説明

位置制御システム

【課題】 油圧アクチュエータにより動作制御される制御対象の位置制御を行う位置制御システムにおいて、ポペット型電磁弁を用いて油の流量制御を行い、弁からの油漏れを抑制すると共に制御対象の位置制御を精度よく行うことのできる位置制御システムを提供する。
【解決手段】油圧アクチュエータ101により動作制御される制御対象105の位置制御を行う位置制御システム100であって、前記油圧アクチュエータ101の駆動制御を行う電磁弁1〜4と、前記電磁弁1〜4を介して前記油圧アクチュエータ101に油を供給するポンプ8と、前記電磁弁1〜4の開閉動作をパルス幅変調制御により行う弁作動手段12、13と、前記制御対象105の位置を検出する位置検出手段6と、前記電磁弁1〜4に供給される油の温度を検出する油温度検出手段10と、前記位置検出手段6が検出した位置及び前記油温度検出手段10が検出した油温度に基づき前記弁作動手段12、13が制御するパルス幅のデューティ比を決定する制御計算手段20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータにより動作する制御対象(例えば、ロボットアーム)の位置制御を行う位置制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
位置制御システムは、産業用機械、例えば産業用ロボット等において、広く用いられている。例えば産業用ロボットアームは、アームを回転駆動する油圧シリンダによって位置制御がなされる。この油圧シリンダの伸縮量は、油の流れの方向を制御する弁によって制御される。
一般に、この弁として、ポペット型電磁弁が用いられ、このような電磁弁を用いた油圧システムについては特許文献1にも開示されている。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に示されるポペット型電磁弁のみでは、油の流量の高精度な制御は困難であるため、流量制御には油圧サーボ制御弁や油圧比例制御弁等の流量制御弁が用いられることが多い。
これら流量制御弁としては、一般にスプール弁と呼ばれる弁が用いられる。このスプール弁とは、円筒形すべり面に内接し、軸方向に移動して流路の開閉を行う、くし形の構成部品を用いた弁である。
【0004】
前記スプール弁は、油流量の調整を容易に行うことができるという利点を有する一方で、構造的に密閉性が悪く、弁閉状態においても油漏れが発生し易いという欠点がある。そのため、アクチュエータに荷重が加えられた状態で閉状態とし、長時間放置すると、アクチュエータが時間経過に従い荷重方向へ動くという現象が生じていた。
【特許文献1】特開2003−106302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したように、スプール弁を用いた流量制御弁にあっては、流量制御によりアクチュエータの駆動に細かな制御が可能となる一方、アクチュエータにおいて同じ状態を維持できない、即ち制御対象が荷重により動いてしまうという技術的課題があった。
そこで、本願発明者らは、油漏れがなくアクチュエータの状態を維持できるポペット型電磁弁を用い、油の流量の高精度な制御について鋭意検討を行なった。即ち、前記したポペット型電磁弁は、全開か全閉しかない、所謂オンオフ型の弁であるため、一周期におけるオンとオフ(弁の開閉)の比率、即ちデューティ比を変化させるPWM(パルス幅変調)制御を行うことにより、油の流量を高精度に行うことを検討した。
【0006】
図6に、前記PWM制御による流量制御の原理を説明するための模式図を示す。図6(a)に示すように、周期Tにおいて、ポペット型電磁弁が常に開状態(開弁率100%:デューティ比1)の場合、ポペット型電磁弁から供給される油流量は100%となる。
そこで、デューティ比0.75、即ち、周期Tのうち開弁率75%(閉弁率25%)とし、周期Tで弁開閉動作を繰り返し行えば、平均される油流量は、原理的には図6(a)の100%に対し、図6(b)に示すように75%となるはずである。
さらにデューティ比0.25の場合には、原理的には図6(c)に示すように、ポペット型電磁弁から供給される平均油流量は図6(a)の25%となるはずである。
【0007】
しかしながら、油は、粘性があり、流動特性が大きく変化する性質を有する。このため、実際には図6に示したような原理通りにはならず、例えば図7に示すグラフのようなデューティ比と流量との関係になる。
このグラフによれば、油温Taにおいてデューティ比が0から0.3付近までは油は流れず、デューティ比が0.4以上になると急に飽和状態で油が流れるという特性が示される。また、温度に応じて油の粘度が変化するため、油温によりデューティ比と流量の関係は変化する。
即ち、このような特性では、油圧シリンダに供給すべき所望の油流量から容易にデューティ比を求めることができず、PWM制御による高精度な流量制御が困難であるという技術的課題があった。
【0008】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、油圧アクチュエータにより動作制御される制御対象の位置制御を行う位置制御システムにおいて、ポペット型電磁弁を用いて油の流量制御を行い、弁からの油漏れを抑制すると共に制御対象の位置制御を精度よく行うことのできる位置制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる位置制御システムは、油圧アクチュエータにより動作制御される制御対象の位置制御を行う位置制御システムであって、前記油圧アクチュエータの駆動制御を行う弁手段と、前記弁手段を介して前記油圧アクチュエータに油を供給するポンプと、前記弁手段の開閉動作をパルス幅変調制御により行う弁作動手段と、前記制御対象の位置を検出する位置検出手段と、前記弁手段に供給される油の温度を検出する油温度検出手段と、前記位置検出手段が検出した位置及び前記油温度検出手段が検出した油温度に基づき前記弁作動手段が制御するパルス幅のデューティ比を決定する制御計算手段とを備えたことに特徴を有する。
このように、制御対象の現在位置だけではなく、油の温度に基づきパルス幅変調制御のデューティ比を決定するように構成することで、油温度により変化する油流量の変化特性を考慮した油流量制御を行うことができる。
【0010】
また、前記油圧アクチュエータは、ピストンを移動させて制御対象を一方向または他方向に動作させると共に、前記ピストンの移動に伴い容量が変化する第一及び第二のシリンダ室を有する油圧シリンダであって、前記弁手段は、第一乃至第四の電磁弁を備え、前記弁作動手段は、前記制御対象を一方向に移動させる際、前記第一の電磁弁により前記第一のシリンダ室に油を供給し、且つ前記第二の電磁弁により前記第二のシリンダ室から油を排出し、前記制御対象を他方向に移動させる際、前記第三の電磁弁により前記第二のシリンダ室に油を供給し、且つ前記第四の電磁弁により前記第一のシリンダ室から油を排出することが望ましい。
このように、制御対象の動作制御方向ごとに、油圧シリンダに対し油の供給を行う電磁弁、排出を行う電磁弁をそれぞれ設けることにより、油の供給及び排出を遅延なく潤滑に行うことができ、流量制御を精度よく行うことができる。
【0011】
また、前記制御計算手段には、前記制御対象の目標動作位置を示す位置指令値が入力され、制御計算手段は、前記位置指令値と前記位置検出手段が検出した位置情報との差分に基づき前記油圧アクチュエータに供給する油流量を示す油流量指令値を算出することが望ましい。
また、前記制御計算手段は、記憶手段を備え、前記記憶手段に、前記電磁弁における油温度及び油流量をパラメータとし、前記弁作動手段が制御するパルス幅のデューティ比を記録した制御テーブルを記憶していることが望ましい。
【0012】
さらに、前記制御計算手段は、前記油流量指令値と、前記油温度検出手段が検出した油温度に基づき前記制御テーブルを参照し、前記弁作動手段が制御するパルス幅のデューティ比を決定することが望ましい。
このように制御計算手段において、制御対象の現在位置と、入力された動作位置指令値とから油圧アクチュエータに供給すべき油流量を求め、その油流量と油温度とをパラメータとして、制御テーブルを参照するように構成すれば、容易に所望のデューティ比を得ることができる。
【0013】
また、前記弁手段は、ポペット型オンオフ電磁弁であることが望ましい。
このように、油圧アクチュエータの制御に、ポペット型オンオフ電磁弁のみを用いれば、弁が閉状態で油漏れの虞がなく、すべての電磁弁を閉状態にした際(制御オフ時)に、油経路に残留する油により油圧アクチュエータの現状態を長時間維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油圧アクチュエータにより動作制御される制御対象の位置制御を行う位置制御システムにおいて、ポペット型オンオフ電磁弁を用いて油の流量制御を行い、弁からの油漏れを抑制すると共に制御対象の位置制御を精度よく行うことのできる位置制御システムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明に係る一実施の形態について、図1乃至図5に基づいて説明する。図1は、本発明に係る位置制御システムの全体構成を示す模式図である。図2は、図1の位置制御システムで用いるPWM制御におけるデューティ比の範囲を示すグラフである。また、図3は、図7に示した油流量特性を複数の温度幅毎に測定した結果を示すグラフ、図4は、図1の位置制御システムが有する制御テーブルである。また、図5は図1の位置制御システムが備える制御計算手段の動作を示すフロー図である。
【0016】
図1に示す位置制御システム100は、例えば産業用ロボット等において、アクチュエータである油圧シリンダを駆動制御することにより、アーム等の制御対象の動作位置を制御する装置として好適に用いられる。尚、図1においては、この位置制御システム100によりアーム部材105の回転動作位置を微細に制御する場合を示している。
【0017】
図示するように、位置制御システム100は、油圧アクチュエータである油圧シリンダ101に対し油の供給及び排出(回収)を制御する弁手段として、4つのポペット型オンオフ電磁弁(以下、電磁弁と呼ぶ)1、2、3、4を備える。このうち、電磁弁1、2(第一、第三の電磁弁)が油圧シリンダ101に対し油の供給を制御する供給弁として機能し、電磁弁3、4(第二、第四の電磁弁)が油圧シリンダ101に対し油の排出(回収)を制御する回収弁として機能する。
【0018】
また、アーム部材105の回転軸105a付近には、リンク機構により連結部材103の一端が接続され、この連結部材103の他端は前記油圧シリンダ101のピストン102(ロッド104)に接続されている。すなわち、ピストン102の上下運動に伴いアーム部材105が回転軸105aを中心に回転するように構成されている。
尚、回転軸105aには、位置検出手段6としての回転ポテンショメータが設けられており、その位置(回転角度)が検知できるように構成されている。即ち、位置検出手段6によりアーム部材105の現在位置(回転動作位置)が検出されるように構成されている。
【0019】
さらに、位置制御システム100は、油を収容するタンク7と、タンク7から油を吸い上げ、電磁弁1、2を介して油圧シリンダ101に供給するポンプ8とを備える。また、前記ポンプ8と電磁弁1、2とを接続する油供給パイプ9を備え、この油供給パイプ9上には電磁弁1、2に供給される油の温度を検出する油温度検出手段10が設けられている。さらに、前記電磁弁3、4とタンク7とを接続する油回収パイプ11を備え、前記油圧シリンダ101内の油は前記油回収パイプ11を介してタンク7に回収されるようになされている。
【0020】
また、位置制御システム100は、前記電磁弁1,4にオン/オフ信号を出力し、その作動を同時に制御する弁作動手段12と、前記電磁弁2、3にオン/オフ信号を出力し、その作動を同時に制御する弁作動手段13とを備える。また、前記弁作動手段12、13の動作制御を行う制御計算手段20を備えている。この制御計算手段20には、前記位置検出手段6、油温度検出手段10が電気的信号線により接続され、それぞれが検出した信号を受け取るように構成されている。
【0021】
続いて、前記電磁弁1〜4と油圧シリンダ101との間の構成について更に説明する。
油圧シリンダ101は、図示するように複動型片ロッドのシリンダであって、シリンダ内はピストン102を境にヘッド側シリンダ101a(第一のシリンダ室)とロッド側シリンダ101b(第二のシリンダ室)に分けられる。また、ヘッド側シリンダ101a及びロッド側シリンダ101bにはそれぞれ入出力ポートが形成されている。
【0022】
ヘッド側シリンダ101aの入出力ポートには、電磁弁1の出力ポートと電磁弁3の入力ポートがパイプ14により接続されている。尚、このパイプ14には、電磁弁3から電磁弁1へ油が流れないように逆止弁15が設けられ、また、流量を安定化するための絞り弁16が設けられている。
【0023】
また、ロッド側シリンダ101bの入出力ポートには、電磁弁2の出力ポートと電磁弁4の入力ポートがパイプ17により接続されている。尚、このパイプ17には、電磁弁4から電磁弁2へ油が流れないように逆止弁18が設けられ、また、流量を安定化するための絞り弁19が設けられている。
尚、電磁弁3及び電磁弁4の出力ポート付近における油回収パイプ11上にも、それぞれ絞り弁23、24が設けられ、流量が安定化制御されている。
【0024】
このような構成において、ロッド104をシリンダに対し伸長する際には、弁作動手段12のPWM制御により電磁弁1、4が所定のデューティ比で開き、弁作動手段13の命令により電磁弁2、3が閉じる。
ポンプ8により昇圧した油は油供給パイプ9を流れ、電磁弁1、パイプ14を通ってヘッド側シリンダ101aに供給される。また、ロッド側シリンダ101b内の油は、パイプ17、電磁弁4を通って油回収パイプ11からタンク7に回収される。そして、ピストン102が押し下げられることによりロッド104はシリンダに対し伸長する。
【0025】
一方、ロッド104をシリンダに対し収縮する際には、弁作動手段12の命令により電磁弁1、4が閉じ、弁作動手段13のPWM制御により電磁弁2、3が所定のデューティ比で開く。
ポンプ8により昇圧した油は油供給パイプ9を流れ、電磁弁2、パイプ17を通ってロッド側シリンダ101bに供給される。また、ヘッド側シリンダ101a内の油はパイプ14、電磁弁3を通って油回収パイプ11からタンク7に回収される。そして、ピストン102が押し上げられることによりロッド104はシリンダに対し収縮する。
【0026】
続いて、前記弁作動手段12、13の動作制御を行う制御計算手段20について説明する。前記したように、制御計算手段20には、位置検出手段6と油温度を検出する油温度検出手段10とが接続されている。さらに、制御計算手段20には、操作者からのアーム部材105に対する位置指令値Psが入力されるようになされている。
【0027】
また、制御計算手段20は、記憶手段21を備え、この記憶手段21に制御テーブル22を記憶している。そして、制御計算手段20では、位置検出手段6が検出したアーム部材105の現在位置情報、油温度検出手段10が検出した油温度情報、さらに位置指令値Psに基づき、前記制御テーブル22を参照し、弁作動手段12、13の作動タイミングをそれぞれ決定するようになされている。
【0028】
前記制御テーブル22は、弁作動手段12、13が行うPWM制御のデューティ比を容易に求めるためのテーブル(一覧表)である。図7に示したように、ポペット型電磁弁にあっては、油温度Taにおいて、デューティ比が0から0.3付近までは油は流れず、デューティ比が0.4以上になると急に略飽和状態で油が流れるという特性が示さる。そこで、位置制御システム100においては、図2に示されるように、油流量が変化するデューティ比0.3〜0.45の範囲においてPWM制御を行う。
【0029】
前記制御テーブル22を作成するにあたっては、ポペット型オンオフ電磁弁において、複数の油温度での油流量とデューティ比との関係が予め測定され、それに基づき作成される。
例えば、図3に示すように油温度Taのときのデータを基準とし、温度差Tdの幅で油温度Taの前後複数のデータを測定し、油流量(%:油温度Taでの最高流量を100%としたときの割合)とデューティ比との関係を求める。
そして、このグラフに基づき、図4に示すような油温度と油流量とをパラメータとしてPWM制御のデューティ比を記録した制御テーブル22を作成し、制御計算手段20の記憶手段21に記憶させる。
【0030】
さらに、制御計算手段20の動作について、図5のフローに基づき説明する。
先ず、作業者の操作によりアーム部材105に対する目標動作位置を示す位置指令値Psが入力されると(図5のステップS1)、位置検出手段6によりアーム部材105の現在位置Pfを測定する(図5のステップS2)。そして、現在位置Pfと前記指令値Psとを比較して制御演算し、ピストン102の伸縮量を求め、この伸縮量に対する油の流量指令値Qsを算出する(図5のステップS3)。
【0031】
次いで、ハンチング防止のため、前記流量指令値Qsの絶対値が不感帯設定値Qfよりも小さい場合には(図5のステップS4)、電磁弁をすべて閉状態(オフ)とし、油圧シリンダ101の現状態を維持する(図5のステップS5)。
前記ステップS4において、前記流量指令値Qsの絶対値が不感帯設定値Qfよりも大きい場合は、アーム部材105の制御方向を決定するため前記流量指令値Qsの正負を判定する(図5のステップS6)。尚、図1においては、アーム部材105先端が持ち上がる方向(一方向)を正、下がる方向(他方向)を負とする。
【0032】
流量指令値Qsが正の場合、この流量指令値Qsと油温度検出手段10が検出した油温度Tsに基づき制御テーブル22を参照し(図5のステップS7)、求められたデューティ比により弁作動手段12に電磁弁1、4のPWM制御を行わせる(図5のステップS8)。また、電磁弁2、3は閉状態とされる。これにより、シリンダ101のピストン102が押し下げられ、アーム部材105は所望の位置にまで動かされる。
【0033】
一方、流量指令値Qsが負の場合、流量指令値Qsと油温度検出手段10が検出した油温度Tsに基づき制御テーブル22を参照し(図5のステップS9)、求められたデューティ比により弁作動手段13に電磁弁2、3のPWM制御を行わせる(図5のステップS10)。また、電磁弁1、4は閉状態とされる。これにより、シリンダ101のピストン102が押し上げられ、アーム部材105は所望の位置にまで動かされる。
【0034】
ここで例えば、位置検出手段6が検出したアーム部材105の現在位置Pfおよび位置指令値Psにより弁に流すべき油流量(流量指令値Qs)が30%、油温度検出手段10が検出した油温度TsがTa+1・Tdであるならば、図4の制御テーブル22を参照し、PWM制御すべきデューティ比は0.35となる。すなわち、制御計算手段20は、そのデューティ比に基づき弁作動手段12または弁作動手段13にPWM制御させる。
【0035】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、油温度と油流量をパラメータとしてPWM制御のデューティ比を記録した制御テーブル22を記憶手段21に予め記憶し、そのテーブルを参照することによりPWM制御に用いるべきデューティ比を容易に得ることができる。
したがって、ポペット型オンオフ電磁弁における流量制御が可能となり、油圧アクチュエータである油圧シリンダ101を精度よく駆動制御することができ、制御対象であるアーム部材105の動作位置制御を正確に行うことができる。
また、油圧シリンダ101の制御に、ポペット型オンオフ電磁弁のみを用いるため、弁が閉状態で油漏れの虞がなく、すべての電磁弁を閉状態にした際(制御オフ時)に、油経路に残留する油により油圧シリンダ101の現状態を長時間維持することができる。
【0036】
また、油漏れを抑制できることから、スプール弁を使用する場合よりも、装置の油汚染を大幅に低減することができる。
また、電磁弁における油流量制御を電流量制御(アナログ制御)ではなく、PWM制御、すなわち単純なオンオフ制御(デジタル制御)により行うため、駆動回路を簡便にすることができる。
さらに油圧比例制御弁や油圧サーボ弁を用いず、流量制御を行うことができるため、安価な位置制御システムを構築することができる。
【0037】
尚、前記一実施の形態において、制御テーブル22に示した温度パラメータの数は一例であって、これに限定されるものではなく、さらに多くの温度について、予め測定によって求められたデューティ比の値を記録してもよい。
また、位置検出手段6として示した回転ポテンショメータは一例であって、これに限定されるものではなく、位置が検出できる手段であればよい。
また、制御対象が回転運動する例を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、制御対象としては油圧アクチュエータにより動作制御されるものであればよく、例えば、直動運動する制御対象であっても、本発明に係る位置制御システムを好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明にかかる位置制御システムは、油圧アクチュエータにより動作する制御対象の位置制御を行うシステムとして用いることができ、産業用ロボット等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明に係る位置制御システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1の位置制御システムで用いるPWM制御におけるデューティ比の範囲を示すグラフである。
【図3】図3は、複数の温度における油流量とPWM制御のデューティ比との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、図1の位置制御システムが有する制御テーブルである。
【図5】図5は、図1の位置制御システムが備える制御計算手段の動作を示すフロー図である。
【図6】図6は、PWM制御による流量制御の原理を説明するための模式図である。
【図7】図7は、温度Taにおける油流量とPWM制御のデューティ比との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0040】
1 ポペット型オンオフ電磁弁(弁手段、第一の電磁弁)
2 ポペット型オンオフ電磁弁(弁手段、第三の電磁弁)
3 ポペット型オンオフ電磁弁(弁手段、第二の電磁弁)
4 ポペット型オンオフ電磁弁(弁手段、第四の電磁弁)
6 位置検出手段(回転ポテンショメータ)
7 タンク
8 ポンプ
9 油供給パイプ
10 油温度検出手段
11 油回収パイプ
12 弁作動手段
13 弁作動手段
14 パイプ
15 逆止弁
16 絞り弁
17 パイプ
18 逆止弁
19 絞り弁
20 制御計算手段
21 記憶手段
22 制御テーブル
23 絞り弁
24 絞り弁
100 位置制御システム
101 油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)
105 アーム部材(制御対象)
Ps 位置指令値
Qs 流量指令値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータにより動作制御される制御対象の位置制御を行う位置制御システムであって、
前記油圧アクチュエータの駆動制御を行う弁手段と、前記弁手段を介して前記油圧アクチュエータに油を供給するポンプと、前記弁手段の開閉動作をパルス幅変調制御により行う弁作動手段と、前記制御対象の位置を検出する位置検出手段と、前記弁手段に供給される油の温度を検出する油温度検出手段と、前記位置検出手段が検出した位置及び前記油温度検出手段が検出した油温度に基づき前記弁作動手段が制御するパルス幅のデューティ比を決定する制御計算手段とを備えたことを特徴とする位置制御システム。
【請求項2】
前記油圧アクチュエータは、ピストンを移動させて制御対象を一方向または他方向に動作させると共に、前記ピストンの移動に伴い容量が変化する第一及び第二のシリンダ室を有する油圧シリンダであって、
前記弁手段は、第一乃至第四の電磁弁を備え、
前記弁作動手段は、前記制御対象を一方向に移動させる際、前記第一の電磁弁により前記第一のシリンダ室に油を供給し、且つ前記第二の電磁弁により前記第二のシリンダ室から油を排出し、
前記制御対象を他方向に移動させる際、前記第三の電磁弁により前記第二のシリンダ室に油を供給し、且つ前記第四の電磁弁により前記第一のシリンダ室から油を排出することを特徴とする請求項1に記載された位置制御システム。
【請求項3】
前記制御計算手段には、前記制御対象の目標動作位置を示す位置指令値が入力され、
制御計算手段は、前記位置指令値と前記位置検出手段が検出した位置情報との差分に基づき前記油圧アクチュエータに供給する油流量を示す油流量指令値を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された位置制御システム。
【請求項4】
前記制御計算手段は、記憶手段を備え、
前記記憶手段に、前記電磁弁における油温度及び油流量をパラメータとし、前記弁作動手段が制御するパルス幅のデューティ比を記録した制御テーブルを記憶していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された位置制御システム。
【請求項5】
前記制御計算手段は、前記油流量指令値と、前記油温度検出手段が検出した油温度に基づき前記制御テーブルを参照し、前記弁作動手段が制御するパルス幅のデューティ比を決定することを特徴とする請求項4に記載された位置制御システム。
【請求項6】
前記弁手段は、ポペット型オンオフ電磁弁であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された位置制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−40200(P2006−40200A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222895(P2004−222895)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】