように、1回のホットライン通信では、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218により、レンズ位置データ信号503が1つ送信される。ホットライン通信に利用される接点LP7、LP8、BP7、およびBP8は、他のクロック信号に同期しない非同期信号が伝送される接点である。つまり接点LP7およびBP7は、非同期信号(信号線HREQの信号レベル/H(High)レベル、またはL(Low)レベル)が伝送される接点であり、接点LP8およびBP8は、非同期信号(信号線HANSの信号レベル/H(High)レベル、またはL(Low)レベル)が伝送される接点である。
【0063】
なお、コマンドデータ通信とホットライン通信は、同時にも或いは一部並行的にも実行することが可能である。すなわち、レンズ側第1通信部217とレンズ側第2通信部218との一方は、その他方がカメラボディ100と通信を行っている場合であってもカメラボディ100と通信を行うことが可能である。
【0064】
(分光透過率データの説明)
本実施形態のレンズ側制御部203は、結像光学系210の分光透過率特性を表す分光透過率データをカメラボディ100に送信する。この分光透過率データはROM215に予め記憶されている。この分光透過率データとしては、画像として再生するのに必要な(画像生成する際に使用される)波長域の波長毎に対応する分光透過率が記憶されている。以下、本実施形態における具体的な分光透過率データについて説明する。
【0065】
図6は、分光透過率データの構成を示す図である。本実施形態において分光透過率データ10は、380nmから780nmまで10nm毎に選択された41通りの波長の各々に対応する、結像光学系210の光軸近傍における透過率を表すデータである。なお、380nmから780nmという波長域は、可視光線の波長域に対応している。各々の透過率R1〜R41は、0%〜100%を表す数値である。透過率はどのような符号化方式で表現してもよい。例えば各透過率を1バイトの符号なし整数とし、0%〜100%の透過率をそれぞれ0〜255の値で表現してもよいし、浮動小数点数により0%〜100%の透過率をそれぞれ0.0〜1.0という値で表現してもよい。
【0066】
分光透過率データ10を構成する透過率の数は、ROM215の容量や通信時間等の観点からは、できるだけ少ないことが望ましい。本実施形態の分光透過率データ10において、波長域の刻みが10nmとなっているのは、分光透過率データ10の肥大化を避けながら、必要十分に分光透過率特性の精度を確保するためである。
【0067】
ボディ側制御部103は初期通信時、第2伝送路320を介して交換レンズ200に分光透過率データ10を要求する。レンズ側制御部203はこの要求に応じて、ROM215に記憶されている分光透過率データ10を、第2伝送路320を介してカメラボディ100に送信する。
【0068】
なお、ここでいう初期通信とは、例えばカメラボディ100の電源スイッチがOFFからONになった時や、カメラボディ100に交換レンズ200が取り付けられた時に、ボディ側制御部103およびレンズ側制御部203により実行される通信のことを指す。初期通信において、ボディ側制御部103およびレンズ側制御部203は、結像光学系210の特性を表すデータやカメラボディ100の特性を表すデータの授受を行う。
【0069】
ボディ側制御部103は受信した分光透過率データ10を不図示のRAMに記憶させる。そして、この分光透過率データ10に基づいて、撮像素子104に対し、後述のゲイン調節処理を実行する。
【0070】
(ゲイン調節処理の説明)
ゲイン調節処理は、撮像素子104が有する受光素子の出力ゲインを調節することにより、撮像信号のホワイトバランスを適正なものにする処理である。以下、本処理について説明する。
【0071】
撮像素子104の撮像面には、被写体光を受光し光量に応じた電気信号を出力する受光素子が二次元状に多数配列されている。これらの受光素子の表面には、各受光素子の位置に対応するように、それぞれ赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタが設けられている。カラーフィルタが設けられていることにより、撮像素子104から出力される撮像信号は、それぞれRGB表色系の色情報を有することとなる。
【0072】
他方、撮像素子104の各受光素子には、入射光の波長毎に感度特性が存在する。つまり、例えば380nmの波長の入射光と780nmの波長の入射光とでは、光量が同一でも出力される電気信号が異なることがある。これにより、撮像信号において、例えば青(B)が緑(G)よりも弱くなるという現象が発生しうる。そこで、カメラボディ100内のROM(不図示)には、予め撮像素子104の分光感度特性を表す分光感度データが格納されている。ボディ制御部103は、この分光感度データとレンズ側第1通信部から受信した結像光学系210の分光透過率データ10とに基づいて、赤(R)、緑(G)、青(B)の各々に対応する受光素子の出力ゲインを調節し、撮像素子104から出力される撮像信号のホワイトバランスを適正な状態に保つ。
【0073】
上述した第1の実施の形態によるカメラシステムによれば、次の作用効果が得られる。
(1)レンズ駆動部212は、フォーカシングレンズ210bを駆動してフォーカシングレンズ210bの光軸方向の位置を変化させる。レンズ側第2通信部218は、第2伝送路を介してカメラボディ100にフォーカシングレンズ210bの位置を送信する。レンズ側第1通信部217は、第1伝送路を介してカメラボディ100に、画像生成に使用される波長域の各波長に対応する、結像光学系210の透過率を表す分光透過率データ10を送信する。このようにフォーカシングレンズ位置の情報を送信する伝送路とは個別に設けられた伝送路を用いて分光透過率データ10の送信を行うようにしたので、フォーカシングレンズ210bの制御に悪影響を与えることがない。
【0074】
(2)十分な通信間隔(本実施形態では16msec周期)を持つコマンドデータ通信系を用いて分光透過率情報を送信するよう構成したので、比較的データ容量の大きな分光透過率情報であっても通信期間的に余裕を持って確実にデータ送信を行うことができる。
【0075】
(3)380nmから780nmまで10nm毎に選択された41通りの波長の各々に対応する、結像光学系210の光軸近傍における透過率を表す分光透過率データ10を送信するように構成したので、ボディ側に送信すべき分光透過率データ10の送信量が必要以上に大容量にならずに済み、データ通信の高速化に寄与できる。
【0076】
(4)ボディ制御部103は、ボディ側第1通信部117により受信された分光透過率データ10に基づいて、撮像素子104のゲインを調節する。このようにしたので、交換レンズ200の分光透過率特性に応じた正確なホワイトバランスを得ることができる。
【0077】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係るカメラシステムは、第1の実施の形態と同様の構成を備えるが、分光透過率データの構造が図6に示したものとは異なっている。以下、第1の実施の形態に係るカメラシステムと同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0078】
図7は、結像光学系210の分光透過率特性の一例を示すグラフである。このグラフは横軸が波長、縦軸が当該波長の光の透過率をそれぞれ表している。図7に示すように、一般に分光透過率は、可視光の短波長寄りの波長域において変化が激しくなっている。そこで本実施形態では、分光透過率データにおいて、変化が急峻な波長域において、波長の刻みを細かくすることにより、分光透過率データの精度を向上させている。
【0079】
図8は、第2の実施の形態における分光透過率データの一例を示す図である。この分光透過率データ20には、図6に示した分光透過率データ10に加えて更に、R1A、R2A、…という新たな透過率が含まれている。本実施形態では、10nm毎に選択された、380nm〜780nmにおける41通りの波長について、隣り合う2つの波長の透過率の差が所定量(例えば3%)以上である場合、その2つの波長の間の波長に対応する透過率が分光透過率データ20に含まれるようにした。前述の通り、透過率の変化は短波長寄りの波長域において大きいため、図8では380nmと550nmとの間において、隣り合う2つの波長の透過率の差が所定量以上となっている。これにより、385nmの波長に対応する透過率R1A、395nmの波長に対応する透過率R2A、…、545nmの波長に対応する透過率R17Aが分光透過率データ20に含まれる。
【0080】
上述した第2の実施の形態によるカメラシステムによれば、次の作用効果が得られる。
(1)分光透過率データ20は、10nm毎に選択された41通りの波長について、隣り合う2つの波長の透過率の差が所定量以上である場合、その2つの波長の間の波長に対応する透過率を含む。このようにしたので、分光透過率データ20のデータ量の増加を最小限に保ちつつ、分光透過率特性の精度を向上させることができる。
【0081】
(第3の実施の形態)
図9は、第3の実施の形態に係るレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。第3の実施の形態に係るカメラシステム2は、第1の実施の形態のカメラシステム1と同様の構成を備えるが、新たに減光フィルタ(NDフィルタ)220を内蔵する。以下、第1の実施の形態に係るカメラシステムと同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0082】
カメラシステム2は、カメラボディ100と交換レンズ400とから成る。交換レンズ400は、第1の実施の形態に係る交換レンズ200の各部に加えて、減光フィルタ220とフィルタ検知部221とを備える。減光フィルタ220は、結像光学系210を透過する光量を減少させる光学フィルタである。減光フィルタ220は、不図示の駆動機構により結像光学系210の光路上の作用位置(図9において実線で示す位置)と結像光学系210の光路から外れた退避位置(図9において破線で示す位置)とを移動可能に構成されている。ユーザはカメラボディ100に対して所定の操作を行うことにより、減光フィルタ220を作用位置と退避位置との間で移動させることができる。減光フィルタ220を作用位置に移動させることにより、絞り211の開口径を変化させることなく、結像光学系210の透過光量を減少させることが可能となる。フィルタ検知部221は、結像光学系210の光路上の減光フィルタ220の有無を検知する。つまり、減光フィルタ220が作用位置にあるのか、それとも退避位置にあるのかを検知する。
【0083】
ところで、減光フィルタ220のような光学フィルタが結像光学系210と組み合わされた場合、そのような光学系の分光透過率特性は、減光フィルタ220を含まない結像光学系210から変化する。そこで、本実施形態のROM215には、図6に示した構成の分光透過率データを、結像光学系210のみを考慮したものと、減光フィルタ220の影響を加味したものと、の2つが記憶されるようにしている。本実施形態のレンズ制御部203は、フィルタ検知部221により減光フィルタ220が退避位置にあることが検知された場合、結像光学系210のみを考慮した分光透過率データをレンズ側第1通信部217に送信させる。他方、フィルタ検知部221により減光フィルタ220が作用位置にあることが検知された場合、減光フィルタ220を考慮した分光透過率データをレンズ側第1通信部217に送信させる。
【0084】
なお、ROM215にこれら2種類の分光透過率データを格納するのではなく、演算により減光フィルタ220を考慮した分光透過率データを作成するようにしてもよい。例えば、減光フィルタ220の存在が分光透過率特性に与える影響を多項式の係数として保持する。そして、フィルタ検知部221により減光フィルタ220が作用位置にあることが検知された場合、レンズ制御部203が上記の係数を用いた演算を分光透過率データ10に適用し、新たな分光透過率データを作成する。カメラボディ100には、この新たな分光透過率データが送信されるようにすればよい。
【0085】
本実施形態では、カメラボディ100に送信すべき分光透過率データが、カメラシステム2の動作中に変化しうる。そこで、本実施形態のレンズ制御部203は、分光透過率データを初期通信において送信する代わりに、カメラボディ100が電源オン状態の間、所定周期毎に繰り返し分光透過率データを送信する。この所定周期は例えば撮像素子104の画像出力周期に応じた周期とすることができる。例えば撮像素子104の画像出力周期が毎秒60フレーム(約16ミリ秒につき1フレーム)であれば、約16ミリ秒毎に分光透過率データが送信される。
【0086】
上述した第3の実施の形態によるカメラシステムによれば、次の作用効果が得られる。
(1)結像光学系210の光路上の作用位置と、結像光学系210の光路から外れた退避位置とを移動可能な減光フィルタ220を備える。フィルタ検知部221は、結像光学系210の光路上の減光フィルタ220の有無を検知する。レンズ側第1通信部217は、フィルタ検知部221により減光フィルタ220の光路上の存在が検知された場合には、結像光学系210と減光フィルタ220とを組み合わせた光学系の分光透過率特性を表す分光透過率データを送信する。このようにしたので、減光フィルタ220の特性を考慮した最適な分光透過率データをカメラボディ100に送信することが可能となる。
【0087】
(2)レンズ側第1通信部217は、分光透過率データ20を所定周期毎に送信する。このようにしたので、減光フィルタ220の現在の状態に応じた最新の分光透過率データを利用することができる。
【0088】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0089】
(変形例1)
第2の実施の形態において、レンズ側第1通信部217が、所定周期毎ではなく、フィルタ検知部221による減光フィルタ220の光路上の有無の検知結果が変化したことに応じて分光透過率データ20を送信するようにしてもよい。このようにすることで、データ通信の制御が複雑になる代わりに、第1伝送路の通信量を削減することが可能となる。
【0090】
(変形例2)
第3の実施の形態において、減光フィルタ220は他の種類の光学フィルタであってもよい。例えば色温度変換フィルタ等、種々の光学フィルタを用いることが可能である。
【0091】
(変形例3)
第3の実施の形態において、光学フィルタを交換レンズ400に内蔵しなくてもよい。例えばフィルタ検知部220が、交換レンズ400の前面に取り付けられた光学フィルタを検知可能に構成し、レンズ制御部203がこの検知結果に応じて異なる分光透過率データを送信するようにしてもよい。この場合、光学フィルタの種類等を別途レンズ制御部203が検知可能に構成し、その結果に応じて結像光学系210の分光透過率データを加工するのが望ましい。
【0092】
(変形例4)
第3の実施の形態において、分光透過率データが所定周期毎に送られるのではなく、フィルタ検知部221による減光フィルタ220の有無の検知結果が変化したことに応じて分光透過率データが送信されるようにしてもよい。このようにすることで、必要でない場合には分光透過率データが送信されず、通信データ量を削減することが可能となる。
【0093】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1…カメラシステム、10、20…分光透過率データ、100…カメラボディ、101、201…レンズマウント、102、202…保持部、103…ボディ制御部、104…撮像素子、111…表示装置、117…ボディ側第1通信部、118…ボディ側第2通信部、200、400…交換レンズ、203…レンズ制御部、210…結像光学系、210b…フォーカシングレンズ、212…レンズ駆動部、213…レンズ位置検出部、214…ズーム位置検出部、215…ROM、216…RAM、217…レンズ側第1通信部、218…レンズ側第2通信部、220…減光フィルタ、221…フィルタ検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラボディが着脱可能に取り付けられる取付手段と、
フォーカシングレンズを有する結像光学系と、
前記フォーカシングレンズを駆動して前記フォーカシングレンズの被駆動状態を変化させる駆動手段と、
第1の伝送路を介して前記カメラボディに前記結像光学系の分光透過率特性を表す分光透過率情報を送信する第1の送信手段と、
前記第1の伝送路とは異なる第2の伝送路を介して前記カメラボディに前記フォーカシングレンズの被駆動状態を送信する第2の送信手段とを備え、
前記分光透過率情報は、画像生成に使用される波長域の各波長に対応する、前記結像光学系の透過率を表す情報であることを特徴とする交換レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の交換レンズにおいて、
前記分光透過率情報は、380nmから780nmまで10nm毎に選択された41通りの波長の各々に対応する、前記結像光学系の光軸近傍における透過率を表す情報であることを特徴とする交換レンズ。
【請求項3】
請求項2に記載の交換レンズにおいて、
前記分光透過率情報は、前記41通りの波長について、隣り合う2つの波長の透過率の差が所定量以上である場合、その2つの波長の間の波長に対応する透過率を更に含むことを特徴とする交換レンズ。
【請求項4】
請求項3に記載の交換レンズにおいて、
前記分光透過率情報は、380nmと、780nmより小さい所定の波長との間において、隣り合う2つの波長の透過率の差が所定量以上であることを特徴とする交換レンズ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の交換レンズにおいて、
前記結像光学系の光路上の光学フィルタの有無を検知するフィルタ検知手段を更に備え、
前記第1の送信手段は、前記フィルタ検知手段により前記光学フィルタの存在が検知された場合には、前記結像光学系と前記光学フィルタとを組み合わせた光学系の分光透過率特性を表す前記分光透過率情報を送信することを特徴とする交換レンズ。
【請求項6】
請求項5に記載の交換レンズにおいて、
前記結像光学系の光路上の作用位置と、前記結像光学系の光路から外れた退避位置とを移動可能な光学フィルタを更に備えることを特徴とする交換レンズ。
【請求項7】
請求項5または6に記載の交換レンズにおいて、
前記第1の送信手段は、前記フィルタ検知手段による前記光学フィルタの有無の検知結果が変化したことに応じて前記分光透過率情報を送信することを特徴とする交換レンズ。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の交換レンズにおいて、
前記第1の送信手段は、前記分光透過率情報を所定周期毎に送信することを特徴とする交換レンズ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の交換レンズが着脱可能に取り付けられるレンズ取付手段と、
前記分光透過率情報を前記交換レンズから受信する受信手段と、
被写体像を撮像し撮像信号を出力する撮像手段と、
前記分光透過率情報に基づいて、前記撮像手段のゲインを調節するゲイン調節手段と、
を備えることを特徴とするカメラボディ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−3262(P2013−3262A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132491(P2011−132491)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】