説明

伝送媒体によってデータユニットを送り、受信する方法および装置

少なくとも3つの隣接する伝送線を含む伝送媒体によってデータユニットを伝送する方法および装置の場合、すべての複数の符号のうちの第1の符号が供給される。各符号は、伝送媒体の伝送線の本数に対応する複数の符号部を有する。各符号部は、関連する伝送線上で、所定の信号値を有し、各伝送される符号の信号値の合計は、実質的に一定である。伝送されるデータユニットごとに、1つの符号が、複数の符号から選択され、選択された符号が、伝送媒体による伝送のために供給される。伝送されるデータユニットおよび符号は、所定のクロック・パルスに従って供給されてもよく、新しい符号が、前の符号および新しいデータユニットに基づいて、各新しいクロック・パルスで選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送媒体によってデータユニットを送る方法および装置に、また伝送媒体によってデータユニットを受信する方法および装置に関し、特に、異なる電子部品の間で大量のデータを伝送する方法および装置、特にグラフィックス・コントロールと液晶ディスプレイの間でのデータの転送に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の電子応用例では、大量のデータを、コンポーネント間、プリント回路基板(PCB)間、および共通のハウジングを有する集積回路間で転送しなければならない。大量のデータ量のそのような転送の目的は、データ転送レートを最大にすると同時に、電磁気干渉(EMI)を減らし、それと同時にインターフェース・コストを減らすことにある。伝送速度、電磁気干渉または電磁気互換性、およびシステム・コストが、そのような応用例の主要な態様である。
【0003】
図1に、トランスミッタ100とレシーバ102の間でのデータの転送中のEMIの影響を示すブロック図を示す。トランスミッタ100は、たとえば、ディスプレイ・コントロールであり、レシーバ102は、関連するディスプレイである。データ、たとえば2進データは、図1で矢印によって示されているように、伝送媒体104によってトランスミッタ100からレシーバ102に送られる。伝送媒体104は、互いに隣接して配置された複数の伝送線を有する伝送媒体であり、2進信号の同時遷移(信号レベルの変化、たとえばH→LまたはL→H)と組み合わされた大量のデータの伝送時に、放射が生成され、これが、隣接する電子部品での電磁相互作用になる場合がある。同様に、電磁エネルギが、伝送媒体104の伝送線に結合され、レシーバでの破壊を引き起こすことができる。
【0004】
現在、伝送されるデータの量は、急速に増加しつつあり、より高いデータ・レートが、継続的に求められている。特に高解像度を有する動画のデータの場合、リアル・タイムで高いデータ・レートを管理する必要があり、圧縮技法は、すべての場合に使用できるわけではない。圧縮技法によって引き起こされる損失が、しばしば許容できず、あるいは、対応する伸長コストを、レシーバ側で調達することができない。
【0005】
増加する信号帯域幅に伴って、電磁気干渉(EMI)に関して余分な予防手段を講じる必要がある。伝送は、環境からの電磁線に対して影響を受けないものでなければならず、伝送に固有の放射は、他のシステム構成要素との干渉を避けるためにさらに最小化されなければならない。エンド・ユーザ向けの電子機器の場合、異なる機器の間の電磁互換性を保証するために非常に厳密な標準規格が適用されるが、これらの標準規格を満足することに伴うコストは、適度でなければならない。例として、たとえば液晶ディスプレイ(LCD)などのマトリックス・ディスプレイ装置を挙げると、画面解像度の増大が、伝送すべきデータに関するさらに広い帯域幅を必要とし、EMI要件は、近年ますます厳密になってきた。高速インターフェースが、コンピュータ内のグラフィックス・コントロールとビジュアル・ディスプレイ・ユニット内のディスプレイ・コントロールの間だけではなく、ディスプレイ・コントローラとディスプレイの個々のカラム・ドライバの間にも必要である。
【0006】
図2はディスプレイ・コントロール106および外部グラフィックス・コントロール108を有するマトリックス・ディスプレイの例を示す。たとえばグラフィックス・カードの形態でのグラフィックス・コントロール108が配置されるパーソナル・コンピュータが、破線の左側の領域に置かれ、概略的に図示されている。ディスプレイ・コントロールを含む、ディスプレイ装置、画面が、破線の右側に置かれている。第1接続110によって、グラフィックス・コントロール108が、必要な画像データをパーソナル・コンピュータ(PC)からディスプレイ・コントロールに送り、画面をリフレッシュする画面リフレッシュ・コマンドも送る。複数の伝送線112〜112によって、ディスプレイ・コントロール106は、対応する駆動信号を複数のカラム・ドライバ114〜114に印加する。カラム・ドライバは、マトリックス・ディスプレイ118の個々のカラム116〜116を駆動する。マトリックス・ディスプレイ118は、たとえば、1920×1280個のRGB画素(R=赤、G=緑、B=青)の解像度を有するWUXGA(WUXGA=Wide−Ultra Extended Graphics Array)である。図2に示された例の場合、WUXGAマトリックス・ディスプレイ要素(1920×1280画素)の画面リフレッシュは、約7Mバイトを必要とし、これを送らなければならない。この更新は、従来、60Hzの周波数で行われ、これは、約422Mバイト/秒の正味データ・レートに対応する。それでも、これに、正しい動作のために挿入されなければならない空白相が含まれないことを指摘しなければならない。したがって、8つのディスプレイ・カラム・ドライバを有するWUXGA−LCDは、約500Mビット/秒(ピーク・データ・レート)を必要とし、これが、ドライバ114〜114のそれぞれに送られなければならない。
【0007】
高速要件を満足すると同時に電磁互換性を維持するために、異なる信号伝送技法またはシグナリング技法が、当技術分野で既知である。これらの既知の技法の1例が、いわゆる差動シグナリング技法である。図3に、差動シグナリング用の既知の回路およびそこで使用される信号の波形を示す。
【0008】
図3Aは、トランスミッタ10およびレシーバ102を含む、差動シグナリング用の回路を示す。トランスミッタ100およびレシーバ102は、4つの伝送線104〜104を含む伝送媒体104によって互いに接続される。トランスミッタ100は、送られるデータを1つまたは複数のデータ線によって受信する第1入力DATAと、送られるクロック信号を受信する第2入力CLKとを有する。レシーバ100内に、入力DATAからのデータ信号を受信するデータ・ドライバ120と、入力CLKからのクロック信号を受信するクロック・ドライバ122が配置されている。第1トランスミッタ内信号線120aで、データ・ドライバ120が、トランスミッタ100のデータ出力124aに送られるデータ信号を供給する。第2トランスミッタ内信号線120bで、データ・ドライバ120が、現れるデータ信号の反転された形式を、トランスミッタ100の反転出力124bに供給する。同様に、第1トランスミッタ内クロック線122aで、クロック・ドライバ122が、現れるクロック信号をトランスミッタ100のクロック出力126aに供給する。第2トランスミッタ内クロック線122bで、クロック・ドライバ122が、反転された形式のクロック信号をトランスミッタ100の反転クロック出力126bに供給する。
【0009】
レシーバ102は、データ差動増幅器128およびクロック差動増幅器130を有する。レシーバ102の出力DATA’で、データ差動増幅器128が、伝送媒体104によって受信されたデータ信号を出力する。同様に、レシーバ102の出力CLK’で、クロック差動増幅器130が、伝送媒体104によって受信されたクロック信号を出力する。それぞれの終端抵抗Rが、差動増幅器128および130の反転入力と非反転入力の間に接続される。差動増幅器128は、伝送媒体によって送られた信号DATA+および信号DATA−の差を受信する。伝送中の干渉は、DATA+およびDATA−に対して同一の効果を有し、差動増幅器のおかげでレシーバに影響しない。データ入力132aによって、データ差動増幅器128は、その非反転入力で非反転データ信号DATA+を受信する。レシーバ102の反転データ入力132bによって、データ差動増幅器128の反転入力が、伝送媒体104から反転データ信号DATA−を受信する。同様に、クロック差動増幅器130の非反転入力は、レシーバ102のクロック入力134aによって、伝送媒体104から非反転クロック信号CLK+を受信する。クロック差動増幅器130の反転入力は、レシーバ102の反転クロック信号入力134bによって、反転クロック信号CLK−を受信する。
【0010】
図3Aからわかるように、伝送線104は、反転データ信号DATA−を担持し、伝送線104は、非反転データ信号DATA+を担持し、伝送線104は、反転クロック信号CLK−を担持し、伝送線104は、非反転クロック信号CLK+を担持する。
【0011】
図3Aの情報IDATA+(t)およびIDATA−(t)によって示されるように、トランスミッタ100とレシーバ102の間の伝送では、電圧レベルが使用されるのではなく、電流レベルが使用される。データ信号および反転データ信号の伝送によって、対応するデータ線104および104の電流と対応するデータ線104および104の電流との合計は、0になる。
【0012】
図3Bは、レシーバ100に印加される信号DATAおよびCLKの信号波形と、伝送媒体104によって伝送される信号CLK+、CLK−、DATA+、およBDATA−の信号波形を示す。
【0013】
差動シグナリング技術の従来の手法によれば、データ信号と並列に、その反転バージョンが伝送される。2つの伝送線または伝送配線が、互いに近接して延びる場合、データ伝送は、相補的になり、これによって引き起こされる放射が、互いに補償する。並列伝送線内で誘起される電磁放射またはEMIは、両方の信号線に対して同一の影響を有する。個々の信号線の絶対レベルではなく、差動増幅器128および130によって差分を決定することによって、大きい雑音免疫性が達成される。従来、既に述べたように、データは、電圧レベルではなく電流レベルによって伝送される。信号線インピーダンスをレシーバ102の入力インピーダンスに適合させる終端抵抗Rは、レシーバ側102で、信号線のそれぞれの対すなわち、信号線104および104と信号線104および104に接続される。これによって、反射が除去され、入射波の切替に基づくより高い伝送レートが可能になる。データ・クロック・パルスが、既に述べたように、追加の差動信号線対104および104を用いて伝送される。データの伝送によって、クロック周波数が、正のクロック・パルス・エッジと負のクロック・パルス・エッジの両方で半分になる。この技法は、図3を参照して説明したように、たとえば、よく知られたRSDSインターフェース(RSDS−Reduced Swing Differential Signaling)で使用される。
【0014】
伝送されるクロック信号の周波数は、さらに、データ・クロックパルスの分周されたバージョンまたは分数、たとえばこれの10分の1だけを伝送することによって減らすことができる。しかし、これは、レシーバ側の位相回復PLL(PLL=Phase−Locked Loop)を必要とする。この技法は、たとえば、LVDSインターフェース(LVDS=Low Voltage Differential Signaling)で使用される。
【0015】
当技術分野で既知のもう1つの方法が、いわゆる「データ/ストローブ符号化(data/strobe encoding)」であり、回路およびこの回路に存在するデータ信号の例を、図4を用いて示す。
【0016】
図4Aからわかるように、この図に示されたデータ伝送部分は、図3Aを参照して説明した部分に対応する。図3Aと異なって、図4Aで説明するデータ/ストローブ手法では、レシーバ100のクロック入力CLKが、クロック・ドライバ122の入力に直接には接続されない。クロック・ドライバ122の入力は、XORゲート138の出力に接続され、このXORゲート138は、その入力信号として、入力CLKからのクロック信号および入力DATAからのデータ信号を受信する。図3Aに示された例示的実施形態と異なって、この図では、クロック・ドライバ122によってそれぞれ伝送線104および104を介してレシーバ102に送られるのは、クロック信号自体ではなく、非反転の形態のSTRB+およびその反転された形態STRB−でのストローブ信号である。図3Aに示された例示的実施形態と異なって、この図では、クロック差動増幅器またはストローブ差動増幅器130の出力が、レシーバ側でXORゲート140の第1入力に接続され、このXORゲート140は、その第2入力でデータ差動増幅器128の出力信号を受信し、レシーバ102のクロック信号出力CLK’に接続された出力を有する。
【0017】
図4Aの回路内を伝搬する信号を、図4Bに示す。
【0018】
図4に関して説明する「データ/ストローブ符号化」による手順によって、そのような伝送方式の信号変化(遷移)の回数が減る。基本的な概念は、ストローブ信号の伝送にあり、このストローブ信号は、データ信号が変化しないときに変化する。したがって、データ信号またはストローブ信号のいずれかが、各転送されるビットと共に変化するが、図4Bから明らかなように、データ信号またはストローブ信号のうちの少なくとも1つが変化する。クロック・パルスは、ストローブ信号とデータ信号の間でXOR機能を使用することによって回復されてもよい。よく知られたfirewire標準規格(IEEE 1394)が、この手法を使用する。たとえばApple Computers Inc.社のfirewire応用例で使用されるデータ/ストローブ符号化によれば、データは、ストローブ信号を作り出すために、XOR論理の動作によって、2つのエッジを有するクロック・パルス(ビット・クロック・パルスの半分に対応する)と組み合わされる。各サイクルに、データ信号またはストローブ信号の一方が変化するが、両方が変化することは決してない。データ信号とストローブ信号のXOR組合せによって、位相ロック・ループの必要なしに、クロック・パルスを単純に回復することができる。
【0019】
さらに、シリアル・ビット転送を使用する手法は、しばしば、タイミング回復を可能にするために、データ・ストリームに既知のビット遷移を挿入する。一時的ビット・シーケンスが、保証された遷移または固定された遷移と共に、より長いビット・シーケンスに再コーディングされる。この処理では、レシーバ側の位相ロック・ループによって、データに基づくクロック・パルスが回復されるか再構成されてもよいので、明示的なクロック・パルス伝送は不要である。この手法は、ネットワーク応用例の場合に通例である。
【0020】
上で説明した従来の伝送技法の欠点は、これらが、良好なEMI特性を有するが、高いインターフェース・コストまたは回路コストに関連し、限られたデータ伝送レートを有することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
この現況技術から始めて、本発明の目的は、システムが、良好なEMI特性を保ちながら、インターフェース・コストおよび回路コストをかなり削減することを可能にすると同時に、データ・レートを高めることを可能にする、複数の隣接する伝送線を有する伝送媒体によるデータの交換の改良されたシステムを作り出すことである。
【0022】
その目的は、請求項1に記載の方法および請求項6に記載の装置によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、少なくとも3本の隣接する伝送線を含む伝送媒体によってデータユニットを送る方法であって、
(a)複数の符号を供給するステップであって、各符号が、前記伝送媒体の伝送線の本数に対応する複数の符号部を含み、関連する伝送線上の符号の各符号部が、所定の信号値を有し、前記信号値の合計が、伝送される符号ごとに実質的に一定である、ステップと、
(b)伝送されるデータユニットごとに、前記複数の符号から一つの符号を選択するステップと、
(c)前記伝送媒体による伝送のために前記選択された符号を供給するステップと
を含む方法を作り出す。
【0024】
伝送される前記データユニットおよび前記符号が、好ましくは、所定のクロック・パルスに従って供給され、ステップ(b)で、各新しいクロック・パルスで、新しい符号が、前の符号および新しいデータユニットに基づいて選択される。前記符号が、好ましくは、2進符号であり、前記符号のそれぞれが、同一の個数の、ハイ論理レベルを有する符号部およびロー論理レベルを有する符号部を含む。データユニットが、好ましくは、1ビットまたは複数のビットを含み、さらに、前記信号値の前記合計が、実質的に0になるように選択されてもよい。
【0025】
本発明は、さらに少なくとも3本の隣接する伝送線を含む伝送媒体によってデータユニットを伝送する装置であって、前記データユニットを受信する入力と、複数の符号が記憶されるメモリであって、各符号が、前記伝送媒体の伝送線の本数に対応する複数の符号部を含み、関連する伝送線上の符号の各符号部が、所定の信号値を有し、前記信号値の合計が、伝送される符号ごとに実質的に一定である、メモリと、前記入力で受信されるデータユニットの符号をメモリから選択して供給するために、前記入力および前記メモリに能動的に接続された選択装置と、前記伝送媒体による伝送のために前記選択装置によって供給される前記符号を供給するために、前記選択装置に能動的に接続された出力とを有する装置を作り出す。
【0026】
本発明による装置は、好ましくは、クロック・パルスを受信するクロック入力と、各新しいクロック・パルスごとに前記入力に現れデータユニットとを備え、前記選択装置が、前の符号および新しいデータユニットに基づいて、新しいクロック・パルスの新しい符号を選択して、供給する。
【0027】
本発明のもう1つの態様によれば、本発明は、少なくとも3本の隣接する伝送線を含む伝送媒体からデータユニットを受信する方法であって、前記データユニットが、上で説明した前記データユニットを送る方法に従って送られる方法を作り出す。伝送された符号が、受信され、適当なデータユニットに割り当てられ、そのように作成された前記データユニットが、出力される。前記方法は、さらに、好ましくは、前記伝送媒体によって伝送された前記符号の遷移に基づいてクロック信号を回復することを含む。
【0028】
本発明のもう1つの態様によれば、少なくとも3本の隣接する伝送線を含む伝送媒体からデータユニットを受信する装置が作り出され、前記データユニットが、上で説明した装置によって送られる。前記装置は、前記伝送媒体から前記符号を受信する入力と、前記受信された符号を対応するデータユニットに割り当てる配置と、前記データユニットを出力する出力とを含む。前記伝送媒体によって伝送された前記符号の遷移に基づいてクロック信号を回復するタイミング回復回路が、好ましくは設けられてもよい。
【0029】
本発明のもう1つの態様によれば、本発明は、少なくとも3本の隣接する伝送線を有する伝送媒体によってデータユニットを伝送する方法であって、前記データユニットが、上で説明した方法に従って送られ、受信される方法を作り出す。
【0030】
本発明のもう1つの態様によれば、本発明は、前記データユニットを送信して受信する、上で説明した装置を含むデータユニットを伝送する装置であって、上で説明した装置が、少なくとも3つの隣接する伝送線を有する伝送媒体によって互いに接続される、装置を作り出す。
【0031】
本発明は、いわゆるマルチ配線・シグナリング(multi−wire signaling、MWS)によって、差動方式で駆動される平行信号線の対を用いて達成されてもよいものに似たEMI特性が達成されてもよいが、MWS手法が、実質的に隣接して配置された3つ以上の信号線を必要とすることの理解に基づく。本発明人は、すべての平行信号線内の電流の合計が経時的に一定である限り、個々の信号線の放射が互いに補償することを確立した。動的電流の合計は、接地接続を介する静的電流を避けるために、好ましくは0にされてもよい。
【0032】
MWS技法を使用する発明的手法は、複数の信号線または配線によって、高いデータ・レートと低い電磁気干渉(EMI)で2進データを伝送する方法を作り出すことが好ましい。本発明によれば、伝送線での信号変化を減らし、データ変化を調整し、これによって電磁放射を減らすために、特殊な符号化技法が使用される。本発明による符号化技法によって、位相ロック・ループ(PLL)の使用なしでクロック・パルスをレシーバ側で回復することができるように、タイミング情報は、伝送される信号に組み込まれてもよいことが好ましい。これは、単純なトランスミッタアンドレシーバ回路の使用ならびに伝送チャネル帯域幅の効率的使用を可能とし、これらが、集合的に、コスト効率の良いインターフェース解決策になる。
【0033】
データ/ストローブ符号化を用いるか用いない、従来のまたは伝統的な2進差動インターフェース技法と比較して、本発明によるMWS手法は、かなりの利益を提供する。良好なEMI特性を保ちながら、それと同時に、インターフェース・コストおよび回路コストが減らされ、データ・レートを高めることができる。
【0034】
3配線・システムを使用すると、従来の差動データ/クロック・パルス対またはデータ/ストローブ対と同一の伝送サイクルあたりのデータ量を伝送することができる。しかし、応用例がケーブルベースである場合、1つの配線および1つの遮蔽をなしで済ませてもよい。伝送レートおよび最大信号周波数は、データ/ストローブ符号化システムと同一である。
【0035】
4配線・システムでは、図3および4による差動シグナリング手法の場合と同一の本数の信号線または配線が使用されるが、サイクルあたりに2倍の量のデータ(2ビット/秒)を伝送することができる。さらに、ビットあたりの平均遷移レートが、データ/ストローブ符号化されたシステムのビットあたりの平均遷移レート未満に減らされる。ケーブルベースの応用例の場合、4本のすべての信号線が、共通のシールドを使用することができる。
【0036】
従来のまたは伝統的な手法と比較して、本発明によるMWS手法は、より低いコストのおかげで、高速応用例および低EMIインターフェース応用例により適する。4本以上の信号線または配線を有するシステムでのたやすく回復可能なタイミングおよび追加制御信号(ESC=escape sequence)が、多くの応用例でさらなる利点になる。
【0037】
本発明の上記および他の態様は、下で説明する実施形態に関する非制限的な例から明白であり、これによって説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図5から17を参照して、本発明の好ましい例示的実施形態を、下で詳細に説明するが、図面に示された、同一のまたは類似する動作を有する要素は、同一の符号を与えられている。
【0039】
図5は、マルチ配線・シグナリングによるデータの伝送に関する発明的システムの第1の例示的実施形態の概略的表現を示す。このシステムは、トランスミッタ200およびレシーバ202を備え、これらは、伝送媒体204によって互いに接続される。伝送媒体204には、複数の伝送線204〜204が含まれる。
【0040】
入力DATAで、トランスミッタ200は、データ信号を受信し、このデータ信号が、エンコーダ206に入れられる。入力DATAでのデータに基づいて、エンコーダ206は、符号信号SDを生成し、この符号信号SDには、複数の符号部SD0〜SDkが含まれ、符号部の個数は、伝送線204〜204の本数に対応する。対応するドライバ208〜208によって、エンコーダ206により供給された符号部またはその信号値が、トランスミッタ200の出力210〜210に供給される。トランスミッタ200の出力210〜210は、対応する伝送線204〜204に接続される。レシーバ202は、伝送線の本数に対応する複数の入力212〜212が含まれ、これらの入力212〜212は、伝送媒体の対応する信号線204〜204に接続される。入力212〜212で受信される個々の符号部SD0からSDkの信号値は、対応するドライバ214〜214に供給され、これらのドライバ214〜214は、受信した信号をデコーダ216に供給し、このデコーダ216は、受信した信号値または符号信号に基づいて、レシーバ回路202の出力DATA’に印加されるデータ出力信号を生成する。
【0041】
上述のように、本発明によるMWS手法は、差動手法で平行駆動線の対を用いて達成されるものに似たEMI特性が、すべての平行線の電流の合計が経時的に一定である限り、3本以上の信号線を用いても達成可能であることを認識したものである。この場合、個々の信号線の放射が、互いに補償する。接地接続を介する静的電流を避けるために、動的電流の合計が0にされてもよい。
【0042】
本発明によれば、差動原理は、互いに近い空間的関係で配置された複数の配線に拡張されてもよいことが認識されている。経時的に一定の電流合計になるすべての符号が、伝送媒体204の個々の信号線204〜204によって伝送されてもよい。これは、伝送されるデータと独立に使用されてもよい。
【0043】
2進伝送の場合、「0」および「1」が、伝送線を流れる異なる電流を示す。「1」は、たとえば、特定の電流がレシーバから送信機に流れていることを意味することができ、「0」は、同一の大きさの電流が反対方向に流れていることを意味することができる。その一方で、「1」が、特定の電流が流れていることを意味することができ、次いで、「0」が、電流が0であることを意味する。一定の個数の「1」および「0」を使用する符号(DC平衡化符号(DC−balanced code))だけが送られるときに、電流の合計が、同様に一定になる。遷移相では、次いで、ある信号線で立ち上がる電流が、別の信号線で対応して立ち下がる電流によって補償される。並列に送られる所与の個数の符号ビットについて、1つの2進「1」だけを有する複数の符号、2つの2進「1」を有する複数の符号などがある。これらの異なるマルチ配線符号が、図6の表に示されているが、図6では、3、4、および5の配線数について、可能な符号のそれぞれの総数が8、16、および32として示され、列0ホットから5ホットは、それぞれ、対応する個数の「1」を有する符号が何個存在するかを示す。たとえば、列0ホットは、「1」を全く含まない符号の個数を与え、列1ホットは、異なる本数の配線について、1つの「1」だけを含む符号の個数を示し、以下同様である。この場合、それぞれの反転バージョンが含まれるので、必ず、固定された個数の「0」を有する符号と同数の、同一の固定された個数の「1」を有する符号がある。図6の表からわかるように、使用される配線の増加する個数に伴って、より多くのDC平均化符号(DC−averaged code)が使用可能になる。たとえば、4本の配線は、等しい個数の「1」および「0」を有する6つの符号を可能とする。
【0044】
本発明によれば、同一の個数の「1」および「0」を有する符号の間の転換が、動的供給電流を防ぐために行われる。より多くの配線は、固定された個数の「1」および「0」を有するより多くの符号を可能とする。必ず、固定された個数の「0」を有する符号と同数の、同一の個数の「1」を有する符号がある。
【0045】
差動伝送の場合と同様に、本発明も、配線を近い空間的関係で案内することをもたらす。ケーブル内で、直接に隣接する配線が、シールドを共用する。プリント回路基板上では、MWSシステムの導体ストリップが、実質的に平行で互いに隣接して配置される。図7は、従来の差動手法および発明的手法による配線トポロジを示す。図7Aに示されているように、データ線DATA+およびDATA−とクロック線CLK+およびCLK−が、それぞれの別々のシールド218によって囲まれている。これと比較して、図7Bに示された本発明による手法は、共通のシールド218を用いるそれぞれの符号部の伝送用の4つの伝送線の配置を可能とし、その結果、マルチ配線・バンドルが、共通のシールドを共用するようになる。本発明による配置は、ハイ信号レベルからロー信号レベルへおよびその逆の遷移が補償されるので、低い放射をもたらす。配線は、ケーブル内またはプリント回路基板上で平行に、近接した空間的な接近にて配置される。
【0046】
本発明による第1の手法によれば、使用可能な符号は、データに対して直接にマップされてもよい。したがって、伝送サイクルあたりlog(DC平衡化された符号の個数)個の情報ビットが、伝送されてもよい。しかし、好ましい例示的実施形態によれば、符号自体ではなく符号遷移へのデータのマッピングが好ましく、これによって、追加の価値が得られる。伝送される次の符号は、図8から明瞭なようにデータおよび前の符号の関数であり、図8には、符号遷移による入力データの符号化を示すブロック図が示されている。符号は、データ変化およびデータ値と関わりなく変化し、これは、さらに、レシーバ側での継続的なタイミング情報をもたらす。図8からわかるように、「i」個の符号を用いて、「i−1」個の符号遷移が認識されてもよい。前に述べたように、符号変化は、データ変化がない場合であっても発生し、すべての符号変化が、1つの時間イベントを示し、その効果は、位相ロック・ループまたは他の洗練された回復回路の工夫をレシーバ側で必要とすることなく、クロック信号が、符号化されたデータから単純な形で回復されてもよいことである。
【0047】
本発明によるマルチ配線符号遷移シグナリングのいくつかの例を、下で説明する。
【0048】
図9は、本発明の1つの例示的実施形態による3配線符号遷移シグナリングの状態図を示す。たとえば、出発点として状態110をとると、データ値「0」が伝送のために存在する場合、次いで、符号101が伝送される。符号110から開始して、「1」が伝送のために存在する場合、次いで、符号011が伝送される。符号101から開始して、「1」が存在するときに、符号110への切替が行われ、伝送のために「0」が存在するときに、符号011への切替が行われる。符号011から開始して、「1」が存在するときに、符号101への切替が行われ、伝送されるデータユニットとして「0」が存在するときに、符号110への切替が行われる。図9に示された例示的実施形態では、3つのDC平衡化3配線符号がある。符号ごとに、2つの他の符号への遷移だけが可能である。図9に示された図には、データ値に基づいて、どの遷移が実行されるかが示されている。DATA=0のときに、図からわかるように、符号は、次の符号に変化する。DATA=1のときに、符号は、2つの符号値だけ前進し、これは、逆方向での符号の継続と同義である。各符号遷移が、2ビットを変更する。2つの遷移を用いて、1つのデータ・ビットだけが符号化されてもよいが、必要なタイミング情報が、必ず含まれる。
【0049】
図9からわかるように、符号110、101、または011あるいはこれらの反転バージョンだけが、この図で使用されている。ここでは、2つの遷移が可能であり、クロック・パルスあたり1ビットが送られる。「0」は、符号を1つ進め、「1」は、符号を2つ進める。各遷移が、2ビットを変更する。
【0050】
図10は、本発明のもう1つの例示的実施形態による4配線符号遷移シグナリングの状態図を示す。図を単純にするために、異なるデータ値に依存する、開始符合0011からの遷移だけを、図10を参照して説明する。図からわかるように、「00」が存在するときに、符号0011は、符号0101に切り替わる。データ値として「01」が存在するときに、符号は、符号0110に切り替わる。データ値「10」が存在するときに、符号は、符号1001に切り替わる。データ値「11」が存在するときに、符号は、符号1010に切り替わる。たとえば、エスケープ情報(ESC情報)を受信したときに符号1100に切り替えるために、追加の遷移が使用可能である。
【0051】
図10からわかるように、4本の配線を用いて、等しい個数の「0」および「1」を有する符号が選択されるという点で、最大6個のDC平衡化符号がある(図9の表も参照されたい)。この場合、図10を参照して説明したように、5つの符号遷移が可能である。2つの情報ビットが、4つの遷移に割り当てられてもよい。第5の遷移は、制御機能、たとえば、データ・ブロックの始めまたは終りをマークするのに使用されてもよい。第5の遷移は、データが送られないときにクロック信号を供給するために、「0」データを符号化するのに使用されてもよい。可能な符号遷移のうちの4つが、2ビットを変更し、1つの遷移が、4ビットのすべてを変更し、その結果、平均2.4ビットの符号が変化される。
【0052】
図11は、本発明の例示的実施形態による3配線・インターフェースの例を示す。図11に示された構造に、能動終端、単純なドライバ構造、および接地(GND)を介する直流が含まれる。
【0053】
図11からわかるように、トランスミッタ200は、電界効果トランジスタの形態の3つのスイッチ220〜220が含まれる。符号部SD0、SD1、およびSD2は、電界効果トランジスタ220〜220のゲート端子Gのうちのそれぞれのゲート端子に存在する。それぞれの電界効果トランジスタのドレイン端子Dは、接地(GND)に接続され、それぞれの電界効果トランジスタのソース端子Sは、トランスミッタ200の出力210〜210に接続される。符号部SD0、SD1、またはSD2の信号値に依存して、それぞれの関連する出力210〜210は、そこで優勢な電位のままにされるか、接地に切り替えられる。
【0054】
レシーバ202は、3つの入力212〜212を有し、レシーバ202の対応する入力およびトランスミッタ200の対応する出力が、伝送媒体204の伝送線204〜204によって、図11に示された形式で互いに接続される。入力212〜212は、それぞれ、増幅器222〜222の入力のうちのそれぞれの入力に接続され、電界効果トランジスタ224〜224のドレイン端子Dが、MOSダイオードとして接続される。増幅器222〜222の出力は、符号部SD0’〜SD2’の受信された信号値を供給する。さらに、供給線VDDが、レシーバ202内に設けられ、この供給線VDDは、一方では必要な供給電圧を増幅器222〜222に供給し、電流源Idrvにも接続され、電流源Idrvは、電界効果トランジスタ224〜224のゲート端子およびソース端子に接続される。
【0055】
図11は、3配線伝送システムの1つの可能なドライバおよびレシーバ回路を示す。信号線は、電界効果トランジスタ224〜224によって能動終端され、さらに、電流源Idrvが、レシーバ側202に設けられる。トランスミッタ200は、信号線204〜204のうちの1つを接地に引き落とすことによって符号を送る(それに従えば各符号が1つの0だけを有する、図9に示された状態図も参照されたい)。符号遷移は、電流を信号線から信号線に置き換える。
【0056】
図12は、本発明に従って使用される、データ・エンコーダのブロック図の例を示す。データ・エンコーダ(図12)は、符号遷移テーブルI 226、マルチプレクサ228、および出力レジスタ230を有する。1ビットまたは複数のビットを含むことができるデータ信号DATA(kビット、k=1,2,3…)と同様に、テーブル226は、エスケープ入力信号ESCを受信する。妥当性検査信号VALが、選択信号としてマルチプレクサ228に印加され、クロック信号CLKが、出力レジスタ230を活動化する。図からわかるように、符号テーブル226は、さらに、エンコーダの出力に現れる符号信号SD(nビット、k=3,4,5…)を受信し、存在するデータ信号および存在するエスケープ信号に基づいて、出力に新しい符号SDnextを生成し、この符号SDnextが、信号VALの対応する値を介して有効なアクションである場合、マルチプレクサ228によって選択され、出力レジスタ230によって出力される。したがって、次の符号値は、妥当性検査信号VAL、データ信号DATA、エスケープ信号ESC、および前の符号SDの関数である。
【0057】
有効なデータが存在しない場合、信号VALは、「0」のロー論理レベルになり、マルチプレクサ228の対応する活動化によって、次の符号値SDnextとして、出力に現れる符号値SDを選択することによって、符号進行または符号変化を防ぐ。図12に示された配置は、一般的な遷移符号化マシンである。上述のように、次の符号は、前の符号、データ入力、ESC入力、および妥当性検査信号VALの関数である。妥当性検査信号は、新しいデータが供給されないときに、必ず、符号進行を停止する。データが無効である場合、レシーバ側で、クロック・パルスに出会わない。ESC信号は、基本的に、入力データも担持するが、4つ以上の符号ビットについて使用可能になる冗長符号遷移の使用を可能とする。
【0058】
3配線・システムの場合、遷移符号化は、3配線・データ・エンコーダについて図13に示された状態図によって実行されてもよい。この図では、いわゆるより多くのステートマシン(more−state machine)が使用され、2ホット符号化が使用される。遷移は、図9を参照して既に説明した遷移に対応するが、ここでは妥当性検査情報信号VALがさらに含まれ、このVALは、対応する遷移について、必ず「1」の値を有する。
【0059】
図14は、レシーバ側で、受信された符号部値SD0’〜SDn’からクロック信号を回復するためのタイミング回復回路の例を示す。この回路は、複数のANDゲート232〜232を備え、これらのANDゲートは、第1入力で対応する符号部のそれぞれの反転信号を受信し、第2入力によって、対応する遅延線234〜234によって所定の時間間隔だけ遅延された符号部入力からの信号を受信する。ANDゲート232〜232の出力は、ORゲートによって論理的に組み合わされ、ORゲート236の出力は、クロック信号CLK’に対応する。上述のように、タイミング回復は、図14に示された回路によって実行され、この回路は、使用される配線または信号線の本数にかかわりなく、DC平均化符号の間で必ず少なくとも1つの「0」から「1」への遷移が行われるという事実を活用する。遅延線234〜234(たとえば、インバータ・チェイン)を使用することによって、遷移の短いパルスが生成される。符号内の異なる「0」から「1」への遷移が、同時に発生し、包含的OR動作によって共通のパルスに組み合わされる。回復されるタイミングのクロック・サイクルは、伝送クロック・サイクルおよび遅延要素の長さに依存する。多くのシステムで、異なる伝送クロック・サイクルが、完全な語(たとえば、16ビット)を送るのに使用される。通常、この語時間だけが、さらなる処理に必要である。ここでは、伝送クロック・パルスの共用版が用いられるので、そのクロック・サイクルは、単純な形で制御されてもよい。
【0060】
図15は、受け取った符号語SD’からクロック・パルスCLK’、送られたDATA’、ESC情報信号ESC’、および任意選択として誤り信号を生成するための、レシーバ側のデータ・デコーダの例を示す。この配置に、符号遷移テーブルII 238が含まれ、この符号遷移テーブルII 238は、入力レジスタ240によって前の符号SD’oldを受信し、入力SD’から直接に現在の符号を受信する。さらに、受信された符号SD’から、クロック信号CLK’が、タイミング回復回路242によって、図14に関して説明した方式で回復され、入力レジスタ240を解放し、出力レジスタ242を解放するのに使用される。供給された情報に基づいて、符号遷移テーブルII 238は、信号DATA’、ESC’、およびERRORを生成し、これらの信号は、回復されたクロック信号CLK’の制御の下で出力バッファ242によって出力される。図15に示された配置によって、オリジナル・データが、前の符号との到着した符号の比較によって復号され、符号遷移テーブルII 238は、すべての可能な組合せについてデータを表引きするために設けられる。符号の成分でない未使用記号からまたはそれへの遷移は、誤りとして報告されてもよい。
【0061】
符号遷移テーブルが、図12に示されたエンコーダに使用されたものと異なることを指摘しなければならない。レシーバ側での情報の処理に、異なるパイプライン・ステージを含めることができる。クロック・パルスが、無効なデータについて回復されないので、前に送られた情報が、レシーバ・パイプライン内でスタックされ得る。この情報をシフトするか、パイプラインを介して伝搬させるために、トランスミッタによって、たとえばESC信号を使用することによって、ダミー・データが含められる。
【0062】
図16は、4配線電流ループに関する本発明のもう1つの例示的実施形態による回路の例を示す。この例示的実施形態では、トランスミッタ200は、4つのスイッチS〜Sを備え、これらのスイッチは、符号部SD0〜SD3の信号値に依存して制御される。スイッチS〜Sは、伝送媒体204の、それらに接続された伝送線204〜204を接地電位GNDに駆動するか、トランスミッタ200内の電流源Idrvによって供給される電流レベルに駆動するために設けられる。
【0063】
レシーバ202は、複数の増幅器A〜Aを備え、これらの増幅器は、個々の符号部SD0’〜SD3’の信号値を出力する。信号線204〜204は、増幅器A〜Aの対応する非反転入力に接続され、さらに、それぞれの終端抵抗Rによって、増幅器A〜Aの反転入力に接続される。図16に示された4つの伝送線または伝送配線204〜204を用いると、電流ループ・シグナリングの原理が、MWS符号化方式を使用することによって拡張されてもよい。図16に示された回路は、トランスミッタ200およびレシーバ202を有する4配線・システムの原理を示す。一定の電流が、2本の信号線でトランスミッタ200からレシーバ202に流れ、他方の2本の信号線は、接地に接続され、リターン・パスを表す。受動終端抵抗網Rが、そのスター点で共通の基準レベルを生成する。個々の抵抗にまたがる電圧低下を検出することによって、2進信号レベルが決定されてもよい。レシーバ入力での電圧レベルは、接地に引きおろされた信号線について基準レベル未満である。一定の電流を供給される信号線について、電圧レベルは、スター点のレベルを超える。4本すべての信号線の累積電流は、どの符号が送られているかにかかわりなく、常に0である。
【0064】
図17は、次の符号が、現れるデータ、前の符号、妥当性検査信号、およびESC信号に基づいて、それに従って選択される4配線・データ・エンコーダの例を示す。図17に示された符号化マシンは、4配線符号化に使用される。これには、2ビット・データ入力およびESC信号に関する符号遷移テーブルが含まれる。実際の回路では、このテーブルは、非常にコンパクトな組合せ論理回路である。レシーバ側でのタイミング回復およびデータ復号は、図14および15に示された回路を使用して実行される。提供される符号シーケンスに関して、データ・エンコーダ内の符号遷移テーブルは、エンコーダ内の符号遷移テーブルに対応しなければならない。
【0065】
図1から4を参照して上で説明した従来の手法に対する本発明による方法および装置の利点は、後続の表から明白である。
【表1】

【0066】
本発明の好ましい例示的実施形態を、上で2進符号を基礎として詳細に説明したが、本発明が符号のこの特定のタイプに制限されないことは、専門家には明らかである。逆に、対応する隣接する信号線上の個々の符号部によって存在する信号値が、合計において一定であることが保証されるならば、どのような符号が選択されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】トランスミッタとレシーバの間でのデータの伝送中のEMIの影響を示すブロック図である。
【図2】ディスプレイ・コントロールおよび外部グラフィックス・コントロールを有するマトリックス・ディスプレイを示すブロック図である。
【図3A】データ信号およびクロック・パルス信号の差動シグナリング用の既知の回路を示す図である。
【図3B】図3Aの回路で使用される信号の波形を示す図である。
【図4A】データ/ストローブ符号化用の既知の回路を示す図である。
【図4B】図4Aの回路で使用される信号の波形を示す図である。
【図5】マルチ配線・シグナリング(MWS)によるデータの伝送に関する本発明によるシステムの第1の例示的実施形態を概略的に表す図である。
【図6】異なる本数の伝送線について特定の個数の「1」を有する何個の2進符号(0=ホット、…、5ホット)があるかを指定する表である。
【図7A】従来の差動シグナリングによる配線トポロジを示す図である。
【図7B】発明的マルチ配線・シグナリングによる配線トポロジを示す図である。
【図8】符号遷移による入力データの符号化を示すブロック図である。
【図9】本発明の1つの例示的実施形態による3配線符号遷移シグナリングを示す状態図である。
【図10】本発明のもう1つの例示的実施形態による4配線符号遷移シグナリングを示す状態図である。
【図11】本発明の1つの例示的実施形態による3配線・インターフェースの例を示す図である。
【図12】データ・エンコーダを示すブロック図である。
【図13】3配線・データ・エンコーダのステートマシンを示す図である。
【図14】タイミング回復回路を示すブロック図である。
【図15】データ・デコーダの例を示す図である。
【図16】4配線電流ループの回路の例を示す図である。
【図17】4配線・データ・エンコーダの例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3本の隣接する伝送線を含む伝送媒体によってデータユニットを伝送する方法であって、
(a)複数の符号を供給するステップであって、各符号が、前記伝送媒体の伝送線の本数に対応する複数の符号部を含み、関連する伝送線上の符号の各符号部が、所定の信号値を有し、前記信号値の合計が、伝送される符号ごとに実質的に一定である、ステップと、
(b)伝送されるデータユニットごとに、前記複数の符号から符号を選択するステップと、
(c)前記伝送媒体による伝送のために前記選択された符号を供給するステップと
を有する方法。
【請求項2】
伝送される前記データユニットおよび前記符号が、所定のクロック・パルスに従って供給され、ステップ(b)において、各新しいクロック・パルスで、新しい符号が、前の符号および新しいデータユニットに基づいて選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記符号が、2進符号であり、前記符号のそれぞれが、同一の個数の、ハイ論理レベルを有する符号部およびロー論理レベルを有する符号部を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
データユニットが、1ビットまたは複数のビットを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記信号値の前記合計が、実質的に0である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも3本の隣接する伝送線を含む伝送媒体によってデータユニットを伝送する装置であって、
前記データユニットを受信する入力と、
複数の符号が記憶されるメモリであって、各符号が、前記伝送媒体の伝送線の本数に対応する複数の符号部を含み、関連する伝送線上の符号の各符号部が、所定の信号値を有し、前記信号値の合計が、伝送される符号ごとに実質的に一定である、メモリと、
前記入力で受信されるデータユニットの符号をメモリから選択し、供給するために、前記入力および前記メモリに能動的に接続された選択装置と、
前記伝送媒体による伝送のために前記選択装置によって供給される前記符号を供給するために、前記選択装置に能動的に接続された出力と
を有する装置。
【請求項7】
クロック・パルスを受信するクロック入力を伴い、データユニットが、各新しいクロック・パルスで前記入力に現れ、前記選択装置が、前の符号および新しいデータユニットに基づいて、新しいクロック・パルス用の新しい符号を選択し、供給する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも3本の隣接する伝送線を含む伝送媒体によってデータユニットを受信する方法であって、前記データユニットが、請求項1から5に記載の方法に従って送られ、
(a)前記伝送媒体上で伝送された伝送された符号を受信するステップと、
(b)前記受信された符号を適当なデータユニットに割り当てるステップと、
(c)前記データユニットを出力するステップと
を含む方法。
【請求項9】
前記伝送媒体によって伝送された前記符号の遷移に基づいてクロック信号を回復するステップ
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも3本の隣接する伝送線を含む伝送媒体からデータユニットを受信する装置であって、前記データユニットが、請求項6または7に記載の装置によって送られ、
前記伝送媒体から前記符号を受信する入力と、
前記受信された符号を対応するデータユニットに割り当てる配置と、
前記データユニットを出力する出力と
を有する装置。
【請求項11】
前記伝送媒体によって伝送された前記符号の遷移に基づいてクロック信号を回復するタイミング回復回路を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも3本の隣接する伝送線を有する伝送媒体によってデータユニットを伝送する方法であって、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法に従って前記データユニットを伝送するステップと、
請求項8または9に記載の方法に従って前記データユニットを受信するステップと
を含む方法。
【請求項13】
請求項6または7に記載のデータユニットを伝送する装置と、
伝送のために前記装置に能動的に接続され、少なくとも3つの隣接する伝送線を有する伝送媒体と、
請求項10または11に記載のデータユニットを受信する前記伝送媒体に能動的に接続された装置と
を有する、データユニットを伝送する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2007−511118(P2007−511118A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536252(P2006−536252)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052162
【国際公開番号】WO2005/041164
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】