説明

位置計測装置

【課題】高温・高圧・放射線被爆環境下でメンテナンスフリー且つ長寿命な位置計測装置を提供する。
【解決手段】回転することによって位置計測対象物を移動させる回転軸5に取り付けられた回転磁心4と、隔壁1を介して回転軸5の近傍の固定部に設けられ回転軸5の所定の回転位置において回転磁心4とともに磁気回路を形成する固定側磁心3と、固定側磁心3に巻装された検出コイル2と、検出コイル2に誘起される電圧の変化する回数を計数する信号処理部6とを備えている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の制御棒駆動機構等に備えられる位置計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉等の高温・高圧・放射線被爆環境下に設けられる位置計測装置で高寿命・メンテナンスフリーな装置は実用化されておらず、現在は過酷な環境下から高温高圧シール機構を介して移動体シャフトを常温・常圧環境下へ取り出して位置計測装置を設けている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−278493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高温・高圧・放射線被爆環境下でメンテナンスフリー且つ長寿命な位置計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明は、回転することによって位置計測対象物を移動させる回転軸に取り付けられた回転磁心と、隔壁を介して前記回転軸の近傍の固定部に設けられ前記回転軸の所定の回転位置において前記回転磁心とともに磁気回路を形成する固定側磁心と、前記固定側磁心に巻装された検出コイルと、前記検出コイルに誘起される電圧の変化する回数を計数する信号処理部とを備えている構成とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、高温・高圧・放射線被爆環境下でメンテナンスフリー且つ長寿命な位置計測装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を図1と図2を参照して説明する。本実施の形態の位置計測装置は、図1に示すように、検出コイル2を巻装し固定部に設けられたコの字状の固定側磁心3、および固定側磁心3と圧力隔壁構造部材1を挟んだ形でI字型の回転磁心4を備え、回転磁心4は回転軸5に取り付けられている。回転軸5は、図示していない位置計測すべき部材に連結されている。
【0007】
この回転軸5が回転することにより、固定側磁心3と回転磁心4で形成される磁気回路が図1(a),(b)あるいは(c),(d)に示すように開閉する。このときの検出コイル2のインダクタンスの変化を図2に示す交流ブリッジ回路6の出力電圧として、フィルター(BPF)付きアンプ13とAC/DC変換する処理回路14を介して、電圧値変位点を計数カウントする計数回路15で計測する。交流ブリッジ6を駆動する発振器12の周波数は回転軸5を駆動する電力の周波数(多くの場合商用周波数50Hzまたは60Hz)とは離れた周波数を選定することでS/N比を向上させることができる。フィルター(BPF)付きアンプ13でさらに向上させる。
【0008】
発振器12より高周波電圧が交流ブリッジ回路6に送られ、出力信号電圧が極小又は極大になる所(磁気回路が固定側磁心3と回転磁心4によって開または閉)でバランス状態になるようブリッジ抵抗8,10及びブリッジコイル9を選定したとき、回転軸5が回転し磁気回路が開から閉になると、検出コイル2のインダクタンス値が増大し交流ブリッジ回路6のバランスが崩れ交流ブリッジ回路出力に電圧変化が起こる。この電圧変化の回数を計数回路15によってカウントすることにより回転軸5の回転数を計測する。
【0009】
本実施の形態の位置計測装置は以上のような構成および動作によって、高温高圧シール機構が無くても高温・高圧・放射線被爆環境下での位置計測を高寿命・メンテナンスフリーで行うことができる。
【0010】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態は、図1に示したI字型の回転磁心4を永久磁石によって構成する。磁心4として、コの字状の固定側磁心3との磁気回路閉状態で固定側磁心3が磁気飽和を起こすような起磁力を持った永久磁石を用いる。このような構成によって、磁気回路閉状態による固定側磁心3の磁気飽和状態が回転軸5の一回転毎に現れ、検出コイル2のインダクタンス値に変化が現れ回転数を検出する信号を得ることができる。
【0011】
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、図3に示すように、コの字状の固定側磁心3およびIの字状の回転磁心と数度ないし数十度の位相角を持たせてコの字状の固定側磁心2aおよびIの字状の回転磁心3aを設け、検出コイル2と2aを直列に接続し図2に示した交流ブリッジ6の検出コイル2のところに接続する。
【0012】
この構成において、回転軸5が回転すると、コイル2開・コイル2a開→コイル2閉・コイル2a開→コイル2閉・コイル2a閉→コイル2開・コイル2a閉→初期状態と変化し、逆回転であると上記矢印が逆になる。このとき、コイル2・コイル2aの閉状態・開状態のインダクタンス値を適切に設定しておくことによって、回転による交流ブリッジ回路6の出力電圧発生波形パターンが変わり計測位置の変化方向を知ることができる。
【0013】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態の位置計測装置は、図1に示した構成のほかに、図4に示すように、原点検出用検出コイル2bを巻装したコの字状の原点検出用固定側磁心3bと圧力隔壁構造部材1を挟んで、円筒状磁心7を軸方向移動回転軸5aに取り付けた構成を有する。軸方向移動回転軸5aは、図1に示した回転軸5に連結されている。円筒状磁心7の形状は回転軸5aを周回する円筒形状である。検出コイル2と検出コイル2bを直列に接続して図2に示した交流ブリッジ回路6の検出コイル2の代りに接続する。通常の位置計測範囲では第1の実施の形態と同じ動作を行い、固定側磁心3と回転磁心4からなる磁気回路の開閉による2位置電圧出力が交流ブリッジ回路6から出力される。原点到達時には固定側磁心3bと円筒状磁心7が磁気回路閉になるため、通常電圧とは異なる電圧値がバイアスされる。このバイアス電圧を監視することで原点位置を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1および第2の実施の形態の位置計測装置に備えられる位置信号検出部の構成を示し、(a)は磁路閉状態を示す縦断面図、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図、(c)は磁路開状態を示す縦断面図、(d)は(c)のd−d線に沿う断面図。
【図2】本発明の第1ないし第4の実施の形態の位置計測装置に備えられる信号処理部の構成を示す回路図およびブロック図。
【図3】本発明の第3の実施の形態の位置計測装置に備えられる位置信号検出部の構成を示す断面図。
【図4】本発明の第4の実施の形態の位置計測装置に備えられる位置信号検出部の構成を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0015】
1,2b…圧力隔壁構造部材、2,2a,2b…検出コイル、3,3a,3b…固定側磁心、4,4a…回転磁心、5,5a…回転軸、6…交流ブリッジ回路、7…円筒状磁心、8,10…ブリッジ抵抗、9…ブリッジコイル、12…発振器、13…フィルター付きアンプ、14…処理回路、15…計数回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することによって位置計測対象物を移動させる回転軸に取り付けられた回転磁心と、隔壁を介して前記回転軸の近傍の固定部に設けられ前記回転軸の所定の回転位置において前記回転磁心とともに磁気回路を形成する固定側磁心と、前記固定側磁心に巻装された検出コイルと、前記検出コイルに誘起される電圧の変化する回数を計数する信号処理部とを備えていることを特徴とする位置計測装置。
【請求項2】
前記信号処理部は前記検出コイルと一辺とする交流ブリッジ回路を備え、前記交流ブリッジ回路の動作周波数を商用周波数及びその倍数の周波数とは離れた周波数とし、前記交流ブリッジ回路の出力回路に前記動作周波数のバンドパスフィルターを設けたことを特徴とする請求項1記載の位置計測装置。
【請求項3】
前記回転磁心は、前記固定側磁心とともに形成される磁気回路の閉時に前記固定側磁心を磁気飽和させる磁気力を持つ永久磁石で構成されていることを特徴とする請求項1記載の位置計測装置。
【請求項4】
前記検出コイルを巻装された固定側磁心および前記回転磁心は前記回転軸の回転方向に位相差をもって2組設けられ、前記2つの検出コイルは直列に接続されていることを特徴とする請求項1記載の位置計測装置。
【請求項5】
前記回転軸または前記回転軸に連結されて軸方向に移動する軸方向移動回転軸に取り付けられた円筒状磁心と、隔壁を介して前記回転軸または前記軸方向移動回転軸の近傍の固定部に設けられ前記回転軸または前記軸方向移動回転軸が軸方向に移動して所定の軸方向位置にきた時に前記円筒状磁心とともに磁気回路を形成する原点検出用固定側磁心と、前記原点検出用固定側磁心に巻装され前記検出コイルと直列接続された原点検出用検出コイルとを備えていることを特徴とする請求項1記載の位置計測装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−284299(P2006−284299A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102860(P2005−102860)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】