人の被検体内のブドウ糖を非侵襲的に感知するための方法と装置
サンプル中の生体検体の非侵襲的感知のための装置(1)は、少なくとも一つの放射光源と少なくとも一つの放射光検出器を有する光学システム(11)、光学システム(11)に動作上結合した測定システム、測定システム(12)に動作上結合し、組み込みソフトウェア・システムを有する制御/処理システム(13)、制御/処理システム(13)とのユーザ・インタラクションを提供するため制御/処理システム(13)に動作上結合したユーザ・インタフェース/周辺システム(14)、及び上記各システムに電力を供給するために測定システム(12)、制御/処理システム(13)、ユーザ・インタフェース/周辺システム(4)に動作上結合した電源システム(15)を含む。制御/処理システム(13)の組み込みソフトウェア・システムは、サンプル中の生体検体の濃度を決定するために測定システム(12)から得られた信号を処理する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、毛細血管及び間質液内の生体被分析物の非侵襲的感知に関する。より詳しくは、一定の短時間間隔で継続的にまたは必要な時に血中のブドウ糖、脂質及び/またはアルコール濃度を測定するための方法及び装置に関係する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、インスリンの生成障害、インスリンの作用障害またはその両方により生じる高レベルの血中ブドウ糖値(血糖値)により特徴づけられる病気のグループである。国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所により1983年から1993年の間に実施された10年にわたる臨床研究である、糖尿病の管理と合併症に関する試験Diabetes Control and Complications Trial(DCCT)は、高血糖症として知られる高平均血糖値と、腎臓、眼、神経系、血管及び循環系を冒す病気の深刻な合併症の発生には、直接的で明確な相関性があることを明らかにした。治療は、インスリン注射、経口薬、食事調節及び運動を含む。高血糖を抑制するための医師によるユーザの投薬処方の調整は、毎日3、4回、日常的に血糖値を自分でモニターすることを必要とする。現在のところ、糖尿病の患者たちは、指または前腕から採取された少量の血液のサンプルが添加される高価な使い捨ての試験紙を使用してブドウ糖を測定する、侵襲的な血糖値測定器具を用いて自分の血糖値を測定する。この方法は、大きな痛みを伴い、しばしば慢性の神経末端の損傷を引き起こす。これが、糖尿病患者が合併症の発生の危険があってもモニタリングを躊躇する一つの理由である。
【0003】
多くの従来技術のシステムは、組織中の血中ブドウ糖濃度を測定するために拡散反射分光法を利用している。例えば、Petrovskyらの特許文献1は、血中ブドウ糖濃度を非侵襲的に測定するための装置と方法を開示している。この装置は、手首内側または耳たぶなど、血管が多く集まっている身体の選択された部位に光のビーム(2050−2500nm)を照射する。照射された光のパルスは、皮膚、組織及び血管を透過し、一部は血液中のブドウ糖によって吸収され、一部は散乱、拡散し、照射された構造体から反射されて、血管、組織及び皮膚を通って戻ってくる。反射光の光量が、次に受光検出器によって収集され、被検体の血中ブドウ糖濃度に比例した電気信号に変換されて、分析される。この参考文献に開示された好適な実施形態の波長範囲は、2050−2500nmである。
【0004】
Maruoらの特許文献2は、被検体の血液中のブドウ糖濃度の非侵襲的な測定のための装置を開示している。この装置は、光源、光源によって供給された光の分光器としての回折格子ユニット、及び1300から2500nmの連続波長をもつ近赤外放射光を得るために回折格子の回転角度を制御するためのステッピング・モータを含む。この装置は、近赤外放射光を被検体の皮膚に照射するための複数の光ファイバーと、この照射の結果、皮膚から発せられた放射光を受光するための複数の第二の光ファイバーを有する光ファイバー束をさらに含む。受光ユニットが、第二の光ファイバーに接続され、受光ユニットからの情報に基づいたスペクトル解析によってスペクトル解析ユニットが血液中のブドウ糖濃度を決定する。この発明が本発明と異なる点は、この発明は連続スペクトルのランプと機械的可動部品を有する回折格子を利用していることである。
【0005】
Koashiらの特許文献3は、血糖値の非侵襲的測定のための装置を開示している。この装置は、目的波長付近の小さな範囲に波長を合わせ、ビーム・スプリッタによって二つの光路に分光されるビームを発生する可変波長半導体レーザと、光路上を進み検査部位に入射された後、透過または反射されたレーザ光を集める積分球を含み、検査部位における血糖値は吸光度スペクトルの微分係数を分析することによって決定される。本発明がこの参考文献と異なる点は、ある波長幅に絞らずに複数の波長で全範囲にわたり皮膚を探査することと、ブドウ糖濃度を決定するために、吸光度スペクトルの微分係数ではなく吸光度スペクトルを使用することである。
【0006】
Takedaらの特許文献4は、血液中の光吸収物質の濃度を測定するための装置を開示している。この装置は、生体組織に向けて異なる波長をもつ光ビームを発光する複数のフォト・エミッタを含む。フォト・レシーバは、生体組織を透過したまたは生体組織から反射された光ビームを受光するように適合される。しかし、この発明の好適な実施形態は、680nmのものと940nmのものとの二つの発光ダイオードしか要求していない。
【0007】
Walkerらの特許文献5は、少なくとも一つのレーザ(垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)または端部発光)と、エミッタからの発光を検出するように構成された少なくとも一つの光検出器とを含む、非侵襲的なブドウ糖センサーを開示している。このブドウ糖センサーは、1060nm、980nm、850nm、825nm、800nm、780nm及び765nmの中心波長をもつ選択された波長のグループから、エミッタ波長を1−2nm単位でシフトすることにより、一つ以上のエミッタを駆動するコントローラをさらに含む。これは、複数の波長での吸収度の測定と、吸収度測定値からのブドウ糖濃度測定値の導出とを可能にする。この装置の動作波長範囲は、本発明の波長範囲外である。
【0008】
Rosenthalの特許文献6は、近赤外(NIR)定量分析を行うための方法を開示している。この方法は、分析対象物質を照射するための複数の異なる波長でのNIR放射光を供給するステップと、複数の波長の各波長で実質的に同じ検出データ分解能が得られるように、各波長の放射光の出力レベルに応じて各波長の放射光が被検体を照射する時間を変えるステップを含む。この装置の動作の波長範囲は、本発明の波長範囲外である。
【0009】
Grubisicの特許文献7は、連続的な広い放射スペクトルを発生させるために、それぞれ異なるが、部分的には重なる波長を発光する複数の発光ダイオード(LED(s))と線形検出器アレイを採用した、非侵襲的な血液検体の検出のためのソリッドステートの分光光度計を開示している。本発明と異なる点は、この分光光度計はLEDsのアレイと検出器のアレイを使用していることである。
【特許文献1】米国特許第6,097,975号明細書
【特許文献2】米国特許第6,016,435号明細書
【特許文献3】米国特許第5,533,509号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0250997号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0256384号明細書
【特許文献6】米国特許第5,703,364号明細書
【特許文献7】米国特許第6,816,241号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、パルス化可能であり、波長を選択可能で、強度を選択可能な単色レーザ放射光源を使用し、機械的可動部品を必要としない分光リファレンシング方式(spectroscopic referencing scheme)を採用し、デュアルビームかつデュアルリファレンスの分光光度計を使用することにより計器の基準安定性の向上をもたらし、人の被検体内のブドウ糖を非侵襲的に感知するためのシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、サンプル中の生体被分析物を非侵襲的に感知するための装置に関する。当該装置は、少なくとも一つの放射光源と少なくとも一つの放射光検出器を有する光学システム、光学システムに動作上結合した測定システム、測定システムに動作上結合し、組み込みソフトウェア・システムを有する制御/処理システム、制御/処理システムとのユーザ・インタラクションを提供するため制御/処理システムに動作上結合したユーザ・インタフェース/周辺システム、及び上記各システムに電力を供給するために測定システム、制御/処理システム、ユーザ・インタフェース/周辺システムまたはこれらのいずれかの組み合わせに動作上結合した電源システムを含む。制御/処理システムの組み込みソフトウェア・システムは、サンプル中の生体被分析物の濃度を決定するために、測定システムから得られた信号を処理する。
【0012】
光学システムから得られた吸光度スペクトルは、サンプル中の生体被分析物の濃度を決定するために、予め記憶されたキャリブレーション・ベクトルと共に制御/処理システムによって使用されてもよい。サンプルは、生体組織の間質液(ISF)、生体組織の毛細血管床及び/または血液サンプルのうちの一つであり得る。放射光源は、発光波長を選択可能で、発光強度を選択可能な横方向励起、対向伝播、光学パラメータ式発振器(TPCOPO)装置または発光波長を選択可能で、発光強度を選択可能なレーザ・ダイオード・アレイのうちの一つであってよい。放射光検出器は、InGaAsまたはGeで製造できる。
【0013】
生体被分析物は、ブドウ糖、脂質またはアルコールであり得る。生体被分析物がブドウ糖または脂質である場合、放射光源の発光スペクトルは約1,200nm〜約1,900nmの範囲をとることができ、放射光検出器の応答性は約1,200nm〜約1,900nmの範囲をとることができる。生体被分析物がアルコールである場合、放射光源の発光スペクトルは約800nm〜約1,300nmの範囲をとることができ、放射光検出器の応答性は約800nm〜約1,300nmの範囲をとることができる。
【0014】
ユーザ・インタフェース/周辺システムは、差し迫った低血糖または高血糖の場合には可聴音及び/またはテキスト・メッセージの表示によってユーザに警告するように;差し迫った低血糖の場合にはブルートゥース・アラームを備えているほかの人たちにブルートゥース・モジュールを使用して警告を発するように;低血糖の場合には、グローバル・ポジショニング・システム・モジュールを使用してユーザの位置を特定し、緊急のテキスト・メッセージを電話番号へ送信したり、または生体被分析物濃度データを中央のサーバに中継するように;そしてコード化されたブドウ糖濃度測定値が、コードを認識するようにプログラムされ、ユーザに接続されたインスリン・ポンプに送られる場合、インスリンの自動放出のためにコード化されたブドウ糖濃度測定値をブルートゥース・モジュールを介して中継するように;構成され得る。
【0015】
少なくとも一つの放射光源は、光学結晶、半導体材料単層構造物、またはこれらの任意の組み合わせから製造することができる。発光波長の選択性と強度を得るために、半導体ポンプ光源がビームステアリング部材及びTPCOPO層と一体化され得る。一つの実施形態では、少なくとも一つの放射光源は、GaAs TPCOPO活性層、GaAs狭帯域コヒーレント光源ポンプ、及びGaAs電気光学的ビーム偏向層を備えた一対のGaAsブラッグ反射器を含む。ポンプ光源及びビームステアリング部材は、TPCOPO層を内包するブラッグ・キャビティ内に向けてポンプ光源を始動する前にビームステアリングができるように、ブラッグ・キャビティの全長に沿ってTPCOPO層に平行になるように、またはブラッグ・キャビティの一方の端部に存在するように配置されてよい。別々の電気的接続手段を、ポンプ層とGaAs電気光学的ビーム偏向層に配線してもよい。ポンプ層へ印加された電流は発光される放射光の強度を決定することができ、GaAs電気光学的ビーム偏向層へ印加された電圧は発光される放射光の波長を決定することができる。
【0016】
本発明はまた、間質液の拡散反射率の測定に適用できる、それぞれが空間的に近接した二つのビームを使用した分光光度リファレンシング(以後”TECS”という)によるサンプル中の生体被分析物の非侵襲的感知のための方法に関する。当該方法は、第一の放射光源と第二の放射光源、及び第一の放射光検出器と第二の放射光検出器を使用した光学システムを構築することにより、システム中の空間に近接した四本の光ビーム路を確立するステップと;各光源を異なる時間関数により変調するステップと;光学システムのすべての光学要素がビームを送信及び/または反射するように光学システムを構成するステップと;第一のビーム・ペアと第二のビーム・ペアをシステム内の一つの点で分離し、第一のビーム・ペアをユーザの皮膚に集束させ、第二のビーム・ペアをリファレンス・サンプルに集束させるステップと;第一の検出器と第二の検出器によって生成された信号を復調し、ビームによる信号を分離するステップと;分光光度透過率を第一の比率と第二の比率の比として演算するステップとを含む。
【0017】
第一の比率は、第二の放射光源からの放射により第二の放射光検出器に入射するリファレンスの拡散反射率信号に対する、第一の放射光源からの放射により第二の放射光検出器に入射する皮膚の拡散反射率信号の比率であり得る。第二の比率は、第二の放射光源からの放射により第一の放射光検出器に入射する計器信号に対する、第一の放射光源からの放射により第一の放射光検出器に入射する計器信号の比率であり得る。分光光度透過率は、サンプル中の生体被分析物の濃度を決定するために用いられうる。光学システムは、光学ガラス素子の内部に限定される、サンプル・ビームとリファレンス・ビームの分離域を有し得る。サンプル・ビームとリファレンス・ビームの分離域は、匡体によって保護することができる。
【0018】
本発明の上記及びその他の特徴と特性、並びに関連した構成要素の動作の方法と機能は、添付の図面を参照した以下の説明と添付の請求項を検討すればより明らかになるであろう。すべての図面は本明細書の一部を構成し、異なる図面における同じ参照番号は同等の部品を示す。本明細書及び請求項に使用される限りにおいて、文脈が明らかにそうではないことを示す場合を除き、”a”、”an”及び”the”の単数形は複数の対象をも含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下の説明の目的で、「上側」、「下側」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「上部」、「下部」、「横」、「縦」という語及びその派生語は、図面上の位置方向を示すという点で発明に関係するものとする。しかし、そうではないことを明示する場合を除き、本発明は様々な代替の変形をとり得ると理解されたい。また、添付の図面に図示し、以下の明細書で説明される特定の装置は発明の例示的な実施形態にすぎないことを理解されたい。したがって、ここに開示した実施形態に関係した具体的な寸法及びその他の物理的な特徴は、限定的なものと考えてはならない。
【0020】
図1を参照すると、生体被分析物を測定するための装置1は、光学システム11、測定システム12、コントローラ/プロセッサ・システム13、ユーザ・インタフェース/周辺システム14、電源システム15、及び組み込みソフトウェア・システム(図示せず)を含む。各システムは、いくつかのサブシステムを含む。
【0021】
図1を参照しつつ図2を参照すると、光学システム11は、放射光源モジュール17;放射光検出モジュール23;光源モジュール17と放射光検出モジュール23に動作上結合された光ファイバー・プローブ44;特別な取り付け具47による接触を介したユーザの皮膚63を含む。光ファイバー・プローブ44は、光源モジュール17から皮膚63へ放射光を伝達するために束にまとめられた数本のファイバー45を含み、数本のほかのファイバー46が皮膚63から拡散反射率を取得しそれを検出器モジュール23へ伝達するために束にまとめられている。光源モジュール17は、これに限定されないが、一つ以上のTPCOPOsまたはレーザ・ダイオード・アレイであり得る。光源の発光スペクトルは、ブドウ糖及び脂質の検出に対しては1,200nm〜1,900nm、アルコール検出に対しては800nm〜1,300nmの波長範囲をとり、64〜256の別個の波長で発光する。検出器は、同範囲にわたり同等に応答する。検出器モジュール23は、これに限定されないが、Ge検出器、InGaAs検出器、または拡張InGaAs検出器であり得る。
【0022】
図1を参照しつつ図3を参照すると、光学システム11の代替的な実施形態は、少なくとも二つの放射光源、光源”1”である49と光源”2”である50、及び少なくとも二つの放射光検出器(検出器”1”である51と検出器”2”である52)を含む。
【0023】
光源”1”である49と光源”2”である50は、これに限定されないが、一つ以上のTPCOPOsまたはレーザ・ダイオード・アレイであり得る。望ましくは、光源”1”である49と光源”2”である50は、パルス化可能であり波長を選択可能で、強度を選択可能な単色レーザ放射光源である。発光波長を選択可能なソリッドステートの放射光源の使用は、単一の光検出器の使用に有利であり、分光器を必要としないため、小型であり、バッテリーで作動し、着用可能であり、安定性を向上させ、ドリフトを改善するという利点がある。さらに、非常に迅速にオン/オフの切換えが可能であり、かつ同時に一つの波長を発光可能な光源を使用すれば、より高い放射光パワーが可能になる。これにより間質液(特に毛細管血による)にビーム照射をしたときに検出できる拡散反射率信号とその信号対雑音比が増大する。そのため、間質液のブドウ糖に加えて、毛細管血のブドウ糖の検査が可能になる。前述したように、このような放射光源としてTPCOPO、レーザ・ダイオード・アレイ等があり得る。レーザ・ダイオード・アレイは、所要の広いスペクトルをカバーする数個の波長で放射光を供給する。TPCOPOはポンプとして一つのレーザ・ダイオードのみを使用するが、レーザ・ダイオード・アレイは各波長ごとに一つレーザ・ダイオードを使用する。広いスペクトル範囲の光源は、分光法以外にも単色光源として通信、表示装置、室内照明などに応用されうる。コンパクトで、高効率であり、高速に広範囲にチューニング可能なソリッドステートの単色光源は、これらの分野のすべてに適用可能である。しかし、個々には、単色光分光器、光学パラメータ式発振器(OPO)、発光ダイオード(LED)、熱的作用、圧電作用または電気光学的作用によってチューニングされるレーザ・ダイオード、及び色素レーザなどの既存の技術は上記の特長のすべてではなく、一部しか有さない。
【0024】
検出器”1”である51と検出器”2”である52は、これに限定されないが、Ge検出器、InGaAs検出器、または拡張InGaAs検出器であり得る。二つの放射光源と二つの放射光検出器は、ブドウ糖及び脂質の検出に対しては1,200nm〜1,900nm、アルコール検出に対しては800nm〜1,300nmにわたる同一のスペクトル範囲をもつ。光源はM個(64〜256)の別個の波長を発光し、検出器は同一の範囲にわたり同等に応答する。
【0025】
第一のミラー53と第一のレンズ54は、二つのビーム64と65をビーム・スプリッタ55へ向ける。ここで放射光パワーのごく一部が反射されて、第二のレンズ56を通り検出器”1”である51へ向けられる。第二のレンズ56は、これに限定されないが、ビーム・スプリッタ55のアパーチャを検出器”1”である51上に結像するコーラー(Kohler)レンズであり得る。しかし、光パワーの大部分は、ビーム・スプリッタ55、第三のレンズ57及び第二のミラー60を透過し、ユーザの皮膚63に接触しているイマージョン・レンズ61へ送られる。光源”2”である50のビーム65は、イマージョン・レンズ61に埋め込まれて保護されたスペクトラロンなどのリファレンス標準62に集束される。一方、光源”1”である49のビーム64は皮膚63に集束される。イマージョン・レンズ61の大きさは、皮膚ビームとリファレンス・ビームの有効な分離がイマージョン・レンズ61のガラス内でのみ起こり得るようにするのに十分な大きさをもつように決められる。イマージョン・レンズ61は、例えば、Bk−7、溶融石英、またはサファイアから作られる。両方のビームは、ピックアップ光学素子58と59によって集められて、検出器”2”である52上に集中される。
【0026】
検出器”2”である52は、生体ビーム・ペアを形成する皮膚とリファレンスの両方の信号を検出するために使用され、一方、検出器”1”である51は、計器ビーム・ペアなどの計器安定性ビームを検出するために使用される。検出器に入射する放射光の二つのビーム・ペアの光路から発生する信号を次のように定義する。S11は、光源”1”である49の放射光の結果として検出器”1”である51に入射する計器信号;S12は、光源”2”である50の放射光の結果として検出器”1”である51に入射する計器信号;S21は、光源”1”である49の放射光の結果として検出器”2”である52に入射する皮膚の拡散反射率信号;S22は光源”2”である50の放射光の結果として検出器”2”である52に入射するリファレンスの拡散反射率信号である。透過スペクトルは二つの比率の比として演算される。
T=(S21/S22)/(S11/S12) (数式1)
【0027】
測定中の任意の時点では、一方の光源だけが起動されている。二つのビーム・ペアが空間的に非常に近接している場合には、これらのペアは、同様に透過、反射及び外乱するので、光学系/電気光学系構成要素のドリフト及び外乱の影響は相殺される。したがって、二つの放射光源を使用することにより、ミラーを動かさなくてもリファレンス標準の拡散反射率のサンプリングを実現できる。同時に、さらに、二つの検出器の使用は計器の安定性をもたらすことができる。したがって、この分光リファレンシング方式、TECSは、機械的可動部品を必要とせず、デュアルビームかつデュアルリファレンスの分光光度計を使用することにより計器の基準安定性の向上をもたらす。この方式は、上述したように、二つのビーム・ペアを形成する二つの光源と二つの検出器を使用し、各ペアは同様の外乱を受けるように空間的に近接してサンプリングされる。
【0028】
図1を参照しつつかつ図4を参照すると、本発明の装置1の一つの好適な実施形態のさらに詳細な概要図が示される。装置1の中心の制御構成要素は、コントローラ/プロセッサ・システム13である。コントローラ/プロセッサ・システム13は、プログラムを保持する常駐FLASHメモリ(不揮発)から起動し、常駐SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリ)からのプログラムを実行し、測定システム12を制御する。ユーザ・インタフェース/周辺システム14と連動して、コントローラ/プロセッサ・システム13は、これらに限定されないが、以下を含む多様な機能を実行する。すべての拡散反射率及び暗信号をSRAMに一時保存し、吸光度スペクトルを作成するために信号を処理し、その後、ブドウ糖濃度を決定し、データをFLASHメモリに保存し、ブザー31を駆動し、LCDコントローラ29を介してデータを小サイズ(1.5”X1.0”)の白黒またはカラー・グラフィクスLCD30上に表示し、機能プッシュボタン・スイッチ32を介してユーザからの入力を受け付け、USBインタフェース33及びUSBコネクタ34またはブルートゥース・モジュール28を介してデータをコンピュータへアップロードし、ブルートゥース・モジュール28を介して短距離リモート警告を行い、GPSモジュール27を介してユーザの位置を特定し、GSM/GPRSモジュール26を介して長距離警告を行う。別のプッシュボタン・スイッチ、パワー・オン/オフ・プッシュボタン36は、装置1を作動するためのものである。同スイッチ36を押すと装置1は停止するが、表示部30を介したコントローラ/プロセッサ・システム13による呼び出しと機能プッシュボタン・スイッチ32を介したその後のユーザによる確認後に停止する。コントローラ/プロセッサ・システム13はまた、装置1が停止時にも経過時間を維持し、各測定の日付と時刻のスタンプを与えるリアル・タイム・クロック(RTC)(図示せず)を含む。
【0029】
コントローラ/プロセッサ・システム13は、ユーザ・インタフェース/周辺システム14と連動し、それにより多様な機能を実行する能力が備えられる。例えば、コントローラ/プロセッサ・システム13は、最新のブドウ糖測定値とそれを得た時刻をLCD30上に表示することができるともに、動向や比率を計算し表示することもできる。また、選択された期間にわたる移動平均(動向)や毎日の移動最小−最大偏差などの様々な統計値を計算し、LCD30に表示することができ、要求時には、LCD30上にそれらを時間に対してプロットすることもできる。ブドウ糖濃度の単位mg/dLまたはmmol/Lを選択するためのオプションをユーザに提供することができ、ブドウ糖測定値の最長一年にわたるセットを、測定値の取得時を反映するタイムスタンプと共に不揮発メモリに記憶でき、それを表示したり、または要求に応じて、選択されたUSBインタフェース33またはブルートゥース・モジュール28を介してコンピュータへアップロードできる。
【0030】
差し迫った低血糖または高血糖の場合には、ブザー31によって生じる可聴音によってユーザに警告することができ、LCD30上にテキスト・メッセージを表示することができる。さらに、差し迫った低血糖の場合、装置1は、ブルートゥース・モジュール28から10メートル以内にいて、ブルートゥース・アラームを備えているほかの人たちに、ブルートゥース・モジュール28を使用して警告を発することができる。装置1はまた、GPSモジュール27を使用することによりユーザの位置を特定でき、低血糖の場合には、遠隔治療を目的として、緊急テキスト・メッセージを救急サービス「911」などの電話に及び/または汎用パケット無線サービス(GPRS)またはグローバル・システム・フォー・モバイル・コミュニケーションズ(GSM)に備えられた中央サーバを含むその他の予めプログラムされた電話番号に送信でき、またはブドウ糖濃度データを中央サーバに単純に中継できる。装置1はまた、ブドウ糖濃度測定値を、ユーザに接続されたインスリン・ポンプに送るときには、ブルートゥース・モジュール28を介して中継することができ、インスリン・ポンプと共に人工膵臓を形成し得る。装置1がこのように使用される場合には、コントローラ/プロセッサ・システム13は、たまたまそばにいる他のユーザへの干渉を避けるために、装置1とインスリン・ポンプの双方で共有される擬似ランダム・シーケンスによってデータを符号化する必要がある。
【0031】
図4をさらに参照すると、電源システム15は、再充電可能な小型のバッテリー37を含む。バッテリー37は、これに限定されないが、リチウム・イオン型バッテリーであり得る。電源監視/バッテリー保護サブシステム35は、過剰放電や短絡状態からバッテリー37を保護し、バッテリー電圧が低くなり再充電しなければならないときはそれをコントローラ/プロセッサ・システム13に通知する。電源システムはまた、すべての回路をバイアスするため及び各種のサブシステムへの電圧分配に必要な電圧を作り出し、コントローラ/プロセッサ・システム13の制御の下でオン/オフ可能であるDC/DC変換器電圧レギュレータ・サブシステム39、40、41、及び42を含む。
【0032】
装置1は、各測定の前に電源システム15及び測定システム12を自己チェックすることによりその状態を判定することができ、故障がある場合には、ブザー31またはLCD表示部30を介してユーザに警告することができる。また、継続的モニタリングを持続できるようにバッテリーの充電はユニットの外で行うので、装置1は、バッテリー電圧をモニターし、ブドウ糖測定の合間に交換が必要な場合、モニタリングを中断せずにユーザに警告する。装置1はまた、サービスの継続時間(通常の使用中にバッテリーがその電荷をどれだけ長く保持するか)をモニタリングすることによりバッテリー状態を判定し、新しいバッテリーが必要なときはユーザに警告する。装置1はまた、バッテリーの寿命を保つために測定の合間にはある回路を自動的にパワーダウンすることができる。装置1はまた、不慮の電源切断を避けるために、パワー・オン/オフ・プッシュボタン36の作動に応答して、ユーザ・インタフェース/周辺システム14を介して装置1を停止することの確認を要求し、得ることができる。
【0033】
測定システム12は、放射光源モジュール17、光源モジュール温度コントローラ16、EOBSドライバ20、16ビット波長D/A変換器21、VCSELドライバ18及び16ビット強度D/A変換器19を含む。測定システムはまた、放射光検出モジュール23、検出器モジュール温度コントローラ22、検出器増幅器24、及び信号A/D変換器25を含む。
【0034】
図1と図4を参照しつつ図5を参照すると、EOBSドライバ20とVCSELドライバ18と共に放射光源モジュール17の回路が示される。光源”1”である49または光源”2”である50(LD1−LDM)は、VCSELドライバ18を介した強度D/A変換器19の電圧レベルによって最大500mWまで選択可能である放射光強度をもち、セレクト制御68及びデコーダ69を通じたコントローラ/プロセッサ・システム13による指令の下で、トランジスタSLD1−SLDM70を短周期(1〜100ms)で切り換えることによりオン/オフ切り換え可能である。光源発光波長もまた、EOBSドライバ20を介した強度D/A変換器21の電圧レベルによって、所定の範囲及び所定の個別波長にわたり選択可能である。放射光源モジュール17はまた、光源モジュール温度コントローラ16によって25°Cに温度制御が可能なように、熱電冷却器71(TEC)とそれに関連したサーミスタ72を含む。
【0035】
図1と図4を参照しつつ図6を参照すると、検出器増幅器24と共に放射光検出器モジュール23の回路が示される。放射光検出器モジュール23は、拡散反射率の光信号を電気信号に変換する一つまたは二つの検出器51、52と、検出器モジュール温度コントローラ22によって10°Cに温度制御が可能なように、TEC76及び関連したサーミスタ77を含む。検出器増幅器24は、放射光のスイッチ制御に同期して、コントローラ/プロセッサ・システム13によりスイッチ制御されたスイッチ付き積分器回路74と相関ダブル・サンプリング回路75によって、拡散反射率の電気信号を処理する。24ビット信号A/D変換器25は、反射率信号をデジタル化し、それをコントローラ/プロセッサ・システム13へ出力する。全波長チャネルにわたる皮膚、リファレンス、暗信号の完全な1セットのデータの取得には1〜20msを必要とする。約10秒の測定時間内で、取得はN回(500〜10,000)繰り返される。連続モードでの測定は、バッテリー交換を12時間おきに行うのであれば5分ごとに繰り返すことができ、またはバッテリー交換を24時間おきに行うのであれば10分ごとに繰り返すことが可能である。
【0036】
コントローラ/プロセッサ・システム13のソフトウェアは、先ずノイズを最小にするように信号を処理し、次に透過率と吸光度スペクトルを演算し、最後に被分析物濃度を演算する。理論的に、透過率は次の比率として定義される。
T=I/I0=e−kd(ベール・ランバートの法則) (数式2)
【0037】
Iは強度I0の入射反射光に対応した拡散反射率の強度を示し、kは吸光係数(組織またはリファレンス標準)を示し、dは浸透距離を示す。間質液の場合、皮膚の拡散反射率、リファレンスの拡散反射率、及び光検出器の暗電流が測定される。以下の説明では、太字はベクトルを意味する。透過率スペクトルは、Iskin/I0をIref/I0で除した、「二重比(double ratio)」として演算される。したがって、T=Iskin/Iref、よって入射放射光I0を測定する必要性を省く。検出された放射光Rskin、Rrefは、差し引かなければならない検出器暗電流による強い成分D2と無相関ノイズを含む。したがって、すべての信号を中央平均化した後、透過率スペクトルをT=(Rskin−D2)/(Rref−D2)として演算し、吸光度スペクトルを次の定義により求める。
X=−logT (数式3)
【0038】
ソフトウェアは、サンプリングされた皮膚、リファレンス、及び暗信号の時間シーケンスを3xNxMの配列にソートする。過剰なノイズを減じるため、シャープな零位相デジタル・フィルタによって、皮膚、リファレンス、及び暗信号の各信号シーケンスを0.5Hzで低域通過フィルタリングする。間質液の吸光度スペクトルを作成するために、取得したデータの各セットについて先ず透過率スペクトルを計算し、次に平均化し、平均化した透過率スペクトルを用いて吸光度を演算する。毛細血管の吸光度スペクトルの作成は、しかし、さらなる処理を必要とする。各波長チャネルでの皮膚の拡散反射率信号は、間質液の拡散反射率に主に起因する大きなDC部分を含み、さらに毛細血管の拡散反射率(〜1%)に起因するごく一部の部分、検出器暗信号に起因するごく一部の部分、及び無相関ホワイト・ノイズに起因する大部分を含む。この信号は、心臓の収縮期に高偏位(high excursions)が発生し、拡張期に低偏位が発生する心臓のポンプ作用によって変調される。したがって、装置1は、リファレンス標準及び/または機械的可動部品を必要としない分光リファレンシング方式を利用することによって毛細血管中のブドウ糖の測定を行う。これにより、装置1は計器の基準安定性の向上をもたらし、ごくわずかにゆっくりと変化する心臓の心拍で変調された拡散反射率信号の各波長での時間信号の最適化された同期検出と、最大対最小の比として透過率を計算することとを含む処理を提供する。このリファレンシング方式は、近接した時間でわずかに変化する一つの経路をサンプリングし、各心拍中の最小と最大の光子経路の変化をサンプリングする。
【0039】
図7a〜7cを参照すると、検出器の出力での一つの波長における当該信号の1サイクルが示される。放射光源は波長チャネル間で、1〜100μs間オン、1〜20ms間オフに切り換わるので、この信号は時間的に離散する。この信号の周波数スペクトルは、前述の心拍のDCパルス成分の1セットの成分と、スイッチング信号の基本及び高調波周波数のこれらの信号のより多くのセットとを含む。パルス・ディファレンシァル分光法(PDS)を適用するには、偏位を確定しなければならない。DC周辺での動作では、これは次のように行われる。過剰なノイズを減じるために、シャープな零位相デジタル・フィルタで皮膚と暗信号の両方の信号シーケンスを2Hzで低域通過フィルタリングする。次に、強いDC成分を除去するために、これらをシャープな零位相デジタル・フィルタにより0.5Hzで高域通過フィルタリングする。次に、心拍信号の同期レプリカを使用して、FFTを介してまたは復調によって偏位を確定することができる。
【0040】
心拍信号のレプリカは、約1275nmの波長のチャネルでの皮膚の拡散反射率信号を使用して心拍数を推定することによって作成することができる。この波長の放射光は表皮を貫通し、ほかのどの波長よりも深く毛細血管床まで到達する。測定ピリオドには6〜12サイクルが存在するので、Rskinに対する/からのピーク正偏位を平均化し、Rrefに対する/からのピーク負偏位を平均化することにより前述のように透過率を演算する。代替的に、スイッチング周波数の基本部分で動作することによって、同様に偏位を確定することができる。しかし、この方法は、スイッチング信号の同期レプリカを信号に乗じることによるDCへのダウンコンバージョンをさらに必要とする。
【0041】
最後に、吸光度スペクトルを予め格納したキャリブレーション・ベクトルbと合わせて使用して、ブドウ糖濃度を予測する。
yP=Xb (数式4)
【0042】
キャリブレーション・ベクトルは次のようなパーシャル・リスト・スクエアによって得られる。
b=(XTX)−1XTyR (数式5)
【0043】
yRは正確な侵襲的器具を使用して得た基準測定値である。キャリブレーションの目的で必要な、取得スペクトル数及び侵襲的基準測定値の数は、Marbachによる”On Wiener filtering and the physics behind statistical modeling”というタイトルの論文で述べられているような、キャリブレーション・ベクトルを決定するためのスペクトルに関する先行技術を組み合わせることによって劇的に減少されうる。したがって、必要な個々のキャリブレーション時間は、多くの日数から数時間に減少され得る。
【0044】
図8a〜8cを参照すると、TPCOPOが光学パラメータ式発振を得る手段を提供する。従来のOPOと同様であるが、TPCOPOはポンプを必要とする。チューニングは、ポンプ・ビームの入射角度を変えることによって達成される。TPCOPOは、これらに限定されないが、LiNbO3、KTPなどの従来の非線形光学結晶から製造することができる。しかし、TPCOPOの横方向設計特性(transverse design nature)はまた、GaAsやZnSeの単層構造物などの半導体材料からの製造を可能にする。VCSEL半導体ポンプ光源と電気光学的ビームステアリング部材(EOBS)をTPCOPOに統合することで、チューニング可能な光源の特徴(前述)のすべてを実現することができる。例えば、本装置は、GaAsTPCOPO活性層、VCSEL等のポンプとしての役目を果たすGaAsソリッドステート狭帯域コヒーレント光源、及びこれらの間にGaAs電気光学的ビーム偏向層を備えた、一対のGaAsブラッグ反射器により構成することができる。
【0045】
TPCOPO層及びブラッグ反射器は、ポンプの波長に合わせて設計される。この実施形態では、ポンプ及びビームステアリング要素は、TPCOPO層を内包するブラッグ・キャビティ内に向けてポンプを始動する前に、十分なビームステアリング能が確保されるように、ブラッグ・キャビティの全長にわたってTPCOPO層に平行になるように配置されるか、またはブラッグ・キャビティの一方の端部に存在するように配置されうる。駆動電圧を印加する手段のための電気的接続は、ポンプとEOBS層へ別々に配線される。ポンプへの電力は光出力電力を決定し、EOBS層へ印加された電圧は光出力エネルギー(すなわち、周波数)を決定する。説明した構造物は、単一素子のエミッタでも、またはアレイとしても構成できる。図8に示したTPCOPOの構成層は、ブラッグ反射器80、EOBSビームステアリング層81、ポンプ82、TPCOPO活性層83、装置基板84である。図8aでは、ポンプがブラッグ・キャビティの外側に位置する。これは所望のポンプがEOBSまたはTPCOPOの材料と適合しない場合や、EOBS層が十分なビームステアリングのために過度の経路長を必要とする場合や、またはポンプ及び/またはEOBS層がポンプまたはTPCOPO出力周波数を過度に吸収する場合に、有利になり得る。この構成では、EOBS層は、音響光学的または圧電ビームステアリング層に置き換えることができ、ブラッグ・キャビティ上に「成膜」させる必要はない。図8bでは、ポンプ・エネルギーの出力エネルギーへのより高い変換効率を得るように、ポンプ層とEOBS層はブラッグ・キャビティの内側に配置されるが、TPCOPO層へ入る前に十分な角偏向を与えるためにEOBS層がポンプ波の複数のパスを必要とする場合に、EOBSの経路長の設計に自由度をもたせる。図8cでは、ポンプ、EOBS及びTPCOPOの各層がそれぞれ重ねられて積層される。これは、EOBS層がポンプ出力を効果的に偏向し、ポンプもEOBS層もポンプまたは出力周波数のいずれかを過度に吸収しないと仮定した最も簡易な設計である。
【0046】
現在最も実用的で好適な実施形態と考えられるものに基づいた例証の目的で発明を詳細に説明したが、このような詳細は単にこの目的のためのものであり、本発明は開示した実施形態に限定されるものではなく、むしろ添付の請求項の精神と範囲内にある変形または同等なアレンジメントを包括するものと理解されたい。例えば、いずれかの実施形態の一つまたは複数の特徴がそれ以外の実施形態の一つまたは複数の特徴と可能な範囲で組み合わせることができることを本発明は考慮していることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明によるサンプル中の生体被分析物を感知するための装置の概要図である。
【図2】図1の装置の光学システムの概要図である。
【図3】図1の装置の光学システムの拡張的実施形態の概要図である。
【図4】図1の装置の詳細な概要図である。
【図5】本発明による放射光源モジュールの概要図である。
【図6】本発明による放射光検出モジュールの概要図である。
【図7】a−cのそれぞれは、検出器の出力における離散時間の毛細血管の拡散反射率信号の1周期を示すグラフ、その拡張図、及びスイッチ付き積分器出力における同図である。
【図8】a−cのそれぞれは、本発明による横方向励起対向伝播光学パラメータ式発振器のブロック図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、毛細血管及び間質液内の生体被分析物の非侵襲的感知に関する。より詳しくは、一定の短時間間隔で継続的にまたは必要な時に血中のブドウ糖、脂質及び/またはアルコール濃度を測定するための方法及び装置に関係する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、インスリンの生成障害、インスリンの作用障害またはその両方により生じる高レベルの血中ブドウ糖値(血糖値)により特徴づけられる病気のグループである。国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所により1983年から1993年の間に実施された10年にわたる臨床研究である、糖尿病の管理と合併症に関する試験Diabetes Control and Complications Trial(DCCT)は、高血糖症として知られる高平均血糖値と、腎臓、眼、神経系、血管及び循環系を冒す病気の深刻な合併症の発生には、直接的で明確な相関性があることを明らかにした。治療は、インスリン注射、経口薬、食事調節及び運動を含む。高血糖を抑制するための医師によるユーザの投薬処方の調整は、毎日3、4回、日常的に血糖値を自分でモニターすることを必要とする。現在のところ、糖尿病の患者たちは、指または前腕から採取された少量の血液のサンプルが添加される高価な使い捨ての試験紙を使用してブドウ糖を測定する、侵襲的な血糖値測定器具を用いて自分の血糖値を測定する。この方法は、大きな痛みを伴い、しばしば慢性の神経末端の損傷を引き起こす。これが、糖尿病患者が合併症の発生の危険があってもモニタリングを躊躇する一つの理由である。
【0003】
多くの従来技術のシステムは、組織中の血中ブドウ糖濃度を測定するために拡散反射分光法を利用している。例えば、Petrovskyらの特許文献1は、血中ブドウ糖濃度を非侵襲的に測定するための装置と方法を開示している。この装置は、手首内側または耳たぶなど、血管が多く集まっている身体の選択された部位に光のビーム(2050−2500nm)を照射する。照射された光のパルスは、皮膚、組織及び血管を透過し、一部は血液中のブドウ糖によって吸収され、一部は散乱、拡散し、照射された構造体から反射されて、血管、組織及び皮膚を通って戻ってくる。反射光の光量が、次に受光検出器によって収集され、被検体の血中ブドウ糖濃度に比例した電気信号に変換されて、分析される。この参考文献に開示された好適な実施形態の波長範囲は、2050−2500nmである。
【0004】
Maruoらの特許文献2は、被検体の血液中のブドウ糖濃度の非侵襲的な測定のための装置を開示している。この装置は、光源、光源によって供給された光の分光器としての回折格子ユニット、及び1300から2500nmの連続波長をもつ近赤外放射光を得るために回折格子の回転角度を制御するためのステッピング・モータを含む。この装置は、近赤外放射光を被検体の皮膚に照射するための複数の光ファイバーと、この照射の結果、皮膚から発せられた放射光を受光するための複数の第二の光ファイバーを有する光ファイバー束をさらに含む。受光ユニットが、第二の光ファイバーに接続され、受光ユニットからの情報に基づいたスペクトル解析によってスペクトル解析ユニットが血液中のブドウ糖濃度を決定する。この発明が本発明と異なる点は、この発明は連続スペクトルのランプと機械的可動部品を有する回折格子を利用していることである。
【0005】
Koashiらの特許文献3は、血糖値の非侵襲的測定のための装置を開示している。この装置は、目的波長付近の小さな範囲に波長を合わせ、ビーム・スプリッタによって二つの光路に分光されるビームを発生する可変波長半導体レーザと、光路上を進み検査部位に入射された後、透過または反射されたレーザ光を集める積分球を含み、検査部位における血糖値は吸光度スペクトルの微分係数を分析することによって決定される。本発明がこの参考文献と異なる点は、ある波長幅に絞らずに複数の波長で全範囲にわたり皮膚を探査することと、ブドウ糖濃度を決定するために、吸光度スペクトルの微分係数ではなく吸光度スペクトルを使用することである。
【0006】
Takedaらの特許文献4は、血液中の光吸収物質の濃度を測定するための装置を開示している。この装置は、生体組織に向けて異なる波長をもつ光ビームを発光する複数のフォト・エミッタを含む。フォト・レシーバは、生体組織を透過したまたは生体組織から反射された光ビームを受光するように適合される。しかし、この発明の好適な実施形態は、680nmのものと940nmのものとの二つの発光ダイオードしか要求していない。
【0007】
Walkerらの特許文献5は、少なくとも一つのレーザ(垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)または端部発光)と、エミッタからの発光を検出するように構成された少なくとも一つの光検出器とを含む、非侵襲的なブドウ糖センサーを開示している。このブドウ糖センサーは、1060nm、980nm、850nm、825nm、800nm、780nm及び765nmの中心波長をもつ選択された波長のグループから、エミッタ波長を1−2nm単位でシフトすることにより、一つ以上のエミッタを駆動するコントローラをさらに含む。これは、複数の波長での吸収度の測定と、吸収度測定値からのブドウ糖濃度測定値の導出とを可能にする。この装置の動作波長範囲は、本発明の波長範囲外である。
【0008】
Rosenthalの特許文献6は、近赤外(NIR)定量分析を行うための方法を開示している。この方法は、分析対象物質を照射するための複数の異なる波長でのNIR放射光を供給するステップと、複数の波長の各波長で実質的に同じ検出データ分解能が得られるように、各波長の放射光の出力レベルに応じて各波長の放射光が被検体を照射する時間を変えるステップを含む。この装置の動作の波長範囲は、本発明の波長範囲外である。
【0009】
Grubisicの特許文献7は、連続的な広い放射スペクトルを発生させるために、それぞれ異なるが、部分的には重なる波長を発光する複数の発光ダイオード(LED(s))と線形検出器アレイを採用した、非侵襲的な血液検体の検出のためのソリッドステートの分光光度計を開示している。本発明と異なる点は、この分光光度計はLEDsのアレイと検出器のアレイを使用していることである。
【特許文献1】米国特許第6,097,975号明細書
【特許文献2】米国特許第6,016,435号明細書
【特許文献3】米国特許第5,533,509号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0250997号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0256384号明細書
【特許文献6】米国特許第5,703,364号明細書
【特許文献7】米国特許第6,816,241号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、パルス化可能であり、波長を選択可能で、強度を選択可能な単色レーザ放射光源を使用し、機械的可動部品を必要としない分光リファレンシング方式(spectroscopic referencing scheme)を採用し、デュアルビームかつデュアルリファレンスの分光光度計を使用することにより計器の基準安定性の向上をもたらし、人の被検体内のブドウ糖を非侵襲的に感知するためのシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、サンプル中の生体被分析物を非侵襲的に感知するための装置に関する。当該装置は、少なくとも一つの放射光源と少なくとも一つの放射光検出器を有する光学システム、光学システムに動作上結合した測定システム、測定システムに動作上結合し、組み込みソフトウェア・システムを有する制御/処理システム、制御/処理システムとのユーザ・インタラクションを提供するため制御/処理システムに動作上結合したユーザ・インタフェース/周辺システム、及び上記各システムに電力を供給するために測定システム、制御/処理システム、ユーザ・インタフェース/周辺システムまたはこれらのいずれかの組み合わせに動作上結合した電源システムを含む。制御/処理システムの組み込みソフトウェア・システムは、サンプル中の生体被分析物の濃度を決定するために、測定システムから得られた信号を処理する。
【0012】
光学システムから得られた吸光度スペクトルは、サンプル中の生体被分析物の濃度を決定するために、予め記憶されたキャリブレーション・ベクトルと共に制御/処理システムによって使用されてもよい。サンプルは、生体組織の間質液(ISF)、生体組織の毛細血管床及び/または血液サンプルのうちの一つであり得る。放射光源は、発光波長を選択可能で、発光強度を選択可能な横方向励起、対向伝播、光学パラメータ式発振器(TPCOPO)装置または発光波長を選択可能で、発光強度を選択可能なレーザ・ダイオード・アレイのうちの一つであってよい。放射光検出器は、InGaAsまたはGeで製造できる。
【0013】
生体被分析物は、ブドウ糖、脂質またはアルコールであり得る。生体被分析物がブドウ糖または脂質である場合、放射光源の発光スペクトルは約1,200nm〜約1,900nmの範囲をとることができ、放射光検出器の応答性は約1,200nm〜約1,900nmの範囲をとることができる。生体被分析物がアルコールである場合、放射光源の発光スペクトルは約800nm〜約1,300nmの範囲をとることができ、放射光検出器の応答性は約800nm〜約1,300nmの範囲をとることができる。
【0014】
ユーザ・インタフェース/周辺システムは、差し迫った低血糖または高血糖の場合には可聴音及び/またはテキスト・メッセージの表示によってユーザに警告するように;差し迫った低血糖の場合にはブルートゥース・アラームを備えているほかの人たちにブルートゥース・モジュールを使用して警告を発するように;低血糖の場合には、グローバル・ポジショニング・システム・モジュールを使用してユーザの位置を特定し、緊急のテキスト・メッセージを電話番号へ送信したり、または生体被分析物濃度データを中央のサーバに中継するように;そしてコード化されたブドウ糖濃度測定値が、コードを認識するようにプログラムされ、ユーザに接続されたインスリン・ポンプに送られる場合、インスリンの自動放出のためにコード化されたブドウ糖濃度測定値をブルートゥース・モジュールを介して中継するように;構成され得る。
【0015】
少なくとも一つの放射光源は、光学結晶、半導体材料単層構造物、またはこれらの任意の組み合わせから製造することができる。発光波長の選択性と強度を得るために、半導体ポンプ光源がビームステアリング部材及びTPCOPO層と一体化され得る。一つの実施形態では、少なくとも一つの放射光源は、GaAs TPCOPO活性層、GaAs狭帯域コヒーレント光源ポンプ、及びGaAs電気光学的ビーム偏向層を備えた一対のGaAsブラッグ反射器を含む。ポンプ光源及びビームステアリング部材は、TPCOPO層を内包するブラッグ・キャビティ内に向けてポンプ光源を始動する前にビームステアリングができるように、ブラッグ・キャビティの全長に沿ってTPCOPO層に平行になるように、またはブラッグ・キャビティの一方の端部に存在するように配置されてよい。別々の電気的接続手段を、ポンプ層とGaAs電気光学的ビーム偏向層に配線してもよい。ポンプ層へ印加された電流は発光される放射光の強度を決定することができ、GaAs電気光学的ビーム偏向層へ印加された電圧は発光される放射光の波長を決定することができる。
【0016】
本発明はまた、間質液の拡散反射率の測定に適用できる、それぞれが空間的に近接した二つのビームを使用した分光光度リファレンシング(以後”TECS”という)によるサンプル中の生体被分析物の非侵襲的感知のための方法に関する。当該方法は、第一の放射光源と第二の放射光源、及び第一の放射光検出器と第二の放射光検出器を使用した光学システムを構築することにより、システム中の空間に近接した四本の光ビーム路を確立するステップと;各光源を異なる時間関数により変調するステップと;光学システムのすべての光学要素がビームを送信及び/または反射するように光学システムを構成するステップと;第一のビーム・ペアと第二のビーム・ペアをシステム内の一つの点で分離し、第一のビーム・ペアをユーザの皮膚に集束させ、第二のビーム・ペアをリファレンス・サンプルに集束させるステップと;第一の検出器と第二の検出器によって生成された信号を復調し、ビームによる信号を分離するステップと;分光光度透過率を第一の比率と第二の比率の比として演算するステップとを含む。
【0017】
第一の比率は、第二の放射光源からの放射により第二の放射光検出器に入射するリファレンスの拡散反射率信号に対する、第一の放射光源からの放射により第二の放射光検出器に入射する皮膚の拡散反射率信号の比率であり得る。第二の比率は、第二の放射光源からの放射により第一の放射光検出器に入射する計器信号に対する、第一の放射光源からの放射により第一の放射光検出器に入射する計器信号の比率であり得る。分光光度透過率は、サンプル中の生体被分析物の濃度を決定するために用いられうる。光学システムは、光学ガラス素子の内部に限定される、サンプル・ビームとリファレンス・ビームの分離域を有し得る。サンプル・ビームとリファレンス・ビームの分離域は、匡体によって保護することができる。
【0018】
本発明の上記及びその他の特徴と特性、並びに関連した構成要素の動作の方法と機能は、添付の図面を参照した以下の説明と添付の請求項を検討すればより明らかになるであろう。すべての図面は本明細書の一部を構成し、異なる図面における同じ参照番号は同等の部品を示す。本明細書及び請求項に使用される限りにおいて、文脈が明らかにそうではないことを示す場合を除き、”a”、”an”及び”the”の単数形は複数の対象をも含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下の説明の目的で、「上側」、「下側」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「上部」、「下部」、「横」、「縦」という語及びその派生語は、図面上の位置方向を示すという点で発明に関係するものとする。しかし、そうではないことを明示する場合を除き、本発明は様々な代替の変形をとり得ると理解されたい。また、添付の図面に図示し、以下の明細書で説明される特定の装置は発明の例示的な実施形態にすぎないことを理解されたい。したがって、ここに開示した実施形態に関係した具体的な寸法及びその他の物理的な特徴は、限定的なものと考えてはならない。
【0020】
図1を参照すると、生体被分析物を測定するための装置1は、光学システム11、測定システム12、コントローラ/プロセッサ・システム13、ユーザ・インタフェース/周辺システム14、電源システム15、及び組み込みソフトウェア・システム(図示せず)を含む。各システムは、いくつかのサブシステムを含む。
【0021】
図1を参照しつつ図2を参照すると、光学システム11は、放射光源モジュール17;放射光検出モジュール23;光源モジュール17と放射光検出モジュール23に動作上結合された光ファイバー・プローブ44;特別な取り付け具47による接触を介したユーザの皮膚63を含む。光ファイバー・プローブ44は、光源モジュール17から皮膚63へ放射光を伝達するために束にまとめられた数本のファイバー45を含み、数本のほかのファイバー46が皮膚63から拡散反射率を取得しそれを検出器モジュール23へ伝達するために束にまとめられている。光源モジュール17は、これに限定されないが、一つ以上のTPCOPOsまたはレーザ・ダイオード・アレイであり得る。光源の発光スペクトルは、ブドウ糖及び脂質の検出に対しては1,200nm〜1,900nm、アルコール検出に対しては800nm〜1,300nmの波長範囲をとり、64〜256の別個の波長で発光する。検出器は、同範囲にわたり同等に応答する。検出器モジュール23は、これに限定されないが、Ge検出器、InGaAs検出器、または拡張InGaAs検出器であり得る。
【0022】
図1を参照しつつ図3を参照すると、光学システム11の代替的な実施形態は、少なくとも二つの放射光源、光源”1”である49と光源”2”である50、及び少なくとも二つの放射光検出器(検出器”1”である51と検出器”2”である52)を含む。
【0023】
光源”1”である49と光源”2”である50は、これに限定されないが、一つ以上のTPCOPOsまたはレーザ・ダイオード・アレイであり得る。望ましくは、光源”1”である49と光源”2”である50は、パルス化可能であり波長を選択可能で、強度を選択可能な単色レーザ放射光源である。発光波長を選択可能なソリッドステートの放射光源の使用は、単一の光検出器の使用に有利であり、分光器を必要としないため、小型であり、バッテリーで作動し、着用可能であり、安定性を向上させ、ドリフトを改善するという利点がある。さらに、非常に迅速にオン/オフの切換えが可能であり、かつ同時に一つの波長を発光可能な光源を使用すれば、より高い放射光パワーが可能になる。これにより間質液(特に毛細管血による)にビーム照射をしたときに検出できる拡散反射率信号とその信号対雑音比が増大する。そのため、間質液のブドウ糖に加えて、毛細管血のブドウ糖の検査が可能になる。前述したように、このような放射光源としてTPCOPO、レーザ・ダイオード・アレイ等があり得る。レーザ・ダイオード・アレイは、所要の広いスペクトルをカバーする数個の波長で放射光を供給する。TPCOPOはポンプとして一つのレーザ・ダイオードのみを使用するが、レーザ・ダイオード・アレイは各波長ごとに一つレーザ・ダイオードを使用する。広いスペクトル範囲の光源は、分光法以外にも単色光源として通信、表示装置、室内照明などに応用されうる。コンパクトで、高効率であり、高速に広範囲にチューニング可能なソリッドステートの単色光源は、これらの分野のすべてに適用可能である。しかし、個々には、単色光分光器、光学パラメータ式発振器(OPO)、発光ダイオード(LED)、熱的作用、圧電作用または電気光学的作用によってチューニングされるレーザ・ダイオード、及び色素レーザなどの既存の技術は上記の特長のすべてではなく、一部しか有さない。
【0024】
検出器”1”である51と検出器”2”である52は、これに限定されないが、Ge検出器、InGaAs検出器、または拡張InGaAs検出器であり得る。二つの放射光源と二つの放射光検出器は、ブドウ糖及び脂質の検出に対しては1,200nm〜1,900nm、アルコール検出に対しては800nm〜1,300nmにわたる同一のスペクトル範囲をもつ。光源はM個(64〜256)の別個の波長を発光し、検出器は同一の範囲にわたり同等に応答する。
【0025】
第一のミラー53と第一のレンズ54は、二つのビーム64と65をビーム・スプリッタ55へ向ける。ここで放射光パワーのごく一部が反射されて、第二のレンズ56を通り検出器”1”である51へ向けられる。第二のレンズ56は、これに限定されないが、ビーム・スプリッタ55のアパーチャを検出器”1”である51上に結像するコーラー(Kohler)レンズであり得る。しかし、光パワーの大部分は、ビーム・スプリッタ55、第三のレンズ57及び第二のミラー60を透過し、ユーザの皮膚63に接触しているイマージョン・レンズ61へ送られる。光源”2”である50のビーム65は、イマージョン・レンズ61に埋め込まれて保護されたスペクトラロンなどのリファレンス標準62に集束される。一方、光源”1”である49のビーム64は皮膚63に集束される。イマージョン・レンズ61の大きさは、皮膚ビームとリファレンス・ビームの有効な分離がイマージョン・レンズ61のガラス内でのみ起こり得るようにするのに十分な大きさをもつように決められる。イマージョン・レンズ61は、例えば、Bk−7、溶融石英、またはサファイアから作られる。両方のビームは、ピックアップ光学素子58と59によって集められて、検出器”2”である52上に集中される。
【0026】
検出器”2”である52は、生体ビーム・ペアを形成する皮膚とリファレンスの両方の信号を検出するために使用され、一方、検出器”1”である51は、計器ビーム・ペアなどの計器安定性ビームを検出するために使用される。検出器に入射する放射光の二つのビーム・ペアの光路から発生する信号を次のように定義する。S11は、光源”1”である49の放射光の結果として検出器”1”である51に入射する計器信号;S12は、光源”2”である50の放射光の結果として検出器”1”である51に入射する計器信号;S21は、光源”1”である49の放射光の結果として検出器”2”である52に入射する皮膚の拡散反射率信号;S22は光源”2”である50の放射光の結果として検出器”2”である52に入射するリファレンスの拡散反射率信号である。透過スペクトルは二つの比率の比として演算される。
T=(S21/S22)/(S11/S12) (数式1)
【0027】
測定中の任意の時点では、一方の光源だけが起動されている。二つのビーム・ペアが空間的に非常に近接している場合には、これらのペアは、同様に透過、反射及び外乱するので、光学系/電気光学系構成要素のドリフト及び外乱の影響は相殺される。したがって、二つの放射光源を使用することにより、ミラーを動かさなくてもリファレンス標準の拡散反射率のサンプリングを実現できる。同時に、さらに、二つの検出器の使用は計器の安定性をもたらすことができる。したがって、この分光リファレンシング方式、TECSは、機械的可動部品を必要とせず、デュアルビームかつデュアルリファレンスの分光光度計を使用することにより計器の基準安定性の向上をもたらす。この方式は、上述したように、二つのビーム・ペアを形成する二つの光源と二つの検出器を使用し、各ペアは同様の外乱を受けるように空間的に近接してサンプリングされる。
【0028】
図1を参照しつつかつ図4を参照すると、本発明の装置1の一つの好適な実施形態のさらに詳細な概要図が示される。装置1の中心の制御構成要素は、コントローラ/プロセッサ・システム13である。コントローラ/プロセッサ・システム13は、プログラムを保持する常駐FLASHメモリ(不揮発)から起動し、常駐SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリ)からのプログラムを実行し、測定システム12を制御する。ユーザ・インタフェース/周辺システム14と連動して、コントローラ/プロセッサ・システム13は、これらに限定されないが、以下を含む多様な機能を実行する。すべての拡散反射率及び暗信号をSRAMに一時保存し、吸光度スペクトルを作成するために信号を処理し、その後、ブドウ糖濃度を決定し、データをFLASHメモリに保存し、ブザー31を駆動し、LCDコントローラ29を介してデータを小サイズ(1.5”X1.0”)の白黒またはカラー・グラフィクスLCD30上に表示し、機能プッシュボタン・スイッチ32を介してユーザからの入力を受け付け、USBインタフェース33及びUSBコネクタ34またはブルートゥース・モジュール28を介してデータをコンピュータへアップロードし、ブルートゥース・モジュール28を介して短距離リモート警告を行い、GPSモジュール27を介してユーザの位置を特定し、GSM/GPRSモジュール26を介して長距離警告を行う。別のプッシュボタン・スイッチ、パワー・オン/オフ・プッシュボタン36は、装置1を作動するためのものである。同スイッチ36を押すと装置1は停止するが、表示部30を介したコントローラ/プロセッサ・システム13による呼び出しと機能プッシュボタン・スイッチ32を介したその後のユーザによる確認後に停止する。コントローラ/プロセッサ・システム13はまた、装置1が停止時にも経過時間を維持し、各測定の日付と時刻のスタンプを与えるリアル・タイム・クロック(RTC)(図示せず)を含む。
【0029】
コントローラ/プロセッサ・システム13は、ユーザ・インタフェース/周辺システム14と連動し、それにより多様な機能を実行する能力が備えられる。例えば、コントローラ/プロセッサ・システム13は、最新のブドウ糖測定値とそれを得た時刻をLCD30上に表示することができるともに、動向や比率を計算し表示することもできる。また、選択された期間にわたる移動平均(動向)や毎日の移動最小−最大偏差などの様々な統計値を計算し、LCD30に表示することができ、要求時には、LCD30上にそれらを時間に対してプロットすることもできる。ブドウ糖濃度の単位mg/dLまたはmmol/Lを選択するためのオプションをユーザに提供することができ、ブドウ糖測定値の最長一年にわたるセットを、測定値の取得時を反映するタイムスタンプと共に不揮発メモリに記憶でき、それを表示したり、または要求に応じて、選択されたUSBインタフェース33またはブルートゥース・モジュール28を介してコンピュータへアップロードできる。
【0030】
差し迫った低血糖または高血糖の場合には、ブザー31によって生じる可聴音によってユーザに警告することができ、LCD30上にテキスト・メッセージを表示することができる。さらに、差し迫った低血糖の場合、装置1は、ブルートゥース・モジュール28から10メートル以内にいて、ブルートゥース・アラームを備えているほかの人たちに、ブルートゥース・モジュール28を使用して警告を発することができる。装置1はまた、GPSモジュール27を使用することによりユーザの位置を特定でき、低血糖の場合には、遠隔治療を目的として、緊急テキスト・メッセージを救急サービス「911」などの電話に及び/または汎用パケット無線サービス(GPRS)またはグローバル・システム・フォー・モバイル・コミュニケーションズ(GSM)に備えられた中央サーバを含むその他の予めプログラムされた電話番号に送信でき、またはブドウ糖濃度データを中央サーバに単純に中継できる。装置1はまた、ブドウ糖濃度測定値を、ユーザに接続されたインスリン・ポンプに送るときには、ブルートゥース・モジュール28を介して中継することができ、インスリン・ポンプと共に人工膵臓を形成し得る。装置1がこのように使用される場合には、コントローラ/プロセッサ・システム13は、たまたまそばにいる他のユーザへの干渉を避けるために、装置1とインスリン・ポンプの双方で共有される擬似ランダム・シーケンスによってデータを符号化する必要がある。
【0031】
図4をさらに参照すると、電源システム15は、再充電可能な小型のバッテリー37を含む。バッテリー37は、これに限定されないが、リチウム・イオン型バッテリーであり得る。電源監視/バッテリー保護サブシステム35は、過剰放電や短絡状態からバッテリー37を保護し、バッテリー電圧が低くなり再充電しなければならないときはそれをコントローラ/プロセッサ・システム13に通知する。電源システムはまた、すべての回路をバイアスするため及び各種のサブシステムへの電圧分配に必要な電圧を作り出し、コントローラ/プロセッサ・システム13の制御の下でオン/オフ可能であるDC/DC変換器電圧レギュレータ・サブシステム39、40、41、及び42を含む。
【0032】
装置1は、各測定の前に電源システム15及び測定システム12を自己チェックすることによりその状態を判定することができ、故障がある場合には、ブザー31またはLCD表示部30を介してユーザに警告することができる。また、継続的モニタリングを持続できるようにバッテリーの充電はユニットの外で行うので、装置1は、バッテリー電圧をモニターし、ブドウ糖測定の合間に交換が必要な場合、モニタリングを中断せずにユーザに警告する。装置1はまた、サービスの継続時間(通常の使用中にバッテリーがその電荷をどれだけ長く保持するか)をモニタリングすることによりバッテリー状態を判定し、新しいバッテリーが必要なときはユーザに警告する。装置1はまた、バッテリーの寿命を保つために測定の合間にはある回路を自動的にパワーダウンすることができる。装置1はまた、不慮の電源切断を避けるために、パワー・オン/オフ・プッシュボタン36の作動に応答して、ユーザ・インタフェース/周辺システム14を介して装置1を停止することの確認を要求し、得ることができる。
【0033】
測定システム12は、放射光源モジュール17、光源モジュール温度コントローラ16、EOBSドライバ20、16ビット波長D/A変換器21、VCSELドライバ18及び16ビット強度D/A変換器19を含む。測定システムはまた、放射光検出モジュール23、検出器モジュール温度コントローラ22、検出器増幅器24、及び信号A/D変換器25を含む。
【0034】
図1と図4を参照しつつ図5を参照すると、EOBSドライバ20とVCSELドライバ18と共に放射光源モジュール17の回路が示される。光源”1”である49または光源”2”である50(LD1−LDM)は、VCSELドライバ18を介した強度D/A変換器19の電圧レベルによって最大500mWまで選択可能である放射光強度をもち、セレクト制御68及びデコーダ69を通じたコントローラ/プロセッサ・システム13による指令の下で、トランジスタSLD1−SLDM70を短周期(1〜100ms)で切り換えることによりオン/オフ切り換え可能である。光源発光波長もまた、EOBSドライバ20を介した強度D/A変換器21の電圧レベルによって、所定の範囲及び所定の個別波長にわたり選択可能である。放射光源モジュール17はまた、光源モジュール温度コントローラ16によって25°Cに温度制御が可能なように、熱電冷却器71(TEC)とそれに関連したサーミスタ72を含む。
【0035】
図1と図4を参照しつつ図6を参照すると、検出器増幅器24と共に放射光検出器モジュール23の回路が示される。放射光検出器モジュール23は、拡散反射率の光信号を電気信号に変換する一つまたは二つの検出器51、52と、検出器モジュール温度コントローラ22によって10°Cに温度制御が可能なように、TEC76及び関連したサーミスタ77を含む。検出器増幅器24は、放射光のスイッチ制御に同期して、コントローラ/プロセッサ・システム13によりスイッチ制御されたスイッチ付き積分器回路74と相関ダブル・サンプリング回路75によって、拡散反射率の電気信号を処理する。24ビット信号A/D変換器25は、反射率信号をデジタル化し、それをコントローラ/プロセッサ・システム13へ出力する。全波長チャネルにわたる皮膚、リファレンス、暗信号の完全な1セットのデータの取得には1〜20msを必要とする。約10秒の測定時間内で、取得はN回(500〜10,000)繰り返される。連続モードでの測定は、バッテリー交換を12時間おきに行うのであれば5分ごとに繰り返すことができ、またはバッテリー交換を24時間おきに行うのであれば10分ごとに繰り返すことが可能である。
【0036】
コントローラ/プロセッサ・システム13のソフトウェアは、先ずノイズを最小にするように信号を処理し、次に透過率と吸光度スペクトルを演算し、最後に被分析物濃度を演算する。理論的に、透過率は次の比率として定義される。
T=I/I0=e−kd(ベール・ランバートの法則) (数式2)
【0037】
Iは強度I0の入射反射光に対応した拡散反射率の強度を示し、kは吸光係数(組織またはリファレンス標準)を示し、dは浸透距離を示す。間質液の場合、皮膚の拡散反射率、リファレンスの拡散反射率、及び光検出器の暗電流が測定される。以下の説明では、太字はベクトルを意味する。透過率スペクトルは、Iskin/I0をIref/I0で除した、「二重比(double ratio)」として演算される。したがって、T=Iskin/Iref、よって入射放射光I0を測定する必要性を省く。検出された放射光Rskin、Rrefは、差し引かなければならない検出器暗電流による強い成分D2と無相関ノイズを含む。したがって、すべての信号を中央平均化した後、透過率スペクトルをT=(Rskin−D2)/(Rref−D2)として演算し、吸光度スペクトルを次の定義により求める。
X=−logT (数式3)
【0038】
ソフトウェアは、サンプリングされた皮膚、リファレンス、及び暗信号の時間シーケンスを3xNxMの配列にソートする。過剰なノイズを減じるため、シャープな零位相デジタル・フィルタによって、皮膚、リファレンス、及び暗信号の各信号シーケンスを0.5Hzで低域通過フィルタリングする。間質液の吸光度スペクトルを作成するために、取得したデータの各セットについて先ず透過率スペクトルを計算し、次に平均化し、平均化した透過率スペクトルを用いて吸光度を演算する。毛細血管の吸光度スペクトルの作成は、しかし、さらなる処理を必要とする。各波長チャネルでの皮膚の拡散反射率信号は、間質液の拡散反射率に主に起因する大きなDC部分を含み、さらに毛細血管の拡散反射率(〜1%)に起因するごく一部の部分、検出器暗信号に起因するごく一部の部分、及び無相関ホワイト・ノイズに起因する大部分を含む。この信号は、心臓の収縮期に高偏位(high excursions)が発生し、拡張期に低偏位が発生する心臓のポンプ作用によって変調される。したがって、装置1は、リファレンス標準及び/または機械的可動部品を必要としない分光リファレンシング方式を利用することによって毛細血管中のブドウ糖の測定を行う。これにより、装置1は計器の基準安定性の向上をもたらし、ごくわずかにゆっくりと変化する心臓の心拍で変調された拡散反射率信号の各波長での時間信号の最適化された同期検出と、最大対最小の比として透過率を計算することとを含む処理を提供する。このリファレンシング方式は、近接した時間でわずかに変化する一つの経路をサンプリングし、各心拍中の最小と最大の光子経路の変化をサンプリングする。
【0039】
図7a〜7cを参照すると、検出器の出力での一つの波長における当該信号の1サイクルが示される。放射光源は波長チャネル間で、1〜100μs間オン、1〜20ms間オフに切り換わるので、この信号は時間的に離散する。この信号の周波数スペクトルは、前述の心拍のDCパルス成分の1セットの成分と、スイッチング信号の基本及び高調波周波数のこれらの信号のより多くのセットとを含む。パルス・ディファレンシァル分光法(PDS)を適用するには、偏位を確定しなければならない。DC周辺での動作では、これは次のように行われる。過剰なノイズを減じるために、シャープな零位相デジタル・フィルタで皮膚と暗信号の両方の信号シーケンスを2Hzで低域通過フィルタリングする。次に、強いDC成分を除去するために、これらをシャープな零位相デジタル・フィルタにより0.5Hzで高域通過フィルタリングする。次に、心拍信号の同期レプリカを使用して、FFTを介してまたは復調によって偏位を確定することができる。
【0040】
心拍信号のレプリカは、約1275nmの波長のチャネルでの皮膚の拡散反射率信号を使用して心拍数を推定することによって作成することができる。この波長の放射光は表皮を貫通し、ほかのどの波長よりも深く毛細血管床まで到達する。測定ピリオドには6〜12サイクルが存在するので、Rskinに対する/からのピーク正偏位を平均化し、Rrefに対する/からのピーク負偏位を平均化することにより前述のように透過率を演算する。代替的に、スイッチング周波数の基本部分で動作することによって、同様に偏位を確定することができる。しかし、この方法は、スイッチング信号の同期レプリカを信号に乗じることによるDCへのダウンコンバージョンをさらに必要とする。
【0041】
最後に、吸光度スペクトルを予め格納したキャリブレーション・ベクトルbと合わせて使用して、ブドウ糖濃度を予測する。
yP=Xb (数式4)
【0042】
キャリブレーション・ベクトルは次のようなパーシャル・リスト・スクエアによって得られる。
b=(XTX)−1XTyR (数式5)
【0043】
yRは正確な侵襲的器具を使用して得た基準測定値である。キャリブレーションの目的で必要な、取得スペクトル数及び侵襲的基準測定値の数は、Marbachによる”On Wiener filtering and the physics behind statistical modeling”というタイトルの論文で述べられているような、キャリブレーション・ベクトルを決定するためのスペクトルに関する先行技術を組み合わせることによって劇的に減少されうる。したがって、必要な個々のキャリブレーション時間は、多くの日数から数時間に減少され得る。
【0044】
図8a〜8cを参照すると、TPCOPOが光学パラメータ式発振を得る手段を提供する。従来のOPOと同様であるが、TPCOPOはポンプを必要とする。チューニングは、ポンプ・ビームの入射角度を変えることによって達成される。TPCOPOは、これらに限定されないが、LiNbO3、KTPなどの従来の非線形光学結晶から製造することができる。しかし、TPCOPOの横方向設計特性(transverse design nature)はまた、GaAsやZnSeの単層構造物などの半導体材料からの製造を可能にする。VCSEL半導体ポンプ光源と電気光学的ビームステアリング部材(EOBS)をTPCOPOに統合することで、チューニング可能な光源の特徴(前述)のすべてを実現することができる。例えば、本装置は、GaAsTPCOPO活性層、VCSEL等のポンプとしての役目を果たすGaAsソリッドステート狭帯域コヒーレント光源、及びこれらの間にGaAs電気光学的ビーム偏向層を備えた、一対のGaAsブラッグ反射器により構成することができる。
【0045】
TPCOPO層及びブラッグ反射器は、ポンプの波長に合わせて設計される。この実施形態では、ポンプ及びビームステアリング要素は、TPCOPO層を内包するブラッグ・キャビティ内に向けてポンプを始動する前に、十分なビームステアリング能が確保されるように、ブラッグ・キャビティの全長にわたってTPCOPO層に平行になるように配置されるか、またはブラッグ・キャビティの一方の端部に存在するように配置されうる。駆動電圧を印加する手段のための電気的接続は、ポンプとEOBS層へ別々に配線される。ポンプへの電力は光出力電力を決定し、EOBS層へ印加された電圧は光出力エネルギー(すなわち、周波数)を決定する。説明した構造物は、単一素子のエミッタでも、またはアレイとしても構成できる。図8に示したTPCOPOの構成層は、ブラッグ反射器80、EOBSビームステアリング層81、ポンプ82、TPCOPO活性層83、装置基板84である。図8aでは、ポンプがブラッグ・キャビティの外側に位置する。これは所望のポンプがEOBSまたはTPCOPOの材料と適合しない場合や、EOBS層が十分なビームステアリングのために過度の経路長を必要とする場合や、またはポンプ及び/またはEOBS層がポンプまたはTPCOPO出力周波数を過度に吸収する場合に、有利になり得る。この構成では、EOBS層は、音響光学的または圧電ビームステアリング層に置き換えることができ、ブラッグ・キャビティ上に「成膜」させる必要はない。図8bでは、ポンプ・エネルギーの出力エネルギーへのより高い変換効率を得るように、ポンプ層とEOBS層はブラッグ・キャビティの内側に配置されるが、TPCOPO層へ入る前に十分な角偏向を与えるためにEOBS層がポンプ波の複数のパスを必要とする場合に、EOBSの経路長の設計に自由度をもたせる。図8cでは、ポンプ、EOBS及びTPCOPOの各層がそれぞれ重ねられて積層される。これは、EOBS層がポンプ出力を効果的に偏向し、ポンプもEOBS層もポンプまたは出力周波数のいずれかを過度に吸収しないと仮定した最も簡易な設計である。
【0046】
現在最も実用的で好適な実施形態と考えられるものに基づいた例証の目的で発明を詳細に説明したが、このような詳細は単にこの目的のためのものであり、本発明は開示した実施形態に限定されるものではなく、むしろ添付の請求項の精神と範囲内にある変形または同等なアレンジメントを包括するものと理解されたい。例えば、いずれかの実施形態の一つまたは複数の特徴がそれ以外の実施形態の一つまたは複数の特徴と可能な範囲で組み合わせることができることを本発明は考慮していることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明によるサンプル中の生体被分析物を感知するための装置の概要図である。
【図2】図1の装置の光学システムの概要図である。
【図3】図1の装置の光学システムの拡張的実施形態の概要図である。
【図4】図1の装置の詳細な概要図である。
【図5】本発明による放射光源モジュールの概要図である。
【図6】本発明による放射光検出モジュールの概要図である。
【図7】a−cのそれぞれは、検出器の出力における離散時間の毛細血管の拡散反射率信号の1周期を示すグラフ、その拡張図、及びスイッチ付き積分器出力における同図である。
【図8】a−cのそれぞれは、本発明による横方向励起対向伝播光学パラメータ式発振器のブロック図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも一つの放射光源と少なくとも一つの放射光検出器とを備える光学システムと、
b)光学システムに動作上結合した測定システムと、
c)測定システムに動作上結合し、組み込みソフトウェア・システムを有する制御/処理システムと、
d)制御/処理システムとのユーザ・インタラクションを提供するために制御/処理システムに動作上結合したユーザ・インタフェース/周辺システムと、
e)電力を供給するために測定システム、制御/処理システム、ユーザ・インタフェース/周辺システムまたはこれらのいずれかの組み合わせに動作上結合した電源システムを具備し、
制御/処理システムの組み込みソフトウェア・システムは、サンプル中の生体被分析物の濃度を決定するために測定システムから得られた信号を処理する、
サンプル中の生体被分析物を非侵襲的に感知するための装置。
【請求項2】
光学システムから得られた吸光度スペクトルは、サンプル中の生体被分析物の濃度を決定するために、予め記憶されたキャリブレーション・ベクトルと共に制御/処理システムの組み込みソフトウェア・システムによって用いられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
サンプルは、生体組織の間質液、生体組織の毛細血管床、血液サンプルまたはこれらのいずれかの組み合わせである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
放射光源は、発光波長を選択可能で、発光強度を選択可能なTPCOPO装置、または発光波長を選択可能で、発光強度を選択可能なレーザ・ダイオード・アレイのうちの一つである、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
放射光検出器は、InGaAs、Geまたはこれらのいずれかの組み合わせから製造される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
生体被分析物は、ブドウ糖、脂質、アルコールまたはこれらのいずれかの組み合わせである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
放射光源の発光スペクトルは、約1,200nm〜約1,900nmの範囲をとる、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
放射光検出器の応答性は約1,200nm〜約1,900nmの範囲をとる、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
生体被分析物がアルコールであり、放射光源の発光スペクトルは約800nm〜約1,300nmの範囲をとる、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
生体被分析物がアルコールであり、放射光検出器の応答性は約800nm〜約1,300nmの範囲をとる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
ユーザ・インタフェース/周辺システムは、
a)差し迫った低血糖または高血糖の場合には、可聴音及び/またはテキスト・メッセージの表示によってユーザに警告し、
b)差し迫った低血糖の場合には、アラームを備えているほかの人たちにアラーム・モジュールを使用して警告を発し、
c)低血糖の場合には、グローバル・ポジショニング・システム・モジュールを使用してユーザの位置を特定し、緊急のテキスト・メッセージを電話番号へ送信するか、または生体被分析物濃度データを中央のサーバに中継し、
d)コード化されたブドウ糖濃度測定値が、コードを認識するようにプログラムされ、ユーザに接続されたインスリン・ポンプに送られる場合、インスリンの自動放出のためにコード化されたブドウ糖濃度測定値をブルートゥース・モジュールを介して中継する、
またはこれらのいずれかの組み合わせ
を行うように構成される、請求項1の装置。
【請求項12】
少なくとも一つの放射光源は、光学結晶、半導体材料単層構造物、またはこれらの任意の組み合わせから製造される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
発光波長の選択性と強度を得るために、半導体ポンプ光源がビームステアリング部材及びTPCOPO層と一体化される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも一つの放射光源は、GaAsTPCOPO活性層、GaAs狭帯域コヒーレント光源ポンプ及びこれらの間にGaAs電気光学的ビーム偏向層を備えた一対のGaAsブラッグ反射器により構成される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
ポンプ光源及びビームステアリング部材は、TPCOPO層を内包するブラッグ・キャビティ内に向けてポンプ光源を始動する前にビームステアリングができるように、ブラッグ・キャビティの全長に沿ってTPCOPO層に平行、またはブラッグ・キャビティの一方の端部に存在するうちの一つである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
別々の電気的接続手段がポンプ層とGaAs電気光学的ビーム偏向層とに配線される、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
ポンプ層へ印加された電流は発光される放射光の強度を決定する、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
GaAs電気光学的ビーム偏向層へ印加された電圧は発光される放射光の波長を決定する、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
間質液の拡散反射率の測定に適用できる、それぞれが空間的に近接した二つのビームを使用した分光光度リファレンシングによるサンプル中の生体被分析物の非侵襲的感知のための方法であり、
a)第一の放射光源、第二の放射光源、第一の放射光検出器及び第二の放射光検出器を使用した光学システムを構築することにより、システム中の空間に近接した四本の光ビーム路を確立するステップと、
b)各光源を異なる時間関数により変調するステップと、
c)光学システムのすべての光学要素がビームを送信及び/または反射するように光学システムを構成するステップと、
d)第一のビーム・ペアと第二のビーム・ペアをシステム内の一つの点で分離し、第一のビーム・ペアをユーザの皮膚に集束させ、第二のビーム・ペアをリファレンス・サンプルに集束させるステップと、
e)第一の検出器と第二の検出器によって生成された信号を復調し、検出器によって生成された信号をビームから分離するステップと、
f)分光光度透過率を第一の比率と第二の比率の比として演算するステップと
を含んでなる方法。
【請求項20】
第一の比率は、第二の放射光源からの放射により第二の放射光検出器に入射するリファレンスの拡散反射率信号に対する第一の放射光源からの放射により第二の放射光検出器に入射する皮膚の拡散反射率信号の比率であり、
第二の比率は、第二の放射光源からの放射により第一の放射光検出器に入射する計器信号に対する、第一の放射光源からの放射により第一の放射光検出器に入射する計器信号の比率である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
分光光度透過率は、サンプル中の生体被分析物の濃度を決定するために使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
光学システムは、光学ガラス要素の内部に限定される、サンプル・ビームとリファレンス・ビームの分離域を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
サンプル・ビームとリファレンス・ビームの分離域は、筺体によって保護される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
毛細管血の拡散反射率に適用可能なパルス・ディファレンシァル分光法を利用する分光光度リファレンシング法であり、
a)光学システムに少なくとも一つの光路を準備し、
b)一心拍の間の光子経路(photon path)の最大および最小変化を得るために、わずかな時間で微小に変化する経路(one path)をサンプリングし、
c)各波長で拡散反射率信号の時間信号を同期的に検出し、
d)拡散反射率の最大対最小の比として分光光度透過率を演算し、
e)分光光度透過率を用いて生体被分析物の濃度を決定する
ことによって実行される方法。
【請求項1】
a)少なくとも一つの放射光源と少なくとも一つの放射光検出器とを備える光学システムと、
b)光学システムに動作上結合した測定システムと、
c)測定システムに動作上結合し、組み込みソフトウェア・システムを有する制御/処理システムと、
d)制御/処理システムとのユーザ・インタラクションを提供するために制御/処理システムに動作上結合したユーザ・インタフェース/周辺システムと、
e)電力を供給するために測定システム、制御/処理システム、ユーザ・インタフェース/周辺システムまたはこれらのいずれかの組み合わせに動作上結合した電源システムを具備し、
制御/処理システムの組み込みソフトウェア・システムは、サンプル中の生体被分析物の濃度を決定するために測定システムから得られた信号を処理する、
サンプル中の生体被分析物を非侵襲的に感知するための装置。
【請求項2】
光学システムから得られた吸光度スペクトルは、サンプル中の生体被分析物の濃度を決定するために、予め記憶されたキャリブレーション・ベクトルと共に制御/処理システムの組み込みソフトウェア・システムによって用いられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
サンプルは、生体組織の間質液、生体組織の毛細血管床、血液サンプルまたはこれらのいずれかの組み合わせである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
放射光源は、発光波長を選択可能で、発光強度を選択可能なTPCOPO装置、または発光波長を選択可能で、発光強度を選択可能なレーザ・ダイオード・アレイのうちの一つである、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
放射光検出器は、InGaAs、Geまたはこれらのいずれかの組み合わせから製造される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
生体被分析物は、ブドウ糖、脂質、アルコールまたはこれらのいずれかの組み合わせである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
放射光源の発光スペクトルは、約1,200nm〜約1,900nmの範囲をとる、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
放射光検出器の応答性は約1,200nm〜約1,900nmの範囲をとる、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
生体被分析物がアルコールであり、放射光源の発光スペクトルは約800nm〜約1,300nmの範囲をとる、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
生体被分析物がアルコールであり、放射光検出器の応答性は約800nm〜約1,300nmの範囲をとる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
ユーザ・インタフェース/周辺システムは、
a)差し迫った低血糖または高血糖の場合には、可聴音及び/またはテキスト・メッセージの表示によってユーザに警告し、
b)差し迫った低血糖の場合には、アラームを備えているほかの人たちにアラーム・モジュールを使用して警告を発し、
c)低血糖の場合には、グローバル・ポジショニング・システム・モジュールを使用してユーザの位置を特定し、緊急のテキスト・メッセージを電話番号へ送信するか、または生体被分析物濃度データを中央のサーバに中継し、
d)コード化されたブドウ糖濃度測定値が、コードを認識するようにプログラムされ、ユーザに接続されたインスリン・ポンプに送られる場合、インスリンの自動放出のためにコード化されたブドウ糖濃度測定値をブルートゥース・モジュールを介して中継する、
またはこれらのいずれかの組み合わせ
を行うように構成される、請求項1の装置。
【請求項12】
少なくとも一つの放射光源は、光学結晶、半導体材料単層構造物、またはこれらの任意の組み合わせから製造される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
発光波長の選択性と強度を得るために、半導体ポンプ光源がビームステアリング部材及びTPCOPO層と一体化される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも一つの放射光源は、GaAsTPCOPO活性層、GaAs狭帯域コヒーレント光源ポンプ及びこれらの間にGaAs電気光学的ビーム偏向層を備えた一対のGaAsブラッグ反射器により構成される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
ポンプ光源及びビームステアリング部材は、TPCOPO層を内包するブラッグ・キャビティ内に向けてポンプ光源を始動する前にビームステアリングができるように、ブラッグ・キャビティの全長に沿ってTPCOPO層に平行、またはブラッグ・キャビティの一方の端部に存在するうちの一つである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
別々の電気的接続手段がポンプ層とGaAs電気光学的ビーム偏向層とに配線される、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
ポンプ層へ印加された電流は発光される放射光の強度を決定する、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
GaAs電気光学的ビーム偏向層へ印加された電圧は発光される放射光の波長を決定する、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
間質液の拡散反射率の測定に適用できる、それぞれが空間的に近接した二つのビームを使用した分光光度リファレンシングによるサンプル中の生体被分析物の非侵襲的感知のための方法であり、
a)第一の放射光源、第二の放射光源、第一の放射光検出器及び第二の放射光検出器を使用した光学システムを構築することにより、システム中の空間に近接した四本の光ビーム路を確立するステップと、
b)各光源を異なる時間関数により変調するステップと、
c)光学システムのすべての光学要素がビームを送信及び/または反射するように光学システムを構成するステップと、
d)第一のビーム・ペアと第二のビーム・ペアをシステム内の一つの点で分離し、第一のビーム・ペアをユーザの皮膚に集束させ、第二のビーム・ペアをリファレンス・サンプルに集束させるステップと、
e)第一の検出器と第二の検出器によって生成された信号を復調し、検出器によって生成された信号をビームから分離するステップと、
f)分光光度透過率を第一の比率と第二の比率の比として演算するステップと
を含んでなる方法。
【請求項20】
第一の比率は、第二の放射光源からの放射により第二の放射光検出器に入射するリファレンスの拡散反射率信号に対する第一の放射光源からの放射により第二の放射光検出器に入射する皮膚の拡散反射率信号の比率であり、
第二の比率は、第二の放射光源からの放射により第一の放射光検出器に入射する計器信号に対する、第一の放射光源からの放射により第一の放射光検出器に入射する計器信号の比率である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
分光光度透過率は、サンプル中の生体被分析物の濃度を決定するために使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
光学システムは、光学ガラス要素の内部に限定される、サンプル・ビームとリファレンス・ビームの分離域を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
サンプル・ビームとリファレンス・ビームの分離域は、筺体によって保護される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
毛細管血の拡散反射率に適用可能なパルス・ディファレンシァル分光法を利用する分光光度リファレンシング法であり、
a)光学システムに少なくとも一つの光路を準備し、
b)一心拍の間の光子経路(photon path)の最大および最小変化を得るために、わずかな時間で微小に変化する経路(one path)をサンプリングし、
c)各波長で拡散反射率信号の時間信号を同期的に検出し、
d)拡散反射率の最大対最小の比として分光光度透過率を演算し、
e)分光光度透過率を用いて生体被分析物の濃度を決定する
ことによって実行される方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2008−543437(P2008−543437A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517045(P2008−517045)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/023098
【国際公開番号】WO2006/138340
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507408291)ドミニオン アセッツ リミテッド ライアビリティー カンパニー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/023098
【国際公開番号】WO2006/138340
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507408291)ドミニオン アセッツ リミテッド ライアビリティー カンパニー (1)
【Fターム(参考)】
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