説明

位置決め装置

【課題】 作業効率が高く、構成が簡単な位置決め装置を提供する。
【解決手段】 この位置決め装置では、2つの可動テーブル4,5の移動範囲XA,XBはオーバラップ部XOを有し、2つの可動テーブル4,5のうちのいずれか1つの可動テーブル4または5がオーバラップ部XOに進入したことに応じて、他の可動テーブル5または4がオーバラップ部XOに進入することを禁止する。したがって、可動テーブル4,5がオーバラップ部XOで衝突することを防止することができ、簡単な構成で作業効率の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は位置決め装置に関し、特に、複数の可動テーブルを備えた位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の可動テーブルを備えた位置決め装置が提案されている。たとえば特許文献1には、X方向に延在する1対のガイドレールと、1対のガイドレール上をX方向に移動する移動体と、移動体上をY方向に移動する可動テーブルとをX方向に2組並べ、各可動テーブルを2つの移動体間で移動可能に設けた位置決め装置が開示されている(たとえば特許文献1参照)。この位置決め装置によれば、一方の可動テーブルでウエハ交換とアライメントを行いながら、他方の可動テーブルで露光を行なうことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【特許文献1】特開2001−160530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の位置決め装置では、各可動テーブルを2つの移動体間で移動可能に設けたので、装置構成が極めて複雑になり、装置価格が高くなるという問題があった。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、作業効率が高く、構成が簡単な位置決め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る位置決め装置は、複数の可動テーブルを備えた位置決め装置であって、複数の可動テーブルの移動領域はオーバラップ部を有する。この位置決め装置は、各可動テーブルがオーバラップ部に進入しているかどうかを検出する検出手段と、検出手段の検出結果に基づき、複数の可動テーブルのうちのいずれか1つの可動テーブルがオーバラップ部に進入したことに応じて、他の可動テーブルがオーバラップ部に進入することを禁止する制御手段とを備えている。したがって、複数の可動テーブルを1つずつ交代でオーバラップ領域に移動させて所定の処理、加工などを行なうことができるので、簡単な構成で作業効率の向上を図ることができる。また、オーバラップ部には1つの可動テーブルのみが進入できるので、可動テーブル同士が衝突することがない。
【0006】
また、この発明に係る他の位置決め装置は、複数の可動テーブルを備えた位置決め装置であって、複数の可動テーブルの移動領域はオーバラップ部を有し、オーバラップ部は複数の副オーバラップ部に分割されている。この位置決め装置は、それぞれ複数の副オーバラップ部に対応して設けられ、各々が、各可動テーブルが対応の副オーバラップ部に進入しているかどうかを検出する複数の検出手段と、複数の検出手段の検出結果に基づき、複数の可動テーブルのうちのいずれか1つの可動テーブルが複数の副オーバラップ部のうちの1または2以上の副オーバラップ部に進入したことに応じて、他の可動テーブルが1または2以上の副オーバラップ部に進入することを禁止する制御手段とを備えている。この場合は、1つの可動テーブルが進入した副オーバラップ部には他の可動テーブルが進入することができないので、可動テーブル同士が衝突することがない。
【0007】
また、この発明に係るさらに他の位置決め装置は、複数の可動テーブルを備えた位置決め装置であって、複数の可動テーブルの移動領域はオーバラップ部を有する。この位置決め装置は、それぞれ複数の可動テーブルに対応して設けられ、各々が、対応の可動テーブルと他の可動テーブルとの間の距離を検出する検出手段と、検出手段の検出結果に基づき、各可動テーブルと他の可動テーブルとの間の距離が予め定められた距離以下になることを禁止する制御手段とを備えている。この場合は、可動テーブル間の距離が予め定められた距離よりも大きく保たれるので、可動テーブル同士が衝突することがない。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、この発明に係る位置決め装置では、複数の可動ステージの移動領域がオーバラップ部を有するので、複数の可動テーブルを1つずつ交代でオーバラップ領域に移動させて所定の処理、加工などを行なうことができ、簡単な構成で作業効率の向上を図ることができる。また、可動テーブル同士が衝突することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による位置決め装置の構成を示す平面図であり、図2はその構成を示すブロック図である。
【0010】
図1および図2において、この位置決め装置では、長方形の台板1上に2本のガイドレール2,3が平行に設けられ、ガイドレール2,3上には2つの四角形の可動テーブル4,5が移動可能に設けられている。ガイドレール2,3は、図中X方向に延在している。可動テーブル4,5の各々は、リニアモータ、ボールネジなどからなる駆動部(図示せず)を含む。可動テーブル4,5の各々は、制御部23によって制御されて図中X方向に移動する。
【0011】
図中左側の可動テーブル4の図中下側の1辺の両端部にはそれぞれ図中Y方向に延在するアーム6,7を介してリミットセンサ8,9が設けられ、リミットセンサ8,9の移動軌跡の下方には所定の間隔で2つのドグ10,11が台板1表面に設けられている。
【0012】
可動テーブル4が図中左方向に移動してリミットセンサ8がドグ10の上方に到達すると、リミットセンサ8がリミット信号を出力する。制御部23は、リミットセンサ8からリミット信号が出力されている期間は、可動テーブル4が図中左方向に移動することを禁止する。逆に、可動テーブル4が図中右方向に移動してリミットセンサ9がドグ11の上方に到達すると、リミットセンサ9がリミット信号を出力する。制御部23は、リミットセンサ9からリミット信号が出力されている期間は、可動テーブル4が図中右方向に移動することを禁止する。したがって、可動テーブル4の移動範囲は2つのドグ10,11の間の範囲XAに限定される。
【0013】
図中右側の可動テーブル5の図中下側の1辺の両端部にはそれぞれ図中Y方向に延在するアーム12,13を介してリミットセンサ14,15が設けられ、リミットセンサ14,15の移動軌跡の下方には所定の間隔で2つのドグ16,17が台板1表面に設けられている。アーム12,13はアーム6,7よりも長いので、リミットセンサ14,15とリミットセンサ8,9は異なる軌跡を通る。
【0014】
可動テーブル5が図中左方向に移動してリミットセンサ14がドグ16の上方に到達すると、リミットセンサ14がリミット信号を出力する。制御部23は、リミットセンサ14からリミット信号が出力されている期間は、可動テーブル5が図中左方向に移動することを禁止する。逆に、可動テーブル5が図中右方向に移動してリミットセンサ15がドグ17の上方に到達すると、リミットセンサ15がリミット信号を出力する。制御部23は、リミットセンサ15からリミット信号が出力されている期間は、可動テーブル5が図中右方向に移動することを禁止する。したがって、可動テーブル5の移動範囲は2つのドグ16,17の間の範囲XBに限定される。可動テーブル4,5の移動範囲XA,XBは、台板1の中央部においてオーバラップ部XOを有する。
【0015】
また、図中左側の可動テーブル4の図中上側の1辺の図中右端部には図中Y方向に延在するアーム18を介して衝突防止センサ19が設けられ、衝突防止センサ19の移動軌跡の下方にはオーバラップ部XO全域に亘ってドグ20が台板1表面に設けられている。図中右側の可動テーブル5の図中上側の1辺の図中左端部には図中Y方向に延在するアーム21を介して衝突防止センサ22が設けられている。アーム18と21は同じ長さであるので、衝突防止センサ19と22は同じ軌跡を通る。
【0016】
制御部23は、外部信号に従って可動テーブル4,5を制御する。可動テーブル4が図中右方向に移動して衝突防止センサ19がドグ20の上方に到達すると、衝突防止センサ19が衝突防止信号を出力する。制御部23は、衝突防止センサ19から衝突防止信号が出力されている期間は、可動テーブル5がオーバラップ部XOに進入することを禁止する。逆に、可動テーブル5が図中左方向に移動して衝突防止センサ22がドグ20の上方に到達すると、衝突防止センサ22が衝突防止信号を出力する。制御部23は、衝突防止センサ22から衝突防止信号が出力されている期間は、可動テーブル4がオーバラップ部XOに進入することを禁止する。したがって、可動テーブル4と5がオーバラップ部XOで衝突することが防止される。
【0017】
この実施の形態1では、2つの可動テーブル4,5を交互にオーバラップ部XOに移動させて所定の処理、加工などを行なうことができるので、簡単な構成で作業効率の向上を図ることができる。また、オーバラップ部XOには1つの可動テーブル4または5のみが進入できるので、可動テーブル4,5同士が衝突することがない。
【0018】
[実施の形態2]
図3は、この発明の実施の形態2による位置決め装置の構成を示す平面図であり、図4はその構成を示すブロック図である。
【0019】
図3および図4を参照して、この位置決め装置が図1および図2の位置決め装置と異なる点は、オーバラップ部XOが左右2つの副オーバラップ部XOA,XOBに分割され、アーム18,21、衝突防止センサ19,22およびドグ20がアーム30,35、衝突防止センサ31,32,36,37およびドグ33,34で置換されている点である。
【0020】
アーム30は、図中左側の可動テーブル4の図中上側の1辺の図中右端部に図中Y方向に延在するように設けられる。衝突防止センサ31,32は、それぞれアーム30の中央部および先端部に設けられる。ドグ33は、衝突防止センサ31の移動軌跡の下方に副オーバラップ部XOA全域に亘って台板1表面に設けられる。ドグ34は、衝突防止センサ32の移動軌跡の下方に副オーバラップ部XOB全域に亘って台板1表面に設けられる。アーム35は、図中右側の可動テーブル5の図中上側の1辺の図中左端部に図中Y方向に延在するように設けられる。衝突防止センサ36,37は、それぞれアーム35の中央部および先端部に設けられる。衝突防止センサ31と36,32と37はそれぞれ同じ軌跡を通る。
【0021】
制御部23は、外部信号に従って可動テーブル4,5を制御する。可動テーブル4が図中右方向に移動して衝突防止センサ31がドグ33の上方に到達すると、衝突防止センサ31が衝突防止信号を出力する。制御部23は、衝突防止センサ31から衝突防止信号が出力されている期間は、可動テーブル5がオーバラップ部XOAに進入することを禁止する。このとき、可動テーブル5はオーバラップ部XOBに進入することは可能である。可動テーブル4がさらに図中右方向に移動して衝突防止センサ32がドグ34の上方に到達すると、衝突防止センサ32が衝突防止信号を出力する。制御部23は、衝突防止センサ32から衝突防止信号が出力されている期間は、可動テーブル5が副オーバラップ部XOA,XOBに進入することを禁止する。
【0022】
また、可動テーブル5が図中左方向に移動して衝突防止センサ37がドグ34の上方に到達すると、衝突防止センサ37が衝突防止信号を出力する。制御部23は、衝突防止センサ37から衝突防止信号が出力されている期間は、可動テーブル4がオーバラップ部XOBに進入することを禁止する。このとき、可動テーブル4はオーバラップ部XOAに進入することは可能である。可動テーブル5がさらに図中左方向に移動して衝突防止センサ36がドグ33の上方に到達すると、衝突防止センサ36が衝突防止信号を出力する。制御部23は、衝突防止センサ36から衝突防止信号が出力されている期間は、可動テーブル4が副オーバラップ部XOA,XOBに進入することを禁止する。したがって、可動テーブル4と5が副オーバラップ部XOA,XOBで衝突することが防止される。
【0023】
この実施の形態2では、実施の形態1と同じ効果が得られる他、可動テーブル4,5の移動範囲が副オーバラップ部XOAまたはXOB分だけ広くなる。
【0024】
なお、この実施の形態2では、オーバラップ部XOを2つの副オーバラップ部XOA,XOBに分割したが、3つ以上の副オーバラップ部に分割してもよい。また、多数の副オーバラップ部に分割した場合は、可動テーブル4,5が進入している副オーバラップ部を検出することにより、可動テーブル4,5間の距離をある程度推測することができるので、その距離に応じて可動テーブル4,5の適切な移動速度を設定し、可動テーブル4,5同士の衝突を防止することもできる。
【0025】
[実施の形態3]
図5は、この発明の実施の形態3による位置決め装置の構成を示す平面図であり、図6はその構成を示すブロック図である。
【0026】
図5および図6を参照して、この位置決め装置が図1および図2の位置決め装置と異なる点は、衝突防止センサ19およびドグ20が除去され、アーム18の先端部に所定長さのドグ40が設けられている点である。ドグ40は図中右方向を向けて、かつ台板1に水平に設けられている。ドグ40は、衝突防止センサ22の移動軌跡の下方に設けられる。
【0027】
制御部23は、外部信号に従って可動テーブル4,5を制御する。可動テーブル4と5が近づいて衝突防止センサ22がドグ40の上方に到達すると、衝突防止センサ22が衝突防止信号を出力する。制御部23は、衝突防止センサ22から衝突防止信号が出力されている期間は、可動テーブル4と5がさらに接近するような可動テーブル4,5の移動を禁止する。このとき、可動テーブル4と5がともに同じ方向に移動することは可能である。また、可動テーブル4と5が離れる方向に移動することは可能である。したがって、可動テーブル4と5がオーバラップ部XOで衝突することが防止される。
【0028】
この実施の形態3では、実施の形態1と同じ効果が得られる他、衝突防止センサの数が少なくて済む。
【0029】
なお、図7に示すように、可動テーブル4,5の現在位置を測定する位置測定装置(リニアスケール、ロータリエンコーダなど)41,42を設け、リミットセンサ8,9,14,15を使用せずに可動テーブル4,5の現在位置から仮想的に移動範囲XA,XB、オーバーラップ部XO、副オーバラップ部XOA,XOBを作ることも可能である。その場合、実施の形態1,2のように可動テーブル4,5の移動を制限することも可能であるが、単に可動テーブル4,5間の距離を計算して衝突を防止するように制御することもできる。また、可動テーブル4,5間の距離に応じて適切な移動速度を設定し、衝突を防止することもできる。また、可動テーブル4,5間の距離に応じて適切な移動速度を設定する方法と、実施の形態1〜3を組合わせてもよい。
【0030】
また、可動テーブルを3個以上設けてもよい。その場合の制御方法は上記位置決め方法から容易に類推できるので、その説明は繰り返さない。
【0031】
また、複数の可動テーブルは必ずしも同一直線上に配置される必要はない。たとえばそれぞれの可動テーブルの軌道が直交したものでも同様に制御することができる。
【0032】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の実施の形態1による位置決め装置の構成を示す平面図である。
【図2】図1に示した位置決め装置の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態2による位置決め装置の構成を示す平面図である。
【図4】図3に示した位置決め装置の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態3による位置決め装置の構成を示す平面図である。
【図6】図5に示した位置決め装置の構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態1〜3の変更例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 台板、2,3 ガイドレール、4,5 可動テーブル、6,7,12,13,18,21,30,35 アーム、8,9,14,15 リミットセンサ、10,11,16,17,20,33,34,40 ドグ、19,22,31,32,36,37 衝突防止センサ、23 制御部、XA,XB 移動範囲、XO オーバラップ部、XOA,XOB 副オーバラップ部、41,42 位置計測装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の可動テーブルを備えた位置決め装置であって、
前記複数の可動テーブルの移動領域はオーバラップ部を有し、
各可動テーブルが前記オーバラップ部に進入しているかどうかを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づき、前記複数の可動テーブルのうちのいずれか1つの可動テーブルが前記オーバラップ部に進入したことに応じて、他の可動テーブルが前記オーバラップ部に進入することを禁止する制御手段とを備えた、位置決め装置。
【請求項2】
複数の可動テーブルを備えた位置決め装置であって、
前記複数の可動テーブルの移動領域はオーバラップ部を有し、
前記オーバラップ部は複数の副オーバラップ部に分割され、
それぞれ前記複数の副オーバラップ部に対応して設けられ、各々が、各可動テーブルが対応の副オーバラップ部に進入しているかどうかを検出する複数の検出手段と、
前記複数の検出手段の検出結果に基づき、前記複数の可動テーブルのうちのいずれか1つの可動テーブルが前記複数の副オーバラップ部のうちの1または2以上の副オーバラップ部に進入したことに応じて、他の可動テーブルが前記1または2以上の副オーバラップ部に進入することを禁止する制御手段とを備えた、位置決め装置。
【請求項3】
複数の可動テーブルを備えた位置決め装置であって、
前記複数の可動テーブルの移動領域はオーバラップ部を有し、
それぞれ前記複数の可動テーブルに対応して設けられ、各々が、対応の可動テーブルと他の可動テーブルとの間の距離を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づき、各可動テーブルと他の可動テーブルとの間の距離が予め定められた距離以下になることを禁止する制御手段とを備えた、位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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