説明

交通管制制御システム

【課題】 設備コスト及びランニングコストの低い交通管制システムに好適な交通管制制御システムを提供する。
【解決手段】 所定の地域を複数の範囲に区分し、その区分された各範囲内(各県内)における道路網の交通量や交通流等の交通状態をそれぞれ管制制御する複数の交通管制制御手段と、前記複数の交通管制制御手段と通信回線を介して接続され、それら複数の交通管制制御手段を一括して駆動制御する中央制御手段とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各都道府県のような所定の地域内の道路交通を制御する交通管制制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、都道府県には、図6に示されるような交通管制システムがそれぞれ構築されていて、所定の地域内(図6においてはA1県内)における道路交通を適切に配分・誘導して道路交通の利便性が損なわれないように制御されているとともに、道路交通の安全性が確保されるように運用されている(非特許文献1参照)。
なお、上述では、交通管制の行われる一つの範囲を都道府県を地域としたが、都道府県の中をさらに区分して交通管制が行われる場合もあり、また、所定の高速道路や自動車道を範囲として交通管制が行われる場合も存在している。このため、本発明では、「都、道、府又は県」というときは、都道府県の中をさらに区分した範囲及び所定の高速道路や自動車道の範囲を含んだ意味で用いられている。以下、特に断りがないときは、説明を簡単にするために、一つの交通管制を行う範囲を県で説明する。
【0003】
図6に示されるA1県の交通管制システム100は、緑、黄及び赤色灯等を備えた信号機1、超音波式車両感知器2及び光ビーコンからなる光学式車両感知器3を駆動制御する信号制御機4が信号制御下位装置5を介してLANL1に接続されているとともに、信号制御下位装置5の中には、CCDカメラ等からなる画像型車両感知器6及びAVI(Automatic Vehicle Identification)端末装置(車両自動認識装置)7を接続したものも存在している。
【0004】
また、上記LANL1には、交通情報表示板8が端末情報板制御装置9を介して接続され、路側通信装置10が端末制御装置11を介して接続され、さらにファクシミリ装置12及び電話機13を接続している通信回線L2が端末制御装置14を介して接続されている。
【0005】
さらに、上記LANL1には、A1県の主要都市等に構築されている小型化された交通管理システムである都市サブセンタの処理装置15が接続されている。また、図6中、16はCCDカメラ等からなる交通流監視カメラであり、この交通流監視カメラ16は、ITVモニタ制御装置17を介して後述する中央装置に接続されるように構成されている。なお、LANL1には、図示しないが駐車場管理装置等の端末機も接続されているが、ここでは省略されている。
【0006】
図6中、101は、A1県の交通管制センタ内に設置された中央装置であり、上記LANL1に接続されていて、交通情報収集装置102、信号制御装置103、交通情報提供装置104、運用管理装置105及び交通情報交換装置106を含んで構成されている。
【0007】
上記各装置102〜106は、交通情報データベース107に格納されている所定のデータに従って駆動制御されるように構成されている。これら装置102〜106のうち、交通情報収集装置102は、超音波式車両感知器2等の情報収集機器から収集したデータを処理できるように構成されており、信号制御装置103は、上記交通情報収集装置102で収集されたデータに基づいて信号機1を制御できるように構成されており、交通情報提供装置104は、上記交通情報収集装置102で収集処理されて生成された渋滞情報や旅行時間情報等の交通情報を交通情報板8や路側通信装置10等を介して提供できるように構成されており、運用管理装置105は、この交通管制システム100の全体を統括的に管理するもので、交通状況表示板やマンマシン装置等を備えて構成され、事故情報や規制情報等の情報に合せて交通管制システム100へ随時介入できるように構成されており、そして交通情報交換装置106は、上記交通情報提供装置104で生成された交通情報をこの交通管制システム100に係る箇所に提供したり、あるいは他の箇所から交通情報を得ることができるように構成されている。
【0008】
【非特許文献1】(財)日本交通管理技術協会、(財)都市交通問題調査会発行「警察によるITS」1998年11月1日発行、第41〜45頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の交通管制システムは、各都道府県内の所定の地域内において道路交通を適切に配分・誘導して道路交通の利便性を高め、また道路交通の安全性を確保することができるという大きな効果を有している。しかしながら、上記図6に示される交通管制システムは全国に複数存在し、その全体の設備費は膨大になる欠点があった。特に、各交通管制センタ(上記図6の中央装置101の設置されている箇所)には、交通管制システムの運用担当者である交通管制官の他に、中央装置の維持管理を行う保守要員も必要とするために、人件費を含めたランニングコストがかさむという欠点があった。また、交通管制センタには、保守要員が常駐しても故障の程度によっては、中央装置の設計・製造会社の技術者によって解決しなければならないことがあり、復旧に時間を要することがあった。
【0010】
また、上記従来の交通管制システムには、交通情報交換装置が備えられていて、隣接する県からの交通情報も得られるように構成されているが、各都道府県の交通管制が独立しているので県境い付近の円滑な交通流が損なわれるおそれがあった。
【0011】
そこで、本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、設備費及びランニングコストが安く、仮に故障が発生しても速やかに復旧が可能で、しかも県境付近の円滑な交通流を図れる交通管制制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る交通管制制御システムは、上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、所定の地域を複数の範囲に区分し、その区分された各範囲内における道路網の交通量や交通流等の交通状態をそれぞれ管制制御する複数の交通管制制御手段と、前記複数の交通管制制御手段と通信回線を介して接続され、それら複数の交通管制制御手段を一括して駆動制御する中央制御手段とからなることを特徴としている。
上記中央制御手段には、複数の交通管制制御手段を介して収集された車両感知情報等の所定の検出情報及び他の所定の箇所から収集された気象情報等の所定の情報を収集して処理する情報収集系処理手段が設けられており、また、信号機の駆動信号を生成して複数の交通管制手段にそれぞれ送信する信号系処理手段が設けられており、さらに、渋滞情報等の所定の道路情報を生成して複数の交通管制制御手段にそれぞれ送信する情報提供系処理手段が設けられることを含んでいる。
本発明の請求項2に記載の交通管制制御システムにおいて、前記複数の交通管制制御手段には、区分された範囲内の交通状態を監視し、必要に応じて制御介入を行う管理手段がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
本発明の請求項3に記載の交通管制制御システムにおいて、前記所定の地域を複数に区分して形成される範囲は、都、道、府又は県であることを特徴としている。
本発明の請求項4に記載の交通管制制御システムにおいて、前記複数の交通管制制御手段と前記中央制御手段とを接続する通信回線は、多重化されていることを特徴としている。
本発明の請求項5に記載の交通管制制御システムにおいて、前記中央制御手段は、所定の距離を隔てて複数箇所に設置されていることを特徴としている。
本発明の請求項6に記載の交通管制制御システムにおいて、前記中央制御手段は、その中央制御手段を維持管理する維持管理業者又はその中央制御手段の所有権者の初期投資により設置されるものであることを特徴としている。
本発明の請求項7に記載の交通管制制御システムにおいて、前記維持管理業者又は所有権者は、前記都、道、府又は県から前記中央制御手段の使用料として所定の固定金額、又はその所定の固定金額に代えて、あるいはその所定の固定金額と共にその都、道、府又は県の交通量、交通渋滞量、あるいは信号機等の端末機数等の所定の条件に基づいて定められた金額の金銭を徴収するものであることを特徴としている。
本発明の請求項8に記載の交通管制制御システムにおいて、前記管理手段は、前記中央制御手段を維持管理する維持管理業者、その中央制御手段の所有権者又はその管理手段の所有権者の初期投資により設置されるものであることを特徴としている。
本発明の請求項9に記載の交通管制制御システムにおいて、前記維持管理業者又は所有権者は、前記都、道、府又は県から前記管理手段の使用料として所定の固定金額、又はその所定の固定金額に代えて、あるいはその所定の固定金額と共にその都、道、府又は県の交通量、交通渋滞量、あるいは信号機等の端末機数等の所定の条件に基づいて定められた金額の金銭を徴収するものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の交通管制制御システムは、所定の地域を複数の範囲に区分し、その区分された各範囲内における道路網の交通量や交通流等の交通状態をそれぞれ管制制御する複数の交通管制制御手段と、前記複数の交通管制制御手段と通信回線を介して接続され、それら複数の交通管制制御手段を一括して駆動制御する中央制御手段とからなるので、一つの中央制御手段で複数の交通制御手段を制御することができる。すなわち、一つの中央制御手段で複数の県(都道府を含む)の交通制御手段を制御できるので、県境付近の円滑な交通流が確保できるとともに、全体の設備費を小さくすることが可能となる。また、一つの中央制御手段に対してのみ保守要員を配置するだけで足りるので、保守要員数も少なくすることができ、ランニングコストを小さくすることが可能となる。しかも、中央制御手段を、例えばその中央制御手段の製造会社に係る施設内に設置したようなときは、中央制御手段(中央制御装置)の設計的知識や高度な知識を有する技術者が保守管理できるので、仮に故障が発生しても速やかに復旧することが可能となる。
また、上記中央制御手段に情報収集系中央手段を含んでいるので、従来と同様に制御に必要な情報を効果的に収集することができ、また、その中央制御手段に信号制御系中央手段を含んでいるので、信号機の制御を効果的に行うことができ、さらに、その中央制御手段に情報提供系中央手段を含んでいるので、交通情報を効果的に提供することができる。
本発明の請求項2に記載の交通管制制御システムは、複数の交通管制制御手段には、区分された範囲内の交通状態を監視し、必要に応じて制御介入を行う管理手段がそれぞれ設けられているので、交通管制室において従来と同様に運用担当者である交通管制官が必要に応じて運用制御することができる。
本発明の請求項3に記載の交通管制制御システムは、所定の地域を複数に区分して形成される範囲は、都、道、府又は県であるので、一つの行政区域毎の交通管制を効率よく行うことができる。
本発明の請求項4に記載の交通管制制御システムは、複数の交通管制制御手段と中央制御手段とを接続する通信回線は、多重化されているので、一つの通信回線に異常が発生しても、他の通信回線を介して通信ができるから、交通管制制御に支障を来たすのを未然に防止することができる。
本発明の請求項5に記載の交通管制制御システムは中央制御手段は、所定の距離を隔てて複数箇所に設置されているので、一つの中央制御手段に故障が発生しても、他の正常な中央制御手段で交通管制ができるから、交通管制制御に支障を来たすのを未然に防止することができる。
本発明の請求項6に記載の交通管制制御システムは、中央制御手段は、その中央制御手段を維持管理する維持管理業者又はその中央制御手段の所有権者の初期投資により設置されるので、各都道府県では、中央制御手段の設備費を負担する必要がなく、低コストに交通管制を行うことができる。
本発明の請求項7に記載の交通管制制御システムは、維持管理業者又は所有権者は、都、道、府又は県から中央制御手段の使用料として所定の固定金額、又はその所定の固定金額に代えて、あるいはその所定の固定金額と共にその都、道、府又は県の交通量、交通渋滞量、あるいは信号機等の端末機数等の所定の条件に基づいて定められた金額の金銭を徴収するので、中央制御手段の維持管理業者又はその中央制御手段の所有権者は、各都道府県から安定した収入を得ることができる。
本発明の請求項8に記載の交通管制制御システムは、管理手段は、中央制御手段を維持管理する維持管理業者、その中央制御手段の所有権者又はその管理手段の所有権者の初期投資により設置されるので、各都道府県では、交通管制制御手段の設備費を負担する必要がなく、低コストに交通管制を行うことができる。
本発明の請求項9に記載の交通管制制御システムは、維持管理業者又は所有権者は、前記都、道、府又は県から管理手段の使用料として所定の固定金額、又はその所定の固定金額に代えて、あるいはその所定の固定金額と共にその都、道、府又は県の交通量、交通渋滞量、あるいは信号機等の端末機数等の所定の条件に基づいて定められた金額の金銭を徴収するので、中央制御手段の維持管理業者、その中央制御手段又は管理手段の所有権者は、各都道府県から安定した収入を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る交通管制制御システムを組込んだ交通管制システムの概略構成図であり、上述した図6と同一構成要素については同一符号が付されている。この図1では、図2に示されるように、東北地方の複数の県(図示の例ではA1〜A6県)の道路交通を管理する例が示されている。もちろん、この複数の県は、例えば都を含む関東甲信越の地域全体を含む都県からなる範囲であってもよく、あるいは九州地方全体の県からなる範囲であってもよい。
【0015】
上述した図6と同一符号についての説明は重複するので省略するが、符号1,2,3,6,7,8,10,12,13,16は、道路交通の現場に設置され、本発明の端末機を構成し、符号4,5,9,11,14,15,17は、その端末機を制御する制御装置を構成している。そして一点鎖線で示される範囲の交通制御装置a1は、本発明の交通管制制御手段をなし、A1県に設けられ、A2県,A3県…にも、このA1県と同様の交通制御装置a2,a3…がそれぞれ設けられていて、これら交通制御装置a1,a2…は、接続装置21を介して通信回線L0にそれぞれ接続されている。
【0016】
各交通制御装置a1,a2…は同一構成なので、A1県に設置される交通制御装置a1を例に説明すると、A1県の交通管制室には、本発明の管理手段をなす管理装置22が接続装置23を介して通信回線L1に接続されている。そしてこの管理装置22には、A1県の交通状況を表示する状況表示板22a、運用担当者である交通管制官が操作する必要に応じて制御介入することが可能なマンマシン22b、交通量等の所定の交通情報をプリントアウトする帳票装置(帳票作成装置)22c及び交通量等の所定のデータを加工するデータ加工装置22dを含んで構成されている。
【0017】
図1中、30は本発明の中央制御手段をなす中央制御装置であって、接続装置31を介して通信回線L0に接続されている。この中央制御装置30は、A1県〜A6県のうちの一つの県(図示の例ではA1県)の所定の交通運用サービスセンタ内に設置され、例えばA1県内の中央制御装置30の設計・製造会社に係る施設内に設置される。この交通運用サービスセンタ内には、中央制御装置30の設計的知識を有するような高度な技術を有する者が保守要員として常駐している。
【0018】
中央制御装置30には、データベース32,情報収集系中央装置33、信号制御系中央装置34、情報提供系中央装置35、運用管理系中央装置36及びマンマシン37が含まれている。そして、情報収集系中央装置33、信号制御系中央装置34、情報提供系中央装置35及び運用管理系中央装置36は、上述した図6中の交通情報収集装置102、信号制御装置103、交通情報提供装置104及び運用管理装置105にそれぞれ対応した機能を有し、それぞれコンピュータを中心にして構成されている。
【0019】
情報収集系中央装置33は、A1県,A2県…の交通管制に必要となる情報を収集するもので、この情報を基に信号制御系中央装置34が信号制御を行い、情報提供系中央装置35が交通情報の提供が行えるように構成されている。この情報収集系中央装置33に収集される情報としては、車両感知器(2,3,6,7)等から得られた交通量、速度、渋滞度、車種等のリアルタイムに収集された情報、気象状況や路面等の他の機関から提供される情報、事故や工事等の交通障害情報等で、信号制御や交通情報の基礎となるあらゆる情報が含まれる。
【0020】
信号制御系中央装置34は、情報収集系中央装置33等で収集される情報に基づいて信号制御用の交通指標を算出し、その交通指標に適応した信号制御用のパラメータを決定し、交差点等に設置されている信号機1をリアルタイムに制御できるように構成されている。したがって、この信号制御系中央装置34は、A1県,A2県…の県境に関係なく、A1県,A2県…全体を一つの交通管制区域として最も効率的に処理するとともに、安全な交通流を形成することができる。
【0021】
情報提供系中央装置35は、情報収集系中央装置33で収集された情報に基づいて渋滞情報、旅行時間情報、事故・規制情報、駐車場情報等を路側通信装置10、交通情報板8及び図示しない車載機等を介して提供できるように構成されている。この交通情報は、FAX12や電話機13を介しても自動的に提供可能であるとともに、従来と同様に、交通情報センタ等の他の機関や箇所に対しても提供することができるように構成されている。
【0022】
運用管理系中央装置36は、データベース32に記憶されているデータを用いて交通管制システム20の全体を統括管理するもので、A1県,A2県…全体の交通情報やシステムの運用状態を監視できるように構成されていて、各A1県,A2県…の状況表示板22aにそれぞれ表示できるように構成されている。したがって、各A1県,A2県…の交通管制官は、従来と同様にマンマシン22bを介して制御に介入することができるように構成されている。
【0023】
図3は、上述の構成からなる中央制御装置30のバックアップを図るために、複数個(図示の例では2個)用意された交通管制システム20´が示されている。すなわち、この交通管制システム20´では、地震等の災害等により2つの中央制御装置30,30´が同時にダウンしないように互いに所定の距離を保って、また建屋を異にして設けられている。この図3の例では、中央制御装置30と中央制御装置30´とがA1県内において所定の距離を保って設けられている。そして、中央制御装置30´も接続装置31´を介して通信回線L0´に接続されている。もちろん、この他方の中央制御装置30´をA1県以外の県、例えばA2県に設置することも可能である。
【0024】
また、この交通管制システム20´では、通信回線も複数個(図示の例では2個)設けられていて、通信断による交通管制制御の中断を未然に防止できるように構成されている。この図3の例では、通信回線L0と通信回線L0´との2本の通信回線を用いて通信断によって交通管制システムが影響を受けないように工夫されている。
【0025】
図4は、上述の多重化(二重化)構成による交通管制システム20´の制御動作を示したフローチャートである。今、当初、一方の中央制御装置30でA1県〜A6県の各交通制御装置a1〜a6を制御しているものとする(ステップ100。(以下、ステップを「S」とする。))。なお、この一方の中央制御装置30で各交通制御装置a1〜a6を制御している間においては、他方の中央制御装置30´は、いつでもその一方の中央制御装置30に代わって各交通制御装置a1〜a6を制御できるように待機状態に置かれている。
【0026】
中央制御装置30の制御処理装置38は、所定の故障検出プログラムに従って中央制御装置30の稼動状態を監視している(S102)。したがって、中央制御装置30に故障が発生したときは(S104肯定(Y))、制御処理装置38の切換機能により他方の中央制御装置30´に切換えられ(S106)、その他方の中央制御装置30´により各交通制御装置a1〜a6が制御される(S108)。そして、故障と判定された一方の中央制御装置30は、交通運用サービスセンタ内に常駐している高度な技術を有する保守要員によって速やかに復旧処理され、他方の中央制御装置30´の故障発生に対処するために待機状態におかれる。
【0027】
切換処理された他方の中央制御装置30´においても、上述した一方の中央制御装置30と同様の各交通制御装置a1〜a6の制御が行われるとともに(S108)、その他方の中央制御装置30´も故障チェック処理が行われる(S110)。もし、他方の中央制御装置30´に故障が検出されたときは、復旧されて待機状態におかれている一方の中央制御装置30に切換えられる(S112肯定、S114)。
【0028】
なお、上述の例では、一方の中央制御装置30及び他方の中央制御装置30´は、自装置が故障するまで他装置に切換わらないように制御されるが、例えば一方の中央制御装置30を主装置とし、他方の中央制御装置30´を予備装置とし、主装置の故障が復旧したときに予備装置から切換えて、通常、主装置(一方の中央制御装置30)で各交通制御装置a1〜a6を制御するようにしてもよい。この場合は、予備装置としての他方の中央制御装置30´の構成を各交通制御装置a1〜a6の基本的な最小限の制御を行うための簡易な装置とすることができる。
【0029】
交通運用サービスセンタ内に設置される中央制御装置30,30´(以下、中央制御装置30のみで説明する。)及び各県A1〜A6にそれぞれ設置される管理装置22は、ここでは、中央制御装置30を維持管理する維持管理業者の初期投資によって設置されている。すなわち、これら装置30,22は、各県A1〜A6の負担なしに設置されている。なお、管理装置22は、各県(A1〜A6)の初期投資により設置するようにしてもよい。また、初期投資をする者は、上述の中央制御装置30の維持管理業者としたが、この者と共同して、又はこの者に代えて総合商社や金融機関等の他の者が初期投資を行って中央制御装置30又は管理装置22の所有権者となるようにしてもよい。
【0030】
以下、中央制御装置30及び管理装置22の初期投資を行った維持管理業者を甲として説明すると、この甲は、自己の中央制御装置30及び管理装置22を使用している各県(A1〜A6)からこれら装置30,22の使用料に相当するサービス料を徴収することになる。このサービス料は、各県に対して所定の固定金額とすることができるが、中央制御装置30及び管理装置22の運転制御のためのプログラム負荷は、信号機1等の端末数の数量、又は交通量ないし渋滞量により大きく変わるので、通常、一定の固定金額(基本サービス料金)にこれらの交通量等に基づいたサービス料が加算されて決められる。
【0031】
図5は、A1県の甲に対する中央制御装置30のサービス料徴収制御動作を示すもので、この制御動作は、制御処理装置38によって実行される。すなわち、中央制御装置30の情報収集系中央装置33では、A1県の車両感知器2等の端末機を介して交通量(渋滞量)が収集されているので、この収集されたデータが利用される(S200)。そして、所定の集計時期が到来すると、例えば毎月の20日の12時になると、所定の期間(例えば過去1箇月分)の交通量が集計処理され、その集計された交通量に対するサービス料が算出される(S202、S204)。
【0032】
算出された交通量に基づくサービス料は、A1県の固定サービス料(基本サービス料)と合算され(S206)、所定の期間におけるサービス料がA1県から甲に支払われる(S208)。なお、このA1県の固定サービス料は、A1県内に設置されている信号機1等の端末機数によって定められている。上述したサービス料の支払は、中央制御装置30の使用料に相当するものであるが、A1県の管理装置22に対しても同様にして甲に支払われる。
【0033】
上述の例は、A1県のサービス料の支払について説明したが、他の県(A2〜A6)も同様に算出されて他の県からも甲にサービス料の支払が行われる。
【0034】
上述のように、上記構成に係る交通管制システム20,20´は、一つの中央制御装置30,30´で、複数の県に係る交通制御装置a1,a2…を制御できるので、設備コスト及びランニングコストを低減することができ、また県境に関係なく制御できる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る交通管制制御システムを適用した交通管制システムの概略構成図である。
【図2】一つの中央制御装置で制御される範囲の一例を示した説明図である。
【図3】本発明の他の交通管制制御システムを適用した交通管制システムの概略構成図である。
【図4】図3に示される交通管制システムの制御動作を示すフローチャートである。
【図5】中央制御装置の使用料(サービス料)徴収制御動作を示すフローチャートである。
【図6】従来の交通管制システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 信号機
2 超音波式車両感知器
3 光学式車両感知器
4 信号制御機
5 信号制御下位装置
6 画像型車両感知器
7 AVI端末装置(車両自動認識装置)
8 交通情報表示板
9 端末情報板制御装置
10 路側通信装置
11 端末制御装置
12 ファクシミリ装置
13 電話機
14 端末制御装置
15 処理装置
16 交通流監視カメラ
22 管理装置
22a 状況表示板
30,30´ 中央制御装置
31,31´ 接続装置
32 データベース
33 情報収集系中央装置
34 信号制御系中央装置
35 情報提供系中央装置
36 運用管理系中央装置
37 マンマシン
38 制御装置
1,a2… 交通制御装置
0,L0´,L2 通信回線
1 LAN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の地域を複数の範囲に区分し、その区分された各範囲内における道路網の交通量や交通流等の交通状態をそれぞれ管制制御する複数の交通管制制御手段と、
前記複数の交通管制制御手段と通信回線を介して接続され、それら複数の交通管制制御手段を一括して駆動制御する中央制御手段と、
からなることを特徴とする交通管制制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の交通管制制御システムにおいて、前記複数の交通管制制御手段には、区分された範囲内の交通状態を監視し、必要に応じて制御介入を行う管理手段がそれぞれ設けられていることを特徴とする交通管制制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の交通管制制御システムにおいて、前記所定の地域を複数に区分して形成される範囲は、都、道、府又は県であることを特徴とする交通管制制御システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の交通管制制御システムにおいて、前記複数の交通管制制御手段と前記中央制御手段とを接続する通信回線は、多重化されていることを特徴とする交通管制制御システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の交通管制制御システムにおいて、前記中央制御手段は、所定の距離を隔てて複数箇所に設置されていることを特徴とする交通管制制御システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の交通管制制御システムにおいて、前記中央制御手段は、その中央制御手段を維持管理する維持管理業者又はその中央制御手段の所有権者の初期投資により設置されるものであることを特徴とする交通管制制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の交通管制制御システムにおいて、前記維持管理業者又は所有権者は、前記都、道、府又は県から前記中央制御手段の使用料として所定の固定金額、又はその所定の固定金額に代えて、あるいはその所定の固定金額と共にその都、道、府又は県の交通量、交通渋滞量、あるいは信号機等の端末機数等の所定の条件に基づいて定められた金額の金銭を徴収するものであることを特徴とする交通管制制御システム。
【請求項8】
請求項2から7のいずれかに記載の交通管制制御システムにおいて、前記管理手段は、前記中央制御手段を維持管理する維持管理業者、その中央制御手段の所有権者又はその管理手段の所有権者の初期投資により設置されるものであることを特徴とする交通管制制御システム。
【請求項9】
請求項8に記載の交通管制制御システムにおいて、前記維持管理業者又は所有権者は、前記都、道、府又は県から前記管理手段の使用料として所定の固定金額、又はその所定の固定金額に代えて、あるいはその所定の固定金額と共にその都、道、府又は県の交通量、交通渋滞量、あるいは信号機等の端末機数等の所定の条件に基づいて定められた金額の金銭を徴収するものであることを特徴とする交通管制制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−313515(P2006−313515A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227113(P2005−227113)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】