説明

位相差フィルム

【課題】延伸による外力による複屈折の変化が小さい材料の提供。
【解決手段】脂肪族ポリエステル系樹脂よりなる位相差フィルムを用いる。レターデーションが1nm以上600nm未満である、脂肪族ポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸系樹脂、延伸倍率が、0.1%以上1、000%以下である、光弾性係数が、0以上20(×10−12/Pa)未満である押し出し成形又は、キャスト成形で成形されたフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学特性に優れる位相差フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、例えばディスプレイ市場の拡大に伴い、より画像を鮮明にみたいという要求が高まっており、単なる透明材料ではなく、より高度な光学特性が付与された光学材料が求められている。一般に高分子は分子主鎖方向とそれに垂直方向とで屈折率が異なるために複屈折を生じる。用途によっては、この複屈折を厳密にコントロールすることが求められており、液晶の偏光板に用いられる保護フィルムの場合は、全光線透過率が同じであっても複屈折がより小さい高分子材料成形体が必要となり、一方、偏光板により偏光された光を円偏光にかえる機能を持つ1/4波長板は、高分子材料成形体に意識的に複屈折を生じさせることで機能を付与している。
【0003】
また、近年は、液晶ディスプレイが大型化し、それに必要な高分子光学材料成形品が大型化するにつれて、位相差フィルム取付時のひずみ等の外力によって生じる複屈折の変化が問題になる。これまで位相差フィルムの材料としては主にポリカーボネート樹脂が用いられていたが、外力による複屈折の変化が大きいことへの改良要求がある。このような外力の偏りによって生じる複屈折の分布を小さくするために、外力による複屈折の変化が小さい新しい材料が求められ、そのような材料が待望されていた。
【非特許文献1】化学総説、No.39、1998(学会出版センター刊行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光学特性に優れる位相差フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、驚くべきことに脂肪族ポリエステル系樹脂よりなる位相差フィルムが外力による複屈折変化が小さいことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
1.脂肪族ポリエステル系樹脂よりなり、レターデーションが1nm以上600nm未満である位相差フィルム、
2.脂肪族ポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム、
3.延伸したことを特徴とする請求項1または2に記載の位相差フィルム、
4.延伸倍率が、0.1%以上1、000%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差フィルム、
5.光弾性係数が、0以上20(×10−12/Pa)未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の位相差フィルム、
6.レターデーションが、10nm以上450nm未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の位相差フィルム、
7.押し出し成形で成形されたフィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差フィルム、
8.キャスト成形で成形されたフィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差フィルム、
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ディスプレイ等に必要なフィルムで外力による複屈折の変化が小さい位相差フィルムの提供が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体などが挙げられる。具体的には、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ吉草酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸およびポリカプロラクトンなどが挙げられ、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体としては、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートおよびポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエステルは、単独ないし2種以上を用いることができる。これらの脂肪族ポリエステルの中でも、ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体が好ましく、特にポリ乳酸系樹脂が好ましく使用される。これらの脂肪族ポリエステル系樹脂は1種以上を用いることができる。
【0008】
ポリ乳酸系樹脂としては、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とする重合体であるが、本発明の目的を損なわない範囲で、乳酸以外の他の共重合成分0.1〜30重量%を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。これらの共重合成分は、単独ないし2種以上を用いることができる。
【0009】
脂肪族ポリエステル系樹脂の製造方法としては、既知の重合方法を用いることができ、特にポリ乳酸系樹脂については、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを採用することができる。本発明におけるポリ乳酸は乳酸、すなわちL−乳酸、D−乳酸を主とする重合体である。ポリ乳酸系樹脂において、L−乳酸単位と、D−乳酸単位の構成モル比は、L−体とD−体あわせて100%に対し、L体ないしD体いずれかが85%以上が好ましく、更に好ましくは一方が90%以上であり、更に好ましくは一方が94%以上の重合体である。本発明においてはL−乳酸を主体とするポリL乳酸とD−乳酸を主体とするポリD乳酸を同時に用いることもできる。
【0010】
ポリ乳酸の結晶融解熱量は15J/g未満であることが好ましい。さらに好ましくは10J/g未満、とりわけ好ましくは7J/g未満である。ポリ乳酸の結晶融解熱量が15J/gを超えるとフィルムの透明性が低下する。
ポリ乳酸系樹脂は、L体ないしD体以外の乳酸誘導体モノマーまたは、ラクチドと共重合可能な他成分を共重合していてもよく、このような成分としてはジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が例示される。ポリ乳酸系樹脂は、直接脱水縮合、ラクチドの開環重合等公知の重合法で重合することが出来る。また必要に応じてポリイソシアネート等の結合剤を用いて、高分子量化することも出来る。
【0011】
ポリ乳酸系樹脂の好ましい重量平均分子量範囲は、機械的性質の観点から重量平均分子量が30,000以上であることが好ましく、加工性の観点から1,000,000以下であることが好ましい。更に好ましくは50,000〜500,000、最も好ましくは100,000〜280,000である。
本発明の位相差フィルムにおいては、光弾性係数が0以上20(×10−12/Pa)未満であることが好ましい。光弾性係数に関しては種種の文献に記載があり(例えば化学総説,No.39,1998(学会出版センター発行)参照)、下式により定義されるものである。
=|Δn|/σ
|Δn|=nx−ny
(式中、C:光弾性係数、σ:伸張応力、|Δn|:複屈折の絶対値、nx:伸張方向の屈折率、ny:伸張方向と垂直な屈折率)
光弾性係数の値がゼロに近いほど外力による複屈折の変化が小さいことを示しており、各用途において設計された複屈折の変化が小さいことを意味する。光弾性係数の値は0以上17(×10−12/Pa)未満であることがさらに好ましく、0以上15(×10−12/Pa)未満であることがとりわけ好ましい。
【0012】
本発明における位相差フィルムにおいては、フィルムにおける3次元屈折率楕円体はその用途の要求に応じて設計されたものである。
本発明の位相差フィルムにおいては、レターデーションは1nm以上600nm未満である。液晶ディスプレイの各種方式で用いられる位相差フィルムのレターデーションの範囲は1nm以上600nm未満であり、この範囲に設計することで位相差フィルムとして好適に使用することができる(カラー液晶ディスプレイ 堀 浩雄 他著 共立出版 参照)。さらに好ましくはレターデーションが10nm以上450nm未満である。
【0013】
本発明においては、更に、脂肪族ポリエステル系樹脂に耐加水分解抑制剤を加えることにより、加水分解による分子量低下を抑えることが可能となり、例えば強度低下等を抑えることができる。耐加水分解抑制剤としては、脂肪族ポリエステル樹脂の末端官能基であるカルボン酸及び水酸基との反応性を有する化合物、例えばカルボジイミド化合物、イソアネート化合物、オキソゾリン系化合物などが適用可能であるが、特に、カルボジイミド化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)がポリエステル樹脂と良く溶融混練でき、少量添加で加水分解を抑制できるため好適である。分子中に1個以上のカルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)としては、例えば、触媒として有機リン系化合物または有機金属化合物を用い、各種ポリマーイソシアネートを約70℃以上の温度で、無溶媒または不活性溶媒中で脱炭酸縮合反応に付することにより合成することができるものが挙げられる。ポリカルボジイミドとしては、種々の方法で製造したものを使用することができるが、基本的には従来のポリカルボジイミドの製造方法(米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.0rg.Chem.28, 2069−2075(196 3)、Chemical Review l981,Vol.81 No.4、p619−621)により製造したものを用いることができる。
【0014】
ポリカルボジイミドを製造するための原料である有機ジイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートやこれらの混合物を挙げることができ、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネ ートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートを例示することができる。
耐加水分解抑制剤の好ましい量は、脂肪族ポリエステル系樹脂100重量部に対し、耐加水分解抑制剤を0.01〜50重量部である。耐加水分解抑制効果の発現の観点から0.01重量以上が好ましく、光学特性の観点から50重量部以下が好ましい。より好ましい範囲は、0.01〜30重量部の範囲であり、更に好ましくは、0.1〜30重量部である。
【0015】
本発明においてはフィルムの耐熱性を高めるために、脂肪族ポリエステル系樹脂に架橋性モノマーを添加し、活性エネルギー照射した架橋性の樹脂を位相差フィルムに用いることができる。架橋性モノマーとしては多官能アクリル系モノマー、多官能アリル系モノマーなどがある。多官能アクリル系モノマーとしては、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等が使用できる。多官能アリル系モノマーとしては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスフォネート等が使用できる。照射する活性エネルギー線としては、紫外線やX線等の電磁波、電子線、粒子線等が挙げられる。
【0016】
また、本発明においては脂肪族ポリエステル系樹脂以外の重合体を、本発明の目的を損なわない範囲で混合することができる。脂肪族ポリエステル系樹脂以外の重合体としては、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂とは、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル、より選ばれる1種以上の単量体を重合したものである。なかでも、メタクリル酸メチルの単独重合体または他の単量体との共重合体が好ましい。メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、他のメタリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アルキルエステル類、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類が挙げられる。
【0017】
これらメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の中でも、特にアクリル酸アルキルエステル類は耐熱分解性に優れ、又アクリル酸アルキルエステル類を共重合させて得られるメタクリル系樹脂は成形加工時の流動性が高く好ましい。メタクリル酸メチルにアクリル酸アルキルエステル類を共重合させる場合のアクリル酸アルキルエステル類の使用量は、耐熱分解性の観点から0.1重量%以上であることが好ましく、耐熱性の観点から15重量%以下であることが好ましい。0.2重量%以上14重量%以下であることがさらに好ましく、1重量%以上12重量%以下であることがとりわけ好ましい。このアクリル酸アルキルエステル類の中でも、特にアクリル酸メチル及びアクリル酸エチルは、それを少量メタクリル酸メチルと共重合させても上記改良効果は著しく最も好ましい。上記メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体は一種または二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0018】
その他の混合することができる重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂、およびフェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などの少なくとも1種以上をさらに添加することができる。
【0019】
さらに、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、各種目的に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は,樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。無機充填剤,酸化鉄等の顔料,ステアリン酸,ベヘニン酸,ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム,エチレンビスステアロアミド等の滑剤,離型剤,パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン,ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤,ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系熱安定剤等の酸化防止剤,ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤,難燃剤,帯電防止剤,有機繊維,ガラス繊維,炭素繊維,金属ウィスカ等の補強剤,着色剤、その他添加剤或いはこれらの混合物等が挙げられる。
【0020】
本発明における位相差フィルムの製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて製造することができる。また本発明におけるフィルムは、射出成形、シート成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、押し出し成形、発泡成形等、公知の方法で成形することが可能であり、圧空成形、真空成形等の二次加工成形法も用いることができる。
本発明の位相差フィルムの好ましい製法として、押し出し成形、キャスト成形等の手法が用いられる。例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸フィルムを押し出し成形することができる。また、脂肪族ポリエステル系樹脂が可溶な溶媒、例えばクロロホルム、二塩化メチレン等の溶媒を用いて、脂肪族ポリエステル樹脂を溶解後、キャスト乾燥固化することによりフィルムをキャスト成形もすることができる。
【0021】
本発明では位相差フィルムに必要な複屈折をつけるために無延伸フィルムを更に延伸を行う。例えば、機械的流れ方向に縦一軸延伸、機械的流れ方向に直行する方向に横一軸延伸することができ、またロール延伸とテンター延伸の逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸することにより2軸延伸フィルムを製造することができる。延伸を行うことによりフィルムの強度が向上させることができる。最終的な延伸倍率は得られたフィルムの熱収縮率より判断することができる。延伸倍率は少なくともどちらか一方向に0.1%以上1000%以下であることが好ましく、0.2%以上600%以下であることがさらに好ましく、0.3%以上300%以下であることがとりわけ好ましい。この範囲に設計することにより、複屈折、耐熱性、強度の観点で好ましい位相差フィルムが得られる。
【0022】
本発明において、フィルムの厚さは0.1〜300μmの範囲が好ましく、0.2〜250μmの範囲がさらに好ましく、0.3〜200μmの範囲がとりわけ好ましい。
本発明の位相差フィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板等の位相差板、視野角制御フィルム等の液晶光学補償フィルム等に好適に用いることができる。本発明の位相差フィルムは、例えば反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理をすることもできる。
【実施例】
【0023】
次に実施例によって本発明を説明する。
本願発明および実施例で用いた評価法をまず説明する。
(A)評価。
(1)光弾性係数の測定
Polymer Engineeringand Science 1999,39,2349-2357に詳細の記載のある複屈折測定装置を用いた。レーザー光(543.5nm)の経路にフィルムの引っ張り装置を配置し、23℃で伸張応力をかけながら複屈折を測定した。伸張時の歪速度は50%/分(チャック間:10mm、チャック移動速度:5mm/分)、試験片幅は8mmで測定を行った。複屈折の絶対値(|Δn|)と伸張応力(σ)の関係から、最小二乗近似によりその直線の傾きをもとめ光弾性係数(C)を計算した。計算には伸張応力が2.5MPa≦σ≦10MPaの間のデータを用いた。
=|Δn|/σ
|Δn|=nx−ny
(C:光弾性係数、σ:伸張応力、|Δn|:複屈折の絶対値、nx:伸張方向の屈折率、ny:伸張方向と垂直な屈折率)
【0024】
(2)レターデーションの測定
大塚電子製RETS−100を用いて、回転検光子法により測定を行った。測定のための入射光はフィルム面に対して垂直な方向より照射した。レターデーションの値は550nmの照射光波長における値である。
(3)分子量
GPC[東ソー製GPC−8020、検出RI,カラム昭和電工製Shodex K−805,801連結]を用い、溶媒はクロロホルム、測定温度40℃で、市販標準ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
(4)比旋光度
Macromolecules 1991,24,5657-5662に記載の方法で比旋光度[α]を求めた。
【0025】
(B)用いた原材料など
(1)ポリ乳酸(A−1)
以下の実施例に使用した脂肪族ポリエステル系樹脂であるポリ乳酸系樹脂は、公知の例えば辻秀人著「Polylactide」in Biopolymers Vol.4 (Wiley−VCH 2002年刊)PP129−178や、特表平05−504731号公報に従って錫系触媒を用いたラクチドの開環重合法によりのポリ乳酸(L乳酸とD乳酸の共重合体)を準備した。(A−1)の重量平均分子量、比旋光度はそれぞれ、176,000、−150.6°であった。
(2)ポリカーボネート樹脂(B−1)
比較に用いたポリカーボネート樹脂には、メルトフローレート10g/10分(ASTM D1238に準拠、300℃、荷重1.2kg)のポリカーボネート樹脂を使用した。
【0026】
[実施例1〜2および比較例1〜2]
テクノベル製Tダイ装着押し出し機(KZW15TW−25MG−NH型/幅150mmTダイ装着/リップ厚0.5mm)のホッパーに(A−1)または(B−1)のペレットを投入した。押し出し機のシリンダー内樹脂温度とTダイの温度を調整し押し出し成形し、得られた未延伸フィルムの一軸延伸(延伸速度5%/分)を引っ張り試験機を用いて行うことにより実施例1〜2、比較例1〜2のフィルムを得た。
|Δn|=|nx−ny|を求めるのに必要なnxは一軸引っ張り方向の屈折率とし、nyは一軸引っ張り方向に垂直な方向の屈折率とした。組成、押し出し条件、延伸条件、フィルムの厚み、レターデーション、光弾性係数を表1に示した。
【0027】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の位相差フィルムは、透明でかつ外力による複屈折の変化が小さいという優れた光学特性を持ち、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板等の位相差板、視野角制御フィルム等の液晶光学補償フィルム等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステル系樹脂よりなり、レターデーションが1nm以上600nm未満である位相差フィルム。
【請求項2】
脂肪族ポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム。
【請求項3】
延伸したことを特徴とする請求項1または2に記載の位相差フィルム。
【請求項4】
延伸倍率が、0.1%以上1、000%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項5】
光弾性係数が、0以上20(×10−12/Pa)未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項6】
レターデーションが、10nm以上450nm未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項7】
押し出し成形で成形されたフィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項8】
キャスト成形で成形されたフィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差フィルム。

【公開番号】特開2006−243610(P2006−243610A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62191(P2005−62191)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】