説明

人造大理石成形品

【課題】高価な金型が不要で、プレス成形機の使用時間が短く、SMC成形品またはBMC成形品の生産性を向上できるとともに、低コストで成形され、人造大理石層と、SMC成形品またはBMC成形品との接着性に優れた人造大理石成形品を提供する。
【解決手段】本発明の人造大理石成形品は、金型内でSMC成形品11を成形する工程と、金型より取り出したSMC成形品11に表面処理を施す工程と、SMC成形品11の表面処理が施された面に対し間隙を設けて対向するように注型成形型を配置し、その間隙に熱硬化性樹脂組成物を注型し、硬化させることにより人造大理石層を形成し、その人造大理石層と、SMC成形品11の表面処理が施された面とを接着一体化する工程と、を少なくとも経て成形されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室や厨房などの住宅設備機器、建材などとして用いられる人造大理石成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
人造大理石成形品は、素材の透明感、深み感、多彩な模様など意匠性に優れているため、高級浴槽、洗面ボール、キッチン天板などの住宅設備機器、カウンターなどの建材として用いられている。
【0003】
人造大理石成形品の製造方法としては、一般的に、表裏一対の注型成形型の間隙に、熱硬化性樹脂組成物を注入し、その熱硬化性樹脂組成物を硬化させる注型成形が用いられている。そして、素材の透明感や深み感を表現するために、通常、人造大理石成形品を10〜20mm程度に厚肉化することによって、ガラス繊維などの強化材を用いることなく、その強度を確保している。その結果、成形品の重量が重くなり、運搬や施工の負荷が増大するとともに、高価な原材料の使用量も増えるため、製造コストが高くなるという問題があった。
【0004】
一方、FRP(繊維強化プラスチック)成形品の成形方法としては、一般的に、ハンドレイアップ成形、スプレーアップ成形、RTM(レジントランスファー)成形、SMC(シートモールディングコンパウンド)成形、BMC(バルクモールディングコンパウンド)成形などの成形方法が用いられている。これらの成形方法の中でも、特に、SMC成形は、ガラス繊維強化材や無機質充填材などを配合した熱硬化性樹脂組成物を、金型内で熱圧成形することによって、強度を確保しつつ、寸法精度に優れたリブやボスなどの裏面補強を一体的に成形して、FRP成形品の薄肉、軽量化を図っている。また、SMC成形は、成形速度が速く、大量生産による低コスト化に適しているため、自動車、建材などの他、普及価格帯の浴室部材では、浴槽や防水パンなどの大多数の成形に適用されている。
【0005】
従来、人造大理石成形品の重量および製造コストを低減する技術としては、金型内でSMC成形品またはBMC成形品を圧縮成形した後、この金型内に注入空間部を設けた状態で、金型内にて成形したSMC成形品またはBMC成形品を配置し、人造大理石樹脂組成物を注入空間へ注入して注型成形を行い、人造大理石成形品と、SMC成形品またはBMC成形品とが積層、一体化された人造大理石成形品の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、SMC成形品やBMC成形品などの樹脂成形品の一方の面に被覆層を設ける方法としては、熱硬化性樹脂成形素材を分割金型により加熱加圧して樹脂成形品とした後、分割金型の1つの型に設けた第1の注入機により被覆材料を分割金型内に注入して樹脂成形品の一方の面に被覆層を形成した後、分割金型の別の型に設けた第2の注入機により発泡性樹脂材料を樹脂成形品の他方の面に注入して発泡させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−207397号公報
【特許文献2】特開平08−142117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2では、樹脂の注入口の設置など金型構造が複雑になり、型投資が増大するとともに、高価な金型が必要である上に、1回の人造大理石成形品の成形におけるプレス成形機の使用時間が長いため、SMC成形品またはBMC成形品の生産性が低くなり、結果として、製造コストが高くなるという問題があった。また、この人造大理石成形品の製造方法では、SMC成形品またはBMC成形品の表面に離型剤などの添加物が残留するため、その表面に対する塗装や、他の材料の積層などの2次接着性が低下するという問題があった。しかしながら、特許文献1、2には、SMC成形品またはBMC成形品と、人造大理石樹脂組成物との接着性を向上するための具体的手段が開示されていなかった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高価な金型が不要であり、1回の成形におけるプレス成形機の使用時間が短く、SMC成形品またはBMC成形品の生産性を向上することができるとともに、低コストで成形され、人造大理石層と、SMC成形品またはBMC成形品との接着性に優れた人造大理石成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の人造大理石成形品は、表面処理が施されたSMC成形品またはBMC成形品と、その表面処理が施された面を介して、前記SMC成形品またはBMC成形品の一面に接着一体化された熱硬化性樹脂組成物からなる人造大理石層と、を備えてなる人造大理石成形品の製造方法であって、金型内でSMC成形材料またはBMC成形材料を熱圧成形してSMC成形品またはBMC成形品を成形する工程と、前記金型より取り出した前記SMC成形品またはBMC成形の表面に表面処理を施す工程と、前記SMC成形品またはBMC成形品における表面処理が施された面の1つに対し間隙を設けて対向するように注型成形型を配置し、前記SMC成形品またはBMC成形品の表面処理を施した面の1つと、前記注型成形型との間隙に熱硬化性樹脂組成物を注型し、該熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより人造大理石層を形成し、該人造大理石層と、前記SMC成形品またはBMC成形品の表面処理を施した面の1つとを接着一体化する工程と、を少なくとも経て成形されたことを特徴とする。
【0010】
前記表面処理を施す工程において、プライマー塗布、サンディング、サンドブラスト、コロナ放電、紫外線照射またはイトロ処理から選択される1種または2種以上により前記表面処理が施されたことが好ましい。
前記接着一体化する工程において、前記間隙を0.5mm〜5.0mmの範囲で調節することにより、前記人造大理石層の厚みを0.5mm〜5.0mmとしたことが好ましい。
前記接着一体化する工程において、前記注型成形型と、前記SMC成形品またはBMC成形品との間にパッキンを配置し、前記注型成形型の周縁部の内面側で、かつ、前記パッキンの内側に開口された樹脂注入孔から、前記間隙に前記熱硬化性樹脂組成物を注型するとともに、前記周縁部の内面側で、かつ、前記パッキンの内側に開口された空気排出孔から、前記間隙内の空気を排出したことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の人造大理石成形品によれば、金型内でSMC成形品またはBMC成形品が熱圧成形された後、金型より、SMC成形品またはBMC成形品が取り出されて、SMC成形品またはBMC成形品の表面に表面処理が施され、さらに、SMC成形品またはBMC成形品における表面処理が施された面の1つに対し間隙を設けて対向するように注型成形型が配置され、SMC成形品またはBMC成形品の表面処理が施された面の1つと、注型成形型との間隙に熱硬化性樹脂組成物が注型され、その熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより人造大理石層が形成され、その人造大理石層と、SMC成形品またはBMC成形品の表面処理が施された面の1つとが接着一体化されたので、既存の金型を使用することができ、1回の成形において、高価な金型やプレス成形機の使用時間を短くすることができるとともに、SMC成形品またはBMC成形品の生産性を低下させることなく、製造コストを抑えることができる。
【0012】
また、人造大理石層の成形工程において、SMC成形品またはBMC成形品の表面側(SMC成形品またはBMC成形品の表面処理を施した面側)に相対する表面成形型のみを用いることにより、新たな型を作製するための投資を抑えることができるとともに、本発明で用いられる注型成形型は、従来の上下一対からなる注型成形型に比較して軽量で、かつ、取り扱い易い。また、既に製品として使用され、表面が劣化したSMC成形品またはBMC成形品の表面に、相対する注型成形型を用いることにより、使用後の製品の表面にも容易に人造大理石層を形成することができる。これにより、製品外観の回復や向上、さらには、汚れの付着や表面劣化の防止など、リフォーム、リフレッシュ、リサイクルなどを図ることができる。
【0013】
また、人造大理石層と、SMC成形品またはBMC成形品の表面とを接着一体化することにより、SMC成形品またはBMC成形品に形成された寸法精度に優れるリブやボスなどの裏面補強構造も人造大理石成形品に一体化することができる。これにより、住宅設備機器、特に、普及価格帯の浴室部材では、浴槽や防水パンなどの大多数がSMC成形品を適用していることから、浴室部材は、SMC成形品と取り付け構造を共有でき、施工性の向上を図ることができる。
【0014】
また、本発明の人造大理石成形品において、SMC成形品またはBMC成形品の表面に、プライマー塗布、サンディング、サンドブラスト、コロナ放電、紫外線照射またはイトロ処理から選択される1種または2種以上の表面処理が施されれば、人造大理石層と、SMC成形品またはBMC成形品の表面との高い接着性が得られ、人造大理石成形品の耐久性や信頼性を向上することができる。
【0015】
さらに、本発明の人造大理石成形品において、人造大理石層と、SMC成形品またはBMC成形品の表面とを接着一体化する工程において、SMC成形品またはBMC成形品の表面と、注型成形型との間隙を0.5mm〜5.0mmの範囲で調節することにより、人造大理石層の厚みを0.5mm〜5.0mmとすれば、人造大理石成形品の強度を確保しつつ、人造大理石成形品の薄肉化や軽量化を図ることができる。また、一般的な注型成形によって製造された人造大理石成形品は、通常、厚みを10mm〜20mm程度とすることにより強度を確保しているため、重量が大きいのに対して、本発明の人造大理石成形品によれば、人造大理石成形品の薄肉化や軽量化を図れるので、人造大理石成形品の運搬や施工の負荷を低減することができるとともに、高価な原材料の使用量も低減することができ、ひいては、人造大理石成形品の製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の人造大理石成形品の第一の実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の人造大理石成形品の第一の実施形態の製造方法を示す概略断面図である。
【図3】本発明の人造大理石成形品の第一の実施形態の製造方法を示す概略断面図である。
【図4】本発明の人造大理石成形品の第一の実施形態の製造方法を示す概略断面図である。
【図5】本発明の人造大理石成形品の第二の実施形態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の人造大理石成形品の第二の実施形態の製造方法を示す概略断面図である。
【図7】本発明の人造大理石成形品の第二の実施形態の製造方法を示す概略断面図である。
【図8】本発明の人造大理石成形品の第二の実施形態の製造方法を示す概略断面図である。
【図9】本発明の人造大理石成形品の比較例1を示す概略断面図である。
【図10】本発明の人造大理石成形品の比較例1を示す概略断面図である。
【図11】本発明の人造大理石成形品の比較例1を示す概略断面図である。
【図12】本発明の人造大理石成形品の比較例2を示す概略断面図である。
【図13】本発明の人造大理石成形品の比較例2を示す概略断面図である。
【図14】本発明の人造大理石成形品の比較例2を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の人造大理石成形品およびその製造方法の実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0018】
(1)第一の実施形態
「人造大理石成形品」
図1は、本発明の人造大理石成形品の第一の実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態の人造大理石成形品10は、後述する人造大理石成形品の製造方法の第一の実施形態によって製造されたものであり、SMC成形品11と、SMC成形品11の一方の面11a側に、その一方の面11aに施された表面処理12を介して設けられた人造大理石層13とから概略構成されている。
すなわち、人造大理石成形品10では、SMC成形品11の一方の面11aに、接着性を向上するための表面処理12が施され、その表面処理12を介して、SMC成形品11の一方の面11aに、熱硬化性樹脂組成物からなる人造大理石層13が接着一体化されている。
【0019】
SMC成形品11の厚みは、人造大理石成形品10の形状や用途などに応じて適宜調整されるが、2mm〜10mmであることが好ましく、より好ましくは4mm〜6mmである。
SMC成形品11の厚みが2mm未満では、人造大理石成形品10の強度が低下することがある。一方、SMC成形品11の厚みが10mmを超えると、成形時の硬化時間が増大するため生産性が低下するだけでなく、重量も重くなるため材料コストが増加し、さらに、SMC成形品11の重量が増加して運搬し難くなるとともに、取り扱い難くなることがある。
【0020】
SMC成形品11の材料(以下、SMC成形材料という。)は、繊維強化材に、熱硬化性樹脂と、重合性単量体と、低収縮剤、硬化剤、重合禁止剤、充填材、増粘剤などの添加材とを配合してなる樹脂組成物を含浸させた繊維強化成形材料であって、シート状に形成されたものである。
【0021】
繊維強化材としては、ガラス繊維などの無機繊維やビニロンなどの有機繊維が用いられる。
また、繊維強化材としては、長さ0.1mm〜1.0mmの単繊維状のもの、長さ50mmの繊維束状のもの、ロービング状のもの、連続繊維、織布などが用いられる。これらの中でも、材料コスト、機械強度特性などを考慮すると、ロービング状のものを5mm〜30mmの長さに切断したものが好ましい。
【0022】
繊維強化材の配合量は、熱硬化性樹脂などからなる樹脂組成物の総量(100質量部)に対して5〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは15〜25質量部である。
【0023】
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが用いられるが、これらの中でも比較的安価かつ取扱いが容易で、硬化物の機械的物性に優れるなどの観点から不飽和ポリエステル樹脂が多く用いられる。
【0024】
重合性単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ジアリルフタレートなどが用いられる。
【0025】
低収縮剤としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ブタジエンゴムなどの熱可塑性樹脂が用いられる。
低収縮剤の配合量は、特に限定されないが、SMC成形品11の成形収縮率や表面平滑性、表面光沢などの表面特性を考慮して適宜調整され、熱硬化性樹脂と重合性単量体の総量(100質量部)に対して10〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは15〜30質量部である。
【0026】
硬化剤としては、ケトンパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、ハイドロパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、アルキルパーエステル類などから選択される1種または2種以上が用いられる。
硬化剤の種類および配合量は、SMC成形材料の保存性、SMC成形品11の成形サイクルなどを考慮して適宜調整される。
硬化剤の配合量は、熱硬化性樹脂と重合性単量体の総量(100質量部)に対して0.5〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0質量部である。
【0027】
重合禁止剤としては、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、トルキノン、ハイドロキノン、モノ−n−ブチルハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエンなどが用いられる。
重合禁止剤の配合量は、SMC成形材料の保存性、成形サイクルなどを考慮して適宜調整され、熱硬化性樹脂と重合性単量体の総量(100質量部)に対して1.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.8質量部である。
【0028】
充填材としては、炭酸カルシウム粉末、水酸化アルミニウム粉末、ガラス粉末、シリカ粉末、タルク粉末、硫酸バリウム粉末などが用いられる。
充填材の配合量は、SMC成形材料の増粘性、および、SMC成形品11の表面特性、機械強度特性などを考慮して適宜調整され、熱硬化性樹脂100質量部に対して30〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは100〜160質量部である。
【0029】
増粘剤としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カリウム、水酸化カリウムなどが用いられ、これらの中でも酸化マグネシウムが好適に用いられる。
増粘剤の配合量は、SMC成形材料の取り扱い易さ、成形性を考慮して調整され、熱硬化性樹脂と重合性単量体の総量(100質量部)に対して0.5〜5.0質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.7〜2.0質量部の範囲である。
【0030】
さらに、SMC成形品11を構成する樹脂組成物には、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸ナトリウムなどの内部離型剤、顔料などの着色剤、着色したプラスチック粒やフィルム片などの加飾材、マイカやガラス片などの光輝材、安定剤などを適宜配合することもできる。
【0031】
SMC成形品11の一方の面11aに施された表面処理12としては、プライマー塗布、サンディング、サンドブラスト、コロナ放電、紫外線照射またはイトロ処理から選択された1種または2種以上の表面処理方法によって施されたものが挙げられる。
プライマー塗布に用いられるプライマーとしては、シランカップリング剤を溶剤で希釈したもの、あるいは、アクリルウレタン、ウレタン、エポキシ、シリコーン、ビニルエステル、アクリル樹脂などを溶剤もしくは重合性単量体で希釈し、必要に応じてシランカップリング剤や界面活性剤、硬化剤を添加したものが挙げられる。
また、プライマーに着色剤を配合して、プライマーの色調を調整してもよい。これにより、SMC成形品11の色相、外観不良を隠蔽することもできる。
【0032】
プライマーの塗布方法は、SMC成形品11の形状や大きさに応じて適宜選択されるが、ウェスや刷毛を用いた塗布方法、スプレーによる吹き付け方法などが用いられる。
プライマー塗布により表面処理12が施された場合、表面処理12の厚み(SMC成形品11の一方の面11aに塗布したプライマーの厚み)は、500μm以下であることが好ましい。
【0033】
サンディングの方法は、SMC成形品11の形状や大きさに応じて適宜選択されるが、SMC成形品11の表面(SMC成形品11の一方の面11aを含む)に対する手作業によるサンドペーパーがけを行う方法、SMC成形品11の表面に回転式あるいは振動式のサンダーなどを押し当て、その面を研削する方法などが用いられる。
これにより、SMC成形品11の表面積を増大させ、アンカー効果により、人造大理石層13を構成する熱硬化性樹脂組成物に対する接着力を向上させることができる。
【0034】
また、サンディング粒度は、作業性と、人造大理石層13を構成する熱硬化性樹脂組成物に対する接着性を考慮し選択されるが、#80〜#800であることが好ましく、より好ましくは#80〜#400である。
サンディングされたSMC成形品11の一方の面11aの表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で0.5μm〜2.0μmであることが好ましい。
【0035】
サンドブラストの方法としては、SMC成形品11の表面(SMC成形品11の一方の面11aを含む)に、珪砂、アルミナ、シリカ、ガラス、スチール、セラミックなどの粒子状の研削材を吹き付け、その表面にそれらの研削材を高速で衝突させる方法が用いられる。
これにより、SMC成形品11の表面積を増大させ、アンカー効果により、人造大理石層13を構成する熱硬化性樹脂組成物に対する接着力を向上させることができる。
【0036】
研削材の材質や粒子形状は、SMC成形品11の材質や硬さ、サンドブラストによるSMC成形品11の表面(SMC成形品11の一方の面11aを含む)の仕上り状態などに応じて適宜選択される。
また、SMC成形品11の表面に対して研削材を吹き付ける際の圧縮空気の圧力や処理時間は、作業性と、人造大理石層13を構成する熱硬化性樹脂組成物に対する接着性を考慮し適宜調整される。
サンドブラストされたSMC成形品11の一方の面11aの表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で0.5μm〜1.5μmであることが好ましい。
【0037】
コロナ放電の方法としては、市販のコロナ放電装置を用い、その電極間または電極に相対するようにSMC成形品11を配置して、SMC成形品11に高電圧をかける方法が用いられる。電極に印加する電圧とその印加時間は、作業性と接着性を考慮し適宜調整される。
このコロナ放電によって、高電圧を印加した電極からの放電によりSMC成形品11の表面(SMC成形品11の一方の面11aを含む)にカルボニル基(COOH)などの極性基を形成し、SMC成形品11の表面における濡れ性、接着性を向上させることができる。
【0038】
紫外線照射の方法としては、有機化合物(樹脂組成物)からなるSMC成形品11の表面(SMC成形品11の一方の面11aを含む)に、紫外線を照射することによりC−H分子の結合を切るとともに、空気中の酸素からオゾンを生成、分解して、高いエネルギーの活性酸素を生成する方法が用いられる。これにより、SMC成形品11の表面は、紫外線により結合を切られた成形品表面の炭素原子や水素原子と空気中の活性酸素が反応し、水酸基(OH)、カルボニル基(COOH)などの極性基を形成した状態となっており、SMC成形品11の表面における濡れ性、接着性を向上させることができる。
この紫外線照射には、市販の低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどが用いられるが、酸素からオゾンを生成しやすい波長185nmの光線と、オゾンを分解し活性酸素を生成しやすい波長254nmの光線とを発する低圧水銀ランプが好適に用いられる。
【0039】
また、SMC成形品11の表面に対する紫外線照射量は、作業性と接着性を考慮して、ランプの出力、照射距離、照射時間などを適宜選択することにより調整されるが、300mJ/cm〜2000mJ/cmであることが好ましく、より好ましくは500mJ/cm〜1500mJ/cmである。
SMC成形品11の表面に対する紫外線照射量が300mJ/cm未満では、SMC成形品11に対する人造大理石層13の接着性の向上が十分でないおそれがある。一方、SMC成形品11の表面に対する紫外線照射量が2000mJ/cmを超えると、SMC成形品11が紫外線による変色や強度低下などの劣化するおそれがある。
【0040】
イトロ処理の方法としては、市販のイトロ処理装置を用い、フレームバーナーによる酸化炎を介して、SMC成形品11の表面(SMC成形品11の一方の面11aを含む)に、酸化ケイ素膜を形成する方法が用いられる。
フレームバーナーとSMC成形品11の表面との距離、処理時間は、作業性と接着性を考慮して適宜調整される。
このイトロ処理により、SMC成形品11の表面における接着性を向上させることができる。
【0041】
これらの表面処理方法は、SMC成形品11の表面状態、形状、大きさ、作業性、接着力などを考慮し適宜選択される。
【0042】
人造大理石層13の厚みは、0.5mm〜5.0mmであることが好ましく、より好ましくは1.0mm〜3.5mmである。
人造大理石層13の厚みがこの範囲内であれば、人造大理石特有の透明感、深み感を確保しつつ、材料コストの低減効果および重量低減効果の最大化と、人造大理石層13の硬化時にSMC成形品11との接着界面に作用する内部応力を抑制することができるとともに、SMC成形品11の一方の面11aに対する、人造大理石層13の接着性を向上することができる。
【0043】
人造大理石層13の厚みが0.5mm未満では、後述するように、その注型に要する時間(注型時間)が長くなる、SMC成形品11の一方の面11a上において、人造大理石層13が形成されない箇所が発生するなどの不具合を生じるおそれがあるだけでなく、人造大理石特有の透明感、深み感も低下する。また、人造大理石成形品10が、浴槽など耐水性や耐熱性が要求される成形品である場合、人造大理石層13の耐久性が低下することがある。
一方、人造大理石層13の厚みが5.0mmを超えると、重量が重くなるため材料コストが増加するだけでなく、SMC成形品11の重量が増加するため、運搬や施工の負荷を低減するという効果が損なわれる。また、人造大理石層13を構成する熱硬化性樹脂組成物の硬化による発熱温度(硬化発熱温度)が高くなるため、人造大理石層13の硬化収縮も大きくなり、SMC成形品11との接着界面に作用する内部応力も増大し、SMC成形品11の一方の面11aに対する接着力が低下するおそれがある。
【0044】
人造大理石層13を構成する熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、重合性単量体および硬化剤を主成分とし、さらに、硬化促進剤、重合禁止剤、充填材、繊維強化材、着色剤、加飾材、光輝材、紫外線吸収剤、消泡剤、シランカップリング剤、内部離型剤などの添加材を適宜配合してなるものである。
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが用いられる。
重合性単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ジアリルフタレートなどが用いられる。
重合性単量体の配合量は、熱硬化性樹脂組成物の粘度、注型時間などを考慮して適宜調整される。
【0045】
硬化剤としては、ケトンパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、ハイドロパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、アルキルパーエステル類などから選択される1種または2種以上が用いられる。
硬化剤の種類および配合量は、熱硬化性樹脂組成物のゲル化時間、硬化発熱温度、成形サイクル、硬化収縮率、硬化物の色相、物性などを考慮して適宜調整される。
硬化剤の配合量は、熱硬化性樹脂と重合性単量体の総量(100質量部)に対して0.5〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0質量部である。
硬化促進剤としては、ナフテン酸コバルト、オフテン酸コバルト、ジメチルアニリンなどを、メタノールなどの溶媒で希釈したものが用いられる。
【0046】
硬化促進剤の配合量は、熱硬化性樹脂組成物のゲル化時間、硬化発熱温度、成形サイクル、硬化収縮率、硬化物の色相、物性などを考慮して適宜調整される。例えば、6%ナフテン酸コバルト(ナフテン酸コバルトの含有量が6質量%の溶液)の場合、その配合量は、熱硬化性樹脂と重合性単量体の総量(100質量部)に対して0.1〜2.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0質量部である。
なお、硬化剤の種類によっては、硬化促進剤を用いないこともある。
【0047】
重合禁止剤としては、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、トルキノン、ハイドロキノン、モノ−n−ブチルハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエンなどが用いられる。
重合禁止剤の配合量は、熱硬化性樹脂の保存性、熱硬化性樹脂組成物の成形サイクルなどを考慮して適宜調整される。
【0048】
充填材としては、水酸化アルミニウム粉末、ガラス粉末、シリカ粉末などが用いられる。
充填材の種類および配合量は、熱硬化性樹脂組成物の粘度、注型時間、硬化特性、収縮率、硬化物の色相、光沢などの表面特性、物性などを考慮して適宜調整される。
なお、熱硬化性樹脂などの種類によっては、充填材を用いないこともある。
【0049】
繊維強化材としては、ガラス繊維などの無機繊維やビニロンなどの有機繊維が用いられる。この繊維強化材により、熱硬化性樹脂組成物の硬化収縮が抑制される。
また、繊維強化材としては、長さ0.1mm〜1.0mmの単繊維状のものなどが用いられる。
繊維強化材の種類および配合量は、熱硬化性樹脂組成物の粘度、注型時間、硬化特性、収縮率、硬化物の色相、光沢などの表面特性、物性などを考慮して適宜調整される。
なお、硬化後の熱硬化性樹脂組成物(人造大理石層13)の光沢が著しく低下する場合、繊維強化材を用いないこともある。
【0050】
さらに、人造大理石層13を構成する熱硬化性樹脂組成物には、顔料などの着色剤を適宜配合し、熱硬化性樹脂組成物を透明または半透明、有色不透明に調色することができる。
また、熱硬化性樹脂組成物には、着色したプラスチック粒やフィルム片などの加飾材、マイカやガラス片などの光輝材を適宜配合し、人造大理石層13に模様付けすることができる。
また、熱硬化性樹脂組成物には、紫外線吸収剤を適宜配合して、人造大理石層13の耐候性を向上することができる。
また、熱硬化性樹脂組成物には、消泡剤を適宜配合して、攪拌混練時の脱泡性を向上することができる。
また、熱硬化性樹脂組成物には、シランカップリング剤を配合して、SMC成形品11に対する接着性を向上することができる。
また、熱硬化性樹脂組成物には、SMC成形品11との接着性に影響を及ぼさない範囲で内部離型剤を配合することもできる。
【0051】
人造大理石成形品10は、人造大理石層13と、SMC成形品11の一方の面11aとが、表面処理12を介して接着一体化されているので、人造大理石層13と、SMC成形品11の一方の面11aとの高い接着性が得られ、耐久性や、寸法安定性などの信頼性に優れている。
また、人造大理石層13と、SMC成形品11の一方の面11aとが接着一体化されているので、SMC成形品11の他方の面11bに形成された寸法精度に優れるリブ構造11cも人造大理石成形品10に一体化されたものとなる。これにより、人造大理石成形品10が住宅設備機器、特に、普及価格帯の浴室部材である場合、その浴室部材は、SMC成形品11と取り付け構造(リブ構造11c)を共有でき、施工性の向上を図ることができる。
さらに、人造大理石成形品10は、人造大理石層13の厚みが0.5mm〜5.0mmであるので、機械的強度を確保しつつも、薄肉化や軽量化を達成したものとなる。
【0052】
なお、この実施形態では、SMC成形品11を用いた人造大理石成形品10を例示したが、本発明の人造大理石成形品はこれに限定されない。本発明の人造大理石成形品にあっては、SMC成形品の代わりに、BMC成形品を用いてもよい。
BMC成形品の厚みは、人造大理石成形品10の形状や用途などに応じて適宜調整されるが、2mm〜10mmであることが好ましく、より好ましくは5mm〜8mmである。
BMC成形品の厚みが2mm未満では、人造大理石成形品10の強度が低下することがある。一方、BMC成形品の厚みが10mmを超えると、成形時の硬化時間が増大するため生産性が低下するだけでなく、重量も重くなるため材料コストが増加し、さらに、BMC成形品の重量が増加することにより運搬し難くなるとともに取り扱い難くなることがあるからである。
【0053】
BMC成形品の材料(以下、BMC成形材料という。)は、SMC成形材料と同様の熱硬化性樹脂に、重合性単量体と、低収縮剤、硬化剤、重合禁止剤、充填材、増粘剤などの添加材と、繊維強化材とを加え、塊粘土状に形成されたものである。
BMC成形材料としては、混練性、BMC成形品の外観などを考慮すると、より短く切断したものを用いることが好ましい。
【0054】
「人造大理石成形品の製造方法」
次に、図2〜4を参照して、この実施形態の人造大理石成形品の製造方法を説明する。
まず、一般的なSMC製造装置を用いて、繊維強化材に、熱硬化性樹脂と、重合性単量体と、低収縮剤、硬化剤、重合禁止剤、充填材、増粘剤などの添加材とを所定の割合で配合してなる樹脂組成物を含浸させて、SMC成形材料を調製する(SMC成形材料調製工程)。
【0055】
このSMC成形材料調製工程では、繊維強化材、熱硬化性樹脂、重合性単量体および各種添加材としては、上記のものが用いられる。
このSMC成形材料調製工程では、まず、一対のキャリアフィルムを用意し、それぞれのキャリアフィルムの一方の面に、樹脂組成物を均一な厚みとなるように塗布した後、その樹脂組成物上に、所定の長さの繊維強化材を散布する。
【0056】
次いで、それぞれの樹脂組成物および繊維強化材が配された面が対向するように、一対のキャリアフィルムを重ね合わせた後、そのキャリアフィルムを、含浸ロールの間を通過させる。これにより、一対のキャリアフィルムに圧力を加えて、樹脂組成物に繊維強化材を含浸させて、シート状のSMC成形材料を成形し、一対のキャリアフィルムで、そのSMC成形材料を挟持する。
【0057】
次いで、SMC成形材料を挟持したキャリアフィルムをロール状に巻き取るか、あるいは、つづら折りに畳む。
その後、必要に応じて、SMC成形材料の熟成などを行う。例えば、SMC成形材料に増粘剤を配合した場合、室温(20℃)〜60℃の温度範囲で熟成することが好ましい。
また、SMC成形材料の粘度は、後段のSMC成形品成形工程における取り扱い易さなどの観点から、熟成後において、25℃において15,000Pa・s〜150,000Pa・sであることが好ましい。ここで、SMC成形材料の粘度は、例えば、JIS K6901「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」およびJIS K6919「繊維強化プラスチック用液状不飽和ポリエステル樹脂試験法」に準じる方法により測定されたものである。
【0058】
次いで、図2(a)〜(d)に示すように、例えば、表面成形用金型31と、成形品の裏面となる部分(金型の底面)にリブ構造32aを有する裏面成形用金型32とからなる一対の金型30内でSMC成形材料21を熱圧成形して、上記のSMC成形品11を成形する(SMC成形品成形工程)。
【0059】
このSMC成形品成形工程では、まず、図2(a)に示すように、所定の温度に調節された金型30内に、成形後の厚みが所定の大きさになるように、所定の重量に計量したSMC成形材料21を投入する。
このとき、表面成形用金型31の温度は、130〜150℃であることが好ましい。
また、裏面成形用金型32の温度は、120〜140℃であることが好ましい。
さらに、表面成形用金型31の温度が、裏面成形用金型32の温度よりも高くなるように温度調節し、かつ、表面成形用金型31と裏面成形用金型32の温度差は0〜20℃であることが好ましい。
なお、このSMC成形品成形工程では、この表面成形用金型31の温度、および、裏面成形用金型32の温度を終始維持する。
【0060】
次いで、図2(b)に示すように、表面成形用金型31と裏面成形用金型32を締めて、これらの金型30を所定の圧力で加圧することにより、SMC成形材料21を加熱、加圧し、溶融流動させて、SMC成形材料21を金型30内に充填した後、その圧力を保持したまま所定の時間加圧する。
このとき、表面成形用金型31と裏面成形用金型32を加圧する圧力(型締め圧力)は、1MPa〜10MPaであることが好ましい。
また、金型30により、SMC成形材料21を加熱、加圧する時間(熱圧成形時間)は、2分〜10分であることが好ましい。
次いで、図2(c)に示すように、SMC成形材料21が硬化して、SMC成形品11が形成された後、除圧して、表面成形用金型31と裏面成形用金型32を開く。
次いで、図2(d)に示すように、裏面成形用金型32から、裏面(他方の面)11bにリブ構造11cが形成されたSMC成形品11を取り外す。
このSMC成形品成形工程では、SMC成形品11の成形サイクルが短い、すなわち、1回のSMC成形品11の成形における金型30の使用時間が短いだけでなく、寸法精度に優れ、軽量でかつ強度に優れるSMC成形品11を低コストで成形できる。
【0061】
次いで、図3に示すように、金型30より取り出したSMC成形品11の一方の面11aに、接着性を向上するための表面処理12を施す(表面処理工程)。
この表面処理工程では、SMC成形品11の一方の面11aに対して、上記のようなプライマー塗布、サンディング、サンドブラスト、コロナ放電、紫外線照射またはイトロ処理から選択される1種または2種以上の表面処理方法によって、表面処理12を施す。
例えば、表面処理12がプライマー塗布によってなされる場合、スプレーガン33によって、SMC成形品11の一方の面11aにプライマーを塗布する。
ここで、SMC成形品11の一方の面11aに、接着性を向上するために表面処理12を施す範囲は、後段の人造大理石層13を形成する範囲と同じとし、その範囲を、SMC成形品11の一方の面11a全面、もしくは、SMC成形品11の一方の面11aの任意の箇所としてもよい。
【0062】
また、上記の工程とは別に、一般的な樹脂混練装置を用いて、熱硬化性樹脂、重合性単量体および硬化剤と、硬化促進剤、重合禁止剤、充填材、繊維強化材、着色剤、加飾材、光輝材、紫外線吸収剤、消泡剤、シランカップリング剤、内部離型剤などの添加材とを所定の割合で配合して、上記の人造大理石層13を形成するための熱硬化性樹脂組成物を調製する(樹脂組成物調製工程)。
この樹脂組成物調製工程では、熱硬化性樹脂、重合性単量体、硬化剤および各種添加材としては、上記のものが用いられる。
この樹脂組成物調製工程では、例えば、樹脂混練装置の攪拌タンクに熱硬化性樹脂を投入し、攪拌翼を50〜1000rpmで回転させながら、重合性単量体、硬化剤の他に、硬化促進剤、重合禁止剤、充填材、繊維強化材、着色剤、加飾材、光輝材、紫外線吸収剤、消泡剤、シランカップリング剤、内部離型剤などの添加材を適宜添加し、これらの材料を攪拌混練する。
また、攪拌混練時の気泡巻き込みにより、後述する注型時に、熱硬化性樹脂組成物内に気泡が残留するのを防止するために、攪拌タンクを密閉して真空減圧し、脱泡しながら攪拌混練してもよい。
【0063】
熱硬化性樹脂組成物の粘度は、後段の人造大理石層成形工程における取り扱い易さなどの観点から、25℃において100Pa・s以下であることが好ましく、人造大理石層成形工程における脱泡性や注型時間の短縮などを考慮すると、25℃において10Pa・s以下であることがより好ましい。
ここで、熱硬化性樹脂組成物の粘度は、例えば、JIS K6901「液状不飽和ポリエステル樹脂試験法」に準じる方法により測定されたものである。
【0064】
また、熱硬化性樹脂組成物の粘度を調整する方法としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物を加温して粘度を低下させる方法が挙げられる。しかし、この方法では、熱硬化性樹脂組成物のゲル化時間が注型時間より短くなり、注型の途中で熱硬化性樹脂組成物が硬化して、注型成形型内への熱硬化性樹脂組成物の充填不良を生じることがある。
そこで、熱硬化性樹脂組成物の粘度を調整する方法は、硬化剤、硬化促進剤、重合禁止剤などの種類および配合量を適宜調整し、熱硬化性樹脂組成物のゲル化時間を調整する方法が好ましい。さらに、この方法に加えて、熱硬化性樹脂組成物を加温する場合、熱硬化性樹脂組成物の温度を60℃以下とすることが好ましい。
【0065】
次いで、図4(a)〜(c)に示すように、SMC成形品11における表面処理12が施された面(一方の面)11aに対し間隙35を設けて対向するように注型成形型34を配置し、SMC成形品11の一方の面11aと、注型成形型34との間隙35に、熱硬化性樹脂組成物22を注型し、その熱硬化性樹脂組成物22を硬化することにより、上記の人造大理石層13を形成し、この人造大理石層13と、SMC成形品11の一方の面11aとを接着一体化し、人造大理石成形品10を成形する(人造大理石層成形工程)。
ここで、SMC成形品11の一方の面11aに、接着性を向上するために表面処理12を施す範囲および人造大理石層13を形成する範囲を同じとし、その範囲を、SMC成形品11の一方の面11a全面、もしくは、SMC成形品11の一方の面11aの任意の箇所としてもよい。
【0066】
注型成形型34としては、予め型内に温水、冷水を循環する配管を埋め込んだ構造のものが好適に用いられる。このような構造にすることにより、熱硬化性樹脂組成物22の硬化発熱温度、硬化時間を調整することができる。
また、注型成形型34として、配管を埋め込まない構造のものを用いる場合、室温で熱硬化性樹脂組成物22を硬化しても、硬化炉内で熱硬化性樹脂組成物22を加温し、硬化してもよい。
【0067】
また、注型成形型34には、SMC成形品11と対向する面34aから、この面34aとは反対側の面34bにわたって、注型成形型34を厚み方向に貫通する樹脂注入孔34cと空気排出孔34dが設けられている。これらの樹脂注入孔34cと空気排出孔34dは、間隙35に連通している。
また、樹脂注入孔34cおよび空気排出孔34dは、注型成形型34におけるSMC成形品11と対向する面34aの外縁部34eで、かつ、注型成形型34とSMC成形品11の間に配置されるパッキン36よりも内側の部分(注型成形型34の中央部側の部分)に設けられている。図4では、樹脂注入孔34cと空気排出孔34dが、注型成形型34の肉厚の周縁部34Aの内面側に開口されて、パッキン36の内側に配置されている。これにより、熱硬化性樹脂組成物22を注型した際、注型成形型34外への熱硬化性樹脂組成物22の漏れを防ぐことができるとともに、間隙35内に気泡が残留するのを防ぐことができ、ひいては、間隙35内へ熱硬化性樹脂組成物22を十分に充填することができる。
【0068】
さらに、樹脂注入孔34c、空気排出孔34dは、それぞれ1箇所または2箇所以上設けられる。樹脂注入孔34cや空気排出孔34dを設ける位置および数は、SMC成形品11の形状や大きさにより適宜調整される。
また、SMC成形品11が深絞り形状である浴槽の場合、浴槽の排水口部分にも樹脂注入孔または空気排出孔を設けることにより、間隙35内への熱硬化性樹脂組成物22の充填性をさらに向上することができる。
ここで、注型成形型34とSMC成形品11の間に配置されるパッキン36に囲まれた範囲を、SMC成形品11の一方の面11aに、接着性を向上するために表面処理12を施す範囲および人造大理石層13を形成する範囲と同じくするとともに、その範囲を、SMC成形品11の一方の面11a全面、もしくは、SMC成形品11の一方の面11aの任意の箇所としてもよい。
【0069】
注型成形型34としては、FRP(繊維強化プラスチック)からなるもの、電鋳(電気鋳造)によって成形されたもの、金属溶射によって成形されたもの、アルミ鋳造によって成形されたもの、コアロイからなるものなどが用いられる。これらの注型成形型は、いずれも安価に製作できる。
【0070】
この人造大理石層成形工程では、まず、図4(a)に示すように、SMC成形品11における表面処理12が施された面(一方の面)11aに対し間隙35を設けて対向するように注型成形型34を配置した後、注型成形型34を型締し、SMC成形品11に対して注型成形型34を密着させて固定する。
このとき、注型成形型34におけるSMC成形品11の一方の面11aの外縁部と対向する部分、すなわち、注型成形型34におけるSMC成形品11と対向する面34aの外縁部34eで、かつ、注型成形型34とSMC成形品11の間にパッキン36を配置して、このパッキン36により間隙35を密閉する。
さらに、このパッキン36の外周で、かつ、注型成形型34とSMC成形品11の間に、スペーサー37を配置する。これにより、間隙35において、主に、注型成形型34とSMC成形品11において水平になっている部分(水平部)の厚みを調整することができる。
【0071】
また、スペーサー37の厚みは、0.5mm〜5.0mmであることが好ましい。
スペーサー37の厚みが0.5mm未満では、熱硬化性樹脂組成物22を注型する際の流動抵抗が高くなり、注型時間が長くなる。また、SMC成形品11の反りや注型成形型34の変形により、SMC成形品11の一方の面11aと注型成形型34が接触する箇所ができて、SMC成形品11と注型成形型34の間に熱硬化性樹脂組成物22が完全に充填されず、人造大理石層13が形成されない箇所が発生することがある。一方、スペーサー37の厚みが5.0mmを超えると、熱硬化性樹脂組成物22の充填量が増え、材料コストが増加する。
【0072】
なお、SMC成形品11が立ち面を有する立体形状の場合、スペーサー37による間隙35の大きさの調整では、注型成形型34とSMC成形品11の水平部における間隙35の大きさのみがスペーサー37の厚みと同寸法となる。一方、注型成形型34とSMC成形品11の傾斜部および垂直部の立ち面における間隙35の大きさは、スペーサー37の厚みよりも寸法が小さくなるため、必ずしもSMC成形品11の一方の面11aにおいて、間隙35の大きさが全面均一となるとは限らない。
そこで、SMC成形品11が立ち面を有する立体形状の場合、注型成形型34の作製時に、その形状、寸法を調整することにより、SMC成形品11の一方の面11aにおいて、間隙35の大きさを全面均一とすることができる。
また、注型成形型34の作製時に、その形状、寸法を調整することにより、SMC成形品11の平面形状や立体形状に応じて、間隙35の任意の箇所において、大きさを大きくしたり、小さくしたりすることができる。例えば、人造大理石成形品10が浴槽である場合、外観を重視する上縁面のみ人造大理石層13の厚みを厚くし、立ち面や底面の厚みを薄くすることにより材料コスト、重量の増加を抑制できる。また、浴槽では、立ち面の厚みを厚くしないことにより段積み可能な形状を維持できる。
また、注型成形型34の作製時に、その形状、寸法を調整することにより、SMC成形品11の一方の面11a全面、もしくは、SMC成形品11の一方の面11aの任意の箇所に、人造大理石層13を形成することができる。例えば、人造大理石成形品10が浴槽である場合、外観を重視する上縁面のみ人造大理石層13を形成し、立ち面や底面には人造大理石層13を形成しないことにより、意匠的なアクセントを付与できるとともに、材料コスト、重量の増加をさらに抑制できる。
【0073】
また、注型成形型34を型締する方法としては、SMC成形品11の外縁部11dと注型成形型34の外縁部34eをクランプで固定する方法、油圧シリンダーやエアーバックにより、SMC成形品11に対して注型成形型34を圧締する方法、パッキン36を2重構造として、パッキン36内を真空減圧する方法、間隙35内を真空減圧する方法などが用いられる。これらの方法は、SMC成形品11の形状や大きさに応じて適宜選択される。
また、注型成形型34におけるSMC成形品11と対向する面34aには、予め離型剤を塗布しておくことが好ましい。
離型剤としては、一般的なフッ素系離型剤、シリコン系離型剤などが用いられる。
【0074】
次いで、図4(b)に示すように、予めタンク38にて所定の温度に調節しておいた熱硬化性樹脂組成物22を、樹脂注入孔34cを介して、タンク38から間隙35内に注型する。
注型方法としては、シリンダーポンプやギアポンプ、モーノポンプなどを用いる方法、タンク38として加圧タンクを用い、撹拌タンクからタンク38に熱硬化性樹脂組成物22を移して、圧縮空気にてタンク38に収容した熱硬化性樹脂組成物22を加圧して注型する方法、あるいは、タンク38として攪拌タンクを用い、その攪拌タンクを密閉し、圧縮空気にてタンク38に収容した熱硬化性樹脂組成物22を加圧して、撹拌タンクから直接注型する方法などが挙げられる。また、間隙35内を真空減圧することにより、間隙35内に熱硬化性樹脂組成物22を吸引、注型する方法を用いてもよい。
【0075】
圧縮空気にてタンク38に収容した熱硬化性樹脂組成物22を加圧して注型する場合、タンク38に収容されている熱硬化性樹脂組成物22に、0.1MPa〜0.7MPaの空気圧を加えることが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物22に加える圧力が0.1MPa未満では、間隙35内に完全に熱硬化性樹脂組成物22を充填できないことがある。一方、熱硬化性樹脂組成物22に加える圧力が0.7MPaを超えると、SMC成形品11が変形したり、熱硬化性樹脂組成物22がパッキン36よりも外側に漏れ出すおそれがある。
また、タンク38にて、予め熱硬化性樹脂組成物22の温度を15〜60℃に調節しておくことが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物22の温度が15℃未満では、流動性が十分でないため、間隙35内に完全に熱硬化性樹脂組成物22を充填できないことがある。一方、熱硬化性樹脂組成物22の温度が60℃を超えると、注型の途中で熱硬化性樹脂組成物22が硬化してしまい、間隙35内に完全に熱硬化性樹脂組成物22を充填できないおそれがある。
【0076】
次いで、間隙35内への熱硬化性樹脂組成物22の注型が完了した後、注型成形型34の温度を所定の温度に調節するか、あるいは、SMC成形品11、熱硬化性樹脂組成物22および注型成形型34からなる積層体を所定の温度の雰囲気に曝して、熱硬化性樹脂組成物22を加熱することにより、熱硬化性樹脂組成物22を硬化させ、人造大理石層13を形成し、SMC成形品11と、熱硬化性樹脂組成物22が硬化してなる人造大理石層13とを接着一体化する。
【0077】
熱硬化性樹脂組成物22を硬化させる温度(成形温度)は、20〜90℃であることが好ましく、より好ましくは30〜60℃である。
熱硬化性樹脂組成物22の成形温度が、上記の範囲内であれば、SMC成形品11と人造大理石層13の接着界面に作用する内部応力を低下させ、SMC成形品11と人造大理石層13の接着力の低下を防ぐことができ、さらに、熱硬化性樹脂組成物22の注型成形の成形サイクルを短くすることができる。この場合、熱硬化性樹脂組成物22の硬化発熱温度を低く抑えることができ、SMC成形品11に対する人造大理石層13の接着力の低下を防ぐことができるとともに、熱硬化性樹脂組成物22の硬化による発熱温度の最高値を過ぎた時点、具体的には、熱硬化性樹脂組成物22の硬化物(人造大理石層13)の光沢、および、熱硬化性樹脂組成物22の硬化物がSMC成形品11に対して十分な接着力を確保できるだけの凝集力に達した時点において、注型成形型34を取り外すことで、人造大理石層13の成形における注型成形型34の使用時間を短縮でき、ひいては、人造大理石層13の成形サイクルを短くできる。
【0078】
熱硬化性樹脂組成物22の成形温度が20℃未満では、熱硬化性樹脂組成物22の硬化速度が遅くなり、硬化発熱温度が低くなるので、熱硬化性樹脂組成物22の硬化収縮が抑えられ、SMC成形品11と人造大理石層13の接着界面に作用する内部応力が低下し、SMC成形品11と人造大理石層13の接着力の低下を防げるものの、熱硬化性樹脂組成物22の注型の成形サイクルが長くなるおそれがある。一方、熱硬化性樹脂組成物22の成形温度が90℃を超えると、熱硬化性樹脂組成物22の硬化速度が速くなり、硬化による発熱温度も急激に上昇し高くなるため、熱硬化性樹脂組成物22の硬化収縮も大きくなり、SMC成形品11と人造大理石層13の接着界面に作用する内部応力が増大し、SMC成形品11と人造大理石層13の接着力の低下を招く上に、注型成形型34の寿命も短くなるおそれがある。
また、熱硬化性樹脂組成物22の成形温度を、上記の範囲内に保持する時間(成形時間)は、15分〜90分であることが好ましい。
【0079】
次いで、図4(c)に示すように、SMC成形品11と人造大理石層13を接着一体化してなる人造大理石成形品10から、注型成形型34を取り外した後、さらに、この人造大理石成形品10を、所定の温度の雰囲気に曝すことにより、人造大理石成形品10のアフターキュアを行う。
このアフターキュアにより、人造大理石成形品10には、十分な表面特性と物性を得ることができる。
人造大理石成形品10のアフターキュアを行う温度は、60〜90℃であることが好ましい。
また、人造大理石成形品10のアフターキュアを行う時間は、30分〜120分であることが好ましい。
【0080】
この実施形態の人造大理石成形品の製造方法によれば、金型30内でSMC成形品11を熱圧成形した後、金型30より、SMC成形品11を取り出して、SMC成形品11の一方の面11aに表面処理を施し、さらに、SMC成形品11の表面処理を施した面(一方の面11a)に対し間隙35を設けて対向するように注型成形型34を配置し、間隙35に熱硬化性樹脂組成物22を注型し、その熱硬化性樹脂組成物22を硬化させることにより人造大理石層13を形成し、その人造大理石層13と、SMC成形品11の一方の面11aとを、表面処理12を介して接着一体化するので、既存の金型を使用することができ、1回の成形において、金型やプレス成形機の使用時間を短くすることができるとともに、SMC成形品11の生産性を低下させることなく、製造コストを抑えることができる。
【0081】
また、人造大理石層成形工程において、SMC成形品11の一方の面11a側(SMC成形品11の表面処理を施した面側)に相対する表面成形型34のみを用いることにより、新たな型を作製するための投資を抑えることができるとともに、注型成形型34は、従来の上下一対からなる注型成形型に比較して軽量で、かつ、取り扱い易い。また、既に製品として使用され、表面が劣化したSMC成形品11の一方の面11aに、相対する注型成形型34を用いることにより、使用後のSMC成形品11の一方の面11aにも容易に人造大理石層13を形成することができる。これにより、SMC成形品11の外観の回復や向上、さらには、汚れの付着や表面劣化の防止など、リフォーム、リフレッシュ、リサイクルなどを図ることができる。
【0082】
また、人造大理石層成形工程において、人造大理石層13と、SMC成形品11の一方の面11aとを接着一体化することにより、SMC成形品11の他方の面11bに形成された寸法精度に優れるリブ構造11cも人造大理石成形品10に一体化することができる。
【0083】
また、表面処理工程において、SMC成形品11の一方の面11aに、プライマー塗布、サンディング、サンドブラスト、コロナ放電、紫外線照射またはイトロ処理から選択される1種または2種以上の表面処理を施すことにより、人造大理石層13と、SMC成形品11の一方の面11aとの高い接着性が得られ、人造大理石成形品10の耐久性や信頼性を向上することができる。
【0084】
さらに、人造大理石層成形工程において、SMC成形品11の一方の面11aと、注型成形型34との間隙35を0.5mm〜5.0mmの範囲で調節することにより、人造大理石層13の厚みを0.5mm〜5.0mmとすることにより、人造大理石成形品10の機械的強度を確保しつつ、人造大理石成形品10の薄肉化や軽量化を図ることができる。また、一般的な注型成形によって製造された人造大理石成形品は、通常、厚みを10mm〜20mm程度とすることにより強度を確保しているため、重量が大きいのに対して、この実施形態の人造大理石成形品の製造方法によれば、人造大理石成形品10の薄肉化や軽量化を図れるので、人造大理石成形品10の運搬や施工の負荷を低減することができるとともに、高価な原材料の使用量も低減することができ、ひいては、人造大理石成形品10の製造コストを抑えることができる。
【0085】
なお、この実施形態では、SMC成形品11を用いた人造大理石成形品10の製造方法を例示したが、本発明の人造大理石成形品はこれに限定されない。本発明の人造大理石成形品にあっては、SMC成形品の代わりに、BMC成形品を用いてもよい。
【0086】
BMC成形品を用いる場合、一般的なBMC製造装置を用いて、熱硬化性樹脂に、重合性単量体と、低収縮剤、硬化剤、重合禁止剤、充填材、増粘剤などの添加材と、繊維強化材とを所定の割合で配合して、BMC成形材料を調製する(BMC成形材料調製工程)。
このBMC成形材料調製工程では、例えば、混練槽に、熱硬化性樹脂を投入し、ブレードを10〜50rpmで回転させながら、重合性単量体、各種添加剤、所定の長さに切断された繊維強化材などを適宜添加し、これらの材料を攪拌混練する。
その後、上述のSMC成形材料の調製工程と同様にして、必要に応じて熟成などを行う。
そして、上述のSMC成形品の成形工程と同様にして、BMC成形品を成形する。
このBMC成形品成形工程では、BMC成形品の成形サイクルが短い、すなわち、1回のBMC成形品の成形における金型の使用時間が短いだけでなく、寸法精度に優れ、軽量かつ強度に優れるBMC成形品を低コストで成形できる。
【0087】
(2)第二の実施形態
「人造大理石成形品」
図5は、本発明の人造大理石成形品の第二の実施形態を示す概略断面図である。
図5において、図1に示した人造大理石成形品10と同じ構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
この実施形態の人造大理石成形品40が、上述の第一の実施形態の人造大理石成形品10と異なる点は、人造大理石層13のSMC成形品11と対向している面とは反対側の面13aに、透明ゲルコート層41が設けられている点である。
【0088】
透明ゲルコート層41は、人造大理石層13の保護を目的として設けられ、人造大理石層13の形状や用途などに応じて適宜調整されるが、200μm〜1.0mmであることが好ましく、より好ましくは300μm〜600μmである。
透明ゲルコート層41の厚みが200μm未満では、人造大理石層13を十分に保護できないおそれがある。一方、透明ゲルコート層41の厚みが1.0mmを超えると、人造大理石層13の意匠性が損なわれるおそれがある。
透明ゲルコート層41は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂などの熱硬化性樹脂に、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどの重合性単量体と、ケトンパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、ハイドロパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、アルキルパーエステル類などから選択される1種または2種以上の硬化剤を配合して形成されている。
【0089】
この人造大理石成形品40は、上述の人造大理石成形品10に加えて、人造大理石層13のSMC成形品11と対向している面とは反対側の面(表面)13aに、透明ゲルコート層41が設けられているので、この透明ゲルコート層41により人造大理石層13の表面が保護され、人造大理石層13の意匠性が損なわれるのを防止することができるとともに、人造大理石層13の機械的強度を向上することができる。
【0090】
「人造大理石成形品の製造方法」
次に、図6〜8を参照して、この実施形態の人造大理石成形品の製造方法を説明する。
まず、上述の第一の実施形態と同様にして、SMC成形材料を調製する(SMC成形材料調製工程)。
【0091】
次いで、上述の第一の実施形態と同様にして、図6(a)〜(d)に示すように、例えば、表面成形用金型31と、成形品の裏面となる部分(金型の底面)にリブ構造32aを有する裏面成形用金型32とからなる一対の金型30内でSMC成形材料21を熱圧成形して、上記のSMC成形品11を成形する(SMC成形品成形工程)。
このSMC成形品成形工程では、まず、図6(a)に示すように、所定の温度に調節された金型30内に、成形後の厚みが所定の大きさになるように、所定の重量に計量したSMC成形材料21を投入する。
【0092】
次いで、図6(b)に示すように、表面成形用金型31と裏面成形用金型32を締めて、これらの金型30を所定の圧力で加圧することにより、SMC成形材料21を加熱、加圧し、溶融流動させて、SMC成形材料21を金型30内に充填する。
次いで、図6(c)に示すように、SMC成形材料21が硬化して、SMC成形品11が形成された後、除圧して、表面成形用金型31と裏面成形用金型32を開く。
次いで、図6(d)に示すように、裏面成形用金型32から、裏面(他方の面)11bにリブ構造11cが形成されたSMC成形品11を取り外す。
【0093】
次いで、上述の第一の実施形態と同様にして、図7に示すように、金型30より取り出したSMC成形品11の一方の面11aに、接着性を向上するための表面処理12を施す(表面処理工程)。
この表面処理工程では、例えば、表面処理12が紫外線照射によってなされる場合、低圧水銀ランプ39によって、SMC成形品11の一方の面11aに所定量の紫外線を照射する。
ここで、SMC成形品11の一方の面11aに、接着性を向上するために表面処理12を施す範囲は、後段の人造大理石層13を形成する範囲と同じとし、その範囲を、SMC成形品11の一方の面11a全面、もしくは、SMC成形品11の一方の面11aの任意の箇所としてもよい。
【0094】
また、上記の工程とは別に、上述の第一の実施形態と同様にして、上記の人造大理石層13を形成するための熱硬化性樹脂組成物を調製する(樹脂組成物調製工程)。
【0095】
次いで、上述の第一の実施形態と同様にして、図8(a)〜(c)に示すように、SMC成形品11における表面処理12が施された面(一方の面)11aに対し間隙51を設けて対向するように、SMC成形品11と対向する面52aに、予め所定の厚みの透明ゲルコート層41が設けられた注型成形型52を配置し、SMC成形品11の一方の面11aに設けられた透明ゲルコート層41と、注型成形型52との間隙51に、熱硬化性樹脂組成物22を注型し、その熱硬化性樹脂組成物22を硬化することにより、上記の人造大理石層13を形成し、透明ゲルコート層41と人造大理石層13を接着一体化するとともに、人造大理石層13とSMC成形品11の一方の面11aを接着一体化し、人造大理石成形品40を成形する(人造大理石層成形工程)。
ここで、SMC成形品11の一方の面11aに、接着性を向上するために表面処理12を施す範囲および人造大理石層13を形成する範囲を同じとし、その範囲を、SMC成形品11の一方の面11a全面、もしくは、SMC成形品11の一方の面11aの任意の箇所としてもよい。
【0096】
注型成形型52としては、上述の第一の実施形態の注型成形型52と同様のものが用いられる。
また、注型成形型52には、SMC成形品11と対向する面52aから、この面52aとは反対側の面52bにわたって、注型成形型52を厚み方向に貫通する樹脂注入孔52cと空気排出孔52dが設けられている。これらの樹脂注入孔52cと空気排出孔52dは、間隙51に連通している。
また、樹脂注入孔52cは、注型成形型52におけるSMC成形品11と対向する面52aの中央部52eで、かつ、注型成形型52とSMC成形品11の間に配置されるパッキン53よりも内側の部分に設けられている。また、空気排出孔52dは、注型成形型52におけるSMC成形品11と対向する面52aの外縁部52fで、かつ、注型成形型52とSMC成形品11の間に配置されるパッキン54よりも内側の部分(注型成形型52の中央部側の部分)に設けられている。図8では、空気排出孔52dが、注型成形型54の肉厚の周縁部54Aの内面側に開口されて、パッキン53の内側に配置されている。これにより、熱硬化性樹脂組成物22を注型した際、注型成形型52外への熱硬化性樹脂組成物22の漏れを防ぐことができるとともに、間隙51内に気泡が残留するのを防ぐことができ、ひいては、間隙51内へ熱硬化性樹脂組成物22を十分に充填することができる。
【0097】
さらに、樹脂注入孔52c、空気排出孔52dは、それぞれ1箇所または2箇所以上設けられる。樹脂注入孔52cや空気排出孔52dを設ける位置および数は、SMC成形品11の形状や大きさにより適宜調整される。
また、SMC成形品11が深絞り形状である浴槽の場合、浴槽の排水口部分にも樹脂注入孔または空気排出孔を設けることにより、間隙51内への熱硬化性樹脂組成物22の充填性をさらに向上することができる。
ここで、透明ゲルコート層41が設けられた注型成形型52とSMC成形品11の間に配置されるパッキン53に囲まれた範囲を、SMC成形品11の一方の面11aに、接着性を向上するために表面処理12を施す範囲および人造大理石層13を形成する範囲と同じくするとともに、その範囲を、SMC成形品11の一方の面11a全面、もしくは、SMC成形品11の一方の面11aの任意の箇所としてもよい。
【0098】
この人造大理石層成形工程では、まず、上述の第一の実施形態と同様にして、図8(a)に示すように、SMC成形品11における表面処理12が施された面(一方の面)11aに対し間隙51を設けて対向するように、SMC成形品11と対向する面52aに、予め所定の厚みの透明ゲルコート層41が設けられた注型成形型52を配置した後、注型成形型52を型締し、SMC成形品11に対して注型成形型52を密着させて固定する。
このとき、注型成形型52におけるSMC成形品11の一方の面11aの外縁部と対向する部分、すなわち、注型成形型52におけるSMC成形品11と対向する面52aの外縁部52fで、かつ、注型成形型52とSMC成形品11の間にパッキン53を配置して、このパッキン53により間隙51を密閉する。
さらに、このパッキン53の外周で、かつ、注型成形型52とSMC成形品11の間に、スペーサー54を配置する。これにより、間隙51において、主に、注型成形型52とSMC成形品11において水平になっている部分(水平部)の厚みを調整することができる。
【0099】
また、スペーサー54の厚みは、0.5mm〜5.0mmであることが好ましい。
スペーサー54の厚みが0.5mm未満では、熱硬化性樹脂組成物22を注型する際の流動抵抗が高くなり、注型時間が長くなる。また、SMC成形品11の反りや注型成形型52の変形により、SMC成形品11の一方の面11aと注型成形型52が接触する箇所ができて、SMC成形品11と注型成形型52の間に熱硬化性樹脂組成物22が完全に充填されず、人造大理石層13が形成されない箇所が発生することがある。一方、スペーサー54の厚みが5.0mmを超えると、熱硬化性樹脂組成物22の充填量が増え、材料コストが増加する。
【0100】
なお、SMC成形品11が立ち面を有する立体形状の場合、スペーサー54による間隙51の大きさの調整では、注型成形型52とSMC成形品11の水平部における間隙51の大きさのみがスペーサー54の厚みと同寸法となる。一方、注型成形型52とSMC成形品11の傾斜部および垂直部の立ち面における間隙51の大きさは、スペーサー54の厚みよりも寸法が小さくなるため、必ずしもSMC成形品11の一方の面11aにおいて、間隙51の大きさが全面均一となるとは限らない。
【0101】
そこで、SMC成形品11が立ち面を有する立体形状の場合、注型成形型52の作製時に、その形状、寸法を調整することにより、SMC成形品11の一方の面11aにおいて、間隙51の大きさを全面均一とすることができる。
また、注型成形型52の作製時に、その形状、寸法を調整することにより、SMC成形品11の平面形状や立体形状に応じて、間隙51の任意の箇所において、大きさを大きくしたり、小さくしたりすることができる。例えば、人造大理石成形品40が浴槽である場合、外観を重視する上縁面のみ人造大理石層13の厚みを厚くし、立ち面や底面の厚みを薄くすることにより材料コスト、重量の増加を抑制できる。また、浴槽では、立ち面の厚みを厚くしないことにより段積み可能な形状を維持できる。
次いで、上述の第一の実施形態と同様にして、図8(b)に示すように、予めタンク55にて所定の温度に調節しておいた熱硬化性樹脂組成物22を、樹脂注入孔52cを介して、タンク55から間隙51内に注型する。
また、注型成形型52の作製時に、その形状、寸法を調整することにより、SMC成形品11の一方の面11a全面、もしくは、SMC成形品11の一方の面11aの任意の箇所に、人造大理石層13を形成することができる。例えば、人造大理石成形品40が浴槽である場合、外観を重視する上縁面のみ人造大理石層13を形成し、立ち面や底面には人造大理石層13を形成しないことにより、意匠的なアクセントを付与できるとともに、材料コスト、重量の増加をさらに抑制できる。
【0102】
次いで、上述の第一の実施形態と同様にして、間隙51内への熱硬化性樹脂組成物22の注型が完了した後、注型成形型52の温度を所定の温度に調節するか、あるいは、SMC成形品11、熱硬化性樹脂組成物22および注型成形型52からなる積層体を所定の温度の雰囲気に曝すことにより、熱硬化性樹脂組成物22を硬化させ、人造大理石層13を形成し、透明ゲルコート層41と人造大理石層13を接着一体化するとともに、人造大理石層13とSMC成形品11の一方の面11aを接着一体化し、人造大理石成形品40を成形する。
【0103】
次いで、上述の第一の実施形態と同様にして、図8(c)に示すように、SMC成形品11、人造大理石層13および透明ゲルコート層41を接着一体化してなる人造大理石成形品40から、注型成形型52を取り外した後、さらに、この人造大理石成形品40を、所定の温度の雰囲気に曝すことにより、人造大理石成形品40のアフターキュアを行う。
【0104】
この実施形態の人造大理石成形品の製造方法によれば、上述の第一の実施形態と同様に、人造大理石層13の成形工程において、既存の金型を使用することができ、1回の成形において、金型やプレス成形機の使用時間を短くすることができるとともに、SMC成形品11の生産性を低下させることなく、製造コストを抑えることができる。
【0105】
また、人造大理石層成形工程において、SMC成形品11の一方の面11a側(SMC成形品11の表面処理を施した面側)に相対する表面成形型52のみを用いることにより、新たな型を作製するための投資を抑えることができるとともに、注型成形型52は、従来の上下一対からなる注型成形型に比較して軽量で、かつ、取り扱い易い。また、既に製品として使用され、表面が劣化したSMC成形品11の一方の面11aに、相対する注型成形型52を用いることにより、使用後のSMC成形品11の一方の面11aにも容易に人造大理石層13を形成することができる。これにより、SMC成形品11の外観の回復や向上、さらには、汚れの付着や表面劣化の防止など、リフォーム、リフレッシュ、リサイクルなどを図ることができる。
【0106】
また、人造大理石層成形工程において、上述の第一の実施形態と同様に、SMC成形品11の他方の面11bに形成された寸法精度に優れるリブ構造11cも人造大理石成形品40に一体化することができる。
また、表面処理工程において、上述の第一の実施形態と同様に、SMC成形品11の一方の面11aに表面処理を施すことにより、人造大理石層13と、SMC成形品11の一方の面11aとの高い接着性が得られ、人造大理石成形品40の耐久性や信頼性を向上することができる。
【0107】
さらに、人造大理石層成形工程において、上述の第一の実施形態と同様に、間隙35を0.5mm〜5.0mmの範囲で調節することにより、人造大理石成形品40の機械的強度を確保しつつ、人造大理石成形品40の薄肉化や軽量化を図ることができる。また、一般的な注型成形によって製造された人造大理石成形品は、通常、厚みを10mm〜20mm程度とすることにより強度を確保しているため、重量が大きいのに対して、この実施形態の人造大理石成形品の製造方法によれば、人造大理石成形品40の薄肉化や軽量化を図れる。
【0108】
なお、この実施形態では、SMC成形品11を用いた人造大理石成形品40の製造方法を例示したが、本発明の人造大理石成形品はこれに限定されない。本発明の人造大理石成形品にあっては、SMC成形品の代わりに、BMC成形品を用いてもよい。
【実施例】
【0109】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0110】
「SMC材料の調製」
実施例1、2および比較例1、2において、下記の通りSMC成形材料を調製した。
スチレンモノマーに溶解した不飽和ポリエステル樹脂(商品名:PS−9415、ディーエイチ・マテリアル株式会社製)85質量部(スチレンモノマー60質量%)と、スチレンモノマーに溶解したポリスチレン15質量部(スチレンモノマー60質量%)との混合物100質量部に対して、硬化剤としてメチルエチルケトンパーオキサイド1.0質量部、重合禁止剤としてパラベンゾキノン0.77質量部、離型剤としてステアリン酸亜鉛2.5質量部、増粘剤として酸化マグネシウム2.0質量部、および、充填材として炭酸カルシウム150質量部を配合して、不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製した。
この不飽和ポリエステル樹脂組成物を、長さ25mmに切断したガラス繊維に含浸させて、SMC成形材料を調製した。
【0111】
「人造大理石層を形成する熱硬化樹脂組成物の調製」
実施例1、2および比較例1、2において、人造大理石層を形成する熱硬化樹脂組成物を調製した。
スチレンモノマーに溶解したビニルエステル樹脂(商品名:エクスドーマTP−835、ディーエイチ・マテリアル株式会社製)100質量部(スチレンモノマー40質量%)に対して、硬化剤としてビスパーオキシジカーボネイト1.5質量部、着色剤として酸化チタン含有顔料0.1質量部、および、充填材として水酸化アルムニウム100質量部を配合し、これらの材料を真空減圧状態にて攪拌混練し、熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0112】
「実施例1」
まず、図2(a)に示すように、145℃に温調した表面成形用金型31と、130℃に温調したリブ構造32aを有する裏面成形用金型32とからなる一対の金型30内に、成形後の厚みが4mmとなるように、所定の重量に計量したSMC成形材料21を投入した。
次いで、図2(b)に示すように、表面成形用金型31と裏面成形用金型32を締めて、これらの金型30を10MPaの圧力で加圧することにより、SMC成形材料21を加熱、加圧し、溶融流動させて、SMC成形材料21を金型30内に充填した後、その圧力を保持したまま5分間加圧した。
【0113】
次いで、図2(c)に示すように、SMC成形材料21が硬化して、SMC成形品11が形成された後、除圧して、表面成形用金型31と裏面成形用金型32を開いた。
次いで、図2(d)に示すように、裏面成形用金型32から、裏面(他方の面)11bにリブ構造11cが形成された、厚み4mmのSMC成形品11を取り外した。
次いで、図3に示すように、スプレーガン33により、金型30より取り出したSMC成形品11の一方の面11aに、ウレタン樹脂100質量部に対して、イソシアネート硬化剤25質量部を添加し、酢酸ブチル50質量部で希釈して調製したウレタン樹脂系のプライマーを塗布し、SMC成形品11の一方の面11aに表面処理12を施した。
【0114】
次いで、図4(a)に示すように、SMC成形品11における表面処理12を施した面(一方の面)11aに対し間隙35を設けて対向するように注型成形型34を配置した後、注型成形型34を型締し、SMC成形品11に対して注型成形型34を密着させて固定した。
このとき、注型成形型34におけるSMC成形品11の一方の面11aの外縁部と対向する部分、すなわち、注型成形型34におけるSMC成形品11と対向する面34aの外縁部34eで、かつ、注型成形型34とSMC成形品11の間にパッキン36を配置して、このパッキン36により間隙35を密閉した。
さらに、このパッキン36の外周で、かつ、注型成形型34とSMC成形品11の間に、厚み2mmのスペーサー37を配置した。これにより、間隙35の大きさを2mmとした。
【0115】
次いで、図4(b)に示すように、予め加圧タンクからなるタンク38にて40℃に調節しておいた熱硬化性樹脂組成物22に、圧縮空気により0.4MPaの空気圧を加えて、樹脂注入孔34cを介して、タンク38から間隙35内に熱硬化性樹脂組成物22を注型した。
次いで、間隙35内への熱硬化性樹脂組成物22の注型が完了した後、SMC成形品11、熱硬化性樹脂組成物22および注型成形型34からなる積層体を60℃の雰囲気に30分間曝して、熱硬化性樹脂組成物22を加熱することにより、熱硬化性樹脂組成物22を硬化させ、人造大理石層13を形成し、SMC成形品11と、熱硬化性樹脂組成物22が硬化してなる人造大理石層13とを接着一体化した。
【0116】
次いで、図4(c)に示すように、SMC成形品11と人造大理石層13を接着一体化してなる人造大理石成形品10から、注型成形型34を取り外した後、さらに、この人造大理石成形品10を、90℃の雰囲気に60分間曝すことにより、人造大理石成形品10のアフターキュアを行った。
得られた人造大理石成形品10は、水平面の厚みが4mmのSMC成形品11と、水平面の厚みが2mmの人造大理石層13とが、プライマーからなる表面処理12を介して接着一体化してなる厚みが6mmの積層体であった。
【0117】
また、得られた人造大理石成形品10は、人造大理石層13に透明感、深み感が有るとともに、SMC成形品11の一方の面11aと人造大理石層13の接着力も高いものであった。
得られた人造大理石成形品10について、人造大理石13とSMC成形品11の接着強度を、引張りせん断接着試験により測定したところ、人造大理石層13、プライマーからなる表面処理12を行ったSMC成形品11の接着界面での剥がれはなく、厚み4mmのSMC成形品11の材料破壊が生じたのみであった。その結果、5.0MPa以上の接着強度が得られた。
また、人造大理石成形品10の単位面積当たりの重量は、厚み6mmにて、10.3kg/mであり、人造大理石層13の表面から荷重を加え3点曲げ試験により測定した曲げ強さは、100MPaであった。一般的な注型成形によって製造された人造大理石成形品よりも薄肉かつ軽量でありながら、十分な強度があることが分かった。
【0118】
「実施例2」
まず、図6(a)に示すように、145℃に温調した表面成形用金型31と、130℃に温調したリブ構造32aを有する裏面成形用金型32とからなる一対の金型30内に、成形後の厚みが4mmとなるように、所定の重量に計量したSMC成形材料21を投入した。
次いで、図6(b)に示すように、表面成形用金型31と裏面成形用金型32を締めて、これらの金型30を10MPaの圧力で加圧することにより、SMC成形材料21を加熱、加圧し、溶融流動させて、SMC成形材料21を金型30内に充填した後、その圧力を保持したまま5分間加圧した。
【0119】
次いで、図6(c)に示すように、SMC成形材料21が硬化して、SMC成形品11が形成された後、除圧して、表面成形用金型31と裏面成形用金型32を開いた。
次いで、図6(d)に示すように、裏面成形用金型32から、裏面(他方の面)11bにリブ構造11cが形成された、厚み4mmのSMC成形品11を取り外した。
次いで、図7に示すように、照射強度80W/cmの低圧水銀ランプ39により、金型30より取り出したSMC成形品11の一方の面11aに、紫外線照射量が1000mJ/cmに達するまで照射し、SMC成形品11の一方の面11aに表面処理12を施した。この紫外線照射による表面処理により、SMC成形品11の一方の面11aの変色はほとんど認められなかった。
【0120】
次いで、図8(a)に示すように、SMC成形品11における表面処理12が施された面(一方の面)11aに対し間隙51を設けて対向するように、SMC成形品11と対向する面52aに、予め不飽和ポリエステル樹脂からなる、厚み0.5mmの透明ゲルコート層41が設けられた注型成形型52を配置した後、注型成形型52を型締し、SMC成形品11に対して注型成形型52を密着させて固定した。
このとき、注型成形型52におけるSMC成形品11の一方の面11aの外縁部と対向する部分、すなわち、注型成形型52におけるSMC成形品11と対向する面52aの外縁部52fで、かつ、注型成形型52とSMC成形品11の間にパッキン53を配置して、このパッキン53により間隙51を密閉した。
さらに、このパッキン53の外周で、かつ、注型成形型52とSMC成形品11の間に、厚み2.0mmのスペーサー54を配置した。これにより、間隙51の大きさを1.5mmとした。
【0121】
次いで、図8(b)に示すように、予め加圧タンクからなるタンク55にて40℃に調節しておいた熱硬化性樹脂組成物22に、圧縮空気により0.4MPaの空気圧を加えて、樹脂注入孔52cを介して、タンク55から間隙51内に熱硬化性樹脂組成物22を注型した。
次いで、間隙51内への熱硬化性樹脂組成物22の注型が完了した後、注型成形型52の温度を所定の温度に調節するか、あるいは、SMC成形品11、熱硬化性樹脂組成物22および注型成形型52からなる積層体を60℃の雰囲気に30分間曝して、熱硬化性樹脂組成物22を加熱することにより、熱硬化性樹脂組成物22を硬化させ、人造大理石層13を形成し、透明ゲルコート層41と人造大理石層13を接着一体化するとともに、人造大理石層13とSMC成形品11の一方の面11aを接着一体化した。
【0122】
次いで、図8(c)に示すように、SMC成形品11、人造大理石層13および透明ゲルコート層41を接着一体化してなる人造大理石成形品40から、注型成形型34を取り外した後、さらに、この人造大理石成形品40を、90℃の雰囲気に60分間曝すことにより、人造大理石成形品40のアフターキュアを行った。
得られた人造大理石成形品40は、水平面の厚みが4mmのSMC成形品11と、水平面の厚みが1.5mmの人造大理石層13とが、表面処理12を介して接着一体化してなり、さらに、人造大理石層13と、水平面の厚みが0.5mmの透明ゲルコート層41とが接着一体化された厚みが6mmの積層体であった。
【0123】
また、得られた人造大理石成形品40は、人造大理石層13に透明感、深み感が有るとともに、SMC成形品11の一方の面11aと人造大理石層13の接着力も高いものであった。
得られた人造大理石成形品40について、人造大理石13とSMC成形品11の接着強度を、引張りせん断接着試験により測定したところ、人造大理石層13、紫外線照射による表面処理12を行ったSMC成形品11の接着界面での剥がれはなく、厚み4mmのSMC成形品11の材料破壊が生じたのみであった。その結果、5.0MPa以上の接着強度が得られた。
また、人造大理石成形品40の単位面積当たりの重量は、厚み6mmにて、10kg/mであり、人造大理石層13の表面から荷重を加え3点曲げ試験により測定した曲げ強さは、100MPaであった。一般的な注型成形によって製造された人造大理石成形品よりも薄肉かつ軽量でありながら、十分な強度があることが分かった。
【0124】
「比較例1」
まず、図9(a)に示すように、145℃に温調した表面成形用金型31と、130℃に温調したリブ構造32aを有する裏面成形用金型32とからなる一対の金型30内に、成形後の厚みが4mmとなるように、所定の重量に計量したSMC成形材料21を投入した。
次いで、図9(b)に示すように、表面成形用金型31と裏面成形用金型32を締めて、これらの金型30を10MPaの圧力で加圧することにより、SMC成形材料21を加熱、加圧し、溶融流動させて、SMC成形材料21を金型30内に充填した後、その圧力を保持したまま5分間加圧した。
【0125】
次いで、図9(c)に示すように、SMC成形材料21が硬化して、SMC成形品11が形成された後、除圧して、表面成形用金型31と裏面成形用金型32を開いた。
次いで、図9(d)に示すように、裏面成形用金型32から、裏面(他方の面)11bにリブ構造11cが形成された、厚み4mmのSMC成形品11を取り外した。
【0126】
次いで、図10(a)に示すように、SMC成形品11の一方の面11aに対し間隙35を設けて対向するように注型成形型34を配置した後、注型成形型34を型締し、SMC成形品11に対して注型成形型34を密着させて固定した。
このとき、注型成形型34におけるSMC成形品11の一方の面11aの外縁部と対向する部分、すなわち、注型成形型34におけるSMC成形品11と対向する面34aの外縁部34eで、かつ、注型成形型34とSMC成形品11の間にパッキン36を配置して、このパッキン36により間隙35を密閉した。
さらに、このパッキン36の外周で、かつ、注型成形型34とSMC成形品11の間に、厚み2mmのスペーサー37を配置した。これにより、間隙35の大きさを2mmとした。
【0127】
次いで、図10(b)に示すように、予め加圧タンクからなるタンク38にて40℃に調節しておいた熱硬化性樹脂組成物22に、圧縮空気により0.4MPaの空気圧を加えて、樹脂注入孔34cを介して、タンク38から間隙35内に熱硬化性樹脂組成物22を注型した。
次いで、間隙35内への熱硬化性樹脂組成物22の注型が完了した後、SMC成形品11、熱硬化性樹脂組成物22および注型成形型34からなる積層体を60℃の雰囲気に30分間曝して、熱硬化性樹脂組成物22を加熱することにより、熱硬化性樹脂組成物22を硬化させ、人造大理石層13を形成し、SMC成形品11と、熱硬化性樹脂組成物22が硬化してなる人造大理石層13とを接着一体化した。
【0128】
次いで、図10(c)に示すように、SMC成形品11と人造大理石層13を接着一体化してなる人造大理石成形品60から、注型成形型34を取り外した後、さらに、この人造大理石成形品60を、90℃の雰囲気に60分間曝すことにより、人造大理石成形品60のアフターキュアを行った。
得られた人造大理石成形品60は、図11に示すように、水平面の厚みが4mmのSMC成形品11と、水平面の厚みが2mmの人造大理石層13とが接着一体化してなる厚みが6mmの積層体であった。
【0129】
また、得られた人造大理石成形品60は、人造大理石層13に透明感、深み感が有るものの、SMC成形品11の一方の面11aと人造大理石層13の接着力は低いものであった。
具体的には、得られた人造大理石成形品60について、人造大理石13とSMC成形品11の接着強度を、引張りせん断接着試験により測定したところ、人造大理石層13とSMC成形品11の接着界面で剥がれ、0.03MPaの接着強さを示したが、接着強度が十分でないことが分かった。
【0130】
「比較例2」
まず、図12(a)に示すように、スプレーガン71により、表面用注型成形型72の一方の面72aに、不飽和ポリエステル樹脂からなる透明ゲルコートを厚みが0.5mmとなるように塗布し後、この透明ゲルコートを指触硬化状態まで硬化させて、透明ゲルコート層73を形成した。
次いで、図12(b)に示すように、40℃に温調した表面用注型成形型72における透明ゲルコート層73が設けられた面(一方の面)72aに対し間隙を設けて対向するように、35℃に温調した裏面成形用金型74を配置して、表面用注型成形型72に裏面成形用金型74を密着させて固定した。
【0131】
このとき、裏面成形用金型74における表面用注型成形型72の一方の面72aの外縁部と対向する部分、すなわち、裏面成形用金型74における表面用注型成形型72と対向する面74aの外縁部74bで、かつ、裏面成形用金型74と表面用注型成形型72の間にパッキン75を配置して、このパッキン75により、裏面成形用金型74と表面用注型成形型72の間隙77を密閉した。
さらに、このパッキン75の外周で、かつ、裏面成形用金型74と表面用注型成形型72の間に、厚み12.0mmのスペーサー76を配置した。これにより、間隙77の大きさを11.5mmとした。
【0132】
次いで、図12(c)に示すように、予め加圧タンク78にて40℃に調節しておいた熱硬化性樹脂組成物22に、圧縮空気により0.6MPaの空気圧を加えて、裏面成形用金型74に設けられた樹脂注入孔74cを介して、加圧タンク78から間隙77内に熱硬化性樹脂組成物22を注型した。
次いで、間隙77内への熱硬化性樹脂組成物22の注型が完了した後、透明ゲルコート層73、熱硬化性樹脂組成物22、裏面成形用金型74および表面用注型成形型72からなる積層体を60℃の雰囲気に60分間曝して、熱硬化性樹脂組成物22を加熱することにより、熱硬化性樹脂組成物22を硬化させ、人造大理石層13を形成し、透明ゲルコート層73と人造大理石層13を接着一体化した。
【0133】
次いで、図12(d)に示すように、表面用注型成形型72から裏面用注型成形型74を取り外し、次いで、表面用注型成形型72から、透明ゲルコート層73と人造大理石層13の積層体を取り外した。
次いで、図13(a)に示すように、人造大理石層13における透明ゲルコート層73と接している面とは反対側の面13aに、着色した不飽和ポリエステル樹脂とガラス繊維強化材を積層し、厚み1.0mmのFRP補強層79を形成した。
その後、人造大理石層13、透明ゲルコート層73およびFRP補強層79を接着一体化してなる人造大理石成形品70を、90℃の雰囲気にて60分間曝すことにより、人造大理石成形品70のアフターキュアを行った。
【0134】
得られた人造大理石成形品70は、図13(b)、図14に示すように、水平面の厚みが0.5mmの透明ゲルコート層73と、水平面の厚みが11.5mmの人造大理石層13と、水平面の厚みが1.0mmのFRP補強層79とが接着一体化してなる厚みが13mmの積層体であった。
また、得られた人造大理石成形品70は、人造大理石層13に透明感、深み感が有るものの、単位面積当たりの重量は、厚み13mmにて、20kg/mであり、厚肉かつ重量が重いものであった。
なお、得られた人造大理石成形品70について、透明ゲルコート層73の表面から荷重を加え3点曲げ試験により測定した曲げ強さは、55MPaであった。曲げ強さは、実施例1および2と同様にして測定したものである。
【符号の説明】
【0135】
10・・・人造大理石成形品
11・・・SMC成形品
12・・・表面処理
13・・・人造大理石層
21・・・SMC成形材料
22・・・熱硬化性樹脂組成物
30・・・金型
31・・・表面成形用金型
32・・・裏面成形用金型
33・・・スプレーガン
34・・・注型成形型
35・・・間隙
36・・・パッキン
37・・・スペーサー
38・・・タンク
39・・・水銀ランプ
40・・・人造大理石成形品
41・・・透明ゲルコート層
51・・・間隙
52・・・注型成形型
53・・・パッキン
54・・・スペーサー
55・・・タンク
60・・・人造大理石成形品
70・・・人造大理石成形品
71・・・スプレーガン
72・・・表面用注型成形型
73・・・透明ゲルコート層
74・・・裏面成形用金型
75・・・パッキン
76・・・スペーサー
77・・・間隙
78・・・タンク
79・・・FRP補強層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理が施されたSMC成形品またはBMC成形品と、その表面処理が施された面を介して、前記SMC成形品またはBMC成形品の一面に接着一体化された熱硬化性樹脂組成物からなる人造大理石層と、を備えてなる人造大理石成形品であって、
金型内でSMC成形材料またはBMC成形材料を熱圧成形してSMC成形品またはBMC成形品を成形する工程と、
前記金型より取り出した前記SMC成形品またはBMC成形の表面に表面処理を施す工程と、
前記SMC成形品またはBMC成形品における表面処理が施された面の1つに対し間隙を設けて対向するように注型成形型を配置し、前記SMC成形品またはBMC成形品の表面処理を施した面の1つと、前記注型成形型との間隙に熱硬化性樹脂組成物を注型し、該熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより人造大理石層を形成し、該人造大理石層と、前記SMC成形品またはBMC成形品の表面処理を施した面の1つとを接着一体化する工程と、を少なくとも経て成形されたことを特徴とする人造大理石成形品。
【請求項2】
前記表面処理を施す工程において、プライマー塗布、サンディング、サンドブラスト、コロナ放電、紫外線照射またはイトロ処理から選択される1種または2種以上により前記表面処理が施されたことを特徴とする請求項1に記載の人造大理石成形品。
【請求項3】
前記接着一体化する工程において、前記間隙を0.5mm〜5.0mmの範囲で調節することにより、前記人造大理石層の厚みを0.5mm〜5.0mmとしたことを特徴とする請求項1または2に記載の人造大理石成形品。
【請求項4】
前記接着一体化する工程において、前記注型成形型と、前記SMC成形品またはBMC成形品との間にパッキンを配置し、前記注型成形型の周縁部の内面側で、かつ、前記パッキンの内側に開口された樹脂注入孔から、前記間隙に前記熱硬化性樹脂組成物を注型するとともに、前記周縁部の内面側で、かつ、前記パッキンの内側に開口された空気排出孔から、前記間隙内の空気を排出したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の人造大理石成形品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−143645(P2011−143645A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7020(P2010−7020)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(301050924)株式会社ハウステック (234)
【Fターム(参考)】