説明

位置決めシステム

【課題】形状が異なる複数のワークを同一の支持台で支持することが可能な位置決めシステムを提供する。
【解決手段】第1位置決め治具(80)には、第1ワーク(W)に取付自在な第1ワーク取付部(144a、144b)と、支持台(18)の治具取付部(114)に取付自在な第1支持台取付部(142)とが設けられ、第2位置決め治具(80a)には、第1ワーク取付部と異なる形状を有し且つ第2ワーク(Wa)に取付自在な第2ワーク取付部(144c、144d)と、治具取付部に取付自在な第2支持台取付部(142a)とが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを片持ち状に支持する支持台を備える位置決めシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン組立ラインでは、シリンダブロックにシリンダヘッドやオイルパン等の部品を組み付ける。このような組付けを行うために、シリンダヘッドを片持ち状に支持する支持台が開発されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、シリンダブロック(CB)にシリンダヘッド(CH)を取り付けた後、シリンダブロック(CB)を支持台から取り外し、引っ繰り返した状態で再度当該支持台に取り付け、オイルパン(OP)を組み付ける(例えば、特許文献1の図1、図3及び段落[0011]〜[0013])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2677040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、1種類のシリンダブロックを取り扱うことしか想定されておらず、形状が異なる複数種類のシリンダブロックを取り扱うことができない。その結果、シリンダブロック毎に支持台を用意する必要が生じる。また、このような問題は、シリンダブロックに限らず、互いに形状が異なるワークを支持する場合一般にも当てはまる。
【0005】
さらに、特許文献1では、シリンダブロックにシリンダヘッドを取り付けた後、シリンダブロックを治具から一旦取り外さないとオイルパンを取り付けることができない。このような問題は、シリンダブロックに限らず、複数の部位に組付加工をする場合一般に当てはまる。
【0006】
本発明は、上記のような問題を考慮してなされたものであり、形状が異なる複数のワークを同一の支持台で支持することが可能な位置決めシステムを提供することを目的とする。
【0007】
本発明の別の目的は、複数の部位への組付加工を効率化することができる位置決めシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る位置決めシステムは、互いに形状が異なる第1ワーク及び第2ワークを同一の部位に取り付け、片持ち状に支持することが可能な支持台と、前記第1ワークを前記支持台に連結する第1位置決め治具と、前記第2ワークを前記支持台に連結する第2位置決め治具とを備えるものであって、前記第1位置決め治具には、前記第1ワークに取付自在な第1ワーク取付部と、前記支持台の治具取付部に取付自在な第1支持台取付部とが設けられ、前記第2位置決め治具には、前記第1ワーク取付部と異なる形状を有し且つ前記第2ワークに取付自在な第2ワーク取付部と、前記治具取付部に取付自在な第2支持台取付部とが設けられることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、複数のワーク(第1ワーク及び第2ワーク)それぞれの形状に応じた複数の位置決め治具(第1位置決め治具及び第2位置決め治具)を用いることで、異なる形状のワークを同一の支持台で支持することが可能となる。従って、支持台を共通化することができる。
【0010】
前記位置決めシステムは、さらに、搬送台車を備え、前記支持台は、前記搬送台車上に設けられ、前記第1ワーク及び前記第2ワークは、互いに形状が異なるシリンダブロックであってもよい。これにより、異なる形状のシリンダブロックを同一の支持台で支持すると共に、搬送台車により各シリンダブロックを順次搬送することが可能となる。従って、エンジン組立ラインの多品種化と製造設備の簡素化の両方を実現することができる。
【0011】
前記第1位置決め治具及び前記第2位置決め治具は、ボルト孔が形成された板状部材を備え、前記ボルト孔に挿通されたボルトにより前記シリンダブロックのミッション取付面に取付自在であってもよい。一般に、シリンダブロックは複雑な形状をしており、外部から支持する部位が限られるが、第1位置決め治具及び第2位置決め治具をシリンダブロックのミッション取付面に取り付けることで、比較的簡易且つ強固に第1位置決め治具及び第2位置決め治具をシリンダブロックに固定することができる。
【0012】
前記支持台は、前記第1ワーク及び前記第2ワークを水平軸を中心に回転させる回転機構と、前記第1位置決め治具及び前記第2位置決め治具を取り付けるための支持台側係合部材とを備え、前記第1位置決め治具及び前記第2位置決め治具は、前記支持台側係合部材に係合する治具側係合部材を備え、前記回転機構が基準位置にあるとき、前記治具側係合部材は、前記支持台側係合部材に対して鉛直上側から係合してもよい。これにより、位置決め治具(第1位置決め治具又は第2位置決め治具)を取り付けたワーク(第1ワーク又は第2ワーク)を鉛直上方から支持台に取り付けることができる。シリンダブロック等の重量物は、ローダ等の装置により吊り下げて移動させることがあるが、上記の構成によれば、ワークが重量物であり、吊り下げた状態で支持台まで移動させる場合であっても、ワークを下方に移動させることで支持台に取り付けることができる。従って、ワークを吊り下げて移動させる設備と組み合わせて好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のワーク(第1ワーク及び第2ワーク)それぞれの形状に応じた複数の位置決め治具(第1位置決め治具及び第2位置決め治具)を用いることで、異なる形状のワークを同一の支持台で支持することが可能となる。従って、支持台を共通化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る位置決めシステムを構成する搬送台車の斜視図である。
【図2】前記搬送台車の一部透視右側面図である。
【図3】前記搬送台車の昇降機構及び弾性力付与機構を説明するための一部透視右側面図である。
【図4】前記昇降機構を説明するための一部断面背面図である。
【図5】前記弾性力付与機構を説明するための一部断面背面図である。
【図6】図5のVI−VI線における一部断面平面図である。
【図7】前記実施形態におけるワーク支持部、位置決め治具及びワークを前記搬送台車の左前方から見た斜視図である。
【図8】前記位置決め治具を前記ワークに取り付けた状態を、前記搬送台車の左前方から見た斜視図である。
【図9】前記ワーク支持部、前記位置決め治具及び前記ワークを前記搬送台車の左後方から見た斜視図である。
【図10】前記位置決め治具を介して前記ワークを前記ワーク支持部に取り付けた状態を、前記搬送台車の左後方から見た斜視図である。
【図11】前記位置決め治具を介して前記ワークを前記ワーク支持部に取り付けた状態における前記搬送台車の正面図である。
【図12】図12Aは、前記ワークを前記ワーク支持部に取り付けた時(基準位置)の一例を示す背面図である。図12Bは、前記ワークを前記ワーク支持部において回転させた時の一例を示す背面図である。
【図13】前記ワーク支持部のストッパを示す一部断面背面図である。
【図14】図14Aは、前記位置決め治具を前記ワークに取り付けた状態を簡略的に示す正面図である。図14Bは、別の位置決め治具を別のワークに取り付けた状態を簡略的に示す正面図である。
【図15】前記搬送台車をエンジン組立ラインで用いた状態の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る位置決めシステムP1を構成する搬送台車10の概略的な構成を示す斜視図である。図2は、搬送台車10の一部(蛇腹部材16)の内部を透視した側面図である。搬送台車10の本体前部12には、制御盤13(制御部)が設けられると共に、本体前部12の上側には、図示しないキットパレットを載置することが可能である。また、搬送台車10の本体後部14上には、蛇腹部材16が配置され、この蛇腹部材16の上部にはワーク支持部18が配置されている。
【0017】
図3は、搬送台車10の本体後部14及び蛇腹部材16の内部(特に、搬送台車10の昇降機構24及び弾性力付与機構26)を説明するための一部透視右側面図である。図3に示すように、本体後部14には、バッテリ20、走行モータ22a、22b及び駆動輪23が設けられており、制御盤13が走行モータ22a、22bを制御することにより、搬送台車10を駆動する。また、本体後部14及び蛇腹部材16の内部には、昇降機構24及び弾性力付与機構26が設けられている。昇降機構24は、制御盤13からの指令に基づいて昇降台40及びこの昇降台40上に配置されたワーク支持部18を昇降させる。さらに、弾性力付与機構26は、複数のコイルばね52a〜52f(図5)等の部材からなり、昇降機構24の昇降動作を補助すると共に、ワーク支持部18がワークW(本実施形態では、シリンダブロック)を支持する際にカウンタウエイトとして機能する。
【0018】
図4は、昇降機構24を説明するための一部断面背面図である。図3及び図4に示すように、本実施形態の昇降機構24は、昇降用のモータ30と、第1プーリ32と、タイミングベルト34と、第2プーリ36と、ボールねじ機構38と、昇降台40とを有する。前記制御盤からの指令に応じてモータ30が作動すると、第1プーリ32、タイミングベルト34、第2プーリ36及びボールねじ機構38を介して昇降台40が昇降する。その結果、昇降台40に固定されているワーク支持部18も昇降する。さらに、昇降機構24は、リニアガイド42a、42b(図5及び図6)を有している。
【0019】
図5は、弾性力付与機構26を説明するための一部断面背面図である。図6は、図5のVI−VI線における一部断面平面図である。図5に示すように、弾性力付与機構26は、基台50と、互いに平行に配置され材質及び形状(内径、外径、長さ、巻き数等)が同一である複数のコイルばね52a〜52fと、係合部56a〜56d及び収納部58a〜58dを有する複数の連結部材54a〜54dと、有底円筒形状の収納ケース60a、60bと、案内棒62a〜62dと、係合部材64とを備える。図5に示すように、複数のコイルばね52a〜52fは、2本ずつ高さが異なって配置される。
【0020】
収納ケース60a、60bは、その底面においてボルト65a、65bにより基台50に固定され、コイルばね52a、52dを収納する。収納ケース60a、60bに収納されたコイルばね52a、52dは、収納ケース60a、60bの開口側において連結部材54a、54cの係合部56a、56cと係合している。係合部56a、56cは、外径がコイルばね52a、52dと略同一の円柱状であり、係合部56a、56cの下端には、外径がコイルばね52a、52dの内径と略同一の円柱状である連結棒66a、66cがコイルばね52a、52dに向かって延在している。連結部材54a、54cの係合部56a、56cの上端は、収納部58a、58cの突出部68a、68cにボルト締結されている。
【0021】
連結部材54a、54cの収納部58a、58cは、有底円筒状であり、底面の一部が開口し、案内棒62a、62cが挿通している。収納部58a、58cには、コイルばね52b、52eが収納されている。案内棒62a、62cの外径は、コイルばね52b、52eの内径と略同一である。
【0022】
収納部58a、58cに収納されたコイルばね52b、52eは、収納部58a、58cの開口側において連結部材54b、54dの係合部56b、56dと係合している。係合部56b、56dは、連結部材54a、54cの係合部56a、56cと略同一の形状であり、連結部材54a、54cの連結棒66a、66cと同様の連結棒66b、66dを有する。係合部56b、56dの上端は、連結部材54b、54dの収納部58b、58dの突出部68b、68dにボルト締結されている。
【0023】
連結部材54b、54dの収納部58b、58dは、収納部58a、58cと同様、有底円筒状であり、底面の一部が開口し、案内棒62b、62dが挿通している。収納部58b、58dには、コイルばね52c、52fが収納されている。案内棒62b、62dの外径は、コイルばね52c、52fの内径と略同一である。案内棒62b、62dは、案内棒62a、62cと略同一の外径であると共に、案内棒62a、62cよりも長い。
【0024】
収納部58b、58dに収納されたコイルばね52c、52fは、収納部58b、58dの開口側において係合部材64の係合部70a、70bと係合している。係合部70a、70bは、連結部材54a〜54dの係合部56a〜56dと外径が略同一であり、連結部材54a〜54dの連結棒66a〜66dと同様の連結棒72a、72bを有する。係合部70a、70bの上端は、係合部材64の板状部材74にボルト締結されている。板状部材74は、ワーク支持部18が取り付けられた昇降台40に連結されている。
【0025】
以上のように、コイルばね52a、52bは、連結部材54aで連結され、コイルばね52b、52cは、連結部材54bで連結されている。このため、3本のコイルばね52a〜52cは、1つの力伝達経路を形成する。同様に、コイルばね52d、52eは、連結部材54cで連結され、コイルばね52e、52fは、連結部材54dで連結されている。このため、3本のコイルばね52d〜52fは、別の力伝達経路を形成する。
【0026】
図7は、位置決め治具80をワークWに取り付ける前の状態で、搬送台車10の左斜め前方から見たワーク支持部18、位置決め治具80及びワークW(シリンダブロック)の斜視図である。図8は、位置決め治具80をワークWに取り付けた状態で、搬送台車10の左斜め前方から見たワーク支持部18、位置決め治具80及びワークWの斜視図である。図9は、位置決め治具80をワークWに取り付ける前の状態で搬送台車10の左斜め後方から見たワーク支持部18、位置決め治具80及びワークWの斜視図である。図10は、位置決め治具80を介してワークWをワーク支持部18に取り付けた状態で搬送台車10の左斜め後方から見たワーク支持部18、位置決め治具80及びワークWの斜視図である。図11は、位置決め治具80を介してワークWをワーク支持部18に取り付けた状態における搬送台車10の正面図である。
【0027】
図7〜図11に示すように、本実施形態では、複数のボルト82a、82bにより位置決め治具80をワークWに取り付けた後、位置決め治具80を介してワークWをワーク支持部18に取り付ける。
【0028】
ワーク支持部18は、基台90と、ワーク取付台92と、回転駆動力入力部94と、ストッパ96とを有する。基台90は、側面視略L字状且つ平面視略U字状であり、昇降機構24の昇降台40に固定されている。基台90は、搬送台車10の前側から後ろ側に延在する2本のアーム98a、98bと、本体後部14の前側において鉛直方向に延在する環状ケース100とを有する。環状ケース100は、図示しない駆動力伝達系を収納する。
【0029】
ワーク取付台92は、環状ケース100の前記駆動力伝達系に連結された環状回転部102と、環状回転部102から延在する断面略U字状の複数の柱状部104a〜104dと、略円弧状のワーク取付部106と、クランプ部108a、108bとを有する。ワーク取付部106は、柱状部104a、104dにボルト112a、112bで締結された2枚の略円弧状のプレート110a、110bと、これらのプレート110a、110bにボルト締結された位置決め棒114とを備える。ボルト112a、112bは、プレート110a、110bよりもワークW側(搬送台車10の後方)に突出している。
【0030】
各クランプ部108a、108bは、図示しないコイルばねに挿通されたヒンジ118a、118bに支持された可動部116a、116bと、ボルト120a、120bとを有する。図示しないナットランナでボルト120a、120bを可動部116a、116bに向かう方向に変位させることで可動部116a、116bの内側先端をワーク支持部18のプレート110a、110bに接近させ、可動部116a、116bとプレート110a、110bとの間で位置決め治具80を挟持することができる。反対に、前記ナットランナでボルト120a、120bを可動部116a、116bから離間する方向に変位させると、前記コイルばねの弾性力により可動部116a、116bの内側先端がプレート110a、110bから離間し、位置決め治具80の取外しが可能となる。
【0031】
回転駆動力入力部94は、環状回転部102を回転させるための回転駆動力を入力する部位であり、環状ケース100内に配置された前記駆動力伝達系に連結されている。具体的には、回転駆動力入力部94の入力軸122に図示しない連結具を介して図示しない駆動モータを連結し、当該駆動モータからの回転駆動力により入力軸122を回転させる。或いは、図示しない回転ハンドルを入力軸122に取り付け、手動で入力軸122を回転させてもよい。回転駆動力入力部94に回転駆動力を入力することにより、図12A及び図12Bに示すように、ワーク取付台92を介してワークWを水平軸Hを中心に回転させることができる。
【0032】
ストッパ96は、環状回転部102の回転を規制するためのものであり、図13に示すように、先端が円錐台状の軸部材130と、操作レバー132とを有する。操作レバー132を操作することにより、軸部材130は、環状回転部102の中心に対して進退する。環状回転部102は、環状ケース100内部の部位に複数の凹部134が形成されている。この凹部134の1つに軸部材130が係合することにより、環状回転部102の位置を固定することができる。
【0033】
図7〜図9に示すように、位置決め治具80は、略円弧状の板状部材140と、位置決めフック142とを有する。板状部材140には、ボルト取付孔144a、144bと、位置決め孔146a、146bと、係合溝148a、148bとが形成されている。ワークWのミッション取付面には、ボルト取付孔144a、144bに対応するボルト締付孔150a、150bが形成されており、ボルト取付孔144a、144bを介してボルト締付孔150a、150bにボルト82a、82bを締め付けることで位置決め治具80をワークWに取り付けることができる。また、ワークWには、位置決め孔146a、146bに対応する位置に位置決め孔152a、152bが形成されており、ワークWに対する位置決め治具80の位置決めに用いることができる。さらに、位置決めフック142は、断面略逆U字状であり、ワーク取付台92の位置決め棒114と係合することができる。加えて、係合溝148a、148bは、板状部材140のうちワーク支持部18側の下方に形成されており、ワーク取付台92のボルト112a、112bをその内部に案内することができる。
【0034】
図14A及び図14Bに示すように、本実施形態では、別のワークW1(シリンダブロック)に対応する位置決め治具80Aを用いることでワークW、W1の形状が異なる場合であっても、ワーク取付台92を共有することができる。すなわち、位置決め治具80Aの板状部材140aは、位置決め治具80の板状部材140と形状が異なる。また、板状部材140aのワークW1側に形成されたボルト取付孔144c、144d及び位置決め孔146c、146dの位置が、位置決め治具80のボルト取付孔144a、144b及び位置決め孔146a、146bの位置と異なる。その一方、板状部材140aのワーク支持部18側に形成された位置決めフック142a及び係合溝148c、148dの位置は、位置決めフック142及び係合溝148a、148bの位置と同じである。従って、位置決め治具80Aを用いた場合でも、ワーク取付台92にワークW1を取り付けることができる。
【0035】
次に、ワーク取付台92に対するワークWの取付けは、以下のように行う。すなわち、ワークWに位置決め治具80を取り付けると共に、ワーク取付台92が図9に示すような初期位置にある状態で、ローダ等の吊下げ装置(図示せず)によりワークWを水平移動させ、ワーク取付台92の上方に配置する。次いで、ワークWを下降させ、位置決め治具80の位置決めフック142をワーク取付台92の位置決め棒114に係合させると共に、係合溝148a、148bをボルト112a、112b内に案内させる。そして、図示しないナットランナにより、クランプ部108a、108bのボルト120a、120bを変位させてクランプ部108a、108bにより位置決め治具80をクランプする。その結果、図10に示すように、ワークWは、ワーク取付台92に片持ち状に支持される。
【0036】
図15には、本実施形態の搬送台車10をエンジン組立ライン200で使用した状態の一例を示す図である。エンジン組立ライン200には、複数のナットランナ204a、204bを有する多関節ロボット202等の設備が配置されている。搬送台車10は、ワーク支持部18にワークWを片持ち状に支持させた状態で、多関節ロボット202等による加工位置に移動する。そして、図示しないロボットにより回転駆動力入力部94やストッパ96を操作することで、図12に示すようにワークWの傾きを適宜調整しながら組立て作業を行う。例えば、ワークWの上部にシリンダヘッド(図示せず)を取り付けた後、ワークWを180°回転させ、ワークWの下部にオイルパン(図示せず)を取り付けることを比較的容易に行うことができる。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、ワークW、W1それぞれの形状に応じた複数の位置決め治具80、80Aを用いることで、異なる形状のワークW、W1を同一のワーク支持部18で支持することが可能となる。従って、ワーク支持部18を共通化することができる。
【0038】
本実施形態では、異なる形状のワークW、W1(シリンダブロック)を同一のワーク支持部18で支持すると共に、搬送台車10により各ワークW、W1を順次搬送することが可能となる。従って、エンジン組立ライン200の多品種化と製造設備の簡素化の両方を実現することができる。
【0039】
本実施形態において、位置決め治具80は、ボルト取付孔144a、144bが形成された板状部材140を備え、ボルト取付孔144a、144bに挿通されたボルト82a、82bによりワークW(シリンダブロック)のミッション取付面に取付自在である。位置決め治具80Aも同様である。一般に、シリンダブロックは複雑な形状をしており、外部から支持する部位が限られるが、位置決め治具80、80AをワークW、W1のミッション取付面に取り付けることで、比較的簡易且つ強固に位置決め治具80、80AをワークW、W1に固定することができる。
【0040】
本実施形態では、位置決め治具80、80Aを取り付けたワークW、W1を鉛直上方からワーク支持部18に取り付けることができる。シリンダブロック等の重量物は、ローダ等の装置により吊り下げて移動させることが多いが、上記の構成によれば、ワークW、W1が重量物であり、吊り下げた状態で支持台まで移動させる場合であっても、ワークW、W1を下方に移動させることでワーク支持部18に取り付けることができる。従って、ワークW、W1を吊り下げて移動させる設備と組み合わせて好適に用いることができる。
【0041】
本実施形態では、ワークW、W1の側面(ミッション取付面)を支持した状態で水平軸Hを中心に回転させることができる。従って、例えば、ワークW、W1の上側と下側の両方を加工する場合(ワークW、W1(シリンダブロック)にシリンダヘッドとオイルパンを取り付ける場合)、ワークW、W1をワーク支持部18から取り外す必要がない。従って、作業の効率化を図ることができる。
【0042】
本実施形態では、位置決め棒114及び位置決めフック142を用いた係合構造とクランプ部108a、108bを用いたクランプ構造とにより、比較的簡易にワークW、W1をワーク支持部18に固定することができる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下に示す構成を採ることができる。
【0044】
上記実施形態では、2種類のワークW、W1を用いたが、これに限られず、1種類又は3種類以上のワークを用いてもよい。また、上記実施形態では、ワークW、W1としてシリンダブロックを用いたが、その他の部品をワークとすることもできる。或いは、異なる部品にワーク支持部18を用いてもよい。
【0045】
上記実施形態では、2種類の位置決め治具80、80Aを用いたが、これに限られず、1種類又は3種類以上の位置決め治具80を用いてもよい。1種類のみの位置決め治具80を用いる場合、1つの位置決め治具80に複数のワークW、W1に対応するボルト取付孔144a、144bを形成すること、又はワークW、W1に形成するボルト締付孔150a、150bを共通の位置に形成することで位置決め治具80の共通化を図ることも可能である。
【0046】
上記実施形態では、ワーク支持部18に対する位置決め治具80の取付け及び固定は、ワーク支持部18の位置決め棒114及び位置決め治具80の位置決めフック142と、クランプ部108a、108bとを用いて行ったが、これに限られない。例えば、位置決め棒114を位置決め治具80に形成し、位置決めフック142をワーク支持部18に設けてもよい。或いは、ワーク支持部18と位置決め治具80の両方に位置決めフック142を形成することもできる。或いは、クランプ部108a、108bの代わりに別の固定機構(例えば、図示しないボルトにより位置決め治具80をプレート110a、110bに対して押圧する構成)であってもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、位置決め治具80、80Aの位置決めフック142を同一形状としたが、ワーク支持部18に取付け可能であれば、異なる形状(例えば、位置決めフック142の一部を切り欠いた形状)であってもよい。
【0048】
上記実施形態では、ワーク支持部18を搬送台車10上に設けたが、これに限られず、ワーク支持部18を固定載置してもよい。
【0049】
上記実施形態では、位置決め治具80、80Aを主として板状としたが、これに限られず、その他の形状であってもよい。また、位置決め治具80、80Aは、ワークW、W1(シリンダブロック)のミッション取付面以外の部位に取り付けてもよい。
【0050】
上記実施形態では、ワーク取付台92及び回転駆動力入力部94を用いてワークW、W1を回転させたが、これに限られず、例えば、ワークW、W1の水平軸Hに回転軸が一致する回転機構を用いてワークW、W1を回転させることもできる。
【符号の説明】
【0051】
10…搬送台車 18…ワーク支持部(支持台)
80、80A…位置決め治具 82a、82b…ボルト
92…ワーク取付台(回転機構の一部)
94…回転駆動力入力部(回転機構の一部)
96…ストッパ 108a、108b…クランプ部
114…位置決め棒(治具取付部、支持台側係合部材)
140…板状部材
142…位置決めフック(第1支持台取付部、治具側係合部材)
142a…位置決めフック(第2支持台取付部、治具側係合部材)
144a、144b…ボルト取付孔(第1ワーク取付部)
144c、144d…ボルト取付孔(第2ワーク取付部)
200…エンジン組立ライン H…水平軸
P1…位置決めシステム
W…シリンダブロックであるワーク(第1ワーク)
W1…シリンダブロックであるワーク(第2ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに形状が異なる第1ワーク及び第2ワークを同一の部位に取り付け、片持ち状に支持することが可能な支持台と、
前記第1ワークを前記支持台に連結する第1位置決め治具と、
前記第2ワークを前記支持台に連結する第2位置決め治具と
を備える位置決めシステムであって、
前記第1位置決め治具には、前記第1ワークに取付自在な第1ワーク取付部と、前記支持台の治具取付部に取付自在な第1支持台取付部とが設けられ、
前記第2位置決め治具には、前記第1ワーク取付部と異なる形状を有し且つ前記第2ワークに取付自在な第2ワーク取付部と、前記治具取付部に取付自在な第2支持台取付部とが設けられる
ことを特徴とする位置決めシステム。
【請求項2】
請求項1記載の位置決めシステムにおいて、
前記位置決めシステムは、さらに、搬送台車を備え、
前記支持台は、前記搬送台車上に設けられ、
前記第1ワーク及び前記第2ワークは、互いに形状が異なるシリンダブロックである
ことを特徴とする位置決めシステム。
【請求項3】
請求項2記載の位置決めシステムにおいて、
前記第1位置決め治具及び前記第2位置決め治具は、ボルト孔が形成された板状部材を備え、前記ボルト孔に挿通されたボルトにより前記シリンダブロックのミッション取付面に取付自在である
ことを特徴とする位置決めシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の位置決めシステムにおいて、
前記支持台は、前記第1ワーク及び前記第2ワークを水平軸を中心に回転させる回転機構と、前記第1位置決め治具及び前記第2位置決め治具を取り付けるための支持台側係合部材とを備え、
前記第1位置決め治具及び前記第2位置決め治具は、前記支持台側係合部材に係合する治具側係合部材を備え、
前記回転機構が基準位置にあるとき、前記治具側係合部材は、前記支持台側係合部材に対して鉛直上側から係合する
ことを特徴とする位置決めシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−188467(P2010−188467A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34868(P2009−34868)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】