説明

人工椎間板

【課題】損傷した天然の椎間板領域に対する運動性を回復させ、同時に天然に存在する椎間板と類似の、運動性ならびにクッション性および緩衝性を可能にする、椎間板の交換に対する解決策を提供すること。
【解決手段】1つの局面において、本発明は、人工椎間板を提供し、この人工椎間板は、以下:ハウジング部材であって、互いに対面する間隔を空けた内側表面、および間隔を空けた椎骨表面と係合するための、逆向きに面する外側表面を備える、ハウジング部材;内側表面の各々から延び、互いに係合するための、ベアリング手段であって、圧縮下で、互いに対する低摩擦の圧縮抵抗性を可能にする、ベアリング手段;ならびに負荷共有手段であって、内側表面間で、かつベアリング手段の少なくとも一部の周りで配置されており、圧縮負荷の吸収を、ベアリング手段と共有し、同時にハウジング部材の相対的な移動を制限するためのものである、負荷共有手段、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、隣接する椎骨の間の椎間空間に移植して、安定化ならびに継続的な術後の可撓性および適切な解剖学的運動性を提供するための、脊椎移植物アセンブリに関する。より具体的には、本発明は、損傷したか、弱まったか、または他に機能しない椎間板の交換のために、負荷共有およびベアリングデバイスとして機能するための、人工椎間板(時々、椎間スペーサーデバイスと称される)に関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎は、複数の可撓性レベルを構成する複雑な構造体である。各レベルは、隣接する椎骨によって規定される関節のシステムからなる。この関節のシステムは、椎間板を備え、これらは、2部分の構造体である。椎間板は、核および環からなる。このシステムは、関節突起間関節が脊柱に後方の安定化を加える間、運動を可能にする。これらの椎間板は、運動性および関節に対するクッションを可能にする。
【0003】
この関節の複雑なシステムは、時間が経つにつれて変化する負荷および問題(種々の理由による椎間板の劣化が挙げられる)に供される。椎間板の劣化は、加齢、過剰の負荷に起因する損傷、外傷、および他の解剖学的問題に起因し得る。この構造体の関節突起間関節は、同じ理由に起因して、そして関節炎の変化に起因して、損なわれ得る。重篤な関節の退化および不全は、しばしば、かなりの疼痛を引き起こし、外科的介入を必要とし得る。
【0004】
脊椎関節の問題によって引き起こされる重篤な疼痛に対する処置の、現在の標準的な方法は、損傷したレベルの脊椎の癒合である。この処置は、成功すると、損傷したセクションを単一の塊の骨に癒合させる。関節の癒合は、その関節の運動性を排除し、これによって、そのレベルでの疼痛を低減または排除する。疼痛の排除に対する成功率は、この処置方法について非常に高い。しかし、脊椎全体が1つのシステムとして働くので、癒合は、合併症を生じる。
【0005】
脊椎における運動性の排除は、他のレベル全てにおける、その脊椎の生体力学を変化させる。1つのレベルが癒合する場合、負荷が、1つの椎間板が少ないシステム(これは、そのような変化に対して設計されていない)によって吸収される。従って、残りの椎間板は、負荷を再分配しなければならず、各椎間板が、より大きい負荷を吸収する。さらに、脊椎は、負荷を吸収するために撓む。癒合は、脊椎が撓む様式を変化させ、このこともまた、残りの健常な椎間板に対する負荷を増加させる。次に、癒合の合併症は、将来さらなる癒合を必要とし得ることであるということが、十分に理解されている。なぜなら、他の椎間板が、その脊椎の変化した生体力学に起因して、悪化するからである。換言すれば、短期間での疼痛の緩和は、その脊椎の長期間の変化と引き換えられ、これは次に、通常、さらなる手術を必要とする。
【0006】
椎間板交換の問題に取り組む、多数の先行技術特許が存在する。椎間の負荷をクッションするための、ポリマー複合構造体が開示される(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。また、椎間の運動性の問題に取り組む、球継手の型の移植物が開示される(例えば、特許文献3および特許文献4を参照のこと)。これらの特許文献は、エラストマーを運動性および緩衝性の構造体として使用する、第一のアプローチ、ならびに可動性の車軸関節を作製するための球関節を利用する、第二のアプローチの例示である。これらの概念に対する多くのバリエーションが存在し、これらとしては、機械的ばねおよびより複雑な構造機構が挙げられる。先行技術のかなりの部分は、椎間の運動性の問題に取り組むが、解剖学的な負荷の問題に取り組まない。
【0007】
先行技術の人工椎間板の現在の水準には、種々の問題が付随する。例えば、ポリマーから構築される多数の移植物は、より高い負荷の領域(例えば、腰椎)において効果的に働くためには強度が十分ではない。このようなポリマーは、しばしば、圧縮硬化を起こし、その結果、この移植物の元の高さが、時間が経つにつれて減少する。外科医は、最初により大きいポリマープロテーゼを使用することによって圧縮を補償し、そして圧縮を推定しなければならないか、または適切な大きさのポリマープロテーゼを使用し、そして後に、このプロテーゼの不可逆な圧縮が認容不可能になると、このプロテーゼを外科的に交換しなければならないかの、いずれかである。
【0008】
球関節から構築される移植物は、通常の椎間板の衝撃緩衝効果を、かなり制限または排除する。この移植物は、運動性を提供し得るが、生体力学的には、球関節は、その脊椎の他の健常な椎間板にネガティブに影響を与える。その結果は、現在の癒合処置において見られるような、その脊椎の他のレベルにおける長期間にわたる問題であり得る。
上で議論されない、他の移植物は、ベアリング表面を利用し、これは通常、金属界面に対するポリエチレンのベアリングを有する。ベアリング表面としてのポリエチレンは、その物質の磨耗特性に起因して、大きい関節の交換においては問題を生じる。人工椎間板は、長期間にわたって移植されることが意図されるので、このような磨耗は、周囲の組織および骨に非常に損傷を与え得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,443,987号明細書
【特許文献2】米国特許第6,001,130号明細書
【特許文献3】米国特許第5,258,031号明細書
【特許文献4】米国特許第5,314,477号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のことを考慮して、損傷した天然の椎間板領域に対する運動性を回復させ、同時に天然に存在する椎間板と類似の、運動性ならびにクッション性および緩衝性を可能にする、椎間板の交換に対する解決策を提供することが望ましい。さらに、このような運動性、クッション性および緩衝性を可能にし、同時にポリマー材料またはエラストマー材料が、脊椎において見られる比較的高い圧縮負荷を経験することを防止することが、好ましい。ベアリング表面が、脊椎の負荷を、ポリマー材料またはエラストマー材料と共有することもまた、好ましい。最後に、解剖学的状態を調節するために、人工的な運動に対する変化を術中に制御することが、好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの局面において、本発明は、人工椎間板を提供し、この人工椎間板は、以下:
ハウジング部材であって、互いに対面する間隔を空けた内側表面、および間隔を空けた椎骨表面と係合するための、逆向きに面する外側表面を備える、ハウジング部材;
内側表面の各々から延び、互いに係合するための、ベアリング手段であって、圧縮下で、互いに対する低摩擦の圧縮抵抗性を可能にする、ベアリング手段;ならびに
負荷共有手段であって、内側表面間で、かつベアリング手段の少なくとも一部の周りで配置されており、圧縮負荷の吸収を、ベアリング手段と共有し、同時にハウジング部材の相対的な移動を制限するためのものである、負荷共有手段、
を備える。
【0012】
1つの実施形態において、上記ベアリング手段は、上記内側表面の一方から延びる凹状表面部分、および内側表面の他方から延びて凹状表面部分に設置される凸状表面部分を備え、凸状表面の、凹状表面に対するスライド移動が、ハウジング部材の相対的旋回運動を効率的に生じ、この旋回運動が、負荷共有手段の少なくとも一部を圧縮し得、同時にこの負荷ベアリング手段の少なくとも一部を膨張させる。
【0013】
1つの実施形態において、上記負荷共有手段は、上記ハウジング部材間の相対的なねじれ移動を可能にするように弾性であり、このねじれ移動が、ハウジング部材間での相対的な三次元移動をもたらし、同時にこの移動を制限し、かつ上記ベアリング手段以外のハウジング部材間の接触を防止する。
【0014】
1つの実施形態において、上記人工椎間板は、1対のディスク部材を備え、これらのディスク部材の各々が、上記ベアリング手段のうちの一方を備え、上記ハウジング部材の上記内側表面が、ディスク設置手段を備え、このディスク設置手段は、ディスク部材の1つをその内部に設置し、ハウジング部材の他方の設置部材に設置されたディスク部材の他方と対面する関係にするためのものである。
【0015】
1つの実施形態において、上記設置手段は、上記ハウジング部材の上記内側表面の各々に陥凹するポケットを備える。
【0016】
1つの実施形態において、一旦、上記ディスク部材が上記ポケット内に設置されると、ディスク部材と上記ハウジング部材との相対的な移動を選択的に防止するための、ロッキング手段を、上記人工椎間板が備える。
【0017】
1つの実施形態において、上記ロッキング手段は、上記ポケットの壁内にプレスばめテーパを備える。
【0018】
1つの実施形態において、上記ロッキング手段は、上記ポケットに作動可能に接続される保持リングを備える。
【0019】
1つの実施形態において、上記ロッキング手段は、上記ポケットの周りに配置された少なくとも1つのアンダーカット溝を備え、そして上記ディスク部材が、アンダーカット溝内での係合をロックするための、半径方向外向きに延びる少なくとも1つのフランジを備える。
【0020】
1つの実施形態において、上記フランジは、半径方向外向きに延びる少なくとも1つの差込部分を備える。
【0021】
1つの実施形態において、上記ロッキング手段は、上記ディスク部材の周縁の周りに配置された少なくとも1つのアンダーカット溝を備え、そして上記ハウジング部材の上記ポケットが、アンダーカット溝内での係合をロックするための、半径方向内向きに延びる少なくとも1つのフランジを備える。
【0022】
1つの実施形態において、上記人工椎間板は、上記ハウジング部材の少なくとも1つの上記内側表面の縁部から上記ポケットへと延びる、傾斜表面を備え、この傾斜表面は、ハウジング部材が椎間空間内で互いに間隔を空けた関係で配置される場合に、ポケット内に上記ディスク部材を横方向に挿入するためのものである。
【0023】
1つの実施形態において、上記ハウジング部材は、椎骨の間での相対的な配置のための上部部材および下部部材であるようにさらに規定され、この上部部材は、凹状表面を有する上記ディスク部材の比較的大きい方を設置するための、比較的大きい方の上記ポケットを備え、そしてこの下部部材は、ディスクの比較的小さい方を設置するための、比較的小さい方のポケットを備え、これによって、上記ベアリング表面の界面において、増加した範囲の運動性を提供する。
【0024】
1つの実施形態において、上記ディスク部材は、セラミック、プラスチック、および金属のベアリング材料からなる群より選択される組成物から作製されている。
【0025】
1つの実施形態において、上記負荷共有手段は、上記ハウジング部材の上記内側表面の間に配置および保持された、少なくとも1つのパッド部材を備え、そしてこのパッド部材は、反作用のためのクッション特性および弾性特性を有し、これによって、上記ハウジング部材の上記外側表面に圧縮力が付与される間に、ハウジング部材の相対的な移動によって引き起こされる力に対向して自動中心合わせする。
【0026】
1つの実施形態において、上記ハウジング部材は、上記内側表面の間に上記パッド部材を設置するための設置手段を備える。
【0027】
1つの実施形態において、上記設置手段は、上記ハウジング部材の上記内側表面に陥凹した少なくとも1つのポケットを備え、このポケットは、上記パッド部材の一部を内部に設置するためのものである。
【0028】
1つの実施形態において、上記人工椎間板は、上記ポケット内に上記パッド部材を固定して接着するための接着手段を備える。
【0029】
1つの実施形態において、上記ポケットは、このポケットの少なくとも一部の周りに少なくとも1つのアンダーカット凹部を備え、そして上記パッド部材が、外向きに延びる少なくとも1つのフランジ部分を備え、このフランジ部分は、パッド部材を上記ハウジング部材に対して所望の位置にロックするために、凹部内に設置されるためのものである。
【0030】
1つの実施形態において、上記パッド部材は、このパッド部材の縁部の周りで周縁に配置された少なくとも1つの凹部を備え、そして上記ポケットが、内向きに延びる少なくとも1つのフランジ部を備え、このフランジ部は、上記ハウジング部材に対して、上記パッド部材を所望の位置にロックするために、上記凹部内に設置されるためのものである。
【0031】
1つの実施形態において、上記パッド部材は、ショアOOスケールで20〜98の範囲内のデュロメータを有する組成物から選択される。
【0032】
1つの実施形態において、上記パッド部材は、ショアAスケールで10〜100のデュロメータを有する組成物から選択される。
【0033】
1つの実施形態において、上記パッド部材は、ショアDスケールで22〜75のデュロメータを有する組成物から選択される。
【0034】
1つの実施形態において、上記パッドは、ポリマーおよびエラストマーを含む群から選択される組成物から作製されている。
【0035】
1つの実施形態において、上記パッドは、シリコーン、ポリウレタン、およびウレタンの複合材料、プラスチック、ポリマー、およびエラストマーを含む群から選択される組成物から作製されている
1つの実施形態において、上記ハウジング部材は、金属、セラミック、およびプラスチックを含む群から選択される組成物から構築されている。
【0036】
1つの実施形態において、上記ハウジング部材の上記外側表面は、内部への骨の成長を受容するための表面テクスチャーを備える。
【0037】
1つの実施形態において、上記表面テクスチャーは、物理的に荒くされた表面、多孔性コーティングされた表面、およびプラズマコーティングされた表面を含む群から選択される。
【0038】
1つの実施形態において、上記人工椎間板は、上記ハウジング部材の上記外側表面に配置された、骨成長誘導手段をさらに備え、この手段は、外側表面での骨の成長を増加させるためのものである。
【0039】
1つの実施形態において、上記骨成長誘導手段は、ヒドロキシアパタイトおよび骨形成タンパク質を含む群から選択されるコーティングである。
【0040】
1つの実施形態において、上記負荷共有手段は、単一のパッド部材からなり、このパッド部材が、上記ベアリング手段の周りに配置され、そして上記内側表面の残りの部分全てを実質的に分離している。
【0041】
1つの実施形態において、上記負荷共有手段は、少なくとも2つのパッド部材を備え、このパッド部材が、上記ベアリング手段に対して周囲に、そして上記内側表面の間に配置されている。
【0042】
1つの実施形態において、上記人工椎間板は、上記外側表面から延びる少なくとも1つのフランジを備え、このフランジは、上記ハウジング部材を椎骨表面に固定するためのものである。
【0043】
1つの実施形態において、上記外側表面のうちの少なくとも1つは、陥凹した部分を備える。
【0044】
1つの実施形態において、上記人工椎間板は、上記凹部の内部に配置された多孔性コーティングをさらに備える。
【0045】
別の局面において、本発明は、人工椎間板をインビボで組み立てる方法を提供し、この方法は、以下:
上部ハウジング部材および下部ハウジング部材を、椎間空間に挿入する工程;
クッションパッドを、ハウジング部材の内側表面の間に配置して、パッドを圧縮状態にする工程;ならびに
1対のディスク部材を、プレートの内側表面の間に挿入する工程であって、これらのディスク部材は、これらのディスク部材の間に、当接低摩擦表面を有し、ディスク部材は、パッドによって有効に囲まれており、これによって、ディスク部材およびパッドは、圧縮力を共有する、工程、
による。
【0046】
1つの実施形態において、上記方法は、脊椎湾曲を維持するように上記クッションパッドの相対的な高さを調節することによって、上記ハウジング部材を互いに対して整列させる工程をさらに包含する。
【0047】
1つの実施形態において、上記方法は、上記クッションパッドの相対的な高さを調節することによって、クッションパッドに対する無負荷状態を生じる工程をさらに包含する。
【0048】
1つの実施形態において、上記方法は、上記クッションパッド部材の相対的な弾性を調節することによって、上記ハウジング部材の運動性の相対的な範囲を調節する工程をさらに包含する。
【0049】
別の局面において、本発明は、椎間空間において、対向する椎骨の間隔を空ける方法を提供し、この方法は、以下:
人工ベアリング表面の互いに対する低い摩擦および圧縮抵抗性移動を可能にしながら、椎骨表面の間に、人工ベアリング表面を係合させる工程;
ベアリング表面の少なくとも一部の周りに配置された、少なくとも1つの負荷ベアリングパッドと、圧縮力の吸収を共有させる工程;および
ベアリング表面の相対的な移動を制限する工程、
による。
【0050】
別の局面において、本発明は、椎骨表面を人工的に間隔を空ける方法を提供し、この方法は、以下:
パッド部材によって囲まれているベアリング表面によって間隔を空けられているハウジング部材を、椎間空間の間に配置する工程;および
ベアリング表面とパッド部材との間で、圧縮負荷を共有させる工程、
による。
【0051】
1つの実施形態において、上記方法は、上記ベアリング表面が非圧縮可能であることによって、上記パッド部材の圧縮を制限する工程、およびパッド部材が制限された弾性を有することによって、ベアリング表面の運動性を制限する工程をさらに包含する。
【0052】
1つの実施形態において、上記方法は、上記パッド部材の弾性を術中に調節して、上記ベアリング表面の運動性範囲を調節する工程をさらに包含する。
【0053】
別の局面において、本発明は、人工椎間板を提供し、この人工椎間板は、以下:
非圧縮可能なベアリング表面手段であって、2つのベアリング表面の間の圧縮を制限しながら、2つのベアリング表面の間の運動を可能にするための、ベアリング表面手段;および
圧縮吸収手段であって、ベアリング表面手段の運動を制限しながら、ベアリング表面手段と圧縮力を共有するためのものである、圧縮吸収手段、
を備える。
【0054】
別の局面において、本発明は、上記ベアリング手段を備える、ディスク部材を提供する。
【0055】
別の局面において、本発明は、上記負荷共有手段を備える、パッド部材を提供する。
【0056】
別の局面において、本発明は、人工椎間板をインサイチュで組み立てる方法を提供し、この方法は、以下:
1対の負荷共有パッドによって一緒に接続された1対のハウジング部材を、椎間空間に挿入し、次いで、1対のベアリング表面を、ハウジング部材の間でありかつ負荷共有パッドの間に挿入する工程であって、これによって、ディスク部材およびパッドが、圧縮力を共有する、工程、
による。
【0057】
別の局面において、本発明は、対向する椎間空間を人工的に間隔を空ける方法を提供し、この方法は、ベアリング表面と負荷共有パッド部材との間で、圧縮力を共有させる工程
による。
【0058】
別の局面において、本発明は、負荷共有パッド部材を提供し、この負荷共有パッド部材は、本体部分および少なくとも1つの周縁フランジ部分を備え、この周縁フランジ部分は、椎間板ハウジング部材の一部の凹部と係合するためのものである。
【0059】
別の局面において、本発明は、負荷共有パッド部材を提供し、この負荷共有パッド部材は、本体部分および少なくとも1つの周縁凹部を備え、この周縁凹部は、椎間板ハウジング部材の製品のフランジ部分によって係合されるためのものである。
【0060】
別の局面において、本発明は、椎間板ハウジング部材を提供し、この椎間板ハウジング部材は、1つの中心に位置する凹部および少なくとも1つの他の凹部を備え、この他の凹部は、中心に位置する凹部に対して周縁に配置されている。
【0061】
人工椎間板は、ハウジング部材を備え、このハウジング部材は、互いに対面する間隔を空けた内側表面、および間隔を空けた椎骨表面に係合するための、逆向きに面する外側表面を備える。ベアリング表面が、互いに係合するために内側表面の各々から延び、ハウジング部材の互いに対する低摩擦の移動および圧縮抵抗移動を、圧縮下において可能にする。負荷共有パッドが、内側表面間でベアリング表面の少なくとも一部の周りに配置され、圧縮負荷の吸収をベアリング表面と共有し、同時にハウジング部材の相対的な移動を制限する。
【0062】
(発明の要旨)
本発明によれば、ハウジング部材を備える人工椎間板が提供され、このハウジング部材は、互いに対面している間隔を空けた内側表面、および間隔を空けた椎間空間と係合するための、逆向きの外側表面を有する。ベアリング表面が、互いに係合するように内側表面の各々から延び、圧縮下にある間にハウジング部材の低摩擦の圧縮抵抗性の移動を可能にする。負荷共有パッドが、内側表面の間で、ベアリング表面の少なくとも一部の周りに配置され、ベアリング表面と圧縮負荷の吸収を共有し、同時にハウジング部材の相対的な移動を制御可能に制限する。
【0063】
本発明は、さらに、人工椎間板をインビボで組み立てる方法を提供し、この方法は、上部ハウジング部材および下部ハウジング部材を、椎間空間に挿入する工程、ならびにこれらのハウジング部材の内側表面の間にクッションパッドを配置し、これらのパッドを圧縮下におく工程によってなされる。1対のディスク部材が、プレートの内側表面の間に挿入され、これらのディスク部材は、それらの間に、当接低摩擦表面を有する。これらのディスク部材は、パッドによって効果的に囲まれており、これによって、ディスク部材およびパッドは、圧縮力下にある。
【0064】
さらに、椎間空間において対向する椎骨の間隔を空ける方法は、椎間空間の間に人工ベアリング表面を係合させ、同時にこれらのベアリング表面の互いに対する低摩擦の圧縮抵抗性の移動を可能にする工程、圧縮力の吸収を、ベアリング表面の少なくとも一部の周りに配置された少なくとも1つの負荷ベアリングパッドと共有させる工程、ならびにベアリング表面の相対的な移動を制限する工程を包含する。
【発明の効果】
【0065】
本発明により、損傷した天然の椎間板領域に対する運動性を回復させ、同時に天然に存在する椎間板と類似の、運動性ならびにクッション性および緩衝性を可能にする、椎間板の交換に対する解決策が提供される。さらに、このような運動性、クッション性および緩衝性を可能にし、同時にポリマー材料またはエラストマー材料が、脊椎において見られる比較的高い圧縮負荷を経験することが防止される。ベアリング表面がまた、脊椎の負荷を、ポリマー材料またはエラストマー材料と共有する。さらに、解剖学的状態を調節するために、人工的な運動に対する変化が、術中に制御される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態の側面斜視図である。
【図2】図2は、図1に示される実施形態の側面分解図である。
【図3】図3は、本発明の第二の実施形態の側面斜視図である。
【図4】図4は、本発明に従って構築された、下部ディスクの斜視図である。
【図5】図5は、本発明に従って構築された、上部ディスクの側面図である。
【図6】図6は、本発明に従って作製された、上部ハウジング部材の上面斜視図である。
【図7】図7は、本発明に従って作製された、下部ハウジング部材の上面平面図である。
【図8】図8は、本発明の第三の実施形態の側面斜視図である。
【図9】図9は、頂部ハウジング部材が取り外された、本発明の斜視図である。
【図10】図10は、本発明の代替のパッド構成の斜視図である。
【図11】図11は、パッド部材のさらなる代替の実施形態の斜視図である。
【図12】図12は、本発明のさらなる代替の実施形態である。
【図13】図13は、図12に示される実施形態の分解側面斜視図である。
【図14】図14は、本発明のハウジング部材の代替の実施形態を示す。
【図15】図15は、本発明のハウジング部材のさらなる代替の実施形態を示す。
【図16】図16は、ハウジング部材へのディスク部材の差込型のロッキングを示す、本発明のさらなる実施形態の分解図である。
【図17】図17は、ハウジング部材内にディスク部材をロックする差込ロッキング機構を利用する、ディスク部材の斜視図である。
【図18】図18は、ハウジング部材内にディスク部材をロックするためのロッキング機構のさらなる実施形態を示す、ディスク部材およびハウジング部材の分解図である。
【図19】図19は、ハウジング部材内にロックされたディスク部材を示す、斜視図である。
【図20】図20は、ハウジング部材のさらな実施形態の斜視図である。
【図21】図21は、図20の線21−21に沿ってとった断面図である。
【図22】図22は、図20および21に示されるハウジング部材の凹部内での係合をロックするためのフランジを備える、負荷共有パッド部材の斜視図である。
【図23】図23は、本発明に従って作製される、ロッキング機構のさらなる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
(発明の詳細な説明)
本発明の他の利点は、添付の図面と組み合わせて考慮される場合に、以下の詳細な説明を参照することによって、本発明がよりよく理解されると同時に、容易に理解され得る。
本発明に従って構築される人工椎間板は、図において、一般に10で示される。種々の実施形態の類似の構造体は、図において、プライム付きの番号によって示される。本発明は、脊椎における損傷した椎間板の交換のための、人工椎間板(時々、先行技術において、他の専門用語(例えば、椎間スペーサーデバイス、または脊椎ディスク)によって称される)である。本発明は、損傷した天然の椎間板に対する運動(これは、運動性ならびにクッションおよび緩衝を可能にする)を回復させる。以下にさらに詳細に記載されるように、本発明はまた、特定の解剖学的な状態に対する調節のために、人工椎間板の運動性の変化を術中に可能にする。
【0068】
図を参照すると、ディスク10は、一般に12で示される上部ハウジング部材および一般に14で示される下部ハウジング部材を備える。ハウジング部材12、14は、互いに対面した、間隔を空けた内側表面16および18、ならびに互いに逆向きに面する外側表面20、22を備え、これらの外側表面は、間隔を空けた脊椎表面に係合するためのものである。1対のベアリング表面24、26が、内側表面16、18の各々から延び、これらのベアリング表面は、圧縮下で、ハウジング部材12、14の互いに対する低い摩擦の圧縮抵抗性の運動を可能にしながら、互いに係合するためのものである。種々の図に示されるように、ベアリング表面は、ディスク部材28、30と一体である。あるいは、ベアリング表面24、26は、ハウジング部材12、14自体と一体的であってこれらのハウジングから延びる突出部上の表面であり得る。ハウジング部材12、14は、種々の材料(金属(例えば、チタン)ならびにセラミックおよびプラスチックが挙げられる)から作製され得る。ベアリング表面24、26と一体的である場合、ハウジング部材12、14は、上で議論されるような、ベアリングディスク28、30について好ましい材料から作製され得る。この教示に基づいて、種々の他の構成が、本発明を組み込んで、当業者によってなされ得る。
【0069】
上部ベアリング表面24および下部ベアリング表面26は、互いに正しく対向して配置される場合に、互いに係合する。この構成は、三次元ベアリング表面を作製する。以下で議論されるように、ベアリング表面24、26は、非圧縮可能なディスクなどの上に配置され、これによって、ハウジング部材12、14の外側表面20、22に対して配置される圧縮負荷を吸収するための構造を提供する。
【0070】
負荷共有パッド(一般に31で示され、そして詳細には、図1および2において、パッド32および34として示される)が、内側表面16、18の間で、ベアリング表面24、26の少なくとも一部の周りで配置されて、ベアリング表面24、26と圧縮負荷の吸収を共有し、同時にハウジング部材12、14の相対的な移動を制限する。より具体的には、インビボでの負荷条件下で、中心合わせされたベアリング表面24、26は、ハウジング部材12、14の間の相対的な三次元の移動を提供するのみでなく、デバイス10に対する圧縮負荷を分配して、運動性および効果的な負荷分配のためのシステムを提供する機能を、負荷共有パッド32、34と共有する。中心合わせされた、低摩擦の圧縮抵抗性のベアリング表面24、26は、脊椎の複数の面内での完全な運動を可能にし、一方で、負荷を分配するダンパーおよびクッションパッド32、34が同時に負荷を共有する。ベアリング表面24、26と負荷を共有するパッド32、34の機能が、重要である。パッド32、34は、圧縮可能であり得るが、この圧縮は、ベアリング表面24、26の非圧縮可能性によって制限される。同様に、ベアリング表面は、複数の面内での運動を可能にするが、パッド32、34が、ハウジング部材12、14をしっかりと固定し、これによって、ある程度の可撓性、および従って、ハウジング部材12、14の互いに対する移動を可能にし、このような移動をなお制限する。全体的に、各要素(ベアリング表面24、26、およびパッド32、34)は、移動を可能にし、この移動がベアリング表面24、26のスライド移動であっても、パッド32、34によって可能にされるクッション性移動であっても、なおこのような移動を制限する。各要素は、相対的な移動を可能にし、なお各要素は、そのシステムにおける他の要素の移動を制限する。
【0071】
上記のことを考慮して、このシステムは、健常な椎間板の負荷クッション能力を維持しながら、通常の運動性の回復を可能にする。このことは、脊椎の運動性において特に明らかである。上部ハウジング部材12および下部ハウジング部材14の任意の回転が、負荷分配緩衝およびクッションパッド32、34に、負荷のいくらかを吸収させる。
【0072】
種々の図に示されるように、ベアリング表面24、26は、上部ディスク部材28または下部ディスク部材30のうちの一方に、凹状表面部分を備え得、そして凸状表面部分を、他方に備え得る。この凹状表面は、凸状表面とのスライド移動のために、凸状表面内に設置され、ハウジング部材12、14の相対的な旋回運動を効果的に生じさせ、この旋回運動は、負荷共有パッド32、34の少なくとも一部を圧縮させ、一方で対向して配置された負荷ベアリングパッド32、34の少なくとも一部を拡張させる。あるいは、頂部ディスク部材28および底部ディスク部材30のうちのいずれか一方が、凸状表面または凹状表面のうちのいずれかを有し得る。
【0073】
ディスク部材28、30は、非圧縮可能な組成物から作製され得る。このような組成物は、セラミック、プラスチック、および金属のベアリング材料(例えば、コバルトおよびクロム)を含む群から選択され得る。あるいは、ハウジング部材12、14は、突出部を備え得、ここで、ディスク部材28、30は、ハウジング12、14と効果的に統合される。この状況において、ハウジング全体(ベアリング表面24、26を有する突出部を含む)は、非圧縮可能な材料(好ましくは、セラミック)から作製され得る。上で言及されたように、本発明を一旦理解すると、代替の構成が、当業者によって、作製され得る。
【0074】
負荷共有パッド32、34は、図に示される種々の構成であり得、例えば、図1〜3に示される、対のパッド32、34であり得る。あるいは、デバイス10は、図10に示されるように、対向して配置される4つのパッド38、40、42、44を備え得る。本発明のさらなる実施形態が、図11に示されており、ここで、単一のパッド46が、ハウジング部材14””’の表面18””’を実質的に覆っている。これらのパッドは、図12、13に示されるように、ハウジング部材の形状に従い得、ここで、パッド部材48は、環状ハウジング12”””、14”””と共に配置される環状パッド部材である。このようなハウジング部材12、14およびパッド部材31の選択は、デバイス10の配置の位置、ならびに取り組まれている脊椎のレベルに依存して必要とされる、椎骨と負荷ベアリングとの間の間隔の状態に基づいて、決定され得る。換言すれば、異なる形状のデバイス(例えば、図12に示される円形のハウジング部材)は、より小さい椎間板(例えば、頸部の脊椎)の間での配置のために使用され得、一方で、より矩形の形状(例えば、図1〜11に示されるハウジング部材)は、腰椎の間で使用され得る。
【0075】
負荷共有パッド31は、これらがどのような構成であっても、ハウジング部材12、14の間の相対的なねじれ移動を可能にし、ハウジング部材12、14の間での相対的な三次元の移動を引き起こし、一方でベアリング表面24、26の間での接触を除いて、ハウジング部材12、14の間での移動を制限し、そしてこれらの接触を防止する。弾性とは、パッド部材31が、圧縮可能かつ伸長可能であり、特にハウジング部材12、14およびベアリング表面24、26に関して、アセンブリにおいての自動中心合わせ効果をなお提供することを意味する。ベアリング表面24、26、および同様にハウジング部材12、14の相対的な運動に起因して発生する偏向および回転の力は、これらの力に反作用するような様式で、パッド31を強制的に働かせ、これによって、アセンブリ10に独特の自動中心合わせの能力を与える。理想的な状況(ここで、患者の小関節面が損なわれず、そして靭帯のバランスがインタクトである)においては、この自動中心合わせの局面は、完全には必要ではないかもしれない。換言すれば、患者の解剖学的構造は、安定化および特性をなお提供し得、靭帯は、自動中心合わせを提供し得る。しかし、靭帯の不安定、および損傷した小関節面は、通常、人工椎間板を、利用可能な現在の技術の利用に関して、問題のあるものにするのみである。このような場合、自動中心合わせして運動を制限する能力を有することによって(本発明のパッド31は、弾性であり、従って、伸長しそして静止位置に戻ることによって運動を制限する)、人工椎間板の技術の範囲外であると現在考えられている患者に対する適応を拡張する可能性が、非常に有利になる。
【0076】
本発明のパッド31は、本発明のさらなる利点を提供する。主要な利点は、パッド31を患者および手術要件に調節する能力である。損なわれた小関節面に起因して、運動性の範囲が制限される必要があるような場合において、より硬い、弾性の低いパッドが、ハウジング部材12、14の間に挿入され得る。このより低い弾性のパッドは、移動および伸長がより少ないので、椎間板は、自動的に、運動が制限される。パッドを調節するこの方法は、術中になされて、手術および患者の状態を補償し得る。当業者は、異なる特性および材料の複数のパッドを用いて、患者および手術の必要性に、アセンブリ10を微調整し得る。
【0077】
パッド31は、負荷下での偏向を可能にする、ポリマーまたはエラストマーから作製される。このようなポリマーおよびエラストマーの例は、シリコーン、ポリウレタン、およびウレタンの複合材料である。可撓性または弾性に関して上で議論されたように、パッド31の成分および組成は、調節可能である。非常に密な材料は、非常に剛性のディスクを作製し、一方で非常に柔軟な材料は、非常に自由に動くディスクを作製する。その運動性は、これらの要因に依存して、そのパッドの全ての面内で制限される。このディスクの回転、ならびに撓みおよび移動もまた制限される。可能な圧縮の量は、パッド材料の特性に従って、制限されるか、または可能にされる。このことは、後方への運動、または横方向への運動にあてはまる。従って、パッド31は、ハウジング部材12、14の相対的な位置の任意の調節下で、常に接触しており、そして常に負荷を共有している。運動は、パッドを強制的に接触させるので、パッド31は、人工椎間板構築物10によって付与される負荷を自動的に緩衝する。
【0078】
パッド31のポリマーまたはエラストマーの組成物の可撓性または弾性に関して特に、これらのパッドは、ショアOOスケールで20〜98のデュロメータを有する組成物から選択され得る。あるいは、パッド31は、ショアAスケールで10〜100のデュロメータを有する組成物から選択され得る。さらなる代替は、ショアDスケールで22〜75のデュロメータを有する組成物から選択されるパッド31に対してである。いずれの場合においても、パッド部材31は、手術および手順の間に、臨床医によって、特定の状況に適合するように選択され得る。パッド部材31は、デバイス10のインサイチュでの挿入の前に、ハウジング部材12、14の間に予め挿入され得るが、本発明の種々の構成は、パッド31のインサイチュでの交換を可能にし得、これによって、部材の可撓性または弾性があつらえて選択される。この様式で、パッド部材31は、このデバイスが配置される椎間空間の個々の環境に対してあつらえて設計される。
【0079】
ディスク部材28および30、ならびにパッド31は、種々の手段によって、ハウジング部材12、14の間の位置に収容またはロックされ得る。ディスク28、30は、プレスばめテーパ、保持リング、または他の手段によって、ハウジング部材12、14にロックされ得る。このようなロッキング機構の主要な局面は、ディスク部材28、30が、一旦装着されると、上部ハウジング部材12または下部ハウジング部材14に対して移動することを防止し、さらなる磨耗を防止することである。
【0080】
図1および2は、ハウジング部材12、14の内側表面16、18の各々における、凹部に配置されたディスク部材28、30(下部凹部50のみが、図2において分解図で示される)を示す。図6および7は、ハウジング部材12’、14’の第二の実施形態の平面図を示し、ここで、各凹部50’、52は、傾斜表面54、56を備え、これらの傾斜表面は、外側の縁部から、内向きにテーパ状の凹部50’、52に到る。傾斜54、56は、槌間空間内へのハウジング部材12’、14’の配置の後の、ハウジング部材12’、14’の間のディスク部材28、30の接近を可能にする。ディスク部材28、30のこの術中のアクセスは、外科医が、負荷条件下で異なる大きさのディスク部材を試験して、ディスク部材を適所に完全に適合させることを可能にする。このような利点は、いずれの先行技術のデバイスを用いても、得られない。
【0081】
ハウジング部材内にディスク部材をロックするための、代替の機械的機構が、図16に示されている。代表的なハウジング部材12”’は、凹部52’を備える。凹部52’は、実質的に弓型の周縁下方溝70を備える。この溝は、少なくとも1つであり好ましくは少なくとも2つの開口部74、76を備える、リップ部72によって規定される。ディスク部材28”’は、このディスク部材から半径方向外向きに延びる差込型のフランジ78、80を備え、これらのフランジ78、80は、凹部74、76を通して受容されるような形状にされる。手術の際に、ディスク部材28”’は、フランジ78、80が凹部74、76と整列するように、凹部52’内に配置され得る。一旦、ディスク部材28”’が回転され得ると、これによって、図17に示されるような、ハウジング12”’内でのディスク部材28”’の差込型のロッキング機構が提供される。
【0082】
ロッキング機構のさらなる代替の実施形態が、図18および19に示されている。ハウジング部材12”’は、実質的に弓型の凹部52”を備え、この凹部は、ハウジング部材12”’の縁部84に延びる開口端部82を有する。凹部52”は、そのかなりの部分の周りに延びるリップ部分86を備え、このリップ部分は、凹部52”の設置表面90とリップ部分86との間に、内側溝88を規定する。アーム部分92、94は、リップ部分86からの延長部であるが、ハウジング部材12”’の周縁端部96、98から延び、そしてこれらの端部とは別個である。アーム部分92、94は、ばね様の性質を有し、その結果、これらは、凹部52”によって規定される弓型の円から外向きに偏向し得る。アーム92、94の各々は、肘部100、102を備え、これらは、各アーム部92、94から設置表面90の方へとそれぞれ延びる。ディスク部材28”’は、実質的に弓型の周縁の、半径方向外向きに延びるフランジ部分104を備える。フランジ部分104は、2つの当接縁部106、108を備える。手術の際に、フランジ104およびディスク部材28”’は、環状凹部または溝88内に配置され、アーム92、94を外向きに偏向させる。一旦、図19に示されるように、凹部52”内に配置されると、肘部100、102は、ディスク部材28”’の当接表面106、108に係合し、これによって、ディスク28”’を適所にロックする。アーム92、94の外向きへの偏向は、ディスク部材28”’をロックされた係合から選択的に解放して、手術手順の間、ディスク部材のさらなる調節または選択を提供し得る。
【0083】
また、図6および7に最良に示されるように、パッド部材31は、それぞれ下部ハウジング部材12’および上部ハウジング部材14’の凹部58および60内に配置され得る。機械的機構および/または種々の接着剤(例えば、シアノアクリレート、ウレタン、および他の医療等級の接着剤)の使用によって、パッド部材31をハウジング部材12’、14’に永続的に接着することが好ましい。この接着剤の列挙は、本願の他の成分の列挙と同様に、単に例示であり、そして排他的であることを意味しない。
【0084】
パッド部材31をハウジング部材の凹部内にロックするための機械的機構の例は、図20〜23に示されている。1つのこのような機構は、図20〜22に示される、アンダーカットロッキング機構である。ハウジング部材12””は、図6に示されるような、傾斜部分56を有する中心凹部52を備える。傾斜部分56は、中心に位置する舌形の溝57を備え、ディスク部材を凹部から取り外すために、靴べら型の機構の使用と同様に、凹部52内に配置されたディスクの下に、へら型のデバイスを挿入することを可能にする。凹部60’は、パッド部材31’の縁部116から延びる周縁フランジ部分114との係合をロックするための、アンダーカット凹部110、112を備える。パッド部材は、変形可能な材料から作製されるので、フランジ部分114は、アンダーカット110、112内にプレスばめされ、そしてそこに設置され得る。このアンダーカットロッキング機構は、パッド部材31’がハウジング部材12””でインサイチュで脱係合することを効果的に防止する。もちろん、上部フランジ118は、対向するハウジング部材(図示せず)内の凹部の、類似のアンダーカットロッキング細部内にロックされる。
【0085】
パッド部材とハウジング部材との間の代替のロッキング機構は、図23に示されるような、さねはぎの関係であり得る。パッドまたはハウジングのいずれかが、舌部分112を備え得、そしてパッドおよびハウジング部材のうちの他方が、溝124を備え得る。換言すれば、ロッキング機構のいずれかが、舌122を備え得、そしてロックされる機構の他方が、溝124を備える。示されるこのロッキング機構または他のロッキング機構の代替は、凹部および/またはパッドが、複数の溝またはスロットおよび複数の舌を備え得るものである。
【0086】
種々の凹部またはポケット50’、52、58、60は、異なる相対的な大きさおよび形状であり得る。例えば、上部ハウジング部材12’は、上記ディスク28の比較的大きいものを設置するために、より大きい凹部またはポケットを有し得、そして下部ハウジング部材14’は、下部ディスク30のうちの比較的小さいものを設置するために、より小さい凹部またはポケットを備え得(大きいおよび小さいとは、環状凹部の直径をいう)、これによって、ベアリング表面の界面において、増加した範囲の運動性を提供する。
【0087】
種々の図は、ハウジング部材12、14の種々の実施形態の外側表面20、22が、一般的に60で示されるフランジを備え得ることを示す。フランジ60(またはこれらが当該分野において時々呼ばれるようなフィン)は、椎間表面の固定のための機構を提供する。図1および2に示されるような種々の実施形態は、二重フィンの構成である。図8、12、および13に示されるような、他の実施形態は、単一フィンまたは単一フランジの構成である。外側表面20、22が当接する表面の性質に依存して、外科医は、種々のフランジまたはフィンの構成を選択し得る。さらに、フィン60は、代替の位置(図の多くに示されるように中心の位置、または図14に示されるように、前方拡張プレートと共に(例えば、ねじでの固定を用いて)特定に使用するために、周縁の位置のいずれか)に配置され得る。フランジ(例えば、フランジ60”””’は、それを通るボア62を備え得、このボアは、その意図される使用に依存して、平滑な表面であり得るか、またはねじ切りされ得る。
【0088】
外側表面20、22は、平滑であり得るか(このことは、より容易な修正を可能にする。なぜなら、これらが内方成長を最小にし得るかまたは可能にしないからである)、あるいはテクスチャーされ得る。外側表面20、22のテクスチャー加工は、アセンブリ10の長期間の固定のために、内方成長を可能にする。多孔性のコーティング、プラズマスプレー、グリットブラスト、機械加工、化学エッチング、またはフライス削りが、内方成長可能な表面を作製するための技術の例である。骨の成長を増強するコーティングもまた、塗布され得る。このようなコーティングの例は、ヒドロキシアパタイトおよび骨形成タンパク質である。
【0089】
図20および21は、インサイチュでのデバイスのさらなる回転安定性のための構造を提供する。ハウジング部材12””は、その外側表面20’から延びる尖頭部分126、128を備える。尖頭部材126、128は、フランジ部分61’と組み合わせて機能して、対向する椎骨表面を係合する。尖頭部分126、128は、中心に配置されたフランジ61’から半径方向に外側に配置され、椎骨表面の少なくとも3点の係合を提供し、これによって、ハウジング部材12””の、この椎骨表面に対する回転を防止する。もちろん、特定の椎骨表面の形状にあつらえて適合するように、尖頭部分126、128は、種々の構成で作製され得、そして外側表面20’から種々の量で延び得る。
【0090】
種々の方法が、インサイチュでの本発明の挿入のために利用され得る。例えば、図1に示されるような組み立てられたデバイス10が、空間、深さ、および高さの計算の後に、手術の間に、椎間空間の間に配置され得る。あるいは、対向するハウジング部材12、14が、椎間空間の間に配置され得、そしてパッド31およびディスク部材24、26が、その固定の前にインサイチュで試験されて、あつらえのサイズ決めを可能にし得る。従って、本発明は、人工椎間板10をインビボで組み立てるための方法を広範に提供し、この方法は、上部ハウジング部材12および下部ハウジング部材14を、椎間空間に挿入する工程、ならびにハウジング部材12、14の内側表面16、18の間にクッションパッド31を配置し、これによって、これらのパッドを圧縮して配置する工程による。1対のディスク部材28、30が、プレート16、18の内側表面の間に挿入される。ディスク部材28、30は、それらの間に、当接低摩擦表面24、26を有する。ディスク部材28、30は、パッド31によって囲まれ、これによって、ディスク部材28、30およびパッド31は、圧縮力下にあり、そしてこのような圧縮力を共有する。ベアリング表面24、26および衝撃吸収パッド31が圧縮力の吸収を共有し、そしてハウジング部材12、14の相対的な移動を制限するこの工程は、先行技術には見られない利点である。
【符号の説明】
【0091】
10 人工椎間板
12、14 ハウジング部材
16、18 内側表面
20、22 外側表面
24、26 ベアリング表面
31 負荷共有パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−227618(P2010−227618A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155279(P2010−155279)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【分割の表示】特願2004−136939(P2004−136939)の分割
【原出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【出願人】(508091465)イシュラップ インプラント システムズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】