説明

位置検出装置

【課題】透過性や薄さを損なうことなく表示機能を搭載した位置検出装置を提供する。
【解決手段】透明導電膜からなる第一の電極102と、第二の電極310と、第一及び第二の電極102,310間に介在して設けられた表示材料311と、第一及び第二の電極102,310間に駆動電源の供給を停止した後も表示状態を保持可能な表示部505と、表示すべき信号に基づき表示部505の表示駆動を行う表示駆動部502と、指示体103による第一の電極102上の指示位置を検出して検出信号を出力する位置検出部503と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置に適用して好適な技術に関する。
より詳細には、透過性を損なうことなく表示機能を付加した新規な位置検出装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータに位置情報を与える入力装置には、様々なものがある。その中で、例えば、タッチパネルと呼ばれる、位置情報入力装置がある。
タッチパネルは、例えば、液晶表示装置の表示エリアに指示位置を検出する位置検出装置を重ね合わせたもので、指や専用のペン等の位置指示器で表示画面に触れることで、コンピュータ等の操作を行なう入力装置である。指やペンが触れた位置を検知して画面上の位置を指定し、コンピュータに指示を与えるものである。
このタッチパネルは、PDA(Personal Digital Assistant)や銀行のATM(Automated Teller Machine)、駅の券売機等で広く利用されている。
【0003】
このタッチパネルに採用される位置情報検出技術には、様々なものがある。例えば、圧力の変化で位置検出を行う抵抗膜方式や検出平面の表面の膜の静電容量の変化で位置検出を行う静電容量方式等がある。
【0004】
なお、本出願人の発明に係る従来技術を、特許文献1に示す。
【0005】
【特許文献1】特開平10−020992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のタッチパネルに組み合わせられる位置検出装置は、特に指で指示した位置を検出する場合は、静電容量方式が採用されることが多い。静電容量方式の位置検出装置を表示装置に組み込む際には、表示装置の上に位置検出装置を重ね合わせることとなる。
【0007】
近年、新しい表示装置の一形態として、電子ペーパーと呼ばれる表示装置が注目されている。この電子ペーパーは、帯電した着色粉体に電圧を印加することで、白黒等の濃淡や色を表示するものである。この電子ペーパーは、広く表示装置として使用されている液晶表示装置等に比べて消費電力が少なく、大幅な薄型化を実現できるので、静止画像やテキスト等を表示する用途を中心に普及しつつある。
【0008】
ところで、かかる特徴を有する電子ペーパーにさらなる機能を追加したい、という要望がある。例えば、この電子ペーパーを通常の紙のように、メモを書いたり印や付箋を付けられるようにする、というものである。そこで、この電子ペーパーに、従来のタッチパネル装置と同様に、例えば、静電容量方式の位置検出装置を重ね合わせることで、かかる機能を付加することが考えられる。
【0009】
ところが、静電容量方式等の位置検出装置を表示装置に搭載する場合には、その表示エリアに位置検出装置を重ねて合わせるので、表示エリアには複数の透明な部材を重ね合わさることになる。その結果、表示エリアの透過性が悪化する、という問題が発生する。さらに、複数の部材を重ね合わせているので、かかる機能を搭載しない表示装置よりも厚みが増してしまい、電子ペーパーの特徴である薄さを損なってしまうという問題も発生する。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、透過性や薄さを損なうことなく表示機能を搭載した位置検出装置を提供することをである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の位置検出装置は、第一及び第二の電極と、第一及び第二の電極間に介在して設けられた表示材料と、第一及び第二の電極間に駆動電源の供給を停止した後も表示材料の特性に基づいて表示状態を保持可能な表示部と、第一の電極を透明導電膜で構成し、表示すべき信号に基づき表示部の表示駆動を行う表示駆動部と、指示体による第一の電極上の指示位置を検出して検出信号を出力する位置検出部と、を具備する。
【0012】
電子ペーパーと位置検出装置とは、透明導電膜という共通の構成要素を有する。
そこで、この透明導電膜を電子ペーパーと位置検出装置とで共用することで、透過性や薄さを損なうことなく表示機能を搭載した位置検出装置を実現する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、透過性を損なうことなく位置検出装置を搭載した表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第一の実施の形態例を、図1〜図12を参照して説明する。
【0015】
まず、位置検出部の動作原理を図1及び図2を参照して、表示部である電子ペーパーの動作原理を図3及び図4を参照して、それぞれ簡単に説明する。
【0016】
図1(a)は位置検出装置101の動作原理を説明する模式図であり、図1(b)は図1(a)の等価回路図である。位置検出部101は、透明導電膜である電極膜102、接点104a〜104d、配線105a、105b、交流電圧源106、電流電圧変換回路108等を備えて構成される。
電極膜102は、例えば、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide)よりなるITO膜や、酸化錫にアンチモンを添加したATO膜、酸化亜鉛にアルミニウムを添加したAZO膜などの透明導電性材料の膜である。この電極膜102の表面には図示しない薄い絶縁膜が貼付され、この絶縁膜を介して電極膜102の上を指103で触れるようになっている。そして、この電極膜102の四隅に接点104a、104b、104c及び104dが設けられている。この接点104aと104b、接点104cと104d同士はそれぞれ配線105a及び105bによって接続されている。
この配線105aは交流電圧源106に、配線105bはオペアンプ107aと抵抗R108bとからなる電流電圧変換回路108にそれぞれ接続されている。
【0017】
人体109は数pFのコンデンサと等価であるとみなすことができるので、この図1(b)中では、この等価なコンデンサを人体コンデンサC110として表している。一方、オペアンプ107aと抵抗R107bからなる電流電圧変換回路108の入力端子は、周知のイマジナルショート現象により等価的に導通しているとみなすことができる。そのため、交流電圧源106から発される交流電流は、電極膜102が形成する電極膜抵抗R111へ流れる電流と、電極膜102の途中に接触する人体コンデンサC110へ流れる電流との二手に分かれる。
【0018】
ここで、交流電圧源106が位置検出部101の配線105aに接続された場合と、配線105bに接続された場合とを図2を参照して説明する。なお、図2(a)は位置検出装置の動作原理を説明する模式図であり、図2(b)は図2(a)の等価回路である。また、図2(c)は位置検出装置の動作原理を説明する模式図であり、図2(d)は図2(c)の等価回路である。ここで、図2(a)と図2(c)との差異は、交流電圧源106とオペアンプ107が接続される配線が逆である点である。
【0019】
図2(b)及び図2(d)に示した等価回路を比較すると、交流電圧源106から見たときの人体の指103が触れる位置は異なっている。このため、図2(b)と図2(d)とでは、電極膜102の抵抗R111と人体コンデンサC110とによって形成される合成インピーダンスが異なるので、電流電圧変換回路108で検出される電流が異なることになる。この電流の差を演算することで、指103が電極膜102上の左右方向どちらの側に位置しているのかを算出することができるようになっている。
【0020】
図2(a)及び(c)では、電極膜102の左右方向について指103の位置を検出したが、電極膜102の上下方向についても同様に、指103の位置を検出することができる。すなわち、上下方向の位置を検出するときには、電極膜102の四隅の接点の上側同士、すなわち接点104aと104cと、下側同士、すなわち接点104bと104dとをそれぞれ接続して、同様の処理を行う。
【0021】
以上のように、電極膜等の透明電極膜を用いた静電方式の位置検出装置は、透明電極膜の「上」「下」「左」「右」に交流電圧を印加し、それぞれで検出した電流の差を演算することで、透明電極膜上の指の位置を検出する。
【0022】
なお、人体の指103が電極膜102に接触することによって生じる影響を効果的に検出するために、位置検出装置では幾つかの技術的工夫を施している。例えば、交流電圧源106の周波数には、例えば、人体が最も吸収しやすいといわれる200kHz近辺を用いている。
【0023】
次に、電子ペーパーの動作原理について、図3及び図4を参照して説明する。ここで、図3は電子ペーパーの原理を説明する模式図であり、図4は図3の等価回路である。なお、図3は電子ペーパーの模式的斜視図でもあり、図4は図3の模式的構成を真横から見たものと解釈することもできる。
電子ペーパー301は、マトリクス状に配置された複数の水平電圧線302及び垂直制御線303、水平選択スイッチ303等を備えている。水平電圧線302は水平選択スイッチ303を介して選択的に直流電圧源304に接続される。水平電圧線302と垂直制御線305との交点部分には、FET306が接続されている。FET306のドレインが水平電圧線302に、FET306のゲートが垂直制御線305にそれぞれ接続される。
【0024】
各垂直制御線305は、それぞれカウンタ307に接続されている。各々のカウンタ307にはレジスタ308が接続されている。このレジスタ308に設定された計数値がカウンタ307に与えられると、カウンタ307はクロック生成器309から入力されるクロックを計数する。このクロックの計数値がレジスタ308から設定された計数値に達すると、出力を高レベル(H)から低レベル(L)に落とす。つまり、レジスタ308を通じてカウンタ307に設定された計数値は、FET306のオン時間である。
したがって、図3のカウンタ307は、図4の点線で囲んでいるスイッチ402と抵抗R403に相当し、スイッチのオン時間は、カウンタ307がHを出力する時間に相当する。
【0025】
FET306のソースには、小さな電極プレート310が接続されている。この電極プレート310に対向して、接地された電極膜102が設けられている。この電極プレート310と電極膜102との間には、帯電した微粒子が封入された小さなビーズ311が挟まれている。
【0026】
このビーズ311内には、黒色の微粒子と白色の微粒子が封入されている。このビーズ311内に封入された黒色の微粒子はマイナスに帯電され、白色の微粒子はプラスに帯電されている。そして、このビーズ311の一方の半球側に黒色の微粒子が、他方の半球側には白色の微粒子がそれぞれ封入され、一つのビーズ311を構成する。
そして、かかる構成を備えたビーズ311に電圧を印加すると、ビーズ311の中に封入された微粒子の電荷によりビーズが回転する。このビーズ311の回転は、電圧を印加する時間によって異なる。つまり、ドット毎の白黒の濃淡を、ビーズ311に対する電圧印加時間で制御することができる。
【0027】
なお、各ドット毎に白黒を表現するので、水平電圧線302に印加する電圧は、直流電圧源304のプラスだけでなく、マイナスも接続してビーズ311を回転させ、白から黒へ、黒から白へと変化させるようになっている。
【0028】
以上のように、電子ペーパー301は、ビーズ311に電圧を印加した後、その電圧の印加を止めても、ビーズ311の向きが回転後の状態で保たれるので、表示内容が保持される。このように、電子ペーパー301は、一度駆動を行った後は電圧を印加し続けなくても表示状態を保持できるので、一般的な液晶ディスプレイ(LCD)等と比べると、消費電力の面で優れている。
【0029】
ところで、位置検出装置101と電子ペーパー301とは、それぞれ電極膜102を有している、という共通点がある。そこで、本発明は、この電極膜102を位置検出部101と電子ペーパー301の双方で時分割にて排他的に共有するようにしている。
【0030】
次に、本発明の位置検出装置501を図5に従って説明する。この図5は、位置検出装置501の概略ブロック図である。
位置検出装置501は、表示駆動部502と、位置検出部502と、マトリクスゲート504と、表示部505とから構成されている。
表示駆動部502は、表示部505を駆動するものである。表示部505は、例えば、ITO膜等の透明導電膜からなる電極膜102と、マトリクスゲート504とからなり、表示駆動部502により表示駆動されて、外部から入力されたビデオ信号に基づき画像やテキスト等を表示する。
位置検出部503は、表示部505の電極膜102上を指等の指示体により指示した位置を検出する回路部である。ここで、表示駆動部502と位置検出部503とは排他的に電極膜102を占有するため、その排他制御は表示駆動部502が行う。
【0031】
表示駆動部502は、ビデオ信号に基づく表示駆動を行う際に、位置検出部503に対して制御信号を出力するようになっている。この制御信号は、表示駆動を開始するときに、「これから電子ペーパーの表示駆動を行う」旨を示す、表示更新信号である。同様に、位置検出部503は、表示駆動部502に対して二種類の制御信号を出力するようになっている。この制御信号は、「指の検出処理を完了した」旨を示す、検出完了信号と、「現在電極膜上には指が存在する/しない」旨を示す指存在信号である。
【0032】
マトリクスゲート504は、図3にて示した水平電圧線302と、垂直制御線305と、水平電圧線302と垂直制御線305との各交点に存在するFET306と、電極プレート310とから構成される。この図5では図示はしていないが、マトリクスゲート504と電極膜102との間にはビーズ311が介在して設けられている。このマトリクスゲート504と電極膜102と、図示しないビーズ311とで、表示部505は構成されている。
【0033】
表示駆動部502は、例えば、パソコン等の上位装置からビデオ信号が入力されると、マトリクスゲート504を通じて、マトリクスゲート504と電極膜102との間に介在しているビーズ311を電圧駆動する。このビデオ信号に基づく表示駆動を開始するときに、表示駆動部502は位置検出部503に対して表示更新信号を出力する。
【0034】
位置検出部503は、電極膜102に「上」「下」「左」「右」に交流電圧を印加し、電流を検出することで指の存在の有無を検出し、指が存在する際にはその位置を検出する。この指の検出処理を行った後、位置検出部503は表示駆動部502に対して検出完了信号を出力する。また、位置検出部503は、電極膜102上に指103が存在しているか否かを、指存在信号にて出力する。
【0035】
次に、図5に示した表示制御部502と位置検出部503と表示部505との接続関係を図6に従って詳述する。この図6は、図5に示した位置検出装置501のうち電極膜102の周囲の構成をより詳細に説明するためのブロック図である。
電極膜102の四隅には、モード切替スイッチ602a、602b、602c及び602dが設けられている。このモード切替スイッチ602a、602b、602c及び602dの一方の端子は、表示駆動部502に接続されている。これら端子は電極膜102に共通の電位を与えるためのものである。このため、これら端子同士も接続されている。
モード切替スイッチ602a、602b、602c及び602dの他方の端子は、位置検出部503に接続されている。これら端子は、前述したように、電極膜102の「上」「下」「左」「右」に交流電圧を順番に印加し、電流を検出するため、位置検出部503に接続されている。なお、このモード切替スイッチ602a、602b、602c及び602dの切替制御は、表示駆動部502によって行われる。
【0036】
次に、図5に示した表示制御部502と位置検出部503とを図7及び図8に従って詳述する。ここで、図7は、表示駆動部502及び位置検出部503の内部の構成ブロックを詳細に説明するための図、図8は位置検出部503の詳細ブロック図である。主に図7の信号処理部702の内部を詳述する図である。
図7に示すように、上位装置が出力したビデオ信号は、表示駆動部502に入力される。このビデオ信号は、表示駆動部502内の信号処理部702でビデオデータに変換される。このビデオデータはフレーム毎に第一フレームメモリ703に格納される。
ここで、表示制御部502は、第一フレームメモリ703と同一容量の第二フレームメモリ704を備えており、この第二フレームメモリ704は、表示部505を構成する各々のビーズ311の表示状態を記憶している。
差分抽出部705は、第一フレームメモリ703と第二フレームメモリ704との間の差分データを作成して、表示駆動制御部706に送る。
このマイコンよりなる表示駆動制御部706は、差分データに基づいてマトリクスゲート504の駆動制御を行う。そして、表示駆動制御部706は、マトリクスゲート504の駆動制御を行った後、その結果を第二フレームメモリ704に反映させる。
【0037】
さらに、表示駆動制御部706は、位置検出部503との時分割制御を実現するために、位置検出部503内の位置算出及び制御部712に表示更新信号を送信すると共に、位置算出及び制御部712から検出完了信号及び指存在信号を受信する。
ここで、表示駆動部502は、位置検出部503が位置検出動作を実行している期間は表示駆動ができない。そこで、表示駆動制御部706は、表示駆動制御を行わないときには、第二フレームメモリ704の更新作業を停止する。これが表示駆動制御部706から第二フレームメモリ704に供給される更新制御信号である。
【0038】
電極膜102の四隅に接続されているモード切替スイッチ602a、602b、602c及び602dは、表示更新信号と検出完了信号とが入力されるANDゲート707の出力信号によって切替制御が行われる。この表示更新信号と検出完了信号とが共に論理の真(H)であるときには、モード切替スイッチ602a、602b、602c及び602dは表示駆動部502側に接続される。
【0039】
この電極膜102の四隅に接続されているモード切替スイッチ602a、602b、602c及び602dの端子は、それぞれ四つの入出力切替スイッチ802a、802b、802c及び802dに接続される。この入出力切替スイッチ802a、802b、802c及び802dは、交流電圧源であるサイン波生成部803の出力と電流電圧変換回路を構成するオペアンプ107の反転入力とを選択的に切り換える。
この四つの入出力切替スイッチ802a、802b、802c及び802dを切替制御することで、電極膜102の「上」「下」「左」「右」に交流電圧を順番に印加し、電流を検出することができる。
【0040】
オペアンプ107の出力信号は、ノイズ除去のためのバンドパスフィルタ804に入力される。なお、このバンドパスフィルタ804の中心周波数は、サイン波生成部803が生成する信号の周波数と同一に設定されている。
バンドパスフィルタ804の出力信号は、サイン波生成部803が生成する交流電圧信号と共に、アナログ乗算器からなる同期検波部805に入力される。
この同期検波部805の出力信号は、積分器806に入力されて、積分処理が行われる。なお、積分処理は積分器806の後段に接続されたA/D変換器807がA/D変換処理を完了したらリセットしなければならないので、リセット信号が位置算出及び制御部712から入力されるようになっている。
【0041】
A/D変換器807は、積分器806の出力信号をデジタルデータに変換し、マイコンからなる位置算出及び制御部712に出力する。この位置算出及び制御部712は、入出力切替スイッチ802a、802b、802c及び802dの切替制御、サイン波生成部803のサイン波出力タイミングの制御、積分器806に出力するリセット信号の生成及びA/D変換器807の変換トリガ信号の生成を行う。そして、A/D変換器807から得られるデジタルデータから、指の有無の検出と指の位置のデータを演算して出力する。
【0042】
ところで、位置検出部503による指示体の指示位置の検出は、常時行われていることが望ましい。位置検出部503は指等の指示体による位置指示がいつ開始されるかは分からないので、検出を停止している時間が長いと追従性が損なわれてしまうからである。
通常、マウス等のポインティングデバイスの要求仕様は、位置指示体(ポインタ)の位置をおよそ10msec間隔で取得できることといわれる。上述の位置検出部503による指示体の検出動作は、電極膜102の「上」「下」「左」「右」に交流電圧を順番に印加し、電流を検出することにより行う。したがって、位置検出部503のみを行うのであれば、2.5msec間隔で「上」「下」「左」「右」に交流電圧を順番に印加すればよいことになる。
しかしながら、本実施形態では、表示駆動部502と位置検出部503とが一の電極膜102を排他的に利用している。つまり、表示駆動部502が表示制御をしているときは、位置検出部503は位置検出を行うことができない。
そこで、表示させる内容に変化がない限り、位置検出部503による検出動作を優先し、表示させる内容の変化が生じたら、表示駆動部502の動作を位置検出部503の検出動作の間に割り込ませるようにしている。
【0043】
図9は、表示駆動部502及び位置検出部503の動作状態を説明する状態遷移図である。各状態S901〜S904中、グラフで示したイラストはANDゲート707の出力の反転信号を示している。これは、論理の真の時に指の検出動作を行う、という説明をするために設けている。
【0044】
上位装置から表示駆動部502にビデオ信号が入力されておらず、かつ指示体も検出されていない状態であるときは、表示駆動部502は表示駆動を行う必要がないので、位置検出部503は常時、位置検出動作を行う(S901)。
そして、位置検出部503が位置検出動作を行った結果、指の存在を検出したときは、上位装置からビデオ信号の入力がない場合には、状態S901と同様に、位置検出部503が常時位置検出動作を継続する(S902)。
【0045】
状態S901において、上位装置から表示制御部502にビデオ信号が入力されると、位置検出部503の動作は指の存在を検出する最低限の動作に留め、駆動時間の大半を表示駆動部502に割り当てる(S903)。
【0046】
また、状態S902において、上位装置から表示駆動部502にビデオ信号が入力されると、表示制御部502が表示制御を行いつつ、位置検出部503は指示位置を検出するために、表示駆動部502の動作よりも位置検出部503による指示体の検出を優先するために、駆動時間を表示駆動部502よりも位置検出部503へ長めに割り当てる(S904)。
同様に、状態S903において、位置検出部503が指示体による位置指示を検出すると、指示体の動きをしっかりトレースするために、状態S904に移行する。
【0047】
以上、図9を参照して説明したように、特定の状態(S904)のときは、表示駆動部502と位置検出部503とはそれぞれ交互に動作しなければならないので、位置検出部503の動作時間を制限する必要がある。なお、位置検出部503の位置検出動作の1サイクルは、10msecを下回らなければならない。更に言うならば、表示駆動部502とその占有時間を折半できることが望ましい。電子ペーパーである表示駆動部502の表示処理は、高速に動作し難いからである。具体的には、一例として、表示駆動部は5〜6msec、位置検出部503は4〜5msecを1サイクルとして動作し得ることが望ましい。この仕様では、電極膜102の「上」「下」「左」「右」に交流電圧を順番に印加し、電流を検出する4段階のサイクルは、各段階が1msecで完結することが望ましい。
【0048】
次に、表示制御部502及び位置検出部503から出力される各種制御信号について図10を参照して説明する。この図10(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)及び(g)は、表示制御部502及び位置検出部503の、各種信号及び状態のタイミングチャートである。
ここで、図10(a)はビデオ信号を示している。上位装置からビデオ信号が来ると、その期間を論理の真で模式的に表している。
図10(b)はタイマが出力する論理値を示す。このタイマは表示駆動制御部706の内部に、プログラムによって実現される。
図10(c)は表示更新信号を示す。この信号は、表示駆動部502が位置検出部503に対して表示動作を行いたい、との意思を伝える信号である。
図10(d)は表示制御部が表示動作を行っている状態を示す。この仮想的な信号波形は、論理の真の時に表示制御部が表示動作を行っていることを示す。
図10(e)は位置検出部503が位置検出動作を行っている状態を示す。この仮想的な信号波形は、論理の真の時に位置検出部503が位置検出動作を行っていることを示す。
図10(f)は検出完了信号を示す。この信号は、位置検出部503が表示駆動部502に対して指の位置検出動作を完了したことを報告する信号である。表示駆動部502は、表示更新信号を真に設定してから、この信号が真になったことを受けて、表示動作を実行する。
図10(g)は指存在信号を示す。この信号は、位置検出部503が指の存在を検出したことを示す信号である。
【0049】
表示駆動制御部706は、上位装置からビデオ信号が入力され、ビーズ311による表示内容を変更する必要が生じたことを、差分抽出部705を通じて検知すると、位置算出及び制御部712に「表示駆動要求」を通知すべく、表示更新信号を論理の「偽」から「真」に転換する。しかし、このときは殆どの場合、位置検出部503は指の検出動作の途中である(S1001)。そこで、位置算出及び制御部712は、表示更新信号が真になってから直後の検出動作の終了を待った後、検出完了信号を「偽」から「真」に転換させると共に、指の検出動作を一時停止する(S1002)。
【0050】
表示駆動制御部706は、検出完了信号が「真」になったことを検出すると、内部のタイマをオン動作させる(S1003)。このタイマは、表示駆動部502が表示駆動動作を行う時間を規定する。つまり、タイマが「真」を示している間だけ、表示駆動部502が表示駆動動作を行う(S1004)。これは、表示駆動制御部706は、タイマが規定する時間内に表示更新作業を完遂できていない場合でも、時間切れで表示更新作業を中断することを意味する。
【0051】
表示駆動制御部706は、タイマが所定時間を計測すると、表示更新信号を「真」から「偽」に転換させると共に(S1005)、表示動作を停止する(S1006)。
位置算出及び制御部712は、表示更新信号が「真」から「偽」に転換したことを検出すると(S1007)、検出完了信号を「真」から「偽」に転換させると共に(S1008)、指検出動作を再開する(S1009)。
【0052】
表示駆動制御部706は、上位装置からビデオ信号が与えられていなくても、直前の表示更新作業がタイマによる時間切れで中断されたことにより、未だビーズ311による表示内容を変更する必要があることを、差分抽出部705を通じて検知すると、再度、位置算出及び制御部712に「表示駆動要求」を通知すべく、表示更新信号を論理の「偽」から「真」に転換する。しかし、このときは殆どの場合、位置検出部503は指の検出動作の途中である(S1010)。そこで、位置算出及び制御部712は表示更新信号が真になってから直後の検出動作の終了を待つと、検出完了信号を「偽」から「真」に転換させると共に、指の検出動作を一時停止する(S1011)。
【0053】
表示駆動制御部706は、検出完了信号が「真」になったことを検出すると、内部のタイマをオン動作させる(S1012)。タイマが「真」を示している間だけ、表示駆動部502は表示駆動動作を行う(S1013)。
表示駆動動作が一通り完遂すると、第一フレームメモリ703の内容と第二フレームメモリ704の内容とが完全に一致する。つまり、表示更新作業が不要になる。表示制御部は、このことを差分抽出部705から検知すると、表示動作を止めて、タイマをリセットさせる(S1014)。
【0054】
タイマがリセットされると、タイマの出力は、論理の「真」から「偽」に転換する。表示更新信号はこれを受けて、論理の「真」から「偽」に転換する(S1015)。
位置算出及び制御部712は、表示更新信号が「真」から「偽」に転換したことを検出すると(S1016)、検出完了信号を「真」から「偽」に転換させると共に(S1017)、指検出動作を再開する(S1018)。
【0055】
表示駆動制御部706は、指存在信号(図10(g))の論理状態に応じて、タイマの計時時間を切替える。このため、表示駆動制御部706が指の存在を検出した後(S1019)の、タイマの計時時間(T1022)は、指の存在を検出していない時の計時時間(T1021)よりも短い。
【0056】
以上説明したように、本発明の第一の実施の形態例における位置検出装置501においては、電極膜102を表示駆動部502と位置検出部503との双方で時分割にて排他的に共有する、という技術的思想を開示した。この電極膜102を表示駆動部502と位置検出部503との双方で共有する方法としては、時分割の他に、周波数領域で分けて共有する方法もある。
以下、この技術思想に基づく本発明の第二の実施の形態例を、図11及び図12を参照して説明する。ここで、図11は、本発明の第二の実施の形態例における位置検出装置1011の概略ブロック図である。
この本発明の第二の実施の形態例における位置検出装置1101と、第一の実施の形態の例における位置検出装置501との相違点は、表示駆動部502と位置検出部1103との間で、表示更新信号、検出完了信号、指存在信号のやりとりを行わない点である。その他の点に関しては、第一の実施の形態例と同一なので、詳細な説明は省略する。
【0057】
ここで、本発明の第二の実施の形態例における位置検出部1103について、図12を参照して詳述する。この図12は、本発明の第二の実施の形態例における位置検出部1103の詳細ブロック図である。
この第二の実施の形態例においては、電極膜102の四隅には、第一の実施の形態例におけるモード切替スイッチ602a、602b、602c及び602dの代わりに、電流検出回路1202a、1202b、1202c及び1202dが設けられている。
この電流検出回路1202a、1202b、1202c及び1202dは、サイン波スイッチ1203a、1203b、1203c及び1203d及び電流検出スイッチ1204a、1204b、1204c及び1204dに接続されている。
【0058】
この電流検出回路1202a、1202b、1202c及び1202dは、オペアンプ1217及び抵抗R1218からなる電流電圧変換回路と、オペアンプ1217の正極側入力端子にオフセット電圧を与えるための抵抗R1214及びR1215と、サイン波電圧信号を印加するコンデンサC1216とからなる。
オフセット電圧を与えるための抵抗R1214及びR1215は、表示駆動部502に対し、電極膜102を表示部505の一部として動作させるために設けられている。つまり、オペアンプ1217のイマジナルショート現象を利用して、電極膜102に一定の基準電圧を印加している。
サイン波生成部803から生じるサイン波電圧信号は、サイン波スイッチ1203aとコンデンサC1216とを通じて、オペアンプ1217の正極側入力端子に印加される。つまり、オペアンプ1217のイマジナルショート現象を利用して、電極膜102に交流電圧を印加する。
【0059】
このサイン波スイッチ1203aは、サイン波生成部803と接続されているときは、電流検出スイッチ1204aがオフになり、逆に、サイン波スイッチ1203aがサイン波生成部803と接続されていないときは、電流検出スイッチ1204aはオンとなる。
そして、電流検出回路1202a、1202b、1202c及び1202dから電流検出スイッチ1204a、1204b、1204c及び1204dを通じて得られる出力信号は、バンドパスフィルタ804に入力される。このバンドパスフィルタ804以降の信号処理は、第一の実施形態と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0060】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【0061】
例えば、上記第一及び第二の実施の形態例においては、指示体の例として人の指を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、電子ペーパー301を構成する電極膜102に、例えば、マトリクス状に複数の電極を設けた電極膜を採用した場合、すなわち、既存の電磁誘導方式の位置検出装置や静電結合方式の位置検出装置と、この電子ペーパーとを組み合わせてもよい。これらの場合には、それぞれの位置検出装置専用の指示体、すなわち、所定の周波数で共振する共振回路を搭載する位置指示器(ペン)や、静電結合ペンを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】位置検出装置の動作原理を説明する模式図である。
【図2】位置検出装置の動作原理を説明する模式図である。
【図3】電子ペーパーの原理を説明する模式図である。
【図4】電子ペーパーの原理を説明する模式図の等価回路である。
【図5】第一の実施の形態例における位置検出装置501の概略ブロック図である。
【図6】電極膜102の周囲を詳細に説明するためのブロック図である。
【図7】表示駆動部及び位置検出部の内部の構成ブロックを詳細に説明するための図である。
【図8】位置検出部503の詳細ブロック図である。
【図9】表示駆動部502と位置検出部503の動作状態を説明する状態遷移図である。
【図10】表示制御部及び位置検出部503の、各種信号及び状態のタイミングチャートである。
【図11】第二の実施の形態例における位置検出装置1011の概略ブロック図である。
【図12】第二の実施の形態例における位置検出装置1011の詳細ブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
102…電極膜、103…指、104a、104b、104c、104d…接点、105a、105b…配線、106…交流電圧源、107a…オペアンプ、R107b…抵抗、108…電圧電流変換回路、109…人体、C110…人体コンデンサ、R111…電極膜抵抗、302…水平電圧線、303…水平選択スイッチ、304…直流電圧源、305…垂直制御線、306…FET、307…カウンタ、308…レジスタ、310…電極プレート、311…ビーズ、501…位置検出装置、502…表示駆動部、503…位置検出部503、504…マトリクスゲート、505…表示部、602a、602b、602c、602d…モード切替スイッチ、702…信号処理部、703…第一フレームメモリ、704…第二フレームメモリ、705…差分抽出部、706…表示駆動制御部、707…ANDゲート、712…位置算出、制御部、802a、802b、802c、802d…入出力切替スイッチ、803…サイン波生成部、804…バンドパスフィルタ、805…同期検波部、806…積分器、807…A/D変換器、1011…位置検出装置、1202a、1202b、1202c、1202d…電流検出回路、1203a、1203b、1203c、1203d…サイン波スイッチ、1204a、1204b、1204c、1204d…電流検出スイッチ、1217…オペアンプ、R1214、R1215、R1218…抵抗、C1216…コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電膜からなる第一の電極と、第二の電極と、前記第一及び第二の電極間に介在して設けられた表示材料と、前記第一及び第二の電極間に駆動電源の供給を停止した後も表示状態を保持可能な表示部と、
表示すべき信号に基づき前記表示部の表示駆動を行う表示駆動部と、
指示体による前記第一の電極上の指示位置を検出して検出信号を出力する位置検出部と、
を具備する位置検出装置。
【請求項2】
更に、
前記表示駆動部又は前記位置検出部と前記第一の電極とを選択的に接続するスイッチ部を備えた、
請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記位置検出部は、静電結合方式の位置検出部である、
請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第一の電極は、マトリクス状に配置した複数のセンサを備えた、
請求項3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記指示体は、人の指又は静電結合方式の位置指示器であり、該指示体と前記第一の電極との間で静電結合された位置を検出する、
請求項3または4に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記位置検出部は、抵抗膜方式の検出部である、
請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記第一の電極は、マトリクス状に配置した複数のセンサを備え、
前記位置検出部は、電磁誘導方式の位置検出部である、
請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記指示体は、コイルとコンデンサとからなる共振回路を備えた電磁誘導方式の位置指示器である、
請求項7に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記表示駆動部による表示駆動は、前記位置検出部により指示体が検出されたときは前記表示駆動を中止し、指示体の位置検出を優先的に行う、
請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記位置検出部により位置検出が行われているときに前記表示駆動部に表示すべき信号が入力されたときは、前記位置検出が完了した後に前記表示駆動部による表示駆動を行う、
請求項9に記載の位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−108428(P2010−108428A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282399(P2008−282399)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】