説明

低吸湿性アクリル系重合体粒子の製造方法

【課題】
重合安定性に優れた平均粒子径0.01〜1μmの低吸湿性のアクリル系重合体粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】
エステル部の炭素数が3以上10以下である(メタ)アクリルエステル系モノマー50重量%以上を含む重合性モノマーを水性媒体中、水溶性高分子、及び重合開始剤の存在下で乳化重合させて重合体粒子を得る工程を含み、
前記重合性モノマー100重量部に対して前記水溶性高分子が0.01〜0.2重量部使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低吸湿性アクリル系重合体粒子の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、水溶性高分子存在下での(メタ)アクリル酸エステルの乳化重合法によって得られ、高湿度環境下での水分吸着率が抑制された低吸湿性に優れるアクリル系重合体粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系重合体粒子は、例えば、塗料や、インキ粘着剤用、接着剤用、人工大理石用等の添加剤、紙処理剤用、化粧品用等の充填材、クロマトグラフィーのカラム充填材、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤、フィルム用のアンチブロッキング剤や、光拡散剤等の用途で使用されている。このようなアクリル系重合体粒子はその目的に応じて様々な粒子径のものが使用されているが、特に粒子径が1μm以下になると表面積の増大や、特異な光学性能が発現することからも種々の用途でその利用価値は高まっている。
【0003】
粒子径が1μm以下となるようなアクリル系重合体粒子の製造方法として乳化重合やソープフリー乳化重合が知られている。この方法では、水媒体中、非水溶性重合性ビニル系モノマー、例えばメタクリル酸メチルを水溶性重合開始剤の存在下で重合させることで、容易に0.01〜1μmのポリメタクリル酸メチル粒子が得られることが知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【特許文献1】特開平5−209008号公報
【特許文献2】特公昭51−5871号公報
【特許文献3】特公昭59−10368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこのようなアクリル系重合体粒子、特にメタクリル酸メチル系重合体粒子は、吸湿性が大きいために徐々に水分を吸着してしまい、例えば分散性、流動性、帯電性等の各種物性に影響を及ぼしてしまうことがある。そのため、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤など、用途によってはその使用が制限されてしまう問題があった。また、重合時に乳化剤や水溶性高分子などの吸湿性の大きい添加剤を多量に使用することも、得られるアクリル系重合体粒子の吸湿性が増大してしまう原因となる。
【0005】
低吸湿性のアクリル系樹脂を得ることを目的として、メタクリル酸メチルを他のモノマーやエステル部の炭素数の多いメタクリル酸エステルと共重合することで吸湿性を改善する方法が知られている(特許文献4、特許文献5、特許文献6)。
【特許文献4】特許第3053239号公報
【特許文献5】特開昭57−33446号公報
【特許文献6】特開昭57−186241号公報
【0006】
しかしながらこれらのメタクリル酸エステルの水性媒体中での重合安定性は非常に悪く、吸湿性の大きい乳化剤を多量に使用しなければならなかったため、結果として得られるアクリル系重合体粒子の吸湿性が増大することとなり、目的とするような低吸湿性のアクリル系重合体粒子は得られなかった。
【0007】
本発明の目的は、重合安定性に優れた平均粒子径0.01〜1μmの低吸湿性のアクリル系重合体粒子の製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エステル部の炭素数が3以上10以下である(メタ)アクリルエステル系モノマー50重量%以上を含む重合性モノマーを水性媒体中、水溶性高分子、及び重合開始剤の存在下で乳化重合させて重合体粒子を得る工程を含み、
前記重合性モノマー100重量部に対して前記水溶性高分子が0.01〜0.2重量部使用することで平均粒子径0.01〜1μmの低吸湿性重合体粒子が得られることを見出し、本発明にいたった。
【0009】
かくして本発明によれば、エステル部の炭素数が3以上10以下である(メタ)アクリルエステル系モノマー50重量%以上を含む重合性モノマーを水性媒体中、水溶性高分子、及び重合開始剤の存在下で乳化重合させて重合体粒子を得る工程を含み、
前記重合性モノマー100重量部に対して前記水溶性高分子が0.01〜0.2重量部使用される低吸湿性アクリル系重合体粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の重合体粒子は、平均粒子径が0.01〜1μmであり、低吸湿性に優れているという特徴を有している。すなわち、本発明の重合体粒子は、平均粒子径0.01〜1.0μm、かつ20℃かつ相対湿度80%雰囲気下における水分吸着率が0.6%以下であるアクリル系重合体粒子である。
そのため、経時による分散性、流動性、帯電性等の物性が損なわれることがないことから、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤として使用できる他、塗料や、インキ粘着剤用、接着剤用、人工大理石用等の添加剤、紙処理剤用、化粧品用等の充填材、クロマトグラフィーのカラム充填材、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤、フィルム用のアンチブロッキング剤や、光拡散剤等として使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、エステル部の炭素数が3以上10以下である(メタ)アクリルエステル系モノマー50重量%以上を含む重合性モノマーを水性媒体中、水溶性高分子、及び重合開始剤の存在下で乳化重合させて重合体粒子を得る方法である。ここで、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0012】
本発明で使用される(メタ)アクリルエステル系モノマーとしては、エステル部の炭素数が少なすぎると、得られる重合体粒子の吸湿性が大きくなってしまい、多すぎると重合時の安定性が悪化し、凝集物を生じてしまうことがあるので3以上10以下であり、4以上8以下がより好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。これら(メタ)アクリルエステル系モノマーは単独、又は併用してもよい。
【0013】
該エステル部の炭素数が3以上10以下である(メタ)アクリルエステル系モノマーは少なすぎると吸湿性が大きくなってしまうため、前記重合性モノマーに対して50重量%以上含む。70〜100重量%が好ましく、90〜100%がより好ましい。
【0014】
前記重合性モノマーとして使用できるエステル部の炭素数が3以上10以下である(メタ)アクリルエステル系モノマー以外のモノマーとしては、これと重合可能なモノマーであれば特に制限はないが、(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチルなどのエステル部の炭素数が2以下の(メタ)アクリルエステル系モノマーが好ましい。
【0015】
(メタ)アクリルエステル系モノマー以外のモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。
【0016】
その他のモノマーとしては、二官能性重合性ビニル系モノマーが挙げられる。具体的には、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート(アルキレンは炭素数2〜4の範囲が好ましい)等が挙げられる。二官能性重合性ビニル系モノマーの混合割合は、(メタ)アクリルエステル系モノマー100重量部に対して50重量部以下であることが好ましく、0.1〜40重量部であることが好ましい。
【0017】
本発明の重合性モノマーには、本発明の効果を阻害しない範囲で、添加物が添加されていてもよい。
添加剤としては、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0018】
上記(メタ)アクリルエステル系モノマーは、水溶性高分子、及び水溶性重合開始剤の存在下、乳化重合に付される。
上記(メタ)アクリルエステル系モノマーを水性媒体中で乳化重合するに際して、該(メタ)アクリルエステル系モノマーを一括で投入すると、重合時に凝集が生じ、目的とする重合体粒子が得られにくくなる場合があるので、該(メタ)アクリルエステル系モノマーを滴下供給させることが好ましい。モノマーの滴下時間は、短すぎると、重合時に凝集が生じることがあり、長すぎると、重合開始剤が失活し、重合が完了しないことがあるため、30分〜4時間が好ましく、1〜3.5時間がより好ましい。
【0019】
本発明で使用できる水溶性高分子としては、アニオン性水溶性高分子、カチオン性水溶性高分子、ノニオン性水溶性高分子が使用できるが、重合時の安定性が優れているという点でアニオン性水溶性高分子、カチオン性水溶性高分子が好ましい。
【0020】
本発明で使用できるアニオン性水溶性高分子の具体例としては、硫酸基変性ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウム、ポリアスパラギン酸ナトリウム、ポリ乳酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸アンモニウムなどが挙げられ、特に硫酸基変性ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースが好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせても用いてもよい。
【0021】
本発明で使用できるカチオン性水溶性高分子の具体例としては、アミノ基変性ポリビニルアルコール、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、カチオン化ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられ、特にアミノ基変性ポリビニルアルコール、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドが好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせても用いてもよい。
【0022】
本発明で使用できるノニオン性水溶性高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられ、特にポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせても用いてもよい。
【0023】
上記水溶性高分子の使用量は、少なすぎると粒子の分散安定性が悪いために重合後の重合体粒子の凝集物が生じてしまう一方、多すぎると重合体粒子の吸湿性が大きくなる原因となるので、前記重合性モノマー100重量部に対して前記水溶性高分子が0.01〜0.2重量部に限定され、0.03〜0.15重量部が好ましく、0.03〜0.10重量部がより好ましい。
【0024】
本発明で用いられる重合開始剤としては特に限定されず、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物類、2、2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素、2、2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸二水和物、2、2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩化水素、2、2−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2、2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩化水素、2、2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2、2−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩化水素、2、2−アゾビス{2−メチル−N−[1、1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2、2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2−アゾビス(N−ヒドロキシエチルイソブチルアミド)、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物類等があげられる。また、前記過硫酸塩類、および有機過酸化物類にナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、過酸化水素、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、およびその塩、第一銅塩、第一鉄塩などの還元剤を重合開始剤に組み合わせて用いるレドックス系開始剤なども挙げられる。
【0025】
重合開始剤は、その種類により相違するが、前記重合性モノマー100重量部に対して、0.1〜5重量部使用することが好ましい。より好ましくは、0.3〜3重量部である。
【0026】
また、乳化重合に連鎖移動剤を添加しても良い。連鎖移動剤の具体例としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロロメタン、ジブロモメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられ、前記重合性モノマー100重量部に対して、0.1〜5重量部使用することが好ましい。より好ましくは、0.3〜3重量部である。
【0027】
本発明で用いられる水性媒体としては、水単独、あるいは水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールのような低級アルコールの混合物が使用されるが、廃液処理の点から水単独が好ましい。
【0028】
前記重合性モノマーと水性媒体との使用割合(重量部)は、1:20〜1:2の範囲であることが好ましい。1:20より前記重合性モノマーの割合が少なくなると、生産性が悪くなる場合があるので好ましくない。1:2より前記重合性モノマーの割合が多くなると、重合中の粒子の安定性が悪くなり重合後の重合体粒子の凝集物が生じてしまう場合があるので好ましくない。より好ましい使用割合(重量部)は1:15〜1:3である。
【0029】
重合系の攪拌回転数は、例えば、5リットル容量の反応器を使用した場合、100〜500rpmであることが好ましい。また、重合温度は、使用するモノマーや重合開始剤の種類により相違するが、30〜100℃であることが好ましく、重合時間は2〜10時間であることが好ましい。
【0030】
本発明の重合体粒子は、0.01〜1.0μmの平均粒子径を有する。0.01μm未満の場合、重合時に多量の水溶性高分子を使用しなければならず、重合体粒子の吸湿性が大きくなってしまうことがあり、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤に使用する場合、トナーの帯電性を低下させるため好ましくない。また、1.0μmを超える場合、重合時に使用する水溶性高分子を極微量にする必要があることから重合時の凝集を引き起こすことがある。また、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤に使用する場合、トナーの流動性を悪化させることがあるので好ましくない。より好ましい平均粒子径は0.03〜0.8μmである。なお、平均粒子径の測定方法は、実施例の欄に記載する。
【0031】
また、重合体粒子の水系媒体からの単離は公知の方法を用いることができ、スプレードライヤーに代表される噴霧乾燥法、ドラムドライヤーに代表される加熱された回転ドラムに付着させて乾燥する方法、凍結乾燥法等により行うことができる。さらに乾燥させた重合体粒子は、粉砕機、解砕機等で凝集物を解すことが望ましい。
【0032】
更に、本発明の重合体粒子は、20℃かつ相対湿度80%雰囲気下における水分吸着率が0.6%以下である。0.6%を超えると、分散性、流動性、帯電性等の各種物性が悪化するため、例えば静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤とした場合に、これらの機能付与が損なわれてしまうことがある。好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.4%以下である。
【0033】
本発明の重合体粒子は、高湿度環境下での水分吸着率が抑制された低吸湿性に優れるアクリル系重合体粒子であり、所望の用途に用いることができる。そのような用途として、特に低吸湿性が必要とされる静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤として好適に使用できるほか、塗料や、インキ粘着剤用、接着剤用、人工大理石用等の添加剤、紙処理剤用、化粧品用等の充填材、クロマトグラフィーのカラム充填材、フィルム用のアンチブロッキング剤や、光拡散剤等として適している。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の平均粒子径、水分吸着率の測定方法及び重合安定性の測定方法を下記する。
(平均粒子径)
ここでいう平均粒子径は、動的光散乱法あるいは光子相関法と呼ばれる方法を利用して測定した粒子径を意味する。すなわち、0.01〜0.5wt%に調製した重合体粒子の水系分散液に25℃においてレーザー光を照射し、重合体粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定する。検出された重合体樹脂粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により求めた平均粒子径である。この種の平均粒子径は、市販の測定装置で簡便に測定可能であり、本実施例ではマルバーン社から市販されている「ゼータサイザーナノZS」を測定に使用している。
上述の市販の測定装置にはデータ解析ソフトが搭載されており、測定データを自動的に解析できる。
【0035】
(水分吸着率)
ここでいう水分吸着率は、重合体粒子を恒温恒湿環境下に所定時間保管し、保管前後の重量変化量から算出した値を意味する。すなわち、重合体粒子をあらかじめ55℃で24時間乾燥させ、この乾燥重合体粒子1gを温度20℃,かつ相対湿度80%の雰囲気下に1時間保管した後、重合体粒子の重量(g)を秤量する。この値をWとし、(1)式から算出して求めた値を重合体粒子の水分吸着率とした。
水分吸着率(%)=(W−1)×100・・・・(1)
【0036】
(重合安定性)
ここでいう重合安定性は、得られた重合体粒子の水系分散液全量を目開き100μmのステンレスふるいに通し、ふるい上の残存物を50℃で24時間乾燥させた後、残存物の重量を秤量する。この値(Wa)より凝集物生成率を算出し((2)式)、得られた値が3%未満である場合は重合安定性が非常に優れている(◎)、3〜6%である場合は重合安定性が優れている(○)、6%を超える場合は重合安定性が悪い(×)と判断した。
凝集物生成率=(Wa/重合性モノマー使用量)×100・・・・(2)
【0037】
(実施例1)
5L容量のオートクレーブに、水3200重量部、硫酸基変性ポリビニルアルコール(L−3266)(日本合成化学社製ゴーセランL−3266)0.24重量部を供給し、250rpmの攪拌回転数で攪拌しつつ、80℃に加熱した。次に、過硫酸アンモニウム(和光純薬社製)6.4部を供給した後、メタクリル酸イソブチル(IBMA;エステル部炭素数4)(共栄社化学社製ライトエステルIB)560重量部、メタクリル酸ターシャリーブチル(TBMA;エステル部炭素数4)(共栄社化学社製ライトエステルTB)240重量部を3時間かけて滴下供給した。滴下終了後、さらに過硫酸アンモニウムを1.6部供給し、80℃にて2時間に亘って攪拌を続けながら乳化重合を行なった。その後、乳化液を室温まで冷却することで重合体粒子の水系分散液を得た。得られた水系分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.28μmで、100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は0.5%であった。さらに得られた重合体粒子の水系分散液をスプレードライヤーにて給気温度105℃、排気温度55℃で処理することで、重合体粒子が得られ、さらにこれをジェットミルで処理することで重合体粒子の粉末を得た。使用した原料の種類及び使用量を表1に示す。
得られた重合体粒子の水分吸着率は0.29%であり、低吸湿性に優れていた。
【0038】
【表1】

【0039】
(実施例2)
滴下供給時間を1時間とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水系分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.32μmであり、100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は1.5%であった。水分吸着率は0.30%であり、低吸湿性に優れていた。
【0040】
(実施例3)
硫酸基変性ポリビニルアルコール(L−3266)(日本合成化学社製ゴーセランL−3266)1.2重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水系分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.26μmであり、100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は0.5%であった。水分吸着率は0.44%であり、低吸湿性に優れていた。
【0041】
(実施例4)
メタクリル酸ターシャリーブチルの代わりにメタクリル酸n−ブチル(NBMA;エステル部炭素数4)(共栄社化学社製ライトエステルNB)とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水系分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.38μmであり、100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は1.2%であった。水分吸着率は0.32%であり、低吸湿性に優れていた。
【0042】
(実施例5)
メタクリル酸ターシャリーブチルの代わりにメタクリル酸シクロヘキシル(CHMA;エステル部炭素数6)(共栄社化学社製ライトエステルCH)とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水系分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.42μmであり、100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は1.4%であった。水分吸着率は0.31%であり、低吸湿性に優れていた。
【0043】
(実施例6)
硫酸基変性ポリビニルアルコールの代わりにアミノ基変性ポリビニルアルコール(クラレ社製CM−318)、過硫酸アンモニウムの代わりに2、2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素(和光純薬工業社性V−50)とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水系分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.53μmであり、100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は0.9%であった。水分吸着率は0.38%であり、低吸湿性に優れていた。
【0044】
(実施例7)
メタクリル酸イソブチル(IBMA;エステル部炭素数4)(共栄社化学社製ライトエステルIB)560重量部の代わりに同480重量部、メタクリル酸ターシャリーブチル(TBMA;エステル部炭素数4)(共栄社化学社製ライトエステルTB)240重量部の代わりに同320重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水系分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.35μmであり、100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は1.4%であった。水分吸着率は0.38%であり、低吸湿性に優れていた。
【0045】
(実施例8)
メタクリル酸ターシャリーブチルの代わりにメタクリル酸メチル(MMA;エステル部炭素数1)(共栄社化学社製ライトエステルM)とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水系分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.22μmであり、100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は0.9%であった。水分吸着率は0.51%であり、低吸湿性に優れていた。
【0046】
(実施例9)
メタクリル酸ターシャリーブチルの代わりにメタクリル酸メチル(MMA;エステル部炭素数1)(共栄社化学社製ライトエステルM)、およびモノマーを滴下供給せずに一括投入とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水系分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.27μmであり、100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は5.1%であった。水分吸着率は0.51%であり、低吸湿性に優れていた。
【0047】
(比較例1)
メタクリル酸イソブチル560重量部の代わりに同240重量部、メタクリル酸ターシャリーブチル240重量部の代わりにメタクリル酸メチル560重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水系分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.27μmであったが、100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は0.5%であった。水分吸着率は0.65%であり、低吸湿性に優れるものではなかった。
【0048】
(比較例2)
メタクリル酸イソブチルの代わりにメタクリル酸ステアリル(SMA;エステル部炭素数18)とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は10.1%と重合安定性が悪く、目的とする重合体粒子は得られなかった。
【0049】
(比較例3)
硫酸基変性ポリビニルアルコール0.04重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は6.2%と重合安定性が悪く、目的とする重合体粒子は得られなかった。
【0050】
(比較例4)
硫酸基変性ポリビニルアルコール2.4重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水系分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.31μm、100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は0.6%であったが、水分吸着率は0.62%であり、低吸湿性に優れるものではなかった。
【0051】
(比較例5)
メタクリル酸イソブチル560重量部、メタクリル酸ターシャリーブチル(TBMA)240重量部の代わりにメタクリル酸メチル800重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水系分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.24μm、100μmメッシュ濾過により評価した凝集物生成率は0.6%であった。であったが、水分吸着率は1.8%であり、低吸湿性に優れるものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の重合体粒子は、重合体粒子の平均粒子径が0.01〜1μmであり、また20℃かつ相対湿度80%雰囲気下における水分吸着率が0.6%以下であるような低吸湿性に優れているという特徴を有している。そのため、経時による分散性、流動性、帯電性等の物性が損なわれることがないため、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤として使用できる他、塗料や、インキ粘着剤用、接着剤用、人工大理石用等の添加剤、紙処理剤用、化粧品用等の充填材、クロマトグラフィーのカラム充填材、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤、フィルム用のアンチブロッキング剤や、光拡散剤等として使用できる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル部の炭素数が3以上10以下である(メタ)アクリルエステル系モノマー50重量%以上を含む重合性モノマーを水性媒体中、水溶性高分子、及び重合開始剤の存在下で乳化重合させて重合体粒子を得る工程を含み、
前記重合性モノマー100重量部に対して前記水溶性高分子が0.01〜0.2重量部使用されることを特徴とする低吸湿性アクリル系重合体粒子の製造方法。
【請求項2】
前記重合性モノマーが(メタ)アクリル酸エステル系モノマーである請求項1に記載の低吸湿性アクリル系重合体粒子の製造方法。
【請求項3】
前記重合性モノマーを水性媒体中で滴下して重合する請求項1に記載の低吸湿性アクリル系重合体粒子の製造方法。
【請求項4】
水溶性高分子が、前記重合性モノマー100重量部に対して0.03〜0.15重量部使用される請求項1記載の低吸湿性アクリル系重合体粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の方法で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子であって、
平均粒子径0.01〜1.0μm、かつ20℃かつ相対湿度80%雰囲気下における水分吸着率が0.6%以下であることを特徴とする低吸湿性アクリル系重合体粒子。
【請求項6】
静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤に使用される請求項5に記載の低吸湿性アクリル系重合体粒子。








【公開番号】特開2010−77253(P2010−77253A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246161(P2008−246161)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】