説明

位置検出装置及びサーボモータ

【課題】アクチュエータ毎に補正データを記憶するメモリを備える必要のない位置検出装置を提供する。
【解決手段】レゾルバ2がモータ1の回転位置情報を電気信号として出力し、その電気信号を電気ケーブル3で位置検出装置4のレゾルバデジタルコンバータ6に伝送し、レゾルバデジタルコンバータ6は電気信号からモータ1の回転位置情報を検出し、メモリ7に記憶されている電気ケーブルの情報に基づいて、演算装置8が検出されたモータ1の回転位置情報を補正することにより、レゾルバ2が設けられるモータ1毎に補正データを記憶するメモリを備える必要がない。また、電気ケーブル3の長さに対するインピーダンスの差による精度誤差情報を電気ケーブルの情報として記憶することにより、レゾルバ2で検出されるモータ1の回転位置の位置情報を正確に補正することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転位置を含む被検出体の位置を検出する位置検出装置及びサーボモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような位置検出装置としては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この位置検出装置は、モータなどのアクチュエータ本体に、レゾルバなどの位置検出器と共にアクチュエータ固有の誤差を補正するための補正データを記憶するメモリを備え、位置検出器で検出された位置情報の電気信号と共にメモリに記憶された補正データをドライブユニットに伝送し、ドライブユニットは位置情報の電気信号から得られた位置情報を補正データに基づいて補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−98738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載される位置検出装置では、アクチュエータ毎に補正データを記憶するメモリを備える必要がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、アクチュエータ毎に補正データを記憶するメモリを備える必要のない位置検出装置及びサーボモータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の位置検出装置は、回転体の回転位置を含む被検出体の位置の検出装置であって、被検出体の位置情報を電気信号として出力する位置検出器と、前記位置検出器から出力された電気信号を伝送する電気ケーブルと、前記電気ケーブルで伝送された電気信号から被検出体の位置情報を検出する位置検出手段と、前記電気ケーブルの情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている電気ケーブルの情報に基づいて前記位置検出手段で検出された被検出体の位置情報を補正する演算手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
また、前記位置検出器がレゾルバであり、前記電気ケーブルの情報は、当該電気ケーブルの長さに対するインピーダンスの差による精度誤差情報であることを特徴とするものである。
また、前記位置検出装置を備えたことを特徴とするサーボモータである。
【発明の効果】
【0007】
而して、本発明の位置検出装置によれば、位置検出器が被検出体の位置情報を電気信号として出力し、その電気信号を電気ケーブルで位置検出手段に伝送し、位置検出手段は電気信号から被検出体の位置情報を検出し、記憶手段に記憶されている電気ケーブルの情報に基づいて演算手段が検出された被検出体の位置情報を補正する構成としたため、位置検出器が設けられるアクチュエータ毎に補正データを記憶するメモリを備える必要がない。
また、位置検出器がレゾルバである場合、電気ケーブルの長さに対するインピーダンスの差による精度誤差情報を電気ケーブルの情報として記憶する構成としたため、レゾルバで検出される被検出体の回転位置の位置情報を正確に補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の位置検出装置の概略構成図である。
【図2】レゾルバデジタルコンバータによる位置検出原理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の位置検出装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の位置検出装置の一実施形態を示す概略構成図である。本実施形態の位置検出装置は、一般にダイレクトドライブモータと呼ばれるモータ(回転体、被検出体)1の回転位置を検出するものである。本実施形態のモータ1は、例えば永久磁石を使用しないインダクタ型のダイレクトドライブモータであり、中間に減速ギヤを介さず、高速から低速まで回転速度を調整することができる。更に、永久磁石を使用しないインダクタ型ダイレクトドライブモータはコストを低下できる。また、本実施形態では、このモータ1の回転位置をレゾルバ2で検出する構成としており、これによりオイルミストなどの影響を受けにくく、機械的に堅牢であり、検出器としての信頼性に優れる。即ち、本実施形態の位置検出器はレゾルバ2である。また、モータ1、レゾルバ2及び後述の位置検出装置によってサーボモータを構成することができる。
【0010】
レゾルバは、周知のように、回転体と同期回転する一次側コイル(ロータコイル)と、互いに90°ずらした2つの二次側コイルとで構成される。一次側コイルに交流電圧を印加すると、二次側コイルにも振幅電圧が生じる。ロータの回転角度をφとすると、二次側コイルの電圧振幅はcosφとsinφとなる。従って、二次側コイルの電圧振幅から回転体、即ちモータ1の回転位置(回転角度)を検出することができる。
レゾルバ2からは、モータ1の回転位置情報として前述した電圧信号が電気信号として出力される。このレゾルバ2の電気信号は電気ケーブル3を介して位置検出装置4に伝送される。なお、図中の符号5は、電気ケーブル3をレゾルバ2及び位置検出装置4に接続するためのコネクタである。
【0011】
位置検出装置4内には、レゾルバデジタルコンバータ6、メモリ7、演算装置8が備えられている。レゾルバデジタルコンバータ6は、前記レゾルバ2から電気ケーブル3を介して伝送された電気信号を回転体、即ちモータ1の回転位置情報をデジタルデータとして検出するものである。メモリ7には、前記電気ケーブル3の長さと当該長さに相当する電気ケーブル3のインピーダンスの情報が記憶されている。演算装置8は、例えばDSP(Digital Signal Processor)やマイクロコンピュータなどの演算処理装置で構成され、前記レゾルバデジタルコンバータ6で検出されたモータ1の回転位置情報をメモリ7に記憶されている電気ケーブルの長さに応じたインピーダンスで補正して、その補正されたモータ1の回転位置情報を出力する。
【0012】
電気ケーブル3の長さが長くなる場合、ケーブル内の各銅線のインピーダンスの差が大きくなる傾向があり、電気ケーブル3の長さを長くした場合、レゾルバデジタルコンバータ6で検出される電気信号の振幅や位相が変化して検出値に誤差が生じる恐れがある。そのため、電気ケーブル3の長さに応じたインピーダンスの差による精度誤差情報をメモリ7に記憶しておき、例えばユーザが入力した電気ケーブル3の長さに関する情報から当該長さの電気ケーブル3のインピーダンスの差による精度誤差情報を演算装置8がメモリ7から読み込み、その電気ケーブル3の精度誤差情報に基づいて前記レゾルバデジタルコンバータ6で検出されたモータ1の回転位置情報を補正する。電気ケーブル3の長さに関する情報の入力は、例えば電気ケーブル3と位置検出装置4がセットである場合には、出荷時に行ってもよい。
【0013】
ここで、レゾルバデジタルコンバータ6による位置検出原理について説明する。レゾルバデジタルコンバータ6は、図2に示すように、励磁発生部9と角度情報演算部10を備えて構成される。レゾルバデジタルコンバータ6では、励磁発生部9から励磁信号、即ち交流信号を発生し、電気ケーブル3を介してレゾルバ2に励磁電流を印加する。励磁電流が印加されたレゾルバ2の各コイルは、モータの回転角(レゾルバ電気角)によって決まったインピーダンスとなり、各コイルから出力される電流はレゾルバ電気角に依存した電流となる。レゾルバ2の各コイルに流れる電流は再び電気ケーブル3を介してレゾルバデジタルコンバータ6の角度情報演算部10に角度信号として入力される。角度情報演算部10は、この角度信号(電流)を用いてモータの回転角、即ちレゾルバ電気角を演算する。
【0014】
一般的に、電気ケーブル3の長さが長くなると、その電気ケーブルに流れる信号の伝搬時間(励磁発生部9からレゾルバ2を通り、各レゾルバ線を通ってレゾルバデジタルコンバータ6に戻るまでの時間)が長くなり、その結果、各信号線間の信号の伝搬時間差も大きくなる傾向にある。この各信号線間の信号の伝搬時間の差(信号間の差)により、角度検出信号波形に偏り(アンバランス)が発生し、その結果、角度検出誤差が発生する。保温実施形態では、この電気ケーブル3の長さにより発生する角度検出誤差を補正することで問題を解決する。
【0015】
このように本実施形態の位置検出装置では、レゾルバ2がモータ1の回転位置情報を電気信号として出力し、その電気信号を電気ケーブル3で位置検出装置4のレゾルバデジタルコンバータ6に伝送し、レゾルバデジタルコンバータ6は電気信号からモータ1の回転位置情報を検出し、メモリ7に記憶されている電気ケーブルの情報に基づいて、演算装置8が検出されたモータ1の回転位置情報を補正することとしたため、レゾルバ2が設けられるモータ1毎に補正データを記憶するメモリを備える必要がない。
【0016】
また、位置検出器がレゾルバ2である場合、電気ケーブル3の長さに対するインピーダンスの差による精度誤差情報を電気ケーブルの情報として記憶することにより、レゾルバ2で検出されるモータ1の回転位置の位置情報を正確に補正することが可能となる。
なお、前記実施形態では位置検出器としてレゾルバを用いた場合についてのみ詳述したが、本発明の位置検出器は、これ以外にも、例えばエンコーダやリニアスケールなどの種々の位置検出器を用いることができる。また、位置を検出する被検出体も、前記実施形態のモータに限らず、種々の被検出体に適用することができる。
【符号の説明】
【0017】
1はモータ(回転体、被検出体)
2はレゾルバ(位置検出器)
3は電気ケーブル
4は位置検出装置
5はコネクタ
6はレゾルバデジタルコンバータ
7はメモリ
8は演算装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転位置を含む被検出体の位置の検出装置であって、被検出体の位置情報を電気信号として出力する位置検出器と、前記位置検出器から出力された電気信号を伝送する電気ケーブルと、前記電気ケーブルで伝送された電気信号から被検出体の位置情報を検出する位置検出手段と、前記電気ケーブルの情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている電気ケーブルの情報に基づいて前記位置検出手段で検出された被検出体の位置情報を補正する演算手段とを備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記位置検出器がレゾルバであり、前記電気ケーブルの情報は、当該電気ケーブルの長さに対するインピーダンスの差による精度誤差情報であることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の位置検出装置を備えたことを特徴とするサーボモータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−251995(P2012−251995A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−99149(P2012−99149)
【出願日】平成24年4月24日(2012.4.24)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】