説明

代謝障害の診断及び治療に使用するためのFATP5を含む方法及び組成物

本発明は、脂肪酸輸送体5(FATP5)活性を阻害する物質、例えば治療用物質の同定方法、及び、FATP5機能に関連する疾患または状態、例えば、肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病、異常脂血症、脂肪肝疾患及び心血管疾患の治療方法を提供する。本発明はまた、野生型FATP5遺伝子をそのゲノムに含む完全無欠動物のFATP5機能を解明するために有用なヒト以外のトランスジェニックFATP5ノックアウト哺乳動物、例えば、マウスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
肥満は最も普遍的な体重障害であり、西欧世界の中年人口の30−50%が罹っていると推定されている。肥満は、30kg/m以上のボディ・マス指数(BMI)として定義されており、冠状動脈疾患、高血圧、卒中、糖尿病、高脂血症及びある種の癌のような疾病の一因となる。(例えば、Nishina,P.M.ら(1994),Metab.43:554−558;Grundy,S.M.& Barnett,J.P.(1990),Dis.Mon.36:641-731参照)。肥満は、複雑な多因性慢性疾患であり、遺伝子型と環境との相互作用によって発症し、また、社会的、行動的、文化的、生理的、代謝的及び遺伝的な様々の要因が関与する。
【0002】
インスリン非依存型真性糖尿病(NIDDM)即ち2型糖尿病は全世界で最も多い代謝障害である。米国では毎日1700名の新しい糖尿病患者が診断され、千六百万人の米国人糖尿病患者の少なくとも三分の一は病気に気付いていない。糖尿病は、成人を失明、腎不全及び下肢切断に至らせる有力な原因であり、また、心血管疾患及び卒中の最大の危険要因である。2型糖尿病は、インスリン抵抗性と、絶対的でなく相対的なインスリン不足とが共存することを特徴とする糖尿病の形態である。インスリン抵抗性は、有効な生物活性を発揮するインスリンの能力がある濃度範囲で低下を示すことであると定義される。2型糖尿病に罹患した個体間では2つの欠陥の各々の程度にかなりの違いがあり、主としてインスリン抵抗性を示すがインスリン不足は最小である個体から、主としてインスリン不足を示すがインスリン抵抗性は最小である個体まで症状は多岐にわたる。
【0003】
正常なグルコースホメオスタシスを維持するためには、血中グルコースレベルの僅かな変化に応じた膵臓ベータ細胞によるインスリンの分泌がグルカゴンのようなカウンター調節ホルモンの分泌と微妙なバランスを保つように精巧に調和した調節が行われる必要がある。インスリンの基本的な作用の1つは、血液から組織特に筋肉及び脂肪へのグルコースの取込みを刺激することである。糖尿病患者の90%以上が2型即ちインスリン非依存型真性糖尿病(NIDDM)であり、その特徴は、(1)末梢組織、特に骨格筋及び脂肪細胞へのグルコース取込みを促すインスリン作用に対する抵抗性、(2)肝のグルコース産生を阻害するインスリン作用の低下、及び、(3)インスリン分泌の調節不全、という3つの徴候を示すことである(DeFronzo,(1997)Diabetes Rev.5:177−269)。大抵の患者の2型糖尿病は複雑な遺伝パターンをもつ多遺伝子性疾患である(Kahnら、(1996)Annu.Rev.Med.47:509−531に概説)。
【0004】
環境要因、特に、食事、身体活動及び年齢が遺伝的疾病素質と相互作用して罹病率を左右する。複数の研究は、インスリン抵抗性、肥満及び遊離脂肪酸の高い血漿レベルの並存が2型糖尿病を発症する“危険のある”個体及びこの疾患の臨床症状のある個体の双方に共通であることを示す(Boden,G.,1999,Proc.Assoc.Am.Physicians,111:241−248)。インスリン抵抗性及びインスリン分泌欠陥の双方に対する罹患率は遺伝的に決定されていると考えられる(Kahn,ら)。インスリン作用の欠陥は明白な疾患の前兆であり、糖尿病患者の非糖尿病近親者に観察される。従って、2型糖尿病の発症及び病理にこれらの要因が果たす役割を理解することは極めて有用であろう。熱心な究明調査にもかかわらず2型糖尿病の普遍的形態の原因となる遺伝子はいまだ未知である。
【発明の開示】
【0005】
本発明は少なくとも部分的に、FATP5欠損トランスジェニック動物が食事誘発肥満及びインスリン抵抗性を防御できるという知見に基づく。しかも、FATP5欠損動物は絶好の血漿脂質プロフィルを示す。従って本発明は、FATP5関連障害、例えば代謝障害(例えば、肥満、インスリン抵抗性、II型糖尿病、異常脂血症)、心血管障害(例えば、遊離脂肪酸レベル、トリグリセリドレベル、冠状動脈疾患、高血圧及び卒中)、及び、脂肪肝疾患を変調できる化合物の同定方法を提供する。提供された方法は、FATP5核酸発現、または、酵素活性や脂肪酸もしくは胆汁酸取込み活性などのFATP5ポリペプチド活性を変調する化合物の能力を検定する段階を含む。更に、FATP5ポリペプチド活性を変調し、これによってFATP5介在性細胞プロセス及び障害に作用する方法が提供される。
【0006】
1つの実施態様で本発明は、化合物がFATP5介在性代謝障害を変調し得る候補化合物であるか否かを同定する方法を提供する。方法は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを含む組成物とを合せる段階と、被験化合物の存在下及び非存在下の組成物中のFATP5ポリペプチドのアシル−CoAリガーゼまたは胆汁酸CoAリガーゼの活性を測定する段階と、化合物の存在下のFATP5ポリペプチドのアシル−CoAリガーゼまたは胆汁酸CoAリガーゼの活性が化合物の非存在下のFATP5ポリペプチドのアシル−CoAリガーゼまたは胆汁酸CoAリガーゼの活性とは異なっているときに被験化合物をFATP5介在性代謝障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む。本文中に使用したFATP5介在性代謝障害は、体重障害(例えば、肥満)、インスリン抵抗性障害(例えば、2型糖尿病)、異常脂血症(例えば、高い血清トリグリセリドレベル、高い遊離脂肪酸レベル)、心血管障害(例えば、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、虚血性心疾患)、及び、脂肪肝疾患(脂肪症)のいずれかであり得る。いくつかの実施態様では、FATP5ポリペプチドを含む組成物が、膜調製物、FATP5ポリペプチドを発現する細胞、または、単離FATP5ポリペプチドであればよい。
【0007】
別の実施態様は、上記方法を含み、更に、上述の方法でFATP5アシルCoAリガーゼまたは胆汁酸CoAリガーゼの活性を変調すると同定された被験化合物を哺乳動物に投与する段階と、被験化合物がFATP5介在性プロセスを変調したか否かを判定する段階と、次いで、FATP5介在性プロセスを変調する被験化合物をFATP5介在性障害を変調するために有用な候補化合物として同定する段階とを含む。
いくつかの実施態様では、モニターしたFATP5介在性プロセスが、体重、体脂肪組成、異常脂血症、摂食行動、インスリン抵抗性、グルコース取込み、脂肪酸もしくは胆汁酸取込み、胆汁、糞便、尿もしくは血漿中の胆汁酸組成、及び/または、血漿脂質組成の1つまたは複数から選択される。
【0008】
本発明で提供された方法全体を通じて、いくつかの実施態様ではFATP5活性をアシル−CoAリガーゼ活性として定義する。別の実施態様ではFATP5活性が胆汁アシル−CoAリガーゼ活性である。方法は、ホスフェート、アシルCoAまたはAMPの産生量を測定することによってアシル−CoAリガーゼ活性を定量できる実施態様を含む。追加の実施態様は、補酵素A、ATPまたは脂肪酸/胆汁酸の消費量を測定することによってアシル−CoAリガーゼ活性を定量できるという側面を含む。
【0009】
別の実施態様では、本発明は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを含む組成物とを合せる段階と、被験化合物がFATP5ポリペプチドに結合するか否かを判定する段階と、次いで、FATP5ポリペプチドに結合すると同定された化合物を哺乳動物に投与する段階と、被験化合物がFATP5介在性プロセスを変調するか否かを判定する段階とを含む、FATP5介在性代謝障害を変調するために有用な候補化合物の同定方法を提供する。ここでは、化合物がFATP5介在性プロセスを変調したときに被験化合物をFATP5介在性障害を変調するために有用な候補化合物として同定する。本文中に使用したFATP5介在性代謝障害は、体重障害(例えば、肥満)、インスリン抵抗性障害(例えば、2型糖尿病)、異常脂血症(例えば、高い血清トリグリセリドレベル、高い遊離脂肪酸レベル)、心血管障害(例えば、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、虚血性心疾患)、及び、脂肪肝疾患(脂肪症)のいずれかであり得る。いくつかの実施態様では、FATP5ポリペプチドを含む組成物が、膜調製物、FATP5ポリペプチドを発現する細胞、FATP5ポリペプチドを発現する組織、または、単離FATP5ポリペプチドであればよい。追加の実施態様では、FATP5介在性プロセスが、体重、体脂肪組成、摂食行動、インスリン抵抗性、グルコース取込み、脂肪酸もしくは胆汁酸取込み、異常脂血症、血漿脂質組成及び/または胆汁、糞便、尿もしくは血漿中の胆汁酸組成、の1つまたは複数から選択される。
【0010】
別の実施態様で本発明は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを発現し得る細胞を含む組成物とを合せる段階と、被験化合物の存在下及び非存在下の組成物中のFATP5ポリペプチドの発現を測定する段階と、次いで、化合物の存在下のFATP5ポリペプチド発現が化合物の非存在下のFATP5ポリペプチド発現とは異なっているときに被験化合物をFATP5介在性代謝障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む、FATP5介在性代謝障害を変調するために有用な候補化合物の同定方法を提供する。FATP5介在性代謝障害は、体重障害(例えば、肥満)、インスリン抵抗性障害(例えば、2型糖尿病)、異常脂血症(例えば、高い血清トリグリセリドレベル、高い遊離脂肪酸レベル)、心血管障害(例えば、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、虚血性心疾患)、及び、脂肪肝疾患(脂肪症)のいずれかであり得る。いくつかの実施態様ではFATP5発現が、転写物レベル、タンパク質レベル、脂肪酸/胆汁酸取込み、または、アシル−CoAリガーゼもしくは胆汁酸CoAリガーゼの活性、のいずれか1つまたは複数をモニターすることによって測定できる。
【0011】
また別の実施態様は、被験化合物及び脂肪酸とFATP5ポリペプチドを発現する細胞とを合せる段階と、試験細胞中の脂肪酸または胆汁酸の取込みを測定する段階と、化合物の存在下の細胞中の脂肪酸または胆汁酸の取込みが化合物の非存在下の脂肪酸の取込みとは異なっているときに被験化合物をFATP5介在性代謝障害の変調に使用し得る候補化合物として同定する段階とを含む、FATP5介在性代謝障害を変調し得る候補化合物の同定方法を提供する。FATP5介在性代謝障害は、体重障害(例えば、肥満)、インスリン抵抗性障害(例えば、2型糖尿病)、異常脂血症(例えば、高い血清トリグリセリドレベル、高い遊離脂肪酸レベル)、心血管障害(例えば、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、虚血性心疾患)、及び、脂肪肝疾患(脂肪症)のいずれかであり得る。
【0012】
1つの実施態様で本発明は、化合物がFATP5介在性体重障害を変調し得る候補化合物であるか否かを同定する方法を提供する。方法は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを含む組成物とを合せる段階と、被験化合物の存在下及び非存在下の組成物中のFATP5ポリペプチドの活性(例えば、アシル−CoAリガーゼ、胆汁酸CoAリガーゼの活性)を測定する段階と、化合物の存在下のFATP5ポリペプチド活性が化合物の非存在下のFATP5ポリペプチド活性とは異なっているときに被験化合物をFATP5介在性体重障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む。いくつかの実施態様では、FATP5ポリペプチドを含む組成物が、膜調製物、FATP5ポリペプチドを発現する細胞、または、単離FATP5ポリペプチドであればよい。
【0013】
別の実施態様は、上記方法を含み、更に、上述の方法でFATP5活性(例えば、アシルCoAリガーゼ活性、胆汁酸CoAリガーゼ活性)を変調すると同定された被験化合物を哺乳動物に投与する段階と、被験化合物がFATP5介在性体重プロセスを変調したか否かを判定する段階と、次いで、FATP5介在性プロセスを変調する被験化合物をFATP5介在性体重障害を変調するために有用な候補化合物として同定する段階とを含む。いくつかの実施態様では、モニターしたFATP5介在性体重プロセスが、体重、体脂肪組成、摂食行動、インスリン抵抗性、グルコース取込み、脂肪酸もしくは胆汁酸取込み、異常脂血症、血漿脂質組成、及び/または、胆汁、糞便、尿もしくは血漿中の胆汁酸組成、の1つまたは複数から選択される。
【0014】
別の実施態様で本発明は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを含む組成物とを合せる段階と、被験化合物がFATP5ポリペプチドに結合するか否かを判定する段階と、次いで、FATP5ポリペプチドに結合するとして同定された化合物を哺乳動物に投与する段階と、被験化合物がFATP5介在性体重プロセスを変調するか否かを判定する段階とを含む、FATP5介在性体重障害を変調するために有用な候補化合物の同定方法を提供する。このようにして、化合物がFATP5介在性体重プロセスを変調したときに被験化合物をFATP5介在性障害を変調するために有用な候補化合物として同定する。いくつかの実施態様では、FATP5ポリペプチドを含む組成物が、膜調製物、FATP5ポリペプチドを発現する細胞、FATP5ポリペプチドを発現する組織、または、単離FATP5ポリペプチドであればよい。追加の実施態様では、FATP5介在性体重プロセスが、体重、体脂肪組成、摂食行動、及び/または、脂肪酸もしくは胆汁酸取込み、の1つまたは複数から選択される。
【0015】
別の実施態様で本発明は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを発現し得る細胞を含む組成物とを合せる段階と、被験化合物の存在下及び非存在下の組成物中のFATP5ポリペプチドの発現を測定する段階と、次いで、化合物の存在下のFATP5ポリペプチド発現が化合物の非存在下のFATP5ポリペプチド発現とは異なっているときに被験化合物をFATP5介在性体重障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む、FATP5介在性体重障害を変調するために有用な候補化合物の同定方法を提供する。FATP5介在性体重障害は例えば肥満を含む。いくつかの実施態様ではFATP5発現が、転写物レベル、タンパク質レベル、脂肪酸/胆汁酸取込み、または、アシル−CoA/胆汁酸CoAリガーゼ活性、のいずれか1つまたは複数をモニターすることによって測定できる。
【0016】
また別の実施態様は、被験化合物及び脂肪/胆汁酸とFATP5ポリペプチドを発現する細胞とを合せる段階と、試験細胞中の脂肪/胆汁酸の取込みを測定する段階と、化合物の存在下の細胞中の脂肪/胆汁酸の取込みが化合物の非存在下の脂肪/胆汁酸の取込みとは異なっているときに被験化合物をFATP5介在性体重障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む、FATP5介在性体重障害を変調し得る候補化合物の同定方法を提供する。FATP5介在性体重障害は例えば肥満である。
【0017】
1つの実施態様で本発明は、化合物がFATP5介在性インスリン抵抗性障害を変調し得る候補化合物であるか否かを同定する方法を提供する。この方法は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを含む組成物とを合せる段階と、被験化合物の存在下及び非存在下の組成物中のFATP5ポリペプチドのアシル−CoA/胆汁酸CoAリガーゼ活性を測定する段階と、化合物の存在下のFATP5ポリペプチドのアシル−CoA/胆汁酸CoAリガーゼ活性が化合物の非存在下のFATP5ポリペプチドのアシル−CoA/胆汁酸CoAリガーゼ活性とは異なっているときに被験化合物をFATP5介在性インスリン抵抗性障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む。本文中に使用したFATP5介在性インスリン抵抗性障害は例えば2型糖尿病を含む。いくつかの実施態様では、FATP5ポリペプチドを含む組成物が、膜調製物、FATP5ポリペプチドを発現する細胞、または、単離FATP5ポリペプチドであればよい。
【0018】
別の実施態様は、上記方法を含み、更に、上述の方法でFATP5アシルCoA/胆汁酸CoAリガーゼ活性を変調すると同定された被験化合物を哺乳動物に投与する段階と、被験化合物がインスリン抵抗性を変調するか否かを判定する段階と、次いで、インスリン抵抗性を変調する被験化合物をFATP5介在性障害を変調するために有用な候補化合物として同定する段階とを含む。いくつかの実施態様では、インスリン抵抗性が、全身もしくは組織のグルコース取込み、肝グルコース産出、血中グルコースレベル、または、血中インスリンレベルを検出することによってモニターできる。
【0019】
別の実施態様で本発明は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを含む組成物とを合せる段階と、被験化合物がFATP5ポリペプチドに結合するか否かを判定する段階と、次いで、FATP5ポリペプチドに結合すると同定された化合物を哺乳動物に投与する段階と、被験化合物がインスリン抵抗性障害を変調するか否かを判定する段階とを含む、インスリン抵抗性を変調するために有用な候補化合物の同定方法を提供する。このようにして、化合物がインスリン抵抗性を変調したときに被験化合物をインスリン抵抗性障害を変調するために有用な候補化合物として同定する。本文中に使用したインスリン抵抗性障害はインスリン抵抗性及び2型糖尿病を含む。いくつかの実施態様では、FATP5ポリペプチドを含む組成物が、膜調製物、FATP5ポリペプチドを発現する細胞、FATP5ポリペプチドを発現する組織、または、単離FATP5ポリペプチドであればよい。追加の実施態様では、インスリン抵抗性が、全身もしくは組織のグルコース取込み、肝グルコース産出、血中グルコースレベル、または、血中インスリンレベル、のいずれか1つまたは複数を検出することによって測定できる。
【0020】
別の実施態様で本発明は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを発現し得る細胞を含む組成物とを合せる段階と、被験化合物の存在下及び非存在下の組成物中のFATP5ポリペプチドの発現を測定する段階と、次いで、化合物の存在下のFATP5ポリペプチド発現が化合物の非存在下のFATP5ポリペプチド発現とは異なっているときに被験化合物をインスリン抵抗性障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む、インスリン抵抗性障害を変調するために有用な候補化合物の同定方法を提供する。インスリン抵抗性障害は例えば2型糖尿病を含む。いくつかの実施態様ではFATP5発現が、転写物レベル、タンパク質レベル、脂肪酸もしくは胆汁酸取込み、または、アシル−CoA/胆汁酸CoAリガーゼ活性のいずれか1つまたは複数をモニターすることによって測定できる。
【0021】
また別の実施態様は、被験化合物及び脂肪/胆汁酸とFATP5ポリペプチドを発現する細胞とを合せる段階と、試験細胞中の脂肪/胆汁酸の取込みを測定する段階と、化合物の存在下の細胞中の脂肪/胆汁酸の取込みが化合物の非存在下の脂肪/胆汁酸の取込みとは異なっているときに被験化合物をインスリン抵抗性障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む、インスリン抵抗性障害を変調し得る候補化合物の同定方法を提供する。インスリン抵抗性障害は例えば2型糖尿病を含む。
【0022】
1つの実施態様では本発明は、化合物が異常脂血症を変調し得る候補化合物であるか否かを同定する方法を提供する。方法は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを含む組成物とを合せる段階と、被験化合物の存在下及び非存在下の組成物中のFATP5ポリペプチドのアシル−CoAリガーゼまたは胆汁酸CoAリガーゼの活性を測定する段階と、化合物の存在下のFATP5ポリペプチドのリガーゼ活性(例えば、アシル−CoAリガーゼ、胆汁酸CoAリガーゼの活性)が化合物の非存在下のFATP5ポリペプチドのリガーゼ活性(例えば、アシル−CoAリガーゼ、胆汁酸CoAリガーゼの活性)とは異なっているときに被験化合物を異常脂血症の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む。本文中に使用した異常脂血症は例えば、高い血清トリグリセリドレベル、高い遊離脂肪酸レベルを含む。いくつかの実施態様では、FATP5ポリペプチドを含む組成物が、膜調製物、FATP5ポリペプチドを発現する細胞、または、単離FATP5ポリペプチドであればよい。
【0023】
別の実施態様は上記方法を含み、更に、上述の方法でFATP5アシルCoAリガーゼ/胆汁酸CoAリガーゼ活性を変調すると同定された被験化合物を哺乳動物に投与する段階と、被験化合物が異常脂血症を変調するか否かを判定する段階と、次いで、異常脂血症を変調する被験化合物を異常脂血症を変調するために有用な候補化合物として同定する段階とを含む。いくつかの実施態様では、異常脂血症が、遊離脂肪酸レベル、血清トリグリセリドレベル、及び/または、血漿脂質組成を定量することによってモニターできる。
【0024】
別の実施態様で本発明は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを含む組成物とを合せる段階と、被験化合物がFATP5ポリペプチドに結合するか否かを判定する段階と、次いで、FATP5ポリペプチドに結合すると同定された化合物を哺乳動物に投与する段階と、被験化合物が異常脂血症を変調するか否かを判定する段階とを含む、異常脂血症を変調するために有用な候補化合物の同定方法を提供する。このようにして、化合物が異常脂血症を変調するときに被験化合物をFATP5介在性障害を変調するために有用な候補化合物として同定する。本文中に使用した異常脂血症は例えば、高い血清トリグリセリドレベル、高い遊離脂肪酸レベル)、血漿脂質組成の変質を含み得る。いくつかの実施態様では、FATP5ポリペプチドを含む組成物が、膜調製物、FATP5ポリペプチドを発現する細胞、FATP5ポリペプチドを発現する組織、または、単離FATP5ポリペプチドであればよい。追加の実施態様では、異常脂血症が、脂肪酸/胆汁酸取込み、遊離脂肪酸、血清トリグリセリド、及び/または、血漿脂質組成、の1つまたは複数を測定することによって判定できる。
【0025】
別の実施態様で本発明は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを発現し得る細胞を含む組成物とを合せる段階と、被験化合物の存在下及び非存在下の組成物中のFATP5ポリペプチドの発現を測定する段階と、次いで、化合物の存在下のFATP5ポリペプチド発現が化合物の非存在下のFATP5ポリペプチドとは異なっているときに被験化合物を異常脂血症の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む、異常脂血症に有効な候補化合物の同定方法を提供する。異常脂血症は例えば、高い血清トリグリセリドレベル、高い遊離脂肪酸レベル、及び、血漿脂質組成の変質を含み得る。いくつかの実施態様ではFATP5発現が、転写物レベル、タンパク質レベル、脂肪酸もしくは胆汁酸取込み、または、アシル−CoAリガーゼ活性のいずれか1つまたは複数をモニターすることによって測定できる。
【0026】
また別の実施態様は、被験化合物及び脂肪/胆汁酸とFATP5ポリペプチドを発現する細胞とを合せる段階と、試験細胞中の脂肪/胆汁酸の取込みを測定する段階と、化合物の存在下の細胞中の脂肪/胆汁酸の取込みが化合物の非存在下の脂肪/胆汁酸の取込みとは異なっているときに被験化合物を異常脂血症の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む、異常脂血症を変調し得る候補化合物の同定方法を提供する。異常脂血症は例えば、高い血清トリグリセリドレベル、高い遊離脂肪酸レベル、及び、血清脂質組成の変質を含む。
【0027】
1つの実施態様で本発明は、化合物がFATP5介在性心血管障害を変調し得る候補化合物であるか否かを同定する方法を提供する。方法は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを含む組成物とを合せる段階と、被験化合物の存在下及び非存在下の組成物中のFATP5ポリペプチドのアシル−CoAリガーゼ/胆汁酸CoAリガーゼ活性を測定する段階と、化合物の存在下のFATP5ポリペプチドのアシル−CoA/胆汁酸CoAリガーゼ活性が化合物の非存在下のFATP5ポリペプチドのアシル−CoA/胆汁酸CoAリガーゼ活性とは異なっているときに被験化合物をFATP5介在性心血管障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む。本文中に使用したFATP5介在性心血管障害は、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧及び虚血性心疾患のいずれかであり得る。いくつかの実施態様では、FATP5ポリペプチドを含む組成物が、膜調製物、FATP5ポリペプチドを発現する細胞、または、単離FATP5ポリペプチドであればよい。
【0028】
別の実施態様は上記方法を含み、更に、上述の方法でFATP5アシルCoA/胆汁酸CoAリガーゼ活性を変調すると同定された被験化合物を哺乳動物に投与する段階と、被験化合物がFATP5介在性プロセスを変調したか否かを判定する段階と、次いで、FATP5介在性プロセスを変調する被験化合物をFATP5介在性心血管障害を変調するために有用な候補化合物として同定する段階とを含む。
いくつかの実施態様では、モニターしたFATP5介在性プロセスが、インスリン抵抗性、グルコース取込み、脂肪酸もしくは胆汁酸取込み、異常脂血症、血漿脂質組成、及び/または、胆汁、糞便、尿もしくは血漿中の胆汁酸組成、の1つまたは複数から選択される。
【0029】
別の実施態様で本発明は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを含む組成物とを合せる段階と、被験化合物がFATP5ポリペプチドに結合するか否かを判定する段階と、次いで、FATP5ポリペプチドに結合すると同定された化合物を哺乳動物に投与する段階と、被験化合物がFATP5介在性プロセスを変調するか否かを判定する段階とを含む、FATP5介在性心血管障害を変調するために有用な候補化合物の同定方法を提供する。このようにして、化合物がFATP5介在性プロセスを変調したときに被験化合物をFATP5介在性障害を変調するために有用な候補化合物として同定する。本文中に使用したFATP5介在性心血管障害は、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧及び虚血性心疾患のいずれかであり得る。いくつかの実施態様では、FATP5ポリペプチドを含む組成物が、膜調製物、FATP5ポリペプチドを発現する細胞、FATP5ポリペプチドを発現する組織、または、単離FATP5ポリペプチドであればよい。追加の実施態様では、FATP5介在性プロセスが、脂肪酸取込み、胆汁酸取込み、異常脂血症、及び/または、血漿脂質組成、の1つまたは複数から選択される。
【0030】
別の実施態様で本発明は、被験化合物とFATP5ポリペプチドを発現し得る細胞を含む組成物とを合せる段階と、被験化合物の存在下及び非存在下の組成物中のFATP5ポリペプチドの発現を測定する段階と、次いで、化合物の存在下のFATP5ポリペプチド発現が化合物の非存在下のFATP5ポリペプチドとは異なっているときに被験化合物をFATP5介在性心血管障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む、FATP5介在性心血管障害を変調するために有用な候補化合物の同定方法を提供する。FATP5介在性心血管障害は、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧及び虚血性心疾患のいずれかであり得る。いくつかの実施態様では、FATP5発現が、転写物レベル、タンパク質レベル、脂肪酸もしくは胆汁酸取込み、または、アシル−CoAリガーゼまたは胆汁酸CoAリガーゼの活性、のいずれか1つまたは複数をモニターすることによって測定できる。
【0031】
また別の実施態様は、被験化合物及び脂肪/胆汁酸とFATP5ポリペプチドを発現する細胞とを合せる段階と、試験細胞中の脂肪/胆汁酸の取込みを測定する段階と、化合物の存在下の細胞中の脂肪/胆汁酸の取込みが化合物の非存在下の脂肪/胆汁酸の取込みとは異なっているときに被験化合物をFATP5介在性心血管障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階とを含む、FATP5介在性心血管障害を変調し得る候補化合物の同定方法を提供する。FATP5介在性心血管障害は、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、虚血性心疾患のいずれかであり得る。
【0032】
本文中に記載した知見は、FATP5活性の阻害が2型真性糖尿病の特徴であるインスリン抵抗性の軽減に導くこと、従ってFATP5介在性脂肪酸または胆汁酸の取込みを阻害する物質はインスリン抵抗性を軽減するために有用であることを証明する。さらにまた、FATP5欠損動物は絶好の血漿脂質プロフィルを示し、これは、FATP5介在性脂肪酸または胆汁酸の取込みを阻害する物質が血漿脂質プロフィルの改善に役立つことを示唆する。従って本発明は、FATP5関連障害、例えば、代謝障害(例えば、肥満、インスリン抵抗性、II型糖尿病、異常脂血症)、心血管障害(例えば、遊離脂肪酸レベル、トリグリセリドレベル、冠状動脈疾患、高血圧及び卒中)、及び、脂肪肝疾患を変調できる化合物の使用方法を提供する。
【0033】
1つの実施態様で本発明は、有効量のFATP5活性阻害物質を個体に投与する段階を含む、個体のFATP5介在性代謝障害の治療方法を提供する。いくつかの実施態様では、FATP5介在性代謝障害が、肥満、インスリン抵抗性(例えば、2型糖尿病)、異常脂血症(例えば、高い血清トリグリセリドレベル、高い遊離脂肪酸レベル)、脂肪肝疾患、及び、心血管疾患(例えば、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、虚血性心疾患)である。
【0034】
また別の実施態様で本発明は、FATP5遺伝子が不活化されたヒト以外の遺伝子操作哺乳動物を提供する。
1つの実施態様では、遺伝子操作されたトランスジェニック動物がマウスまたはラットである。
本発明の追加の特徴及び利点は以下の記載、実施例及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【0035】
本発明は少なくとも部分的に、FATP5欠損トランスジェニック動物が食事誘発肥満及びインスリン抵抗性を防御できるという知見に基づく。しかも、FATP5欠損動物は、絶好の血漿脂質プロフィルを示す。従って本発明は、FATP5関連障害、例えば代謝障害(例えば、肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病、異常脂血症)、心血管障害(例えば、遊離脂肪酸レベル、トリグリセリドレベル、冠状動脈疾患、高血圧及び卒中)、及び、脂肪肝疾患(例えば、脂肪症)を変調できる化合物の同定方法を提供する。提供された方法は、FATP5核酸発現、または、酵素活性や脂肪酸/胆汁酸取込み活性などのFATP5ポリペプチド活性を変調する化合物の能力を検定する段階を含む。更に、本発明を使用して同定された化合物を利用し、これによってFATP5介在性細胞プロセスまたは障害を変調する方法が提供される。
【0036】
多数のFATP5遺伝子の構造及びコーディング配列が報告されている。例えば、Schaffer,JEら、Cell.79:427−436(1994);Bergerら、Biochem Biophys Res Commun 247:255−260(1998);Hirsch,Dら、Proc Natl Acad Sci 95:8625−8629(1998);及び、PCT国際公開WO01/021795及びWO99/036537参照。マウス及びヒトの配列はそれぞれ受託番号NM 012254及びNM 009512でGeneBankに報告されている。また、遺伝子及びタンパク質の配列はそれぞれ配列1及び配列2と配列3及び配列4で記述されている。
【0037】
FATP5は、脂肪酸輸送体及びアシルCoAシンテターゼとして同定されたタンパク質ファミリーの1つである。例えば、Schaffer,JEら、Cell.79:427−436(1994);Bergerら、Biochem Biophys Res Commun 247:255−260(1998);Hirsch,ら、Proc Natl Acad Sci 95:8625−8629(1998);PCT国際公開WO01/021795及びWO99/036537;Steinbergら、Mol Genet Metab.58:32−42(1999)参照。ノーザン分析による検出で、FATP5が肝組織で特異的に発現され、肝細胞に特異的に局在することが知見された。PCT国際公開WO01/021795参照。さらにまた、FATP5が胆汁酸CoAリガーゼであり、胆汁酸の再循環に関与することが知見された。例えば、Steinbergら、J Biol Chem 275:15605−15608(2000)及びMihalikら、J Biol Chem.277:28765−28773(2002)参照。マウスの遺伝子及びタンパク質の配列はそれぞれ配列1及び配列2で記述されており、ヒトの遺伝子及びタンパク質の配列はそれぞれ配列3及び配列4で記述されている。本発明における我々の知見は意外にも、肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病のような代謝障害、及び、異常な血清脂質プロフィルを含む心血管障害に関与する介在プロセスに肝特異的FATP5脂肪酸/胆汁酸CoAリガーゼの活性が関与していることを証明する。
【0038】
本文中で使用した“遺伝子”という用語は、単一タンパク質(例えば、ポリペプチド鎖)の合成に必要な遺伝情報(例えば核酸配列)をコードしているDNA配列を意味する。アミノ酸配列を直接的にコードする配列である“コーディング配列”に加えて、遺伝子はまた、必須の非コーデイングエレメント、例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、及び、必須でないフランキング配列とイントロン配列を含む。“FATP5遺伝子”という用語は、FATP5タンパク質をコードしているDNA配列を含む特定の哺乳動物遺伝子を意味する。本発明で提供された方法はこれまでに記述されている既知のFATP5配列を利用している。例えば、Genbank受託番号:NM 012254及びNM 009512参照。当業者に理解されるように、遺伝子配列は1つの集団の個体間で異なる“部位”(配列位置)を含むことができる。従って、遺伝子の配列変異が許容される。各変異配列は、遺伝子の“対立遺伝子”と呼ばれる。典型的には、特定配列、通常は機能的タンパク質をコードしている配列を基準配列、または、“野生型”配列とする。“野生型”という用語は、基準対立遺伝子、典型的には機能的タンパク質をコードしている対立遺伝子または健康な個体に存在する対立遺伝子を含意する記述語である。野生型配列とは異なる対立遺伝子を“対立変異体”と呼ぶ。相同染色体は、減数分裂中に対を形成し実質的に同一の遺伝子座を含有する染色体である。“遺伝子座”という用語は、染色体上の遺伝子の部位(例えば、ロケーション)を含意する。
【0039】
トランスジェニックFATP5動物
本発明は、ヒト以外の哺乳動物、例えば、ヒト以外の霊長類、マウスまたはラットのような齧歯類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ブタ、ウサギまたはヤギの“ノックアウト”またはトランスジェニック動物を提供する。本文中に使用した“ノックアウト”という用語は、特定の遺伝子が破壊されるかまたは欠失しその結果として該遺伝子の発現が全く生じないかまたは低下レベルで生じるようなゲノムを有している遺伝的に修飾された生物を意味する。特定実施態様では、ヒト以外の哺乳類のノックアウト動物が齧歯類、例えばマウスまたはラットである。例えば、FATP5ノックアウト哺乳動物では、内在FATP5遺伝子が破壊されており、その結果として該哺乳動物の機能的FATP5タンパク質は欠如しているかまたはそのレベルが低下している。特定実施態様では、ヒト以外のノックアウト哺乳動物が、機能的FATP5遺伝子産物の欠如またはFATP54遺伝子産物のレベル低下を示すマウスである。本文中ではトランスジェニックマウスを“トランスジェニックFATP5ノックアウトマウス”または“FATP5ノックアウトマウス”と呼ぶ。特定実施態様では、FATP5ノックアウトマウスのゲノムが、内在FATP5遺伝子に対して少なくとも1つの非機能的対立遺伝子を含む。従って本発明は、ときには“野生型”と呼ばれる機能的標準FATP5対立遺伝子をそのゲノムに含む完全無欠動物のFATP5の機能を解明するために役立つ細胞(例えば、組織、細胞、細胞抽出物、オルガネラ)及び動物のソースを提供する。本文中に記載のFATP5ノックアウト哺乳動物を作製するために適当な哺乳動物のいずれかを使用できる。例えば適当な哺乳動物はヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、マウス(マウス類)、ラット、ウサギまたはブタでよい。
【0040】
我々は、機能的FATP5の欠如したマウス類の作製、このようなマウス類の使用方法、このようなマウス類に由来の細胞の使用方法、FATP5活性が欠如または部分的に欠如している細胞の使用方法、及び、FATP5活性を変調する物質をin vitroに同定または評価する方法を記載する。
【0041】
本文中に使用した“破壊”、“機能不活化”、“変質”及び“欠陥”という用語は、FATP5ノックアウトマウスの一種類の細胞、選択された細胞または全部の細胞の内在遺伝子によってコードされているFATP5ポリペプチドの発現及び/または機能の部分的または全面的低下を含意する。従って本発明によれば、選択された細胞グループ(例えば、組織または器官)または完全動物の体内でFATP5遺伝子産物の発現または機能を全面的または部分的に破壊または低減(例えば、50%、75%、80%、90%、95%またはそれ以上低減)することができる。本文中で使用した“機能的に破壊されたFATP5遺伝子”という用語は、いかなるポリペプチド産物も発現できないかまたは野生型タンパク質の完全アミノ酸ポリペプチド鎖よりも短い切欠タンパク質を発現し、非機能的(部分的にまたは全面的に非機能的)である修飾FATP5遺伝子を包含する。
【0042】
FATP5遺伝子の破壊は、当業者に公知の多様な方法によって行うことができる。FATP5遺伝子を破壊するために例えば、相同的組換えを使用する遺伝子ターゲティング、突然変異誘発(例えば、点突然変異)、RNA干渉及びアンチセンステクノロジイを使用できる。
【0043】
より具体的には本発明は、そのFATP5遺伝子のホモ接合またはヘテロ接合の破壊をゲノムに含むノックアウト哺乳動物、例えば、マウスを提供する。ゲノムにホモ接合破壊を含むノックアウト哺乳動物の特徴は、その体細胞及び胚細胞がFATP5遺伝子の2つの非機能的(破壊された)対立遺伝子を含むことであり、ゲノムにヘテロ接合破壊を含むノックアウト哺乳動物の特徴は、その体細胞及び胚細胞がFATP5遺伝子の1つの野生型対立遺伝子と1つの非機能的対立遺伝子とを含むことである。
【0044】
本文中で使用した“遺伝子型”という用語は、動物の遺伝子組成(genetic makeup)を意味する。個々の遺伝子型は、1つまたは複数の特定の遺伝子、例えばFATP5を表す。より詳細には、遺伝子型という用語は、動物のFATP5対立遺伝子の状態、即ち、対立遺伝子が完全無欠で機能的であること(例えば、野生型または+/+)、または、ヘテロ接合型(+/−)もしくはホモ接合型(−/−)のノックアウト遺伝子型を与えるように破壊されていること(例えば、ノックアウト)を表す。
【0045】
本発明はまた、機能的FATP5遺伝子の欠如したヒト以外の哺乳動物の産生方法を提供する。簡単に説明すると、ノックアウト胚の標準的な産生方法では、ターゲットとした遺伝子の内在核酸配列との相同的組換えによって適当な胚性幹(ES)細胞に組込まれるように設計されたターゲティング構築物の導入が必要である。次に、ES細胞を相同的組換え(即ち、ターゲティング構築物の組換え核酸配列と宿主細胞染色体のゲノム核酸配列との組換え)が可能な条件下で培養する。組換え対立遺伝子を含むノックアウト遺伝子型を有していると同定された遺伝子操作幹細胞を当業界で公知の標準技術を使用して(例えば、遺伝子操作胚性幹(ES)細胞を未分化胎細胞にマイクロインジェクションする方法によって)胚形成期の動物またはその親に導入する。次に、得られたキメラ未分化胎細胞を偽妊娠仮母親の子宮に入れて生存可能な子を発生させる。得られた生存可能な子のうちには、その体細胞及び胚細胞系列組織に遺伝子操作ES細胞とレシピエントの未分化胎細胞とに由来の細胞混合物を含む潜在的にキメラ創始動物が含まれている。得られたキメラマウスの胚細胞系列に遺伝子変質ES細胞が与えられると、破壊されたターゲット遺伝子を含む変質ES細胞ゲノムがこれらの創始動物の後代に伝達され、これによって、ターゲット遺伝子中に特定の欠陥を含むように遺伝子操作された遺伝子をゲノムに含む“ノックアウト動物”が容易に産生される。
【0046】
FATP5遺伝子はいくつかの異なる方法で破壊されることができ、これらの方法のいずれかを本発明のFATP5ノックアウト動物の産生に使用できることは当業者に容易に理解されよう。例えば、遺伝子ターゲティングの方法によって本発明のノックアウトマウスを産生できる。本文中で使用した“遺伝子ターゲティング”という用語は、変質(例えば、破壊)のターゲットとしたゲノム遺伝子座の核酸配列の対応部分に配置されて組換えられることによって内在遺伝子に計画的変質を付与し得る外来組換え核酸配列を導入するように設計されたターゲティング構築物(例えば、ベクター)を哺乳類細胞(例えば、ES細胞)に導入した結果として生じる相同的組換えの一種を意味する。
【0047】
すなわち、相同的組換えは、特定のDNA配列が遺伝子操作外来配列によって置換されるプロセス(例えば、方法)である。より詳細には、トランスジェニック破壊のターゲット遺伝子の内在ヌクレオチド配列に相同的または相補的になるように遺伝子操作されたターゲティングベクターの領域が互いに結集するかまたは組換えられ、その結果としてターゲティングベクターのヌクレオチド配列が内在遺伝子の対応部分に取込まれる(例えば組込まれる)。
【0048】
本発明の1つの実施態様は、野生型(内在)FATP5遺伝子の機能を破壊するように設計されたベクター構築物(例えば、FATP5ターゲティングベクターまたはFATP5ターゲティング構築物)を提供する。一般的に言えば、有効なFATP5ターゲティングベクターは、内在FATP5遺伝子との相同的組換えに有効な組換え配列を含む。例えば、選択可能マーカー遺伝子をコードしている第二ヌクレオチド配列に作動可能に連結されたターゲット配列に相同のゲノムヌクレオチド配列を含む置換ターゲティングベクターは有効なターゲティングベクターの代表例である。相同的組換えの結果として宿主細胞(例えば、胚性幹細胞)の染色体DNAにターゲティング配列が組込まれると、内在遺伝子例えばFATP5遺伝子のターゲット配列に計画的な破壊、欠陥または変質(例えば、挿入、欠失または置換)が導入される。本発明の1つの特徴は、FATP5ポリペプチドをコードしているヒト以外の哺乳動物の遺伝子のヌクレオチド配列の全部または一部を置換し、これによってトランスジェニックFATP5ノックアウトを作製することである。
【0049】
FATP5ターゲティングベクターを構築するためには、破壊対象として予め選択した特定部位で相同的組換えを促進するような適正な長さ及び組成をもつFATP5ゲノムヌクレオチド配列を使用すればよいことが当業者には理解されよう。配列の選択及び使用の指針は例えば、Deng,C.& Cappecchi,M.,1992,Mol.Cell.Biol.,12:3365−3371、及び、Bollag,R.ら、1989,Annu.Rev.Genet.,23:199−225に記載されている。例えば、FATP5遺伝子の遺伝子座の全部または一部に組換え核酸配列(例えば、FATP5ターゲティング構築物またはベクター)を挿入することによって野生型FATP5遺伝子を突然変異させるか及び/または破壊することができる。ターゲティング構築物は例えば、FATP5遺伝子のエンハンサー、プロモーター、コーディング領域、開始コドン、非コーディング配列、イントロンまたはエキソンの内部の特定部分と組換えられるように設計できる。あるいは、ターゲティング構築物が、FATP5遺伝子のエキソンの後方に停止コドンを導入するように設計された組換え核酸を含むこともできる。
【0050】
本発明の適当なターゲティング構築物は、当業者に公知の標準的分子生物学技術を使用して調製できる。例えば、適当なベクターの調製に有用な技術は、Maniatis,ら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.;によって記載されている。この文献の開示は参照によって本発明に含まれるものとする。適正なベクターは、Capecchi,M.,1989,30 Science,244:1288−92によって記載された挿入ベクターのような置換ベクター、または、Bradley,ら、1992,Biotechnology(NY),10:534−539;及びAskew,G.ら、1993,Mol.Cell.Biol.,13:4115−4124によって記載されたプロモータートラップ戦略またはポリアデニル化トラップ、または、“タグ−アンド−エクスチェンジ”戦略に基づくベクターを含む。これらの文献の開示は参照によって本発明に含まれるものとする。
【0051】
当業界で公知の多数の適正ベクターを適当なターゲティングベクターの基材として使用できることが当業者には理解されよう。実際、相同的組換えを指示しかつターゲット遺伝子を破壊するために必要な組換え核酸配列を収容する能力を有しているいかなるベクターも使用できる。例えば、pBR322、pACY164、pKK223−3、pUC8、pKG、pUC19、pLG339、pR290、pKC101またはその他のプラスミドベクターを使用できる。あるいは、ラムダgt11ベクター系のようなウイルスベクターはターゲティング構築物の主鎖(例えば、カセット)を提供できる。
【0052】
当業者に公知の技術によれば、遺伝子操作された(例えば、電気穿孔法によってトランスフェクトされたかまたは感染によって形質転換された)胚性幹細胞をヒト以外のトランスジェニックノックアウト胚を産生するための常套手段として使用できる。胚性幹(ES)細胞は哺乳類の未分化胎細胞の内部細胞塊から単離された多能性細胞である。ES細胞は、未分化状態で適正培養条件下にin vitro培養でき、未分化胎細胞と組換えられて偽妊娠仮母親の子宮に導入された結果として正常なin vivo発生及び分化を再開する能力を維持できる。
【0053】
多様な幹細胞が当業界で公知であり、例えば、AB−1、HM−1、D3.CC1.2、E−14T62a、RW4またはJIなどがあることは当業者に容易に理解されよう(Teratomacarcinoma and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach,E.J.Roberston,ed.,IRL Press)。
【0054】
本文中に記載のFATP5ノックアウト哺乳動物が上述の胚性幹細胞方法以外の方法によって産生できること、例えば、1細胞または形質転換胚の前核に組換え遺伝子を前核注入することによって、または、トランスフェクトもしくは形質転換したES細胞の使用に依存しない別の遺伝子ターゲティング方法によって産生できること、また、上記に概説した1つの方法の例示はこのプロトコルによって産生した動物だけに本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0055】
本発明に記載のFATP5ノックアウト哺乳動物はまた、機能的FATP5を天然にコードしておりかつ発現する内在遺伝子の少なくとも1つの非機能的対立遺伝子をゲノムに含む動物のコロニーを産生するために適正相手と交配(近親交配、異系交配または異種交配)することもできる。このような交配戦略の非限定例は、ホモ接合動物を産生するためのヘテロ接合ノックアウト動物の交雑;創始動物(例えば、ヘテロ接合またはホモ接合ノックアウト)と異常なインスリン及び/またはグルコースホメオスタシスを与える近交系遺伝背景を有しているマウスまたは糖尿病の動物モデルを提供するマウスとの異系交配、及び、創始動物と糖尿病及び/または肥満の高い罹患率に関連する遺伝子を超発現するように遺伝子操作した独立トランスジェニック動物との異種交配、などである。例えば、創始ノックアウトマウスを、ob/obマウス、db/dbマウス及び/またはAYマウスと交配できる。
【0056】
FATP5ノックアウト哺乳動物、例えばマウスは、多様な目的に役立つ。1つの実施態様では、当業界で公知の技能を使用してFATP5ノックアウト細胞または細胞系を作製できる。例えば、内在FATP5遺伝子を所有していないかまたは常態ではFATP5を発現しない細胞を操作してそれらが可能な細胞にすることができる。例えば、内在FATP5遺伝子を所有していない細胞に外来FATP5遺伝子を導入し、外来FATP5遺伝子の存在によって細胞がFATP5を発現できるようにする。あるいは、常態ではサイレントなFATP5遺伝子を“ターンオン”するために、常態ではFATP5を発現しない細胞のゲノムに外来核酸をスプライスすることもできる。補佐物質は例えば、核酸分子、ポリペプチド、有機分子、無機分子、融合タンパク質などである。
【0057】
その後に、操作された細胞中のFATP5遺伝子を、本文中に記載の方法や本発明の方法及び組成物に使用できる当業者に公知の方法を使用して破壊できる。
【0058】
FATP5遺伝子の破壊の結果として、本発明のFATP5ノックアウトマウスは特定の表現型を示し得る。表現型という用語は、特定の遺伝子型に帰因する生化学的または生理学的な結果を意味する。ノックアウトマウスを創製した場合に観察される表現型は、ノックアウトされた遺伝子が喪失した結果である。1つの実施態様では、FATP5ノックアウトマウスにおいてインスリン/グルコースホメオスタシス及び食餌誘発インスリン抵抗性に対する反応が変質している。FATP5ノックアウトマウスは、高脂肪食を給餌した野生型マウスに比べてインスリン抵抗性が軽減している。更に、FATP5ノックアウトマウスは、血清トリグリセリドレベル及び遊離脂肪酸レベルの低下を示す。更に、FATP5ノックアウトマウスは脂肪過多症の減少を示す。より詳細には、FATP5ノックアウトマウスは、野生型対照マウスに比べて白色脂肪量の有意な減少を示す。この表現型は動物に高脂肪食を給餌したときに激化する。更に、FATP5マウスは摂食量の減少とエネルギー消費量の増加とを示した。
【0059】
本発明は、FATP5ノックアウトマウスのインスリン抵抗性が軽減しているという知見に基づく。インスリン抵抗性の軽減はグルコース代謝レベルを上昇させる。2型真性糖尿病の特徴はインスリン抵抗性及び低いグルコース代謝レベルであるから、本文中に記載した結果は、2型真性糖尿病や、これに付随する表現型、例えば、グルコース代謝低下、インスリン抵抗性及び脂肪酸蓄積の治療方法を可能にする。
【0060】
別の実施態様では、本文中に記載した知見はまた、FATP5活性阻害の結果として絶好の血漿脂質プロフィルが得られることを証明する。別の実施態様では本発明はまた、FATP5ノックアウトマウスでは血清トリグリセリド及び遊離脂肪酸のレベルが低下しているという認知に基づく。従って、FATP5介在性脂肪酸輸送を阻害する物質は、脂質及び/または遊離脂肪酸の増加が心血管疾患の因子であるような心血管疾患の治療に有効である。脂質及び/または遊離脂肪酸の増加に付随する心血管疾患は冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧及び虚血性心疾患などである。
【0061】
本文中で言及した心臓に関する障害、即ち、“心血管疾患”または“心血管障害”は、心血管系、例えば、心臓、血管及び/または血液を冒す疾患または障害を含む。心血管障害は、動脈圧の平衡失調、心臓の機能不全または例えば血栓による血管の閉塞によって生じる。心血管疾患の非限定例は、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈炎症、冠状動脈の微小塞栓、頻脈、徐脈、圧力過負荷(pressure overload)、脈管性心疾患、うっ血性心不全、狭心症、心不全、高血圧、心筋梗塞、冠状動脈疾患、冠状動脈痙攣、虚血性疾患及び不整脈などである。
【0062】
別の側面によれば、本文中に記載の知見はまた、FATP5活性阻害が脂肪過多症に有益な効果を有することを示す。また別の特徴によれば、本発明は、FATP5活性の阻害によってエネルギー消費量を増加させることを提案する。本発明は、FATP5ノックアウトマウスが野生型マウスに比べて白色脂肪量の有意な減少を示すという事実に基づく。更に、マウスに高脂肪食を給餌したときにFATP5ノックアウトマウスの脂肪過多症の減少がいっそう顕著になる。別の実施態様では、FATP5ノックアウトマウスは高脂肪に誘発される体重増加及び脂肪過多症を完全に防御する。別の実施態様では、FATP5ノックアウト動物は野生型対照に比べて摂食量の減少を示した。更に、FATP5ノックアウト動物は野生型対照動物に比べてエネルギー消費量の増加を示した。
【0063】
アッセイ
本発明は、代謝障害、例えば、体重、肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病、異常脂血症、例えば高い血清トリグリセリドレベル、高い遊離脂肪酸レベル、脂肪肝疾患、及び、心血管疾患、例えば、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧を治療できる化合物の同定方法を提供する。方法は、FATP5の核酸発現またはFATP5のアシル−CoAリガーゼ活性を変調する化合物の能力を検定する段階を含む。いくつかの特徴によれば、FATP5のアシル−CoAリガーゼ活性を変調する化合物の能力はホスフェート、アシル−CoAまたはAMPの産生量を検出することによって定量できる。追加の特徴によれば、FATP5のアシル−CoA活性を変調する化合物の能力は、補酵素A、ATPまたは脂肪酸/胆汁酸の消費量を検出することによって定量できる。
【0064】
さらに別の側面によれば、FATP5のアシル−CoA活性を変調する化合物の能力は、FATP5介在性プロセスの変調を検出することによって判定できる。このようなプロセスとしては例えば、細胞プロセス(例えば、脂肪酸または胆汁酸の取込み)または身体プロセス(例えば、体重、体脂肪組成、エネルギー消費量または摂食行動、血中グルコースレベル、血清トリグリセリドレベル、血清遊離脂肪酸レベル、胆汁、血漿、尿もしくは糞便中の胆汁酸組成)がある。さらに別の実施態様では、FATP5介在性プロセスが、障害(例えば、脂肪肝疾患、心血管疾患(例えば、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧及び虚血性心疾患)、肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病、異常脂血症を包含し得る。
【0065】
別の側面によれば本発明は、FATP5機能を変調例えば亢進または抑制する物質(例えば、治療用物質)の同定方法、及び、FATP5機能に関連した疾患または状態(例えば肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病、異常脂血症、脂肪肝疾患及び心血管疾患)の治療方法を提供する。
【0066】
FATP5介在性脂肪酸または胆汁酸取込みを阻害すると、外来または内在インスリンに対する生物応答の低下を意味する“インスリン抵抗性”が有意に軽減されることが判明した。インスリン抵抗性は2型真性糖尿病の特徴であり、罹患個体からグルコース代謝能力を奪う。例えば、血流からのグルコースクリアランス及び細胞内へのグルコース取込みができなくなり、肝グルコース産生が亢進する。
【0067】
FATP5が脂肪酸及び胆汁酸の取込みを促進しまたアシル−CoAリガーゼ活性を有していることは、酵素活性と観察された輸送活性とが関連していることを示唆する。しかしながら、酵素活性だけをより詳細に特性決定するために輸送の非存在下のアシル−CoAリガーゼ活性を測定することもできる。
【0068】
従って、本文中に提示したデータは、FATP5障害、例えば、体重、肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病、異常脂血症、遊離脂肪酸レベル、トリグリセリドレベル、冠状動脈疾患、高血圧及び卒中を治療するための治療ターゲット分子を同定する。FATP5の阻害は修飾された脂肪酸及び/または胆汁酸の取込みとインスリン抵抗性とを抑制し、血清トリグリセリド及び遊離脂肪酸を減少させる。従って、肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病、異常脂血症、脂肪肝疾患及び心血管疾患の治療に使用するためのFATP5阻害物質を同定する方法も本発明の目的の一部である。
【0069】
FATP5活性、例えば、FATP5介在性脂肪酸もしくは胆汁酸取込みまたはアシル−CoAリガーゼ活性を変調または変質させる物質の同定は、FATP5介在性脂肪酸もしくは胆汁酸取込み及び/またはFATP5アシル−CoAリガーゼ活性を測定する段階を含む。このような活性は、in vivo、ex vivo及び/またはin vitroで測定できる。FATP5介在性脂肪酸または胆汁酸取込み活性は例えば、アシル−CoA−修飾脂肪酸または胆汁酸の細胞内蓄積レベル(本文中では量または率の双方を表す);肝臓、胆汁、血漿、尿または糞便中の胆汁酸組成;血清トリグリセリドレベル;遊離脂肪酸レベル;血漿脂質組成;グルコース取込み;グルコースクリアランス;または肝グルコース産出を定量することによって測定できる。アシル−CoAリガーゼ活性は例えば、アシル−CoA−修飾脂肪酸またはアシル−CoA−修飾胆汁酸の蓄積レベル;補酵素A、ATP、及び/または脂肪酸/胆汁酸の消費量;及び/またはホスフェート、アシル−CoAまたはAMPの産生量を定量することによって測定できる(実施例参照)。アシル−CoAリガーゼ活性の適当な定量方法は当業界で公知であり、本発明で提供された方法に適宜応用できる。例えば、Steinberg,SJら、Biochem Biophys Res Comm.257:615−621(1999);Steinberg,SJら、Mol Genet Metab.58:32−42(1999);Steinberg,SJら、J.Biol Chem.275:15605−15608(2000)参照。
【0070】
FATP5介在性脂肪酸または胆汁酸取込みはまた、コントロール食(chow diet)を給餌したマウスの白色脂肪重量をモニターすることによって定量できる。実施例2に示すようにして体重及び脂肪過多症を測定する実験を行った。野生型マウスのグループとFATP5ノックアウトマウスのグループとを標準的な実験用コントロール食に6ヶ月間維持した。FATP5ノックアウトマウスは野生型対照に比べて有意に少ない白色脂肪量を示した。このように白色脂肪量を測定することによって動物のFATP5活性を評価できる。
【0071】
FATP5介在性脂肪酸または胆汁酸取込みはまた、高脂肪食に維持したマウスの体重、エネルギー消費量及び/または摂食量をモニターすることによって評価できる。実施例3及び4に示すようにして高脂肪食に維持したマウスの体重及び摂食量を測定する実験を行った。FATP5ノックアウトマウスは同じ食餌に維持した野生型マウスよりも有意に少ない体重を示した。更にFATP5ノックアウトマウスは野生型マウスよりも有意に少ない摂食量を示した。また、実施例5に示すように、FATP5ノックアウトマウスは野生型マウスよりも有意に多いエネルギー消費量を示した。このように高脂肪食に維持した動物の体重、エネルギー消費量及び/または摂食量を定量することによってマウスのFATP5活性を評価できる。
【0072】
FATP5介在性脂肪酸取込みはまた、高脂肪食を給餌したマウスの全脂肪量をモニターすることによって評価できる。実施例4に示すようにして高脂肪食に維持したFATP5ノックアウトマウス及び野生型マウスの脂肪量を測定する実験を行った。データは、FATP5ノックアウトマウスが野生型マウスよりも有意に少ない脂肪量を有していたことを示す。従って本発明の別の目的は、高脂肪食に維持した動物の全脂肪量の定量によるFATP5活性の評価を提案することである。
別の特徴によれば、FATP5ノックアウト動物は遊離脂肪酸及び血清トリグリセリドのレベルの低下を示した。実施例6に示すようにして高脂肪食に維持したFATP5ノックアウトマウス及び野生型マウスの遊離脂肪酸及び血清トリグリセリドのレベルを測定する実験を行った。次にマウスを一夜絶食させ、血清を採取した。結果は、遊離脂肪酸及びトリグリセリドの血清レベルについてはFATP5ノックアウトマウスのほうが低い値を有していたことを示す。従って、追加の実施態様では、高脂肪食に維持した動物の遊離脂肪酸及びトリグリセリドの血清レベルをモニターすることによってFATP5活性を評価できる。
【0073】
別の特徴によれば、FATP5ノックアウト動物は肝脂質の湿潤重量パーセントの減少を示す。実施例7に示すように、FATP5ノックアウトマウス及び野生型マウスを高脂肪食に維持した。動物の肝臓を採取し、肝脂質の湿潤重量パーセントを測定した。FATP5ノックアウト動物は野生型対照動物に比べて有意に低い肝脂質の湿潤重量パーセントを示した。このように、高脂肪食に維持した動物の肝脂質含量を測定することによって行うFATP5活性の別の評価方法が提供される。
【0074】
また別の特徴によれば、FATP5ノックアウト動物の表現型は食餌誘発インスリン抵抗性の防御として表れる。実施例5は、グルコースの腹腔内注射後のグルコースの消滅率を比較するために行った実験の結果を示す。グルコース消滅率は、野生型マウスとノックアウトマウスとの間のインスリン刺激全身グルコース取込み及びインスリン介在性肝グルコース産出抑制の割合を表す。インスリン抵抗性を誘発するために、野生型マウスのグループとFATP5ノックアウトマウスのグループとを高脂肪食に維持した。高脂肪食を給餌した野生型マウスではグルコースクリアランス能力が低下しておりインスリン抵抗性の進行を示したが、FATP5ノックアウトマウスは脂質注入及び高脂肪食の効果を完全に防御し正常なグルコース消滅レベルを示しており、これはFATP5欠失によってインスリン抵抗性が防御されたことを示す。従って本発明の別の実施態様は、高脂肪食によって誘発されたインスリン抵抗性の防御を判定することによってFATP5活性を評価する方法を提供する。この判定は、グルコース負荷試験による測定を含む当業界で公知の方法を使用して行うことができる。
【0075】
さらに別の特徴によれば、本発明は、新しい胆汁酸の生合成またはコレステロールの生合成と生合成プロセスに関与する遺伝子とをモニターすることによってFATP5活性を評価する方法を提供する。FATP5ノックアウト動物がコレステロール生合成、胆汁酸生合成に関与する遺伝子の正の調節及び糖新生に関与する遺伝子の負の調節を示すことが知見された。実施例10に示すようにしてFATP5ノックアウトマウス及び野生型マウスの胆汁酸含量と生合成経路の遺伝子発現とをモニターした。動物の肝臓を採取し、組織の胆汁酸及び遺伝子発現を分析した。FATP5ノックアウト動物は野生型対照動物に比べて再循環胆汁酸の抱合不足と新しい胆汁酸の生合成及びコレステロール生合成に関与する遺伝子の発現増加とを示した。更に、FATP5ノックアウト動物は野生型対照動物に比べて糖新生に関与する遺伝子の発現減少を示した。このように、胆汁酸抱合と胆汁酸またはコレステロールの生合成経路とを測定することによってFATP5活性を評価する別の方法が提供される。
【0076】
FATP5のアシル−CoAリガーゼ活性は例えば、アシル−CoA−修飾脂肪酸または胆汁酸の蓄積レベル;補酵素A、ATP及び脂肪酸/胆汁酸の消費量;及び/またはホスフェート、アシル−CoAまたはAMPの産生量を定量することによって測定できる。標識試薬、例えば、蛍光標識、酵素標識または放射性標識した反応体または生成物は当業界で公知の方法で入手及び検出できる。例えば、補酵素A、ATP及び脂肪酸/胆汁酸の消費量は、放射性標識された補酵素A、ATPおよび脂肪酸/胆汁酸のレベルをモニターすることによってモニターできる。あるいは、標識されたホスフェート、アシル−CoAまたはAMPを検出しモニターすることもできる。
【0077】
例えば、1つのタイプのアッセイ例えば細胞ベースのアッセイでは、FATP5活性に対する変調用化合物(例えば、インヒビター)の効果を定量するために、BODIPY−脂肪酸(4,4−ジフルオロ−5−メチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−ドデカン酸)と放射性標識した脂肪酸または胆汁酸(例えば、14C−ラウレート)とを使用する。このアッセイでは、FATP5を発現する細胞を脂肪酸または胆汁酸に接触させ、取込まれなかった脂肪/胆汁酸を洗浄によって除去し、細胞に会合した蛍光または放射能を適当な検出デバイスを使用して測定する。トランスフェクト細胞系(例えば、安定にトランスフェクトされたFATP5を発現するHEK293細胞)及びFATP5を天然に発現する細胞(例えば一次肝細胞)のような適当なFATP5発現細胞を細胞ベースアッセイに使用できる。
【0078】
別のタイプの細胞ベースアッセイでは、脂肪酸の取込みによる細胞内pHの変化を指標物質フルオロホアによって追跡できる。フルオロホアはプレインキュベーション段階で細胞に取込ませる。細胞培地に脂肪酸を添加し、FATP5介在性脂肪酸取込みができるインキュベーション期間の後、蛍光最大値の変化を測定し、細胞内pH変化を表す指標とする。フルオロホアの蛍光最大値はその環境のpHに伴って変化するので脂肪酸取込みを表す指標となり得る。このようなフルオロホアの一例はBCECF(2’,7’−ビス(2−カルボキシエチル)−5(6)−カルボキシフルオレセインである。Rink,T.ら、1982,J.Cell Biol.,95:189−196参照。このようにしてこのアッセイでは、脂肪酸取込みが細胞内pHの低下によって表される。
【0079】
また別のタイプの細胞ベースアッセイは、標識した非抱合胆汁酸に細胞を接触させ、次いで胆汁酸取込みをモニターし、適正な検出方法を使用して細胞内の抱合胆汁酸の量を定量する段階を含む。
FATP5ノックアウト細胞及び哺乳動物が入手可能になれば、FATP5介在性シグナル伝達経路の遺伝的解剖が促進され、FATP5特異的インヒビターの同定が可能になる。例えば、ノックアウト細胞系及びその野生型親細胞系でFATP5の機能を同等に阻害する物質はFATP5非特異的インヒビターとして認知されるであろうが、野生型細胞系のFATP5機能を阻害するがノックアウト細胞系で効果のない物質はFATP5特異的インヒビターとして認知されるであろう。
【0080】
本発明の他の実施態様は、哺乳類FATP5の活性(機能)を阻害する物質、例えば、アンタゴニスト、部分的アンタゴニストを同定する方法を提供する。FATP5のインヒビターは、FATP5遺伝子発現を阻害(発現の部分的または全面的阻害)するかまたはFATP5タンパク質の機能を阻害(機能の部分的または全面的阻害)する物質を包含する。本文中に記載のFATP5活性測定方法は例えばスクリーニング方法及び当業界で公知のFATP5活性測定方法に使用できる。本発明によれば、物質を細胞、一次組織と合せるか及び/または完全動物に投与する。後出の実施例に示すように、投与は、培養培地への添加、組織潅流、ベクターからの発現または注射のような様々な方法で行うことができる。
【0081】
1つの実施態様では、物質をそのFATP5阻害能力、それによるインスリン抵抗性の軽減能力に基づいて同定または評価する。このようなスクリーンはin vivoで行うこともでき、または、処置した動物から単離した細胞を使用してex vivoで行うこともできる。
【0082】
例えば、インスリン抵抗性マウスまたはインスリン抵抗性を示す細胞を本文中に記載のスクリーニング方法に使用できる。本文中に記載の方法または当業界で公知の方法のいずれかによって測定されたグルコース代謝(例えば、取込みまたはクリアランス)の基底レベルを定量できる。本文中では基底レベルという用語を、系の特定操作前のレベルという意味で使用した。被験物質の添加後、グルコース代謝を再度測定する。インスリン抵抗状態に従ってグルコース代謝は変質する。被験物質の存在下でグルコース代謝が正常値に戻る傾向を示すならば、インスリン抵抗性は軽減しており、物質はFATP5インヒビターである。
【0083】
本文中に記載のスクリーニング方法は更に何らかの適当な対照の使用を含み得る。例えば1つの実施態様では、スクリーニング方法が更に、インスリン産生を刺激するために十分な量のグルコースを物質の非存在下及び存在下で野生型マウスに投与する段階と、インスリン産生を刺激するために十分な量のグルコースを物質の存在下でFATP5ノックアウトマウスに投与する段階とを含む。マウスのグルコースクリアランス率を定量する。物質の存在下の野生型マウスのグルコースクリアランス率を物質の非存在下の野生型マウスのグルコースクリアランス率に比較する。また、物質の存在下のFATP5ノックアウトマウスのグルコースクリアランス率を物質の非存在下のFATP5ノックアウトマウスのグルコースクリアランス率に比較する。
【0084】
物質の存在下の野生型マウスのグルコースクリアランス率が物質の非存在下の野生型マウスによるグルコースクリアランス率に比べて増加しており、また、物質の存在下のFATP5ノックアウトマウスによるグルコースクリアランス率が物質の非存在下のノックアウトマウスによって生じたレベルと同等であるならば、この物質はFATP5を特異的に阻害する。本発明のスクリーニング方法では、細胞、野生型マウスまたはFATP5ノックアウトマウスによるグルコース取込み率を本文中に記載または当業者に公知の多様な方法によって定量できる。哺乳動物を使用して体重、肥満、インスリン抵抗性、II型糖尿病、異常脂血症、遊離脂肪酸レベル、トリグリセリドレベル、冠状動脈疾患、高血圧及び卒中の治療に有用な物質をスクリーニングする方法も本発明の範囲内である。インスリン抵抗性の治療に有用な物質を同定するための適当なin vivoまたはex vivoスクリーニング方法は、野生型FATP5遺伝子を含む哺乳動物、組織または培養細胞、例えばマウスに、インスリン産生を刺激するために十分な量のグルコースと被験物質とを投与する段階を含む。
【0085】
マウスのグルコースクリアランス率を測定する。マウスのグルコースクリアランス率を、被験物質の非存在下で同量のグルコースを投与した同一または同様のマウスのグルコースクリアランス率に比較する。マウスのグルコースクリアランス率が被験物質の存在下で増加しているならばインスリン抵抗性の治療に有用な物質が同定されている。
【0086】
同様に、インスリン非依存型真性糖尿病の治療に有用な物質を同定するための適当なin vivoスクリーニング方法は、野生型FATP5遺伝子を含む哺乳動物例えばマウスに、インスリン産生を刺激するために十分な量のグルコースと被験物質とを投与する段階を含む。マウスのグルコースクリアランス率を測定する。マウスのグルコースクリアランス率を、被験物質の非存在下で同量のグルコースを投与した同一または同様のマウスのグルコースクリアランス率に比較する。マウスのグルコースクリアランス率が被験物質の存在下で増加しているならば、インスリン非抵抗性真性糖尿病(non−insulin resistant diabetes mellitus)の治療に有用な物質が同定されている。
【0087】
遊離脂肪酸及びトリグリセリド例えば血清トリグリセリドのレベルを変調するために有用な物質のin vivo及びex vivoのスクリーニング方法も考察できる。このような方法は、野生型FATP5遺伝子を含む哺乳動物例えばマウスに被験物質を投与する段階を含む。被験物質投与後のトリグリセリド及び/または脂肪酸の量を測定し、被験物質投与前のトリグリセリド及び/または脂肪酸の量に比較する。被験物質投与後のトリグリセリド及び/または脂肪酸の量が有意に違っているならば、トリグリセリド及び/または脂肪酸のレベルを変調する物質が同定されている。このような変調は、トリグリセリド及び/または血清トリグリセリドレベルの上昇及び低下の双方を含む。
【0088】
種々の脂肪酸代謝産物の産生または蓄積もこのようにして測定できる。
【0089】
FATP5のアシル−CoAリガーゼ活性は上述のように、in vivo、ex vivo及びin vitroの方法によって測定できる。アシル−CoAリガーゼ活性に基づくスクリーニング方法は例えば、FATP5に結合し、アシル−CoAの蓄積などによって測定されるFATP5のin vitroリガーゼ活性を阻害する物質の同定方法であってもよい。更に、細胞(例えば、脂肪細胞、筋肉細胞または心臓細胞)、組織または動物体内のアシル−CoAの蓄積もFATP5のアシル−CoAリガーゼ活性を阻害する物質のスクリーニングアッセイに使用できる。
【0090】
1つの実施態様で本発明は、インスリン抵抗性の治療に有用な物質のin vitroまたはin vivo同定方法を目的とする。本文中に記載したように、FATP5の阻害はインスリン抵抗性の軽減または消去に導く。従って、FATP5を阻害する物質はインスリン抵抗性を軽減する物質として有用であろう。
【0091】
該方法は、被験物質を哺乳類のFATP5に(例えばin vitro、in vivoまたはex vivo、例えば、生の(native)状態でまたは哺乳類FATP5を超発現するように操作された培養細胞系中で)接触させる段階を含む。被験物質の存在下の哺乳類FATP5のアシル−CoAリガーゼ活性のレベルを定量し、被験物質の非存在下の哺乳類FATP5のアシル−CoAリガーゼ活性のレベルに比較する。アシル−CoAリガーゼ活性のレベルが被験物質の存在下で低下しているときはインスリン抵抗性の治療に有用な物質が同定されている。
【0092】
同様にして、別の実施態様で本発明は、インスリン非依存型真性糖尿病の治療に有用な物質のin vitroまたはin vivo同定方法を目的とする。インスリン抵抗性は2型糖尿病(インスリン非依存型真性糖尿病)の特徴なので、インスリン抵抗性を軽減する物質、例えば、FATP5を阻害する物質がインスリン非依存型真性糖尿病の治療に有用である。該方法は、被験物質を哺乳類のFATP5に接触させる段階を含む。被験物質の存在下の哺乳類FATP5のアシル−CoAリガーゼ活性のレベルを定量し、被験物質の非存在下の哺乳類FATP5のアシル−CoAリガーゼ活性のレベルに比較する。アシル−CoAリガーゼ活性のレベルが被験物質の存在下で低下しているときはインスリン非依存型真性糖尿病の治療に有用な物質が同定されている。
【0093】
トリグリセリド及び/または脂肪酸レベルを低下させるために有用な物質のin vitroまたはin vivo同定方法も考察される。該方法は、被験物質を哺乳類のFATP5に接触させる段階を含む。被験物質の存在下の哺乳類FATP5のアシル−CoAリガーゼ活性のレベルを定量し、被験物質の非存在下の哺乳類FATP5のアシル−CoAリガーゼ活性のレベルに比較する。アシル−CoAリガーゼ活性のレベルが被験物質の存在下で違っているときはトリグリセリド及び/または脂肪酸蓄積の治療に有用な物質が同定されている。
【0094】
いくつかの特定実施態様では、アシル−CoAリガーゼ活性のレベルが物質の存在下で上昇している。別の実施態様では、アシル−CoAリガーゼのレベルが物質の存在下で低下している。変質した活性、即ち活性の変調は本発明に記載の方法によって測定できる。
【0095】
治療方法
本発明はまた、FATP5機能によって冒される状態(例えば、高血糖症)または疾病または障害(例えば、2型糖尿病)の治療または予防方法に関する。例えば本発明は、変質したグルコース/インスリンホメオスタシスを治療(例えば、症状の軽減)または予防する(例えば発症体質個体で)方法を提供する。本文中で使用した“個体”という用語は、ヒト患者を含む種の単一構成員を包含すると理解されたい。1つの実施態様で本発明は、FATP5活性を阻害する物質を個体に投与することによって個体の全身グルコースクリアランスを増進する方法を提供する。
【0096】
この増進は、筋肉細胞及び脂肪細胞へのインスリン刺激性グルコース取込みが増進されたかまたは肝細胞によるインスリン介在性グルコース産生が減退した結果として生じる。いくつかの実施態様で本発明はまた、血清トリグリセリド及び遊離脂肪酸の蓄積を抑制する方法を提供する。
【0097】
別の実施態様で本発明は、FATP5活性を阻害する物質を個体に投与する段階を含む、個体の血中グルコースを減少させる方法を提供する。本発明は更に、FATP5活性を阻害する物質を個体に投与する段階を含む個体の糖尿病(例えば、2型糖尿病)の治療方法を提供する。
【0098】
本発明の方法に使用される物質は例えば、核酸分子(例えば、DNA、RNA、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA)、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、糖タンパク質、多糖、有機分子、無機分子、融合タンパク質、などでよい。
【0099】
物質(例えば、FATP5インヒビターのような治療用物質)は多様な方法で宿主に投与できる。可能な投与経路としては、皮内、経皮(例えば、徐放性ポリマーの使用)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下または経口などの経路がある。簡便な任意の投与経路、例えば、注入もしくは濃縮塊注入、または、上皮もしくは粘膜皮膚のライニングによる吸収を使用できる。物質は医薬品に許容される賦形剤、担体、ビヒクルまたは希釈剤のような他の成分と組合せて投与できる。
【0100】
FATP5の機能を阻害するように設計された治療方法では、“有効量”の物質を個体に投与する。本文中で使用した“有効量”という用語は、例えば、FATP5の活性を阻害し(または低下させ)その結果として有意な、例えば統計的に有意な差を生じさせる量、例えば、常態ではFATP5の調節下、例えば負の調節下にある細胞機能の亢進または減退を生じさせる量を意味する。例えば、高血糖症個体に投与された有効量の治療用物質という用語は、FATP5によって促進される脂肪酸または胆汁酸の取込みを変質させ(阻害し)これによってインスリンの有効使用を促進するため、即ちインスリン抵抗性を軽減するために十分な量を含意するであろう。FATP5活性を阻害するために必要な物質の量は、宿主の体格、年齢、体重、全般的健康状態、性別及び食事や、投与時間、治療対象である特定の状態または疾病の期間または時期のような多様な要因次第で変更されるであろう。有効な用量範囲はヒト以外の、例えば、本文中に記載のFATP5ノックアウトマウスを利用するin vitroまたはin vivoの試験系で得られた用量−応答曲線から外挿できる。
【0101】
本文中で参照したすべての特許、特許出願及び参考文献はその記載内容全部が参照によって本発明に含まれるものとする。
以下の実施例の目的は本発明を例示することであり、本発明の範囲がこれらに限定されないことを理解されたい。
【実施例1】
【0102】
FATP5ノックアウトマウスの作製
FATP5ターゲティング構築物の作製:
マウスFATP5遺伝子座を含有するゲノムDNAは、129/Svゲノム細菌性人工染色体ライブラリー(Research Genetics)をマウスFATP5コーディング配列の5’端を含有しているフラグメントでスクリーニングすることによって得られた。陽性クローンをPstIで消化した。FATP5−含有フラグメントをサザンブロット法によって同定し、標準シャトルベクターにサブクローニングした。ターゲティング構築物を作製するために、PCRプライマーは、開始コドンの直ぐ上流のゲノムDNA(5’アーム)と第一コーディングエキソンの直ぐ下流のゲノムDNA(3’アーム)とを増幅できるように設計した。PCRプライマーは、5’アームの3’端にXbaI部位及び3’アームの5’端にPstI部位を導入するように設計した。増幅されたアームをターゲティングベクターpGEMneo−lacZ(Promega)にサブクローニングした。Mercerら、Neuron 7:703−716,1991参照。lacZコーディング配列は5’アームの直ぐ下流に局在し、従ってlacZはFATP5プロモーターの転写コントロール下に置かれた。
【0103】
サザンブロット法によって組換えイベントが確認できるように、プローブはターゲティング構築物に存在するアームに直ぐ隣接のゲノムDNAから作製した。5’プローブを作製するために、5’アームの直ぐ上流を起点とするゲノムDNAのフラグメントをPCRによって増幅し、シャトルベクターにサブクローニングした。3’プローブを作製するために、3’アームの90ヌクレオチド下流を起点とするゲノムDNAのフラグメントをPCRによって増幅し、シャトルベクターにサブクローニングした。正しい組換えイベントが生じると、FATP5タンパク質の第一アミノ酸が欠失し、FATP5遺伝子の第一コーディングエキソンがlacZ遺伝子で置換され、その後方にPGK−neoカセットが存在する。
【0104】
ターゲットとしたES細胞の作製:
129SvEv ES細胞系は、有糸分裂的に不活性のSNL76/7支持細胞上で従来技術に記載されているようにして培養した。Robertson、E.J.,ed.Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A practical approach,IRL,Oxford,1987.Pp71−112参照。細胞の電気穿孔は従来技術に記載されているようにして行った。Huszarら、(1997)Cell 88:131−141参照。簡単に説明すると、細胞をトリプシン処理し、1.0×107/mlの濃度でPBS(Ca及びMg非含有、Gibco)に再懸濁させた。0.7mlのアリコート(7×106細胞)を20μgの直鎖化したターゲティングベクターと混合し、250V,500μF(Bio−Rad Gene Pulser)でパルスを加えた。次いで、細胞を培養培地に希釈し、支持細胞を入れたプレート100mmあたり1−2×106で平板培養し、24時間後、G418スルフェート(300μg/ml溶液;Gibco)中で選択下に維持した。G418−耐性クローンを採取し、トリプシンで解離し、2個の96−ウェルプレートの各々の1つのウェルに分配した。単層集密状態に達すると、従来技術に記載されたようにして一方の96−ウェルプレートのES細胞を凍結させた。例えば、Ramirez−Solisら、(1993)Meth Enzymol 225:855−878参照。サザンブロットハイブリダイゼーションによってスクリーニングするためのDNAを他方のプレートから調製した。陽性クローンを伸長し、組換えを確認するために5’及び3’のフランキングプローブを使用しサザンブロットハイブリダイゼーションによって分析した。
【0105】
FATP5−欠損マウスの作製:
正しい相同的組換えイベントを生じたES細胞クローンを未分化胎細胞に注入し、次いで偽妊娠雌マウスに移入してキメラ子孫を産生させた。雄のキメラをC57B/6J雌と交尾させ、破壊されたFATP5遺伝子の胚細胞系列が伝達されるようにした。得られたヘテロ接合体を交配(interbreed)すると、FATP5突然変異に関してホモ接合(FATPノックアウト、FATP KO)またはヘテロ接合のマウスが野生型同腹仔と共に産生した。いくつかの実験では、同一世代のFATP5ノックアウトマウスの交配によって産生したホモ接合FATP5 KOマウスと、同一世代の野生型マウスの交配によって産生した野生型同腹仔とを使用した。
【実施例2】
【0106】
コントロール食に維持した野生型マウス及びFATP5ノックアウトマウスの体重及び脂肪過多症
6匹の雄のFATP5 KO及び野生型同腹仔(対照)を誕生から26週齢まで標準コントロール食(20kcal%脂肪)に維持した。体重、白色脂肪、例えば、精巣上体の脂肪パッドと腹膜後方の脂肪パッド、及び、褐色脂肪、例えば、肩甲骨内の褐色脂肪組織の重量を26週の期間後に測定した。FATP5 KOマウスは野生型対照に比べて白色脂肪量が有意に減少していた。表I参照。
【0107】
【表1】

【実施例3】
【0108】
高脂肪食に維持した野生型及びFATP5ノックアウトマウスの体重/摂食量
14匹の雄のFATP5 KOマウス及び野生型マウスを8週齢から開始した高脂肪食(58kcal%脂肪)に維持した。高脂肪食の開始前に体重を測定し、高脂肪食の11週後に再度測定した。同様にして、11週間の累積摂食量を測定した。FATP5 KOマウスは野生型対照に比べて高脂肪誘発体重増加を完全に防御していた。更に、高脂肪食に維持したFATP5 KOマウスは摂食量の減少を示した。表II参照。
【0109】
【表2】

【実施例4】
【0110】
高脂肪食に維持したFATP5ノックアウトマウス及び野生型マウスの体組成
14匹の雄のFATP5 KOマウス及び野生型マウスを実施例3と同様にして高脂肪食に維持した。FATP5 KOマウスは上記と同様に高脂肪誘発体重増加を完全に防御した。17週の高脂肪食(58kcal%脂肪)後に体重及び体組成を定量した。FATP5 KOマウスは脂肪過多症を防御していたが、FATP5 KO動物と野生型動物との間で無脂肪量の差は観察されなかった。表III参照。
【0111】
【表3】

【実施例5】
【0112】
高脂肪食に維持したFATP5ノックアウトマウス及び野生型マウスのエネルギー消費量
14匹の雄のFATP5 KOマウス及び野生型マウスを実施例3と同様にして高脂肪食に維持した。17週の高脂肪食(58kcal%脂肪)後に熱量測定分析を使用してエネルギー消費量を定量した。結果は、FATP5 KOマウスが野生型マウスよりも有意に高いエネルギー消費量を有していたことを示した。表IV参照。
【0113】
【表4】

【実施例6】
【0114】
FATP5欠失は食餌誘発インスリン抵抗性を防御する
高脂肪給餌はマウスのインスリン抵抗性を誘発する。FATP5が食餌誘発インスリン抵抗性を防御するか否かを判定するために、グルコース負荷試験を行った。簡単に説明すると、FATP5 KOマウス及び野生型マウスを高脂肪食(58kcal%脂肪)または標準規定のコントロール食に維持した。マウスを一夜絶食させ、2mg/kgのグルコースを腹腔内注射した。グルコース計(Bayer)を製造業者のプロトコルに従って使用して180分間を6等分した時間毎に血中グルコースレベルを測定した。高脂肪食に維持したFATP5 KO動物はコントロール食に維持した野生型マウスと同様のグルコースクリアランスプロフィルを有していたが、高脂肪食に維持した野生型マウスではグルコースクリアランスプロフィルが有意に悪化していた。表V参照。
【0115】
【表5】

【実施例7】
【0116】
FATP5欠失動物は絶好の血漿脂質プロフィルを示す
FATP5ノックアウトマウス及び野生型マウス(n=14、8週齢)に高脂肪食を28週間給餌した。対照として対等な週齢の野生型マウスをコントロール食に維持した。一夜絶食させた動物から血清を採取した。市販のキットを使用して、トリグリセリド、遊離脂肪酸、コレステロール、ベータ−ヒドロキシブチレート(いずれもSigma)並びにインスリン及びレプチン(双方ともCrystalChem)を測定した。血清トリグリセリドレベルの低下傾向が観察され、FATP5ノックアウト動物では遊離脂肪酸レベルが有意に低下した。一夜絶食させた動物の血清検査によれば、FATP5ノックアウト動物は血清コレステロール、ケトン体(ベータ−ヒドロキシ−ブチレート)またはリポタンパク質プロフィル(示さず)の変化を示さなかったので、他のパラメーターはKO動物と野生型動物との間で有意な差がほとんどないことが判明した。従って、FATP5の阻害は副作用をまったく生じないと考えることができ、血中脂質プロフィルにプラスの効果を与えるであろう。表VI参照。
【0117】
【表6】

【実施例8】
【0118】
FATP5ノックアウトマウスは肝脂質レベルの低下を示す
FATP5ノックアウトマウス及び野生型マウスを高脂肪食に28週間維持した。対照として対等な週齢の野生型マウスをコントロール食に維持した。28週後に肝臓を摘出し、肝脂質を湿潤重量%として測定した。FATP5ノックアウト動物は野生型対照動物に比べて肝脂質レベルが低下していた。これは脂肪肝疾患の防御を示唆する。表VII参照。
【0119】
【表7】

【実施例9】
【0120】
FATP5欠失の結果として糞便の脂肪は少し減少するが糞便のカロリーに有意な差はない
FATP5ノックアウト動物及び野生型動物を上述のようにして高脂肪食に11週間維持した。動物の糞便を集めて糞便中の脂質レベルを乾燥重量パーセントとして測定した。FATP5ノックアウト動物は糞便脂質レベルの僅かな上昇を示した。表VIII参照。また、FATP5ノックアウト動物に高脂肪食を5日間給餌し、糞便を集め、ボンベカロリー測定法で糞便の全カロリー含量を測定した。データは、糞便の全カロリーは野生型マウスとFATP5ノックアウトマウスとの間で差がないことを示す。表IX参照。
【0121】
【表8】

【0122】
【表9】

【実施例10】
【0123】
FATP5欠失マウスは再循環胆汁酸の抱合不足があり、新しい胆汁酸の生合成の増加を示す
FATP5欠失マウスの胆汁酸組成
絶食させた野生型マウス及びFATP5ノックアウトマウスから胆汁を採取し、胆汁酸組成をLC−MSによって分析した。胆汁酸グループは市販の標準を使用して同定した。主要胆汁酸グループの各々で個々の胆汁酸ピークの曲線下方面積(AUC)を定量し、野生型マウス及びノックアウトマウスの主要胆汁酸グループの相対的存在量として同定した。胆汁酸の総量は双方のマウスグループで同様であったが、FATP5欠失マウスから採取した胆汁は主として非抱合の胆汁酸を含有していたのに、野生型マウスから採取した胆汁酸のほとんどは抱合していた。更に、FATP5欠失マウスは野生型マウスに比べてジヒドロキシ化胆汁酸が有意に少なく、テトラヒドロキシル化胆汁酸が増加していた。表X参照。
【0124】
【表10】

【0125】
野生型マウス及びFATP5ノックアウトマウスの各々のタウリン−抱合ジヒドロキシル化胆汁酸の検査は、FATP5欠損動物グループ中のこの画分は全面的にタウロケノデオキシコレート即ち新規合成によって産生される胆汁酸から構成されることを証明した。対照的に、新規合成でなく腸肝再循環中に産生される胆汁酸の2つの種、タウロヒオデオキシコレート及びタウロデオキシコレートは野生型動物で検出されたが、ノックアウトマウスではバックグラウンドレベルを上回って検出されることはなかった。表XI参照。我々のデータは、FATP5が腸肝再循環中の胆汁酸の抱合には必要であるが新規合成には必要でないことを示唆する。新規合成は胆汁中の胆汁酸の少ないパーセンテージを占めるだけなので、腸肝再循環の欠如は全胆汁酸プールを非抱合種の方向にシフトさせるであろう。
【0126】
【表11】

【0127】
遺伝子発現解析
FATP5欠失の結果を更に検討するために、我々は転写プロファイリングとリアルタイムRT−PCR解析とを併用して野生型マウスとFATP5欠失マウスとの肝臓における遺伝子発現を比較した。転写プロファイリングGeneChip解析を製造業者(Affymetrix,Santa Clara,CA)の指示通りに行うことによって、または、TaqMan定量的PCR解析を製造業者(Perkin Elmer Applied Biosystems,Foster City)の指示通りに行うことによって遺伝子発現を測定した。
【0128】
転写プロファイリング実験のためには、TriazolTM(Life Technologies,Inc.)を製造業者の指示通りに使用することによって均質化組織から全RNAを単離した。RNAをジエチルピロカーボネートで処理した脱イオン水に入れて80℃で保存した。サンプルの標識及びその後のアレイへのハイブリダイゼーションに関する方法の詳細はAffymetrix(Santa Clara,CA)から得られる。簡単に説明すると、5.0μgの全RNAを、T7ポリメラーゼプロモーター(Affymetrix Inc.)を含有しているT7−(dT)24プライマーと共に第一ストランド合成をプライミングする二重鎖cDNAに変換した(Superscript;Life Technologies,Inc.)。次いで、全部の二重鎖cDNAを、取込んだT7プロモーター配列を使用するビオチニル化cRNA作製の鋳型として、in vitro転写系(Megascriptキット;Ambion及びBio−11−CTP及びBio−16−UTP;Enzo)に使用した。10μgのcRNAに対照オリゴヌクレオチド及びスパイクを添加し、次いでMu U74オリゴヌクレオチドアレイに定速回転を維持しながら45℃で16時間ハイブリダイズさせた。次にアレイを洗浄し、EUKGE−WS1プロトコルを使用してAffymetrix fluidicsステーションで染色し、Affymetrix GeneArrayスキャナーで走査した。MAS5.0ソフトウェアを使用してデータ解析を行った。
【0129】
リアルタイムPCR実験のためには、同じくtrizol法を使用して全RNAを作製し、DNアーゼで処理して夾雑ゲノムDNAを除去した。cDNAを標準法で合成した。逆転写酵素の非存在下のMock cDNA合成によって得られたサンプルでは対照18S遺伝子の検出可能なPCR増幅が全く生じていなかったので、ゲノムDNA夾雑の効率的な除去が確認された。PCRプローブは該当遺伝子配列に基づくPrimerExpressソフトウェア(Perkin Elmer Applied Biosystems)によって設計した。異なる組織間の結果を標準化するために、異なる蛍光ラベルによって識別できる2つのプローブを各サンプルに加えた。このように遺伝子用プローブと18S RNA用プローブ(内部対照として)との示差標識を使用すると同一ウェル中の双方の同時的測定が可能であった。順方向及び逆方向のプライマーと18S RNA及び該当遺伝子の双方のプローブとをTaqMan汎用PCRマスターミックス(PE Applied Biosystems)に加えた。プライマー及びプローブの最終濃度が変わることはあったが、所与の1つの実験中では各々の濃度が内部的に不変であった。典型的な実験では、18S RNAには各200nMの順方向及び逆方向のプライマーと100nMのプローブとを使用し、該当遺伝子には各600nMの順方向及び逆方向のプライマーと200nMのプローブとを使用した。TaqManマトリックス実験はABIPRISM770配列検出システム(PE Applied Biosystems)を使用して行った。サーマルサイクラーには以下の条件を使用した:50℃で2分、95℃で10分、次いで、95℃で15秒次いで60℃で1分の2段階PCRを40サイクル。
【0130】
組織サンプル中の遺伝子発現を同じ組織中の18S RNA発現に相対的に定量計算するために以下の方法を使用した。PCR増幅が開始される閾値を製造業者のソフトウェアを使用して決定した。閾値におけるPCRサイクル回数をCTで表す。相対的発現は、2−((CTtest−CT18S)該当組織−(CTtest−CT18S)パネル中の最低発現組織)として計算した。サンプルを重複処理し、内部対照18Sの勾配と同様の勾配をもつ鋳型cDNAの量に比例した2つの相対的発現レベルの平均を使用した。発現倍率は野生型対照動物の相対的発現レベルに比べたFATP5欠失動物の相対的発現として定量した。
【0131】
コレステロール及び胆汁酸の双方の生合成経路に関与する遺伝子の正の調節が観察された。胆汁酸によって活性化される既知の核ホルモン受容体であるFXRのいくつかのターゲット遺伝子(Parksら、Science 284:1365−8,1999)は、FXRの活性低下を示唆するように調節されている。FXRはジヒドロキシ胆汁酸によって強力に活性化されるが、トリヒドロキシ胆汁酸にはほとんど感応しないので(Parksら、Science 284:1365−8,1999)、FXRの活性低下はFATP5ノックアウト動物に見られるジヒドロキシ胆汁酸のレベル低下と符合する。表XII参照。
【0132】
コレステロールの生合成及びコレステロール取込みに関与する遺伝子LDL−Rの双方の正の調節は、胆汁酸合成亢進の存在下で細胞内コレステロールレベルを正常に維持する適応応答であった。ノックアウト動物で脂肪酸酸化遺伝子の調節はほとんど観察できなかったが、これは、FATP5欠失動物で呼吸交換率が不変であるという知見と符合する。更に我々は、糖新生に関与する基幹遺伝子の強力な負の調節を観察した。これもFATP5欠失動物でインスリン感受性が改善される理由の1つであろう。表XII参照
【0133】
【表12】

【実施例11】
【0134】
FATP5によるアシル−CoAリガーゼ活性
hsFATP5の発現及び精製
C−末端6x−HISタグを含んでいるヒトFATP5コーディング配列をpFastBACベクターに挿入し、hsFATP5−Hisを発現するバキュロウイルスを常法を使用して構築した。hsFATP5−Hisを含有しているバキュロウイルスをSf9昆虫細胞に感染させ、48時間後に採取し、液体窒素で凍結した。溶菌バッファ(50mMのトリス,pH8.0、20mMのイミダゾール、1MのNaCl、0.5%のn−ドデシル−マルトシド、10%のグリセロール、プロテアーゼインヒビターの標準カクテルを含有している1mMの2−メルカプト−エタノール)に入れた細胞を氷上で解凍し、音波処理によって溶解した。溶解液を4℃、17,700gで30分間過流させ、上清を溶菌バッファで平衡させたNi−NTAスーパーフロー樹脂(Quiagen)に塗布した。0.5リットルの細胞あたり500μlの樹脂を使用した。樹脂を穏やかに撹拌しながら4℃で1時間インキュベートし、4℃、400gで15分間遠心し、樹脂を10mlのBiorad使い捨てカラムに移した。40カラム容量の平衡バッファでカラムを洗浄し、2カラム容量の溶出バッファ(50mMのトリス,pH8.0、250mMのイミダゾール、1MのNaCl、0.5%のn−ドデシル−マルトシド、10%のグリセロール、プロテアーゼインヒビターの標準カクテルを含有している1mMの2−メルカプト−エタノール)を添加することによって結合材料を溶出させた。各溶出画分でhsFATP5が主要バンドであり、Code Blue(Pierce Chemicals)染色によって判定すると約70%純度であった。主要バンドがhsFATP5に一致することはトリプシン消化物のMALDI−TOF分析及びN−末端マイクロ配列決定によって確認された。溶出した材料を−20℃で保存した。ウェスタンブロット分析は、この方法を使用してFATP5を精製することはできるが流出画分中にも有意量のhsFATP5−Hisが存在することを示した。
【0135】
N−末端GSTタグを含有しているヒトFATP5コーディング配列をpFastBACベクターに挿入し、GST−hsFATP5を発現するバキュロウイルスを常法を使用して構築した。hsGST−FATP5を含有しているバキュロウイルスをSf9昆虫細胞に感染させ、48時間後に採取し、液体窒素で凍結した。精製にグルタチオンセファロース4B樹脂を使用しタンパク質をグルタチオン溶出バッファ(50mMのトリス,pH8.0、50mMのグルタチオン、1MのNaCl、0.5%のn−ドデシル−マルトシド、10%のグリセロール、プロテアーゼインヒビターの標準カクテルを含有している1mMの2−メルカプト−エタノール)で溶出させた以外はhsFATP5−Hisに関して上述した手順と同様の手順で細胞を解凍し、タンパク質を精製した。
【0136】
FATP5 アシル−CoAリガーゼ活性は当業界で公知の方法のいずれかによって測定できる。粗アッセイ、マラカイトグリーンアッセイまたは質量分析法を使用する酵素活性定量法などが代表例である。
【0137】
粗アシル−CoAリガーゼ活性アッセイ
KellyとVesseyの修正方法((1994)Biochem J.304:945−949)を使用してアシル−CoAリガーゼ活性アッセイを行った。50μgの未精製上清または2μgのカラム精製材料を0.5mLの容量中、100mMのトリス,pH7.4、10μMのCoA、10μMのコレート、15mMのMnCl、1mMのATPと共に30℃でインキュベートした。0.05mLの0.1MのEDTA,pH7.5及び0.2mLの60mMのコハク酸を加えて反応を停止させた。未反応のコレートをドール試薬(イソプロピルアルコール、ヘプタン、1MのHSO;容量比40:10:1)で抽出した。激しく撹拌した後、遠心によってタンパク質を除去し、650μlの上清を、350μlのヘプタンと190μlの400nMのMops−NAOH(pH6.5)含有溶液で抽出した。下部相(水相)を400μlのヘプタンで3回洗浄し、この画分中の放射能をシンチレーションカウンターで測定した。活性をタンパク質1mgあたりのpmol/分として表した。
【0138】
マラカイトグリーンアシル−CoAリガーゼ活性アッセイ
FATP5活性はまたマラカイトグリーンを検出手段として使用する方法によって測定できる。反応ミックスは、以下の成分を含有している:50mMのトリス,pH7.5、60μMの胆汁/脂肪酸、50μMの補酵素A、0.625U/mlの無機ピロホスファターゼ、1mMのMgCl、120μMのATP、及び、FATP5未精製膜調製またはカラム精製から得られた2μgの全タンパク質。EDTA(最終濃度0.1M)で反応を停止させ、ホスフェート検出のために50μlのマラカイトグリーン溶液(0.45gのマラカイトグリーン、7グラムのモリブデン酸アンモニウム、1.33NのHCl、1Lの最終容量)を添加した。マラカイトグリーン添加の30分後にSpectramax 384プレートリーダーで610nmの吸光度を測定する。
【0139】
LC/MSを使用するアシル−CoAリガーゼ活性アッセイ
さらにまた、FATP5酵素活性は、Ikegawaら((1999)Anal.Biochem.266;125−132)によって開発されたLC/MSアッセイの修正バージョンを使用する生成物アシル−CoAの直接検出によって測定できる。胆汁酸基質としてコレート及びケノデオキシコレートを使用するFATP5のLC/MSアッセイを以下に説明する。基質として脂肪酸も使用した。
【0140】
反応ミックスは、以下の成分を含有している:50mMのトリス,pH7.5、60μMの胆汁酸(または脂肪酸)、50μMの補酵素A、1mMのDTT、0.42U/mlの無機ピロホスファターゼ、1mMのMgCl、120μMのATP、及び、FATP5精製(上述)から得られた2μgの全タンパク質。反応は基質の添加によって開始し、酢酸(最終濃度=0.63%)によって停止する。停止した反応混合物(50μL)を、シングル四重複質量分析計(G1946D SLモード)を備えたAgilent 1100HPLCシステムに注入する。5−95%アセトニトリル勾配(有機相またはB相)に0.5mL/分の流速で18分間流す(水相またはA相は10mMの酢酸アンモニウム)。総処理時間は20分で、1分間の初期平衡時間と勾配終了後の1分間の平衡時間とを含む。以下の質量対電荷比をSIM(single ion monitoring)モードでモニターする:コレート(407.6)コリル−CoA(1156.5,577.5)、ケノデオキシコレート(1141,569)及びCoA(766)。
【0141】
FATP5未精製膜調製から得られた材料は0.06μM/分のアシル−CoAリガーゼ活性を示したが、精製タンパク質画分は0.09μM/分のアシル−CoAリガーゼ活性を示した。対照的に、非類縁タンパク質を発現している昆虫細胞から得られた材料は精製画分中でいかなる活性も示さなかった。これらのデータは、CoAリガーゼ活性がFATP5タンパク質と関連している証拠を提供しFATP5タンパク質機能を検定するために使用できるであろう。
【0142】
本文中に記載のアッセイまたはアシル−CoAリガーゼ活性を評価する当業界で公知の他の類縁アッセイは、FATP5インヒビター候補化合物の高スループットスクリーニングに対応するように修正できる。
【実施例12】
【0143】
胆汁酸または脂肪酸の取込みを変調する物質のスクリーニング
pIRES−mFATP5ベクターを安定にトランスフェクトしたヒト胚性腎293細胞を培養し、DMEM基礎培地に移した。ウェルあたり8×10細胞を96−ウェルのマイクロタイタープレートで平板培養し、洗浄バッファ(1×のハンクス基礎塩類溶液中に20mMのHEPES、4.2mMのNaHCO)で洗浄した。次に洗浄バッファ中の1mMのタウロコレート中のインヒビターを37℃で細胞に添加する。5mMの最終濃度のBODIPY−脂肪酸(4,4−ジフルオロ−5−メチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−ドデカン酸)を添加することによって取込みアッセイを開始する。取込みアッセイを15−60分間維持し、洗浄バッファ中の0.1%ウシ血清アルブミンで洗浄することによって停止させる。次に、細胞によって取込まれたBODIPY−脂肪酸の量を、洗浄後の細胞の蛍光を測定することによって定量する(励起=450nm、発光=530nm)。取込みの阻害をインヒビター濃度の関数として示すグラフを作成し、等式(Y=max+(max−min)/(1+10(logIC50−X)HillSlope))に適合させることによってインヒビターのIC50値を計算する。
【0144】
本発明をその好ましい実施態様に基づいて詳細に表示及び記述したが、特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱することなく形態及び細部の多様な変更が可能であることは当業者には理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物がFATP5介在性代謝障害を変調し得る候補化合物であるか否かを同定するための方法であって、
a.被験化合物とFATP5ポリペプチドを含む組成物とを合せる段階と、
b.被験化合物の存在下及び非存在下の組成物中のFATP5ポリペプチドのアシル−CoAリガーゼ活性を測定する段階と、
c.化合物の存在下のFATP5ポリペプチドアシル−CoAリガーゼ活性が化合物の非存在下のFATP5ポリペプチドアシル−CoAリガーゼ活性とは異なっているときに被験化合物をFATP5介在性代謝障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階と、
を含み、FATP5介在性代謝障害が、体重、インスリン抵抗性、異常脂血症、脂肪肝疾患及び心血管疾患から成るグループから選択される方法。
【請求項2】
FATP5ポリペプチドを含む組成物が、FATP5ポリペプチドを発現する細胞、FATP5ポリペプチドを含む膜調製物、及び、単離FATP5ポリペプチドから成るグループから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
FATP5ポリペプチドのアシル−CoAリガーゼ活性が、
a.ホスフェート、アシル−CoAまたはAMPの産生、
b.補酵素A、ATPまたは脂肪酸もしくは胆汁酸の消費、及び、
c.脂肪酸または胆汁酸の取込み
から成るグループから選択される活性を測定することによって定量される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アシル−CoAリガーゼ活性が胆汁酸CoAリガーゼ活性である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
化合物がFATP5介在性代謝障害を変調し得る候補化合物であるか否かを同定するための方法であって、
a.被験化合物とFATP5ポリペプチドを含む組成物とを合せる段階と、
b.被験化合物がFATP5ポリペプチドに結合するか否かを判定する段階と、
c.段階(b)でFATP5ポリペプチドに結合すると同定された化合物を哺乳動物に投与する段階と、
d.被験化合物がFATP5介在性プロセスを変調するか否かを判定する段階と、
e.段階(d)でFATP5介在性プロセスを変調する被験化合物をFATP5介在性障害を変調するために有用な候補化合物として同定する段階と、
を含み、FATP5介在性プロセスが、体重、体脂肪組成、摂食行動、インスリン抵抗性、グルコース取込み、肝グルコース産出、脂肪酸取込み、胆汁酸取込み、肝脂質含量、血漿、肝臓、胆汁または糞便中の胆汁酸組成、異常脂血症、及び、血漿脂質組成から成るグループから選択され、FATP5介在性代謝障害が、体重、インスリン抵抗性、異常脂血症、脂肪肝疾患及び心血管疾患から成るグループから選択される方法。
【請求項6】
FATP5ポリペプチドを含む組成物が、FATP5ポリペプチドを発現する細胞、FATP5ポリペプチドを含む膜調製物、及び、単離FATP5ポリペプチドから成るグループから選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
更に、
c.FATP5アシル−CoAリガーゼ活性を変調すると同定された被験化合物を哺乳動物に投与する段階と、
d.被験化合物がFATP5介在性プロセスを変調するか否かを判定する段階と、
e.段階(d)でFATP5介在性プロセスを変調する被験化合物をFATP5介在性障害を変調するために有用な候補化合物として同定する段階と、
を含み、FATP5介在性プロセスが、体重、体脂肪組成、摂食行動、インスリン抵抗性、グルコース取込み、肝グルコース産出、脂肪酸取込み、胆汁酸取込み、肝脂質含量、血漿、肝臓、胆汁または糞便中の胆汁酸組成、異常脂血症、及び、血漿脂質組成から成るグループから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
化合物がFATP5介在性代謝障害を変調し得る候補化合物であるか否かを同定するための方法であって、
a.被験化合物とFATP5ポリペプチドを発現し得る細胞を含む組成物とを合せる段階と、
b.被験化合物の存在下及び非存在下の組成物中のFATP5ポリペプチドの発現を測定する段階と、
c.化合物の存在下のFATP5ポリペプチド発現が化合物の非存在下のFATP5ポリペプチド発現とは異なっているときに被験化合物をFATP5介在性代謝障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階と、
を含み、FATP5介在性代謝障害が、体重、インスリン抵抗性、異常脂血症、脂肪肝疾患及び心血管疾患から成るグループから選択される方法。
【請求項9】
FATP5発現が、転写物レベル、タンパク質レベル、脂肪酸もしくは胆汁酸取込み活性、または、アシル−CoAリガーゼ活性のいずれかを測定することによって定量される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
有効量のFATP5活性阻害物質を個体に投与する段階を含む個体のFATP5介在性代謝障害の治療方法。
【請求項11】
FATP5介在性代謝障害が、肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病、異常脂血症、脂肪肝疾患及び心血管疾患のグループから選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
異常脂血症が、高い血清トリグリセリドレベル、高い胆汁酸レベル、及び、高い遊離脂肪酸レベルから成るグループから選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
心血管疾患が、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧及び虚血性心疾患から成るグループから選択される請求項11に記載の方法。
【請求項14】
化合物がFATP5介在性代謝障害を変調し得る候補化合物であるか否かを同定するための方法であって、
a.被験化合物及び脂肪酸または胆汁酸とFATP5ポリペプチドを発現する試験細胞とを合せる段階と、
b.試験細胞中の脂肪酸または胆汁酸の取込みを測定する段階と、
c.化合物の存在下の試験細胞への脂肪酸または胆汁酸の取込みが化合物の非存在下の試験細胞への脂肪酸または胆汁酸の取込みとは異なっているときに被験化合物をFATP5介在性代謝障害の変調に使用するための候補化合物として同定する段階と、
を含み、FATP5介在性代謝障害が、肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病、異常脂血症、脂肪肝疾患及び心血管疾患から成るグループから選択される方法。
【請求項15】
異常脂血症が、高い血清トリグリセリドレベル、高い胆汁酸レベル、及び、高い遊離脂肪酸レベルから成るグループから選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
心血管疾患が、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧及び虚血性心疾患から成るグループから選択される請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2007−502619(P2007−502619A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523973(P2006−523973)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/026645
【国際公開番号】WO2005/019423
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(500287639)ミレニアム・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】