説明

伝送装置の回線状態診断装置

【課題】不安定なデータや伝送路自体が中途半端な断線状態での「中途半端な回線断」の回線状態も的確に診断する。
【解決手段】カウンタ14は、伝送コントローラ13によるCRC異常などの伝送異常の検出回数をカウントする。カウンタ15は、監視タイマ12による回線断の検出回数をカウントする。回線状態診断部16は、両カウンタのカウント値から、伝送異常の検出頻度または回線断/復帰の検出頻度、もしくは両方の検出頻度を求め、これらから伝送装置間の伝送回線が「中途半端な回線断」にあるか否かを診断する。
回線状態診断出力として、強制的に回線断の状態にするか、警告のための表示や通知のみにするか、検出頻度がある値以下になった場合に解除するか、一定時間以上経過後に強制解除するかを外部設定可能にした構成を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送路で接続される伝送装置間でHDLC方式によりデータ伝送する伝送装置に係り、特に伝送回線状態の診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ等で構成される伝送路は、各伝送装置間を1本の伝送路で接続した場合、ある伝送装置間で伝送路の断線があるとネットワーク全体の伝送が出来なくなってしまう。これを回避するために、各伝送装置間をA系とB系の2本の伝送路で接続した二重化方式が多く採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
二重化方式伝送路の一般的な構成を図4に示す。同図において、A系、B系は逆方向の伝送ループとなっており、それぞれ局0〜局5の伝送装置間で伝送を行なう。各伝送装置ではA系、B系の回線状態を診断しており、片方で回線断を検出した場合は、伝送経路を変更することによって、ネットワーク全体の伝送が停止しないようにしている。
【0004】
図5に局3と局4のA系伝送路が断線した場合の伝送経路を示す。局4はA系受信部で断線を検出すると、B系受信をA系に送信する径路へ変更し、B系出力への送信は停止する。また、局4はA系断線の情報をマスタ局の局0に通知する。この後、局3はB系受信部で断線を検出し、A系受信をA系とB系の両方に送信する経路へ変更する。断線情報を得たマスタ局はB系受信をB系へ送信する経路に変更し、ネットワーク全体の経路変更が完成する。
【0005】
定周期で伝送が行なわれる伝送路の回線断検出方法として、ある特定のビット列のデータ受信を監視し、一定時間受信できなくなった場合に回線断として認識する方法がある。
【0006】
HDLC(high level data link control procedure)伝送フォーマットを採用している伝送路の回線断検出方式の例を図6に示す。HDLC伝送フォーマットの場合は、伝送パケットの始めと終わりにフラグと呼ぶ“01111110”のビット列が存在する。このフラグのビット列受信を監視し、フラグを受信する度に監視タイマをリトリガする。そして、この監視タイマがタイムアップした場合は、回線断として認識する。
【0007】
このときの監視タイマ値T1は、その伝送路で有り得るフラグ間隔の最大値より大きくする。HDLC伝送フォーマットの場合は、始めと終わりにフラグに挟まれたデータの最大長から設定することが可能である。また、送信データがないときは、アイドル状態としてフラグと同じビットパターンを伝送路に流しておくことで、回線正常時の監視タイマのタイムアップを防止する。
【特許文献1】特公平6−83241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の回線断診断方式は、完全な断線が発生した場合は特に問題ないが、経時変化や故障により伝送モジュールの出力レベルが不安定になった場合や伝送路自体が断線しかかっている場合などの「中途半端な回線断」が発生している場合は、不的確な診断動作が予想される。
【0009】
例えば、図7に示すように、時折ビット異常となる場合や監視タイマより短い間隔でフラグを受信するような異常状態では、回線断を検出することができない。また、図8に示すように、回線断/復帰を繰り返すような異常状態では、経路変更が頻繁に行なわれ、ネットワークの性能低下に陥る。
【0010】
本発明の目的は、上記の「中途半端な回線断」の回線状態も的確に診断できる伝送装置の回線状態診断方式を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記の課題を解決するため、各伝送装置に搭載されている伝送コントローラによる伝送異常の検出頻度または監視タイマによる回線断/復帰の検出頻度、もしくは両方の検出頻度を元に、局間の伝送回線が「中途半端な回線断」にあるか否かを診断するようにしたもので、以下の構成を特徴とする。
【0012】
(1)伝送路で接続される伝送装置間でHDLC方式によりデータ伝送し、該データがもつフラグのビット列監視によって回線断を検出する監視タイマと、CRC異常、ショートフレーム異常、オーバラン異常などの伝送異常を検出する伝送コントローラとを備えた伝送装置において、
前記伝送コントローラによる伝送異常の検出頻度または監視タイマによる回線断/復帰の検出頻度、もしくは両方の検出頻度を元に、伝送装置間の伝送回線が「中途半端な回線断」にあるか否かを診断することを特徴とする。
【0013】
(2)前記「中途半端な回線断」の診断出力として、強制的に回線断の状態にするか、警告のための表示や通知のみにするかを、外部設定可能にした構成を特徴とする。
【0014】
(3)前記「中途半端な回線断」の診断出力として、前記検出頻度がある値以下になった場合に解除するか、一定時間以上経過後に強制解除するかを、外部設定可能にした構成を特徴とする。
【0015】
(4)前記「中途半端な回線断」の診断条件として、前記検出頻度の値を設定変更可能にする手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、本発明によれば、伝送コントローラによる伝送異常の検出頻度または監視タイマによる回線断/復帰の検出頻度、もしくは両方の検出頻度を元に、局間の伝送回線が「中途半端な回線断」にあるか否かを診断するようにしたため、「中途半端な回線断」の回線状態も的確に診断できる。具体的には、
(1)伝送モジュールの出力レベルが経時変化や故障により出力レベルが不安定にあった場合や伝送路自体が中途半端な断線状態の場合の特殊なケースとして監視タイマより短い間隔でフラグを受信するような異常時でも回線断を検出することができる。この結果、予防保全も可能となる。
【0017】
(2)伝送モジュールの出力レベルが経時変化や故障により出力レベルが不安定にあった場合や伝送路自体が中途半端な断線状態の場合の特殊なケースとして回線断/復帰を繰り返すような異常時でも、一時的でも強制的に回線断の状態で保持することにより、頻繁な経路制御によるネットワークの性能低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態を示す回線状態診断装置の要部構成図である。
【0019】
前記のように、各局0〜5に設けられるHDLC方式の伝送装置(図4)には、伝送パケットの始めと終わりにフラグと呼ぶ“01111110”のビット列が存在する。フラグ検出部11は受信データからフラグを検出し、フラグを受信する度に監視タイマ12に対し、次回のタイマ動作をリトリガする。そして、次のフラグを受信する前に、監視タイマ12がタイムアップした場合は回線断として認識し、その出力を得る。
【0020】
また、HDLC方式の伝送装置は、HDLCフォーマットの伝送では受信時には伝送コントローラ13によってCRC異常、ショートフレーム異常、オーバーラン異常などの伝送異常を検出する。
【0021】
なお、CRC異常は、データ送信側では実データから生成するCRCコードを実データに付加して送信し、データ受信側では受信データからCRCコードを生成し、これが受信したCRCコードと一致するか否かで検出する。また、ショートフレーム異常は、HDLC方式による通信プロトコルで決められた最小フレームビット数に満たないフレームを検出したか否かで検出する。オーバーラン異常は、受信データを読み取る前に次のデータが到着し、前のデータを消失したか否かで検出する。
【0022】
本実施形態は、上記の監視タイマ12の回線断検出機能および伝送コントローラ13の異常検出機能を利用して、回線状態を診断する。この回線状態診断装置として、2つのカウンタ14、15と回線状態診断部16を設ける。
【0023】
カウンタ14は、伝送コントローラ13による伝送異常検出の回数をカウントする。カウンタ15は、監視タイマ12による回線断検出の回数をカウントする。回線状態診断部16は、カウンタ14および15の一定時間毎のカウント数を取り込み、あるカウント数を超えた(ある頻度に達した)場合は、通常の回線断になる一歩手前である「中途半端な回線断」の発生と診断する。
【0024】
図2は伝送異常カウント数を元にした「中途半端な回線断」の診断例を示す。受信データのパケットやフラグにビット異常が発生したとき、これら異常を伝送コントローラ13が伝送異常として検出する。この伝送異常の回数は、カウンタ14においてn,n+1,n+2,…としてカウントされる。回線状態診断部16は、カウンタ14のカウント数から、一定時間T2の間に伝送異常がm回発生したときに「中途半端な回線断」の発生と診断する。
【0025】
図3は回線断検出カウント数を元にした「中途半端な回線断」の診断例を示す。フラグ検出部11及び監視タイマ12は受信データから検出されるフラグのビット列をリトリガ時限T1で監視する。監視タイマ12が回線断/復帰を繰り返す場合、この回数はカウンタ15においてn,n+1,n+2,…としてカウントされる。回線状態診断部16は、カウンタ15のカウント数から、一定時間T3の間に回線断がm回発生したときに「中途半端な回線断」の発生と診断する。
【0026】
なお、回線状態診断部16は、「中途半端な回線断」と診断した場合、その出力としては、強制的に回線断の指令を発生するか、警告のための表示や通知のみとするかを外部設定可能にしておく。また、回線状態診断部16は、「中途半端な回線断」の診断出力を、一定時間のカウント数があるカウント数以下になった(異常発生頻度がある値以下になった)場合に解除するか、一定時間以上経過後に強制解除するかを外部設定可能にしておく。
【0027】
これら外部設定は、伝送システムの規模や伝送データの重要性などを元に適宜選択することで、「中途半端な回線断」に対する柔軟な対応を可能にする。
【0028】
以上のことから、本実施形態によれば、伝送モジュールの出力レベルが経時変化や故障により出力レベルが不安定にあった場合や、伝送路自体が中途半端な断線状態の場合の特殊なケースとして監視タイマより短い間隔でフラグを受信するような場合の異常状態を的確に診断でき、この結果、予防保全も可能となる。
【0029】
また、伝送モジュールの出力レベルが経時変化や故障により出力レベルが不安定になった場合や、伝送路自体が中途半端な断線状態の場合の特殊なケースとして回線断/復帰を繰り返すような場合の異常状態を、一時的でも強制的に回線断の状態で保持することにより、頻繁な経路制御によるネットワークの性能低下を防止できる。
【0030】
なお、実施形態では伝送コントローラによる伝送異常の検出頻度または監視タイマによる回線断/復帰の検出頻度を元に、伝送装置間の伝送回線が「中途半端な回線断」にあるか否かを診断する場合を示すが、両方の検出頻度が共にある値以上になる場合に「中途半端な回線断」にあると診断することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態を示す回線状態診断装置の要部構成図。
【図2】実施形態における「中途半端な回線断」の診断例(その1)。
【図3】実施形態における「中途半端な回線断」の診断例(その2)。
【図4】二重化方式伝送路の一般的な構成例。
【図5】局3と局4のA系伝送路が断線した場合の伝送経路を示す図。
【図6】HDLC方式による伝送路の回線断検出方式の例。
【図7】ビット異常発生による監視タイマの検出失敗例。
【図8】監視タイマによる回線断発生/復帰の繰り返しの例。
【符号の説明】
【0032】
11 フラグ検出部
12 監視タイマ
13 伝送コントローラ
14、15 カウンタ
16 回線状態診断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路で接続される伝送装置間でHDLC方式によりデータ伝送し、該データがもつフラグのビット列監視によって回線断を検出する監視タイマと、CRC異常、ショートフレーム異常、オーバラン異常などの伝送異常を検出する伝送コントローラとを備えた伝送装置において、
前記伝送コントローラによる伝送異常の検出頻度または監視タイマによる回線断/復帰の検出頻度、もしくは両方の検出頻度を元に、伝送装置間の伝送回線が「中途半端な回線断」にあるか否かを診断することを特徴とする伝送装置の回線状態診断装置。
【請求項2】
前記「中途半端な回線断」の診断出力として、強制的に回線断の状態にするか、警告のための表示や通知のみにするかを、外部設定可能にした構成を特徴とする請求項1に記載の伝送装置の回線状態診断装置。
【請求項3】
前記「中途半端な回線断」の診断出力として、前記検出頻度がある値以下になった場合に解除するか、一定時間以上経過後に強制解除するかを、外部設定可能にした構成を特徴とする請求項1に記載の伝送装置の回線状態診断装置。
【請求項4】
前記「中途半端な回線断」の診断条件として、前記検出頻度の値を設定変更可能にする手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の伝送装置の回線状態診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−287823(P2006−287823A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108137(P2005−108137)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】