説明

位置検出システム及びそれを備えた多方向入力装置

【課題】磁界発生部品Yからの外乱による影響を少なくすることができる位置検出システム、及び搭載製品の設計の自由度を向上させ、また、搭載製品の小型化を図ることができる多方向入力装置を提供すること。
【解決手段】位置検出システム1は、基板11上に実装された第1〜第3の磁気検出素子12A〜12Cと、基板11に配設され、基板11に対して移動可能な磁石13と、第1の磁気検出素子12A及び第2の磁気検出素子12Bの出力差で第1方向の出力を求め、第2の磁気検出素子12B及び第3の磁気検出素子12Cの出力差で第2方向の出力を求める制御手段と、を具備し、第1の磁気検出素子12A及び第3の磁気検出素子12Cは、磁石13を中心に対称な位置に配置され、第2の磁気検出素子12Bは、第1の磁気検出素子12A、第2の磁気検出素子12B及び第3の磁気検出素子12Cを結ぶ仮想円弧における中点位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気検出素子を用いた位置検出システム及びそれを備えた多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、位置検出システムを利用した多方向入力装置として、特許文献1に開示された構成を有するものがある。この多方向入力装置は、図6に示すように、基板101上に磁気検出素子102a〜102d(出力電圧V1〜V4)が実装されている。ここでは、基板101上に4つの磁気検出素子102a〜102dが基板101の中心に対して対称な位置に配置されている。基板101の上方には、基板101に対して360°方向にスライド可能な操作体が配設されている。この操作体は、磁石103と、スライド操作により磁石103が移動した際に、磁石103を原点位置に戻す環状コイルバネ104と、磁石103の回転を防止する回転防止機構105とを備えており、これらが一体としてスライド可能となっている。
【0003】
この多方向入力装置の位置検出システムにおいては、図6に示すように、磁石103を中心としてその周りに4つの磁気検出素子102a〜102dが上下左右対称に、4つの磁気検出素子102a〜102dを結ぶ仮想円弧において等間隔に配置されている。このような多方向入力装置は、携帯電話機の操作入力装置として用いられる。携帯電話機は、その内部に磁気検出において外乱になる磁界を発生する部品を搭載しており、携帯電話機の小型化により、それらの磁界発生部品と多方向入力装置との間の距離が小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−310670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示す多方向入力装置において、例えば、磁気検出素子102a,102d間に磁界発生部品Yが配設されたとすると、磁界発生部品Yからの外乱により磁気検出素子102a,102dに影響が及ぶ。すなわち、このような状態で位置検出を行うと、図7に示すように、出力(出力電圧差(V1−V2)、出力電圧差(V3−V4))に乱れが生じ、正確に位置検出を行うことができない。このため、磁界発生部品を多方向入力装置から離して搭載する必要があり、多方向入力装置を搭載する製品の設計の自由度が低下し、また、製品の小型化を図ることができないという問題がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、磁界発生部品Yからの外乱による影響を少なくすることができる位置検出システム、及び搭載製品の設計の自由度を向上させ、また、搭載製品の小型化を図ることができる多方向入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の位置検出システムは、基板上に実装された第1〜第3の磁気検出素子と、前記基板に配設され、前記基板に対して移動可能な磁石と、前記第1の磁気検出素子及び前記第2の磁気検出素子の出力差で第1方向の出力を求め、前記第2の磁気検出素子及び前記第3の磁気検出素子の出力差で第2方向の出力を求める制御手段と、を具備し、前記第1の磁気検出素子及び前記第3の磁気検出素子は、前記磁石を中心に対称な位置に配置され、前記第2の磁気検出素子は、前記第1の磁気検出素子、前記第2の磁気検出素子及び前記第3の磁気検出素子を結ぶ仮想円弧における中点位置に配置されることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、磁場不感領域を形成することができるので、この磁場不感領域に磁界発生部品を配置しても磁界発生部品の外乱による影響を少なくすることができる。
【0009】
本発明の位置検出システムにおいては、前記スライド用磁石は4極の円形磁石であり、90°毎に極性が変わるように構成されており、4つの磁極領域のうちの3つの磁極領域に対応する領域に前記第1の磁気検出素子、前記第2の磁気検出素子及び前記第3の磁気検出素子が配置されていることが好ましい。
【0010】
本発明の位置検出システムにおいては、前記第1方向は、前記第1の磁気検出素子と前記第3の磁気検出素子とを結ぶ仮想線に沿う方向であり、前記第2方向は、前記磁石と前記第2の磁気検出素子とを結ぶ仮想線に沿う方向であることが好ましい。
【0011】
本発明の多方向入力装置は、上記位置検出システムを備えたことを特徴とする。この構成によれば、磁場不感領域を形成することができるので、磁場不感領域Xに磁界発生部品を配置することが可能となる。このため、本位置検出システムを備えた多方向入力装置は、搭載する製品(携帯機器)の設計の自由度を向上させ、また、搭載する製品(携帯機器)の小型化を図ることができる。
【0012】
本発明の携帯機器は、上記多方向入力装置を有する携帯機器であって、前記第1の磁気検出素子と前記第3の磁気検出素子との間の領域に磁界発生部品が実装されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の携帯機器は、上記多方向入力装置を有する携帯機器であって、磁気検出素子間の領域にスイッチ部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の位置検出システムは、基板上に実装された第1〜第3の磁気検出素子と、前記基板に配設され、前記基板に対して移動可能な磁石と、前記第1の磁気検出素子及び前記第2の磁気検出素子の出力差で第1方向の出力を求め、前記第2の磁気検出素子及び前記第3の磁気検出素子の出力差で第2方向の出力を求める制御手段と、を具備し、前記第1の磁気検出素子及び前記第3の磁気検出素子は、前記磁石を中心に対称な位置に配置され、前記第2の磁気検出素子は、前記第1の磁気検出素子、前記第2の磁気検出素子及び前記第3の磁気検出素子を結ぶ仮想円弧における中点位置に配置されるので、磁界発生部品Yからの外乱による影響を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る位置検出システムを説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る位置検出システムの回路図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る位置検出システムにおける位置検出方法を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る多方向入力装置の位置検出能力を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る位置検出システムを備えた多方向入力装置を有する携帯電話機を示す図である。
【図6】従来の多方向入力装置を示す図である。
【図7】従来の多方向入力装置の外乱による出力の乱れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る位置検出システムを説明するための図である。図1に示す位置検出システム1は、基板11と基板11よりも上方に配置されたスライド用磁石13とを備えている。基板11上には、磁気検出素子12A〜12C及び信号処理用素子(信号処理回路)15が実装されている。また、基板11上には、他の部品との間の電気的接続をとるための電極パッド14が形成されている。
【0017】
基板11において、スライド用磁石13は、中央部に配置されており、磁気検出素子12A〜12Cは、スライド用磁石13の周りに配置されている。ここでは、スライド用磁石13は4極の円形磁石であり、90°毎に極性が変わるように構成されている。そして、4つの磁極領域のうちの3つの磁極領域に対応する領域に磁気検出素子12A〜12Cを配置している。すなわち、磁気検出素子12A〜12Cのうちの磁気検出素子12A,12Cは、スライド用磁石13を中心に対称な位置に配置され、磁気検出素子12Bは、磁気検出素子12A〜12Cを結ぶ仮想円弧16における中点位置に配置される。したがって、一つの磁極領域に対応する領域Xには、磁気検出素子が配置されていない。
【0018】
磁気検出素子12A〜12Cとしては、磁気抵抗効果素子、例えばスピンバルブ型GMR(Giant Magneto Resistive)素子、スピンバルブ型TMR(Tunnel Magneto Resistive)素子などを用いることができる。磁気検出素子12A〜12Cは、図2に示すように、ブリッジ回路を構成している(ここでは、磁気検出素子12Bを共通とする)。また、個々の磁気検出素子12A〜12Cは、磁気抵抗効果素子(素子A〜素子C)と固定抵抗素子(抵抗A〜抵抗C)とでハーフブリッジを組んで、出力するようになっている(V1〜V3)。
【0019】
スライド用磁石13は、基板に対して移動可能に構成されている。多方向入力装置に本位置検出システムを使用する場合には、このスライド用磁石13に一体化された操作体を操作することによりスライド用磁石13が基板11に対して移動するようになる。例えば、操作体は、スライド用磁石と、スライド操作によりスライド用磁石が移動した際に、スライド用磁石を原点位置に戻す環状コイルバネと、スライド用磁石の回転を防止する回転防止機構とから主に構成されており、基板11に対して移動するようになっている。この構成については、本出願人の2004年4月23日出願の特開2005−310670号公報に開示されている。その内容をすべてここに含めておく。スライド用磁石13としては、ネオジウム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石などを用いることができる。
【0020】
制御手段である信号処理回路15は、磁気検出素子12A〜12Cとそれぞれ接続されており、磁気検出素子12A〜12Cの出力が信号処理回路15に送られるようになっている。信号処理回路15は、磁気検出素子12A〜12Cの出力から、特定方向の位置検出出力を求める。すなわち、信号処理回路15は、磁気検出素子12A及び磁気検出素子12Bの出力差で第1方向の出力を求め、磁気検出素子12B及び磁気検出素子12Cの出力差で第2方向の出力を求める。なお、ここでは、図3に示すように、第1方向は、磁気検出素子12Aと磁気検出素子12Cとを結ぶ仮想線に沿うY軸方向であり、第2方向は、スライド用磁石13と磁気検出素子12Bとを結ぶ仮想線に沿うX軸方向である。
【0021】
信号処理回路15で位置検出を行う場合、まず、各磁気検出素子12A〜12Cにかかる磁場強度をそれぞれ計算する。例えば、磁気検出素子12Aについては、スライド用磁石13が±1.5mmストロークするとして、磁気検出素子12Aの素子位置にかかるX磁場成分とY磁場成分をそれぞれ算出する。磁場成分を算出した後、三平方の定理よりそれぞれの位置での磁場角度を計算する。磁場角度が求められると、磁気検出素子である磁気抵抗効果素子(GMR素子)の抵抗値が算出できるので、以下の計算式に基づいて計算する。
R=Rc+ΔMR/200×Rc/(1+ΔMR/200)×cosθ
このとき、Rc=10000[Ω]、ΔMR=10.25%とする。
なお、ここで算出された抵抗値Rは磁気検出素子12Aの抵抗値R1である。また、磁気検出素子12Bの抵抗値をR2とし、磁気検出素子12Cの抵抗値をR3とする。
【0022】
次いで、上記抵抗値を用いて出力値を計算する。上述したように、本センサは、1つのGMR素子と1つの固定抵抗素子とのハーフブリッジであるので、以下の式により出力(V1)を求める。ここでVddは3Vとする。
V1=R1(R1+Rc)×Vdd
なお、ここで算出された出力V1は磁気検出素子12Aの出力である。また、磁気検出素子12Bの出力をV2とし、磁気検出素子12Cの出力をV3とする。
【0023】
このようにして、磁気検出素子12Aの出力V1を算出することができる。同様にして、磁気検出素子12Bの出力V2及び磁気検出素子12Cの出力V3も算出する。その後、3つの出力の差動出力からX軸出力及びY軸出力を演算して位置検出結果を出力する。この場合、X軸出力は、出力V1と出力V2の差動出力であり、Y軸出力は、出力V3と出力V2の差動出力である。
【0024】
図1に示すような配置位置で磁気検出素子12A〜12C及び信号処理用素子15を実装し、スライド用磁石13を配置してなる位置検出システムを作製し、スライド用磁石13が±1.5mmストロークするとした場合の位置検出結果を上記のようにして求めた。その結果を図4に示す。図4から分かるように、正確に位置検出を行うことができた。このように、本発明に係る位置検出システムにおいては、図1に示す領域Xが磁場不感領域となるので、この磁場不感領域に磁界発生部品を配置しても磁界発生部品の外乱による影響を少なくすることができる。また、4極の円形磁石を用いた場合の従来の位置検出においては、磁気検出素子を4つ設ける必要があるが、本発明に係る位置検出システムにおいては、磁気検出素子が3つで良く、部品点数の削減も図ることができる。
【0025】
次に、本発明の位置検出システムを備えた多方向入力装置について説明する。このような多方向入力装置は、携帯機器、例えば、携帯電話機に搭載される。図5は、本発明の実施の形態に係る多方向入力装置を備えた携帯電話機を示す図である。図5に示すように、本発明に係る多方向入力装置22は、携帯電話機2の操作パネル21に装着されている。この多方向入力装置22における位置検出システムは、図1及び図3に示す機器長手方向を図5に示す機器長手方向に沿うように携帯電話機2に搭載される。このため、図1に示す磁気検出素子12A〜12Cの間の領域17には、素子が存在していない。このため、携帯電話機において、位置検出システムにおける領域17に対応する領域にスイッチ部23を設けることができる。これにより、磁気検出素子12A〜12Cとスイッチ部23とを設ける位置が重なることがない。この場合において、位置検出の出力は図4に示すようになるので、領域17を出力範囲外にすることが可能であり、領域17にスイッチ部23を設けても位置検出に影響を及ぼすことがない。
【0026】
また、本位置検出システムにおいては、図1及び図3に示すように、領域X(磁気検出素子12Aと磁気検出素子12Cとの間の領域)に磁場不感領域が形成されるので、その磁場不感領域Xに磁界発生部品を配置することが可能となる。すなわち、携帯電話機2における領域24に磁界発生部品を搭載することが可能となる。このため、本位置検出システムを備えた多方向入力装置は、搭載製品である携帯電話機の設計の自由度を向上させ、また、搭載製品である携帯電話機の小型化を図ることができる。
【0027】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。例えば、上記実施の形態においては、4極磁石を用いて3つの磁気検出素子を用いた場合について説明しているが、本発明はこれに限定されず、磁石の磁極数よりも少ない数の磁気検出素子を磁場不感領域が形成されるように配置する他の場合にも同様に適用することができる。また、上記実施の形態における材料、各素子の接続関係、寸法、製法などは適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明は、本発明の範囲を逸脱しないで適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、携帯電話機の多方向入力装置用の位置検出システムに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 位置検出システム
2 携帯電話機
11 基板
12A〜12C 磁気検出素子
13 スライド用磁石
14 電極パッド
15 信号処理用素子(信号処理回路)
16 仮想円弧
17,24 磁場不感領域
21 操作パネル
22 多方向入力装置
23 スイッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に実装された第1〜第3の磁気検出素子と、前記基板に配設され、前記基板に対して移動可能な磁石と、前記第1の磁気検出素子及び前記第2の磁気検出素子の出力差で第1方向の出力を求め、前記第2の磁気検出素子及び前記第3の磁気検出素子の出力差で第2方向の出力を求める制御手段と、を具備し、前記第1の磁気検出素子及び前記第3の磁気検出素子は、前記磁石を中心に対称な位置に配置され、前記第2の磁気検出素子は、前記第1の磁気検出素子、前記第2の磁気検出素子及び前記第3の磁気検出素子を結ぶ仮想円弧における中点位置に配置されることを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記スライド用磁石は4極の円形磁石であり、90°毎に極性が変わるように構成されており、4つの磁極領域のうちの3つの磁極領域に対応する領域に前記第1の磁気検出素子、前記第2の磁気検出素子及び前記第3の磁気検出素子が配置されていることを特徴とする請求項1記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記第1方向は、前記第1の磁気検出素子と前記第3の磁気検出素子とを結ぶ仮想線に沿う方向であり、前記第2方向は、前記磁石と前記第2の磁気検出素子とを結ぶ仮想線に沿う方向であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の位置検出システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の位置検出システムを備えたことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項5】
請求項4記載の多方向入力装置を有する携帯機器であって、前記第1の磁気検出素子と前記第3の磁気検出素子との間の領域に磁界発生部品が実装されていることを特徴とする携帯機器。
【請求項6】
請求項4記載の多方向入力装置を有する携帯機器であって、磁気検出素子間の領域にスイッチ部が形成されていることを特徴とする携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−187024(P2011−187024A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54723(P2010−54723)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】