説明

位相差板、及び新規ポリマー、及び光学フィルム、及び画像表示装置

【課題】 本発明は、比較的薄層にすることができ、可視光領域略全体の波長λの光線に対して、位相差が略λ/2又は略λ/4の波長分散性を示す位相差板を提供する。
【解決手段】 複屈折性を示す鎖状ポリマーを配向させた単層フィルムからなり、ポリマーが繰り返し単位として下記一般式(V)で表される構造を有する位相差板。一般式(V)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示す(但し、R及びRは同時に水素原子ではない)。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差板、及び新規ポリマー、並びに該位相差板を用いた光学フィルム、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差板は、直線偏光、円偏光、楕円偏光などの偏光を得るために用いられる光学部材である。位相差板としては、その位相差が波長λの1/4に相当するλ/4板と、位相差が波長λの1/2に相当するλ/2板とが知られている。λ/4板は、直線偏光を円偏光に変換する光学的機能を有するものであり、λ/2板は、直線偏光の偏光振動面を90度変換する光学的機能を有するものである。一般に、これら位相差板は、特定波長の光に対してλ/4板やλ/2板として機能するが、異なる波長の光に対してはλ/4板やλ/2板として機能しない。例えば、波長550nmの光に対してλ/4板として機能するように設計された位相差板は、波長450nmや650nmの光に対してはλ/4板として機能しない。このように位相差板は、その位相差が波長に依存している波長分散性を示し、例えばポリマーフィルムに於ける波長分散は、短波長側ほど大きく、長波長側ほど小さいことが一般に知られている。
このような波長分散性を示す位相差板に、可視光領域の光線が混在している合成波である白色光が入射した場合、波長分散性に起因して、各波長での偏光の形が大きく異なって偏光状態の分布が生じる。その結果、入射した白色光が有色光に変換されるという大きな問題があった。
かかる問題に対処するため、特開平10−239518号公報には、波長分散値α(α=Δn(450nm)/Δn(650nm))の異なる2種類以上の複屈折媒体を各遅相軸が直交した状態で積層し、波長分散値αが1より小さい位相差板が提案されている。該公報記載の位相差板によれば、可視光域の全ての波長における光学的位相差が光線波長によらず一様となり、白色光を容易に得られるという作用効果を奏すると述べられている。
しかしながら、上記公報記載の位相差板は、2種以上の複屈折媒体を積層した積層体からなるので、積層接着工程が必要であり、又接着剤の選定や2種以上の材料の選定などを行わなければならない。さらに、積層体からなる位相差板は、比較的肉厚が厚く、より薄型化が望まれている液晶表示装置などの用途としては相応しいものとは言えない。
【0003】
【特許文献1】特開平10−239518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、比較的薄層にすることができ、波長400〜700nmの可視光領域略全体の波長λの光線に対して、位相差が例えば略λ/2又は略λ/4の波長分散性を示す位相差板、及び該位相差板の材料として好適な新規ポリマー、及び光学フィルム、及び画像表示装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の下、種々の材料について鋭意研究した結果、主鎖に特定の側鎖が導入された鎖状ポリマーを用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明は、下記の手段を提供するものである。
すなわち、本発明は、複屈折性を示す鎖状ポリマーを配向させた単層フィルムからなり、このポリマーが側鎖(a)として下記一般式(I)で表される基を有する位相差板(1)を提供する。
【0006】
【化17】

(一般式(I)中、2つの酸素原子は、主鎖を構成する原子にそれぞれ結合する。R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は芳香族基を示す。但し、R及びRの少なくとも何れか一方は芳香族基であり、R又は/及びRの芳香族基は、その平面構造が前記2つの酸素原子を結んだ仮想線と略直交する方向に配置している)。
【0007】
また、本発明は、複屈折性を示す鎖状ポリマーを配向させた単層フィルムからなり、ポリマーが側鎖(a)として下記一般式(II)又は一般式(III)で表される基のうち少なくとも何れか一方を有する位相差板(2)を提供する。
【0008】
【化18】

(一般式(II)中、2つの酸素原子は、主鎖を構成する原子にそれぞれ結合する。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示す(但し、R及びRは同時に水素原子ではない)。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す)。
【0009】
【化19】

(一般式(III)中、2つの酸素原子は、主鎖を構成する原子にそれぞれ結合する。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Aは置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を示す。ナフチル基、アントラニル基、又はフェナントレニル基を構成する炭素原子のうち1以上の炭素原子は窒素原子で置換されていてもよい)。
【0010】
さらに、ポリマーが、主鎖の構成原子に側鎖(a)が結合した構造を一つの構成単位とし、該構成単位が隣合って配列された部分を有する上記(1)又は(2)の位相差板(3)を提供する。
【0011】
さらに、少なくとも波長450〜650nmに於ける面内位相差が、短波長側ほど小さく、長波長側ほど大きい上記(1)〜(3)の位相差板(4)を提供する。
【0012】
さらに、側鎖(a)が側鎖全量の1〜50モル%含まれている上記(1)〜(4)の位相差板(5)を提供する。
【0013】
さらに、ポリマーが、側鎖(a)以外に、側鎖(b)として水酸基を有する上記(1)〜(5)の位相差板(6)を提供する。
【0014】
さらに、ポリマーが、側鎖(a)及び(b)以外に、側鎖(c)として下記一般式(IV)で表される基を有する上記(6)の位相差板(7)を提供する。
【0015】
【化20】

(一般式(IV)中、Rは、水素原子、又は直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基を示し、このアルキル基の炭素原子は隣接しない酸素原子によって置換されていてもよい)。
【0016】
さらに、側鎖(a)が側鎖全量の1〜50モル%、側鎖(b)が同5〜95モル%、側鎖(c)が同1〜90モル%含まれている上記(7)の位相差板(8)を提供する。
【0017】
また、本発明は、複屈折性を示す鎖状ポリマーを配向させた単層フィルムからなり、ポリマーが繰り返し単位(A)として下記一般式(V)又は一般式(VI)で表される構造のうち少なくとも何れかを有する位相差板(9)を提供する。
【0018】
【化21】

(一般式(V)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示す(但し、R及びRは同時に水素原子ではない)。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す)。
【0019】
【化22】

(一般式(VI)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Aは置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を示す。ナフチル基、アントラニル基、又はフェナントレニル基を構成する炭素原子のうち1以上の炭素原子は窒素原子で置換されていてもよい)。
【0020】
さらに、ポリマーに於ける繰り返し単位(A)が、ポリビニルアルコールの水酸基を、芳香族アルデヒドでアセタール化することにより得られたものである上記(9)の位相差板(10)を提供する。
【0021】
さらに、ポリマーが、繰り返し単位(A)以外に、下記一般式(VII)で表される繰り返し単位(B)を有する上記(9)又は(10)の位相差板(11)を提供する。
【0022】
【化23】

(繰り返し単位(A)及び(B)の配列はブロック状、ランダム状のいずれであってもよい)。
【0023】
さらに、ポリマーが、繰り返し単位(A)及び(B)以外に、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位(C)を有する上記(11)の位相差板(12)を提供する。
【0024】
【化24】

(一般式(VIII)中、Rは、水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基を示し、アルキル基の炭素原子は隣接しない酸素原子によって置換されていてもよい。繰り返し単位(A)〜(C)の配列は、ブロック状、ランダム状のいずれであってもよい)。
【0025】
また、本発明は、複屈折性を示す鎖状ポリマーを配向させた単層フィルムからなり、ポリマーが、下記一般式(IX)の構造を有する位相差板(13)を提供する。
【0026】
【化25】

(一般式(IX)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜80モル%、nは、1〜70モル%を示す)。
【0027】
また、本発明は、複屈折性を示す鎖状ポリマーを配向させた単層フィルムからなり、ポリマーが、下記一般式(X)の構造を有する位相差板(14)を提供する。
【0028】
【化26】

(一般式(X)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜80モル%、nは、1〜70モル%を示す)。
【0029】
さらに、本発明は、下記一般式(V')で表される繰り返し単位を有するポリマーを提供する。
【化27】

(一般式(V')中、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す)。
さらに、本発明は、上記一般式(V')で表される繰り返し単位以外に、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位をも有するポリマーを提供する。
【化28】

(一般式(VIII)中、Rは、水素原子、又は、炭素数1〜12の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基を示し、アルキル基の炭素原子は隣接しない酸素原子によって置換されていてもよい。繰り返し単位の配列は、ブロック状、ランダム状のいずれであってもよい)。
さらに、本発明は、上記一般式(V')のR及びRが、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基又は塩素原子である上記ポリマーを提供する。また、本発明は、上記一般式(V')のR、R及びRが、何れも水素原子で、R及びRが、何れもメチル基である上記ポリマーを提供する。
【0030】
さらに、本発明は、下記一般式(IX)〜(XII)で表されるポリマーを提供する。
【化29】

(一般式(IX)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜80モル%、nは、1〜70モル%を示す)。
【化30】

(一般式(X)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜80モル%、nは、1〜70モル%を示す)。
【化31】

(一般式(XI)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜80モル%、nは、1〜70モル%を示す)。
【化32】

(一般式(XII)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜60モル%、nは、20〜60モル%、oは、1〜55モル%を示す)。
【0031】
また、本発明は、上記(1)〜(14)の位相差板を積層した光学フィルム(15)を提供する。
【0032】
また、本発明は、上記(1)〜(14)の位相差板、又は上記(15)の光学フィルムを有する画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の位相差板は、単層フィルムにて構成することができるので、従来のものに比して厚みを薄くできる。さらに、本発明の位相差板は、400〜700nmの可視光領域の略全ての波長λの光に対して、位相差が例えば略λ/2又は略λ/4となり、各波長での偏光の形がほぼ同じとなる。従って、本発明の位相差板は、白色光が入射した際に有色偏光に変換されることがなく、無色偏光を得ることができる。
また、本発明の位相差板は、その好ましい態様により、透明性に優れ、耐熱性、製造時の溶媒溶解性などの効果を有する。
さらに、本発明のポリマーは、延伸し製膜することにより優れた波長分散性を示し、又適度なガラス転移温度を示すなど耐熱性、加工性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明者らは、−OCO−に芳香族基が導入された側鎖(a)を有する鎖状ポリマーを配向させた単層フィルムが、少なくとも波長450〜650nmの可視光領域に於ける面内位相差が短波長側ほど小さくなることを見出し、このフィルムの性質を専ら利用することにより、本発明は、厚みが薄く、且つ波長400〜700nmの可視光領域略全体で所定の位相差を示す位相差板、及びかかる位相差板を形成するのに好適な新規ポリマーを提供するものである。
以下、本発明を具体的に説明する。尚、本明細書に於いて、可視光線領域に於ける面内位相差が短波長側ほど小さくなる本発明の位相差板の性質を「逆波長分散特性」という場合がある。
【0035】
本発明は、複屈折性を示す鎖状ポリマーを配向させた単層フィルムからなる位相差板であり、このポリマーが側鎖(a)として下記一般式(I)で表される基を有するものである。
【0036】
【化33】

(一般式(I)中、2つの酸素原子は、主鎖を構成する原子にそれぞれ結合する。R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は芳香族基を示す。但し、R及びRの少なくとも何れか一方は芳香族基であり、R又は/及びRの芳香族基は、その平面構造が前記2つの酸素原子を結んだ仮想線と略直交する方向に配置している)。
【0037】
ここで、本発明に於ける鎖状ポリマーは、主鎖が直鎖状のポリマーであり、一部に短い分枝鎖を有しているものも含まれる。また、鎖状ポリマーの配向は、一般に、フィルムの延伸によってもたらされる。従って、ポリマーの配向方向は、一軸延伸の場合にはその延伸方向と等しいと言え、二軸延伸の場合には主たる延伸方向と等しい方向と言える。
また、側鎖(a)に於いて、2つの酸素原子が主鎖を構成する原子にそれぞれ結合するとは、各酸素原子が、主鎖を構成する原子であってそれぞれ同一でない主鎖構成原子に結合していることをいう。芳香族基とは、平面環状に連なったπ電子をもつ芳香族化合物基をいい、ベンゼン環若しくはベンゼン環が2以上縮合した化合物、又は炭素原子以外の原子を含むヘテロ芳香族化合物が含まれる。芳香族基の平面構造が2つの酸素原子を結んだ仮想線と略直交する方向に配置しているとは、2つの酸素原子を結ぶ線を仮想した場合、その仮想線に平行な線が芳香族基の平面構造に対して略直角に交わるように芳香族基が配置していることを意味し、酸素原子を結んだ仮想線自体が芳香族基の平面構造と交わっているという意味ではない。
【0038】
上記位相差板は、そのポリマーを配向させた際、2つの酸素原子が主鎖の配向方向に沿って並び、この2つの酸素原子の仮想線と略直交する方向に側鎖(a)の芳香族基が配置されていることから、該芳香族基の平面構造が主鎖の配向方向と略直交する方向に向くこととなる(但し、側鎖(a)の芳香族基の平面構造が主鎖の配向方向に対して厳密に90度に配置しているものではなく、実際上、75〜105度程度となっているものと考えられる)。かかる配置の側鎖(a)の存在により、本発明の位相差板は、通常のポリマーからなる位相差板とは逆の波長分散性、すなわち、面内位相差が可視光領域に於いて短波長側ほど小さく、長波長側ほど大きい性質を示すものと考えられる。
【0039】
上記一般式(I)のR、Rの炭素数1〜8のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−へキシル基、2−エチルへキシル基などが例示される。
上記一般式(I)で示される側鎖(a)のうち、R又はRの何れか一方のみが芳香族基である側鎖(a)としては、例えば、下記一般式(II)又は一般式(III)のものが例示される。
【0040】
【化34】

(一般式(II)中、2つの酸素原子は、主鎖を構成する原子にそれぞれ結合する。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示す(但し、R及びRは同時に水素原子ではない)。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す)。
【0041】
【化35】

(一般式(III)中、2つの酸素原子は、主鎖を構成する原子にそれぞれ結合する。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Aは、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を示す。ナフチル基、アントラニル基、又はフェナントレニル基を構成する炭素原子のうち1以上の炭素原子は窒素原子で置換されていてもよい)。
【0042】
かかる一般式(II)で示される構造の側鎖(a)は、ベンゼン環のオルト位R、Rが同時に水素原子ではなく、何れか一方がアルキル基等の置換基で置換されている。このようにオルト位に置換基が導入されていることにより、該置換基と酸素原子の間の立体障害が増すこととなる。その結果、該置換基は2つの酸素原子の間に配座し、よって、一般式(II)で示す側鎖(a)は、そのベンゼン環の平面構造が2つの酸素原子を結ぶ仮想線に略直交する方向に配置するものと考えられる。
また、一般式(III)で示される側鎖(a)は、2以上のベンゼン環が縮合した形の芳香族基を有する。かかる縮合形の芳香族基は、−OCO−に結合したベンゼン環に縮合形で存在するベンゼン環によって、立体的に嵩高くなり、該縮合形の芳香族基と酸素原子の間の立体障害が増すこととなる。その結果、該芳香族基の平面構造が、2つの酸素原子を結ぶ仮想線に略直交する方向に配置するものと考えられる。
【0043】
上記一般式(II)のRの炭素数1〜8のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−へキシル基、2−エチルへキシル基などが例示される。また、同R及びRの炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基が挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基などが例示される。また、同R〜Rの置換基としては、下記一般式(III)のAの置換基として例示したものなどが挙げられる。
上記一般式(II)で示される側鎖(a)のうち、酸素原子との立体障害によって芳香族基の平面構造が略直交方向に配置し易くなることから、一般式(II)のRが、(立体的に小さい)水素原子であるものが好ましい。特に、芳香族基の平面構造が略直交方向に配置し易くなることから、一般式(II)のRが水素原子で、R及びRが何れも炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基、又はチオール基であるもの(R及びRが何れも水素原子でないもの)が好ましい。さらに、一般式(II)のRが水素原子で、R及びRが何れも炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、アルコキシル基、又はハロゲンである側鎖(a)が好ましい。また、前記理由に加えて、アセタール構造の導入の容易さやアセタール構造の安定性という点から、一般式(II)で示されるR、R及びRのそれぞれが水素原子で、R、R及びRのそれぞれがメチル基である側鎖(a)が特に好ましい。
【0044】
また、上記一般式(III)に於いて、ナフチル基、アントラニル基、又はフェナントレニル基が置換基を有する場合、その置換基は特に限定されず、例えば、上記のような炭素数1〜8の直鎖状又は分枝状のアルキル基又はアルコキシル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基又はシクロアルコキシル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基、チオール基、アルデヒド基、シアノ基、スルホン酸基などが例示される。これらは1個置換されていても良く、また、同種又は異種の置換基の2個以上で置換されてもいてもよい。
また、上記一般式(III)で示される側鎖(a)のうち、酸素原子との立体障害によってベンゼン環の平面構造が略直交方向に配置し易くなることから、一般式(III)で示すAが、置換基を有していてもよい(無置換又は置換基を有する)9−アントラニル基であるものが好ましい。
【0045】
次に、上記一般式(I)で示される側鎖(a)のうち、R及びRの何れもが芳香族基である側鎖(a)としては、例えば、下記一般式のものが例示される。
【0046】
【化36】

(式(XIII)中、R10〜R19は、水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基(但し、R10及びR14は同時に水素原子でない。R15及びR19は同時に水素原子でない)。また、2つのベンゼン環は、単結合で部分的に結合していてもよい)。
【0047】
上記一般式(XIII)で表されるものに含まれる具体例としては、式(XIV)で示される構造のものが例示される。
【0048】
【化37】

【0049】
本発明のポリマーには、上記例示した側鎖(a)の少なくとも何れか1種のものが主鎖に結合していればよく、例えば、一般式(II)で示す基及び一般式(III)で示す基の双方がそれぞれ主鎖に導入されていてもよい。
【0050】
側鎖(a)の主鎖に対する導入量は、位相差板が確実に逆波長分散特性を示すようにする点から、側鎖全量の1モル%以上が好ましく、更に5モル%以上であることがより好ましい。また、同導入量は、正の複屈折異方性を有する位相差板として利用するという点から、側鎖全量の50モル%以下が好ましく、更に30モル%以下であることがより好ましい。
【0051】
本発明の位相差板として用いられる鎖状ポリマーは、側鎖(a)を有するものであるが、更に、側鎖(a)以外の側鎖が導入されているものでもよい。この側鎖(a)以外の側鎖は、特に限定されず、例えば、水酸基、アミノ基、チオール基、アルコシキル基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、エステル基、ケトン基、アルデヒド基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、カーボネート基、下記一般式(IV)で示される基などが例示される。
【0052】
【化38】

(一般式(IV)中、Rは、水素原子、又は直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基を示し、アルキル基の炭素原子は隣接しない酸素原子によって置換されていてもよい)。
【0053】
これらの中でも、本発明の位相差板として用いられる鎖状ポリマーは、逆波長分散特性が向上し、及び製膜時に於ける溶媒に対する溶解性が良好になることから、側鎖(a)以外の側鎖(b)として、水酸基を有するものが好ましい。
また、同ポリマーは、透明性が向上すること、及びガラス転移温度を低くできることから、側鎖(a)以外の側鎖(c)として、上記一般式(IV)で示す基を有することが好ましい。この一般式(IV)で表される基の中でも、Rが水素原子、又炭素数1〜12の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基(アルキル基の炭素原子は隣接しない酸素原子によって置換されていてもよい)から選ばれる少なくとも1種のものが側鎖(c)として導入されていることが好ましく、更に、下記式(XV)に示す基がより好ましい。
【0054】
【化39】

【0055】
側鎖(b)及び/又は側鎖(c)の主鎖に対する導入量は、目的とする位相差板の特性に鑑み、側鎖(a)の残量の範囲で適宜調整すればよい。もっとも、より好適な逆波長分散特性を得ること、溶解性の向上を図るため、水酸基である側鎖(b)は、側鎖全量に対して5モル%以上が好ましく、更に20モル%以上がより好ましい。一方、その上限は、側鎖(a)や側鎖(c)の量に応じて適宜調整され、95モル%以下、更に80モル%以下程度が好ましい。また、側鎖(c)の導入量についても同様に、透明性の向上などの実効を図る上で、側鎖(c)は、側鎖全量に対して1モル%以上が好ましく、更に5モル%以上がより好ましい。一方、その上限は、90モル%以下、更に50モル%以下程度が好ましい。
【0056】
本発明の位相差板に用いられる鎖状ポリマーは、上記のような側鎖(a)及び必要に応じてそれ以外の側鎖(b)及び/又は側鎖(c)を有するものであるが、該ポリマーの主鎖は特に限定されず、本発明の目的を阻害しない限り、複屈折性を示す各種の主鎖構造のものを用いることができる。尚、本発明において主鎖とは、何らかの構造からなる主鎖構成原子が繰り返し単位として結合した長鎖状の部分をいい、分枝鎖を有していてもよい。
該主鎖としては、例えば、下記一般式(XVI)で表される繰り返し単位を有するポリマーなどが例示される。
【0057】
【化40】

(一般式(XVI)中、E及びEはそれぞれ独立して、単結合、−NH−、−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−O−CO−NH−、−NH−CO−NH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=N−、−N=N−を示す。Gは、炭素数1〜12のアルキレン基、−Si−、−C−、−CN−、−C10−、−C10−、−CN−、−CN−、−CO−、−CS−、
【0058】
【化41】

を示す)。
【0059】
これら主鎖の中でも、側鎖(a)及び必要に応じて側鎖(b)、(c)を導入し易いこと、安定であることから、一般式(XVI)中のE及びEが何れも単結合であるポリマーが好ましい。また、一般式(XVI)中のGが少なくともアルキレンであるポリマーが好ましい。
【0060】
このアルキレンを主鎖に有するポリマーに上記側鎖(a)が結合したもののうち、好ましいポリマーは、繰り返し単位(A)として下記一般式(V)又は一般式(VI)で表される構造の少なくとも何れかを有しているものである。
【0061】
【化42】

(一般式(V)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示す(但し、R及びRは同時に水素原子ではない)。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す)。
【0062】
【化43】

(一般式(VI)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Aは、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を示す。ナフチル基、アントラニル基、又はフェナントレニル基を構成する炭素原子のうち1以上の炭素原子は窒素原子で置換されていてもよい)。
【0063】
かかる一般式(V)の繰り返し単位(A)を有するポリマーは、2つの酸素原子が、結合する主鎖の構成原子(炭素原子)の配向方向に沿って並び、さらに、ベンゼン環のオルト位R又は/及びRの置換基と酸素原子の間の立体障害が増すため、該置換基は2つの酸素原子の間に配座し、よって、ベンゼン環の平面構造が2つの酸素原子を結ぶ仮想線に略直交する方向に配置するものと考えられる。一般式(VI)の繰り返し単位(A)を有するポリマーについても同様に縮合形芳香環の平面構造が、2つの酸素原子を結ぶ仮想線に略直交する方向に配置するものと考えられる。
【0064】
上記一般式(V)及び(VI)は、上記一般式(II)及び(III)で表される側鎖を有するものであり、一般式(V)及び(VI)のR〜R及びAの好ましい選択例や置換基の具体例は、上記一般式(II)及び(III)と同様であって、例えば、上記一般式(V)中、Rが水素原子のものが好ましい。また、一般式(V)のR及びRのが何れも(水素原子でなく)上記置換基で置換されているものも好ましい。尚、一般式(V)のR及びRの何れも水素原子でないものは、請求項15記載の一般式(V')で表される繰り返し単位である。このR及びRは、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基又は塩素原子などのハロゲンが好ましい。より具体的には、一般式(V)のR、R及びRのそれぞれが水素原子で、R及びRのそれぞれがメチル基である繰り返し単位(A)を有するポリマーである(尚、Rは水素原子又はメチル基の何れでもよいが、メチル基であるものが好ましい)。
【0065】
さらに、位相差板として用いた場合に逆波長分散特性をより良好に示し、及び製膜時に於ける溶媒に対する溶解性が良好になることから、上記繰り返し単位(A)以外に、繰り返し単位(B)として下記一般式(VII)を有するポリマーも好ましい。
【0066】
【化44】

【0067】
さらに、透明性が向上すること、及び低いガラス転移温度となることから、繰り返し単位(A)及び(B)以外に、下記一般式(VIII)で示す繰り返し単位(C)を有するポリマーが好ましい。
【0068】
【化45】

(一般式(VIII)中、Rは、水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基を示し、アルキル基の炭素原子は隣接しない酸素原子によって置換されていてもよい)。
【0069】
上記繰り返し単位(A)及び(B)又は繰り返し単位(A)〜(C)の配列は、ブロック状、ランダム状のいずれでもよい。
尚、本発明の目的を阻害しない限り、上記ポリマーは、繰り返し単位(A)及び必要に応じて繰り返し単位(B)、(C)以外に、他の構造の繰り返し単位を有するものでも構わない。
【0070】
本発明の位相差板として用いられる鎖状ポリマーは、主鎖に上記側鎖(a)が結合しており、必要に応じて側鎖(b)や側鎖(c)を有するものの中から選ばれるものである。また、同ポリマーは、繰り返し単位(A)を有し、必要に応じて繰り返し単位(B)や繰り返し単位(C)を有するものである。このように本発明の位相差板に用いられる鎖状ポリマーは、上記の中から選ばれる種々の態様のものが含まれるが、そのうち最も好適なものは、下記一般式(IX)、下記一般式(X)、下記一般式(XI)又は下記一般式(XII)の少なくとも何れかの構造を有するものである。
【0071】
【化46】

(一般式(IX)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜80モル%、nは、1〜70モル%を示す)。
【化47】

(一般式(X)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜80モル%、nは、1〜70モル%を示す)。
【化48】

(一般式(XI)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜80モル%、nは、1〜70モル%を示す)。
【化49】

(一般式(XII)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜60モル%、nは、20〜60モル%、oは、1〜55モル%を示す)。
【0072】
以上の如く、本発明の位相差板は、単層フィルムからなるため、従来の積層位相差板に比して、厚みを薄くすることができる。さらに、本発明の位相差板は、400〜700nmの可視光領域の略全ての波長λの光に対して、面内位相差が略λ/2又はλ/4として使用することができる。従って、本発明の位相差板は、各波長での偏光の形がほぼ同じとなり、例えば白色光が入射した際に有色偏光に変換されることがなく、無色偏光を得ることができる。加えて、本発明の位相差板は、透明性に優れ、製膜時に於ける溶解性が良好で、ガラス転移温度が好適な範囲となり、耐熱性も向上し、Z延伸も可能となるという種々の効果を奏する。
【0073】
次に、上記鎖状ポリマーの製法について説明する。
本発明の位相差板に用いられるポリマーの製法は、特に限定されず、種々の製法で製造することができる。
種々の製法の中でも、上記側鎖(a)が主鎖に導入されたポリマーを比較的簡易に得られることから、主鎖に水酸基を有する原料ポリマーに、特定の芳香族アルデヒド又は芳香族ケトンを反応させてポリマーを製造することが好ましい。特に、側鎖(a)を安定して導入できること、波長分散性が比較的小さいポリマーであること、汎用的であることなどから、原料ポリマーとしてポリビニルアルコールを用い、この水酸基に特定の芳香族アルデヒド又は芳香族ケトンを反応させてアセタール化(RCH(OR)(OR)構造の導入)又はケタール化(RRC(OR)(OR)構造の導入)を行うことにより製造することが好ましい。
尚、ポリビニルアルコールに特定の芳香族アルデヒドを反応させると側鎖にアセタール構造が導入されるので、上記一般式(V)及び(VI)のRが水素原子であるポリマーが得られる。同様に、特定の芳香族ケトンを反応させると側鎖にケタール構造が導入されるので、上記一般式(V)及び(VI)のRがアルキル基であるポリマーが得られる。
【0074】
例えば、一般式(V)で示す繰り返し単位(A)を有するポリマーを得る場合には、ポリビニルアルコールに、酸性条件下で、オルト位の少なくとも一方に置換基を有するベンズアルデヒド又は同アセトフェノンなどを反応させればよい。オルト位の一方に少なくとも置換基を有するベンズアルデヒド又は同アセトフェノンの具体例としては、2,4,6−トリメチルベンズアルデヒド(メシトアルデヒド)、2,4,6−トリエチルベンズアルデヒド、2,6−ジメチルベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、2−メチルアセトフェノン、2,4−ジメチルアセトフェノンなどが例示される。
また、一般式(VI)で示す繰り返し単位(A)を有するポリマーを得る場合も同様に、ポリビニルアルコールに縮合形芳香族アルデヒド又は縮合形芳香族ケトンを反応させればよい。この縮合形芳香族アルデヒド又はケトンの具体例としては、置換基を有する1−ナフトアルデヒド、置換基を有する2−ナフトアルデヒド、9−アントラアルデヒド、置換基を有する9−アントラアルデヒド、アセトナフトンなどが例示される。
【0075】
さらに、ポリビニルアルコールに反応させる芳香族アルデヒドや芳香族ケトンの量を調整することにより、ポリビニルアルコールの水酸基が芳香族基に置換されると共に、未置換の水酸基が残存し、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)を有するポリマーを得ることができる。
【0076】
また、芳香族アルデヒドや芳香族ケトンと共に、炭素数1〜12の飽和脂肪族アルデヒド(例えばプロピオンアルデヒドやアセトアルデヒドなど)やホルムアルデヒド、脂環族アルデヒドなどを同時及び/又は逐次にアセタール化することにより、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(C)を有するポリマーを得ることができる。さらに、ポリビニルアルコールに反応させる芳香族アルデヒドや芳香族ケトン、及び上記飽和脂肪族アルデヒド、ホルムアルデヒド又は脂環族アルデヒドなどの量を調整することにより、未置換の水酸基が残存し、繰り返し単位(A)〜(C)を有するポリマーを得ることができる。
【0077】
かくして得られるポリマーの重合度は、例えば位相差板として好適に使用し得る程度であれば特に限定されず、延伸に耐え得る十分なフィルム強度という点から、例えば100〜20000程度、好ましくは500〜10000程度の重合度のものが好ましく、主鎖の種類や側鎖(a)などの種類や量を適宜変更して調整することができる。
また、ポリマーのガラス転移温度は、主鎖の種類、側鎖(a)乃至(c)の種類や量によって異なるが、例えば80〜180℃程度であり、位相差板として十分な耐熱性を有するものである。さらに、例えば、約200℃を越えるような高いガラス転移温度を示す従来のポリマーとは異なり、適度なガラス転移温度を示すので、一軸延伸だけでなく、従来公知の方法でのZ延伸も可能である。
【0078】
次に、上記ポリマーをフィルムに製膜して位相差板を得る方法について説明する。尚、本明細書に於ける「フィルム」という用語は、一般に「シート」と言われるものも含む意味である。
本発明の位相差板は、上記ポリマーを製膜した単層フィルムからなるものであり、その製膜法は、特に限定されず、例えば、キャスト法、溶融押出法、カレンダー法などによってフィルム状に成形することができる。中でも、より厚み精度に優れ、光学的に均質なフィルムを得ることができることから、キャスト法で成形することが好ましい。キャスト法では、通常ポリマーを溶解させるため溶媒が用いられるが、側鎖(b)として水酸基を有する本発明のポリマーは、ポリマーフィルムからなる従来の位相差板をキャスト成形する際に用いることができなかった溶剤に対しても良好な溶解性を示す場合がある。本発明のポリマーの溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジクロロメタン、トルエンなどが例示される。尚、ポリマーを溶解させる際には、必要に応じて加温してもよい。
【0079】
得られたフィルムを延伸することにより、本発明の位相差板を得ることができる。かかる延伸方法には特に限定がなく、例えばデンター延伸法、ロール間延伸法、ロール間圧縮延伸法といった通常の一軸延伸法や、全テンター方式による同時二軸延伸処理方式や、ロール・テンター法による逐次二次延伸処理方式といった通常の二軸延伸法などを採用することができる。
また、本発明においては、ポリマーの種類(特性)に応じて、二軸延伸のなかでも、そのフィルムをZ延伸することも可能である。かかるZ延伸も、例えばフィルムを過熱延伸する際に延伸方向(X軸方向)と直交する又は交差する方向(Y軸方向)に該フィルムを収縮させることによって厚み方向(Z軸方向)に延伸応力を発生させる方法といった通常のZ延伸法にて行うことができる。
【0080】
尚、フィルム中には、その延伸性を向上させる目的で、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸エステル、トリメチルリン酸エステル、トリエチルリン酸エステル、トリフェニルイン酸エステルなどのリン酸エステル、ジエチルアジペート、ジブチルフマレートなどの脂肪酸などの可塑剤を1種以上添加してもよい。該可塑剤の添加量は、延伸性の向上効果及び得られる位相差板の波長分散性への影響を考慮すると、ポリマー100重量部に対して1〜20重量部程度であることが好ましい。また、可塑剤のほかにも、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤といった添加剤を、それぞれの目的に応じて適宜添加してもよい。
【0081】
フィルムを延伸する際の温度、倍率といった延伸条件は、ポリマーを構成する主鎖の種類ならびに側鎖(a)及び必要に応じて導入されている側鎖(b)及び(c)の種類や量によって異なるため、適宜設定されるものであるが、例えば延伸温度が50〜200℃程度、延伸倍率が1.1〜4.0倍程度であることが好ましい。
かくして得られる本発明の位相差板は透明性に優れており、JIS K 7105に準拠した測定での可視光線透過率が88〜93%程度、ヘイズが0.1〜3%程度である。また、その厚みは、通常20〜200μm程度、さらには40〜100μm程度と充分に小さいものである。
【0082】
本発明の位相差板は、側鎖(a)を有する鎖状ポリマーの単層フィルムからなり、逆波長分散特性を示すものである。かかる位相差板は、可視光領域全体のほぼ全ての波長λの光に対して、それ自身1枚で位相差が例えばほぼλ/2又はほぼλ/4の波長分散性を示すため、無色偏光への変換が可能となる。本発明の位相差板は、逆波長分散特性を有するが、後述する条件にて測定した本発明の位相差板の波長分散は、高分子材料を構成する主鎖の種類並びに側鎖(a)及び必要に応じて導入されている側鎖(b)の種類や量によって異なるものの、概ね、Re(450)/Re(550) ≦0.97、Re(650)/Re(550)≧1.01の関係を満たしている。ここで、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は、それぞれ波長450nm、550nm及び650nmで測定した面内位相差を表すものである。
【0083】
また、本発明の位相差板が、例えば一軸延伸法にて得られたフィルムからなる場合には、屈折率は、延伸方向(X軸方向(面内屈折率が最大の方向))の屈折率をnx、延伸の直交方向(Y軸方向)の屈折率をny、厚み方向(Z軸方向)の屈折率をnzとした場合、式:nx>ny=nzで表される関係を満足している。一方、二軸延伸法のなかでも上記Z延伸法にて本発明の位相差板が得られる場合には、これら屈折率nx、ny及びnzは、式:nx>nz>nyで表される関係を満足している。ところで、視覚特性を示すパラメータとして式:Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で表されるNz値が繁用されるが、該Nz値が0.5であるならば、遅相軸方向(X軸方向)に位相差板を傾斜させた場合であっても、傾斜核に対する位相差は変化しない。すなわち位相差の視覚依存症がなくなることが明らかとなっている。よって、視覚特性の向上効果を考慮すると、特に三次元屈折率の制御に留意して延伸を行うことが望まれる。
さらに、本発明の位相差板に、ある波長の光が入射した際、その異常光に対する屈折率(以下、「n」という)と常光に対する屈折率(以下、「n」という)との屈折率差:n−n(以下△nという)は、550nmの波長で0.005以下である。しかし、例えば上記鎖状ポリマーに液晶性化合物を混合して製膜したフィルムを用いた場合には、通常液晶性化合物から得られるフィルム自身の△nが比較的高いことから、得られる位相差板の△nを0.01以上にすることも可能である。
かかる△nが高くなることにより、所望の位相差を発現させるための膜厚を薄くすることが可能になり、特に従来の位相差板では極めて困難であった、100μm以下の膜厚で可視光領域全体のほぼ全ての波長の光に対してλ/2の位相差を与えることも可能である。
【0084】
かかる液晶性化合物としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定がなく、例えばアゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類などの液晶低分子化合物、該液晶低分子化合物の分子末端に例えば(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、ビニルオキシ基、プロパルギル基、イソシアナート基などの重合性基を有する液晶モノマーなどがあげられる。これらの中から、得られる位相差板の△nが所望の値となるように、また用いるポリマーの種類に応じて、1種以上を適宜選択して用いればよい。該液晶性化合物の量は、これを用いたことによる△n向上効果が充分に発現されるように、高分子材料100重量部に対して1重量部以上、好ましくは3重量部以上とすることが望ましい。また位相差が長波長側ほど大きくなる特性を維持するために、上記鎖状ポリマー100重量部に対して20重量部以下、好ましくは10重量部以下とすることが望ましい。
【0085】
本発明の位相差板は、他の光学材料などと積層することにより、光学フィルムの態様で使用することができる。例えば、偏光板に本発明の位相差板を積層することにより、楕円偏光板や円偏光板などの光学フィルムとして利用することができる。また、位相差がλ/4に調整された本発明の位相差板と、位相差がλ/2に調整された本発明の位相差板を、偏光板に積層して光学フィルムを構成することもできる。本発明の位相差板は、偏光板の偏光子に直接積層させてもよいし、保護フィルムを介して積層させてもよい。また、液晶セルなどの他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。尚、粘着層が表面に露出する場合には、離型紙にてカバーすることが好ましい。その他、偏光板/本発明の位相差板/バンドパスフィルターの順で積層した光学フィルムや、更に、表面に保護フィルムを添付した光学フィルムなど、本発明の位相差板は、機能の異なる光学材料と積層することにより、各種の光学フィルムの態様で使用できる。
【0086】
また、本発明の位相差板又は該位相差板が積層された光学フィルムは、液晶表示装置などの各種画像表示装置などの構成部品として好ましく用いることができる。例えば、液晶表示装置は、上記光学フィルムなどを液晶セルの片側または両側に配置してなる透過型や反射型、あるいは透過・反射両用型等の従来に準じた適宜な構造とすることができる。したがって、液晶表示装置を形成する液晶セルは任意であり、例えば薄膜トランジスタ型に代表される単純マトリクス駆動型のものなどの適宜なタイプの液晶セルを用いたものであっても良い。また、液晶セルの両側に本発明の光学フィルムを設ける場合、それらは同じ物であってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、拡散板やバックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
【実施例】
【0087】
つぎに本発明の位相差板を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、各特性の測定条件は、それぞれ以下に示すとおりである。
(組成比の測定)
測定対象であるポリマーを200mg取り、THF10ml中、窒素下、室温で、イミダゾール0.93g、t−ブチルジメチルクロロシラン1.37gを加え、室温下で12時間攪拌する。反応終了後、メタノールに3回再沈殿を行い精製する。得られたポリマーをH−NMRで測定した(CDC13溶媒)。
製造例1及び2で得られたポリマーの測定では、0ppm付近、0.8ppm、6.8ppmのピークにより組成比を求めた。
製造例3で得られたポリマーの測定では、0ppm付近、3.3−5.4ppm、6.8ppmのピークにより組成比を求めた。
製造例4で得られたポリマーの測定では、0ppm付近、3.5−5.0ppm、6.8ppmのピークにより組成比を求めた。
(ガラス転移温度の測定)
示差走査熱量計(セイコーDSC6200)を用いて窒素ガスを80ml/分フローしながら、室温から10℃/分で昇温させて2回測定し、2回目のデータを採用した。各回の測定には粉末サンプル3mgを用いた。熱量計は標準物質(インジウムとスズ)を用いて温度校正を行った。
(位相差変化率)
フィルムサンプルを80℃に設定された乾燥機に投入し、10時間後における位相差を測定した。試験前に測定しておいた位相差と、80℃10時間処理後の位相差から、位相差の変化率を求めた。
(面内位相差の測定)
王子計測機器(株)製、「KOBRA21−ADH」を用いて測定した。
(厚みの測定)
マイクロメータ(MITUTOYO製)を用いて測定した。
(吸水率の測定)
JIS K 7209「プラスチックの吸水率及び沸騰吸水率試験方法」に基づいて測定した。測定サンプルは50mm×50mmで、厚みが40〜100μmで行った。
(偏光IRの測定)
FT/IR−230(日本分光製)にIR偏光子としてPL−82を備え付け、室温にて測定した。
【0088】
製造例1
105℃で2時間乾燥させた重合度1800のPVA(日本合成化学、NH−18)5.0gをDMSO 95mlに溶解した。ここにメシトアルデヒド 3.78g、プロピオンアルデヒド 1.81g及びp−トルエンスルホン酸・1水和物 1.77gを加えて、40℃で4時間撹拌した。炭酸水素ナトリウム2.35gを溶解させた水/メタノール=2/1溶液に再沈殿を行った。ろ過して得られたポリマーをTHFに溶解し、ジエチルエーテルに再沈殿した。ろ過して乾燥したのち、白色ポリマーが7.89g得られた。得られたポリマーを上記測定条件下で測定したところ、ビニルメシタール、ビニルプロピオナール、ビニルアルコールの各部位の比は22:46:32であり、式(IX)で示す構造の新規ポリマーが得られた。また、このポリマーのガラス転移温度は102℃であった。
【0089】
実施例1
製造例1で得られたポリマーをDMFに溶解し、アプリケーターを用いて製膜した。乾燥して得られたフィルムを、延伸機を用いて110℃で1.8倍延伸を行い、膜厚85μmの一軸延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差は、Re(450)=116.4nm、Re(550)=138.1nm、Re(650)=147.6nmと逆波長分散になっていた。また、耐熱性を試験したところ、位相差変化率は1%以下であった。また、得られたフィルムの吸水率は5%であった。
【0090】
製造例2
メシトアルデヒドを2.10g、プロピオンアルデヒドを2.47g用いたこと以外は製造例1と同様に行った。精製後、6.48gの白色ポリマーが得られた。このポリマーのビニルメシタール、ビニルプロピオナール、ビニルアルコールの各部位の比は18:52:30であった。このポリマーのガラス転移温度は97℃であった。
【0091】
実施例2
製造例2で得られたポリマーをDMFに溶解し、アプリケーターを用いて製膜した。乾燥して得られたフィルムを、延伸機を用いて110℃で2倍延伸を行い、膜厚78μmの一軸延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差は、Re(450)=263.9nm、Re(550)=276.8nm、Re(650)=280.6nmと逆波長分散になっていた。また、耐熱性を試験したところ、位相差変化率は1%以下であった。また、得られたフィルムの吸水率は5%であった。
さらに、得られた延伸フィルムの偏光IR測定を行った。偏光の振動方向と進相軸のなす角度と、芳香族のC=C伸縮振動に対応する1465cm−1の吸収ピーク強度との関係をプロットした結果を図1に示す。進相軸と偏光の成す角度が0°、180°のときに吸収が大きく、90°、270°のときに小さいことから、芳香環が主鎖を含む平面に対して直交に配向していることがわかる。
【0092】
製造例3
メシトアルデヒドを3.03g、プロピオンアルデヒドにかえて1,1−ジエトキシエタンを4.30g用いたこと以外は製造例1と同様に行った。精製後7.24gの白色ポリマーが得られた。このポリマーのビニルメシタール、ビニルアセタール、ビニルアルコールの各部位の比は18:47:35であり、式(X)で示す構造の新規ポリマーが得られた。このポリマーのガラス転移温度は120℃であった。
【0093】
実施例3
製造例3で得られたポリマーをDMFに溶解し、アプリケーターを用いて製膜した。乾燥して得られたフィルムを、延伸機を用いて155℃で2倍延伸を行い、膜厚110μmの一軸延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差は、Re(450)=246.7nm、Re(550)=274.1nm、Re(650)=283.7nmと逆波長分散になっていた。また、耐熱性を試験したところ、位相差変化率は1%以下であった。また、得られたフィルムの吸水率は8%であった。
【0094】
製造例4
製造例1と同じPVA 8.8gをDMSO500mlに溶解した。ここにメシトアルデヒドを3.0g、シクロヘキサンカルボキシアルデヒドを9.0g及びp−トルエンスルホン酸・1水和物を3.1g加え、40℃で4時間攪拝した。1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、水に再沈殿を行った。ろ過して得られたポリマーをDMFに溶解し、ジエチルエーテルに再沈殿した。ろ過して乾燥したのち、白色ポリマーが得られた。1H−NMRによりメシトアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒドがアセタールの形でPVAに導入されていることが確認された。得られたポリマーを上記測定条件下で測定したところ、ビニルメシタール、ビニルシクロヘキサンカルボキサール、ビニルアルコールの各部位の比は10:39:51であり、式(XI)で示す構造の新規ポリマーが得られた。このポリマーのガラス転移温度は107℃であった。
【0095】
実施例4
製造例4で得られたポリマーをDMFに溶解し、アプリケーターを用いて製膜した。乾燥して得られたフィルムを、延伸機を用いて150℃で1.5倍延伸を行い、一軸延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差を測定したところ、Re(450)/Re(550)=0.934、Re(650)/Re(550)=1.032と逆波長分散になっていた。
【0096】
比較例1
製造例1においてメシトアルデヒドにかえてベンズアルデヒド2.71gを用いたこと以外は、同様にして反応を行った。精製後、6.02gの白色ポリマーが得られた。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして、製膜、延伸し、その波長分散特性を調べたところ、Re(450)=140.5nm、Re(550)=140.1nm、Re(650)=139.5nmであり、Re(450)/Re(550)=1.003、Re(650)/Re(550)=0.996と逆波長分散特性を示さなかった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】偏光IR測定の結果を表すグラフ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複屈折性を示す鎖状ポリマーを配向させた単層フィルムからなり、
前記ポリマーが側鎖(a)として下記一般式(I)で表される基を有することを特徴とする位相差板。
【化1】

(一般式(I)中、2つの酸素原子は、主鎖を構成する原子にそれぞれ結合する。R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は芳香族基を示す。但し、R及びRの少なくとも何れか一方は芳香族基であり、R又は/及びRの芳香族基は、その平面構造が前記2つの酸素原子を結んだ仮想線と略直交する方向に配置している)。
【請求項2】
複屈折性を示す鎖状ポリマーを配向させた単層フィルムからなり、
前記ポリマーが側鎖(a)として下記一般式(II)又は一般式(III)で表される基のうち少なくとも何れか一方を有することを特徴とする位相差板。
【化2】

(一般式(II)中、2つの酸素原子は、主鎖を構成する原子にそれぞれ結合する。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示す(但し、R及びRは同時に水素原子ではない)。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す)。
【化3】

(一般式(III)中、2つの酸素原子は、主鎖を構成する原子にそれぞれ結合する。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Aは、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を示す。ナフチル基、アントラニル基、又はフェナントレニル基を構成する炭素原子のうち1以上の炭素原子は窒素原子で置換されていてもよい)。
【請求項3】
前記ポリマーが、主鎖の構成原子に前記側鎖(a)が結合した構造を一つの構成単位とし、該構成単位が隣合って配列された部分を有する請求項1又は2記載の位相差板。
【請求項4】
少なくとも波長450〜650nmに於ける面内位相差が、短波長側ほど小さく、長波長側ほど大きい請求項1〜3の何れかに記載の位相差板。
【請求項5】
前記側鎖(a)が側鎖全量の1〜50モル%含まれている請求項1〜4の何れかに記載の位相差板。
【請求項6】
さらに、前記ポリマーが、側鎖(a)以外に、側鎖(b)として水酸基を有する請求項1〜5の何れかに記載の位相差板。
【請求項7】
さらに、前記ポリマーが、側鎖(a)及び(b)以外に、側鎖(c)として下記一般式(IV)で表される基を有する請求項6記載の位相差板。
【化4】

(一般式(IV)中、Rは、水素原子、又は直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基を示し、アルキル基の炭素原子は隣接しない酸素原子によって置換されていてもよい)。
【請求項8】
前記側鎖(a)が側鎖全量の1〜50モル%、前記側鎖(b)が同5〜95モル%、前記側鎖(c)が同1〜90モル%含まれている請求項7記載の位相差板。
【請求項9】
複屈折性を示す鎖状ポリマーを配向させた単層フィルムからなり、
前記ポリマーが繰り返し単位(A)として下記一般式(V)又は一般式(VI)で表される構造のうち少なくとも何れかを有することを特徴とする位相差板。
【化5】

(一般式(V)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示す(但し、R及びRは同時に水素原子ではない)。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す)。
【化6】

(一般式(VI)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Aは、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を示す。ナフチル基、アントラニル基、又はフェナントレニル基を構成する炭素原子のうち1以上の炭素原子は窒素原子で置換されていてもよい)。
【請求項10】
前記ポリマーに於ける繰り返し単位(A)が、ポリビニルアルコールの水酸基を、芳香族アルデヒドでアセタール化することにより得られたものである請求項9記載の位相差板。
【請求項11】
さらに、前記ポリマーが、前記繰り返し単位(A)以外に、下記一般式(VII)で表される繰り返し単位(B)を有する請求項9又は10記載の位相差板。
【化7】

(繰り返し単位(A)及び(B)の配列は、ブロック状、ランダム状のいずれであってもよい)。
【請求項12】
さらに、前記ポリマーが、前記繰り返し単位(A)及び(B)以外に、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位(C)を有する請求項11記載の位相差板。
【化8】

(一般式(VIII)中、Rは、水素原子、又は、炭素数1〜12の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基を示し、アルキル基の炭素原子は隣接しない酸素原子によって置換されていてもよい。繰り返し単位(A)〜(C)の配列は、ブロック状、ランダム状のいずれであってもよい)。
【請求項13】
複屈折性を示す鎖状ポリマーを配向させた単層フィルムからなり、前記ポリマーが、下記一般式(IX)の構造を有することを特徴とする位相差板。
【化9】

(一般式(IX)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜80モル%、nは、1〜70モル%を示す)。
【請求項14】
複屈折性を示す鎖状ポリマーを配向させた単層フィルムからなり、
前記ポリマーが、下記一般式(X)の構造を有することを特徴とする位相差板。
【化10】

(一般式(X)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜80モル%、nは、1〜70モル%を示す)。
【請求項15】
下記一般式(V')で表される繰り返し単位を有するポリマー。
【化11】

(一般式(V')中、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す)。
【請求項16】
さらに、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位を有する請求項15記載のポリマー。
【化12】

(一般式(VIII)中、Rは、水素原子、又は、炭素数1〜12の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基を示し、アルキル基の炭素原子は隣接しない酸素原子によって置換されていてもよい。繰り返し単位の配列は、ブロック状、ランダム状のいずれであってもよい)。
【請求項17】
前記一般式(V')のR及びRが、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基又は塩素原子である請求項15又は16記載のポリマー。
【請求項18】
前記一般式(V')のR、R及びRが、何れも水素原子で、R及びRが、何れもメチル基である請求項15〜17の何れかに記載のポリマー。
【請求項19】
下記一般式(IX)で表されるポリマー。
【化13】

(一般式(IX)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜80モル%、nは、1〜70モル%を示す)。
【請求項20】
下記一般式(X)で表されるポリマー。
【化14】

(一般式(X)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜80モル%、nは、1〜70モル%を示す)。
【請求項21】
下記一般式(XI)で表されるポリマー。
【化15】

(一般式(XI)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜80モル%、nは、1〜70モル%を示す)。
【請求項22】
下記一般式(XII)で表されるポリマー。
【化16】

(一般式(XII)中、lは、5〜30モル%、mは、20〜60モル%、nは、20〜60モル%、oは、1〜55モル%を示す)。
【請求項23】
請求項1〜14の何れかに記載の位相差板を積層した光学フィルム。
【請求項24】
請求項1〜14の何れかに記載の位相差板または請求項23記載の光学フィルムを有する画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−65258(P2006−65258A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266757(P2004−266757)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】