説明

位置ずれ量算出方法およびクレーン並びに搬送台車

【課題】クレーンの吊具と搬送台車との相対的な位置関係を把握し、安定した信頼性の高い荷役作業を行うこと。
【解決手段】本体2からワイヤ14によって吊り下げられた吊具15によりコンテナ50を把持して移動させることにより荷役作業を行うクレーン1と、クレーン1との間でコンテナ50の受け渡しを行う搬送台車との相対的な位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出方法であって、搬送台車の特定の位置に設けられた目印をクレーン1の吊具15に取り付けられた撮像装置により撮像し、撮像装置により取得された撮影画像上の目印の位置と吊具15における撮像装置の取り付け位置との関係に基づいて、搬送台車と吊具15との相対的な位置ずれ量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、港湾にて、ワイヤによって吊り下げられた吊具によりコンテナを把持して移動させることにより荷役作業を行うクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、港湾等のヤードにおいては、クレーンによって船舶あるいは搬送台車へのコンテナの積み込み及び船舶あるいは搬送台車からのコンテナの積み降ろし等の荷役作業が行われている。この種のクレーンとしては、ラバータイヤによって路面上を自走するRTG(Rubber Tired Gantry Crane)等のヤードクレーンが知られている。
【0003】
このような荷役作業において、搬送台車がクレーンからコンテナを受け取る場合、または、搬送台車に積載されているコンテナをクレーンが受け取る場合には、搬送台車をクレーンの下に移動させ、積載したコンテナをクレーンに対して正確に位置決めさせる必要がある。
例えば、特開2003−252448号公報には、搬送台車にレーザ光源を設けると共に、クレーンにレーザ受光素子を設け、クレーンに搭載されたレーザ受光素子によって搬送台車に搭載されたレーザ光源からのレーザ光を受光することにより、クレーンと搬送台車との相対的な位置を把握する荷役システムが開示されている。
【特許文献1】特開2003−252448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような荷役作業は、本体からワイヤによって吊り下げられた吊具によりコンテナを把持して移動させることにより行われる。従って、コンテナを搬送台車に正確に積み込むためには、クレーンの吊具と搬送台車との相対的な位置関係を把握する必要がある。
しかしながら、上述した特許文献1に記載の荷役システムでは、吊具と搬送台車との相対的な位置関係を把握することができないため、安定した信頼性の高いコンテナ移載が行えないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、クレーンの吊具と搬送台車との相対的な位置関係を把握し、安定した信頼性の高い荷役作業を行うことのできる位置ずれ量算出方法およびクレーン並びに搬送台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、本体からワイヤによって吊り下げられた吊具によりコンテナを把持して移動させることにより荷役作業を行うクレーンと、該クレーンとの間で前記コンテナの受け渡しを行う搬送台車との相対的な位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出方法であって、前記搬送台車の特定の位置に設けられた目印を前記クレーンの吊具に取り付けられた撮像装置により撮像し、前記撮像装置により取得された撮影画像上の目印の位置と前記吊具における前記撮像装置の取り付け位置との関係に基づいて、前記搬送台車と前記吊具との相対的な位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出方法を提供する。
【0007】
このような構成によれば、搬送台車の特定の位置に設けられた目印をクレーンの吊具に取り付けられた撮像装置により撮像し、この撮像装置により取得された撮影画像上の目印の位置と、本体における撮像装置の取り付け位置との関係に基づいて搬送台車と吊具との相対的な位置ずれ量を算出するので、正確な位置ずれ量を求めることが可能となる。
【0008】
上記位置ずれ量算出方法において、前記本体に対する前記吊具の位置を検出し、前記本体に対する吊具の位置、および前記搬送台車と吊具との相対的な位置ずれ量に基づいて、前記本体に対する搬送台車の位置を算出し、前記本体に対する搬送台車の位置と、前記本体に対する吊具の位置とから前記吊具と搬送台車との相対位置ずれ量を求めることとしてもよい。
【0009】
このように、クレーン本体に対する吊具の位置を検出し、このクレーン本体に対する吊具の位置、並びに、搬送台車と吊具との相対的な位置ずれ量から、クレーン本体に対する搬送台車の位置を算出し、更には、このクレーン本体に対する搬送台車の位置、および、クレーン本体に対する吊具の位置から吊具と搬送台車との相対的な位置ずれ量を求める。これにより、クレーン本体に対する搬送台車の位置が把握された以降においては、クレーン本体と吊具との位置関係がわかれば、吊具と搬送台車との位置ずれ量を検出することが可能となる。これにより、上記撮像装置により目印を撮影することができなかった場合でも、吊具と搬送台車との位置ずれ量の検出が可能となる。
【0010】
本発明は、本体からワイヤによって吊り下げられた吊具によりコンテナを把持して移動させることにより荷役作業を行うクレーンであって、前記コンテナを積載する搬送台車の特定の位置に設けられた目印を撮像する撮像装置が前記吊具に設けられているクレーンを提供する。
【0011】
このように、搬送台車の特定の位置に設けられた目印をクレーンの吊具に設けられた撮像装置により撮影することとしたので、この撮影画像に映された目印の位置から吊具と搬送台車との位置ずれ量を正確に検出することが可能となる。
【0012】
前記クレーンが、前記撮像装置により取得された撮影画像上の目印の位置と前記吊具における前記撮像装置の取り付け位置との関係に基づいて前記搬送台車と前記吊具との相対的な位置ずれ量を算出する制御装置を備えることとしてもよい。
【0013】
前記クレーンにおいて、前記制御装置は、前記搬送台車と前記吊具との相対的な位置ずれ量に基づいて、前記吊具の巻き下げ制御を行うこととしてもよい。
【0014】
このように、搬送台車と吊具との相対的な位置ずれ量に基づいて吊具の巻き下げ制御を行うので、吊具が把持するコンテナを搬送台車の所望の位置に着床させることが可能となる。また、搬送台車に積載されているコンテナを吊具により確実に把持することが可能となる。
【0015】
本発明は、本体からワイヤによって吊り下げられた吊具によりコンテナを把持して移動させることにより荷役作業を行うクレーンとの間で、前記コンテナの受け渡しを行う搬送台車であって、コンテナを積載する目標積載領域の近傍に、前記クレーンに位置を検出させるための目印が設けられている搬送台車を提供する。
【0016】
このように、搬送台車において、コンテナを積載する目標積載領域の近傍には、クレーンに位置を検出させるための目印が設けられているので、例えば、この目印をクレーンの吊具に取り付けられた撮像装置で撮影することにより、吊具と搬送台車との位置関係を容易に把握することができる。
【0017】
上記搬送台車に設けられている前記目印を1または複数の光源から構成することとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、安定した信頼性の高い荷役作業を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明に係る位置ずれ量検出方法及びクレーン並びに搬送台車の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係るトランスファークレーン(以下、単に「クレーン」という。)の斜視図である。
図1に示すように、クレーン1は、水平方向に配設されたガータ11の両端部に柱状の脚構造体11a、11bを連結してなる門型構造の本体2を有している。
本体2を構成する脚構造体11a、11bには、それぞれその下端部に、複数の車輪12が設けられており、これら車輪12によってクレーン1が走行可能とされている。それぞれの脚構造体11a、11bの下端には、走行モータ(図示略)が設けられており、これら走行モータによって、それぞれの脚構造体11a、11bの下端部に設けられた車輪12の内の少なくとも一つが駆動されるようになっている。すなわち、走行モータによって車輪12が回転駆動されることにより、クレーン1が自走するようになっている。また、これら車輪12は、それぞれ操舵可能とされている。
【0021】
ガータ11には、ガータ11の長手方向へ沿って移動可能に支持されたトロリ13が設けられており、このトロリ13には、コンテナ50を吊り上げる吊具15がワイヤ14によって吊り下げられている。
【0022】
トロリ13には、ワイヤ14の巻取り、巻下げ(送り出し)を行う昇降装置16が設けられている。この昇降装置16は、巻取りモータ(図示略)によってワイヤ14が巻回されたドラム(図示略)を回転させることにより、ワイヤ14のドラムへの巻取り及び巻下げを行い、吊具15を昇降させるようになっている。さらに、トロリ13には、トロリモータ(図示略)によってトロリ13をガータ11の長手方向、つまり、クレーン1の走行方向に直交する方向に沿って走行させるトロリ装置(図示略)が設けられている。
【0023】
また、本体2を構成する一方の脚構造体11aには、その下端側にディーゼルエンジン式の発電機が設けられており、隣接して設けられた燃料タンク(図示略)からの燃料によって駆動するようになっている。また、対向側の脚構造体11bには、制御装置20が設けられている。
【0024】
この制御装置20は、例えば、CPU(中央演算装置)、HD(Hard Disk)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成されている。後述するズレ位置演算処理などの各種機能を実現するための一連の処理手順は、プログラムの形式でHD等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述するワイヤの巻下げ制御やトロリの横行制御、位置ずれ量の検出等を行う。
【0025】
次に、上記吊具15について詳しく説明する。
図2は、吊具をトロリの走行方向(図1における横行方向)に見たときの図、図3は、吊具の平面図である。
図2及び図3に示すように、吊具15は、コンテナ50を把持するフリッパ21を備えた外枠体22を備えている。この外枠体22は、例えば、吊具15の長手方向に沿って設けられており、コンテナ50の上部を固定して把持するような構成となっている。この外枠体22のクレーン正面から見て左側面には、所定の間隔をあけて2つのカメラ(撮像装置)23a、23bが設けられている。
ここでは、説明の便宜上、クレーン正面からみて前側に配置されているカメラを前側カメラ23a、後側に配置されているカメラを後側カメラ23bという。
【0026】
前側カメラ23a,後側カメラ23bは、吊具15の下方を撮影するようにそれぞれ取り付けられている。具体的には、当該クレーン1とコンテナ50の受け渡しを行う搬送台車30(図4、図5参照)に設けられた目印を撮影可能に取り付けられている。
【0027】
次に、上記クレーン1との間でコンテナ50の受け渡しを行う搬送台車30について説明する。搬送台車30としては、例えば、有人で走行を行うシャーシ、無人で走行を行う搬送台車(Automatic Guided Vehicle)等が一例として挙げられる。
図4及び図5は、クレーン1の吊具15と搬送台車30に設けられた目印Mf,Mrとの位置関係を説明するための図であり、図4は吊具15をクレーン1の走行方向に見たときの前側カメラ23aと前側目印Mfとの位置を示した図、図5は吊具15の上方から見たときの前側カメラ23aと前側目印Mfとの位置関係、並びに後側カメラ23bと後側目印Mrとの位置関係を示した図である。
図4及び図5に示すように、搬送台車30には、クレーン1の吊具15に取り付けられた前側カメラ23a,後側カメラ23bと一対をなす目印Mf,Mrがそれぞれ設けられている。
【0028】
具体的には、前側目印Mf、後側目印Mrは、吊具15に把持された状態のコンテナ50を搬送台車30の目標積載領域Sに正確に着床させた場合に、吊具15に設けられた前側カメラ23a,後側カメラ23bによって対応する目印Mf、Mrがそれぞれ撮影可能な場所、より具体的には、前側カメラ23aのカメラ視野の中心に前側目印Mfが、後側カメラ23bのカメラ視野の中心に後側目印Mrがくるように配置されている。
【0029】
目印Mf,Mrは、その位置が前側カメラ23a,後側カメラ23bによって認識可能なものであればよく、例えば、レーザ光源、LED等の光源や、ペイント等が採用される。
また、例えば、目印として、図6に示すように、複数のレーザ光源31を配置することとしてもよい。この場合において、雨などの水に対する耐性を高めるために、図7に示すように、硝材32等の内部に複数の光源31を配置することで目印を構成し、更に、この硝材の上方Aを傾斜させることとしてもよい。このようにすることで、水溜りによる影響を低減させることができ、水溜りによる光の拡散を低減させることができる。また、気温が低い場合に備えて、目印の近傍、または、硝材内部にヒータを設けることとしてもよい。このように、ヒータを設けることで、雪等の堆積を防止することができ、天候にかかわらずに良好な撮影画像を得ることができる。
【0030】
次に、本実施形態に係るクレーン1の制御装置20により実行される位置ずれ量検出方法について説明する。
まず、本実施形態に係る位置ずれ量検出方法では、図8に示すように、搬送台車30における目標積載位置Sに対する吊具15の横行方向における位置ずれ量Fy、Ry、及び、走行方向における位置ずれ量C=(Fx+Rx)/2(例えば、図21参照)を求める。
なお、カメラ23a,23bにおいて位置ずれ量の算出方法は同じであるので、以下の説明においては、カメラ23aにおける位置ずれ量の算出方法について説明する。
【0031】
〔横行方向における位置ずれ量の算出〕
横行方向における位置ずれ量Fyの算出は、前側カメラ23aにより取得された撮影画像上における前側目印MfのY座標yfと(図9参照)、吊具15における前側カメラ23aの取り付け位置の関係とから求められる。具体的には、位置ずれ量Fyは、以下の(1)式及び(2)式により求められる。
【0032】
【数1】

【0033】
上記(1)式において、図10に示すように、Fy´は、吊具15の左側面の延長線と搬送台車の積載面との交点Oyから前側目印Mfまでの距離、yfは撮影画像における前側目印Mfのy軸座標、Nyは撮影画像のy軸の全画素数(図9参照)、θyは前側カメラ23aの視野角、φyは前側カメラ23aの取り付け角度、hは吊具15の下面から前側カメラ23aの取り付け位置までの鉛直方向の距離、dは吊具15の側面から前側カメラ23aの取り付け位置までの水平方向の距離、Hは搬送台車のコンテナ積載面から吊具15の下面までの鉛直方向の距離である。
また、上記(2)式において、Cyは、上記交点Oyから前側カメラ23aの中心線と搬送台車の積載面との交点までの距離であり、位置ずれ量Fyは前側カメラ23aの中心線と搬送台車の積載面との交点から前側目印Mfまでの距離である。
【0034】
〔走行方向における位置ずれ量の算出〕
走行方向における位置ずれ量Fxの算出は、前側カメラ23aにより取得された撮影画像上における前側目印MfのX座標xfと、吊具15における前側カメラ23aの取り付け位置の関係とから求められる。具体的には、走行方向における位置ずれ量Fxは、以下の(3)式及び(4)式により求められる。
【0035】
【数2】

【0036】
上記(3)式において、図11に示すように、Fx´は、前側カメラ23aの中心を通り、鉛直方向に伸びる延長線と搬送台車の積載面との交点Oxから前側目印Mfまでの距離、xfは撮影画像における前側目印Mfのx軸座標、Nxは撮影画像のx軸の全画素数(図9参照)、θxは前側カメラ23aの視野角、φxは前側カメラ23aの取り付け角度、hは吊具15の下面から前側カメラ23aの取り付け位置までの鉛直方向の距離(図10参照)、Hは搬送台車のコンテナ積載面から吊具15の下面までの鉛直方向の距離である(図10参照)。
また、上記(4)において、Cxは、上記交点Oxから前側カメラ23aの中心線と搬送台車の積載面との交点までの距離であり、位置ずれ量Fxは前側カメラ23aの中心線と搬送台車の積載面との交点から前側目印Mfまでの距離である。
【0037】
そして、同様の方法により、カメラ23bにおいても横行方向の位置ずれ量Ry、走行方向の位置ずれ量Rxが求められる。
そして、制御装置20は、前側カメラ23a,後側カメラ23bによって取得された撮影画像に基づいて算出した走行方向の位置ずれ量を平均化することにより、吊具15の走行方向における位置ずれ量C=(Fx+Rx)/2を算出する。
【0038】
このように、搬送台車の特定の位置に設けられた前側目印Mf,後側目印Mrをクレーン1の吊具15に取り付けられた前側カメラ23a,後側カメラ23bによりそれぞれ撮像し、これらの前側カメラ23a,後側カメラ23bにより取得された撮影画像上の目印Mf,Mrの位置と、クレーン1の本体2における前側カメラ23a,後側カメラ23bの取り付け位置との関係に基づいて搬送台車30と吊具15との相対的な位置ずれ量を算出するので、正確な位置ずれ量を求めることが可能となる。
【0039】
次に、上述した位置ずれ量算出方法をクレーン1におけるコンテナ50の着床制御に適用する場合について説明する。ここでは、クレーン1において、吊具15により把持されているコンテナ50を搬送台車に積載させる場合について説明する。
まず、図1に示した制御装置20は、トロリ13を横行させることにより、吊具15を搬送台車の着床目標領域Sの略上方まで移動させると、トロリ13の横行を停止する。続いて、制御装置20は、ワイヤ14の巻下げを開始する。例えば、制御装置20は、上述した昇降装置が備える巻取りモータを駆動させることにより、ドラムに巻取られているワイヤ14を送出させる。これにより、ワイヤ14が巻下げられ、ワイヤ14に吊り下げられている吊具15、つまりコンテナ50が除々に下降することとなる。そして、吊具15に設けられた前側カメラ23a,後側カメラ23bによって搬送台車に設けられた前側目印Mf,後側目印Mrをそれぞれ撮像可能な位置までワイヤ14が巻き下げられると、制御装置20は、着床制御を開始する。
【0040】
着床制御では、まず、校正制御が実行される(図12のステップSA1)。
この校正制御は、クレーン1の正面からみて右側に位置する脚構造体12bから搬送台車までの水平方向の距離であるオフセット量を求める処理である(図14参照)。
まず、校正制御では、吊具15に取り付けられた前側カメラ23aにより吊具下方の画像が取得され、この撮影画像が制御装置20に送信される。
制御装置20は、前側カメラ23aにより取得された撮影画像から前側目印Mfの座標(xf,yf)(図9参照)を検出する(図13のステップSB1)。この結果、前側目印Mfの座標(xf,yf)が検出できた場合には(図13のステップSB2において「YES」)、続いて、前側カメラ23aにより取得された撮影画像から横行方向における位置ずれ量Fyを算出する(図13のステップSB3)。この位置ずれ量Fyについての算出方法は、上述の通りである。
続いて、制御装置20は、横行方向における位置ずれ量Fyを用いて、前側オフセット量Hfの算出処理を行う(図13のステップSB4)。
前側オフセット量Hfは、以下の(5)式を用いて演算される。
Hf=T+Sf−Fy (5)
【0041】
ここで、図14に示すように、Tはクレーン1の右側の脚構造体12bとトロリ13との間の水平方向の距離、Sfはトロリ13の中心から吊具15の中心までの水平方向の距離である。なお、上記トロリ13の中心から吊具15の中心までの水平方向の距離は、例えば、トロリ13及び吊具15に一般的に設けられている振れ検出装置等により検出することが可能である。
【0042】
このようにして、横行方向における位置ずれ量Fyを用いてクレーン1の脚構造体12bと搬送台車との間の距離であるオフセット量Hfを求めると、続いて、後側校正処理が終了しているか、換言すると、オフセット量Hrの算出処理が終了しているか否かを判定する(図13のステップSB5)。この結果、後側オフセット量Hrの算出処理が終了していなかった場合には(図13のステップSB5において「NO」)、後側カメラ23bにより取得された撮影画像から後側目印Mrの座標(xr,yr)を検出する(図13のステップSB6)。この結果、後側目印Mrの座標(xr,yr)の検出ができた場合には(図13のステップSB7において「YES」)、続いて、後側カメラ23bにより取得された撮影画像から横行方向における位置ずれ量Ryを算出する(図13のステップSB8)。この位置ずれ量Ryについての算出方法も上述した通りである。
続いて、制御装置20は、横行方向における位置ずれ量Ryを用いて、後側オフセット量Hrの算出処理を行う(図13のステップSB9)。ここで、後側オフセット量Hrについても上述した前側オフセット量と同様、以下の(6)式により算出される。
Hr=T+Sr−Ry (6)
【0043】
このようにして、後側オフセット量Hrが算出されると、前側校正処理が終了しているか否かを判定し(図13のステップSB10)、終了していれば、当該校正処理を終了する。
また、上述した図13のステップSB2において、前側目印Mfの座標(xf,yf)が検出できなかった場合には、トロリ13を横行させることにより、前側カメラ23aと搬送台車との水平方向における相対距離を変化させ(図13のステップSB11)、前側カメラ23aにより前側目印Mfが撮影されるようにした後、後側校正処理が終了しているかを判定する(図13のステップSB12)。この結果、後側校正処理が終了していなければ、後側校正処理に移行する(図13のステップSB6)。一方、ステップSB12において、後側校正処理が終了していれば、ステップSB1に戻り、前側目印Mfの座標検出を再度行う。
また、同様に、上述した図13のステップSB7において、後側目印Mrの座標(xr,yr)が検出できなかった場合には、トロリ13を横行させることにより、後側カメラ23bと搬送台車との水平方向における相対距離を変化させ(図13のステップSB13)、前側カメラ23bにより前側目印Mrが撮影されるようにした後、前側校正処理が終了しているかを判定する(図13のステップSB14)。この結果、前側校正処理が終了していなければ、前側校正処理に移行する(図13のステップSB1)。一方、ステップSB14において、前側校正処理が終了していれば、ステップSB6に戻り、後側目印Mrの座標検出を再度行う。
【0044】
このように、校正処理においては、前側カメラ23a,後側カメラ23bによりそれぞれ対応する目印が撮影されるまでトロリ13の横行方向における調整が行われ、各カメラ23a、23bにより目印が撮影されたときの撮影画像を用いて、横行方向における位置ずれ量Fy、Ry及び前側オフセット量Hf,後側オフセット量Hrがそれぞれ算出されることとなる。
【0045】
次に、上述した校正処理が実行されることにより、前側オフセット量Hf、後側オフセット量Hrが検出されると、制御装置20は、巻き下げ速度制御を実行する(図12のステップSA2)。
巻き下げ速度制御においては、図15に示すように、前側カメラ23aにより下方の様子が撮影され、このときの撮影画像が制御装置20に入力される。制御装置20は、この前側カメラ23aにより取得された撮影画像上において前側目印Mfが検出できるか否かを判定する(図15のステップSC1)。この結果、前側目印Mfが検出できなかった場合には(ステップSC1において「NO」)、ワイヤ14の巻き下げを停止し(ステップSC7)、当該巻き下げ速度制御を終了する。
【0046】
一方、上記前側目印Mfの検出ができた場合には(ステップSC1において「YES」)、横行方向における位置ずれ量Fyを算出する。続いて、後側カメラ23bにより下方の様子が撮影され、このときの撮影画像が制御装置20に入力される。制御装置20は、この後側カメラ23bにより取得された撮影画像上において後側目印Mrが検出できるか否かを判定する(ステップSC3)。この結果、後側目印Mrが検出できなかった場合には(ステップSC3において「NO」)、ワイヤ14の巻き下げを停止し(ステップSC7)、当該巻き下げ速度制御を終了する。一方、上記後側目印Mrの検出ができた場合には(ステップSC3において「YES」)、この撮影画像を用いて横行方向における後側位置ずれ量Ryを算出し、更に、走行方向における前側位置ずれ量Fxと後側位置ずれ量Rxについても算出し、走行方向における吊具15の位置ずれ量Cを求める(ステップSC4)。
【0047】
続いて、制御装置20は、横行方向における位置ずれ量Fy,Ryならびに吊具15の走行方向における位置ずれ量Cが予め設定されている許容範囲内であるか否かを判定する(ステップSC5)。この結果、いずれかの位置ずれ量が許容範囲外であった場合には(ステップSC5において「NO」)、ワイヤ14の巻き下げを停止し(ステップSC7)、当該ワイヤの巻き下げ速度制御を終了する。また、ステップSC5において、いずれの位置ずれ量も許容範囲内であった場合には、着床巻き下げ速度指令を出力し(ステップSC6)、当該処理を終了する。
【0048】
次に、制御装置20は、吊具位置制御を実行する(図12のステップSA3)。
吊具位置制御においては、上述した校正制御において算出した前側オフセット量Hfおよび後側オフセット量Hrを用いて、前側吊具位置Bf(=Fy)および後側吊具位置Br(=Ry)をそれぞれ算出する(図16のステップSD1,SD2)。
前側吊荷位置Bfは、以下の(7)式により、後側吊荷位置Brは、以下の(8)式によりそれぞれ算出される。
Bf=T+Sf−Hf=Fy (7)
Br=T+Sr−Hr=Ry (8)
【0049】
このように、上述した校正処理(図12のステップSA1)によって、前側オフセット量Hfおよび後側オフセット量Hrがそれぞれ算出されることにより、クレーン1の脚構造体12bに対する搬送台車30の位置を特定することができるので、それ以降の位置ずれ量の算出については、図14に示されるように、脚構造体12bからトロリ13までの距離Tと吊具15の振れ変位Sfが検出できれば、吊具15と搬送台車における目標着床領域Sとの位置ずれ量Fy,Ryを上記(7)、(8)式を用いて容易に算出することができる。
これにより、例えば、吊具15の振れ幅Sfが大きくて、前側カメラ23a,後側カメラ23bにより前側目印Mf、後側目印Mrが撮像されないような状況下であっても、横行方向における位置ずれ量Bf(=Fy),Br(=Ry)を容易に算出することが可能となる。
【0050】
このようにして、位置ずれ量Bf(=Fy),Br(=Ry)が求められると、続いて、上述した横行方向における位置ずれ量Bf、Brに基づいて、横行方向におけるトロリ13の位置制御を行う。
具体的には、位置ずれ量Bf,Brの平均値(Bf+Br)/2が予め設定されている所定の値となる位置、つまり、吊具により把持されているコンテナ50が搬送台車の目標着床領域Sの真上となる位置にトロリ13を横行させるとともに、このときの速度変化がゼロとなるように、トロリを横行させる(図16のステップSD3)。これにより、横行方向における位置ずれを解消させるとともに、吊具15の振れを抑制させる。
【0051】
続いて、制御装置20は、スキュー成分、つまり、吊具の旋回方向における位置ずれ量がゼロとなるように、旋回方向における吊具15の位置を制御する(図16のステップSD4)。これは、例えば、トロリ13に設けられている図示しないスキューシリンダ等を制御することにより行われる。また、このときの旋回方向における速度変化がゼロとなるように、スキューシリンダを制御することで、スキュー振れを抑制させる。
このように、位置ずれ量をゼロとするようにトロリ13の横行制御と吊具15のスキュー制御を行うので、コンテナ50を搬送台車30の目標着床領域Sに正確に着床させることが可能となる。
【0052】
ここで、上記吊具位置制御における制御ブロックを図17および図18に示す。
図17は、横行方向における位置ずれ量Bf(=Fy),Br(=Ry)をゼロにするための制御ブロックの一例を示した図、図18はスキュー成分をゼロにするための制御ブロックの一例を示した図である。また、図19に、トロリ13の位置制御およびスキューシリンダの制御を行ったときの位置ずれ量Bf,Brの変化の一例を示す。
【0053】
次に、制御装置20は、走行方向位置合わせ制御を実行する(図12のステップSA4)。
走行方向位置合わせ制御においては、上述と同様の方法により、走行方向における位置ずれ量C=(Fx+Rx)/2を求め(図20のステップSE1)、この走行方向における位置ずれ量Cから走行方向におけるトロリ13に対する吊具15の振れ変位Sxを減算することにより、基本ずれ量C´を求める。換言すると、基本ずれ量C´は、図21に示すように、走行方向に対する位置ずれ量Cから吊具15の振れ変位による位置ずれ量Sxを除外した値に相当する。そして、制御装置20は、この基本ずれ量C´=C−Sxが予め設定されている所定の許容範囲内であるか否かを判定する(図20のステップSE2)。
【0054】
この結果、基本ズレ量C´が許容範囲内であった場合には、当該走行方向位置合わせを終了する。一方、基本ずれ量C´が許容範囲を超えていた場合には、搬送台車に対して移動指令を出力する。具体的には、基本ずれ量C´が最大許容量Cmaxを超えていた場合には、搬送台車に対して基本ずれ量C´分、後側に移動する旨の指令を出す。一方、基本ずれ量C´が最小許容量Cmin未満であった場合には、搬送台車に対して位置ずれ量C´分、前側に移動する旨の指令を出す。
なお、上記搬送台車への移動指令は、クレーン1の制御装置20から無線により直接的に搬送台車に送信されてもよく、また、搬送台車を一元管理している管理棟に対して移動指令を送信し、この管理棟から搬送台車に対して指令が送信されることとしてもよい。
【0055】
このようにして、走行方向位置合わせ制御が終了すると、制御装置20は、コンテナ50が搬送台車の目標着床領域Sに着床したか否かを判定する(図12のステップSA5)。この結果、着床していなければ、図12のステップSA1に戻り、上述した巻き下げ速度制御以降の処理を再度行う。これにより、コンテナ50が着床するまで、上述した巻き下げ速度制御、吊具位置制御、並びに吊具位置制御が繰り返し実行されることとなる。
【0056】
なお、本実施形態においては、上述した着床制御をクレーン1に搭載された制御装置20によって実行することとしたが、これに代えて、クレーン1に搭載されている各カメラによって取得された撮影画像を無線により管理棟へ送信し、管理棟において上述した着床制御を行い、クレーン1の制御指令を管理棟から送信することとしてもよい。
【0057】
また、本実施形態においては、吊具15にカメラを2台設けた場合について例示したが、カメラは1台以上設置されていればよく、その設置台数は限定されない。
また、上記巻き下げ速度制御(図12のステップSA2)においては、図22に示すように、校正制御を行っている場合には、ワイヤの巻き下げ速度を早くしてコンテナ50の降下を迅速に行い、一方、校正速度が行われた後においては、ワイヤの巻き下げ速度を低下させることにより、位置ずれ量に基づいてトロリ13の位置ずれや搬送台車の位置を調整しながらコンテナ50を目標積載領域Sに正確に着床させるようにしてもよい。
【0058】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係るトランスファークレーンの斜視図である。
【図2】吊具をトロリの走行方向(図1における横行方向)に見たときの図である。
【図3】吊具の平面図である。
【図4】クレーンの吊具と搬送台車に設けられた目印との位置関係を説明するための図であり、吊具をクレーンの走行方向に見たときの前側カメラと前側目印との位置を示した図である。
【図5】クレーンの吊具と搬送台車に設けられた目印との位置関係を説明するための図であり、吊具の上方から見たときの前側カメラと前側目印との位置関係、並びに後側カメラと後側目印との位置関係を示した図である。
【図6】目印の一構成例を示した図である。
【図7】図6に示した目印の他の構成例を示した図である。
【図8】横行方向における位置ずれ量を示した図である。
【図9】前側カメラにより取得された撮影画像について説明するための図である。
【図10】横行方向における位置ずれ量について説明するための図である。
【図11】走行方向における位置ずれ量について説明するための図である。
【図12】本発明の一実施形態を適用したコンテナの着床制御の処理手順を示したフローチャートである。
【図13】校正制御の処理手順を示したフローチャートである。
【図14】校正処理について算出されるオフセット量について説明するための図である。
【図15】巻下速度制御の処理手順を示したフローチャートである。
【図16】吊荷位置制御の処理手順を示したフロチャートである。
【図17】横行方向における位置ずれ量をゼロにするための制御ブロックの一例を示した図である。
【図18】スキュー成分をゼロにするための制御ブロックの一例を示した図である。
【図19】トロリの位置制御およびスキューシリンダの制御を行ったときの位置ずれ量の変化の一例を示した図である。
【図20】走行方向位置あわせ制御の処理手順を示したフローチャートである。
【図21】基本ずれ量について説明するための図である。
【図22】巻き下げ速度の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0060】
1 クレーン
2 本体
11 ガータ
13 トロリ
15 吊具
20 制御装置
23a 前側カメラ
23b 後側カメラ
30 搬送台車
31 光源
50 コンテナ
Mf 前側目印
Mr 後側目印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体からワイヤによって吊り下げられた吊具によりコンテナを把持して移動させることにより荷役作業を行うクレーンと、該クレーンとの間で前記コンテナの受け渡しを行う搬送台車との相対的な位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出方法であって、
前記搬送台車の特定の位置に設けられた目印を前記クレーンの吊具に取り付けられた撮像装置により撮像し、前記撮像装置により取得された撮影画像上の目印の位置と前記吊具における前記撮像装置の取り付け位置との関係に基づいて、前記搬送台車と前記吊具との相対的な位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出方法。
【請求項2】
前記本体に対する前記吊具の位置を検出し、
前記本体に対する吊具の位置、および前記搬送台車と吊具との相対的な位置ずれ量に基づいて、前記本体に対する搬送台車の位置を算出し、
前記本体に対する搬送台車の位置と、前記本体に対する吊具の位置とから前記吊具と搬送台車との相対位置ずれ量を求める請求項1に記載の位置ずれ量算出方法。
【請求項3】
本体からワイヤによって吊り下げられた吊具によりコンテナを把持して移動させることにより荷役作業を行うクレーンであって、
前記コンテナを積載する搬送台車の特定の位置に設けられた目印を撮像する撮像装置が前記吊具に設けられているクレーン。
【請求項4】
前記撮像装置により取得された撮影画像上の目印の位置と前記吊具における前記撮像装置の取り付け位置との関係に基づいて前記搬送台車と前記吊具との相対的な位置ずれ量を算出する制御装置を備える請求項3に記載のクレーン。
【請求項5】
前記制御装置は、前記搬送台車と前記吊具との相対的な位置ずれ量に基づいて、前記吊具の巻き下げ制御を行う請求項4に記載のクレーン。
【請求項6】
本体からワイヤによって吊り下げられた吊具によりコンテナを把持して移動させることにより荷役作業を行うクレーンとの間で、前記コンテナの受け渡しを行う搬送台車であって、
コンテナを積載する目標積載領域の近傍に、前記クレーンに位置を検出させるための目印が設けられている搬送台車。
【請求項7】
前記目印は、1または複数の光源からなる請求項6に記載の搬送台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−168952(P2008−168952A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−788(P2007−788)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】