説明

伝導伝熱乾燥機からの排気を利用した発電方法及び発電機能を有する乾燥設備

【課題】排気として得られる湿ガスの熱を、効率的に発電の熱源として利用することができる伝導伝熱乾燥機および、熱源の回収方法および装置を提供する。
【解決手段】伝導伝熱乾燥機に供給された被乾燥材料を乾燥させることによって生じた排気を、乾式除塵器及び/または湿式除塵器を通して除塵し、作動媒体を用いた発電装置に熱源として供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学薬品、樹脂原料等の被乾燥材料の乾燥に使用される伝導伝熱乾燥機と、有機溶媒を使用したランキンサイクル(ORC)を利用した発電装置及び発電方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製造業(食品工業、肥料工業、無機化学、有機化学、石油化学、製鉄)、発電事業、環境保全事業の分野では、多種類かつ大量の湿潤物質の乾燥が必要な場面も多く、各種の乾燥機が使用されている。被乾燥材料としては、ソーダ灰、石膏、パルプ、ポリマー(ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン等)、合成繊維原料(テレフタル酸等)、製鉄用原料炭(コークス原料炭)、発電用褐炭、各種排水処理から発生する汚泥等があり、これらの含水率は10%から70%である。
【0003】
乾燥機の中で、大量の排気を発生するものに伝導伝熱型がある(非特許文献1)。伝導伝熱乾燥機とは、機器攪拌可能な容器内に管状、平板状の伝熱手段を設け、蒸気、熱水、熱媒体等を加熱源とし、伝熱面を介して被乾燥材料より液体(溶剤)を蒸発させる乾燥機である。伝導伝熱乾燥機の中で代表的なものとして、水蒸気管付回転乾燥器(スチームチューブドライヤー、STD)、管外加熱式乾燥機(非特許文献1)、溝型攪拌乾燥機が挙げられる。
【0004】
STDは、回転円筒内に多数の加熱管を有する構造である。被乾燥材料は、回転円筒の一端から、加熱管の外側に供給される。加熱管内部に供給される蒸気により、加熱管外部に存在する被乾燥材料に管壁を通して熱が供給され、蒸発した水分は一端より排気され、乾燥された材料は、他端より乾燥品として取り出される。
【0005】
一方、管外加熱式乾燥機は、非特許文献2に記載されているように、回転円筒内に組み込まれた多数の円筒の内部に湿り材料が供給される構造である。回転円筒内に蒸気が吹き込まれることで、被乾燥材料が加熱され、水分が蒸発する。材料供給端より蒸発水分を取り出し、他端より乾燥品を取り出すことで連続運転を行うことができる。
【0006】
溝型攪拌乾燥機は、断面がU型の溝型容器の外部に加熱ジャケットを固定し内部に加熱手段(加熱板)を持った攪拌翼を備え、固形物の輸送と攪拌を同時に行う。
【0007】
これらの伝導伝熱乾燥機におけるキャリアガスと被乾燥材料の流れについては、被乾燥材料の水分量が高い場合は並流型が用いられ、限界水分量以下の場合には向流型が用いられることが多い。
【0008】
伝導伝熱乾燥機は、乾燥で蒸発した水蒸気を大気に放散させる場合は開放型乾燥機が用いられるが、蒸発物が溶剤の場合には、排気から溶剤を回収するため、密閉型乾燥機が用いられる。密閉式乾燥機を使用する場合、不活性化ガスを乾燥機と溶剤回収装置の間で循環させ、その間に溶剤を凝縮させ、回収する方法がとられる。その回収率は高い。
【0009】
従来、伝導伝熱乾燥機の排ガスからの熱回収は、湿式除塵器上部に冷却水を供給することによって、排ガス中の水蒸気を凝縮させ、得られた温水を利用するにとどまっていた。しかし、大型乾燥機の処理量は、通常、石膏では100t乾物/時、テレフタル酸では100〜120t乾物/時、コークス、原料炭、及び褐炭では500t乾物/時であり、蒸発水分の量も5〜20t/時と多量であり(非特許文献3)、この排気のより直接的な有効利用が求められている。
【0010】
伝導伝熱乾燥器からの排気は大量に発生するものであるので、これを凝縮させて利用することが望まれるが、この方法には複数の問題があり、十分な試みはなされてこなかった。その問題とは、乾燥機からの排気は、通常は非凝縮ガスを大量に含有するため、その伝熱係数は低いこと、さらに、排気は被乾燥材料由来の粉塵が混入しやすいため、粉塵により熱交換器の伝熱面が汚染され、伝熱速度の低下につながること等である。また、従来、このような排気は圧力制御がなされていなかった。
【0011】
特許文献1には、この伝導伝熱乾燥機から排出される水蒸気を有効利用するために、過熱乾燥方式を取り入れ、密閉式乾燥機で発生した過熱水蒸気を脱塵しこれを直接蒸気膨張機に供給して発電を行う方法を開示している。しかし、この方法では、膨張機吐出側が真空となるため、膨張機を大きくする必要があり、設備費が嵩むという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−241239号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】化学工学便覧、改訂6版、化学工学会編、p.765、1999年、丸善出版
【非特許文献2】川崎重工業製品カタログ「コールインチューブドライヤ」1999年版
【非特許文献3】コークス炉配合炭の調湿技術、笠間玄樹、本間道雄、川崎製鉄技報、Vol.25、No.4、pp.237−242
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
排気として得られる湿ガスの熱を、効率的に発電の熱源として利用することができる伝導伝熱乾燥機および、熱源の回収方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
<請求項1記載の発明>
請求項1記載の発明は、伝導伝熱乾燥機に被乾燥材料とキャリアガスを供給し、前記被乾燥材料を乾燥させることによって生じた排気を、乾式除塵器に通過させるか、あるいはその後に湿式除塵器に通過させて除塵し、除塵後の排気を作動媒体を用いた発電装置に熱源として供給し、前記発電装置を駆動させることを特徴とする発電方法を提供する。
【0016】
請求項1に係る発明においては、発電装置の動力源として有機媒体を用いたオーガニックランキンサイクル(ORC)が使用され、蒸発器の熱源として、伝導伝熱乾燥機の排気が使用される。伝導伝熱乾燥機としては、被乾燥材料とキャリアガスが同方向に移動する並流型、逆方向に移動する向流型があるが、どちらの伝導伝熱乾燥機についても本発明を適用することができる。伝導伝熱乾燥機としては、スチームチューブドライヤー(STD)、管外加熱式乾燥機、溝型攪拌乾燥機、その他の公知のものをいずれも使用可能である。
【0017】
ORCの動作効率は、発電用蒸発器の温度が高いほど向上することから、蒸発器の熱源が排気である場合、その排気は、より高い凝集温度を有していることが望まれる。
【0018】
熱風を熱源とする乾燥機の排気の凝縮温度(露点)は低く、また、伝熱係数も低いので、熱回収が困難である。一方、伝導伝熱乾燥機において、被乾燥材料に伝熱面を介して、加熱熱源(水蒸気や高温有機熱媒体)の熱量が与えられ、被乾燥材料より生じた水蒸気はキャリアガスにより運ばれるのであるが、この場合のキャリアガスの量は比較的少ない量で足りる。伝導伝熱乾燥機より生じる排気(湿ガス)は、被乾燥材料から生じた水蒸気と乾燥キャリアガスとの混合物であり、例えば、廃液燃焼ガスのように複雑な組成をしていないことが特徴である。このような排気の凝縮温度は、比較的高く保たれる傾向がある。このような排気を凝縮させてORCを作動させる場合、凝縮温度が高いので、発電用蒸発器の温度が高くなり効率は向上する。
【0019】
乾燥機からの排ガス中には乾燥物が混入しているので、これをそのまま発電用の蒸発器に供給した場合、乾燥物が伝熱面に固着する、乾燥物が伝熱面表面の凝縮液に溶解し凝縮効率に影響を与える、等の問題が生じる可能性がある。これを防止するため、排気を乾式除塵器(サイクロン式、バグフィルター式など)、湿式除塵器(スプレー式洗浄塔、ベンチュリースクラバーなど)を通過させ、除塵を行うことが望ましい。
【0020】
乾式除塵器または湿式除塵器を単独で使用することも考えられる。しかし、湿式除塵器を単独で使用した場合、排気中に含まれる乾燥物を、洗浄に使用した循環媒体(例:熱水)から固液分離して回収する必要があり、操作が煩雑になるため、実用的ではない。一方、乾式除塵器、特にバグフィルター式乾式除塵器は除塵力が高いことが知られており、単独で十分な除塵が可能である。このような除塵力の高い乾式除塵器を使用する場合は、湿式除塵器を使用せず、乾式除塵器を単独で使用することができ、設備コストを抑えることが可能である。特に、被乾燥材料が、水に不溶性の高分子ポリマーや溶解度の低い合成樹脂原料のTPAの場合、湿式除塵器の除塵率は高くなく、効率が悪いため、除塵力の高い乾式除塵器を単独で使用することが好ましい。
【0021】
伝導伝熱乾燥機の排気は、凝縮時に5〜10℃の温度低下で、約70〜80%と高効率で熱エネルギーを放出する。一方、ORCにおける蒸発器内の蒸発温度は一定であるため、蒸発器の温度は高く保つことができる。この特性を利用し、排ガスの高温時での回収熱量を蒸発器に、その後温度が低下した排ガスを作動媒体の予熱に利用できる。
【0022】
ブロワを用いて排気を昇圧させ、制御弁を用いてその圧力を維持することにより、排気の凝縮温度をより高く保つことが可能である。
【0023】
<請求項2記載の発明>
請求項2記載の発明は、除塵後の排気を、前記排気と熱回収媒体とを向流接触させる向流式熱回収塔に供給し、前記向流式熱回収塔より得られた熱回収媒体を、作動媒体を使用した発電装置に熱源として供給し、前記発電装置を駆動させる、請求項1記載の発電方法を提供する。
【0024】
排気を直接凝縮させる場合は蒸発器における凝縮初期の伝熱係数は高いが、後期ではキャリアガス量が多くなり、伝熱係数は低下する。発電量を安定させるためには、膨張機への作動媒体の流量を安定させる必要があり、かつ、その圧力調整範囲は0.005〜0.01MPaと、ブロワの負担とならない程度とする必要がある。
【0025】
そこで、熱回収媒体を使用することにより、蒸発器における伝熱が、排気の組成変化に直接影響されず、作動媒体の流量が安定しやすい。また、蒸発器における伝熱が気−液系ではなく、液−液系となり、より高効率の熱伝導が可能になる、という利点がある。
【0026】
この方法において、向流式熱回収塔の上部にブロワ及び制御弁を配して、ベーパの温度を上昇させ維持することによって、発電効率を向上させることが可能である。
【0027】
乾燥機からの排ガス中に含まれる乾燥物の蒸発器伝熱面への固着を回避するために、排ガスを加熱した媒体により洗浄する方法(湿式除塵器からの洗浄ベーパ供給法)が有効であることは前述の通りである。
【0028】
しかし、洗浄ベーパ供給法においても、発酵廃液の乾燥等では固形物の付着が激しく、凝縮の伝熱係数の低下を軽減することができない。このような場合には、湿式除塵器からの排気を向流式熱回収塔に供給し、循環する熱回収媒体を熱源として利用する方法が有効に使用できる。向流式熱回収塔と発電装置との間に作動媒体蒸発用の熱回収媒体の循環系を構築することで、蒸発器に連続的な伝熱がなされる。この方法により、蒸発器の伝熱面に直接排ガスが接触することがないため、伝熱係数の低下を防ぐことができる。
【0029】
<請求項3記載の発明>
請求項3記載の発明は、前記被乾燥材料が有機溶剤を含み、前記伝導伝熱乾燥機が密閉型伝導伝熱乾燥機であり、前記被乾燥材料より蒸発する有機溶剤が凝縮されて回収される、請求項1または2に記載の発電方法を提供する。
【0030】
密閉型の伝導伝熱乾燥機において、水以外の溶剤を含む固形物の乾燥を行った場合、蒸発した溶剤をキャリアガスに同伴させて系外に取出した後、溶剤を凝縮させて回収することで、脱溶剤されたキャリアガスを乾燥機へ戻し、再利用することができる。
【0031】
溶剤凝縮で放出される熱エネルギーを有効利用するために、初期の凝縮で発生する熱を蒸発器における作動媒体の蒸発に、後期の凝縮についてはキャリアガスの加温に用いることが好ましい。
【0032】
溶剤回収系は、ブライン冷却を利用して溶剤蒸気を凝縮する溶剤凝縮器、気−液分離により凝縮溶剤とキャリアガスを分離するドレンセパレータ、キャリアガス加温器、キャリアガス加熱器により構成される。熱回収媒体を使用した系においては、キャリアガス加温器の加温に、ORCの予熱器からの熱回収媒体を利用することにより、熱源のさらなる有効利用が可能となる。
【0033】
<請求項4記載の発明>
請求項4記載の発明は、前記作動媒体がR245faである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発電方法を提供する。
【0034】
本発明において、作動媒体は蒸発温度75〜100℃で使用可能な有機冷媒を使用することが好ましい。このような有機媒体としては、特にR245faの使用が、上記の温度範囲で断熱膨張時の比エンタルピー落差が大きく、発電効率が高いため、好ましい。
【0035】
<請求項5記載の発明>
請求項5記載の発明は、伝導伝熱乾燥機と作動媒体を用いた発電装置とを有し、伝導伝熱乾燥機に供給された被乾燥材料を乾燥させることによって生じた排気を、乾式除塵器に通過させるか、あるいはその後に湿式除塵器に通過させて除塵した除塵後の排気、または除塵後の排気が向流式熱回収塔を通過することによって得られた熱回収媒体が熱源として前記発電装置を駆動させる、ことを特徴とする発電機能を有する乾燥設備を提供する。
【発明の効果】
【0036】
本願に係る発明により、伝導伝熱乾燥機からの排気として得られる湿ガスの熱を、効率的に発電の熱源として利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】並流型伝導伝熱乾燥機を使用した例を示すフロー図である。
【図2】並流型伝導伝熱乾燥機、向流式熱回収塔を使用した例を示すフロー図である。
【図3】溶剤回収手段を有する密閉型向流型伝導伝熱乾燥機を使用した例を示すフロー図である。
【図4】排気を熱源とした蒸発器(作動媒体R245fa)における凝縮温度曲線を示した図である。
【図5】排気凝縮温度に対する発電効率を示したグラフである。(A)作動媒体による発電効率曲線比較、(B)冷却水温度による発電効率曲線比較。
【発明を実施するための形態】
【0038】
〔第1の実施形態〕
図1は本発明にかかる、伝導伝熱乾燥機の排気を利用して発電装置を駆動させる実施形態の一例(第1の実施形態)を示すものである。
本形態に係る形態を構成する主要機器は、並流型STD100、乾式除塵器2、湿式除塵器3、蒸発器4、膨張機5、発電機6、凝縮器7、予熱器8、圧力調節弁V1、循環ブロワB1、湿式除塵器ポンプP1及び媒体ポンプP2である。
【0039】
(伝導伝熱型乾燥器の概略)
図1に並流型STD100の概略図を示す。一般的に回転筒110は10mから30mの長さを有しており、この回転筒110内において、湿り材料F1を、熱媒体により加熱した多数の加熱管111と接触させ、回転筒110の回転につれて、順次排出口112に移動させながら連続的に移動させるようになっている。
【0040】
従って、回転筒110は、一端の原料(被乾燥品)装入口121から乾燥品排出口112へ原料を円滑に移送するためにやや下り勾配をもって設置される。回転筒は、二箇所の基台131,131上にそれぞれ設けられた支承ローラ130,130上に、タイヤ114,114を介して支承されており、前記下り勾配は、前記二箇所の基台131,131および支承ローラ130,130の高さと角度とによって調節される。
【0041】
一方、回転筒110を回転させるために、回転筒110の周囲には、従動ギア150が設けられており、これに駆動ギア153が噛合し、原動機151の回転力が減速機152を介して伝達され、回転筒がその軸心回りに回転するようになっている。
【0042】
また、STDにおいては、回転筒の両端板間に軸心と平行的に多数の加熱管111が配設され、これらの加熱管111の管板の間に熱媒体としての加熱蒸気F3は、回転継手160に取付けられた蒸気入口管161を通して供給され各加熱管111に流通された後、ドレン出口管162を介して排出される。
【0043】
キャリアガスF2は、並流型STD100の場合は、原料入口側より供給され、被乾燥材料からの水蒸気と共に製品出口側の排気口170から排出されるのに対し(図1,2)、向流型STD300の場合は原料入口側に設けられた排気口370より排出される(図3)。
【0044】
(ORC)
ランキンサイクルを使用した発電装置の作動媒体としては、有機媒体を好適に使用でき(ORC)、この有機媒体としては、例えば次記のものを例示できる。
(1)HFC(ハイドロフルオロカーボン)系冷媒:R23、R32、R125、R134a、R143a、R152a、R227ea、R245fa、1234yf
(2)PFC(パーフルオロカーボン)系冷媒:R218
(3)自然冷媒:R290(プロパン)、R600(ブタン)、R600a(イソブタン)
ORCを使用した発電装置は、基本的には、蒸発器、凝縮器、膨張機を有するものであるが、さらに、凝縮液の予熱を行い、蒸発器に送る予熱器を配する。蒸発器、凝縮器、膨張機、及び予熱器については、公知のものをいずれも使用可能である。
【0045】
(伝導伝熱乾燥機の排気のフロー)
排気口170からの排気G1は乾式除塵器2にて除塵され、乾式除塵器下部から回収される固形物は、排出口112から得られる乾燥品に加えられる。
切り替えバルブV1が閉じられ、V2,V3が開けられた状態において、乾式除塵器2で除塵された排気G2は、湿式除塵器3の下部に供給され、湿式除塵器ポンプP2により塔の中を流下する洗浄液(例:熱水)及び外部より供給される洗浄液F4と向流的に接触することで、固形物がさらに除去される。湿式除塵器下部の湿式除塵器ポンプP2の循環量の調整により、気−液接触効果を向上させる。洗浄液の一部を抜き出し固液分離を行い、ろ液は湿式除塵器に戻し、固形物は系外に取り出す。
【0046】
切り替えバルブV1が開けられ、V2,V3が閉じられた状態では、乾式除塵器2で除塵された排気G3は直接蒸発器4に送られる。この場合、乾式除塵器2としては、バグフィルター式除塵器等、単独で高い除塵力を有するものを使用する。
【0047】
湿式除塵器3頂部より得られる洗浄後の排気、または乾式除塵器より送られてくる除塵後の排気は、伝熱手段(平板、プレート式、多管式)を持った作動媒体蒸発器4の加熱側に供給される。供給される排気G4は、ほぼ飽和量相当の水蒸気を含有しており、一方、蒸発器4内部に充填されている作動媒体は、排気中の蒸気より低い沸点を有するため、前記排気に含まれる蒸気は作動媒体に蒸発熱を与え、蒸気自体は凝縮する。蒸発器の前段に予熱器8を配置して、予熱器8により作動媒体を予め沸点近くまで加温させることで、蒸発器4においてすぐに沸騰を起こすことができ、より効率的である。蒸発した作動媒体の蒸気は、気液分離板(図示せず)で同伴するわずかな液滴を除去したのちに、膨張機5に送られる。一方凝縮した作動媒体のドレンは作動媒体ポンプP2で再び予熱器へ送られる。蒸発器4を通過した気液混合物は、さらに予熱器8に送られ、作動媒体の予熱を行う。
【0048】
湿式除塵器3を使用する場合、予熱器からの気液混合物はドレンセパレータ10で気液分離され、得られた液体は洗浄液として、湿式除塵器3に送られる。洗浄液は、湿式除塵器3に塔頂より供給され、洗浄液ポンプP3によって湿式除塵器3を循環し、乾式除塵器2からくる除塵後の排気G2を洗浄する。
【0049】
(蒸発器における排気の凝縮曲線)
蒸発器は、プレート式、水平多菅式、管外沸騰型等の公知のものを適宜選択できる。伝導伝熱乾燥機からの排気は、空気あるいは窒素ガスを主体とするキャリアガスと蒸気の混合ガスである。
【0050】
湿ガスを含むSTDの排気が、蒸発器において、有効に作動媒体の蒸発熱として利用され、電力に転換できる条件を以下のように検討した。図4は、作動媒体をR245faとして、排気の凝縮開始温度を70℃(凝縮曲線b)、90℃(凝縮曲線a)とした場合の、排気の温度対凝縮率を示した凝縮曲線である。
【0051】
作動媒体は、予熱器において予熱され、温度が上昇して沸騰し始め、温度一定で蒸発する。蒸発器内の操作圧力により蒸発潜熱が異なり、冷媒の顕熱と潜熱の比率が異なるので、圧力を調整することにより、予熱区間と蒸発区間の比率を調整することが可能であり、それにより熱源の利用率が異なる。図4においては、作動媒体の蒸発区間の温度は水平線、予熱区間の温度は傾斜線で表現できる。凝縮曲線と蒸発水平線の交点がピンチポイント(p)で、実際の蒸発温度はピンチポイントより3〜5℃低くなる。このピンチポイント付近で作動媒体は最高の蒸発圧力を示し、最も高い発電効率を示す。
【0052】
凝縮曲線aに示すように、排気温度が高いと、高温部の凝縮率が高く、凝縮曲線が水平に近く、伝熱が容易であるため、作動媒体の蒸発温度を高く保つことができる。そのため、作動媒体の蒸発圧が高くなり、膨張機、凝縮器において比エンタルピー落差が大きく取れることから、発電効率は高くなる。一方、凝縮曲線bのように排気温度が低い場合には、凝縮曲線は傾斜して 水平な冷媒蒸発温度との温度差を大きくする必要があり、冷媒の蒸発圧は低くなり、発電効率は低い。
【0053】
本形態において、作動媒体は蒸発温度75〜100℃で使用可能な有機冷媒を使用することが好ましい。このような有機媒体としては、R134a、R245fa、1234yfがある。特にR245faの使用が、図5(A)に示すように、上記の温度範囲で断熱膨張時の比エンタルピー落差が大きく、発電効率が高いため、好ましい。このような冷媒の使用により、蒸発器の操作圧力を低く抑えることが可能となり、安全性と経済性に優れた条件とすることができる。
【0054】
作動媒体をR245faとした蒸発器の、排気凝縮温度に対する、発電効率の変化(発電効率曲線)を図5(B)に示した。凝縮器における冷却水CWの温度によっても発電効率が異なるため、冷却水温度を20℃(発電効率曲線c)、30℃(発電効率曲線d)、40℃(発電効率曲線e)の条件における発電効率曲線を示した。冷却水温度が低いほど、作動媒体の比エンタルピー落差が大きくなり、発電効率が高くなる。
【0055】
通常、蒸発器における排気の凝縮開始温度が高ければ、発電効率も高くなるが、凝縮開始温度をそれ以上高めても、発電効率が上がりにくくなる限界温度がある。冷却水の温度が20℃、30℃、40℃の場合、限界温度はそれぞれ、約89℃、約91℃、約93℃となる(限界温度線f)。凝縮開始温度が95℃を超えると、作動媒体温度と凝縮温度の差異がつきにくく、より大きな伝熱面積を有する蒸発器設備が必要となることも知られており、凝縮開始温度は、限界温度よりも高くしないことが好ましいといえる。
【0056】
一方、前述のように、凝縮開始温度が低いと、発電効率が落ち、排気エネルギーの十分な利用ができているとは言い難い状態となる。したがって、発電効率が、限界温度における発電効率の75%程度以上となる温度とすることが好ましい。そうすると、冷却水温度が20℃、30℃、40℃の条件における下限温度は、約81℃、約83℃、約85℃となる(下限温度線g)。
【0057】
以上より、排気の温度は、伝導伝熱乾燥機の乾燥原料の状態、乾燥条件によって異なるものの、冷却水温度が20℃のときは81℃〜89℃、冷却水温度が30℃のときは83〜91℃、冷却水温度が40℃のときは85〜93℃の範囲とすることが、R245faを作動媒体としたORCの熱源として使用するには好ましい。伝導伝熱乾燥機の運転条件、及びそれに伴う排気の温度によって、冷却水温度を適した温度に変更することも可能である。
【0058】
〔第2の実施形態〕
図2に第2の実施形態を示す。第2の実施形態は、並流型STD100の排気を発電装置の熱源に使用するにあたり、乾式除塵器2、湿式除塵器3、蒸発器4、膨張器5、発電機6、凝縮器7、予熱器8、圧力調節弁9、ブロワB1、湿式除塵器ポンプP1、作動媒体ポンプP2に加え、向流式熱回収塔11及び熱回収媒体循環ポンプP3を構成機器として使用した一例を示すものである。並流型STD100より排気された排気G1は、乾式除塵器2によって除塵される。乾式除塵器2で除塵された排気は、直接、または湿式除塵器3において洗浄液により洗浄された後、向流式熱回収塔11の下部から吹きこまれる。
【0059】
図2の向流式熱回収塔11には、適宜の充填材を使用した向流接触部180を有している。向流熱回収塔11の上方からは、ポンプP2により予熱器8を通った後の熱回収媒体が散水器181により供給されるようになっている。向流式熱回収塔30の最上部にはエリミネータ182が設けられている。
【0060】
ここで熱回収媒体とは、熱回収ができればよく、被乾燥材料の種類または伝導伝熱乾燥機の乾燥条件によっては、有機溶剤等を使用することもできるが、多くの場合は水、すなわち熱水を使用するのが一般的である。熱回収媒体と、湿式除塵器2に使用される洗浄液F4は、同じものを使用する(図2中では熱水を使用)。
【0061】
向流式熱回収塔11内で、排気G4が熱回収媒体を向流で接触され、下部に流下した熱回収媒体L1は、ポンプP3により抜き出され、蒸発器4に送られ、蒸発器の伝熱後、予熱器8に送られる。予熱器8からの熱回収媒体は、再び向流式熱回収塔11に送られるとともに、湿式除塵器3にも洗浄液として供給される。
【0062】
蒸発器、予熱器における熱回収媒体温度の挙動について、図4の熱回収媒体線hに例示する。通常は、熱回収媒体の蒸発器入口における温度は、排気の入口温度より2〜3℃低くする。伝熱に伴いその温度は直線的に低下する。熱回収媒体の使用により、蒸発器は、作動媒体の蒸発について、排気使用時と同様の効果、機能を発揮する。
【0063】
〔第3の実施形態〕
図3に、第3の実施形態を示す。第3の実施形態は、排気が水以外の溶剤を含む一例を示すものである。排気が水以外の溶剤を含むとき、多くの場合は排気を大気中に放出することはできない。このような場合には、密閉型のSTD300(図中のSTD300は向流型である)が使用される。この場合、構成機器として、乾式除塵器2、湿式除塵器3、蒸発器4、膨張器5、発電機6、凝縮器7、予熱器8、圧力調節弁V3、ブロワB1、湿式除塵器ポンプP1、作動媒体ポンプP2、向流式熱回収塔11及び熱回収媒体循環ポンプP4に加え、さらに溶剤凝縮器12、ドレンセパレータ13、及びキャリアガス加温器14、キャリアガス加熱器15が使用される。
【0064】
密閉型向流型STD300の排気口370より放出された排気G1は、乾式除塵器2により除塵される。乾式除塵器2で除塵された排気は、直接、または湿式除塵器3において洗浄された後、湿ガスG4として向流式熱回収塔11に送られる。本形態において、熱回収媒体は、水ではなく、被乾燥材料に含まれる有機溶剤と同じ有機溶剤、またはそれに類似した有機媒体を使用することが好ましい。熱回収媒体と、湿式除塵器2に使用される洗浄液F5は、同じ溶剤を使用する。
【0065】
向流式熱回収塔11上部より排出される排気G5は、溶剤凝縮器12に送られ、冷却液F6によるブライン冷却により、溶剤蒸気が凝縮され、気液混合物となる。気液混合物は、ドレンセパレータ13において、キャリアガスを主成分とする気体と、液体溶剤に分離され、液体溶剤が回収される。分離された気体は、キャリアガス加温器14に送られ、わずかに残存した溶剤が気化され、キャリアガスF2とともに、STD300に再度供給される。一方、予熱器8での伝熱後の熱回収媒体は、キャリアガス加温器14に送られ、加温された後に、さらにキャリアガス加熱器15において加熱され、向流式熱回収塔11に戻される。キャリアガス加熱器の熱源F7としては、窒素ガス等の非凝集性ガスを使用するのが好ましい。
【0066】
図3に示した系において、水分を10〜14%含む20℃のキャリアガスを凝縮したところ、キャリアガス加温器から排出されたキャリアガスの水分量は5〜8%まで減少した。加温器から排出されたガスの温度は78℃であった。
【0067】
図3には向流式熱回収塔11から排出される排気を凝縮する形態を例示したが、向流式熱回収塔11を使用しない形態においても、排気の凝縮、溶剤の回収は可能である。その場合は、蒸発器4、予熱器8で伝熱を終えた排気をドレンセパレータ10ではなく、凝縮器12に送り、凝縮、溶剤回収、加温を行う。
【実施例1】
【0068】
<並流型伝導伝熱乾燥機を使用したコークス炉挿入炭の乾燥>
実施例1に係る形態を図1に示す。直径4.2×35m長さ、伝熱面積3482m2のSTD100を使用した。水分9.0%を含むコークス炉挿入炭を500t/hの速度でSTDに供給し、加熱管における加熱蒸気圧0.60MPaの条件で乾燥させ、水分5.8%とした。発生した排ガス中を乾式除塵器2に送り、含まれる粉塵状の製品を回収した。乾式除塵後の排ガスを湿式除塵器3へ送り、温度85℃〜83℃の条件で温水循環脱塵し、これを発電装置の蒸発器4に熱源として供給した。発電装置の作動媒体はR245faを使用し、蒸発器4における蒸発温度は69℃、圧力は0.582MPa、凝縮器7における凝縮温度は40℃、圧力は0.251MPa、作動媒体の流量は129.4t/hで操作した。蒸発器4、凝縮器7、予熱器8は、それぞれ伝熱面積814m2、1490m2、120m2のものを使用した。かかる操作条件の下で、発電機出力626kWを得、発電効率は入熱に対して5.7%であった。この結果は、伝導伝熱乾燥機からの排気によって、十分に実用性のある発電が可能であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、製造業(食品工業、肥料工業、無機化学、有機化学、石油化学、製鉄)、発電事業、環境保全事業において広く使用される公知の伝導伝熱乾燥機について、その排気エネルギーの再利用を可能とする発明である。
【符号の説明】
【0070】
100…並流型STD、300…向流型STD、2…乾式除塵器、3…湿式除塵器、4…蒸発器、5…膨張機、6…発電機、7…凝縮器、8…予熱器、10,13…ドレンセパレータ、11…向流式熱回収塔、12…溶剤凝縮器、14…キャリアガス加温器、V1,V2,V3…切り替えバルブ、V4,V5,V6…圧力調節弁、B1…ブロワ、P1…湿式除塵器ポンプ、P2…作動媒体ポンプ、P3,P4…熱回収媒体循環ポンプ、F1…被乾燥材料、F2…キャリアガス、F3…蒸気、F4…洗浄液/補給液(熱水)、F5…洗浄液/補給液(溶剤)、F6…冷却液、CW…冷却水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝導伝熱乾燥機に被乾燥材料とキャリアガスを供給し、前記被乾燥材料を乾燥させることによって生じた排気を、乾式除塵器に通過させるか、あるいはその後に湿式除塵器に通過させて除塵し、除塵後の排気を作動媒体を用いた発電装置に熱源として供給し、前記発電装置を駆動させることを特徴とする発電方法。
【請求項2】
除塵後の排気を、前記排気と熱回収媒体とを向流接触させる向流式熱回収塔に供給し、前記向流式熱回収塔より得られた熱回収媒体を、作動媒体を使用した発電装置に熱源として供給し、前記発電装置を駆動させる、請求項1記載の発電方法。
【請求項3】
前記被乾燥材料が有機溶剤を含み、前記伝導伝熱乾燥機が密閉型伝導伝熱乾燥機であり、前記被乾燥材料より蒸発する有機溶剤が凝縮されて回収される、請求項1または2に記載の発電方法。
【請求項4】
前記作動媒体がR245faである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発電方法。
【請求項5】
伝導伝熱乾燥機と作動媒体を用いた発電装置とを有し、伝導伝熱乾燥機に供給された被乾燥材料を乾燥させることによって生じた排気を、乾式除塵器に通過させるか、あるいはその後に湿式除塵器に通過させて除塵した除塵後の排気、または除塵後の排気が向流式熱回収塔を通過することによって得られた熱回収媒体が熱源として前記発電装置を駆動させる、ことを特徴とする発電機能を有する乾燥設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−255557(P2010−255557A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107694(P2009−107694)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(599010347)
【Fターム(参考)】