説明

代謝活性を有する微生物及びその製造方法

本発明は、代謝活性を有する細菌製剤、微生物含有補助食品や動物飼料などの該製剤含有組成物に関し、またその利用、例えば腸管微生物のバランスを乱す疾病の治療に関する。また、本発明は、複合糖及び単純糖の混合物を含有する微生物の成長基質、およびこの成長基質を用いた代謝活性を有する微生物製剤の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
本発明は、代謝活性を有する細菌製剤、微生物含有補助食品や動物飼料などの該製剤含有組成物に関し、またその利用、例えば疾病の治療に関する。本発明はまた、複合糖及び単純糖の混合物を含有する微生物の成長基質、及びこの成長基質を用いた代謝活性を有する微生物製剤の製造方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
微生物が補助食品として広く使用されている。その一例は、腸管細菌叢に有効に作用して下痢などの感染症に対する耐性を強化する善玉細菌である。善玉細菌はまた、血液の化学的性状や免疫調節に関係しているといわれている(参考文献中の期待される健康上の利点の欄に記載の文献を参照)。
【0003】
善玉細菌はヨーグルトなどの乳製品にも含まれ、健康上の利益を与える種としては、エンテロコッカス属や乳酸桿菌属の細菌があげられる。しかしながら、善玉菌乳製品の保存有効期間は短い。善玉細菌はまた、粉末又は錠剤として消費者に提供されている。善玉細菌は動物飼料中にも使用されている。
【0004】
現法、培養菌の保存には通常凍結乾燥が用いられている。本方法では、生物から水が昇華により取り除かれ、生物は水の添加により再生される。しかしながら、凍結乾燥された細菌は代謝活性を持たず、よく知られているように、凍結乾燥生成物は通常、室温で数週間保存するとそのほとんどの活性を失う(フォンセカ(Fonseca)他、及びムルガ(Murga)他)。
【0005】
さらに、市販の善玉細菌の多くはラベルに表示されている細菌すべてを含んでいないようで、もし含んでいても、その生菌数は非常に少ない(J.ハミルトン−ミラー(Hamilton-Miller))。
【0006】
本発明者らは、バランスの取れた複合及び単純糖質を含有する特定の成長基質を用いることで安定な代謝活性を有する生細菌製剤を製造することが可能であることを見出した。従来の善玉細菌とは異なり、本発明により提供される製剤は多数の安定な高活性細菌を含有しており、その細菌数は長期保存中も維持される。
(参考文献)
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【発明の開示】
【0007】
本発明の第1の側面によると、代謝活性のある生菌と、複合糖質及び単純糖質の混合物からなる成長基質から構成される製剤であって、該細菌が、約4℃でpHを調節して保存するとき、少なくとも5ヶ月間細菌数が一定である近平衡成長状態を示す製剤が提供される。
【0008】
本発明の本質的な特徴は、本製剤中でこの細菌培養物が少なくとも5ヶ月間、4℃でpH制御下で平衡状態を保ちうることである。この状態では、細菌の増殖率はその死滅率とほぼ同率に維持される。好ましい態様では、近平衡状態にある時、代謝活性細菌の数は1ミリリットル当たり108〜109の範囲に維持される。
【0009】
成長基質は、複合糖質(糖)及び単純糖質(糖)の混合物を含んでいる。ここで使用される「複合糖質」又は「複合糖」とは少糖類、多糖類を示し、一方、「単純糖質」又は「単純糖」とは単糖類及び二糖類を示す。
【0010】
成長基質中の糖の総量は20〜40mg/mlの範囲であり、還元糖の総量は5〜20mg/mlの範囲であることが好ましい。全糖の濃度は約30mg/mlであり、還元糖の濃度は約10mg/mlであることがより好ましい。
【0011】
この成長基質はまたタンパク質及びペプチド成分を含むことが好ましい。普通、基質中のタンパク質とペプチドの総量は1〜2mg/mlの範囲であり、高分子量ペプチド(分子量5000ダルトン以上)の総量は100〜300μg/mlの範囲である。ある特定の態様においては、タンパク質とペプチドの濃度は約2mg/mlであり、高分子量ペプチドの濃度は約250μg/mlである。
【0012】
成長基質は更に、他の成分、例えばセルロース、デンプン、β−グルカン、ペントサン、ポリフェノール、リボ核酸、脂質、リン酸塩、フラボノイド、アミノ酸、ビタミン(B1、B2、C、E)、ケイ酸塩、微量元素等を含有してもよい。
【0013】
成長基質は、発芽穀粒由来であることが好ましい。この成長基質は以下に記載の方法を用いて調製するのが最も好ましい。
【0014】
本発明の製剤は数ヶ月間、代謝活性細菌を活性の劣化または損失なしに保存することができるので、現行の善玉細菌製剤より優れている。現在用いられている凍結乾燥細菌製剤には、たとえあるとしても微量の代謝活性細菌しか含有していない。さらに、凍結乾燥細菌製剤を水で戻したときに特性や活性が幾分失われている。またこの再活性化された細菌の保存可能期間は短く、短期間しか保存することができない。凍結乾燥細菌製剤は、多くの場合水で戻さずに宿主動物中で使用される。水で戻せば、通常その日のうちに使用しなければならない。凍結乾燥細菌はその生存能力が急速に失われたり、微生物に汚染されたりするからである。
【0015】
既存の凍結乾燥製剤は、吸湿性(空気中の湿気を誘引する)という別の問題を有し、少しでも吸湿すると生存能力が急速に失われるので、開封後は数日以内に使用しなければならない。
【0016】
本発明による製剤によれば、上述した凍結乾燥細菌培養物の使用上の問題点を解決することができる。さらに、本発明による細菌培養物は、先行技術により調製された細菌よりはるかに強力であり、宿主動物に迅速に定着し、哺乳類の消化管における過酷な環境に耐えることが明らかとなった。(実施例5参照)。
【0017】
本発明者らは、複合糖及び単純糖、タンパク質、ペプチドからなるバランスのよい栄養素を含有した成長基質を用い、それをpH制御下で冷蔵保存することにより、従来用いられてきた製剤の問題点を克服した。これらの条件下では、製剤中の細菌はゆっくりと連続的に増殖する。この温度、pH、増殖期、基質をうまく組み合わせることにより、ほぼ平衡増殖状態とし、代謝活性のある生菌を少なくとも5ヶ月間維持することができる。
【0018】
ある好ましい様態では、製剤のpHは保存中、3.8〜4.5の範囲に維持される。
具体的には、例えば、製剤の保存中のpHは約4.0に維持される。製剤中のpHは、適当な一種または複数の緩衝液を添加することで適切に調節することができる。好ましい緩衝液としては、例えばクエン酸三ナトリウムやリン酸三ナトリウムの緩衝液があげられる。クエン酸三ナトリウムやリン酸三ナトリウムの緩衝液等の緩衝液の使用法は、文献中に標準法として記載されている。
【0019】
製剤中の細菌は乳酸菌であることが好ましい。この「乳酸菌(LAB)」とは、糖質を乳酸に発酵させるグラム陽性、カタラーゼ陰性、非運動性嫌気性の菌群を示す。このグループには、乳酸桿菌属、ラクトコッカス属、ペジオコックス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属細菌が含まれる。
【0020】
乳酸桿菌属又はエンテロコッカス属細菌が好ましい態様である。最も好ましくは、乳酸菌は、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)とラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)から選択される少なくとも1種の細菌である。エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)の組み合わせを用いるのが好ましい。
【0021】
本製剤に、例えば殺菌剤であるソルビン酸カリウムのような抗真菌剤及び/又はビタミンCなどの抗酸化剤を添加してもよい。
【0022】
本発明の第二の側面では、複合糖質を含む微生物(特に細菌)の成長基質を提供する。この成長基質は、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖からなる複合糖及び単純糖から構成される。
【0023】
この成長基質の好ましい特徴は、実質的には本発明の第一の側面に関連して述べたものと同一である。すなわち、成長基質中の糖質の総量(単純及び複合糖)は20〜40mg/mlの範囲が好ましく、より好ましくは25〜35mg/mlの範囲であり、最も好ましくは約30mg/mlである。この全糖質(糖)量のうち、還元糖(単糖類)の総量は5〜20mg/mlの範囲が好ましく、より好ましくは5〜15mg/mlの範囲であり、最も好ましくは約10mg/mlである。
【0024】
単純糖質及び複合糖質は成長基質の鍵成分であるが、成長基質には細菌増殖時の窒素供給源となるタンパク質などの成分がさらに含有されていることも好ましい。従って、成長基質にはタンパク質とペプチドが総量として1〜2mg/mlの範囲で含有されていることが好ましく、約2mg/ml含有されていることがより好ましい。このタンパク質/ペプチドの総量のうち、高分子量ペプチド(分子量5000ダルトン以上)量は、100〜300μg/mlの範囲であり、典型的には約250μg/mlである。本成長基質中のタンパク質やペプチドが厳密に何であるか(例えばアミノ酸配列)は、通常重要な問題ではない。
【0025】
成長基質は、他の成分、例えばセルロース、デンプン、β−グルカン、ペントサン、ポリフェノール、リボ核酸、脂質、リン酸塩、フラボノイド、アミノ酸、ビタミン(B1、B2、C、E)、ケイ酸塩、微量元素等を含有してもよい。この基質への添加物の組成やその相対量は、特に限定されるものではない。成長基質が、好ましくは天然植物原料由来、例えば発芽穀粒由来であれば、これらの添加物は通常、天然由来生体分子となる。
【0026】
基質の性能の改善及び/又は保存可能期間の延長のために、成長基質に緩衝剤や他の物質などの種々の添加剤を加えてもよい。このような添加剤には、例えば抗真菌剤や抗酸化剤なども含まれうる。
【0027】
ある好ましく様態では、成長基質が、粒状物質、例えば直径1mm以下の粒子を含有する。
【0028】
成長基質は、以下に記載された製法により発芽穀粒から調製されてもよい。しかし本発明は下記の方法に従って調製された基質に限定されるものではない。例えば必要な複合糖及び単純糖質と上記の添加物をいずれかを混合することにより、実質的に同等の特性を有する成長基質を人工的に調製してもよい。
【0029】
本発明の別の側面では、マッシング工程において発芽した穀物を水溶液と混合した後、時間と温度条件を調整して複合糖質の単純糖質への変換を制限し、複合糖質/単純糖質、タンパク質及びペプチドの混合物をえるとともに、処理済発芽穀物中から複合糖質/単純糖質、タンパク質及びペプチドの混合物を分離することで成長基質を得ることを特徴とする微生物の成長基質の調製方法を提供する。
【0030】
ここで用いられる「発芽穀物」と「モルト」という用語は、穀粒をモルト処理した産物のことである。モルト処理は醸造の分野でよく知られた方法である。
【0031】
通常モルト処理に穀物が発芽すると、貯蔵栄養素の代謝がおこる。発芽中の種子は、デンプンをマルトースに加水分解するα−アミラーゼなど、多くの酵素を産生し、貯蔵タンパク質や糖質を代謝する。ある好ましい実施形態ではオオムギを使用するが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の穀物、たとえばイネ、コムギ、トウモロコシ、カラスムギあるいはこれらの混合物を使用してもよい。発芽方法は一般によく知られている。本方法は、発芽穀粒を用いても、あるいは糖質、タンパク質、酵素からなる人工基質を用いてもよい。
【0032】
発芽穀粒は、次の処理の前に圧延することが好ましい。圧延により穀粒に亀裂を作ると水が浸入しやすくなり、マッシング工程での栄養素の抽出が容易になるが、引き続く処理済み発芽穀粒から成長基質の分離のためには、穀物を粉々に粉砕しないほうがよい。
【0033】
圧延されたモルトは、醸造におけるマッシュイン工程と類似したマッシング工程で処理される(例えば、クンツ(Kunze), W. Technology Brewing and Malting (1996)参照)。「マッシュイン」は醸造の分野でよく用いられる用語で、麦芽汁を得るために発芽穀粒を一定温度に加熱された水中で攪拌する過程をいう。マッシュイン工程で、発芽穀粒中の複合糖質はマルトースに分解される。
【0034】
本発明の方法には、発芽穀物を水溶液(典型的は水)と混合し、その混合物を種々に設定した温度で加熱するマッシング工程も含まれる。しかしながら、このマッシング工程は典型的な醸造法におけるマッシュインとは異なる。醸造者の目的は、次のアルコールへの発酵のために、できるだけ多くの糖質を単糖に変換することである。一方、本発明の方法によるマッシング工程では、単純(分解)糖への変換の程度を制限して、かなりの量の糖質がオリゴマーやポリマーのかたちで残るよう条件が設定されている。
【0035】
特に限定されるわけではないが、例えば、成長基質中の単純(還元)糖の割合が全糖質に対して10〜50%(w/w)になるように、糖質変換の程度が制限される。
【0036】
発芽穀粒と水の混合物を中間温度でねかすことなく、短時間、通常30分間、マッシング工程の温度を上げることで、複合糖から単純糖への変換を望みどおりに制限できる。伝統的な醸造法では60〜65℃と70〜74℃で熟成するが、この熟成の間に、酵素によって高濃度の単純糖(主にマルトース)が産生される。従って、マッシュイン工程には、60〜65℃及び/又は70〜74℃での熟成を含まれないことが好ましい。
【0037】
具体的には、マッシング工程では、発芽穀物を30〜45℃の範囲の温度の水と混合し、その混合物を1〜2時間熟成させ、20〜40分間好ましくは30分間かけて75〜85℃に昇温し、そしてその混合物を75〜85℃で60〜90分間熟成させる。この高温により、混合物中の酵素は不活化され、栄養素が抽出される。76〜80℃の高温、特に78℃の高温が一般に好ましい。製剤中の全酵素を失活させるためには、この工程が長時間高温であることが必要である。もちろん、この温度と時間は使用する穀物に応じて変更することが好ましい。
【0038】
ここに記載した方法により、複合糖から単純糖への変換量が制限される。さらに、30〜45℃の範囲の温度での最初の熟成は、アミノ酸やペプチドの産生を最大化できるという利点も有する。この温度範囲のうち高温、すなわち40〜45℃、あるいは特に45℃が通常よい。この工程の目的は、穀粒中の貯蔵タンパク質をアミノ酸とペプチドに加水分解することである。加水分解のための最適の時間と温度の組み合わせは、使用する穀粒に応じて変化する。
【0039】
微生物の増殖のために、窒素源となるタンパク質、ペプチド、アミノ酸が、成長基質中に高濃度に存在することが望ましい。アルコール製造のための発酵を目的とする麦芽汁では高濃度のタンパク質やアミノ酸を含有する必要がないため、伝統的な醸造におけるマッシュイン法にはこの範囲の温度での熟成は含まれていない。
【0040】
マッシング工程が完了すれば、すなわちすべての必要な栄養素が「処理済み」発芽穀粒から抽出されれば、複合糖及び単純糖質、タンパク質、ペプチドからなる混合物を処理済み穀粒から分離し、使用可能な成長基質を得る。通常、粗いろ過、例えばウェッジワイヤーバスケットのような1mmフィルターを用いてろ過をし、粗粒子を含んだ溶液を得る。標準的な醸造法でつくられた麦芽汁の場合とは異なり、この成長基質は清澄ではないことが、本発明の方法の特徴である。伝統的な醸造法では通常全ての粗粒子が除かれるので、麦芽汁は透明な液体となる。
【0041】
成長基質中にいくらかの粒状物質が存在すると徐放性の栄養素と培養細菌の付着する粒子表面が提供されるため、本発明の方法によって得られた成長基質は続く細菌培養に有利に使用される。
【0042】
もし必要なら、本発明によって調製された成長基質を使用前に殺菌してもよい。例えば、約1時間煮沸滅菌するか、120℃で約20分間高圧滅菌する。
【0043】
例えば、本成長基質を引き続き、本発明の第一の側面に従って細菌製剤の製造に用いる場合、一種又は多種の緩衝液成分を成長基質に添加してもよい。好ましい緩衝液は、本発明の第一の側面の説明に記載されている。成長基質を殺菌する場合は、この緩衝液は殺菌前・中・後のいずれに添加してもよい。
【0044】
本発明の更に他の側面は、代謝活性のある安定な微生物製剤の調製方法であって、微生物を複合糖及び単純糖、タンパク質、ペプチドから構成される成長基質中で培養して微生物製剤を調整した後、該製剤を約4℃に冷却して微生物に近平衡成長状態をとらせて該製剤を約4℃でpHを調整して保存した場合微生物製剤中の細菌数が少なくとも5ヶ月間一定であるようにさせ、また、必要に応じて、さらに約4℃で保存することからなることを特徴とする代謝活性のある安定な微生物製剤の製造方法である。
【0045】
好ましくは、その微生物が細菌である。
【0046】
具体例には、細菌を、1ミリリットル当たり2×108〜1×109コロニー形成単位の濃度に達するまで成長基質中で培養する。この時点で、培養物(又は発酵液)を約4℃に冷却し、温度、pH、増殖相、残りの基質成分を組み合わせて、長期保存中に近平衡成長状態となる平衡状態とする。少なくとも5ヶ月間続くこの近平衡状態において、代謝活性のある細菌の数はおおむね1ミリリットル当たり108〜109に維持される。しかしながら、予測されるように、近平衡状態にある生菌の正確な数は、使用する細菌種によりいくらか変動しうる。
【0047】
この本発明の側面による方法には、保存中に近平衡状態となるような濃度に達するまで微生物(例えば細菌)を成長基質中で増殖させる「増殖工程」が含まれている。使用する成長基質が複合糖及び単純糖などを含むバランスのよい栄養源であり、この中に微生物のエネルギー源となる高濃度の複合糖が含まれていることが、本方法の一つの重要な特徴である。この混合物は、増殖工程で直ちに消費されるエネルギーを制限する。この成長基質の成分と好ましい特徴は、本発明の第一及び第二の側面の説明において記述したとおりである。成長基質はここに記載した製造方法を用いて発芽穀粒から調製されることが好ましい。しかし、本方法に従って調製された成長基質を用いることに厳しく限定するものではない。複合糖及び単純糖質、タンパク質、ペプチドを必要な比率で混合した人工的な成長基質を用いても、同様な結果が得られる。
【0048】
増殖工程では、微生物をあまりにも長期間培養して系が酸性条件とならないように注意を払わなければならない。さもなければ、増殖が阻害され、製剤の保存期間が短縮することとなる。一方、増殖工程をあまり早く終了すると、バイオマスの産生量が限定されることとなる。微生物培養中の製剤のpHは、近平衡状態の指標として使用できる。例えば、乳酸菌はpHが4.5±0.3になるまで培養する。
【0049】
通常、成長基質のpHは使用する微生物(例えば細菌)の至適pHに応じて変化する。例えば(乳酸菌の場合)、保存中のpHは3.8〜4.5に維持すべきである。微生物培養中またその後の保存中のpHを調節するために、緩衝剤、例えばクエン酸三ナトリウムやリン酸三ナトリウムを成長基質に加えることが好ましい。
【0050】
微生物(例えば細菌)を増殖させ近平衡状態にもっていく正確な時期は、使用する種により異なる。微生物の培養はいかなる培養装置ででも実施可能である。例えば、培養を醗酵槽中で醗酵により行うことができる。
【0051】
好ましくは、微生物として乳酸菌を使用する。エンテロコッカス属と乳酸桿菌属の細菌が好ましい。これらの細菌を、大部分が単純糖からなる「通常の」培地で培養すると、エネルギーの過剰供給により乳酸菌は過剰な酸を産生し、培養物のバイオマス産生量が制限され、また培養物の保存期間が短縮することとなる。その一方、本発明の方法の成長基質中に存在する糖の複合混合物は、初期増殖工程での増殖及び製品保存中の品質維持のためのエネルギー供給源となる。
【0052】
本発明によれば、増殖工程では単一の細菌種(又は他の微生物)を使用することができる。好ましくは、2種以上の異なる細菌種(微生物種)を異なる培地中で別々に培養し、冷却工程の前後に混合する。2種以上の異なる細菌種の個々の培地に用いられる成長基質は同じ成分であっても異なった成分であってもよい。したがって、個々の細菌種に応じて培養条件を最適化して培養した後、培養物を混合し個々の種の平衡増殖が維持できる条件で保存することができる。
【0053】
あるいは、もし増殖速度が同等で一方の種が優勢にならないなら、2種以上の異なった細菌種(あるいは他の微生物)を同じ成長基質の単一の培地中で一緒に培養することができる。増殖工程に続いて、製剤を標準法によって分析し、微生物学的純度及び微生物数を決定する。2種以上の異なった組み合わせの微生物(例えば細菌)を別の成長基質中で増殖させ、その後培養物を合せて最終的な生成物とすることも可能である。また、混合培養物を、単一細菌種の培養物と混合することも可能である。
【0054】
本方法の増殖工程のためのスタータ・カルチャーとしては、例えば、凍結乾燥細菌あるいは液体培養物が含まれる。
【0055】
本発明の方法による微生物製剤は、冷却工程の直後に使用してもよいが、通常は使用されるまで保存される。培養物の近平衡成長状態を維持するための保存最適温度は約4℃であるが、当業者には明らかなように、この保存温度はある程度変動する。便宜上、本方法により製造された近平衡状態にある培養物は、長期保存前に、適当な量に分割して無菌分包してもよい。
【0056】
本発明の方法の鍵となる利点は、この近平衡培養物が、長期間、通常少なくとも5ヶ月間、活性や形状を維持することである。しかしながら、もちろん培養物を使用前に少なくとも5ヶ月間保存しなければいけないわけではない。
【0057】
真菌や酵母の増殖を抑えるために、抗真菌剤、例えば殺菌作用のあるソルビン酸カリウムを保存前に加えてもよい。抗真菌剤は主に、一旦製品容器を開封後、末端消費者の使用中におこる酵母菌や真菌の汚染を防止するために用いられる。さらに、抗酸化剤、例えばビタミンCは保存中製品の劣化防止のために加えることができる。他の既知の薬剤も、抗真菌剤や抗酸化剤として使用することができる。
【0058】
本発明の更に他の側面は、活性増殖工程を必要としない、生存可能で、代謝活性のある、安定な微生物製剤の別の製造法に関する。本方法は、複合糖及び単純糖、タンパク質、ペプチドからなる成長基質に、約4℃でpHを調節すれば少なくとも5ヶ月間製剤中の微生物数が一定数となる近平衡成長状態となるように微生物を加えて微生物製剤を調製する工程と、その製剤を約4℃で保存する工程により構成される。
【0059】
微生物は細菌であること好ましい。好ましい細菌種は活性増殖工程を必要とする方法の説明で記載したとおりである。
【0060】
本方法では、近平衡増殖状態の条件となる前に微生物(例えば細菌)を成長基質中で培養する必要がない。その代わりに、出発微生物(例えば細菌)のスタータ・カルチャーを、製剤を4℃でpHを調節すれば少なくとも5ヶ月間平衡状態となるような濃度で、成長基質に接種する。本方法のスタータ・カルチャーは、例えば、凍結乾燥細菌あるいは液体培養物である。成長基質に1種以上の細菌を接種してもよい。スタータ・カルチャーの生菌数は1ミリリットル当たり108を超えることが好ましい。
【0061】
成長基質中の栄養素や温度、pH、増殖期が複合的に作用して、近平衡状態に達する。少なくとも5ヶ月間にわたる近平衡状態中は、代謝活性のある細菌数は、1ミリリットル当たり108〜109の範囲の一定レベルに維持すべきである。近平衡状態における生菌の正確な数は、使用する細菌種によって変動しうる。スタータ・カルチャーの正確な生菌濃度と成長基質のpHも、使用する細菌種により変化しうる。
【0062】
一部は異なるものの、増殖工程を必要とする方法で得られる近平衡培養物に関する特長は、本方法により得られる近平衡培養物に当てはまる。すなわち、保存中の近平衡培養物のpHは3.8〜4.5とすることが好ましい。保存中のpHの調節に、クエン酸三ナトリウムやリン酸三ナトリウムなどの緩衝剤を使用することが好ましい。
【0063】
微生物としては乳酸菌を用いることが好ましい。エンテロコッカス属と乳酸桿菌細菌が好ましい。
【0064】
本方法で用いられる成長基質の好ましい特徴は、本発明の第二側面に関連して上述したとおりである。また、成長基質を上記の方法を用いて発芽穀粒から調製することは好ましいことであるが、これは必須ではない。
【代謝活性細菌製剤の使用法】
【0065】
善玉細菌の健康上の利点はよく知られている(例えば、Marteau, P. and Rambaud, J-C, (1996) “Therapeutic applications of probiotics in humans” in Leeds, A. R. and Rowland、I. R. (eds.) Gut flora and health - past, present and future, Royal Society of Medicine Press Limited, London; Stark、B. A. and Wilkinson, (eds.) (1989) Probiotics. Theory and Applications,参照)。善玉細菌は、腸内細菌叢に影響を与える下痢や便秘、過敏性腸症候群、がんの治療及び予防、他の疾病の治療に有効であることが明らかとなっている。
【0066】
従って、本発明により提供される細菌製剤は、腸内細菌叢に影響される疾病の治療又は予防に特に有用であり、またより一般的には健康な微生物叢の維持に有効である。
【0067】
本発明は他の側面において、必要に応じて本発明による代謝活性のある安定な細菌製剤を有効量投与することにより、ヒトや動物の腸内微生物のバランスの乱れを引き起こす疾患を治療し予防する方法を提供する。
【0068】
特に、本発明は慢性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎あるいはクローン病の予防や治療に関連する。さらに本発明による細菌培養物を、特定の疾病の治療よりも、むしろ健康な微生物叢の維持を目的としてヒトや動物(例えば哺乳類や鳥類)に投与することができる。
【0069】
他の実施形態においては、本発明はまた、本発明による代謝活性のある安定な細菌製剤の腸内細菌叢に影響を及ぼす疾病の治療薬としての使用に関する。
【0070】
この細菌製剤をそのまま例えば善玉菌サプリメントとして使用可能であり、あるいは、他成分を混合したり、あるいは他成分と混合することなく併用して、ヒトや動物へ投与してもよい。家畜へ使用する場合、この細菌製剤を通常の動物飼料に添加するのが便利であろう。畜産分野では、この製剤は鳥類、特に商業飼育の家禽類(下記実施例に表示)や、ウシ、ヒツジ、ウマ、ネコ、イヌなどの哺乳類の治療に特に有用である。
【0071】
ヒトに使用する場合、この細菌製剤をそのまま投与してもよいし、あるいは他の成分を混合あるいは併用して投与してもよい。したがって、本発明には、本発明による細菌製剤に1種以上の他の成分を加えた組成物も含まれる。例えば、ヒトへの投与の際の嗜好性の改良のため、他の成分を添加してもよい。可能なら、本発明による製剤を、製剤中の生菌数に影響がでないなら、ヒト消費用の食品や飲料に添加してもよい。
【0072】
ヒト及び/又は家畜への使用においては、本発明による製剤の1回服用量を単独で、あるいは1種以上の薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤あるいは担体と共に分包することが便利である。前述のように、このような製剤により微生物製剤中の細菌数に悪影響が出てはならない。
【0073】
以下に、本発明を下記実施例および以下の図を参照して説明する。
【0074】
〔実施例1:オオムギ由来培養液を用いた成長基質の製造〕
(A)発芽(モルト化)
{1日目}
オオムギを、そのロットに応じて水中に2〜24時間浸漬した。発芽期における汚染菌の増殖を防ぐために、0.1%(w/v)の次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)を水に加えてもよい。4時間後、水を除き、残った麦粒を10〜30℃の室温で約1日間静置した。
【0075】
{2日目}
上記麦粒をさらに清澄水に4時間浸漬した。この水及び以降の使用される水に、過酸化水素(0.1%w/v)を加えてもよい。過酸化水素は発芽中の麦粒に酸素を供給するとともに殺菌剤としても作用する。代わりに次亜塩素酸ナトリウムを用いてもよい。4時間後、水を除き、麦粒を約1日間静置した。時々(例えば4時間ごと)、オオムギを攪拌すれば、ガス交換が速まり、酸素が供給され、二酸化炭素が除去されることになるので、オオムギの発芽が促進される。
【0076】
{3日目以降}
浸漬、排水、静置のサイクルを、発芽麦粒上の細根の長さが2〜4mmになるまで繰り返した。この成長段階では、麦粒は貯蔵栄養素を代謝するために酵素を産生している。これらの酵素は、マッシュインの際に、増殖培養液の産生に重要な役割を果たす。細根が数ミリメートルの長さに達するまでのこの発芽工程を進め、麦粒に更に大きな変化をもたらせてもよい。しかしながら、この過成長では、栄養素が発芽や発根に使用されるだけで、発酵には用いられない。
【0077】
(B)圧延
発芽が十分に進んだ後、麦粒をローラー製粉機を用いて粉砕した。製粉機は、麦粒が粉末化あるいは完全に扁平化するのではなく、ひび割れる程度に調製した。麦粒がひび割れることにより、マッシュインの際に水が浸入や栄養素の抽出が容易となり、また粉体化していないのでろ過が容易である。
【0078】
(C)成長基質の調製
発芽しひび割れした麦粒を、45℃で十分な量の水に浸漬し、混合物を45℃で1時間放置した。
【0079】
その後、30分以上かけて78℃まで加熱した。
【0080】
その混合物を78℃で1時間静置した。78℃で静置した後、処理済みの麦粒をろ過により分離した。比較的粗いフィルター(例えば、開口径1mmのウェッジワイヤーバスケット)を用いた結果、かなりの浮遊物質を含む懸濁液を得た。処理済み麦粒を廃棄し、懸濁液を加熱殺菌した。加熱殺菌のために懸濁液を45分煮沸した。次いで、緩衝液(0.5%(w/v)クエン酸三ナトリウム)を加え、混合物をさらに15分煮沸して、最終的な成長基質を得た。
【0081】
〔実施例2:成長基質の分析〕
(a)糖質の分析:
全糖質含量を、グルコースを比較標準物質として用いて、フェノール硫酸法により測定した(Dubois, M., Gilles, K. A., Hamilton、J. K., Rebers, P. A. and Smith, F. (1956) Analytical Chemistry, vol. 28, p.350)。
【0082】
還元糖はグルコースを比較標準物質として、ネルソン・ソモギ(Nelson-Somogyi)法に準じて測定した(Somogyi,M. (1952) Journal of Biological Chemistry., vol. 195., p.19)。
【0083】
{結果:}
基質中の全糖質は20〜40mg/mlの範囲にある。
還元糖は5〜20mg/mlの範囲にある。
【0084】
(b)タンパク質及びペプチドの分析:
総タンパク質量を、ウシ血清アルブミンを比較標準物質として、二種の測定法により測定した。
(i)ビウレット試薬(Itzhaki,R. F & Gill, D. M. (1964) Analytical Biochemistry, Vol. 9., p.401-410)。
(ii)オオニシ及びバールによる改良ローリー法(Ohnishi, S. T. & Barr, J. K. (1978) Journal of Biological Chemistry Vol. 193, p.265)。
【0085】
分子量5000ダルトン以上のペプチドは、ブラッドフォード試薬を用いて測定した(Bradford, M. M. (1976) Analytical Biochemistry, Vol. 72, p.248-254)。
【0086】
{結果:}
総タンパク質及びペプチド量は1〜2mg/mlの範囲にある。
高分子量ペプチド(5000ダルトン以上)は100〜300μg/mlの範囲にある。
【0087】
〔実施例3:代謝活性細菌培養物の生産〕
(A)培養
実施例1に従って調製した成長基質を37℃に冷却し、細菌培養物を加えた。好ましい種菌の例としては、凍結乾燥細菌又は液体スタータ・カルチャー(一般的には栄養培地中で1晩培養された1%(v/v)の培養物)があげられる。
【0088】
本実施例では、下記の細菌を2個の容器中で培養した。
(i)エンテロコッカス・フェシウム、ラクトバチルス・プランタラム
(ii)ラクトバチルス・カゼイ
【0089】
培養は、pHが4.5±0.3になるまで16−20時間行った。この培養混合物を4℃に冷却し、標準的な方法で品質を評価した(微生物学的純度及び細菌数の評価)。
【0090】
この時点で、殺菌剤であるソルビン酸カリウムを培養培地に加えてもよい(最終濃度0.005%w/v)。この処理により、末端ユーザーの取扱い中の汚染により引き起こされる真菌又は酵母菌の増殖を防ぐことができる。また、ビタミンCを抗酸化剤として加えてもよい(最終濃度0.01%w/v)。
【0091】
必要であれば、品質保証試験を行ったうえで、異なる培養物を混合し、複雑な組成の細菌混合物を得ることもできる。
【0092】
本実施例では、2種の培養物の混合によりエンテロコッカス・フェシウム、ラクトバチルス・プランタラム及びラクトバチルス・カゼイを含む最終生成物を得た。
【0093】
〔実施例4:代謝活性培養物の保存有効期間〕
代謝活性培養物の保存有効期間を評価するために、実施例2で得られたエンテロコッカス・フェシウム、ラクトバチルス・プランタラム及びラクトバチルス・カゼイからなる細菌培養物を4℃(±1℃)で保管した。1週間おきに試料を採取し、0.1%(w/v)ペプトン水で段階希釈した試料100μlを寒天培地上に広げた。シャーレを約48時間、約37℃で培養し、細菌のコロニーを数えた。
【0094】
{結果}
下記の結果は、本発明方法で調製された細菌の保存有効期間を1週間1ミリリットルあたりのコロニー形成単位数(図2も参照)として示したものである。バッチA及びBはここに記載された方法と同じ方法で行ったが、異なった日に調製された。

E.f:エンテロコッカス・フェシウム
L.p:ラクトバチルス・プランタラム
L.c:ラクトバチルス・カゼイ
LAB:乳酸菌
Cfu per ml:1ミリリットル当たりのコロニー形成単位数
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
〔実施例5:代謝活性培養物及び凍結乾燥細菌の強度評価〕
この一連の実験においては、ラクトバチルス・プランタラムの単一株を培地に接種して用いた。約37℃での増殖を、600nmでの吸光度により測定した(また寒天培地上に希釈液を塗布しコロニー数を数える方法によっても評価した)。
【0098】
「湿」とは、細菌の液体培養物を示す(本出願特許に記載の方法による)。「乾」とは、特定の培地で培養する前の、MRS培地(ド・マン、ロゴサ、シャープ培地)中で培養した細菌の凍結乾燥製剤を示す。同数の生きた「湿」及び「乾」細菌を各培養に使用した。
【0099】
(1)栄養分の多い生育しやすい培養液中での培養
細菌をMRS培地に接種し、その増殖を観測した(x1=最終濃度で1×107cfu/mlの種菌;x2=2×107cfu/ml)。結果を図1aに示す。第一の成長曲線は、良好な環境においては、液体培養物が凍結乾燥製剤より増殖が早いことを示している。凍結乾燥製剤では、休眠中の細菌が再水和されその代謝活動が再起動するのに時間がかかるためと考えられる。
【0100】
(2)酸の影響
1%(v/v)の液体培養物又は凍結乾燥細菌の懸濁液を、前もってHClで種々のpHに調節したMRS培地に加えた。細菌をこれらの酸性培地中で1時間培養し、試料をMRS−寒天培地上で計数した。
【0101】
【表3】

【0102】
この結果は、酸性環境では「湿」細菌の生存率が「乾」細菌のそれより高いことを示している。胃ではpHが2以下になるので、このことは明らかに胃を通過する際の細菌の生存度及び適応度に相関する。
【0103】
(3)pH及び胆汁酸塩の複合的影響
更に過酷な条件として、「湿」及び「乾」細菌製剤の増殖を下記の条件において比較した。
(a)MRS培地のみ(図1b)
(b)0.5%(w/v)胆汁酸塩(Oxoid L55)を添加したMRS培地(図1c)
(c)pH3.0のMRS培地で1時間培養後、胆汁酸塩を加えたMRS培地で培養(図1d)
【0104】
これらの実験結果より、次のことがわかる。
・「湿」細菌は「乾」細菌より成長が早い。
・酸への暴露は「湿」細菌より「乾」細菌に、より有害な影響を与える。
・胆汁酸塩は両方の細菌の増殖を阻害するが、「湿」細菌より「乾」細菌に、より有害な影響を与えるようである。
・酸に続く胆汁酸塩での処理による複合的影響で、「湿」細菌は増殖速度が抑えられるが、「乾」細菌は死滅する(寒天培地上でのコロニーの消失により判定)。
【0105】
pH及び胆汁酸への耐性は確かに重要な問題であるが、これ以外にも、共生細菌が直面する、化学的にも微生物学的にも過酷な条件が多数存在する。したがって、単純にグラム又はmlあたりのコロニー形成単位数によって判定する細菌の生存度や菌数は、善玉細菌製剤としての適性の1つの指標に過ぎない。もし細菌が宿主に入る際に活性な状態でなければ、細菌はコロニーを形成する前に、死滅するか消化管内に奥深く入り込んでしまう可能性が高い。従って、善玉細菌が宿主に入る際に代謝活性な状態であれば、善玉細菌が宿主に定着しやすくなる。本発明によれば、細菌は生きており代謝活性を有しているで、胃腸管内の過酷な環境に耐えることができる。製品が代謝活性を有するため、宿主において生存しコロニーを形成する可能性が高くなる。
【0106】
〔実施例6:ニワトリ腸微生物叢に対する影響〕
(投与及び方法:)
乳酸菌であるE. faecium、L. plantarum、L. casei、L. acidophilusを含む善玉細菌製剤を、ここに記載の方法に従って調製した。善玉細菌製剤により市販の家禽(ブロイラー)の腸内細菌叢を変化させることができるか試験した。
【0107】
(ニワトリの処置:)
ニワトリに、抗生物質のリンコスペクチンを1日目(日齢)から3日目まで投与した。
4日目は何もしなかった。
5日目、半数の鶏舎には、ニワトリ5000羽あたり1リットルの割合で上記製剤を投与した。残りの鶏舎は対照群とした。
6日目、各群から無作為にニワトリ6羽を選択し、殺し、その腸内細菌叢を調べた。(各群の複数のニワトリの組織試料を保存し、各群から3つの試料を作成した)。
【0108】
(微生物学的分析:)
分析対象とした消化器の範囲は、小腸開始部から卵黄嚢の結合部位に至る腸管上部である。
【0109】
ニワトリの腸組織と内容物を滅菌ペプトン水に浸漬、希釈した後、種々の半選択寒天培地に広げた。シャーレを培養後、コロニーの特徴と数を記録し、また細菌の顕微鏡観察を行った。乳酸菌種の同定は、コロニーの特徴、細胞の形態、糖質の発酵特性を調べることにより行った(後者はビオメリュー社の「api50CH」検査キットを用いた)。
【0110】
(結果:)
結果を図3に示す。
L1〜L3:善玉菌処置を行ったニワトリ(第1〜3対)
C1〜C3:対象群のニワトリ(第1〜3対)
SI:小腸
cfu:コロニー形成単位数
【0111】
予想通り、対照群、善玉菌処置群ともに、消化管中には多様な微生物が存在した。全体的には、両群ともに細菌の数及び種類は類似していたが、特定の細菌種の分布や量にはいくらかの有意差があった。
【0112】
(乳酸菌)
処理群と対照群とでは、乳酸菌(LAB)数に明らかな相違がみられた。両群の全LAB量は同等であるが、対照群の細菌叢は単一種が優勢であるのに対し、善玉菌処置群のニワトリでは広範な種が混在していた。
【0113】
〔実施例7:ダチョウひな鳥における善玉細菌製剤の影響〕
本発明による製剤の効果を、ダチョウひな鳥において評価した。孵化4日目の下痢をしているダチョウを用いて、4週間にわたり試験した。1つ目のダチョウ群には本発明による製剤を、2つ目の群には広スペクトル抗生物質を、3つ目の群にはビタミンとアミノ酸のサプリメントを投与した。試験結果によると、本発明の製剤の投与群では抗生物質投与群と比較して死亡率が67%減少し、本製剤を投与することにより、便秘、下痢、腸鬱血、腸運動の異常、腸脱出症などの症状が緩和されていることがわかる。さらに、善玉細菌製剤投与群では対照群と比較して、体重が27%増加した。
【0114】
第二の試験として本発明の製剤100mlを家禽に投与したところ、善玉菌製剤の投与で、対照群と比較して繁殖力の増大が認められた。
【0115】
従ってこれらの結果から、本発明による善玉細菌製剤の投与により生育速度、罹病率、死亡率が影響を受けることが明らかとなった。
【0116】
〔実施例8:哺乳類における善玉細菌製剤の治療効果〕
別途、慢性腸炎のネコ及びイヌに対する本発明の製剤の影響を検討したところ、正常な腸内細菌叢への回復に有用であることが明らかとなった。
【0117】
ヒトでの試験において、本製剤が急性下痢や慢性腸不全の改善に有効であることが示された。
【0118】
これらの結果は、本方法による製品により、ヒトの急性及び慢性胃腸障害(過敏性腸症候群及び炎症性腸疾患、食中毒、感染性の下痢、便秘を含む)が改善されることを示唆している。これまでに得られた結果を確認するために、更なる試験を現在実施中である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1a−1d】本方法によるラクトバチルス・プランタラムの「湿」培養液とその「乾」凍結乾燥製体の活性を比較している。最初の2つの成長曲線(図1a及び図1b)から、好ましい環境においては、本発明による細菌製剤の成長が凍結乾燥製剤より早いことがわかる。図1cの成長曲線では、本方法による「湿」ラクトバチルス・プランタラムと「乾」凍結乾燥製剤の胆汁酸塩を添加した培養液中での増殖を比較している。図1dでは、本方法による「湿」ラクトバチルス・プランタラムと「乾」凍結乾燥製剤の増殖を、哺乳類の消化管環境に類似した低pH環境下、胆汁酸塩存在下で比較している。この結果、本発明による細菌製剤が劣悪な環境に耐性が強いことがわかる。
【図2a−2b】本発明により製造した細菌の保存有効を示す。
【図3】ニワトリ小腸中の細菌のコロニー形成数を示す。
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】

【図2a】

【図2b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
代謝活性のある生菌と、複合糖及び単純糖、タンパク質、ペプチドからなる成長基質から構成される製剤であって、その製剤中の細菌が、約4℃でpHを調節して保存するとき少なくとも5ヶ月間細菌数が一定である近平衡成長状態を示すことを特徴とする、製剤。
【請求項2】
約4℃でpHを調節して保存するとき、1ミリリットル当たりの生菌数が、少なくとも5ヶ月間、108〜109の範囲に維持される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記糖の総量が20〜40mg/mlの範囲であり還元糖の総量が5〜20mg/mlの範囲である、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記糖の総量が30mg/mlである、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記還元糖の総量が10mg/mlである、請求項3又は4に記載の製剤。
【請求項6】
前記タンパク質とペプチドの総量が1〜2mg/mlの範囲であり、前記高分子量ペプチドの総量が100〜300μg/mlの範囲である、請求項1〜5のいずれかに記載の製剤。
【請求項7】
前記タンパク質とペプチドの総量が2mg/mlである、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記高分子量ペプチドの総量が250μg/mlである、請求項6又は7に記載の製剤。
【請求項9】
前記pHが3.8〜4.5の範囲に維持される、請求項1〜8のいずれかに記載の製剤。
【請求項10】
前記pHが約4.0に維持される、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記pHが緩衝剤によって調節される、請求項1〜10のいずれかに記載の製剤。
【請求項12】
前記細菌が乳酸菌である、請求項1〜11のいずれかに記載の製剤。
【請求項13】
前記細菌が乳酸桿菌属である、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記細菌がエンテロコッカス属である、請求項12に記載の製剤。
【請求項15】
エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)又はラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)のうち少なくとも1種を含む、請求項12に記載の製剤。
【請求項16】
エンテロコッカス・フェシウム、ラクトバチルス・プランタラム及びラクトバチルス・カゼイを含む、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
さらに抗真菌剤を含有する、請求項1〜16のいずれか一つに記載の製剤。
【請求項18】
前記抗真菌剤が殺菌剤ソルビン酸カリウムである、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
さらに抗酸化剤を含有する、請求項1〜13のいずれか一つに記載の製剤。
【請求項20】
前記抗酸化剤がビタミンCである、請求項14に記載の製剤。
【請求項21】
前記糖の総量が20〜40mg/mlの範囲であり、前記還元糖の総量が5〜20mg/mlの範囲である複合糖及び単純糖の混合物からなることを特徴とする微生物の成長基質。
【請求項22】
前記糖の総量が25〜35mg/mlの範囲である、請求項21に記載の成長基質。
【請求項23】
前記糖の総量が約30mg/mlである、請求項22に記載の成長基質。
【請求項24】
前記還元糖の総量が5〜15mg/mlの範囲である、請求項21〜23のいずれか一つに記載の成長基質。
【請求項25】
前記還元糖の総量が約10mg/mlである、請求項24に記載の成長基質。
【請求項26】
さらにタンパク質及びペプチドを含有する請求項21〜25のいずれか一つに記載の成長基質であって、タンパク質とペプチドの総量が1〜2mg/mlの範囲であり、高分子量ペプチドの総量が100〜300μg/mlの範囲である、成長基質。
【請求項27】
タンパク質とペプチドの総量が約2mg/mlである、請求項26に記載の成長基質。
【請求項28】
前記高分子量ペプチドの総量が約250μg/mlである、請求項26又は27に記載の成長基質。
【請求項29】
マッシング工程において、発芽した穀物を水溶液と混合した後、時間と温度条件を調整して複合糖質の単純糖質への変換を制限し、複合糖質/単純糖質、タンパク質及びペプチドの混合物を得るとともに、処理済発芽穀物中から複合糖質/単純糖質、タンパク質及びペプチドの混合物を分離することで成長基質を得ることを特徴とする、微生物の成長基質の調製方法。
【請求項30】
前記マッシング工程に60〜65℃及び/又は70〜74℃の範囲での熟成が含まれない、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記マッシング工程で、発芽穀物を30〜45℃の範囲の水と混合し、その混合物を1〜2時間熟成させ、20〜40分の範囲の期間、75〜85℃に昇温し、そしてその混合物を75〜85℃の範囲で60〜90分間の範囲の期間、熟成させる、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
粗いろ過によって処理済み発芽穀物から複合糖/単純糖質、タンパク質、ペプチドを分離する、請求項29〜31のいずれか一つに記載の方法。
【請求項33】
前記成長基質が清澄化されていない、請求項29〜32のいずれか一つに記載の方法。
【請求項34】
前記穀物がオオムギ、コムギ、イネ、カラスムギ又はトウモロコシである、請求項29〜33のいずれか一つに記載の方法。
【請求項35】
前記成長基質が滅菌されている、請求項29〜34のいずれか一つに記載の方法。
【請求項36】
前記成長基質に緩衝液を加える、請求項29〜35のいずれか一つに記載の方法。
【請求項37】
請求項29〜36のいずれか一つに記載の方法によって製造可能なことを特徴とする成長基質。
【請求項38】
代謝活性のある安定な微生物製剤の調製方法であって、微生物を複合糖及び単純糖、タンパク質、ペプチドから構成される成長基質中で培養して微生物製剤を調整した後、該製剤を約4℃に冷却して微生物に近平衡成長状態をとらせて該製剤を約4℃でpHを調整して保存した場合微生物製剤中の細菌数が少なくとも5ヶ月間一定であるようにさせ、また、必要に応じて、さらに約4℃で保存することからなることを特徴とする、代謝活性のある安定な微生物製剤の調製方法。
【請求項39】
単一の成長基質中で2種の微生物を培養する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
2種以上の微生物を別々の成長基質中で培養し約4℃で保存する前に混合する、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
代謝活性のある安定な微生物製剤の調製方法であって、約4℃でpHを調節して保存したとき少なくとも5ヶ月間微生物製剤中の細菌数が一定である近平衡増殖状態となるような濃度で、微生物を複合糖及び単純糖、タンパク質、ペプチドからなる成長基質に加えて微生物製剤とし、必要に応じて該製剤を約4℃で保存することを特徴とする、代謝活性のある安定な微生物製剤の調製方法。
【請求項42】
前記微生物が細菌である、請求項38〜41のいずれか一つに記載の方法。
【請求項43】
前記細菌が乳酸菌である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記細菌が乳酸桿菌属である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記細菌がエンテロコッカス属である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記製剤中の生菌数が1ミリリットル当たり108〜109である、請求項43〜45のいずれか一つに記載の方法。
【請求項47】
前記成長基質が請求項21〜28又は37のいずれか一つに記載されているものである、請求項38〜46のいずれか一つに記載の方法。
【請求項48】
前記成長基質が請求項29〜36のいずれか一つに記載されているものである、請求項38〜47のいずれか一つに記載の方法。
【請求項49】
前記製剤の保存前に抗真菌剤を加える、請求項38〜48のいずれか一つに記載の方法。
【請求項50】
前記抗真菌剤が殺菌性ソルビン酸カリウムである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記製剤の保存前に抗酸化剤を加える、請求項38〜50のいずれか一つに記載の方法。
【請求項52】
前記抗酸化剤がビタミンCである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記製剤のpHが3.8〜4.5の範囲に調節される、請求項38〜52のいずれか一つに記載の方法。
【請求項54】
前記pHが緩衝液により調節される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
請求項42〜54のいずれか一つの方法により得られることを特徴とする、代謝活性のある安定な細菌製剤。
【請求項56】
請求項1〜20又は55のいずれか一つにより調製された代謝活性のある安定な細菌製剤からなることを特徴とする、動物の飼料。
【請求項57】
請求項1〜20又は55のいずれか一つにより調製された代謝活性のある安定な細菌製剤からなることを特徴とする、ヒト用の食品又は飲料。
【請求項58】
1種以上の薬学的に許容しうる希釈液、担体、賦形剤と混合された請求項1〜20又は55のいずれか一つに記載の代謝活性のある安定な細菌製剤からなることを特徴とする、医薬品組成物。
【請求項59】
薬物として使用される、請求項1〜20又は55のうちいずれか一つにより調製された、代謝活性のある安定な細菌製剤。
【請求項60】
請求項1〜20又は55のうちいずれか一つに記載の代謝活性のある安定な細菌製剤の、哺乳類腸内微生物のバランスを乱す疾病の治療薬製造のための利用。
【請求項61】
前記腸内微生物バランスを乱す疾病が慢性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎あるいはクローン病である、請求項60記載の利用。
【請求項62】
請求項1〜20又は55のいずれか一つに記載の代謝活性のある安定な細菌製剤の、哺乳類腸内微生物のバランス維持に用いる薬物の製造のための利用。
【請求項63】
請求項1〜20又は55のいずれか一つに記載の代謝活性のある安定な細菌製剤又は請求項58に記載の医薬品組成物の有効量を、必要とする患者に投与することを特徴とする、ヒト又は動物の腸内微生物バランスを乱す疾病の治療又は予防方法。
【請求項64】
前記腸内微生物バランスを乱す疾病が、慢性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎あるいはクローン病である、請求項63に記載の方法。

【図3】
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【公表番号】特表2008−514582(P2008−514582A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532974(P2007−532974)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003715
【国際公開番号】WO2006/035218
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(507094751)マルティジャーム ユーケイ エンタープライズィズ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】MULTIGERM UK ENTERPRISES LIMITED
【住所又は居所原語表記】Sandy Farm Business Centre, The Sands, Farnham, Surrey GU10 1PX, UNITED KINGDOM
【Fターム(参考)】