説明

低水分硬質カプセル、及びその製造方法

【課題】水分含量が少なく且つ低吸湿性である硬質カプセルおよびその製造方法を提供する。また水溶性セルロース化合物とゲル化剤を主成分として冷ゲル法で調製される硬質カプセルについて、水分含量および吸湿性を低減する方法を提供する。
【解決手段】水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有し、25℃、相対湿度53%下で10日間保存後の乾燥減量が6重量%未満であることを特徴とする硬質カプセルを提供する。当該硬質カプセルは、水溶性セルロース化合物とゲル化剤を主成分とする硬質カプセルの冷ゲル製造方法において、ゲル化後の乾燥工程の前後または同時にゲル化カプセル皮膜を50〜150℃で加熱処理することによって製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分含量が少なく且つ低吸湿性であることを特徴とする硬質カプセルおよびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は水溶性セルロース化合物とゲル化剤を主成分として冷ゲル法で調製される硬質カプセルであって、従来の硬質カプセルに比して水分含量が少なく且つ低吸湿性であることを特徴とする硬質カプセルおよびその製造方法に関する。なお、冷ゲル法は、水溶性セルロース化合物とゲル化剤の混合物が50℃以下でゲルを形成するという特性を利用した、カプセルの製造方法である。
【0002】
さらに本発明は、水溶性セルロース化合物とゲル化剤を主要成分として冷ゲル法で調製される硬質カプセルについて、水分含量および吸湿性を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、医薬品、医薬部外品、食品などに使用される硬質カプセルとしては、主にゼラチンカプセルが用いられている。しかし、ゼラチンカプセルは皮膜の水分含量が11%以下に低水分化すると強度が著しく低下し、例えば中に吸湿性の物質を充填した場合には当該物質にカプセル皮膜中の水分が吸い取られる結果、脆弱化して割れやすくなるという欠点がある。例えば、ポリエチレングリコール#200〜#600の低分子量ポリエチレングリコール(以下、「低分子量PEG」ともいう)やPEGのグリセリン脂肪酸エステルおよび中鎖脂肪酸トリグリセライドは、優れた溶解性と吸収性を有することから汎用されている賦形剤であるものの、吸湿性を有することから、ゼラチンカプセルを用いて製剤化することは難しいとされている。またゼラチンカプセルは、上記の理由から水分含量を低減できず、15%と水分を比較的多く含むため、水反応性を有する物質や水分に対して不安定な物質は充填できないという問題もある(特許文献1など参照)。
【0004】
このため、かかるゼラチンカプセルの欠点を解消した非ゼラチン硬質カプセルとして、基剤に水溶性セルロース化合物を用いたカプセルや、水溶性セルロース化合物にポリビニルアルコールやゲル化剤を組み合わせたカプセルが提案されている(特許文献1〜4など参照)。特に水溶性セルロース化合物としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を用いたカプセル(HPMCカプセル)は、低水分下でも良好な強度を有し、吸湿性や水反応性の高いものも充填可能である点で優れている。
【0005】
しかしながら、その皮膜はゼラチンカプセルよりは格段に低水分であるが、吸湿性や水反応性の高い物質に影響を及ぼすだけの水分を有しており、より高い安定性を追及する上で更なる改善が求められている。
【特許文献1】特開平3−279325号公報
【特許文献2】特公昭47−4310号公報
【特許文献3】特開昭61−100519号公報
【特許文献4】特開昭61−266060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、皮膜強度を維持しながらも水分含量の低い硬質カプセル、特に水分含量とともに吸湿性も少なく、水反応性の高い物質、吸湿性の高い物質または水分含量の高い物質の充填にも好適に使用できる硬質カプセルを提供することを目的とする。また本発明は、かかる硬質カプセルの製造方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、水溶性セルロース化合物とゲル化剤を主要成分として冷ゲル法を用いて調製される硬質カプセルについて、水分含量や吸湿性を低減する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために日夜鋭意検討していたところ、水溶性セルロース化合物とゲル化剤を主成分として冷ゲル法を用いて調製される硬質カプセル(以下、「冷ゲル硬質カプセル」ともいう)の製造工程において、カプセル皮膜をゲル化した後に、50℃以上の温度で加熱処理することによって、ゼラチンカプセルはもちろん従来の冷ゲル硬質カプセルよりも水分含量の少ないカプセルが得られることを見出した。しかも、上記方法によって得られる冷ゲル硬質カプセルは、従来の冷ゲル硬質カプセルに比して吸湿性も少なく、外部湿度の影響を受けにくいため、水反応性、水分含量または吸湿性の高い物質の充填に好適に使用できることを確認した。
【0008】
本発明はかかる知見に基づいて完成されたものであり、下記の態様を含むものである。
項1.水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有し、25℃、相対湿度53%下で10日間保存後の乾燥減量が6重量%未満であることを特徴とする硬質カプセル。
【0009】
項2.25℃、相対湿度12%、22%、33%または43%下で10日間保存後の乾燥減量が、それぞれ1.1重量%以下、2.1重量%以下、3.2重量%以下または4.7重量%以下である、項1記載の硬質カプセル。
【0010】
項3.25℃における各相対湿度条件下でのカプセル皮膜の吸湿性(%)が、下記(1)〜(5)の少なくとも1つを満たすことを特徴とする項1記載の硬質カプセル:
(1)相対湿度12%条件下における吸湿性が9.2%以下、
(2)相対湿度22%条件下における吸湿性が9.5%以下、
(3)相対湿度33%条件下における吸湿性が9.7%以下、
(4)相対湿度43%条件下における吸湿性が10.9%以下、
(5)相対湿度53%条件下における吸湿性が11.1%以下。
【0011】
項4.水溶性セルロース化合物が、炭素数1〜6のアルキル基および炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選択される少なくとも1つの基で置換されたセルロースエーテルである項1記載の硬質カプセル。
【0012】
項5.水溶性セルロース化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである項3記載の硬質カプセル。
【0013】
項6.ゲル化剤がカラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンド種子多糖、カードラン、ゼラチン、ファーセレン、寒天およびジェランガムからなる群から選択される少なくとも1つである、項1記載の硬質カプセル。
【0014】
項7.ゲル化剤がカラギーナンである項6記載の硬質カプセル。
【0015】
項8.水溶性セルロース化合物としてヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゲル化剤としてカラギーナン、およびゲル化補助剤として塩化カリウムを含有する項1記載の硬質カプセル。
【0016】
項9.水溶性セルロース化合物としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを70〜99.9重量%、ゲル化剤としてカラギーナンを0.05〜2.2重量%およびゲル化補助剤として塩化カリウムを0.05〜2.2重量%含有してなることを特徴とする項8記載の硬質カプセル。
【0017】
項10.下記の工程を経て調製される項1に記載する硬質カプセル:
(1)水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有するカプセル調製液に、カプセル成型用ピンを浸漬する工程、
(2)カプセル調製液からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル調製液を35℃以下でゲル化する工程、
(3)カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセル皮膜を乾燥する工程、
(4)乾燥したカプセル皮膜をカプセル成型用ピンから脱離させる工程、
(5)工程(2)の後に、工程(3)の前後若しくは同時、または工程(4)の後にゲル化カプセル皮膜を50〜150℃で加熱処理する工程。
【0018】
項11.加熱処理をカプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセル皮膜を乾燥する工程(3)の前後若しくは同時に行って調製される項10に記載の硬質カプセル。
【0019】
項12.項1乃至11のいずれかに記載の硬質カプセルに内容物が充填されてなるカプセル製剤。
【0020】
項13.内容物が医薬品、食品または化粧料である項12記載のカプセル製剤。
【0021】
項14.下記の工程を有する硬質カプセルの製造方法:
(1)水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有するカプセル調製液に、カプセル成型用ピンを浸漬する工程
(2)カプセル調製液からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル調製液を35℃以下でゲル化する工程、
(3)カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセル皮膜を乾燥する工程、
(4)乾燥したカプセル皮膜をカプセル成型用ピンから脱離する工程、
(5)工程(2)の後に、工程(3)の前後若しくは同時、または工程(4)の後にゲル化したカプセル皮膜を50〜150℃で加熱処理する工程。
【0022】
項15.加熱処理をカプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセル皮膜を乾燥する工程(3)の前後若しくは同時に行う項14に記載する硬質カプセルの製造方法。
【0023】
項16.25℃、相対湿度53%下で10日間保存後の乾燥減量が6重量%未満の硬質カプセルを製造する方法である、項14に記載する製造方法。
【0024】
項17.水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を主成分とする硬質カプセルの水分含量および吸湿性を低減する方法であって、下記製造工程の(b)工程後の、(c)工程の前後若しくは同時、または(d)工程後に、ゲル化カプセル皮膜を50〜150℃で加熱処理することを特徴とする方法:
(a)水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有するカプセル調製液に、カプセル成型用ピンを浸漬する工程、
(b)カプセル調製液からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該カプセル成型用ピンの外表面に付着したカプセル調製液を35℃以下でゲル化する工程、
(c)カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセル皮膜を乾燥する工程、
(d)乾燥したカプセル皮膜をカプセル成型用ピンから脱離する工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
I.低水分硬質カプセルおよびその製造方法
本発明の硬質カプセルは、水溶性セルロース化合物とゲル化剤を主成分とするものである。
【0026】
本発明で用いられる水溶性セルロース化合物としては、アルキル基またはヒドロキシアルキル基の少なくとも1つの基で置換されたセルロースエーテルを挙げることができる。ここで上記アルキル基またはヒドロキシアルキル基でいう「アルキル基」としては、炭素数1〜6、好ましくは1〜4の直鎖または分岐状の低級アルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基およびプロピル基を挙げることができる。水溶性セルロース化合物として具体的には、メチルセルロースなどの低級アルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシ低級アルキルセルロース;ならびにヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシ低級アルキルアルキルセルロースなどを挙げることができる。なかでも、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは皮膜成型性および低水分下での機械的強度が優れている点で、最適な水溶性セルロース化合物である。
【0027】
また本発明で用いられるゲル化剤としては、カラギーナン、タマリンド種子多糖、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カードラン、ゼラチン、ファーセレラン、寒天、およびジェランガムなどを例示することができる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0028】
上記ゲル化剤のなかでもカラギーナンは、ゲル強度が高く、しかも特定イオンとの共存下で少量の使用で優れたゲル化性を示すことから最適なゲル化剤である。
【0029】
なお、カラギーナンには、一般にカッパ−カラギーナン、イオタ−カラギーナンおよびラムダ−カラギーナンの3種が知られている。本発明では、ゲル化能を有するカッパおよびイオタ−カラギーナンを好適に使用することができる。またペクチンはエステル化度の違いでLMペクチンとHMペクチンとに分類でき、ジェランガムもアシル化の有無によってアシル化ジェランガム(ネイティブジェランガム)と脱アシル化ジェランガムに分類することができるが、本発明ではいずれも区別することなく使用することができる。
【0030】
本発明の硬質カプセルは、使用するゲル化剤の種類に応じてゲル化補助剤を使用することもできる。ゲル化剤としてカラギーナンを使用する場合に組み合わせて用いることができるゲル化補助剤としては、カッパ−カラギーナンについては水中でカリウムイオン、アンモニウムイオンおよびカルシウムイオンの1種又は2種以上を与えることのできる化合物、例えば塩化カリウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化カルシウムを挙げることができる。またイオタ−カラギーナンについては水中でカルシウムイオンを与えることのできる、例えば塩化カルシウムを挙げることができる。またゲル化剤としてジェランガムを使用する場合に組み合わせて用いることができるゲル化補助剤としては、水中でナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの1種又は2種以上を与えることのできる化合物、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムを挙げることができる。加えて有機酸やその水溶性塩としてクエン酸またはクエン酸ナトリウムを使用することもできる。
【0031】
水溶性セルロース化合物としてはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゲル化剤としてはカラギーナン、およびゲル化補助剤としては塩化カリウムの組合せが好ましい。
【0032】
なお、硬質カプセルには、上記成分に加えて、必要に応じて、可塑剤、色素や顔料などの着色剤、不透明化剤、または香料などを配合することもできる。
【0033】
ここで可塑剤としては、医薬品または食品に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、アジピン酸ジオクチル,アジピン酸ポリエステル,エポキシ化ダイズ油,エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエステル,カオリン,クエン酸トリエチル,グリセリン,グリセリン脂肪酸エステル,ゴマ油,ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物,D-ソルビトール,中鎖脂肪酸トリグリセリド,トウモロコシデンプン由来糖アルコール液,トリアセチン,濃グリセリン,ヒマシ油,フィトステロール,フタル酸ジエチル,フタル酸ジオクチル,フタル酸ジブチル,ブチルフタリルブチルグリコレート,プロピレングリコール,ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール,ポリソルベート80,マクロゴール1500,マクロゴール400,マクロゴール4000,マクロゴール600,マクロゴール6000,ミリスチン酸イソプロピル,綿実油・ダイズ油混合物,モノステアリン酸グリセリン,リノール酸イソプロピルなどを挙げることができる。
【0034】
また着色剤としても、医薬品または食品に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、アセンヤクタンニン末,ウコン抽出液,塩化メチルロザニリン,黄酸化鉄,黄色三二酸化鉄,オパスプレーK−1−24904,オレンジエッセンス,褐色酸化鉄,カーボンブラック,カラメル,カルミン,カロチン液,β−カロテン,感光素201号,カンゾウエキス,金箔,クマザサエキス,黒酸化鉄,軽質無水ケイ酸,ケッケツ,酸化亜鉛,酸化チタン,三二酸化鉄,ジスアゾイエロー,食用青色1号およびそのアルミニウムレーキ,食用青色2号およびそのアルミニウムレーキ,食用黄色4号およびそのアルミニウムレーキ,食用黄色5号およびそのアルミニウムレーキ,食用緑色3号およびそのアルミニウムレーキ,食用赤色2号およびそのアルミニウムレーキ,食用赤色3号およびそのアルミニウムレーキ,食用赤色102号およびそのアルミニウムレーキ,食用赤色104号およびそのアルミニウムレーキ,食用赤色105号およびそのアルミニウムレーキ,食用赤色106号およびそのアルミニウムレーキ,水酸化ナトリウム,タルク,銅クロロフィンナトリウム,銅クロロフィル,ハダカムギ緑茶エキス末,ハダカムギ緑茶抽出エキス,フェノールレッド,フルオレセインナトリウム,d-ボルネオール,マラカイトグリーン,ミリスチン酸オクチルドデシル,メチレンブルー,薬用炭,酪酸リボフラビン,リボフラビン,緑茶末,リン酸マンガンアンモニウム,リン酸リボフラビンナトリウム,ローズ油、ウコン色素,クロロフィル,カルミン酸色素,食用赤色40号およびそのアルミニウムレーキ,水溶性アナトー,鉄クロロフィリンナトリウム,デュナリエラカロテン,トウガラシ色素,ニンジンカロテン,ノルビキシンカリウム,ノルビキシンナトリウム,パーム油カロテン,ビートレッド,ブドウ果皮色素,ブラックカーラント色素,ベニコウジ色素,ベニバナ赤色素,ベニバナ黄色素,マリーゴールド色素,リボフラビンリン酸エステルナトリウム、アカネ色素,アルカネット色素,アルミニウム,イモカロテン,エビ色素,オキアミ色素,オレンジ色素,カカオ色素,カカオ炭末色素,カキ色素,カニ色素,カロブ色素,魚鱗箔,銀,クサギ色素,クチナシ青色素,クチナシ赤色素,クチナシ黄色素,クーロー色素,クロロフィン,コウリャン色素,骨炭色素,ササ色素,シアナット色素,シコン色素,シタン色素,植物炭末色素,スオウ色素,スピルリナ色素,タマネギ色素,タマリンド色素,トウモロコシ色素,トマト色素,ピーナッツ色素,ファフィア色素,ペカンナッツ色素,ベニコウジ黄色素,ベニノキ末色素,ヘマトコッカス藻色素,ムラサキイモ色素,ムラサキトウモロコシ色素,ムラサキヤマイモ色素,油煙色素,ラック色素,ルチン,エンジュ抽出物,ソバ全草抽出物,ログウッド色素、アカキャベツ色素,アカゴメ色素,アカダイコン色素,アズキ色素,アマチャ抽出物,イカスミ色素,ウグイスカグラ色素,エルダーベリー色素,オリーブ茶,カウベリー色素,グースベリー色素,クランベリー色素,サーモンベリー色素,ストロベリー色素,ダークスィートチェリー色素,チェリー色素,チンブルベリー色素,デュベリー色素,パイナップル果汁,ハクルベリー色素,ブドウ果汁色素,ブラックカーラント色素,ブラックベリー色素,プラム色素,ブルーベリー色素,ベリー果汁,ボイセンベリー色素,ホワートルベリー色素,マルベリー色素,モレロチェリー色素,ラズベリー色素,レッドカーラント色素,レモン果汁,ローガンベリー色素,クロレラ末,ココア,サフラン色素,シソ色素,チコリ色素,ノリ色素,ハイビスカス色素,麦芽抽出物,パプリカ粉末,アカビートジュース,ニンジンジュースなどを挙げることができる。
【0035】
さらに不透明化剤および香料としても医薬品または食品に使用できるものであれば特に制限されない。例えば、不透明化剤としては酸化チタン,三二酸化鉄,黄色三二酸化鉄,黒酸化鉄,食用青色1号アルミニウムレーキ,食用青色2号アルミニウムレーキ,食用黄色4号アルミニウムレーキ,食用黄色5号アルミニウムレーキ,食用緑色3号アルミニウムレーキ,食用赤色2号アルミニウムレーキ,食用赤色3号アルミニウムレーキ,食用赤色102号アルミニウムレーキ,食用赤色104号アルミニウムレーキ,食用赤色105号アルミニウムレーキ,食用赤色106号アルミニウムレーキ,食用赤色40号アルミニウムレーキを挙げることができる。
【0036】
本発明の硬質カプセルは、カプセル皮膜の平衡水分が低いことを特徴とする。カプセル皮膜の平衡水分は、硬質カプセルを特定の相対湿度条件下においた場合の皮膜の水分含量から評価することができる。特に本発明の硬質カプセルは、25℃、相対湿度53%下に10日間保存後の乾燥減量が6重量%未満であることを特徴とする。好ましくは5.8重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0037】
なお、本発明で「乾燥減量」とは、カプセル皮膜を105℃で8時間加熱乾燥することによって減少する水分量(乾燥減量)を意味する。25℃、相対湿度53%下に10日間保存後の乾燥減量は、下記の方法によって測定することができる。
【0038】
乾燥減量の測定方法
デシケーターに硝酸マグネシウムの飽和水溶液を入れて恒湿状態とした雰囲気中に0.5〜5.0gの試料(硬質カプセル)を入れ密閉し、25℃で10日間保存する。なお、硝酸マグネシウムの飽和水溶液の存在下では、相対湿度約53%の雰囲気を作成することができる。保存後の試料の重量(湿重量)を測定した後、次いで当該試料を105℃で8時間加熱乾燥し、再度試料の重量(乾燥重量)を測定する。乾燥前の重量(湿重量)と乾燥後の重量(乾燥重量)の差から、下式に従って、105℃で8時間加熱乾燥することによって減少する水分量の割合(乾燥減量)を算出する。
【0039】
【数1】

【0040】
さらに本発明の硬質カプセルは、25℃、相対湿度12%、22%、33%または43%のいずれかの条件に10日間保存した後の乾燥減量が、それぞれ1.1重量%以下、2.1重量%以下、3.2重量%以下または4.7重量%以下であることが好ましい。本発明の硬質カプセルは、これらの相対湿度における乾燥減量条件の全てを充足するものである必要はなく、少なくともいずれかの条件を充足するものであればよい。好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4つ全ての条件を充足するものがよい。
【0041】
なお、かかる各相対湿度条件は、上記方法において硝酸マグネシウムの飽和水溶液に代えて、塩化リチウム、酢酸カリウム、塩化マグネシウムまたは炭酸カリウム飽和水溶液を用いることによって設定することができる。すなわち、塩化リチウム、酢酸カリウム、塩化マグネシウム、および炭酸カリウムの各飽和水溶液の存在下では、それぞれ相対湿度が約12%、約22%、約33%、および約43%の雰囲気を作成することができる。
【0042】
25℃、相対湿度12%で10日間保存後の乾燥減量は好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.9重量%以下;25℃、相対湿度22%で10日間保存後の乾燥減量は好ましくは1.9%以下、より好ましくは1.6%以下;25℃、相対湿度33%で10日間保存後の乾燥減量は好ましくは2.8%以下、より好ましくは2.4%以下;25℃、相対湿度43%で10日間保存後の乾燥減量は好ましくは4.2%以下、より好ましくは3.6%以下である。
【0043】
また本発明の硬質カプセルは、皮膜の吸湿性が低いことを特徴とする。カプセル皮膜の吸湿性は、例えば下記に示すように、相対湿度とその相対湿度でのカプセル皮膜の乾燥減量(カプセル水分値(%))との関係から評価することができる。
【0044】
カプセル皮膜の吸湿性の評価方法
0.5〜5.0gの試料(硬質カプセル)をシリカゲルで水分を低下させた後、デシケーターに塩化リチウム、酢酸カリウム、塩化マグネシウム、炭酸カリウム、硝酸マグネシウム、塩化ナトリウム、またはリン酸2水素カリウムの各飽和水溶液を入れて恒湿状態とした雰囲気中に各々試料を入れ密閉し、このまま試料を25℃で10日間保存する。なお、塩化リチウム、酢酸カリウム、塩化マグネシウム、炭酸カリウム、硝酸マグネシウム、塩化ナトリウム、およびリン酸2水素カリウムの各飽和水溶液の存在下では、それぞれ相対湿度が約12%、約22%、約33%、約43%、約53%、約75%、および約96%の雰囲気を作成することができる。
【0045】
保存後の各試料の重量(湿重量)を測定した後、各々の試料を105℃で8時間加熱乾燥し、再度各試料の重量(乾燥重量)を測定する。乾燥前の重量(湿重量)と乾燥後の重量(乾燥重量)の差から、下式に従って、105℃で8時間加熱乾燥することによって減少する水分量の割合(乾燥減量%)を算出する。これをここでは「カプセル水分値(%)」という。
【0046】
【数2】

【0047】
次いで、特定の相対湿度(%)条件下のカプセルの水分値(%)が、その相対湿度(%)の何%に相当するかを算出し、この値からカプセル皮膜の吸湿性(%)を評価する。
【0048】
【数3】

【0049】
具体的には、本発明の硬質カプセルは、25℃での吸湿性(%)が、下記(1)〜(5)の少なくとも1つを満たすものであることが好ましい。
(1)相対湿度12%において9.2%以下、
(2)相対湿度22%において9.5%以下、
(3)相対湿度33%において9.7%以下、
(4)相対湿度43%において10.9%以下、
(5)相対湿度53%において11.1%以下。
【0050】
25℃、相対湿度12%における吸湿性(%)として好ましくは8.3%以下、より好ましくは7.5%以下;25℃、相対湿度22%における吸湿性(%)として好ましくは8.6%以下、より好ましくは7.3%以下;25℃、相対湿度33%における吸湿性(%)として好ましくは8.5%以下、より好ましくは7.3%以下;25℃、相対湿度43%における吸湿性(%)として好ましくは9.8%以下、より好ましくは8.4%以下;25℃、相対湿度53%における吸湿性(%)として好ましくは10.4%以下、より好ましくは9.4%以下である。
【0051】
このように、水分含量が低く低吸湿性であることを特徴とする本発明の硬質カプセルは、浸漬法を利用して製造することができる、具体的には上記成分を含有する水溶液(以下、「カプセル調製液」ともいう)を浸漬液とし、これにカプセル成型用ピンを浸漬し、次いで引き上げて、35℃以下の温度で、カプセル成型用ピンの外表面に付着したカプセル調製液をゲル化させる工程を経て製造することができる。
【0052】
カプセル調製液中に含まれる上記各成分の濃度は、特に制限されないが、下記の割合を挙げることができる。
【0053】
水溶性セルロース化合物については、5〜30重量%、好ましくは10〜28重量%、より好ましくは16〜24重量%;ゲル化剤については、0.01〜0.5重量%、好ましくは0.02〜0.45重量%、より好ましくは0.03〜0.4重量%を挙げることができる。また、ゲル化補助剤を用いる場合は、その濃度として0.01〜0.5重量%、好ましくは0.02〜0.45重量%、より好ましくは0.03〜0.4重量%を挙げることができる。
【0054】
カプセル調製液中に含まれる水の量は、制限されないが、カプセル成型用ピンの浸漬時に採用される温度(浸漬液の温度)条件下(30〜80℃、好ましくは40〜60℃)で、カプセル調製液の粘度が100〜20000mPa・s、好ましくは300〜10000mPa・sとなるような割合を挙げることができる。通常、水含有量として70〜95重量%、好ましくは72〜90重量%を挙げることができる。
【0055】
カプセル調製液(浸漬液)の調製方法は、特に制限されない。例えば70℃程度に加熱した精製水にゲル化剤および必要に応じてゲル化補助剤を溶解した後、これに水溶性セルロース化合物を分散させて、これを所望の浸漬液の温度(通常30〜80℃、好ましくは40〜60℃、より好ましくは50〜60℃)まで冷却する方法、ならびに水溶性セルロース化合物を70℃程度以上の熱水に分散し、これを35℃程度以下に冷却して水溶性セルロース化合物を溶解させた後に、再び加温して35〜50℃程度に調製した液にゲル化剤を添加し溶解して、これを所望の浸漬液の温度に調整する方法などを制限なく使用することができる。
【0056】
本発明の硬質カプセルは、かかるカプセル調製液(浸漬液)にカプセル成型用ピンを浸漬した後、これを引き上げ、カプセル成型用ピンの外表面に付着したカプセル調製液を35℃以下に冷却してゲル化させ、その後、ゲル化した皮膜を50℃〜150℃で加熱処理することによって製造される。具体的には、本発明の硬質カプセルは下記の工程を経て製造することができる。
【0057】
(1)水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有するカプセル調製液に、カプセル成型用ピンを浸漬する工程(浸漬工程)、
(2)カプセル調製液からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル調製液を少なくとも35℃になるまで冷却してゲル化する工程(ゲル化工程)、
(3)カプセル成型用ピンの外表面に形成されたゲル化カプセル皮膜を乾燥する工程(乾燥工程)、
(4)乾燥したカプセル被膜をカプセル成型用ピンから脱離する工程(脱離工程)、
(5)上記のゲル化工程(2)後であって、乾燥工程(3)の前後若しくは同時、または脱離工程(4)後に、ゲル化し、また乾燥したカプセル皮膜を50〜150℃で加熱処理する工程(加熱工程)。
【0058】
浸漬工程(1)において、カプセル調製液(浸漬液)の温度としては、前述するように通常30〜80℃、好ましくは40〜60℃、より好ましくは50〜60℃を挙げることができる。またこのカプセル調製液(浸漬液)に浸漬するカプセル成型用ピンの温度は、カプセル調製液(浸漬液)の温度に応じて10〜30℃、好ましくは13〜28℃、より好ましくは15〜25℃に設定することができる。
【0059】
本発明で用いるカプセル調製液は、通常35℃以下でゲル化する性質を有する(冷ゲル化)。このためゲル化工程(2)は、カプセル製造室の温度が通常35℃以下、好ましくは30℃以下、好ましくは室温下で放冷することによって行うことができる(冷ゲル法)。
【0060】
乾燥工程(3)は室温で行うことができる。通常、室温の空気を送風することによって行なわれる。脱離工程(4)は、カプセル成型用ピン表面に形成された乾燥カプセル皮膜をカプセル成型用ピンから抜き出すことによって行われる。
【0061】
加熱工程(5)は、ゲル化工程(2)後、すなわちカプセル調製液がゲル化した後に行なわれる。加熱処理の時期は、ゲル化工程(2)後であればどの段階でもよく、乾燥工程(3)の前若しくは後、または乾燥と加熱とを同時に行ってもよい。さらに脱離工程(4)後であってもよい。好ましくはゲル化工程(2)後、ゲル化カプセル皮膜を室温下での乾燥工程に供し、乾燥後または半乾きの段階で、加熱処理を行う方法である。
【0062】
加熱温度は50〜150℃の範囲であれば特に制限されないが、好ましくは60〜100℃、より好ましくは60〜80℃の範囲である。加熱処理は、通常50〜150℃の空気を送風することによって行うことができる。
【0063】
斯くして調製されるカプセル皮膜は、所定の長さに切断調整された後、ボディ部とキャップ部を一対に嵌合した状態または嵌合しない状態で、本発明の低水分含量および低吸湿性の硬質カプセルとして提供することができる。
【0064】
上記の方法によって調製される本発明のカプセルは、水溶性セルロース化合物を70〜99.9重量%、好ましくは75〜99.7重量%、より好ましくは80〜99.4重量%、さらに好ましくは85〜99重量%;ゲル化剤を0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜9.5重量%、より好ましくは0.2〜9重量、さらに好ましくは0.3〜8重量%の割合で含むものであることが好ましい。さらに塩化カリウムなどのゲル化補助剤を含む場合、その含有量として2.2重量%以下の範囲、好ましくは0.1〜2.1重量%、より好ましくは0.2〜1.9重量%、さらに好ましくは0.3〜1.6重量%を挙げることができる。また本発明のカプセル皮膜が可塑剤を含む場合、その含有量としては通常15重量%以下の範囲を挙げることができる。好ましくは13重量%以下、より好ましくは11重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下の範囲である。また同様に着色剤を含む場合、その含有量は、通常15重量%以下の範囲で所望の着色程度に応じて適宜設定することができる。好ましくは13重量%以下、より好ましくは11重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下の範囲である。
【0065】
II.カプセル製剤
上記本発明の硬質カプセルは、内部に医薬品、食品または化粧料などを充填することによりカプセル製剤として調製することができる。
【0066】
内部に充填可能な成分としては、本発明の硬質カプセル皮膜を溶解せず、また反応しないものであれば、特に制限されない。例えば、粉末状、顆粒状などの固形物以外にも、液状物やゲル状物を充填することができる。充填可能な液状物としては、例えばステアリルアルコール、セタノール、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール800、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール3000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール8000およびポリエチレングリコール20000などのアルコール類;胡麻油、大豆油、落花生油、コーン油、硬化油、パラフィン油、サラシミツロウなどの油脂類;ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、クエン酸トリエチル、トリアセトン、中鎖脂肪酸トリグリセライドなどの脂肪酸およびその誘導体を挙げることができる。通常これらの液状物は、医薬品、食品または化粧料の有効成分または主成分と混合した状態で、上記本発明の硬質カプセル内に充填される。
【0067】
内部に充填可能な薬物は特に制限されないが、主として、経口投与可能な薬物を挙げることができる。例えば、ビタミン類、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤、抗腫瘍剤、強心剤、抗凝固剤、止血剤、骨吸収抑制剤、血管新生抑制剤、抗うつ剤、ベンズイミダゾール誘導体をはじめとするプロトンポンプインヒビター製剤等の抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、抗てんかん剤、抗アレルギー剤、不整脈治療剤、血管拡張剤、降圧利尿剤、糖尿病治療剤、抗結核剤、ホルモン剤、麻薬拮抗剤など制限なく例示することができる。
【0068】
こうした充填物の、上記本発明の硬質カプセル内への充填は、それ自体公知のカプセル充填機、例えば全自動カプセル充填機やカプセル充填・シール機を挙げることができる。前者の例として、クオリカプス(株)製の全自動カプセル充填機(型式名:LIQFIL super 80/150)を、後者の例としてクオリカプス(株)製のカプセル充填・シール機(型式名:LIQFIL super FS)を挙げることができる。
【0069】
前述するように、本発明の硬質カプセルは皮膜の水分含量が少なくまた吸湿性も低いため、水への反応性が比較的高い成分(例えば水分で変質しやすい成分)を充填することができ、カプセル製剤として調製することが可能である。かかる成分としては、例えばエステル化合物や酵素を例示することができる。また本発明の硬質カプセルは、低水分条件下でも優れた強度(耐衝撃強度)を備えている。このため、水への反応性が高い成分や吸湿性の高い成分を充填した場合は、乾燥条件下で保存することで、内容物の変質を防止することが可能である。また、本発明の硬質カプセルは皮膜の吸湿性が低いため、内部に比較的水含有量の高い成分を充填することも可能である。かかる成分としては、酵素やモルヒネの様な水和水を多く含有するものを例示することができる。
【0070】
III.硬質カプセル皮膜の水分含量や吸湿性を低減する方法
本発明は、水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を主成分とする硬質カプセルの水分含量および吸湿性を低減する方法を提供する。特に本発明が対象とする硬質カプセルは、上記成分を用いて冷ゲル法で調製されるものである。本発明の方法が対象とする硬質カプセルは、具体的には下記の方法で製造されるものである。
【0071】
(a)水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有するカプセル調製液に、カプセル成型用ピンを浸漬する工程(浸漬工程)
(b)カプセル調製液からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該カプセル成型用ピンの外表面に付着したカプセル調製液を35℃以下でゲル化する工程(ゲル化工程)、
(c)カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセル皮膜を乾燥する工程(乾燥工程)、
(d)乾燥したカプセル皮膜をカプセル成型用ピンから脱離する工程(離脱工程)。
【0072】
ここで水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、およびゲル化補助剤の種類や使用割合、並びにこれらを含有するカプセル調製液の調製方法は、前記Iの項で説明した通りである。また上記の(a)、(b)、(c)および(d)の工程は、前述する本発明の硬質カプセルの製造工程(1)、(2)、(3)および(4)にそれぞれ対応する。
【0073】
かかる(a)〜(d)の工程による製造方法は、水溶性セルロース化合物、ゲル化剤および必要に応じてゲル化補助剤を主成分として冷ゲル法で製造される従来公知の冷ゲル硬質カプセルの製造方法に相当する。従来公知の冷ゲル法では、カプセル調製液を35℃以下でゲル化して、次いで室温またはそれ以下の温度で乾燥して硬質カプセルが調製される。
【0074】
本発明の方法は、上記製造工程のゲル化工程(b)の後において、乾燥工程(c)の前後または同時に、または脱離工程(d)の後に、ゲル化したカプセル皮膜を50〜150℃で加熱処理することによって行うことができる。
【0075】
加熱工程で採用される温度は50〜150℃の範囲であれば特に制限されないが、好ましくは60〜100℃、より好ましくは60〜80℃の範囲である。制限はされないが、通常、これらの温度にある空気を送風することによって行われる。また乾燥工程(c)は、通常室温の空気を送風することによって行うことができる。
【0076】
斯くして、本発明によれば、水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を主成分として冷ゲル法で製造される硬質カプセル(冷ゲル硬質カプセル)の皮膜の水分含量および吸湿性を低減させることができる。すなわち、上記方法によって、上記(a)〜(d)からなる冷ゲル法で製造される従来の硬質カプセル(「従来の冷ゲル硬質カプセル」ともいう)よりも、皮膜の水分含量および吸湿性が低い冷ゲル硬質カプセルを得ることができる。
【0077】
従来の冷ゲル硬質カプセルの、25℃、相対湿度53%下に10日間保存した後の乾燥減量は6重量%以上、特に6〜7重量%の範囲内(実験例では6.7重量%)であるのに対して、本発明の方法によれば、その乾燥減量を6重量%未満、好ましくは5.8重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下に低減することができ、低水分硬質カプセルを得ることができる(実験例参照)。また、従来の冷ゲル硬質カプセルは、相対湿度12%下に10日間保存した後の乾燥減量が1.3重量%程度;相対湿度22%下に10日間保存した後の乾燥減量が2.4重量%程度;相対湿度33%下に10日間保存した後の乾燥減量が3.6重量%程度;相対湿度43%下に10日間保存した後の乾燥減量が5.3重量%程度であるのに対し、本発明の方法によれば、相対湿度12%下に10日間保存した後の乾燥減量が1.1重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.9重量%以下;相対湿度22%下に10日間保存した後の乾燥減量が2.1重量%以下、好ましくは1.9重量%以下、より好ましくは1.6重量%以下、;相対湿度33%下に10日間保存した後の乾燥減量が3.2重量%以下、好ましくは2.8重量%以下、より好ましくは2.4重量%以下;相対湿度43%下に10日間保存した後の乾燥減量が4.7重量%以下、好ましくは4.2重量%以下、より好ましくは3.6重量%以下の少なくとも1つの条件を満たす低水分硬質カプセルを得ることができる。
【0078】
さらに本発明の方法によれば、
(1)25℃、相対湿度12%における吸湿性(%)が9.2%以下、好ましくは8.3%以下、より好ましくは7.5%以下;
(2)25℃、相対湿度22%における吸湿性(%)が9.5%以下、好ましくは8.6%以下、より好ましくは7.3%以下;
(3)25℃、相対湿度33%における吸湿性(%)が9.7%以下、好ましくは8.5%以下、より好ましくは7.3%以下;
(4)25℃、相対湿度43%における吸湿性(%)が10.9%以下、好ましくは9.8%以下、より好ましくは8.4%以下;
(5)25℃、相対湿度53%における吸湿性(%)が11.1%以下、好ましくは10.4%以下、より好ましくは9.4%以下
となるように吸湿性を低減することができ、低吸湿性硬質カプセルを得ることができる(実験例参照)。
【実施例】
【0079】
以下、実施例及び実験例を示して本発明を説明するが、本発明はかかる実施例などによって制限されるものではない。
実施例1
約70℃の精製水19.55Lに塩化カリウム(ゲル化補助剤)18.4gを加えて溶解し、さらにカッパ−カラギーナン(ゲル化剤)39.1gを加え、これらを攪拌しながら溶解した。次にこの溶解液にヒドロキシプロピルメチルセルロース(セルロース化合物)3.45kgを攪拌しながら投入し、温水中で分散させた。その溶液の温度を50℃に下げて攪拌しながらヒドロキシプロピルメチルセルロースを溶解し、その後7時間静置して脱泡した。
【0080】
斯くして調製したカプセル調製液を浸漬液として、冷ゲル法を利用して硬質カプセルを調製した。具体的には、45〜55℃に調整したカプセル調製液(浸漬液)に、約20℃のカプセル成型用ピンを浸漬した。次いで、これを浸漬液から引き上げて、室温条件下で20〜90秒間空冷して、ピンの外表面に付着したカプセル調製液(浸漬液)をゲル化させて皮膜を形成した。さらに室温で5〜20分間放置した後(乾燥)、加熱乾燥を行った。加熱乾燥後、形成されたカプセル皮膜をピンから引き抜き、所定の長さに切断して、ボディ部とキャップ部を嵌合して硬質カプセルを得た。なお、上記加熱乾燥処理は、50℃で30分(調製例1)、60℃で30分(調製例2)、70℃で30分(調製例3)、80℃で30分(調製例4)、90℃で30分(調製例5)、100℃で30分(調製例6)、110℃で30分(調製例7)、120℃で30分(調製例8)または150℃で30分(調製例9)の各々の条件で行った。
【0081】
実施例2
約70℃の精製水19.55Lに塩化カリウム(ゲル化補助剤)18.4gを加えて溶解し、さらにカッパ−カラギーナン(ゲル化剤)39.1gを加え、これらを攪拌しながら溶解した。次にこの溶解液にヒドロキシプロピルメチルセルロース(セルロース化合物)3.45kgを攪拌しながら投入し、温水中で分散させた後、該溶液温度を50℃に下げてヒドロキシプロピルメチルセルロースを、攪拌しながら溶解し、その後7時間静置して脱泡した。
【0082】
斯くして調製したカプセル調製液を浸漬液として、冷ゲル法を利用して硬質カプセルを調製した。具体的には、45〜55℃に調整したカプセル調製液(浸漬液)に、約20℃のカプセル成型用ピンを浸漬した。次いで、これを浸漬液から引き上げて、室温条件下で20〜90秒間空冷して、ピンの外表面に付着したカプセル調製(浸漬液)をゲル化させて皮膜を形成した。さらに室温で40〜90分間放置した後(乾燥)、形成されたカプセルをピンから引き抜き、所定の長さに切断して、ボディ部とキャップ部を嵌合した後、加熱して硬質カプセルを得た。なお、上記加熱処理は、50℃で1時間(調製例10)、70℃で1時間(調製例11)の各々の条件で行った。
【0083】
実験例1 カプセル皮膜の水分含量の評価
上記実施例1で調製した硬質カプセル(調製例1〜9)、ならびに比較対照として、加熱乾燥を行わないで室温で乾燥して調製した硬質カプセル(対照例)について、それぞれ温度25℃、相対湿度53%下で、皮膜の水分が平衡に達する日数(10日間)放置した。得られた硬質カプセル(調製例1〜9、対照例)について各々重量(湿重量)を測定した後、105℃で8時間または24時間加熱処理し、再び重量(乾燥重量)を測定した。各硬質カプセル(調製例1〜9、対照例)について湿重量から乾燥重量を差し引いて、下式により乾燥減量(%)を算出し、乾燥減量(%)から皮膜の水分含量(皮膜の平衡水分)を評価した。
【0084】
【数4】

【0085】
調製例1〜9および対照例の硬質カプセルの乾燥減量(%)を表1および図1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
この結果から、本発明の方法で得られた硬質カプセルは、従来の冷ゲル法によって得られる硬質カプセルよりも、皮膜の水分含量(平衡水分)が低く、低水分カプセルであることがわかる。
【0088】
実験例2 微量天秤を利用したカプセル皮膜の吸放湿性の評価
上記実施例2で調製した硬質カプセル(調製例11、70℃で1時間加熱)、ならびに比較対照として、加熱乾燥を行わないで室温で乾燥して調製した硬質カプセル(対照例)について、吸湿性を評価した。
【0089】
(1)水分の吸着
具体的には、まず5〜10mgの試料(硬質カプセル)を微量天秤(MB 300G, VTI corporation)のセルに入れ、25℃で真空ポンプを用いてセル内を真空状態にし、硬質カプセルの水分含量を0%にした。その時の重量を秤量し、乾燥重量とした。次いでセル内の相対湿度を、約5%刻みで相対湿度0%から約95%まで順次加湿していき、各相対湿度条件下での試料の重量(湿重量)から、質量変化(湿重量−乾燥重量)を水分含量とし、下式からカプセル水分値(%)を求めた(吸着カプセル水分値(%))。
【0090】
【数5】

【0091】
(2)水分の脱着(脱離)
相対湿度が約95%に達した後、今度は相対湿度約95%から約5%まで約5%刻みでセル内を除湿していき、各相対湿度条件下での試料の重量(湿重量)から、質量変化(湿重量−乾燥重量)を求め、上記と同様にしてカプセル水分値(%)を求めた(脱着カプセル水分値(%))。
【0092】
結果を表2に示す。また、相対湿度(%)を横軸、カプセル水分値(%)を縦軸にして、カプセル皮膜への水分の吸着および脱着を示したグラフ(水分吸脱着等温線)を図2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
この結果から、本発明の方法で得られた硬質カプセル(調製例11)は、従来の冷ゲル法によって得られる硬質カプセルよりも皮膜の吸湿性が低く、同じ相対湿度条件下でも低水分状態を維持することができることがわかる。
【0095】
実験例3 塩類の飽和水溶液を利用したカプセル皮膜の吸放湿性の評価
上記実施例2で調製した硬質カプセル(調製例10と11)、ならびに比較対照として、加熱乾燥を行わないで室温で乾燥して調製した硬質カプセル(対照例)を使用して吸湿性を評価した。
【0096】
(1)水分の吸着実験
具体的には、各硬質カプセルを、それぞれシリカゲルで水分を低下させた後、塩化リチウム、酢酸カリウム、塩化マグネシウム、炭酸カリウム、硝酸マグネシウム、塩化ナトリウム、またはリン酸2水素カリウムの飽和水溶液をおのおの入れ、恒湿状態に維持した容器内に各試料を入れて密閉し、そのまま試料を10日間保存した。なお、塩化リチウム、酢酸カリウム、塩化マグネシウム、炭酸カリウム、硝酸マグネシウム、塩化ナトリウム、およびリン酸2水素カリウムの各飽和水溶液の存在下では、それぞれ相対湿度が約12%、22%、33%、43%、53%、75%、および96%の雰囲気を作成することができる。保存後、各試料の重量(湿重量)を測定し、次いで105℃で8時間加熱乾燥して再度試料の重量(乾燥重量)を測定した。乾燥前の重量(湿重量)と乾燥後の重量(乾燥重量)の差から、下式に従って、105℃で8時間加熱乾燥することによって減少する水分量の割合(乾燥減量%)を算出した。これをここでは「カプセル水分値(%)」という(吸着カプセル水分値(%))。
【0097】
【数6】

【0098】
(2)水分の脱着(脱離)実験
また、調製例10と11、並びに対照例の約10gの硬質カプセルを、各々リン酸二水素カリウムの飽和水溶液を入れた容器に試料を入れ密閉し、試料の水分を上昇させた後、塩化リチウム、酢酸カリウム、塩化マグネシウム、炭酸カリウム、硝酸マグネシウム、塩化ナトリウムの飽和水溶液を入れ恒湿状態に維持した容器内に試料を入れ替えて密閉し、そのまま試料を10日間保存した。保存後、各試料の重量(湿重量)を測定し、次いで105℃で8時間加熱乾燥して再度試料の重量(乾燥重量)を測定した。乾燥前の重量(湿重量)と乾燥後の重量(乾燥重量)の差から、上記式に従って「カプセル水分値(%)」を算出した(脱着カプセル水分値(%))。
【0099】
結果を表3に示す(表中、「RH」は相対湿度、「水分値」はカプセル水分値を意味する)。また、相対湿度(%)を横軸、カプセル水分値(%)を縦軸にして、カプセル皮膜への水分の吸着および脱着を示したグラフ(水分吸脱着等温線)を図3および図4に示す。なお、図4は、図3からカプセル皮膜への水分の吸着を示したグラフ(水分吸着等温線)だけを抜き出して示したものである。
【0100】
【表3】

【0101】
次いで、水分の吸着実験で得られた特定の相対湿度(%)条件下のカプセルの水分値(%)が、その相対湿度(%)の何%に相当するかを算出し、この値からカプセル皮膜の吸湿性(%)を評価する。
【0102】
【数7】

【0103】
結果を表4に示す。
【0104】
【表4】

【0105】
この結果から、本発明の方法で得られた硬質カプセル(調製例10、11)は、従来の冷ゲル法によって得られる硬質カプセル(対照)よりも皮膜の吸湿性が低く、同じ相対湿度条件下でも低水分状態を維持することができることがわかる。
【0106】
以上の実験例1と2と3の結果から、本発明の硬質カプセルは、水分含量が低く、且つ吸湿性が低いため、水反応性の高く変質を生じやすい薬剤や食品成分、吸湿性の高い薬剤や食品成分の充填基剤として好適であることがわかる。
【0107】
実験例4 カプセル皮膜の強度評価
上記実施例2で調製した硬質カプセル(調製例10:50℃で1時間加熱、調製例11:70℃で1時間加熱)、ならびに対照例として、加熱乾燥を行わないで室温で乾燥して調製した硬質カプセル、および比較例としてゼラチン硬質カプセルについて、下記の方法により耐衝撃強度を測定した。
【0108】
(1)耐衝撃強度
水分含量を調節した空カプセルを、横置きにし、50gの錘を高さ10cmのところから落し、カプセルが割れた数から割れ率を算出した。試験回数は10回とした。
【0109】
耐衝撃強度の結果を表5および図5に示す。
【0110】
【表5】

【0111】
この結果から、ゼラチンカプセルは低水分量条件になる程、割れ率が増加する傾向にあったが、本発明の硬質カプセルは低水分含量条件でも、優れた強度を有するものであることがわかる。
【0112】
実施例3〜13
表6に記載する組成からなる本発明の低水分硬質カプセルを、下記の方法に従って調製した。なお、表6中、ゲル化剤としてカラギーナン、ゲル化補助剤として塩化カリウム、着色剤として酸化チタン、可塑剤としてD−ソルビトールを使用した。
【0113】
<調製方法>
(1)約80℃の精製水にゲル化補助剤(塩化カリウム)を加えて溶解し、さらにゲル化剤(カラギーナン)を加え、これらを攪拌しながら溶解する。次にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を攪拌しながら加えて分散させた後、この溶液を攪拌しながら50℃まで冷却し、HPMCを溶解させる。攪拌しながら55℃まで加温し、着色剤(酸化チタン)と可塑剤(D−ソルビトール)を加えてカプセル調製液(浸漬液)を得る。
(2)得られた浸漬液にカプセル成型用ピン(ピン)を浸漬する。
(3)浸漬液からピンを引き上げてピンに付着した浸漬液を35℃以下でゲル化させる。
(4)ピンに付着した浸漬液を乾燥させてカプセル皮膜を形成させた後、それをピンから脱離させて、所定寸法に裁断する。
(5)裁断したカプセル皮膜を70℃で加熱処理して、本発明の硬質カプセルを得る。
【0114】
【表6】

【0115】
これらはいずれも、25℃、相対湿度53%下で10日保存後の乾燥減量が6重量%未満であり、しかも25℃における各相対湿度条件下でのカプセル皮膜の吸湿性(%)が、下記(a)〜(e)の少なくとも1つを満たす硬質カプセルである:
(a)相対湿度12%条件下における吸湿性が9.2%以下
(b)相対湿度22%条件下における吸湿性が9.5%以下
(c)相対湿度33%条件下における吸湿性が9.7%以下
(d)相対湿度43%条件下における吸湿性が10.9%以下
(e)相対湿度53%条件下における吸湿性が11.1%以下。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の硬質カプセルは、ゼラチンカプセルはもちろん、水溶性セルロース化合物とゲル化剤を主成分として冷ゲル法を用いて調製される従来の硬質カプセル(冷ゲル硬質カプセル)よりも水分含量が低く、しかも低水分下でも、従来の冷ゲル硬質カプセルと同様に良好な強度(耐衝撃強度)を備えている。また本発明の硬質カプセルは、皮膜の吸湿性が低いため、水分により影響を受けやすい物質の充填にも好適に使用することができる。さらに本発明の硬質カプセルは、多大な設備投資や特別な作業を要することなく、浸漬法による従来の冷ゲル硬質カプセルの製造装置を利用して安価に簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】カプセル製造時の加熱温度(50〜150℃)と、カプセル皮膜の水分含量(乾燥減量)(%)との関係を示すグラフである。
【図2】70℃で1時間加熱して調製した冷ゲル硬質カプセル(調製例11)および非加熱冷ゲル硬質カプセル(対照例)について、カプセル皮膜への水分の吸着および脱着を示したグラフ(水分吸脱着等温線)を示す(実験例2)。
【図3】50℃または70℃で1時間加熱して調製した冷ゲル硬質カプセル(調製例10、11)および非加熱冷ゲル硬質カプセル(対照例)について、カプセル皮膜への水分の吸着および脱着を示したグラフ(水分吸脱着等温線)を示す(実験例3)。
【図4】図3のグラフのうち、カプセル皮膜への水分の吸着だけを抜き出したグラフである。
【図5】各種のカプセルについて、皮膜の水分含量と衝撃強度との関係を示すグラフである(実験例4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有し、25℃、相対湿度53%下で10日間保存後の乾燥減量が6重量%未満であることを特徴とする硬質カプセル。
【請求項2】
25℃における各相対湿度条件下でのカプセル皮膜の吸湿性(%)が、下記(1)〜(5)の少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1記載の硬質カプセル:
(1)相対湿度12%条件下における吸湿性が9.2%以下、
(2)相対湿度22%条件下における吸湿性が9.5%以下、
(3)相対湿度33%条件下における吸湿性が9.7%以下、
(4)相対湿度43%条件下における吸湿性が10.9%以下、
(5)相対湿度53%条件下における吸湿性が11.1%以下。
【請求項3】
水溶性セルロース化合物が、炭素数1〜6のアルキル基および炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選択される少なくとも1つの基で置換されたセルロースエーテルである請求項1記載の硬質カプセル。
【請求項4】
水溶性セルロース化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項3記載の硬質カプセル。
【請求項5】
ゲル化剤がカラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンド種子多糖、カードラン、ゼラチン、ファーセレン、寒天およびジェランガムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1記載の硬質カプセル。
【請求項6】
ゲル化剤がカラギーナンである請求項5記載の硬質カプセル。
【請求項7】
水溶性セルロース化合物としてヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゲル化剤としてカラギーナン、およびゲル化補助剤として塩化カリウムを含有する請求項1乃至6のいずれかに記載の硬質カプセル。
【請求項8】
水溶性セルロース化合物としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを70〜99.9重量%、ゲル化剤としてカラギーナンを0.05〜2.2重量%およびゲル化補助剤として塩化カリウムを0.05〜2.2重量%含有してなることを特徴とする請求項7記載の硬質カプセル。
【請求項9】
下記の工程を経て調製される請求項1記載の硬質カプセル:
(1)水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有するカプセル調製液に、カプセル成型用ピンを浸漬する工程、
(2)カプセル調製液からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル調製液を35℃以下でゲル化する工程、
(3)カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセル皮膜を乾燥する工程、
(4)乾燥したカプセル皮膜をカプセル成型用ピンから脱離させる工程、
(5)工程(2)の後に、工程(3)の前後若しくは同時、または工程(4)の後にゲル化したカプセル皮膜を50〜150℃で加熱処理する工程。
【請求項10】
加熱処理を、カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセル皮膜を乾燥する工程(3)の前後若しくは同時に行って調製される請求項9に記載する硬質カプセル。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の硬質カプセルに内容物が充填されてなるカプセル製剤。
【請求項12】
内容物が医薬品、食品または化粧料である請求項11記載のカプセル製剤。
【請求項13】
下記の工程を有する硬質カプセルの製造方法:
(1)水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有するカプセル調製液に、カプセル成型用ピンを浸漬する工程
(2)カプセル調製液からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル調製液を35℃以下でゲル化する工程、
(3)カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化したカプセル皮膜を乾燥する工程、
(4)乾燥したカプセル皮膜をカプセル成型用ピンから脱離する工程、
(5)工程(2)の後に、工程(3)の前後若しくは同時、または工程(4)の後にゲル化カプセル皮膜を50〜150℃で加熱処理する工程。
【請求項14】
加熱処理を、カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセル皮膜を乾燥する工程(3)の前後若しくは同時に行う請求項13に記載する硬質カプセルの製造方法
【請求項15】
25℃、相対湿度53%下で10日間保存後の乾燥減量が6重量%未満の硬質カプセルを製造する方法である、請求項13に記載する製造方法。
【請求項16】
水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を主成分とする硬質カプセルの水分含量および吸湿性を低減する方法であって、下記製造工程の(b)工程の後の、(c)工程の前後若しくは同時または(d)工程後に、ゲル化カプセル皮膜を50〜150℃で加熱処理することを特徴とする方法:
(a)水溶性セルロース化合物、ゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有するカプセル調製液に、カプセル成型用ピンを浸漬する工程
(b)カプセル調製液からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該カプセル成型用ピンの外表面に付着したカプセル調製液を35℃以下でゲル化する工程、
(c)カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセル皮膜を乾燥する工程、
(d)乾燥したカプセル皮膜をカプセル成型用ピンから脱離する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−524573(P2009−524573A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520657(P2008−520657)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/JP2007/051527
【国際公開番号】WO2007/086586
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000228110)クオリカプス株式会社 (22)
【Fターム(参考)】