説明

位置検知システムおよび方法

【課題】無線端末の位置計算に必要な基地局の位置を自動的に更新する。
【解決手段】各基地局61から送信されている電波をそれぞれ受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出する複数の観測局21を設け、基地局管理装置34において、各観測局21で得られた受信電界強度および局IDと、観測局記憶装置33の観測局情報から取得した各観測局21の座標位置とに基づいて、基地局61ごとに当該基地局の座標位置を計算し、得られた当該基地局の座標位置と当該基地局の局IDとの組を基地局情報として基地局記憶装置32へ保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検知技術に関し、特に送信端末から送信された電波の受信電界強度に基づき受信端末の位置を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内における人の位置を正確に検知して、建物設備の管理に利用する技術が検討されている。例えば、室内における人の位置が正確に検知できれば、人のいないエリアにおける冷暖房を弱めたり、照明を暗くしあるいは消灯するなどの制御を行うことができ、結果として省エネルギーを実現することができる。また、人の居場所管理や勤務記録管理、危険場所や機密エリアへの侵入警戒、施設における行き先案内、さらには機器・道具・書類ファイルなどの物の位置追跡にも利用できる。
【0003】
このような人や物の位置を検知するシステムとして、GPS(Global Positioning System)が広く利用されている。このGPSは、衛星からの電波を受信する必要があるため、屋内や地下、さらにはビル陰など、電波が十分に届かない場所では利用することができない。また、GPSは原理的に3次元の測位も可能であるが、高さ方向を正確に検知するには、上方からの電波を受信する必要があるため、このような電波がない場合には建物の何階に位置するのか検知することが難しい。
【0004】
従来、このようなGPSを用いた位置検知に代わる技術として、基地局などの基地局からの電波の受信電界強度を計測し、この計測結果に基づき位置を検知する技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。具体的には、無線LANなどの無線通信システムで利用されている基地局の座標位置をIDとともに事前にサーバへ登録しておき、位置検知時に、無線端末で受信した基地局のビーコンから基地局のIDを取得してサーバへ通知することにより、基地局の座標位置をサーバから取得し、この座標位置情報と基地局のビーコンで計測した基地局の受信電界強度とから、無線端末の位置を計算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−306437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来技術では、無線端末の位置を精度良く検知するためには、多くの基地局を必要とするが、基地局として無線LANなどの既存無線通信システムで利用されているものを借用することができる。これは基地局のうち、自己の存在を通信相手となる無線端末へ通知するためにビーコンを定期的に送信する機能を、位置検知に利用できるからである。このため、位置検知システムの設備コストを抑えることができる。
【0007】
この際、無線端末の位置を精度良く検知するためには、基地局の正確な座標位置を事前に登録して置く必要がある。しかしながら、無線通信システムの管理者が位置検知システムと異なる場合、基地局の正確な位置情報、さらには基地局の移設、新設、撤去に関する情報も入手することは難しい。このため従来技術では、各基地局の正確な位置情報を取得する作業が必要となり、位置検知システムの運用コストが増大するという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、無線端末の位置計算に必要な基地局の位置を自動的に更新できる位置検知技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかる位置検知システムは、各基地局から送信されている電波をそれぞれ受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出する複数の観測局と、基地局ごとに、当該基地局が設置されている座標位置と当該基地局の局IDとの組を当該基地局の基地局情報としてそれぞれ記憶する基地局記憶装置と、観測局ごとに、当該観測局が設置されている座標位置を観測局情報として記憶する観測局記憶装置と、各基地局から送信されている電波を受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出する無線端末と、無線端末で得られた受信電界強度および局IDと、基地局記憶装置から取得した当該局IDに対応する基地局の座標位置とに基づいて、無線端末の座標位置を計算する位置計算装置と、各観測局で得られた受信電界強度および局IDと、観測局記憶装置の観測局情報から取得した各観測局の座標位置とに基づいて、基地局ごとに当該基地局の座標位置を計算し、得られた当該基地局の座標位置と当該基地局の局IDとの組を基地局情報として基地局記憶装置へ保存する基地局管理装置とを備えている。
【0010】
この際、無線端末に、各基地局から送信されている電波をそれぞれ受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出する無線部と、無線部で得られた受信電界強度および局IDと、基地局管理部から通知されて記憶している各基地局の座標位置とに基づいて、自己の座標位置を計算する位置計算装置とを設けてもよい。
【0011】
また、位置計算装置で、計算した自己の座標位置を順次に保存し、これら複数の座標位置を、当該座標位置を利用するアプリケーション装置へ一括して通知するようにしてもよい。
【0012】
また、無線端末に、各基地局から送信されている電波をそれぞれ受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出し、これら電波ごとに得られた受信電界強度および局IDを位置計算装置へ通知する無線部を設けてもよい。
【0013】
また、観測局のうちの一部またはすべての観測局で、当該観測局の局IDを含む電波を送信し、無線端末で、観測局から送信されている電波を受信して、当該電波の受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元観測局の局IDを検出し、位置計算装置で、無線端末の座標位置を計算する際、無線端末で得られた基地局および観測局に関する受信電界強度および局IDと、基地局記憶装置から取得した当該基地局の局IDに対応する座標位置と、観測局記憶装置から取得した当該観測局の局IDに対応する座標位置とに基づいて、無線端末の座標位置を計算するようにしてもよい。
【0014】
また、基地局管理装置で、基地局の座標位置を計算する際、当該基地局に関する受信電界強度の変動幅と、受信電界強度の許容変動幅とを比較し、変動幅が許容変動幅を越えている場合には、当該基地局に関する座標位置の計算を行わないようにしてもよい。
【0015】
また、本発明にかかる位置検知方法は、複数の観測局が、各基地局から送信されている電波をそれぞれ受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出する観測ステップと、基地局記憶装置が、基地局ごとに、当該基地局が設置されている座標位置と当該基地局の局IDとの組を当該基地局の基地局情報としてそれぞれ記憶する基地局記憶ステップと、観測局記憶装置が、観測局ごとに、当該観測局が設置されている座標位置を観測局情報として記憶する観測局記憶ステップと、各基地局から送信されている電波を受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出する無線端末と、位置計算装置が、無線端末で得られた受信電界強度および局IDと、基地局記憶装置から取得した当該局IDに対応する基地局の座標位置とに基づいて、無線端末の座標位置を計算する位置計算ステップと、基地局管理装置が、各観測局で得られた受信電界強度および局IDと、観測局記憶装置の観測局情報から取得した各観測局の座標位置とに基づいて、基地局ごとに当該基地局の座標位置を計算し、得られた当該基地局の座標位置と当該基地局の局IDとの組を基地局情報として基地局記憶装置へ保存する基地局管理ステップとを備えている。
【0016】
また、本発明にかかる位置検知方法は、管理装置の管理記憶部が、複数の基地局ごとに、当該基地局が設置されている座標位置と当該基地局の局IDとを当該基地局の基地局情報としてそれぞれ記憶する管理記憶ステップと、管理装置の基地局管理部が、各基地局の基地局情報を管理記憶部から読み出して無線端末へ通知する基地局管理ステップと、無線端末の端末記憶部が、基地局管理部から通知された基地局情報を記憶する端末記憶ステップと、無線端末の無線部が、各基地局から送信された電波をそれぞれ受信して、基地局ごとに当該電波の受信電界強度を計測するとともに当該電波から当該基地局の局IDを検出する検出ステップと、無線端末の位置計算装置が、検出ステップで検出した各局IDに基づき端末記憶部の基地局情報から取得した各基地局の座標位置と、検出ステップで計測した各基地局の受信電界強度とから、自己の座標位置を計算する自己位置計算ステップと、複数の観測局が、各基地局から送信された電波をそれぞれ受信して、基地局ごとに当該電波の受信電界強度を計測するとともに当該電波から当該基地局の局IDを検出する観測ステップとを備え、管理記憶ステップは、各観測局が設置されている座標位置を観測局情報として記憶し、基地局管理ステップは、各観測局から各基地局の受信電界強度および局IDを取得し、基地局ごとに、各観測局で計測された当該基地局の受信電界強度と、管理記憶部の観測局情報から取得した各観測局の座標位置とから、当該基地局の座標位置を計算し、当該基地局の座標位置と局IDとを基地局情報として管理記憶部へ保存するようにしたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各基地局の電波が各観測局で観測されてその座標位置が計算され、基地局情報に対して自動的に反映されることになる。したがって、基地局の設置位置を検出して登録するための作業を自動化することができ、位置検知システムの運用コストを大幅に削減することができる。このため、基地局が属する無線通信システムの管理者が位置検知システムと異なるような、基地局の移設、新設、撤去に関する情報が得られない場合でも、各基地局の最新の設置状況に応じた基地局情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【図2】基地局情報の構成例である。
【図3】観測局情報の構成例である。
【図4】第1の実施の形態にかかる位置検知システムの動作を示すシーケンス図である。
【図5】基地局位置および観測局の配置例である。
【図6】観測局での観測結果を示す説明図である。
【図7】基地局位置の算出過程を示す説明図である。
【図8】基地局位置および観測局の配置例である。
【図9】無線端末位置の算出過程を示す説明図である。
【図10】第2の実施の形態にかかる位置検知システムの動作を示すシーケンス図である。
【図11】第4の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【図12】第6の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる位置検知システムについて説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【0020】
この位置検知システム1は、部屋50に予め設置されている複数の基地局(以下、基地局という)61から送信されているビーコンの受信電界強度を無線端末10で計測し、その計測結果に基づき無線端末10が自己の座標位置を計算するためのシステムである。
【0021】
アプリケーション装置40は、位置検知システム1と通信回線L1を介して接続されて、位置検知システム1で計算された無線端末10の座標位置を利用して、各種アプリケーションを実行する装置である。このアプリケーション装置40において、例えば、無線端末10の座標位置を人の座標位置と見なして、人のいないエリアにおける冷暖房を弱めたり、照明を暗くしあるいは消灯するなどの室内環境制御を行えば、結果として省エネルギーを実現することができる。また、人の居場所管理や勤務記録管理、危険場所や機密エリアへの侵入警戒、施設における行き先案内、さらには機器・道具・書類ファイルなどの物の位置追跡などのセキュリティ管理を行えば、結果として施設における高い安全性を得ることができる。
【0022】
基地局61は、通信回線L2を介してルータやゲートウェイなどの通信処理装置60に接続されており、他の無線端末(図示せず)が基地局61を介して無線通信を行うための無線通信システムを構成している。一般的な無線通信システムで使用される基地局61は、無線LANなどの無線通信プロトコルに基づいて、自己の存在を通信相手となる無線端末へ通知するための機能として、自己を識別するための時別情報としてMACアドレスなどからなる局IDを含むビーコンを定期的に送信する機能を有している。
【0023】
この位置検知システム1には、各基地局61から送信されたビーコンなどの電波を受信して、その電波に関する受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)と、各基地局61の座標位置とに基づいて、自己の座標位置を算出する無線端末10と、各基地局61の座標位置を、無線アクセスポイント22を介して無線端末10へ通知する管理装置30とが含まれている。
【0024】
本実施の形態は、各基地局61から送信されている電波をそれぞれ受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出する複数の観測局21と、基地局61ごとに、当該基地局が設置されている座標位置と当該基地局の局IDとの組を当該基地局の基地局情報としてそれぞれ記憶する基地局記憶装置32と、観測局21ごとに、当該観測局が設置されている座標位置を観測局情報として記憶する観測局記憶装置33とを設けたものである。
【0025】
そして、無線端末10において、各基地局61から送信されている電波を受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出し、位置計算装置15において、無線端末10で得られた受信電界強度および局IDと、基地局記憶装置32から取得した当該局IDに対応する基地局の座標位置とに基づいて、無線端末10の座標位置を計算し、基地局管理装置34において、各観測局21で得られた受信電界強度および局IDと、観測局記憶装置33の観測局情報から取得した各観測局21の座標位置とに基づいて、基地局61ごとに当該基地局の座標位置を計算し、得られた当該基地局の座標位置と当該基地局の局IDとの組を基地局情報として基地局記憶装置32へ保存するようにしたものである。
【0026】
[管理装置の構成]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システム1で用いる管理装置30の構成について詳細に説明する。
管理装置30は、サーバ装置などの情報処理装置からなり、通信回線L1を介して各観測局21および無線アクセスポイント(以下、無線APという)22とデータ通信可能に接続されている。なお、観測局21は基地局61からの電波を観測する機能を有する無線通信端末であり、無線AP22は、無線端末10と無線データ通信を行うための一般的な無線通信端末である。
【0027】
管理装置30には、主な機能部として、通信処理部31、基地局記憶装置32、観測局記憶装置33、および基地局管理装置34が設けられている。これら管理装置30の機能部の一部またはすべてを別個の装置で実現してもよく、これらすべての機能部を1つの装置で実現してもよい。なお、管理装置30の機能部については、これらに限定されるものではなく、サーバ装置などの一般的な情報処理装置が備える各種機能部を設けてもよい。
【0028】
通信処理部31は、専用のデータ通信回路からなり、通信回線L1を介して観測局21や無線AP22との間でデータ通信を行う機能を有している。
【0029】
基地局記憶装置32は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、各機能部での各種処理動作に用いる基地局情報を記憶する機能を有している。
図2は、基地局情報の構成例である。ここでは、基地局61ごとに、当該基地局61のMACアドレスなど、当該基地局61を識別するための識別情報である局IDと、当該基地局61の設置されている3次元座標位置を示す座標値Xm,Ym,Zmとが組としてそれぞれ登録されている。これら基地局情報の座標値は、観測局21で計測された各基地局61からの電波の受信電界強度に基づいて、基地局管理装置34により計算されて基地局記憶装置32に保存される。
【0030】
観測局記憶装置33は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、各機能部での各種処理動作に用いる観測局情報を記憶する機能を有している。
図3は、観測局情報の構成例である。ここでは、観測局21ごとに、当該観測局21の座標値Xm,Ym,Zmがそれぞれ登録されている。この観測局情報は、各観測局21を設置した際にオペレータにより予め登録される。なお、部屋50における各装置の座標系は、長手方向がX座標、短手方向がY座標、高さ方向がZ座標であり、座標位置を示す座標値としては、部屋50の左点前角の基点Pから計測した距離(m)が用いられている。
【0031】
基地局管理装置34は、CPUなどのマイクロプロセッサが記憶部(図示せず)のプログラムを読み込んで実行することにより各種演算処理を行う演算処理部を備えている。基地局管理装置34には、主な機能部として、各基地局61の基地局情報を基地局記憶装置32から読み出して、通信処理部31、通信回線L1および無線AP22を介して無線端末10の位置計算装置15へ通知する機能と、通信処理部31および通信回線L1を介して、各観測局21から各基地局61の受信電界強度および局IDを取得する機能と、各観測局21で得られた受信電界強度および局IDと、観測局記憶装置33の観測局情報から取得した各観測局21の座標位置とに基づいて、基地局61ごとに当該基地局の座標位置を計算する機能と、得られた当該基地局の座標位置と当該基地局の局IDとの組を基地局情報として観測局記憶装置へ保存する機能とを有している。
【0032】
[無線端末の構成]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システム1で用いる無線端末10の構成について詳細に説明する。
無線端末10は、無線データ通信機能を有する携帯電話機や携帯情報端末、さらには無線IDタグなどの携帯無線通信端末からなり、無線回線を介して無線AP22とデータ通信可能に接続され、さらには通信回線L1を介して管理装置30とデータ通信可能に接続されている。
【0033】
無線端末10には、主な機能部として、無線部11、操作入力部12、画面表示部13、および位置計算装置15が設けられている。なお、無線端末10の機能部については、これらに限定されるものではなく、携帯電話機や携帯情報端末などの一般的な携帯無線通信端末が備える各種機能部を設けてもよい。
【0034】
無線部11は、専用の無線回路からなり、無線回線を介して無線AP22と無線データ通信を行う機能と、基地局61からのビーコンなどの電波を受信する機能と、基地局61ごとに当該電波の受信電界強度を計測する機能と、当該電波から当該基地局61の局IDを検出する機能とを有している。なお、無線部11に、基地局61と無線データ通信を行う機能を設け、通信回線L2を介して通信処理装置60や、さらにはその先に接続されている通信網(図示せず)とデータ通信を行う機能を設けてもよい。
【0035】
操作入力部12は、操作ボタン、操作スイッチ、カーソルキー、タッチパネルなどの操作入力装置からなり、利用者の操作入力を検出する機能を有している。
画面表示部13は、LCDなどの画面表示装置からなり、各機能部から出力されたデータを画面表示する機能を有している。
【0036】
位置計算装置15は、CPUなどのマイクロプロセッサが位置計算装置15の内部記憶部(図示せず)から読み出したプログラムを実行することにより各種演算処理を行う演算処理部を備えている。位置計算装置15は、主な機能として、無線部11で受信した管理装置30からの基地局情報を、内部記憶部に保存する機能と、無線部11で検出した各局IDに基づき内部記憶部の基地局情報から取得した各基地局61の座標位置と、無線部11で計測した各基地局61の受信電界強度とから、自己の座標位置を計算する機能とを有している。
【0037】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図4を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システム1の動作について説明する。図4は、第1の実施の形態にかかる位置検知システムの動作を示すシーケンス図である。
【0038】
観測局21は、観測タイミングの到来に応じて、各基地局61から送信された電波をそれぞれ受信して、基地局61ごとに当該電波の受信電界強度を計測するとともに(ステップ100)、当該電波から当該基地局61の局IDを検出する(ステップ101)。各観測局21での観測タイミングについては、それぞれの観測局21の時計機能で計時してもよく、管理装置30の時計機能で計時した結果に基づき管理装置30から各観測局21へ指示してもよい。
【0039】
この後、管理装置30は、基地局管理装置34により、通信処理部31および通信回線L1を介して、各観測局21から各基地局61の受信電界強度および局IDを観測結果として取得し(ステップ102)、基地局記憶装置32に保存する(ステップ103)。
【0040】
続いて、基地局管理装置34は、基地局記憶装置32から各観測局21で観測した各基地局61の観測結果を取得するとともに、観測局記憶装置33の観測局情報から各観測局21の座標位置を取得する。そして、基地局管理装置34は、基地局61ごとに、当該基地局61の観測結果に含まれる受信電界強度と各観測局21の座標位置とから、当該基地局61の座標位置を計算し(ステップ104)、得られた座標位置を当該基地局61の観測結果に含まれる局IDとともに、基地局記憶装置32の基地局情報に保存する(ステップ105)。
【0041】
このようにして、基地局管理装置34は、各基地局61の座標位置を計算した後、これら基地局61の座標位置を前回計算した座標位置と比較し、いずれかの座標位置が位置誤差許容範囲以上変化したか否か確認する(ステップ106)。この位置誤差許容範囲は、各基地局61の座標位置に対する誤差の許容範囲を示す値であり、前回通知した座標位置と新規座標位置との距離や、各座標軸における座標値差から構成されている。この位置誤差許容範囲の値については、位置検知システムに求められる位置検知精度に基づいて予め記憶部()に設定しておけばよい。
【0042】
ここで、すべての座標位置の変化が位置誤差許容範囲より小さい場合(ステップ106:NO)、前回通知した座標位置と新規座標位置との差が許容範囲であることから、無線端末10の基地局情報を更新する必要がない。このため、基地局管理装置34は、無線端末10への基地局情報の通知は行わず、一連の処理を終了する。
【0043】
一方、いずれかの座標位置が位置誤差許容範囲以上変化していた場合(ステップ106:YES)、基地局管理装置34は、新たに計算した各基地局61の座標位置を示す基地局情報を基地局記憶装置32から読み出し、通信処理部31から通信回線L1および無線AP22を介して無線端末10へ通知して(ステップ107)、一連の処理を終了する。
無線端末10は、無線部11を介して管理装置30から通知された基地局情報を受信し、位置計算装置15により、内部記憶部に保存する(ステップ108)。
【0044】
この後、無線端末10において、利用者による位置確認操作が操作入力部12で検出された場合、位置計算装置15は、無線部11を制御して、基地局61ごとに当該電波の受信電界強度を計測するとともに(ステップ110)、当該電波から当該基地局61の局IDを検出する(ステップ111)。
【0045】
続いて、位置計算装置15は、無線部11で検出した各局IDに基づき内部記憶部の基地局情報から各基地局61の座標位置を取得し、これら基地局61の座標位置と無線部11で計測した各基地局61の受信電界強度とから、自己の座標位置を計算し(ステップ112)、画面表示部13に自己の座標位置を画面表示して利用者に提示する(ステップ113)。
【0046】
[基地局位置の算出方法]
次に、図5〜図7を参照して、基地局位置の算出方法について説明する。図5は、基地局位置および観測局の配置例である。図6は、観測局での観測結果を示す説明図である。図7は、基地局位置の算出過程を示す説明図である。
【0047】
図5では、部屋50内に、基地局A1〜A7と、観測局M1〜M5とが設置されており、無線端末Tが存在している。また、図6では、観測局21と基地局61との組合せごとに、当該基地局61の局IDと受信電解強度(RSSI)とが組として登録されている。
ここでは、観測局M1,M2,M3の座標位置が(Xm1,Ym1,Zm1)、(Xm2,Ym2,Zm2)、(Xm3,Ym3,Zm3)であり、これら観測局M1,M2,M3で観測した基地局A2の受信電界強度(RSSI)がそれぞれRa1,Ra2,Ra3であったものとし、加重平均法に基づいて基地局A2の座標位置(Xa2,Ya2,Za2)を算出する場合を例として説明する。
【0048】
まず、受信電界強度Rai(i=1,2,3)から、それぞれの観測局M1,M2,M3における受信利得Giを減算して補正することにより、補正受信電界強度Rai’(=Rai−Gi)を計算する。各観測局M1,M2,M3の受信利得については予め観測局記憶装置33に登録しておけばよい。
続いて、得られた補正受信電界強度Rai’をデシベル値(dB)から真値(W)で示される補正受信電界強度Pai(=10Rai'/10)に変換する。
【0049】
次に、得られた補正受信電界強度Paiに関する受信強度比Cai(=Pai/ΣPai)を計算する。
そして、これら受信強度比Caiと観測局Miの座標位置(Xmi,Ymi,Zmi)とに基づいて、基地局A2の座標位置Xa2(=ΣXmiCai)、Ya2(=ΣYmiCai)、Za2(=ΣZmiCai)を計算すればよい。
【0050】
[無線端末位置の算出方法]
次に、図8および図9を参照して、無線端末位置の算出方法について説明する。図8は、基地局位置および観測局の配置例である。図9は、無線端末位置の算出過程を示す説明図である。
【0051】
図8では、部屋50内に、基地局A1〜A7と、観測局M1〜M5とが設置されており、無線端末Tが存在している。
ここでは、基地局A1,A3,A5の座標位置が(Xa1,Ya1,Za1)、(Xa3,Ya3,Za3)、(Xa5,Ya5,Za5)であり、無線端末Tで観測したこれら基地局A1,A3,A5の受信電界強度(RSSI)がそれぞれRt1,Rt3,Rt5であったものとし、加重平均法に基づいて無線端末Tの座標位置(Xt,Yt,Zt)を算出する場合を例として説明する。
【0052】
まず、受信電界強度Rti(i=1,3,5)をデシベル値(dB)から真値(W)で示される補正受信電界強度Pti(=10Rti'/10)に変換する。
【0053】
次に、得られた補正受信電界強度Ptiに関する受信強度比Cti(=Pti/ΣPti)を計算する。
そして、これら受信強度比Ctiと基地局Aiの座標位置(Xai,Yai,Zai)とに基づいて、無線端末Tの座標位置Xt(=ΣXaiCti)、Yt(=ΣYaiCti)、Zt(=ΣZaiCt)を計算すればよい。
【0054】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、各基地局61から送信されている電波をそれぞれ受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出する複数の観測局21を設け、基地局管理装置34において、各観測局21で得られた受信電界強度および局IDと、観測局記憶装置33の観測局情報から取得した各観測局21の座標位置とに基づいて、基地局61ごとに当該基地局の座標位置を計算し、得られた当該基地局の座標位置と当該基地局の局IDとの組を基地局情報として基地局記憶装置32へ保存するようにしたものである。
【0055】
これにより、各基地局61の電波が各観測局21で観測されてその座標位置が計算され、基地局情報に対して自動的に反映されることになる。
したがって、基地局61の設置位置を検出して登録するための作業を自動化することができ、位置検知システムの運用コストを大幅に削減することができる。このため、基地局61が属する無線通信システムの管理者が位置検知システムと異なるような、基地局61の移設、新設、撤去に関する情報が得られない場合でも、各基地局61の最新の設置状況に応じた基地局情報を得ることができる。
【0056】
また、本実施の形態では、管理装置30において、新たに計算した各基地局61の新規座標位置を前回通知した座標位置と比較し、いずれかの座標位置が位置誤差許容範囲以上変化していた場合には、新規座標位置を無線端末10の位置計算装置15へ通知し、すべての座標位置の変化が位置誤差許容範囲より小さい場合には、新規座標位置を無線端末10の位置計算装置15へ通知しないようにしたので、基地局情報の更新にかかる無線端末10の処理負担を必要最低限に抑えることができる。特に、無線端末10が無線IDタグからなる場合には、極めて容量の小さい電池しか搭載されておらず、電池の消耗が問題となるが、このような構成を実施することにより電池の消耗を抑制することができ、長寿命化を実現することが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態では、管理装置30の基地局管理装置34において、各観測局21から観測結果を取得した際、基地局位置の再計算要否について判定するようにしてもよい。
具体的には、基地局管理装置34において、各観測局21から観測結果を取得した際、これら観測結果に含まれている新規受信電解強度と、前回の基地局位置計算に用いた前回受信電解強度とを比較し、いずれかの受信電界強度が強度誤差許容範囲以上変化していた場合には、新規受信電解強度に基づき基地局位置を新たな計算し、すべての受信電解強度の変化が強度誤差許容範囲より小さい場合には、新規基地局位置を再計算しない。
【0058】
これにより、管理装置30での処理負担を軽減できる。また、前述と同様に、基地局情報の更新にかかる無線端末10の処理負担を必要最低限に抑えることができる。特に、無線端末10が無線IDタグからなる場合には、極めて容量の小さい電池しか搭載されておらず、電池の消耗が問題となるが、このような構成を実施することにより電池の消耗を抑制することができ、長寿命化を実現することが可能となる。
【0059】
また、本実施の形態において、無線端末10の位置計算装置15で計算した自己の座標位置を、無線部11から無線AP22を介してアプリケーション装置40へ通知してもよい。これにより、アプリケーション装置40で無線端末10の座標位置を利用して、各種アプリケーションを実行することができる。
【0060】
この場合、座標位置を計算するごとに通知してもよいが、計算した座標位置を位置計算装置15の内部記憶部へ順次保存しておき、これら複数の座標位置をアプリケーション装置40へ一括して通知するようにしてもよい。これにより、無線端末10での座標位置の無線送信回数を削減することができ、電池消耗の抑制、さらには長寿命化を実現できる。
なお、無線端末10が有線通信機能を備えている場合には、例えば無線端末10が通信回線L1、管理装置30、あるいはアプリケーション装置40に接続された時点で、保存しておいた座標位置をアプリケーション装置40へ通知するようにしてもよい。また、この時点で管理装置30の基地局記憶装置32から基地局情報を無線端末10へ通知するようにしてもよい。
【0061】
[第2の実施の形態]
次に、図10を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる位置検知システム1について説明する。図10は、第2の実施の形態にかかる位置検知システムの動作を示すシーケンス図であり、前述した図4と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0062】
第1の実施の形態では、管理装置30で計算した基地局位置を含む基地局情報を、管理装置30から無線端末10へ通知する場合を例として説明した。本実施の形態では、自己位置計算時における無線端末10からの要求に応じて、基地局情報を管理装置30から無線端末10へ通知する場合について説明する。
【0063】
本実施の形態において、無線端末10の位置計算装置15は、自己位置計算の際、無線部11で検出した各局IDを含む基地局情報要求を、無線部11から管理装置30へ通知する機能と、これに応じて無線部11で受信した管理装置30からの基地局情報に基づき自己位置を計算する機能とを備えている。
【0064】
また、管理装置30の基地局管理装置34は、通信処理部31で受信した無線端末10からの基地局情報要求に応じて、当該基地局情報要求に含まれる局IDの基地局情報を基地局記憶装置32から検索する機能と、この検索により得られた基地局情報を通信処理部31から要求元の無線端末10へ通知する機能とを有している。
なお、本実施の形態にかかるこれら以外の構成については第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0065】
[第2の実施の形態の動作]
次に、図10を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムの動作について説明する。
【0066】
観測局21は、観測タイミングの到来に応じて、各基地局61から送信された電波をそれぞれ受信して、基地局61ごとに当該電波の受信電界強度を計測するとともに(ステップ100)、当該電波から当該基地局61の局IDを検出する(ステップ101)。各観測局21での観測タイミングについては、それぞれの観測局21の時計機能で計時してもよく、管理装置30の時計機能で計時した結果に基づき管理装置30から各観測局21へ指示してもよい。
【0067】
この後、管理装置30は、基地局管理装置34により、通信処理部31および通信回線L1を介して、各観測局21から各基地局61の受信電界強度および局IDを観測結果として取得し(ステップ102)、基地局記憶装置32に保存する(ステップ103)。
【0068】
続いて、基地局管理装置34は、基地局記憶装置32から各観測局21で観測した各基地局61の観測結果を取得するとともに、観測局記憶装置33の観測局情報から各観測局21の座標位置を取得する。そして、基地局管理装置34は、基地局61ごとに、当該基地局61の観測結果に含まれる受信電界強度と各観測局21の座標位置とから、当該基地局61の座標位置を計算し(ステップ104)、得られた座標位置を当該基地局61の観測結果に含まれる局IDとともに、基地局記憶装置32の基地局情報に保存する(ステップ105)。
【0069】
一方、無線端末10において、利用者による位置確認操作が操作入力部12で検出された場合、位置計算装置15は、無線部11を制御して、基地局61ごとに当該電波の受信電界強度を計測するとともに(ステップ110)、当該電波から当該基地局61の局IDを検出する(ステップ111)。
ここで、位置計算装置15は、これら検出した局IDを含む基地局情報要求を、無線部11から管理装置30へ通知する(ステップ200)。
【0070】
管理装置30の基地局管理装置34は、通信処理部31で受信した無線端末10からの基地局情報要求に応じて、当該基地局情報要求に含まれる局IDの基地局情報を基地局記憶装置32から検索する(ステップ201)。
そして、基地局管理装置34は、検索により得られた基地局情報を通信処理部31から要求元の無線端末10へ通知する(ステップ202)。
【0071】
無線端末10の位置計算装置15は、無線部11で受信した管理装置30からの基地局情報から各基地局61の座標位置を取得し、これら基地局61の座標位置と無線部11で計測した各基地局61の受信電界強度とから、自己の座標位置を計算し(ステップ112)、画面表示部13に自己の座標位置を画面表示して利用者に提示する(ステップ113)。
【0072】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、無線端末10の位置計算装置15で、自己位置計算の際、無線部11で検出した各局IDを含む基地局情報要求を管理装置30へ通知し、管理装置30の基地局管理装置34で、無線端末10からの基地局情報要求に応じて、当該基地局情報要求に含まれる局IDの基地局情報を基地局記憶装置32から検索して要求元の無線端末10へ通知し、無線端末10の位置計算装置15で、これに応じて受信した管理装置30からの基地局情報に基づき自己位置を計算するようにしたので、すべての基地局61に関する基地局情報を内部記憶部で保持することなく、最新の基地局位置に基づき自己位置を計算することができる。
【0073】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる位置検知システム1について説明する。
第1および第2の実施の形態では、観測局21では、基地局61から送信されたビーコンなどの電波の観測のみを行う場合を例として説明したが、観測局21において、基地局61と同様にして、無線端末10の位置計算に用いるビーコンなどの電波を送信するようにしてもよい。
【0074】
本実施の形態において、観測局21のうちの一部またはすべての観測局は、当該観測局の局IDを含むビーコンなどの電波を送信する機能を有している。
また、無線端末10の無線部11は、観測局21から送信されている電波を受信して、当該電波の受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元観測局の局IDを検出する機能を有している。
【0075】
また、位置計算装置15は、無線端末10の座標位置を計算する際、無線端末10で得られた基地局61および観測局21に関する受信電界強度および局IDと、基地局記憶装置32から取得した当該基地局の局IDに対応する座標位置と、観測局記憶装置33から取得した当該観測局の局IDに対応する座標位置とに基づいて、無線端末10の座標位置を計算する機能を有している。
【0076】
この場合、観測局21として、無線LANなどの無線通信プロトコルに基づいて、自己の存在を通信相手となる無線端末へ通知するための機能として、自己を識別するための時別情報としてMACアドレスなどからなる局IDを含むビーコンを定期的に送信する機能を備えていればよい。したがって、データ送信を行う機能については必須ではなが、持ち合わせていてもよく、具体的には、基地局61と同様の一般的な無線基地局を用いてもよい。
【0077】
これにより、無線端末10の無線部11において、基地局61からの電波と同様に、観測局21からの電波を観測することができ、位置計算に利用できる。
したがって、本実施の形態によれば、基地局61の設置台数が少ない場合には、観測局21で基地局61の機能を補うことができる。特に、部屋50のうち基地局61の設置密度が低い場所に観測局21を設置することにより、無線端末10の位置計算精度を高めることができる。
【0078】
[第4の実施の形態]
次に、図11を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかる位置検知システム1について説明する。図11は、第4の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図であり、前述の図1と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
第1〜第3の実施の形態では、位置計算装置15が無線端末10に搭載されている場合を例として説明したが、位置計算装置15を無線端末10から独立した別個の装置で実現してもよい。
【0079】
本実施の形態において、位置計算装置15は、通信回線L1に接続されており、無線AP22を介して無線端末10とデータ通信可能に接続されている。なお、位置計算装置15は管理装置30内に設けてもよい。
また、無線端末10の無線部11は、各基地局61から送信されている電波をそれぞれ受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出し、これら電波ごとに得られた受信電界強度および局IDを位置計算装置15へ通知する機能を有している。
【0080】
これにより、無線端末10での処理負担の軽減、さらには電池の長寿命化を実現することが可能となる。また、複数の無線端末10を位置検知システム1で管理するような場合には、これら無線端末10で個別に実行されていた位置計算を1つの位置計算装置15に集約することができ、位置検知システム1全体における処理の効率化、さらには省エネを実現することができる。
【0081】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態にかかる位置検知システム1について説明する。
第1および第2の実施の形態では、観測局21で観測された基地局61からの電波の観測結果に基づき、基地局61の位置座標を計算する場合について説明したが、この際、基地局61の受信電界強度の変動に応じて、当該基地局61の位置座標の計算可否を判定するようにしてもよい。
【0082】
近年、ノートパソコンなどとともに持ち歩くことが可能な小型の無線基地局、いわゆるモバイルアクセスポイントが利用されている。このような無線基地局は、基地局61と同様にビーコンなどの電波を送信する機能を備えているため、この電波が無線端末10、さらには観測局21で観測されて、基地局61が固定的に設置されたものと見なされる場合がある。
このようなモバイルアクセスポイントは、位置が変化するため、その受信電界強度の変動幅が大きく、固定の無線基地局のように受信電界強度が安定していない。このため、無線端末10の座標位置の計算誤差となる。
【0083】
本実施の形態では、基地局管理装置34において、観測局21から取得した各基地局61からの電波の受信電界強度に基づいて、これら基地局61の位置座標を計算する際(図4のステップ104)、基地局61ごとに、基地局記憶部32に保存されている受信電界強度の変動幅と、予め記憶部に設定しておいた受信電界強度の許容変動幅とを比較することにより、当該基地局61に関する位置座標の計算要否を判定する機能を有している。
【0084】
したがって、任意の基地局61について、ある一定期間における受信電界強度の変動幅が許容変動幅よりも大きく、当該基地局61がモバイルアクセスポイントの可能性がある場合には、当該基地局61に関する位置座標の計算が不要と判定され、当該基地局61に関する位置座標の計算が行われない。これにより、無線端末10の位置計算に用いる基地局61としてモバイルアクセスポイントが誤登録されることを回避でき、位置計算精度を高めることができる。
【0085】
[第6の実施の形態]
次に、図12を参照して、本発明の第6の実施の形態にかかる位置検知システム1について説明する。図12は、第6の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【0086】
第1および第2の実施の形態では、基地局61が位置検知システム1とは別個の無線通信システムに接続されている場合を例として説明したが、基地局61が位置検知システム1に共通して接続されていてもよい。
【0087】
図12では、基地局61が位置検知システム1の通信回線L1に共通して接続されており、この通信回線L1には通信処理装置60も接続されている。このように構成であっても、第1および第2の実施の形態を適用することができる。この場合、すべての基地局61が通信回線L1に接続されているが、その一部のみが通信回線L1に接続されている構成であってもよい。また、無線端末10の無線部11に、基地局61と無線データ通信を行う機能を設け、通信回線L1を介して通信処理装置60や、さらにはその先に接続されている通信網(図示せず)とデータ通信を行う機能を設けてもよい。
【0088】
また、このような位置検知システム1によれば、管理装置30から基地局61を制御することができる。このため、観測局21に変えて基地局61のうち設置位置が既知である基地局61で、他の基地局61の電波を観測するようにしてもよい。これにより、観測局21の設置数を削減することができ、設備コストを削減することができる。
【0089】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0090】
1…位置検知システム、10…無線端末、11…無線部、12…操作入力部、13…画面表示部、14…端末記憶部、15…位置計算装置、21…観測局、22…無線AP、30…管理装置、31…通信処理部、32…基地局記憶装置、33…観測局記憶装置、34…基地局管理装置、40…アプリケーション装置、50…部屋、60…通信処理装置、61…基地局、L1,L2…通信回線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各基地局から送信されている電波をそれぞれ受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出する複数の観測局と、
前記基地局ごとに、当該基地局が設置されている座標位置と当該基地局の局IDとの組を当該基地局の基地局情報としてそれぞれ記憶する基地局記憶装置と、
前記観測局ごとに、当該観測局が設置されている座標位置を観測局情報として記憶する観測局記憶装置と、
前記各基地局から送信されている電波を受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出する無線端末と、
前記無線端末で得られた前記受信電界強度および前記局IDと、前記基地局記憶装置から取得した当該局IDに対応する基地局の座標位置とに基づいて、前記無線端末の座標位置を計算する位置計算装置と、
前記各観測局で得られた前記受信電界強度および前記局IDと、前記観測局記憶装置の前記観測局情報から取得した前記各観測局の前記座標位置とに基づいて、前記基地局ごとに当該基地局の座標位置を計算し、得られた当該基地局の前記座標位置と当該基地局の局IDとの組を前記基地局情報として前記基地局記憶装置へ保存する基地局管理装置と、
を備えることを特徴とする位置検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検知システムにおいて、
前記無線端末は、
前記各基地局から送信されている電波をそれぞれ受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出する無線部と、
前記無線部で得られた前記受信電界強度および前記局IDと、前記基地局管理部から通知されて記憶している前記各基地局の前記座標位置とに基づいて、自己の座標位置を計算する前記位置計算装置と
を備えることを特徴とする位置検知システム。
【請求項3】
請求項2に記載の位置検知システムにおいて、
前記位置計算装置は、計算した自己の座標位置を順次に保存し、これら複数の前記座標位置を、当該座標位置を利用するアプリケーション装置へ一括して通知することを特徴とする位置検知システム。
【請求項4】
請求項1に記載の位置検知システムにおいて、
前記無線端末は、前記各基地局から送信されている電波をそれぞれ受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出し、これら電波ごとに得られた前記受信電界強度および前記局IDを前記位置計算装置へ通知する無線部を備えることを特徴とする位置検知システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の位置検知システムにおいて、
前記観測局のうちの一部またはすべての観測局は、当該観測局の局IDを含む電波を送信し、
前記無線端末は、前記観測局から送信されている電波を受信して、当該電波の受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元観測局の局IDを検出し、
前記位置計算装置は、前記無線端末の座標位置を計算する際、前記無線端末で得られた前記基地局および前記観測局に関する前記受信電界強度および前記局IDと、前記基地局記憶装置から取得した当該基地局の局IDに対応する座標位置と、前記観測局記憶装置から取得した当該観測局の局IDに対応する座標位置とに基づいて、前記無線端末の座標位置を計算する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の位置検知システムにおいて、
前記基地局管理装置は、前記基地局の座標位置を計算する際、当該基地局に関する受信電界強度の変動幅と、受信電界強度の許容変動幅とを比較し、変動幅が許容変動幅を越えている場合には、当該基地局に関する座標位置の計算を行わないことを特徴とする位置検知システム。
【請求項7】
複数の観測局が、各基地局から送信されている電波をそれぞれ受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出する観測ステップと、
基地局記憶装置が、前記基地局ごとに、当該基地局が設置されている座標位置と当該基地局の局IDとの組を当該基地局の基地局情報としてそれぞれ記憶する基地局記憶ステップと、
観測局記憶装置が、前記観測局ごとに、当該観測局が設置されている座標位置を観測局情報として記憶する観測局記憶ステップと、
前記各基地局から送信されている電波を受信して、これら電波ごとに受信電界強度を計測するとともに、当該電波に含まれている送信元基地局の局IDを検出する無線端末と、
位置計算装置が、前記無線端末で得られた前記受信電界強度および前記局IDと、前記基地局記憶装置から取得した当該局IDに対応する基地局の座標位置とに基づいて、前記無線端末の座標位置を計算する位置計算ステップと、
基地局管理装置が、前記各観測局で得られた前記受信電界強度および前記局IDと、前記観測局記憶装置の前記観測局情報から取得した前記各観測局の前記座標位置とに基づいて、前記基地局ごとに当該基地局の座標位置を計算し、得られた当該基地局の前記座標位置と当該基地局の局IDとの組を前記基地局情報として前記基地局記憶装置へ保存する基地局管理ステップと、
を備えることを特徴とする位置検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−112865(P2012−112865A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263390(P2010−263390)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】