説明

人工錆石の製造方法及びそれによる盆栽用錆石

【課題】人工錆石について、簡易な手順で天然錆石の質感・風合いを忠実に再現できるようにする。
【解決手段】粒状石と液状合成樹脂とを所定割合で混合して作成したペースト状の成型用組成物23,33を、モデル錆石の表面を型取りしてなる型枠内2,3に投入または塗って固化させ、脱型することにより成型体10とした後、成型体10表面に石錆状の色彩を付与する人工錆石の製造方法において、成型用組成物23,33を型枠2,3に投入または塗る前に、型枠2,3内面に酸化または水酸化により錆を生じる金属粉を散布しておき、成型作業により石肌状に形成される成型体10表面に金属粉の粒体を少なくとも一部が埋没した状態で固定させ、脱型後に金属粉を酸化または水酸化させて錆を生じさせる、ことを特徴とするものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工錆石の製造方法及びそれによる盆栽用錆石に関し、殊に、表面に石錆を有して天然錆石の風合いを備えた人工錆石の製造方法、及び石付き等の盆栽用として用いられる錆石に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天然石を摸してモルタルや樹脂等で成型してなる人工石(擬石)が広く普及している。例えば、不飽和ポリエステル樹脂等の合成樹脂に砕石砂を配合して天然石の表面から型取りした型枠で成型してなる人造石材が、特開平8−267666号公報に記載されている。これは、高価で重量の嵩みやすい天然石に対し安価且つ軽量でしかも天然石に近い風合いを備えている点を特徴としており、需要の高いものとなっている。
【0003】
ところで、盆栽の分野では表面に金属錆(石錆)を生じて経年により一層味わい深くなるという特徴を有する錆石が使用され、石付用の平石等の用途で重宝されている。この錆石は天然の鞍馬石に代表されるように産出量の少ない貴重なものが多く、高価であるとともに目的に応じた形状の石を確保することが極めて困難な状況となっている。
【0004】
そこで、このような貴重な錆石を樹脂成型等により人工的に作成することが試みられている。しかし、錆石独特の表面の質感・風合いを再現することは実際には容易ではなく、また、より忠実に再現するには複数の人手による多数の手間を要することから製造コストが高騰しやすいものとなる。そのため、人工錆石は人工石を製作する利点を確保しにくく、実際には殆ど普及していないのが現状である。
【特許文献1】特開平8−267666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、人工錆石について、簡易な手順で天然錆石の質感・風合いを忠実に再現できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、粒状石と液状合成樹脂とを所定割合で混合して作成したペースト状の成型用組成物を、モデル錆石の表面を型取りしてなる型枠内に投入または塗って固化させ、脱型することにより成型体とした後、この成型体の表面に石錆状の色彩を付与する人工錆石の製造方法において、成型用組成物を型枠に投入または塗る前に、型枠内面に酸化または水酸化により錆を生じる金属粉を散布しておき、成型作業により石肌状に形成される成型体表面に金属粉の粒体を少なくとも一部が埋没した状態で固定させ、脱型後に金属粉を酸化または水酸化させて錆を生じさせる、ことを特徴とする人工錆石の製造方法とした。
【0007】
このように、型枠内側面に錆を生じる金属粉を散布しておき、成型の過程で成型体表面にこれを固定させその後錆びさせることにより、過大な手間を要することなく比較的容易に成型体表面に金属粉由来の錆による石錆状の色彩を付与して石錆の質感・風合いを表すものとなる。
【0008】
この場合、その金属粉を鉄粉とすることで時間の経過に伴い人工錆石表面に鉄錆状の質感・風合いを与えることができ、或いは金属粉を銅粉とすることで銅錆状の質感・風合いを与えることができる。
【0009】
また、上述した人工錆石の製造方法において、金属粉を構成する金属粒の粒径を50μm〜1700μmとすれば、成型体表面から適度な深さで埋没して固定されやすいとともに、経年による錆が金属粒の周囲に滲んでより天然石に近い外観を表すものとなり、金属粉の散布量を25g〜75g/mとすれば、成型体表面に生じる錆の濃さが適度なものとなり、より自然な外観を表現するものとなる。
【0010】
さらに、上述した人工錆石の製造方法において、型枠の内側面がゲル状樹脂からなるものとすれば、金属粉を散布した際にこれが一時的に内側面に付着しやすくなるため、所望の散布状態を確保しやすいものとなる。
【0011】
さらにまた、上述した人工錆石の製造方法において、成型体の表面に酸化または水酸化により錆を生じる金属を塩化物として含有する溶液を塗布し、塗布後に金属が錆びることにより略均一な石錆状の色彩を全体的に生じさせる、ことを特徴とするものとすれば、微細な金属分子が短期間で錆を生じた後に風化により退色し、その一方で金属粉による錆が発生するようになるため、天然錆石の錆の発生過程を忠実に再現しやすいものとなる。
【0012】
加えて、上述した人工錆石の製造方法において、使用するモデル錆石は略平板状または平板を湾曲させた形状のものであり、その型枠は上面形成用と下面形成用の2つからなり、各々内面に成型用組成物を塗った後に、成型用組成物同士が密着するように両型枠を合わせて一体的に成型するものとし、且つ、一方の型枠用の成型用組成物に合成樹脂の固化を遅らせる遅延剤を予め混入しておくことにより、両型枠の成型用組成物の固化タイミングを一致させながら成型するものとすれば、両型枠における成型のための各手順のタイミングを一致させる必要のないものとなり、一人または少人数でも容易に作成できるものとなる。
【0013】
この場合、両型枠を合わせる際に、一方の型枠の成型用組成物表面に繊維材を略均一に配置しておき成型により内部に強化用繊維を備えるものとした人工錆石の製造方法とすれば、作成された人工錆石が一層強度に優れたものとなって、薄く作成しても耐久性を確保しやすいものとなる。
【0014】
さらに加えて、上述した上面用と下面用の2つの型枠で作成する人工錆石の製造方法で製造されたものであって、略平板状または平板を湾曲させた形状を有しており、表面に固定された金属粉が錆を生じて石錆模様の一部を表していることを特徴とする盆栽用錆石とすれば、比較的容易に天然錆石の風合い・外観を与えたものとして提供できるものとなる。
【発明の効果】
【0015】
型枠内面に金属粉を散布して石肌状に形成した表面に固定するものとし、その後金属粉に錆を生じさせるものとした本発明によると、簡易な手順で天然錆石の質感・風合いを忠実に再現できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図1乃至4の縦断端面図を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。尚、本発明において、粒径はふるいの目開きサイズで表すものとし、例えば粒径2.0mm〜4.0mmの場合、目開き4.0mmと目開き2.0mmの上下2種類のふるい間でふるい残されるサイズのものをいい、両サイズの間における任意の2種類のサイズのふるい(例えば3.0mmと2.5mm)間でふるい残されるサイズの粒径も含むものとする。
【0017】
本実施の形態では、主として盆栽の石付き等に用いる略平板状またはこれを湾曲させた形状の人工錆石を製造する場合について説明する。これは、例えば石付きに用いる鞍馬石等の天然錆石は産出量が少なく高価であり、比重が重く持ち運びに不便であることに加え、薄板状とした場合に脆く割れやすいという欠点を有しているのに対し、細かい粒状の石を比重の軽い合成樹脂をバインダにして成型したことで、低コストで所望の形状の錆石を容易に再現できることに加えて軽く堅牢なものが得られる、というメリットが期待されるからである。
【0018】
その製造方法は、先ず図1(A)を参照して、曲面板状節理を有するモデル錆石として両短側が上向きに湾曲した形状の錆石1Aを用いて、その上下両面側をシリコン樹脂等のゲル状樹脂31,21で型取りを行ない、内側面に石肌を写してなる型枠2,3を作成するものであるが、両型枠2,3の外面側には形態保持目的で比較的硬質で適度な強度を確保可能な厚さを有する外枠22,32を設けることが推奨される。型枠2,3ができたら、図1(B)に示すように、大気中でも錆を生じやすい金属を微細化してなる金属粉50(粒径50μm〜1700μm、好ましくは100μm〜300μm)をほぼ均一になるように型枠2,3の内側面に25g〜75g/m(好ましくは45g〜55g/m)散布しておく。
【0019】
次に、一方の型枠内に塗る成型用組成物を作成する。例えば、上用の型枠3の場合、粒状砕石(粒径2.0mm以下で石肌状に形成する観点から粒径0.1mm〜0.4mmの粉状体を20〜40重量%含む粒状砕石約4質量部と、粒径2.0mm〜3.0mmの粒状砕石約1質量部の混合物が好ましい)を容器に投入し、これに不飽和ポリエステル樹脂等の液状合成樹脂を約1.5質量部、適当量の樹脂硬化剤、必要に応じて適当量の樹脂たれ防止剤を投入して混合・撹拌し、成型用組成物33を得る。この場合、上下の型枠3,2間で成型用組成物を作成し各々塗り終わるまでの時間差を計算して、両型枠3,2を密着させる時に樹脂硬化のタイミングを一致させるための量を決めておき、硬化遅延剤を先に作成する方に混入しておく。
【0020】
尚、成型用組成物33の量は、型枠3の内側面に塗った場合に所望の厚さとなる量を計算しておき作成するものとする。そして、図2(A)に示すように、これを型枠3内側面にほぼ均一の厚さになるように塗り広げ、ある程度均一にならしたら、図2(B)に示すように、その表面にガラス繊維材等の強化用繊維34を、単繊維のまま、或いはメッシュ状に織ったものとして、ほぼ均一になるように広げて置き、押圧して貼り付ける。この作業に伴い、型枠3の内側面で石肌を写すゲル状樹脂31側に付着していた金属粉50の粒が成型用組成物33の表面に少なくとも一部を埋没した状態となり、成型後に表面となる部分に固定される。
【0021】
次に、もう一方の下側の型枠2用として、前述の成型用組成物33と同様の比率の組成で(後に作成する関係で硬化遅延剤を入れていない)成型用組成物23を用意する。この場合、図3に示すように下側の型枠2の場合は厚めに作成するために前述の約倍量の成型用組成物23を型枠2内側面に塗り広げる。尚、前述と同様に成型用組成物23表面には金属粉50が埋設されるが、この状態において、両型枠2,3に塗った成型用組成物23,33の固化状況は同じ段階となるように調整してあり、未だ完全に固化せずに互いに接着可能な状態である。
【0022】
成型用組成物23,33を塗った両型枠2,3が準備できたら、図4(A),(B)に示すように、これら成型用組成物23,33側の面を合わせて密着させるように重ね合わせ、クランプ等の固定用器具で固定し、必要に応じて砂袋等の錘を載せて上から圧迫する。その後、成型用組成物の硬化が確認できたら、脱型して、モデル錆石1Aの外形をコピーした成型体10を得る。
【0023】
次に、錆石の石肌を写した成型体10の表面に図4(C)に示すように、塩化第二鉄溶液等の塩化金属溶液60を刷毛等で塗って乾燥させる。この塩化金属として、型枠内に散布した金属粉50と同種金属で比較的容易に錆を生じるものが好ましい。このようにすることで、小さな金属分子がほぼ均一に表面に塗布されるため、屋外に置いておくことで比較的短期間で表面全体に均一的な錆を生じる。尚、所望の外観・風合いが出るまで、必要に応じて複数月に亘って複数回塗布すればよく、その後、盆栽用として好適な人工錆石1Bを得る(図4(D))。
【0024】
尚、金属粉50は樹脂内にその一部を埋め込まれている関係で、錆が目立つまでには時間を要する。例えば、塩化第二鉄溶液と鉄粉の組み合わせでは、短期間で塩化第二鉄由来の赤錆が表面全体に広がるが、年単位の時間の経過による風化でその錆色が退色して薄くなってくる。この表面の赤錆が退色するに従い、鉄粉を中心点とした落ち着いた色の錆が滲むように広がり始める。そのため、これらの錆が複合されて全体的に天然石錆のような外観・風合いを醸し出す。
【0025】
このような製造方法により作成された人工錆石は、上述のように、一人の作業員でも行える比較的簡易な手順で完成するため、比較的低コストで製造可能なものである。そして、例えば鉄錆を付与したものは、鞍馬石のような天然錆石の風合いを有するものとなり、銅錆を付与したものは緑青による落ち着いた質感が特徴的なものとなって、盆栽の石付け用途とした場合に、極めて趣き深いものとなる。また、経年の風化により表面の質感・風合いがさらに変化して一層天然錆石に近い外観を呈するものとなる。
【0026】
次に、実施例により本発明の人工錆石の製造方法について、さらに詳細な説明を行う。尚、本実施例では一人の作業者で製作しており同時に二つの作業を行えない関係で、以下の説明においてはその作成手順の時系列通りに記載して説明する。
【実施例】
【0027】
(型枠の作成)
先ず、盆栽の石付け用天然錆石(薄板状で両端側が上に反っている。上面の長径約65cm、短径約30cm)の外面総てを0.5cm〜1.0cmの厚さに粘土で覆い、その上下外面に、不飽和ポリエステル樹脂(商品名:リゴラック(登録商標)、品番1585BQTM、昭和高分子製)を1.0cm程度の厚さで上下面別々に形成させて上下の外枠を作成する。尚、この不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対し1重量部の硬化剤(メチルエチルケトンパーオキサイドジメチルフタレート、商品名:パーメックN(登録商標)、日本油脂製)を混入した。
【0028】
そして、外枠が固化したら粘土を外し、粘土があった空間に液状のシリコン樹脂(KE−1417、信越化学工業製)を注入し、シリコン樹脂が固まったら上下の枠体に分割する。この場合、シリコン樹脂20重量部に対し、硬化剤(CAT−1417−40、信越化学工業製)を1重量部混入した。上下の枠体が完成したら、各枠体の内側面に各々、鉄粉(試薬鉄粉、粒径:100メッシュ=150μm、品番:20071−01、関東化学製)を、スプーンを使って50g/mの量でまんべんなく散布した(総量20g)。
【0029】
(成型用組成物Aの作成:上用)
上の枠体用として、粒状の砕石を粒径2.0mm以下(粒径0.1mm〜0.4mmの粉状体30重量%含む)のもの1.9kgと、粒径2.0mm〜3.0mmのもの0.5kgとを混合して撹拌用容器に投入した。一方、不飽和ポリエステル樹脂(商品名:リゴラック(登録商標)、品番2265BFU、昭和高分子製)0.7kg、樹脂防たれ剤(商品名:レオロシール(登録商標)、トクヤマ製)20gを樹脂用容器に入れて撹拌し、さらにこれに硬化遅延剤(スチレン90〜100%、商品名:リゴラック(登録商標)、昭和高分子製)7gと、硬化剤(メチルエチルケトンパーオキサイドジメチルフタレート、商品名:パーメックN(登録商標)、日本油脂製)7gを入れて撹拌し、これを前述の砕石を入れた撹拌用容器に入れて電動撹拌機で充分に撹拌して成型用組成物Aを作成した。
【0030】
(成型用組成物Aの型枠への塗り付け:上用)
成型用組成物Aを上用の型枠の内側面(シリコン樹脂面)にほぼ同じ厚さになるように塗り広げた。塗り広げた成型用組成物の上面に市販のガラス繊維をシート状に広げたものを均一な状態となるように置き、押圧して貼り付けた。
【0031】
(成型用組成物Bの作成:下用)
下の枠体用として、粒状の砕石を粒径2.0mm以下(粒径0.1mm〜0.4mmの粉状体30重量%含む)のもの3.8kgと、粒径2mm〜3mmのもの1.0kgとを混合して撹拌用容器に投入した。そして、不飽和ポリエステル樹脂(商品名:リゴラック(登録商標)、品番2265BFU、昭和高分子製)1.4kg、樹脂防たれ剤(商品名:レオロシール(登録商標)、トクヤマ製)40gを樹脂用容器に入れて撹拌し、これに前述の硬化剤14gを入れて撹拌し、これをさらに前述の砕石を入れた撹拌用容器に入れて電動撹拌機で充分に撹拌して成型用組成物Bを作成した。
【0032】
(成型用組成物Bの型枠への塗り付け:下用)
成型用組成物Bを下の型枠の内側面(シリコン樹脂面)にほぼ同じ厚さになるように塗り広げた。この場合、成型用組成物Aの倍量であることから上用の約2倍の厚さとなった。
【0033】
(上下一体化した成型体の作成)
次に、下の型枠の上に上の型枠を重ね、成型用組成物Bと成型用組成物Aとを密着させ、クランプで両型枠の縁の複数箇所を挟むとともに錘を載せて充分に密着させた。その6時間経過後、両成型用組成物A,Bの樹脂の固化を確認してから脱型して、モデル錆石の外形を写し取った成型体を得た。
【0034】
(成型体の表面処理)
この成型体の表面に、塩化第二鉄溶液(FeCl37%以上、西毛化学工業製)を原液のまま刷毛でまんべんなく塗り、屋外に放置して天日乾燥させた。この塗り作業を60日間に5回行ない(総塗布量800ml)、人工錆石が完成した。
【0035】
(完成した人工錆石の状態)
この人工錆石の外観写真(上面側)を示す図5を参照して、写真から分かるように、この人工錆石は石肌の表面形状を有しているとともに不均一な石錆状の色彩が出ており、図6の拡大した外観写真(裏側面)に示すように天然錆石のような石肌表面の風合いを備えていることが分かる。この状態で、脱型から60日経過しているが、脱型直後は、鉄粉により全体的に黒色がかっていたものが塩化第二鉄が錆びたことで全体的に赤錆色を呈したものとなっている。
【0036】
尚、本実施の形態の人工錆石は、屋外に放置しておくことにより、当初は赤錆系の色が強いが経年の風化により赤錆色は退色する。一方、経年により樹脂の表面に埋め込まれた鉄粉が錆を生じ、その部分を中心に暗色系の錆色がにじむように広がる。従って、年数の経過した天然錆石と同様に落ち着いた錆色となり、盆栽用錆石等の観賞用として好適なものとなる。
【0037】
また、前述の説明では鉄粉と塩化鉄溶液により表面に鉄錆を表した場合を説明したが、銅粉と塩化銅溶液を用いても同様に作成することができる。この場合は緑青系の錆色が出て、鉄系の石錆とは違った風合いを与えることができる。さらに、製造工程の最初に型取りに使用したモデル錆石は、天然錆石であることが好ましいが、その入手が困難な場合は人工錆石を使用することもできる。
【0038】
以上、述べたように、本発明の製造方法により作成した人工錆石は、天然錆石の外観に極めて近いものとなり、その製造工程は一人でも充分に実施できる簡易なものであるため、比較的低コストで製造できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(A)は、本発明における実施の形態の人工錆石の製造方法において、天然錆石から上下の型枠を採取した状態を示す縦断端面図、(B)は採取した型枠(上側)のシリコン樹脂面側に金属粉を散布する状態を示す縦断端面図。
【図2】(A)は、図1(B)の型枠の内側面に成型用組成物を塗った状態を示す縦断端面図、(B)は(A)の型枠に塗った成型用組成物の表面にガラス繊維を貼り付ける作業を示す縦断端面図。
【図3】採取した型枠(下側)の内側面に成型用組成物を塗った状態を示す縦断端面図。
【図4】(A)は、図3の下側の型枠に図2(B)の上側の型枠を重ねるために位置合わせをした状態を示す縦断端面図、(B)は両型枠を重ねて密着させた状態を示す縦断端面図、(C)は、脱型して得た成型体に塩化金属溶液を塗る作業を示す縦断端面図、(D)は、出来上がりの人工錆石を示す縦断端面図。
【図5】本発明の実施例により作成した人工錆石上面側の外観写真。
【図6】図5の人工錆石の石肌表面の状態(裏面側)を示す拡大した外観写真。
【符号の説明】
【0040】
1B 人工錆石、2,3 型枠、10 成型体、21,31 ゲル状樹脂、22,32 外枠、23,33 成型用組成物、34 補強用繊維、50 金属粉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状石と液状合成樹脂とを所定割合で混合して作成したペースト状の成型用組成物を、モデル錆石の表面を型取りしてなる型枠内に投入または塗って固化させ、脱型することにより成型体とした後、該成型体表面に石錆状の色彩を付与する人工錆石の製造方法において、
前記成型用組成物を前記型枠に投入または塗る前に、該型枠内面に酸化または水酸化により錆を生じる金属粉を散布しておき、成型作業により石肌状に形成される前記成型体の表面に前記金属粉の粒体を少なくとも一部が埋没した状態で固定させ、脱型後に前記金属粉を酸化または水酸化させて錆を生じさせる、
ことを特徴とする人工錆石の製造方法。
【請求項2】
前記金属粉は鉄粉または銅粉である、ことを特徴とする請求項1に記載した人工錆石の製造方法。
【請求項3】
前記金属粉を構成する金属粒の粒径は、50μm〜1700μmであることを特徴とする請求項1または2に記載した人工錆石の製造方法。
【請求項4】
前記金属粉の散布量は、25g〜75g/mであることを特徴とする請求項1,2または3に記載した人工錆石の製造方法。
【請求項5】
前記型枠の内側面は、ゲル状樹脂からなることを特徴とする請求項1,2,3または4に記載した人工錆石の製造方法。
【請求項6】
前記成型体の表面に、酸化または水酸化により錆を生じる金属を塩化物として含有する溶液を塗布し、塗布後に金属が錆びることにより略均一な石錆状の色彩を全体的に生じさせる、ことを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載した人工錆石の製造方法。
【請求項7】
前記モデル錆石は略平板状または平板を湾曲させた形状のものであり、前記型枠が上面形成用と下面形成用の2つからなり、各々内面に前記成型用組成物を塗った後に、成型用組成物同士が密着するように前記両型枠を合わせで一体的に成型するものとし、且つ、一方の前記型枠用の成型用組成物に予め合成樹脂の固化を遅らせる遅延剤を混入しておくことにより、前記両型枠の成型用組成物の固化タイミングを一致させながら成型する、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載した人工錆石の製造方法。
【請求項8】
前記両型枠を合わせる際に、一方の前記型枠の成型用組成物表面に繊維材を略均一に配置しておき、成型により内部に強化用繊維を備えたものとする、ことを特徴とする請求項7に記載した人工錆石の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載した人工錆石の製造方法により製造され、略平板状または平板を湾曲させた形状を有しており、表面に固定された前記金属粉が錆を生じて石錆模様の一部を表している、ことを特徴とする盆栽用錆石。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−290904(P2008−290904A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137505(P2007−137505)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(507171041)
【Fターム(参考)】