説明

位相同期回路

【課題】 簡単な構成で、暴走状態に陥る前により確実に異常を検知し、半導体装置の誤動作をより効果的に防止できる位相同期回路を提供する。
【解決手段】 発振制御回路11、電圧制御発振回路12、帰還回路13を備え、発振制御回路11の出力電圧、発振制御に係る発振制御回路11及び電圧制御発振回路12のアナログ内部電圧の内、少なくとも何れか1つの電圧を異常検出用電圧Vdi(i=1〜n)とし、異常検出用電圧Vdiがロック可能範囲の上限値より高く設定された第1判定電圧Vri1より高い場合または下限値より低く設定された第2判定電圧Vri2より低い場合に異常状態であると判定する異常判定回路15iが、異常検出用電圧Vdi夫々について各別に設けられ、異常判定回路15i夫々における異常状態の検出結果を用いて暴走前状態であるか否かを判定し、暴走前状態であると判定した場合に、初期化動作を行う異常復帰回路16を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暴走状態を検出して自動的に回復を行う機能を備える位相同期回路(PLL:Phase Locked Loop)に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数制御のための回路として、例えば、位相同期回路(PLL回路)がある。ここで、図8は、従来のPLL回路の基本構成例を示している。図8に示す従来のPLL回路100は、入力信号として受け付けた2つのクロック信号の位相差に応じた電圧の発振制御信号Fvcoを出力する発振制御回路11と、発振制御信号Fvcoの電圧値に応じた周波数で発振する出力クロック信号Foを出力する電圧制御発振回路(VCO)12と、出力クロック信号Foの分周信号を帰還クロック信号Ffebとして出力する帰還回路13と、を備え、発振制御回路11が、外部入力された外部クロック信号Finと帰還クロック信号Ffebを入力信号として受け付けるように構成されている。
【0003】
発振制御回路11は、外部クロック信号Finと帰還クロック信号Ffebを比較して、チャージポンプ11bを制御するチャージポンプ制御信号を出力する位相比較器11aと、チャージポンプ制御信号に応じた電圧を位相差検出信号Fcpとして出力するチャージポンプ11bと、位相差検出信号Fcpの高周波成分を除去して発振制御信号Fvcoを出力するループフィルタ12ループフィルタ11cで構成されている。
【0004】
より詳細には、位相比較器11aは、外部クロック信号Finより帰還クロック信号Ffebの位相が遅れている場合は、チャージポンプ11bの出力電圧を上昇させる(電圧制御発振回路12において出力クロック信号Foの周波数を高くする)パルス信号UPを出力する。また、位相比較器11aは、外部クロック信号Finより帰還クロック信号Ffebの位相が進んでいる場合は、チャージポンプ11bの出力電圧を下降させる(電圧制御発振回路12において出力クロック信号Foの周波数を低くする)パルス信号DNを、チャージポンプ制御信号として出力する。
【0005】
ループフィルタ11cは、ローパスフィルタで構成され、チャージポンプ11bから出力された位相差検出信号Fcpの信号成分の内、高周波数成分を除去して、発振制御信号Fvcoを生成する。ローパスフィルタ11cを設けることにより、スイッチングノイズの低減及びフィードバックループの安定化を図ることができる。
【0006】
PLL回路100は、外部クロック信号Finと出力クロック信号Foを分周した帰還クロック信号Ffebの位相差が小さくなるように制御することにより、外部クロック信号Finと同じ位相で、外部クロック信号Finを周波数逓倍した出力クロック信号Foを出力する。
【0007】
ところで、上述した従来のPLL回路100では、落雷によるサージや周辺回路からのノイズ等の外的要因の影響により、出力クロック信号Foの周波数が高くなる場合がある。出力クロック信号Foの周波数が所定の周波数より高くなると、電圧制御発振回路12及び帰還回路13を含むフィードバック経路の周波数特性の制約により、帰還クロック信号Ffebの周波数がゼロになるという現象が生じる可能性がある。この場合、位相比較器11aは、帰還クロック信号Ffebの位相が出力クロック信号Foの位相より遅れていると判定し、電圧制御発振回路12において出力クロック信号Foの周波数を高くするパルス信号UPを出力し続けることになる。そうすると、電圧制御発振回路12から出力される出力クロック信号Foの周波数が上昇し続け、PLL回路100は、正常な動作を回復できない暴走状態となる。PLL回路100が暴走状態になると、PLL回路100を搭載した半導体装置が正常に動作できなくなるという問題があった。このため、PLL回路100の暴走状態を検出して自動的に回復するための様々な技術が提案されている。
【0008】
PLL回路の暴走状態を検出して自動的に回復するための技術としては、例えば、上述した発振制御回路、電圧制御発振回路及び帰還回路を備えたPLL回路であって、外部クロック信号と帰還クロック信号に基づいて異常を検出する異常検出回路と、異常検出回路において異常が検出された場合に、電圧制御発振回路に入力される発振制御信号の電圧をリセットする異常回復回路を設けたPLL回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
特許文献1に記載のPLL回路では、異常検出回路が、外部クロック信号の遷移でセット状態に、帰還クロック信号の遷移でリセット状態になるRSフリップフロップ回路と、帰還クロック信号の遷移間における外部クロック信号の遷移数をカウントするカウンタ回路を備えて構成され、カウント数が一定数以上となった場合に、暴走状態であると判定するように構成されている。尚、カウント数は、帰還クロック信号の周波数が0になったと判定できる値に設定している。
【0010】
また、PLL回路の暴走状態を検出して自動的に回復するための他の技術として、例えば、出力クロック信号が連続してHレベルになるHigh期間が所定期間より長い場合、及び、出力クロック信号が連続してLレベルになるLow期間が所定期間より長い場合の何れか一方を検出した場合に、PLL回路が暴走状態であると判定する発振検出修繕回路が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
ここで、図9は、PLL回路の暴走状態を検出して自動的に回復する機能を備えないPLL回路における発振制御信号の電圧を、図10は、PLL回路の暴走状態を検出して自動的に回復する機能を備えるPLL回路における発振制御信号の電圧を、夫々示している。図10から、PLL回路の暴走状態を検出して自動的に回復する機能を備えるPLL回路では、破線で示す暴走状態の後、正常な動作に復帰していることが分かる。
【0012】
【特許文献1】特開2000−49598号公報
【特許文献2】国際公開第2005/039053号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1に記載のPLL回路では、帰還クロック信号の遷移間における外部クロック信号の遷移数をカウントし、帰還クロック信号の周波数が0になったとみなせる場合に暴走状態であると判定することにより、完全に暴走状態に陥ってから暴走回復を行うので、PLL回路が暴走状態に陥ってから正常に回復するまでに時間がかかる可能性があるという問題があった。
【0014】
また、上記特許文献1に記載のPLL回路では、帰還クロック信号の遷移間における外部クロック信号の遷移数をカウントして暴走状態を判定するので、出力クロック信号の周波数を実質的に検出できない構成となっている。このため、暴走状態が検出されるまでの間に、出力クロック信号の周波数がPLL回路を搭載した半導体装置を誤動作させる周波数に至る可能性がある。この場合には、暴走状態が検出されるまで、暴走状態にあるPLL回路の出力クロック信号が半導体装置に出力され続けることとなり、半導体装置が誤動作する可能性があるという問題があった。
【0015】
また、上記特許文献2に記載の発振検出修繕回路では、出力クロック信号のHigh期間またはLow期間が所定時間より長い場合に暴走状態であると判定することにより、PLL回路が完全に暴走状態に陥ったことを検出するので、出力クロック信号を内部生成した出力クロック信号に切り替えるまで、暴走状態にあるPLL回路の出力クロック信号が半導体装置の動作クロック信号として出力され続けることとなり、半導体装置が誤動作する可能性があるという問題があった。
【0016】
尚、上記特許文献2には明示されていないが、出力クロック信号のHigh期間またはLow期間の期間の判定を、タイマ等を用いて行う場合には回路構成が複雑になる。更に、タイマ等に入力されるクロック信号が正常な状態にあることが必要となるが、サージやノイズ等によりPLL回路が暴走状態となる場合には、タイマ等に入力されるクロック信号についても異常状態になる可能性があるため、暴走状態が正しく検出されない可能性がある。
【0017】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成で、暴走状態に陥る前により確実に異常を検知し、正常な状態への復帰をより迅速化し、半導体装置の誤動作をより効果的に防止できる位相同期回路を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための本発明に係る位相同期回路は、入力信号として受け付けた2つのクロック信号の位相差に応じた電圧の発振制御信号を出力する発振制御回路と、前記発振制御信号の電圧値に応じた周波数で発振する出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路と、前記出力クロック信号または前記出力クロック信号の分周信号を帰還クロック信号として出力する帰還回路と、を備え、前記発振制御回路が、外部入力された外部クロック信号と前記帰還クロック信号を入力信号として受け付けるように構成された位相同期回路であって、前記発振制御回路の出力電圧、前記発振制御信号を生成するために用いる前記発振制御回路のアナログ内部電圧、及び、発振制御のための前記電圧制御発振回路のアナログ内部電圧の内、何れか1つの電圧を異常検出用電圧とし、前記異常検出用電圧が、ロック可能な電圧範囲の上限値より高く設定された第1判定電圧より高い場合、または、ロック可能な電圧範囲の下限値より低く設定された第2判定電圧より低い場合に、異常状態であると判定する異常判定回路と、前記異常判定回路において前記異常状態が検出された場合に、暴走前状態であると判定して、初期化動作を行う異常復帰回路と、を備えることを第1の特徴とする。
【0019】
上記目的を達成するための本発明に係る位相同期回路は、入力信号として受け付けた2つのクロック信号の位相差に応じた電圧の発振制御信号を出力する発振制御回路と、前記発振制御信号の電圧値に応じた周波数で発振する出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路と、前記出力クロック信号または前記出力クロック信号の分周信号を帰還クロック信号として出力する帰還回路と、を備え、前記発振制御回路が、外部入力された外部クロック信号と前記帰還クロック信号を入力信号として受け付けるように構成された位相同期回路であって、前記発振制御回路の出力電圧、前記発振制御信号を生成するために用いる前記発振制御回路のアナログ内部電圧、及び、発振制御のための前記電圧制御発振回路のアナログ内部電圧の内、複数の電圧を異常検出用電圧とし、前記異常検出用電圧が、ロック可能な電圧範囲の上限値より高く設定された第1判定電圧より高い場合、または、ロック可能な電圧範囲の下限値より低く設定された第2判定電圧より低い場合に、異常状態であると判定する異常判定回路が、前記異常検出用電圧の夫々について各別に設けられ、前記異常判定回路の夫々における前記異常状態の検出結果を用い、所定の暴走判定条件に基づいて暴走前状態であるか否かを判定し、前記暴走前状態であると判定した場合に、初期化動作を行う異常復帰回路を備えることを第2の特徴とする。
【0020】
上記特徴の本発明に係る位相同期回路は、前記異常復帰回路は、前記異常判定回路の何れか1つにおいて前記異常状態が検出された場合に、前記暴走前状態であると判定することを第3の特徴とする。
【0021】
上記第2または第3の特徴の本発明に係る位相同期回路は、前記異常復帰回路が、前記暴走前状態であると判定した場合に、前記位相同期回路を構成する部分回路の内、前記異常状態が検出された前記異常判定回路の前記異常検出用電圧に係る前記部分回路に対して前記初期化動作を行うことを第4の特徴とする。
【0022】
上記第1〜第3の特徴の本発明に係る位相同期回路は、前記異常復帰回路が、前記暴走前状態であると判定した場合に、前記電圧制御発振回路及び前記帰還回路を初期化することを第5の特徴とする。
【0023】
上記第1〜第3の特徴の本発明に係る位相同期回路は、前記異常復帰回路が、前記暴走前状態であると判定した場合に、前記位相同期回路を構成する部分回路毎に、外部入力された初期化設定信号に基づき、初期化を行うか否かを設定可能に構成されていることを第6の特徴とする。
【0024】
上記何れかの特徴の本発明に係る位相同期回路は、前記発振制御回路が、前記外部クロック信号と前記帰還クロック信号の位相差に応じた電圧の位相差検出信号を出力する位相比較器と、チャージポンプと、前記位相差検出信号の高周波成分を除去して発振制御信号を出力するローパスフィルタと、を備えて構成され、前記位相比較器の出力ノードと前記電圧制御発振回路の入力ノードの間の所定ノードの電圧、及び、発振制御のための前記電圧制御発振回路のアナログ内部電圧を異常検出用電圧とすることを第7の特徴とする。
【0025】
上記何れかの特徴の本発明に係る位相同期回路は、前記異常判定回路が、複数の抵抗素子を用い、所定の正電圧を分圧して前記第1判定電圧及び前記第2判定電圧を生成する分圧回路と、前記第1判定電圧と前記異常検出用電圧を比較する第1比較回路と、前記第2判定電圧と前記異常検出用電圧を比較する第2比較回路と、前記第1比較回路の出力信号と前記第2判定信号の出力信号を用い、前記異常状態を示す異常状態検出信号を生成する異常状態検出信号生成回路と、を備えることを第8の特徴とする。
【0026】
上記第1〜第7の特徴の本発明に係る位相同期回路は、前記異常判定回路が、外部入力された判定電圧設定信号に基づいて、前記第1判定電圧または前記第2判定電圧を設定可能に構成されていることを第9の特徴とする。
【0027】
上記特徴の本発明に係る位相同期回路は、前記異常判定回路が、複数の可変抵抗素子を用い、所定の正電圧を分圧して前記第1判定電圧及び前記第2判定電圧を生成する分圧回路と、前記第1判定電圧と前記異常検出用電圧を比較する第1比較回路と、前記第2判定電圧と前記異常検出用電圧を比較する第2比較回路と、前記第1比較回路の出力信号と前記第2判定信号の出力信号を用い、前記異常状態を示す異常状態検出信号を生成する異常状態検出信号生成回路と、前記判定電圧設定信号に基づいて、前記可変抵抗素子夫々の抵抗値を設定する抵抗値設定回路と、を備えることを第10の特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
上記特徴の位相同期回路によれば、異常判定回路により、発振制御回路の出力電圧、発振制御信号を生成するために用いる発振制御回路のアナログ内部電圧、及び、発振制御のための電圧制御発振回路のアナログ内部電圧、即ち、出力クロック信号の周波数に影響を与える所定ノードの電圧により異常状態であるか否かを判定するので、異常判定回路の第1判定電圧及び第2判定電圧を、ロック可能な範囲外で、且つ、出力クロック信号の周波数が上記特徴の位相同期回路を搭載した半導体装置を誤動作させる周波数に至らない範囲で設定することにより、出力クロック信号が半導体装置を誤動作させる周波数に至る前に、正常な状態への復帰を図ることができる。
【0029】
即ち、上記特徴の位相同期回路によれば、出力クロック信号が半導体装置を誤動作させる周波数に至る前に、正常な状態への復帰を図ることができるので、半導体装置の誤動作を効果的に防止できる。更に、上記特徴の位相同期回路は、出力クロック信号が半導体装置を誤動作させる周波数に至る前、即ち、完全な暴走状態に陥る前に、正常な状態への復帰を図ることができるので、位相同期回路が正常な状態へ復帰するまでにかかる時間を短縮することができる。
【0030】
上記第2の特徴の位相同期回路によれば、複数の異常判定回路により、複数のノードのアナログ電圧を用いて異常状態であるか否かを判定するので、異常復帰回路における暴走前状態の判定精度の向上を図ることが可能になる。また、上記第2の特徴の位相同期回路では、複数のノードのアナログ電圧を用いて異常状態であるか否かを判定するので、例えば、異常判定結果を利用して不良解析する場合には、位相同期回路を構成する部分回路の内、どの部分回路に異常が発生しているかを特定し易くなり、不良解析に係る手間及び時間を低減可能になる。
【0031】
上記第4の特徴の位相同期回路によれば、異常復帰回路が、異常判定回路における異常状態の検出結果に基づいて、初期化動作を行う部分回路を設定するので、正常に動作している部分回路を初期化する必要がなく、初期化動作にかかる消費電力の低減を図ることが可能になる。また、初期化動作にかかる初期化時間が比較的長い部分回路に異常がなく、初期化時間が比較的短い時間部分回路に異常がある場合には、初期化時間が比較的長い部分回路について初期化動作を行わないことにより、位相同期回路全体で、正常な状態への復帰にかかる時間の短縮化を図ることが可能になる。
【0032】
上記第5の特徴の位相同期回路によれば、電圧制御発振回路及び帰還回路のみを初期化するので、ループフィルタから出力される発振制御信号は初期化されないため、正常な状態への復帰にかかる時間の短縮化を図ることが可能になる。
【0033】
上記第6の特徴の位相同期回路によれば、異常状態が検出された場合に初期化する部分回路を選択できるので、正常な状態への復帰にかかる時間の短縮化を図るために初期化する回路を最小限に抑える、或いは、位相同期回路の動作をより確実に保証するために位相同期回路全体を初期化する等、位相同期回路が搭載される半導体装置の回路構成等に応じた柔軟な復帰回復動作が可能になる。
【0034】
上記第8の特徴の位相同期回路によれば、異常判定回路が、抵抗素子で構成された分圧回路とコンパレータ等で構成された第1比較回路と第2比較回路で構成されるので、簡単な構成で、異常判定回路を実現することができる。
【0035】
上記第9の特徴の位相同期回路によれば、外部入力された判定電圧設定信号に基づいて、第1判定電圧及び第2判定電圧を変更可能に構成されているので、位相同期回路の特性や半導体装置の構成に応じた異常状態の判定が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係る位相同期回路(以下、適宜「本発明回路」と称する)の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0037】
〈第1実施形態〉
本発明回路の第1実施形態について、図1及び図2を基に説明する。ここで、図1は、本発明回路1Aの概略構成例を示している。
【0038】
本発明回路1Aは、図1に示すように、入力信号として受け付けた2つのクロック信号の位相差に応じた電圧の発振制御信号Fvcoを出力する発振制御回路11と、発振制御信号Fvcoの電圧値に応じた周波数で発振する出力クロック信号Foを出力する電圧制御発振回路12と、出力クロック信号Foまたは出力クロック信号Foの分周信号を帰還クロック信号Ffebとして出力する帰還回路13と、を備え、発振制御回路11が、外部入力された外部クロック信号Finと帰還クロック信号Ffebを入力信号として受け付けるように構成されている。
【0039】
更に、本発明回路1Aは、発振制御回路11の出力電圧、発振制御信号Fvcoを生成するために用いる発振制御回路11のアナログ内部電圧、及び、発振制御のための電圧制御発振回路12のアナログ内部電圧の内、何れか1つの電圧を異常検出用電圧Vd1とし、異常検出用電圧Vd1が、ロック可能な電圧範囲の上限値より高く設定された第1判定電圧Vr11より高い場合、または、ロック可能な電圧範囲の下限値より低く設定された第2判定電圧Vr12より低い場合に、異常状態であると判定する異常判定回路151と、異常判定回路151において異常状態が検出された場合に、暴走前状態であると判定して、初期化動作を行う異常復帰回路16と、を備えている。
【0040】
尚、発振制御回路11、電圧制御発振回路12及び帰還回路13の構成は、図8に示す従来技術の発振制御回路11、電圧制御発振回路12及び帰還回路13と同じである。
【0041】
ここで、本実施形態では、異常検出用電圧Vd1として、発振制御回路11の出力電圧(電圧制御発振回路12の入力ノードの電圧)、即ち、発振制御信号Fvcoの電圧を想定している。尚、本実施形態では、異常判定回路151の出力信号(異常状態検出信号)を、外部に出力するように構成されており、外部から異常状態の検出状態を確認することが可能になっている。
【0042】
異常判定回路151は、本実施形態では、図2に示すように(本実施形態では、図2のi=1)、複数の抵抗素子Ri1〜Ri3を用い、正電圧Vinを分圧して第1判定電圧Vri1及び第2判定電圧Vri2を生成する分圧回路RPiと、第1判定電圧Vri1と異常検出用電圧Vdiを比較する第1比較回路C1と、第2判定電圧Vri2と異常検出用電圧Vdiを比較する第2比較回路C2と、第1比較回路C1の出力信号と第2比較回路C2の出力信号を用い、異常状態を示す異常状態検出信号Sodiを生成する異常状態検出信号生成回路A1と、を備えて構成されている。
【0043】
尚、異常判定回路151の第1判定電圧Vr11及び第2判定電圧Vr12は、帰還回路13の特性等に応じて、本発明回路1Aが完全に暴走状態に陥る前の暴走前状態における発振制御信号Fvcoの電圧範囲に応じて設定する。例えば、本発明回路1Aを搭載した半導体装置が誤動作しない周波数範囲に対応する発振制御信号Fvcoの電圧範囲や本発明回路1Aが正常な状態に復帰するために初期化動作が必要となる電圧範囲を考慮して適切に設定する。
【0044】
分圧回路RPiは、直列接続された3つの抵抗素子Ri1、Ri2、Ri3で構成されている。より詳細には、抵抗素子Ri1は、一端に正電圧Vinが印加され、他端が抵抗素子Ri2の一端に接続されている。抵抗素子Ri3は、一端が抵抗素子Ri2の他端に接続され、他端に接地電圧が入力されている。本実施形態では、抵抗素子Ri1と抵抗素子Ri2の接続ノードの電圧を第1判定電圧Vri1とし、抵抗素子Ri2と抵抗素子Ri3の接続ノードの電圧を第2判定電圧Vri2としている。尚、抵抗素子Ri1〜Ri3の抵抗値は、第1判定電圧Vri1や第2判定電圧Vri2、本発明回路1A全体の特性等に応じて適切に設定する。
【0045】
第1比較回路C1は、コンパレータで構成されており、+側端子に第1判定電圧Vri1が、−側端子に異常検出用電圧Vdiが夫々入力されている。第1比較回路C1は、第1判定電圧Vri1より異常検出用電圧Vdiが低い場合に出力信号がHレベルとなり、第1判定電圧Vri1より異常検出用電圧Vdiが高い場合に、出力信号がLレベルとなる。第2比較回路C2は、第1比較回路C1と同様にコンパレータで構成されており、+側端子に異常検出用電圧Vdiが、−側端子に第2判定電圧Vri2が夫々入力されている。第2比較回路C2は、第2判定電圧Vri2より異常検出用電圧Vdiが高い場合に出力信号がHレベルとなり、第2判定電圧Vri2より異常検出用電圧Vdiが低い場合に出力信号がLレベルとなる。
【0046】
異常状態検出信号生成回路A1は、本実施形態では、AND回路で構成されている。異常状態検出信号生成回路A1は、第1比較回路C1からの出力信号及び第2比較回路C2からの出力信号の両方の信号レベルがHレベルである場合に、出力信号がHレベルに、第1比較回路C1からの出力信号及び第2比較回路C2からの出力信号の少なくとも何れか一方の信号レベルがLレベルである場合に、出力信号がLレベルになる。
【0047】
このように構成することにより、異常判定回路151は、異常検出用電圧Vd1が第1判定電圧Vr11より高く、または、第2判定電圧Vr12より低く、暴走前状態の電圧値に達している場合に、異常状態検出信号Sod1として、Lレベルの出力信号を出力する。また、異常検出用電圧Vd1が第1判定電圧Vr11と第2判定電圧Vr12の間にあり、暴走前状態の電圧値に達していない場合は、Hレベルの出力信号を生成する。
【0048】
異常復帰回路16は、異常判定回路151から出力される異常状態検出信号Sod1に基づいて、暴走前状態であると判定した場合に、本発明回路1Aを構成する発振制御回路11、電圧制御発振回路12及び帰還回路13の内、電圧制御発振回路12及び帰還回路13を初期化するリセット信号Rstを出力するように構成されている。
【0049】
より詳細には、本実施形態では、異常判定回路151からの異常検出用信号がHレベルからLレベルに遷移した場合に、本発明回路1Aが完全に暴走状態に陥る前の暴走前状態であるとして、電圧制御発振回路12及び帰還回路13に対してLレベルのリセット信号Rstを出力する。
【0050】
ここで、本実施形態では、電圧制御発振回路12は、異常復帰回路16から出力されるリセット信号RstがLレベルの間、予め設定された初期発振周波数で発振するように構成され、帰還回路13は、リセット信号RstがLレベルの間、予め設定された初期分周比で出力クロック信号Foを分周して帰還クロック信号Ffebを生成するように構成されている。尚、初期発振周波数及び初期分周比は、本発明回路1Aのロック可能範囲を考慮して設定する。従って、異常判定回路151において異常判定され、異常復帰回路16からのリセット信号RstがLレベルになると、電圧制御発振回路12が予め設定された初期発振周波数で発振し、帰還回路13が、出力クロック信号Foを初期分周比で分周して正常な帰還クロック信号Ffebを生成する。そうすると、帰還クロック信号Ffebの発振周波数が0ではなくなるため、位相比較器11a、チャージポンプ11b、ループフィルタ11cが正常な状態に復帰する。結果として、ループフィルタ11cから出力される発振制御信号Fvcoがロック可能な電圧範囲に戻されることになる。このとき、サージやノイズ等の一時的な暴走原因がなくなっていれば、異常判定回路151において異常状態が検出されなくなり、異常復帰回路16のリセット信号RstがHレベルとなり、電圧制御発振回路12及び帰還回路13のリセット状態が解除され、本発明回路1Aは正常な状態に復帰する。
【0051】
尚、本実施形態では、異常復帰回路16が、本発明回路1A全体ではなく、電圧制御発振回路12及び帰還回路13のみを初期化するように構成されているので、回路全体を初期化する場合に比べ、本発明回路1Aをより迅速に正常な状態に復帰させることが可能になる。具体的には、例えば、チャージポンプ11bやループフィルタ11cを初期化しないため、発振制御信号Fvcoの電圧値がLレベルにまで低下せず、発振制御信号Fvcoの電圧をロック可能な電圧範囲により迅速に復帰させることができる。
【0052】
このように構成することにより、本発明回路1Aでは、例えば、発振制御信号Fvcoの電圧が、ロック可能な電圧範囲を超えた場合には、ロック可能な電圧範囲となるように帰還回路13の分周比等を調整して発振制御信号Fvcoの電圧を制御し、更に、発振制御信号Fvcoの電圧が、ロック可能な電圧範囲を大きくはずれ、暴走状態に陥る前の暴走前状態に達した場合には、本発明回路1Aを初期化して正常な状態に復帰させる制御を行うことが可能になる。
【0053】
〈第2実施形態〉
本発明回路1の第2実施形態について、図3及び図4を基に説明する。尚、本実施形態では、上記第1実施形態とは、異常判定回路及び異常復帰回路の構成が異なる場合について説明する。
【0054】
本発明回路1Bは、上記第1実施形態と同様に、入力信号として受け付けた2つのクロック信号の位相差に応じた電圧の発振制御信号Fvcoを出力する発振制御回路11と、発振制御信号Fvcoの電圧値に応じた周波数で発振する出力クロック信号Foを出力する電圧制御発振回路12と、出力クロック信号Foまたは出力クロック信号Foの分周信号を帰還クロック信号Ffebとして出力する帰還回路13と、を備え、発振制御回路11が、外部入力された外部クロック信号Finと帰還クロック信号Ffebを入力信号として受け付けるように構成されている。
【0055】
更に、本実施形態の本発明回路1Bは、図3に示すように、発振制御回路11の出力電圧、発振制御信号Fvcoを生成するために用いる発振制御回路11のアナログ内部電圧、及び、発振制御のための電圧制御発振回路12のアナログ内部電圧の内、複数の電圧を異常検出用電圧Vd1〜Vdn(nは異常検出用電圧の数)とし、異常検出用電圧Vdi(i=1〜n)が、ロック可能な電圧範囲の上限値より高く設定された第1判定電圧Vri1より高い場合、または、ロック可能な電圧範囲の下限値より低く設定された第2判定電圧Vri2より低い場合に、異常状態であると判定する異常判定回路15iが、異常検出用電圧Vdiの夫々について各別に設けられ、異常判定回路15iの夫々における異常状態の検出結果を用い、所定の暴走判定条件に基づいて暴走前状態であるか否かを判定し、暴走前状態であると判定した場合に、初期化動作を行う異常復帰回路16を備えて構成されている。
【0056】
尚、発振制御回路11、電圧制御発振回路12及び帰還回路13の回路構成は、上記第1実施形態と同じである。
【0057】
ここで、本実施形態では、異常検出用電圧Vdiとして、発振制御回路11の出力電圧(発振制御信号Fvcoの電圧)と、発振制御信号Fvcoを生成するために用いる発振制御回路11のアナログ内部電圧の1つであるチャージポンプ11bの出力電圧Fcpの2つの電圧を想定している。このため、本実施形態の本発明回路1Bでは、発振制御信号Fvcoの電圧を用いて暴走前状態を判定する異常判定回路151と、チャージポンプ11bの出力電圧Fcpを用いて暴走前状態を判定する異常判定回路152の2つの異常判定回路151,152からなる異常判定回路群14を備えている。また、本実施形態では、本発明回路1Bが、2つの異常判定回路151、152の出力信号(異常状態検出信号)を、夫々、外部に出力するように構成されており、外部から各異常判定回路151、152の異常状態の検出状態を確認することが可能になっている。
【0058】
異常判定回路151は、図2に示す上記第1実施形態の異常判定回路151と同じ回路構成であり、発振制御信号Fvcoの電圧を異常検出用電圧Vd1として用いて暴走前状態であるか否かを判定し、暴走前状態であると判定した場合には、異常状態検出信号Sod1として、Lレベルの出力信号を出力する。また、異常判定回路151は、暴走前状態の電圧値に達していない場合は、Hレベルの出力信号を生成する。
【0059】
異常判定回路152は、図2に示す上記第1実施形態の異常判定回路151と同じ回路構成であり、本実施形態では、チャージポンプ11bの出力電圧Fcp(発振制御回路11のアナログ内部電圧)を異常検出用電圧Vd2として用いて暴走前状態であるか否かを判定し、暴走前状態であると判定した場合には、異常状態検出信号Sod2として、Lレベルの出力信号を出力する。また、異常判定回路152は、暴走前状態の電圧値に達していない場合は、Hレベルの出力信号を生成する。
【0060】
尚、異常判定回路15i(i=1〜n、本実施形態ではn=2)夫々の第1判定電圧Vri1及び第2判定電圧Vri2は、異常判定回路15i別に、異常判定回路15iが用いる異常検出用電圧Vdiの暴走前状態における電圧範囲に応じて設定する。即ち、異常判定回路151の第1判定電圧Vri1及び第2判定電圧Vri2は、発振制御信号Fvcoの暴走前状態における電圧範囲に応じて設定し、異常判定回路152の第1判定電圧Vri1及び第2判定電圧Vri2は、チャージポンプ11bの出力電圧Fcpの暴走前状態における電圧範囲に応じて設定する。
【0061】
異常復帰回路16は、本実施形態では、異常判定回路151、152の何れか一つにおいて異常状態が検出された場合に、暴走前状態であると判定するように構成されている。
【0062】
より詳細には、本実施形態の異常復帰回路16は、AND回路で構成されており、異常判定回路151から出力される異常状態検出信号Sod1と異常判定回路152から出力される異常状態検出信号Sod2の少なくとも何れか一方がLレベルの場合に、Lレベルの出力信号を生成し、リセット信号Rstとして電圧制御発振回路12及び帰還回路13に出力するように構成されている。
【0063】
尚、本実施形態では、説明のために、2つの異常判定回路151、152を設ける場合を想定しているが、3以上の異常判定回路15iを設ける場合には、異常判定回路15iから出力される異常状態検出信号Sodiの内、少なくとも何れか1つがLレベルの場合に、リセット信号Rstを出力するように構成しても良いし、異常状態検出信号Sodiの内の所定数がLレベルの場合にリセット信号Rstを出力するように構成しても良い。
【0064】
〈第3実施形態〉
本発明回路1の第3実施形態について、図5を基に説明する。本実施形態では、上記第1及び第2実施形態とは、異常復帰回路の構成が異なる場合について説明する。
【0065】
本発明回路1Cは、上記第1及び第2実施形態と同様に、入力信号として受け付けた2つのクロック信号の位相差に応じた電圧の発振制御信号Fvcoを出力する発振制御回路11と、発振制御信号Fvcoの電圧値に応じた周波数で発振する出力クロック信号Foを出力する電圧制御発振回路12と、出力クロック信号Foまたは出力クロック信号Foの分周信号を帰還クロック信号Ffebとして出力する帰還回路13と、を備え、発振制御回路11が、外部入力された外部クロック信号Finと帰還クロック信号Ffebを入力信号として受け付けるように構成されている。
【0066】
更に、本実施形態の本発明回路1Cは、図5に示すように、上記第2実施形態と同様に、発振制御回路11の出力電圧、発振制御信号Fvcoを生成するために用いる発振制御回路11のアナログ内部電圧、及び、発振制御のための電圧制御発振回路12のアナログ内部電圧の内、複数の電圧を異常検出用電圧Vd1〜Vdn(nは異常検出用電圧の数)とし、異常検出用電圧Vdi(i=1〜n)が、ロック可能な電圧範囲の上限値より高く設定された第1判定電圧Vri1より高い場合、または、ロック可能な電圧範囲の下限値より低く設定された第2判定電圧Vri2より低い場合に、異常状態であると判定する異常判定回路15iが、異常検出用電圧Vdiの夫々について各別に設けられ、異常判定回路15iの夫々における異常状態の検出結果を用い、所定の暴走判定条件に基づいて暴走前状態であるか否かを判定し、暴走前状態であると判定した場合に、初期化動作を行う異常復帰回路16を備えて構成されている。
【0067】
尚、本実施形態では、発振制御回路11、電圧制御発振回路12及び帰還回路13の回路構成は、上記第2実施形態と同じである。
【0068】
また、本実施形態では、上記第2実施形態と同様に、異常検出用電圧Vdiとして、発振制御回路11の出力電圧(発振制御信号Fvcoの電圧)と、発振制御信号Fvcoを生成するために用いる発振制御回路11のアナログ内部電圧の1つであるチャージポンプ11bの出力電圧Fcpの2つの電圧を想定しており、本実施形態の本発明回路1Cは、2つの異常判定回路151、152からなる異常判定回路群14を備えている。尚、異常判定回路151、152の構成は、上記第2実施形態と同じである。更に、本実施形態では、上記第2実施形態と同様に、2つの異常判定回路151、152の出力信号(異常状態検出信号Sod1、Sod2)を、夫々、外部に出力するように構成されており、外部から各異常判定回路151、152の異常状態の検出状態を確認することが可能になっている。
【0069】
本実施形態の異常復帰回路16は、暴走前状態であると判定した場合に、本発明回路1Cを構成する部分回路毎に、外部入力された初期化設定信号Srに基づき、初期化を行うか否かを設定可能に構成されている。より詳細には、本実施形態の異常復帰回路16は、暴走前状態であると判定した場合に、本発明回路1Cを構成する発振制御回路11、電圧制御発振回路12及び帰還回路13の夫々に個別にリセット信号Rstを出力可能に構成されている。本実施形態の異常復帰回路16は、暴走前状態であると判定した場合に、初期化設定信号Srによって指定された部分回路にリセット信号Rstを出力する。
【0070】
〈第4実施形態〉
本発明回路1の第4実施形態について、図6及び図7を基に説明する。本実施形態では、上記第3実施形態とは、異常判定回路の構成が異なる場合について説明する。
【0071】
本発明回路1Dは、上記第1〜第3実施形態と同様に、入力信号として受け付けた2つのクロック信号の位相差に応じた電圧の発振制御信号Fvcoを出力する発振制御回路11と、発振制御信号Fvcoの電圧値に応じた周波数で発振する出力クロック信号Foを出力する電圧制御発振回路12と、出力クロック信号Foまたは出力クロック信号Foの分周信号を帰還クロック信号Ffebとして出力する帰還回路13と、を備え、発振制御回路11が、外部入力された外部クロック信号Finと帰還クロック信号Ffebを入力信号として受け付けるように構成されている。
【0072】
本実施形態の本発明回路1Dは、上記第3実施形態と同様に、発振制御回路11の出力電圧、発振制御信号Fvcoを生成するために用いる発振制御回路11のアナログ内部電圧、及び、発振制御のための電圧制御発振回路12のアナログ内部電圧の内、複数の電圧を異常検出用電圧Vd1〜Vdn(nは異常検出用電圧の数)とし、異常検出用電圧Vdi(i=1〜n)が、ロック可能な電圧範囲の上限値より高く設定された第1判定電圧Vri1より高い場合、または、ロック可能な電圧範囲の下限値より低く設定された第2判定電圧Vri2より低い場合に、異常状態であると判定する異常判定回路15i’が、異常検出用電圧Vdiの夫々について各別に設けられ、異常判定回路15i’の夫々における異常状態の検出結果を用い、所定の暴走判定条件に基づいて暴走前状態であるか否かを判定し、暴走前状態であると判定した場合に、初期化動作を行う異常復帰回路16を備えて構成されている。
【0073】
尚、本実施形態では、発振制御回路11、電圧制御発振回路12及び帰還回路13の回路構成は、上記第1〜第3実施形態と同じである。また、異常復帰回路16の構成は、上記第3実施形態と同じである。
【0074】
ここで、本実施形態では、上記第3実施形態と同様に、発振制御回路11の出力電圧(発振制御信号Fvcoの電圧)と、発振制御信号Fvcoを生成するために用いる発振制御回路11のアナログ内部電圧の1つであるチャージポンプ11bの出力電圧Fcpの2つの電圧を想定しており、本実施形態の本発明回路1Dは、2つの異常判定回路151’、152’からなる異常判定回路群14を備えている。更に、本実施形態では、上記第2及び第3実施形態と同様に、2つの異常判定回路151’、152’の出力信号(異常状態検出信号)を、夫々、外部に出力するように構成されており、外部から各異常判定回路151’、152’の異常状態の検出状態を確認することが可能になっている。
【0075】
本実施形態の異常判定回路151’、152’は、外部入力された判定電圧設定信号SV1、SV2に基づいて、第1判定電圧Vri1または第2判定電圧Vri2を設定可能に構成されている。
【0076】
より詳細には、本実施形態の異常判定回路15i’(i=1〜n、本実施形態ではn=2)は、図7に示すように、複数の可変抵抗素子VRi1〜VRi3を用い、正電圧Vinを分圧して第1判定電圧Vri1及び第2判定電圧Vri2を生成する分圧回路RPiと、第1判定電圧Vri1と異常検出用電圧Vriを比較する第1比較回路C1と、第2判定電圧Vri2と異常検出用電圧Vdiを比較する第2比較回路C2と、第1比較回路C1の出力信号と第2比較回路C2の出力信号を用い、異常状態を示す異常状態検出信号Sodiを生成する異常状態検出信号生成回路A1と、判定電圧設定信号Sviに基づいて、可変抵抗素子VRi1〜VRi3夫々の抵抗値を設定する抵抗値設定回路RSiと、を備えて構成されている。
【0077】
尚、第1比較回路C1、第2比較回路C2、異常状態検出信号生成回路A1の構成は、上記第1〜第3実施形態と同じである。
【0078】
分圧回路RPiは、直列接続された3つの可変抵抗素子VRi1、VRi2、VRi3で構成されている。可変抵抗素子VRi1は、一端に正電圧Vinが印加され、他端が可変抵抗素子VRi2の一端に接続されている。可変抵抗素子VRi3は、一端が可変抵抗素子VRi2の他端に接続され、他端に接地電圧が入力されている。本実施形態では、可変抵抗素子VRi1と可変抵抗素子VRi2の接続ノードの電圧を第1判定電圧Vri1とし、可変抵抗素子VRi2と可変抵抗素子VRi3の接続ノードの電圧を第2判定電圧Vri2としている。可変抵抗素子VRij(j=1、2、3)は、抵抗値設定回路RSiからの制御電圧SVijに応じて抵抗値が変化するように構成されている。
【0079】
尚、本実施形態では、上記第3実施形態の異常判定回路151、152において、第1判定電圧Vri1と第2判定電圧Vri2を設定可能に構成した場合について説明したが、上記第1及び第2実施形態の異常判定回路151、152において、第1判定電圧Vri1と第2判定電圧Vri2を設定可能に構成しても良い。また、本実施形態では、分割回路RPiが3つの可変抵抗素子VRi1〜VRi3を備える場合について説明したが、これに限るものでない。
【0080】
〈別実施形態〉
〈1〉上記第1〜第4実施形態では明示しなかったが、本発明回路1を構成する異常判定回路15i(iは異常検出用電圧の数)及び異常復帰回路16は、夫々、リセット動作時等、暴走前状態の判定を必要としない場合には、選択的に非活性化可能に構成しても良い。このように構成すれば、消費電力の低減を図ることが可能になる。
【0081】
〈2〉上記第1実施形態では、異常判定回路151の出力信号Sod1を、第2〜第4実施形態では、異常判定回路151〜15n(nは異常検出用電圧の数)夫々の出力信号Sod1〜Sodnを外部出力する構成にしたが、これに限るものではない。例えば、外部から異常状態を確認するために、異常復帰回路16のリセット信号Rstを外部出力するように構成しても良い。また、第2〜第4実施形態において、複数の異常判定回路151〜15n夫々について異常状態の検出結果を記憶するシフトレジスタを設け、シリアルデータとして出力するように構成しても良い。更に、異常検出された異常判定回路15i(i=1〜n)を示す信号を別途生成して出力するように構成しても良い。
【0082】
〈3〉上記第1〜第4実施形態では、位相比較器11aがデジタル乗算器で構成され、チャージポンプ11bを備える場合について説明したが、位相比較器11aをアナログ乗算器で構成し、位相比較器11aの出力信号(発信制御回路11のアナログ内部電圧に相当)を異常検出用電圧としても良い。また、異常検出用電圧としては、電圧制御発振回路12のアナログ内部電圧として、例えば、電圧制御発振回路がコンパレータを備える場合における当該コンパレータの出力電圧や、電圧制御発振回路12がリング発振器を備える場合におけるリング発振器に入力される制御電圧等を利用しても良い。
【0083】
〈4〉上記第2実施形態では、異常復帰回路16を、電圧制御発振回路12及び帰還回路13を初期化するように構成し、上記第3及び第4実施形態では、異常復帰回路16を、外部入力された初期化設定信号Srに基づいて初期化動作を行う部分回路を設定したが、これに限るものではない。
【0084】
上記第2〜第4実施形態のように、複数の異常検出用電圧を用いて異常状態の判定を行う場合には、異常復帰回路16を、暴走前状態であると判定した場合に、本発明回路1を構成する部分回路(上記第2〜第4実施形態では、比較器11a、チャージポンプ11b、ループフィルタ11c、電圧制御発振回路12、帰還回路13)の内、異常状態が検出された異常判定回路15の異常検出用電圧に係る部分回路に対して初期化動作を行うように構成しても良い。異常復帰回路16は、例えば、暴走状態であると判定した場合に、異常判定回路151、152の異常状態の検出結果から、チャージポンプ11bが正常に動作していると判定できる場合には、チャージポンプ11bを初期化動作の対象から除外し、他の部分回路に対してのみ初期化動作を行う。この場合には、本発明回路1において、自動的に、異常が発生した部分回路のみを初期化できるので、正常な部分回路を初期化する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係る位相同期回路の第1実施形態における概略構成例を示す概略部分ブロック図
【図2】本発明に係る位相同期回路を構成する異常判定回路の第1実施形態における概略回路構成例を示す概略回路図
【図3】本発明に係る位相同期回路の第2実施形態における概略構成例を示す概略部分ブロック図
【図4】本発明に係る位相同期回路を構成する異常復帰回路の第2実施形態における概略回路構成例を示す概略回路図
【図5】本発明に係る位相同期回路の第3実施形態における概略構成例を示す概略部分ブロック図
【図6】本発明に係る位相同期回路の第4実施形態における概略構成例を示す概略部分ブロック図
【図7】本発明に係る位相同期回路を構成する異常判定回路の第4実施形態における概略回路構成例を示す概略回路図
【図8】従来技術に係る位相同期回路の概略回路構成例を示す概略部分ブロック図
【図9】従来技術に係る位相同期回路が、PLL回路の暴走状態を検出して自動的に回復する機能を備えない場合の発振制御信号の電圧遷移例を示すグラフ
【図10】従来技術に係る位相同期回路が、PLL回路の暴走状態を検出して自動的に回復する機能を備える場合の発振制御信号の電圧遷移例を示すグラフ
【符号の説明】
【0086】
1 本発明に係る位相同期回路
11 発振制御回路
11a 位相比較器
11b チャージポンプ
11c ループフィルタ(ローパスフィルタ)
12 電圧制御発振回路
13 帰還回路
14 異常判定回路群
15 異常判定回路
151 異常判定回路
151’ 異常判定回路
152 異常判定回路
152’ 異常判定回路
16 異常復帰回路
Fin 外部クロック信号
Fo 出力クロック信号
Fcp 位相差検出信号
Fvco 発振制御信号
Ffeb 帰還クロック信号
Rst リセット信号
RP 分圧回路
R 抵抗素子
VR 可変抵抗素子
C1 第1比較回路
C2 第2比較回路
A1 異常状態検出信号生成回路
Sod1 異常検出信号
Sod2 異常検出信号
Sr 初期化設定信号
Vd 異常検出用電圧
Vr1 第1判定電圧
Vr2 第2判定電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号として受け付けた2つのクロック信号の位相差に応じた電圧の発振制御信号を出力する発振制御回路と、
前記発振制御信号の電圧値に応じた周波数で発振する出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路と、
前記出力クロック信号または前記出力クロック信号の分周信号を帰還クロック信号として出力する帰還回路と、を備え、
前記発振制御回路が、外部入力された外部クロック信号と前記帰還クロック信号を入力信号として受け付けるように構成された位相同期回路であって、
前記発振制御回路の出力電圧、前記発振制御信号を生成するために用いる前記発振制御回路のアナログ内部電圧、及び、発振制御のための前記電圧制御発振回路のアナログ内部電圧の内、何れか1つの電圧を異常検出用電圧とし、
前記異常検出用電圧が、ロック可能な電圧範囲の上限値より高く設定された第1判定電圧より高い場合、または、ロック可能な電圧範囲の下限値より低く設定された第2判定電圧より低い場合に、異常状態であると判定する異常判定回路と、
前記異常判定回路において前記異常状態が検出された場合に、暴走前状態であると判定して、初期化動作を行う異常復帰回路と、を備えることを特徴とする位相同期回路。
【請求項2】
入力信号として受け付けた2つのクロック信号の位相差に応じた電圧の発振制御信号を出力する発振制御回路と、
前記発振制御信号の電圧値に応じた周波数で発振する出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路と、
前記出力クロック信号または前記出力クロック信号の分周信号を帰還クロック信号として出力する帰還回路と、を備え、
前記発振制御回路が、外部入力された外部クロック信号と前記帰還クロック信号を入力信号として受け付けるように構成された位相同期回路であって、
前記発振制御回路の出力電圧、前記発振制御信号を生成するために用いる前記発振制御回路のアナログ内部電圧、及び、発振制御のための前記電圧制御発振回路のアナログ内部電圧の内、複数の電圧を異常検出用電圧とし、
前記異常検出用電圧が、ロック可能な電圧範囲の上限値より高く設定された第1判定電圧より高い場合、または、ロック可能な電圧範囲の下限値より低く設定された第2判定電圧より低い場合に、異常状態であると判定する異常判定回路が、前記異常検出用電圧の夫々について各別に設けられ、
前記異常判定回路の夫々における前記異常状態の検出結果を用い、所定の暴走判定条件に基づいて暴走前状態であるか否かを判定し、前記暴走前状態であると判定した場合に、初期化動作を行う異常復帰回路を備えることを特徴とする位相同期回路。
【請求項3】
前記異常復帰回路は、前記異常判定回路の何れか1つにおいて前記異常状態が検出された場合に、前記暴走前状態であると判定することを特徴とする請求項2に記載の位相同期回路。
【請求項4】
前記異常復帰回路が、前記暴走前状態であると判定した場合に、前記位相同期回路を構成する部分回路の内、前記異常状態が検出された前記異常判定回路の前記異常検出用電圧に係る前記部分回路に対して前記初期化動作を行うことを特徴とする請求項2または3に記載の位相同期回路。
【請求項5】
前記異常復帰回路が、前記暴走前状態であると判定した場合に、前記電圧制御発振回路及び前記帰還回路を初期化することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の位相同期回路。
【請求項6】
前記異常復帰回路が、前記暴走前状態であると判定した場合に、前記位相同期回路を構成する部分回路毎に、外部入力された初期化設定信号に基づき、初期化を行うか否かを設定可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の位相同期回路。
【請求項7】
前記発振制御回路が、前記外部クロック信号と前記帰還クロック信号の位相差に応じた電圧の位相差検出信号を出力する位相比較器と、チャージポンプと、前記位相差検出信号の高周波成分を除去して発振制御信号を出力するローパスフィルタと、を備えて構成され、
前記位相比較器の出力ノードと前記電圧制御発振回路の入力ノードの間の所定ノードの電圧、及び、発振制御のための前記電圧制御発振回路のアナログ内部電圧を異常検出用電圧とすることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の位相同期回路。
【請求項8】
前記異常判定回路が、
複数の抵抗素子を用い、所定の正電圧を分圧して前記第1判定電圧及び前記第2判定電圧を生成する分圧回路と、
前記第1判定電圧と前記異常検出用電圧を比較する第1比較回路と、
前記第2判定電圧と前記異常検出用電圧を比較する第2比較回路と、
前記第1比較回路の出力信号と前記第2判定信号の出力信号を用い、前記異常状態を示す異常状態検出信号を生成する異常状態検出信号生成回路と、を備えることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の位相同期回路。
【請求項9】
前記異常判定回路が、外部入力された判定電圧設定信号に基づいて、前記第1判定電圧または前記第2判定電圧を設定可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の位相同期回路。
【請求項10】
前記異常判定回路が、
複数の可変抵抗素子を用い、所定の正電圧を分圧して前記第1判定電圧及び前記第2判定電圧を生成する分圧回路と、
前記第1判定電圧と前記異常検出用電圧を比較する第1比較回路と、
前記第2判定電圧と前記異常検出用電圧を比較する第2比較回路と、
前記第1比較回路の出力信号と前記第2判定信号の出力信号を用い、前記異常状態を示す異常状態検出信号を生成する異常状態検出信号生成回路と、
前記判定電圧設定信号に基づいて、前記可変抵抗素子夫々の抵抗値を設定する抵抗値設定回路と、を備えることを特徴とする請求項9に記載の位相同期回路。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−124103(P2010−124103A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294351(P2008−294351)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】