説明

低温における優れた靭性および硫化物応力腐食亀裂抵抗をもつ高強度の鋼管

【課題】低温における優れた靭性および硫化物応力腐食亀裂抵抗をもつ高強度の鋼管を提供する。
【解決手段】鋼組成を特定範囲とし、フェライト、高ベイナイトまたは粒状ベイナイトの実質的形成を伴わずに、約60容量%以上で約40容量%以下の低ベイナイトの微細組織が得られる焼き入れし、焼き入れ後、管を焼き戻しすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的に金属の製造に関し、そして、特定の実施態様においては、同時に硫化物応力腐食亀裂抵抗をもちながら、低温における高い靭性を有する、金属の管状棒を製造する方法に関する。特定の実施態様は、曲げに適する管を含む、すべての種類の垂直管(懸垂型、混成型、トップテンション型、改修型、掘削型、等)、配管並びに製油およびガス産業における使用のための流れ管路、のための継ぎ目なし鋼管に関する。
【背景技術】
【0002】
深海および超深海生産における中心的要素は、海底から水面のシステムへの流体の循環である。垂直管、すなわち掘削または生産のプラットフォームを油井に連結する管、は多数の海流の、負荷のかかる圧力に対し、かなりの距離(今日ではほぼ10,000フィート(3.3km)または約2マイル(3.2km)を超える)にわたり露出される。
【0003】
垂直管システムの経費は水深に対して極めて敏感である。稼動中の条件と環境の負荷(すなわち波と海流)の感受性は、異なる垂直管のタイプ−トップテンション型垂直管(TTR)および鋼懸垂型管(SCR)、混成型垂直管(HR)、改修型(WOR)および掘削型垂直管(DR)−に対して異なるが、垂直管の重量を軽減することは重要な利点を提供する。例えば、管路の重量を軽減することにより、管の価格と、垂直管を支持するために使用される牽引システムにかかるかなりの衝撃の軽減を達成することができることが予期される。少なくともこれらの理由のために、70ksi(485MPa)以上の降伏応力をもつ高強度の鋼は、沖合産業部門における、より軽量の垂直管の開発の候補物である。
【0004】
しかし、70ksiを超える特定の最小降伏強さ(SMYS)をもつ鋼は、応力下の水素脆弱化(hydrogen embrittlement)の結果として、硫化物応力腐食(SSC)誘発破損を受ける可能性がある。従って、酸性使用材料のNACE条件(例えば、NACE MR0175/ISO15156−1「石油および天然ガス産業−石油およびガス生産におけるHS−含有環境中に使用のための材料−パート1:亀裂抵抗性材料の選択の一般的原則」)を満たし、そしてSSCテスト(例えば、NACE 基準
TM0177「HS環境における硫化物応力亀裂および応力腐食亀裂に対する抵抗のための金属の実験室テスト」)を通過することは困難である。
【0005】
主要な継ぎ目なしのライン管の製造業者は70ksi以上の最小降伏強さをもつ高強度の材料を製造することはできるが、これらの高い等級の、SSCおよび水素誘発亀裂(HIC)に対する抵抗性(この後者はNACE 基準 TM0284,「水素誘発亀裂に対する抵抗の、管路および圧力容器鋼の評価」に従って算定される)はしばしば、適切ではない。現在は、X70へのグレードアップのみがISO3183に従う酸性使用に資格を与えられている。
【0006】
更に、強度の増加は、より低温において、より脆弱な動態をもたらす可能性がある。全般的に、物質は、典型的には、最低期待使用温度および/または外界温度の約20℃下にある、いわゆる「設計温度」で適確とされる。ノルウェイ大陸棚上の最低外界温度は約−20℃である。大西洋領域においては、優に−40℃を下る最低外界温度が予期される。その結果、約−60℃までもの最低設計温度が所望される。
【0007】
しかし、約70ksi以上の降伏応力をもつライン管鋼は、今日、約−40℃までのみ
の設計温度に対して適確とされる。この限界が大西洋および大西洋と同様な領域における、経費効率の良い石油およびガスの探索を制約する可能性がある。
【0008】
従って、約−60℃以下の温度で、改善された靭性をもつ、新規の、高強度の鋼管が所望される。
【発明の概要】
【0009】
要約
本発明の態様は鋼管または鋼チューブおよびそれを製造する方法に関する。いくつかの態様において、低温における優れた靭性と腐食抵抗(酸性使用、HS環境)を伴う、70ksi、80ksiおよび90ksiそれぞれの最小降伏強さをもつ、8〜35mm間の肉厚(WT)を有する垂直管とライン管のための、継ぎ目なしの焼き入れおよび焼き戻し鋼管が提供される。継ぎ目なし管はまた、熱誘導曲げおよびオフライン焼き入れおよび焼き戻し処理により、同一等級のベンドを製造するのに適する。一つの態様において、鋼管は6”(152mm)〜28”(711mm)間の外径(OD)および8〜35mmの肉厚(WT)を有する。
【0010】
一つの態様において、継ぎ目なしの低合金鋼管の組成は、鉄と不可避の不純物であるバランスを伴う、以下(重量):0.05%−0.16%のC、0.20%−0.90%のMn、0.10%−0.50%のSi、1.20%−2.60%のCr、0.05%−0.50%のNi、0.80%−1.20%のMo、最大0.03%のNb、最大0.02%のTi、0.005%−0.12%のV、0.008%−0.040%のAl、0.0030−0.012%のN、最大0.3%のCu、最大0.01%のS、最大0.02%のP、0.001−0.005%のCa、最大0.0020%のB、最大0.020%のAs、最大0.0050%のSb、最大0.020%のSn、最大0.030%のZr、最大0.030%のTa、最大0.0050%のBi、最大0.0030%のO、最大0.00030%のH、よりなる。
【0011】
鋼管は異なる等級に製造することができる。一つの態様において、70ksi等級には以下の特性が提供される:
・ 降伏強さ,YS:最小485MPa(70ksi)と最大635MPa(92ksi)、
・ 極限引っ張り強さ,UTS:最小570MPa(83ksi)と最大760MPa(110ksi)、
・ 延び率、20%以上、
・ YS/UTS比率0.93以下。
【0012】
他の態様において、80ksi等級には以下の特性が提供される:
・ 降伏強さ,YS:最小555MPa(80ksi)と最大705MPa(102ksi)、
・ 極限引っ張り強さ,UTS:最小625MPa(90ksi)と最大825MPa(120ksi)、
・ 延び率、20%以上、
・ YS/UTS比率0.93以下。
【0013】
他の態様において、90ksi等級には以下の特性が提供される:
・ 降伏強さ,YS:最小625MPa(90ksi)と最大775MPa(112ksi)、
・ 極限引っ張り強さ,UTS:最小695MPa(100ksi)と最大915MPa(133ksi)、
・ 延び率、18%以上、
・ YS/UTS比率0.95以下。
【0014】
鋼管は、250J/200J(平均/個別)の最小衝撃エネルギーおよび、基準ISO148−1に従って、約−70℃で実施される、縦、横双方のシャルピーV−ノッチ(CVN)テストに対する最小80%の平均剪断面積をもつことができる。一つの態様において、80ksi等級の管は最大248 HV10の硬度をもつことができる。他の態様において、90ksi等級の管は最大270 HV10の硬度をもつことができる。
【0015】
本発明の態様に従って製造された鋼管は、水素誘発亀裂(HIC)および硫化物応力腐食(SSC)亀裂の双方に抵抗を示すことができる。一つの態様において、NACE 溶液 A と試験期間96時間を使用するNACE 基準 TM0284−2003第21215項に従って実施されたHICテストは以下のHICパラメーター(3種の試験片の3片の平均)を与える:
・ 亀裂の長さの比率CLR5%、
・ 亀裂の厚さの比率,CTR1%、
・ 亀裂感受性の比率,CSR0.2%。
【0016】
他の態様において、試験溶液Aと試験期間720時間を使用するNACE TM0177に従って実施されるSSC試験は、70ksiと80ksi等級の90%のSMYSにおいて破損を与えず、そして90ksi等級の72%SMYSにおいて破損を与えない。
【0017】
本発明の特定の態様に従って製造された鋼管は、フェライト、高ベイナイト(upper bainite)および粒状ベイナイトのどれをも示さない微細組織を有する。それらは60%を超える、好ましくは90%を超える、最も好ましくは95%を超える容量百分率(ASTM E562−08に従って測定される)を含む焼き戻しマルテンサイトおよび、40%未満、好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満の容量百分率を含む焼き戻し低ベイナイト(lower bainite)よりなることができる。マルテンサイトとベイナイトは300秒〜3600秒の浸漬時間中、900℃〜1060℃の温度で再加熱し、そして20℃/秒を超える冷却速度で焼き入れ(quenching)後に、それぞれ450℃未満と540℃未満の温度で形成することができる。ASTM E112基準により測定される、平均プライアーオーステナイト(prior austenite)粒度は15μmまたは20μm(リニアルインターセプト)を超え、100μmより小さい。
【0018】
更なる態様において、焼き戻し後の鋼管のパケットサイズは、6μmより小さいパケットサイズ(すなわち、高角度の境界により分離された領域の平均サイズ)をもつことができる。更なる態様において、パケットサイズは約4μmより小さいことができる。他の態様において、パケットサイズは約3μmより小さいことができる。パケットサイズは、>45°のずれ(misorientation)をもつ境界であると考えられる高角度の境界を伴う電子逆散乱回折(EBSD)信号を使用する走査電子顕微鏡(SEM)により採られた画像における平均リニアルインターセプトとして測定することができる。
【0019】
更なる態様において、焼き戻し後の鋼管は微細なおよび粗い沈殿物の存在を示すことができる。微細な沈殿物はMX,MX,のタイプであることができ、ここでMはV、Mo、NbまたはCrであり、XはCまたはNである。微細な沈殿物の平均粒径は約40nm未満であることができる。粗い沈殿物はMC、MC、M23のタイプであることができる。粗い沈殿物の平均粒径は約80nm〜約400nm間の範囲内にあることができる。沈殿物は抽出複製(extraction replica)法を使用して、透過型電子顕微鏡(TEM)により検査することができる。
【0020】
一つの態様において、鋼管が提供される。該鋼管は
約0.05重量%〜約0.16重量%の炭素;
約0.20重量%〜約0.90重量%のマンガン;
約0.10重量%〜約0.50重量%のケイ素;
約1.20重量%〜約2.60重量%のクロム;
約0.05重量%〜約0.50重量%のニッケル;
約0.80重量%〜約1.20重量%のモリブデン;
約0.005重量%〜約0.12重量%のバナジウム;
約0.008重量%〜約0.04重量%のアルミニウム;
約0.0030重量%〜約0.0120重量%の窒素;および
約0.0010重量%〜約0.005重量%のカルシウム:
を含んでなる鋼組成物を含んでなる。
【0021】
鋼管の肉厚は約8mm以上、約35mm未満であることができる。鋼管は約70ksiを超える降伏強さをもつように加工することができ、鋼管の微細組織は約60%以上の容量百分率のマルテンサイトおよび、約40%以下の容量百分率の低ベイナイトを含んでなることができる。
【0022】
他の態様において、鋼管を製造する方法が提供される。該方法は、鋼組成物を有する鋼(例えば、低合金鋼)を提供する工程を含んでなる。該方法は更に、鋼を、約8mm以上、約35mm未満の肉厚を有する管に形成する工程を含んでなる。該方法は更に、約900℃〜約1060℃間の範囲内の温度への最初の加熱操作において、形成された鋼管を加熱する工程を含んでなる。該方法はまた、約20℃/秒以上の冷却速度で、形成された鋼管を焼き入れする工程を含んでなり、そこで焼き入れされた鋼の微細組織は約60%以上のマルテンサイトおよび、約40%以下の低ベイナイトであり、約15μmを超えるASTM E112により測定される、平均プライアーオーステナイト粒度を有する。該方法は更に、約680℃〜約760℃間の範囲内の温度で、焼き入れした鋼管を焼き戻す工程を含んでなり、そこで焼き戻し後の鋼管は約70ksiを超える降伏強さおよび、約−70℃で約150J/cm以上の平均シャルピーV−ノッチエネルギーを有する。他の態様において、鋼管の平均シャルピーV−ノッチエネルギーは約−70℃で約250J/cm以上である。
【0023】
一つの態様において、80ksi等級の継ぎ目なし鋼管が提供される。該管は、
0.10重量%〜0.13重量%の炭素;
0.40重量%〜0.55重量%のマンガン;
0.20重量%〜0.35重量%のケイ素;
1.9重量%〜2.3重量%のクロム;
0.9重量%〜1.1重量%のモリブデン;
0.001重量%〜0.005重量%のカルシウム;
0.05重量%〜0.07重量%のバナジウムおよび
0.010重量%〜0.020重量%のアルミニウム;
を含んでなる鋼組成物を含んでなる。鋼管の肉厚は約8mm以上で、約35mm以下である。鋼管は、熱間圧延、その後の室温への冷却、約900℃以上の温度への加熱、40℃/秒以上の冷却速度における焼き入れ、および約680℃〜約760℃間の温度における焼き戻しにより加工されて、約20μm〜約60μmのプライアーオーステナイト粒度、約3μm〜約6μmのパケットサイズ、および約90容量%以上のマルテンサイトと約10容量%以下の低ベイナイトを有する微細組織を形成することができる。鋼管は約80ksiと約102ksi間の降伏強さ(YS)、約90ksiと約120ksi間の極限引っ張り強さ(UTS)、約20%以上の延び率および0.93以下のYS/UTS比率を
有することができる。
【0024】
他の態様において、90ksi等級の継ぎ目なし鋼管を提供することができる。該管は、
0.10重量%〜0.13重量%の炭素;
0.40重量%〜0.55重量%のマンガン;
0.20重量%〜0.35重量%のケイ素;
1.9重量%〜2.3重量%のクロム;
0.9重量%〜1.1重量%のモリブデン;
0.001重量%〜0.005重量%のカルシウム;
0.05重量%〜0.07重量%のバナジウム;および
0.010重量%〜0.020重量%のアルミニウム;
を含んでなる鋼組成物を含んでなる。鋼管の肉厚は約8mm以上、約35mm以下であることができる。鋼管は、熱間圧延、その後の室温への冷却、約900℃以上の温度への加熱、約20℃/秒以上の冷却速度における焼き入れ、および約680℃〜約760℃間の温度における焼き戻しにより加工されて、約20μm〜約60μmのプライアーオーステナイト粒度、約2μm〜約6μmのパケットサイズ、および約95容量%以上のマルテンサイトと約5容量%以下の低ベイナイトを有する微細組織を形成することができる。鋼管は約90ksiと約112ksi間の降伏強さ(YS)、100ksiと133ksi間の極限引っ張り強さ(UTS)、約18%以上の延び率および約0.95以下のYS/UTS比率を有することができる。
【0025】
更なる態様において、70ksi等級の継ぎ目なし鋼管を提供することができる。該管は、
0.10重量%〜0.13重量%の炭素;
0.40重量%〜0.55重量%のマンガン;
0.20重量%〜0.35重量%のケイ素;
2.0重量%〜2.5重量%のクロム;
0.9重量%〜1.1重量%のモリブデン;および
0.001重量%〜0.005重量%のカルシウム;
を含んでなる鋼組成物を含んでなる。鋼管の肉厚は約8mm以上、約35mm以下であることができる。鋼管は、熱間圧延、その後の室温への冷却、約900℃以上の温度への加熱、約20℃/秒以上の冷却速度における焼き入れ、および約680℃〜約760℃間の温度における焼き戻しにより加工されて、約20μm〜約100μmのプライアーオーステナイト粒度、約4μm〜約6μmのパケットサイズ、および約60容量%以上のマルテンサイトおよび約40容量%以下の低ベイナイトを有する微細組織を形成することができる。該鋼管は約70ksiと約92ksi間の降伏強さ(YS)、約83ksiと約110ksi間の極限引っ張り強さ(UTS)、約18%以上の延び率および約0.93以下のYS/UTS比率を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明のその他の特徴と利点は添付の図面と関連して実施される以下の説明から、明白になると考えられる。
【図1】図1は鋼管を加工する方法の一態様を示すスキームフロー図である。
【図2】図2は本開示の鋼の一態様の連続的冷却の変態(CCT)図の一態様である。
【図3】図3は約600秒の保持時間を使用する開示態様に従って形成された、焼き入れしたままの管の光学顕微鏡写真である。管はプライアーオーステナイト粒子の境界を表すためにエッチングされている。
【図4】図4Aと4Bは約2400秒の保持時間を使用する開示態様に従って形成された、焼き入れ、そして焼き戻ししたままの管の光学顕微鏡写真である。管はプライアーオーステナイト粒子の境界を表すためにエッチングされている。(4A)200倍の拡大、(4B)1000倍の拡大。
【図5】図5は、図4の管のほぼ中央の壁部分に、低いおよび高いずれをもつ境界を表す、電子逆散乱回折(EBSD)信号を使用する走査電子顕微鏡(SEM)により採られた顕微鏡写真である。
【図6】図6は開示された態様に従って形成された鋼の約45°を超える角度のずれをもつ境界の切片(intercept)の分布を表すプロットである。
【図7】図7は実施例3の比較例の焼き入れされたままの管の中央の壁付近の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本開示の実施態様は、鋼組成物、鋼組成物を使用して形成される管状棒(例えば、管)およびそれぞれの製法、を提供する。管状棒は例えば、石油およびガス産業における使用のためのライン管および垂直管として使用することができる。特定の態様において、管状棒は約8mm以上、約35mm未満の肉厚および、実質的なフェライト、高ベイナイトまたは粒状ベイナイトを含まない、マルテンサイトおよび低ベイナイトの微細組織、を有することができる。そのように形成された管状棒は約70ksi、80ksi、および約90ksiの最小降伏強さを有することができる。更なる態様において、管状棒は低温における良好な靭性並びに硫化物応力腐食亀裂(SSC)および水素誘発亀裂(HIC)に対する抵抗、を有することができ、それにより酸性使用環境における管状棒の使用を可能にする。しかし、管状棒は本開示の実施態様から形成することができる製品の一例を含んでなり、そして、決して、開示された実施態様の応用性を限定するものと考えてはならないことを理解することができる。
【0028】
本明細書で使用されるような用語「棒」は広義の用語であり、その通常の辞書にある意味を含み、そして更に、真っすぐであり、またはベンドもしくは湾曲物をもち、そして前以て決定された形状に形成することができる、全般的に中空の、細長い部材並びに、形成された管状棒をその意図される部位に固定するために必要なあらゆる更なる成形材料、を表す。他の形状および断面も同様に想定されるが、棒は、実質的に円形の外面と内面をもつ管状であることができる。本明細書で使用される用語「管状」は円形または円筒形である必要はない、あらゆる細長い中空の形状を表す。
【0029】
本明細書で使用される用語「大体」、「約」および「実質的に」は、記載量に近い量であって、所望の機能を尚実現するか、または所望の結果を達成する量を表す。例えば、用語「大体」、「約」および「実質的に」は、記載量の10%未満内、5%未満内、1%未満内、0.1%未満内、そして0.01%未満内にある量を表すことができる。
【0030】
本明細書で使用される用語「室温」は当業者に知られたその通常の意味をもち、約16℃(60°F)〜約32℃(90°F)の範囲内の温度を含むことができる。
【0031】
本開示の実施態様は、低合金炭素鋼管および製法を含んでなる。以下に更に詳述されるように、鋼の組成と熱処理の組み合わせにより、高い肉厚の管(例えば、約8mm以上で、約35mm未満のWT)において、最小降伏強さ、靭性、硬度および腐食抵抗の1種または複数を含む、興味を引かれる特定の機械的特性を与える最終的微細組織を達成することができる。
【0032】
本開示の鋼組成物は、炭素(C)のみならずまた、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、アルミ
ニウム(Al)、窒素(N)およびカルシウム(Ca)を含んでなることができる。更に、場合により1個または複数の以下の元素:タングステン(W)、ニオビウム(Nb)、チタン(Ti)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)およびタンタル(Ta)、が存在しても、そして/または同様に付け加えられてもよい。組成物の残りは鉄(Fe)および不純物を含んでなることができる。特定の態様において、不純物の濃度はできるだけ低い量に減少させることができる。不純物の態様は、それらに限定はされないが、銅(Cu)、硫黄(S)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、酸素(O)および水素(H)を含むことができる。
【0033】
例えば、低合金鋼組成物は以下(別記されない限り重量%):
約0.05%〜約0.16%間の範囲内の炭素;
約0.20%〜約0.90%間の範囲内のマンガン;
約0.10%〜約0.50%間の範囲内のケイ素;
約1.20%〜約2.60%間の範囲内のクロム;
約0.050%〜約0.50%間の範囲内のニッケル;
約0.80%〜約1.20%間の範囲内のモリブデン;
約0.08%以下のタングステン;
約0.030%以下のニオビウム;
約0.020%以下のチタン;
約0.005%〜約0.12%間の範囲内のバナジウム;
約0.008%〜約0.040%間の範囲内のアルミニウム;
約0.0030%〜約0.012%間の範囲内の窒素;
約0.3%以下の銅;
約0.01%以下の硫黄;
約0.02%以下のリン;
約0.001〜約0.005%間の範囲内のカルシウム;
約0.0020%以下のホウ素;
約0.020%以下のヒ素;
約0.005%以下のアンチモン;
約0.020%以下の錫;
0.030%以下のジルコニウム;
0.030%以下のタンタル;
約0.0050%未満のビスマス;
約0.0030%未満の酸素;
約0.00030%以下の水素;および
鉄と不純物を含んでなる組成物のバランス:
を含んでなることができる。
【0034】
熱処理操作は焼き入れと焼き戻し(Q+T)操作を含むことができる。焼き入れ操作は、熱形成後、ほぼ室温から、管をオーステナイト化する温度に管を再加熱し、その後急速に焼き入れする工程を含むことができる。例えば、管を約900℃〜約1060℃間の範囲内の温度に加熱し、特定の浸漬時間中、ほぼオーステナイト化温度に維持することができる。焼き入れ期間中の冷却速度は管の壁の中央付近で特定の冷却速度を達成するように選択される。例えば、管を、壁の中央において約20℃/秒以上の冷却速度を達成するように冷却することができる。他の態様において、冷却速度は以下に詳述されるように、約40℃/秒以上であることができる。
【0035】
約8mm以上で、約35mm未満のWTおよび前記の組成を有する管を焼き入れする工程は、管内に約60%を超える、好ましくは約90%を超える、そしてより好ましくは約95%を超える容量パーセントのマルテンサイトの形成を増進することができる。特定の
態様において、管の残りの微細組織は、実質的にフェライト、高ベイナイトまたは粒状ベイナイトを含まずに、低ベイナイトを含むことができる。他の態様において、管の微細組織は実質的に100%のマルテンサイトよりなることができる。
【0036】
焼き入れ操作後、管を更に焼き戻しにかけることができる。焼き戻しは、鋼の組成と、目的の降伏強さに応じて、約680℃〜約760℃間の範囲内の温度で実施することができる。微細組織は、マルテンサイトと低ベイナイトに加えて更に、約15μm〜約100μm間の、ASTM E112に従って測定された、平均プライアーオーステナイト粒度を示すことができる。微細組織はまた、約6μm以下、好ましくは約4μm以下、最も好ましくは約3μm以下の平均パケットサイズを示すことができる。微細組織は更に、約40nm以下の平均粒径をもつMX、MX[ここでM=V、Mo、Nb、CrそしてX=CまたはN]の微細沈殿物および、約80〜約400nm間の範囲内の平均粒径をもつタイプMC、MCおよびM23の粗い沈殿物を示すことができる。
【0037】
一つの態様において、約8mm以上で、約35mm未満のWTおよび前述の組成と微細組織をもつ鋼管は以下の特性をもつことができる:
・ 最小降伏強さ(YS) = 約70ksi(485MPa)
・ 最大降伏強さ = 約102ksi(705MPa)
・ 最小極限引っ張り強さ(UTS) = 約90ksi(625MPa)
・ 最大極限引っ張り強さ = 約120ksi(825MPa)
・ 破損時延び率 = 約20%を超える
・ YS/UTS = 約0.93以下。
【0038】
他の態様において、約8mm以上で、約35mm未満のWTおよび前述の組成と微細組織をもつ鋼管は以下の特性をもつことができる:
・ 最小降伏強さ(YS) = 約80ksi(550MPa)
・ 最大降伏強さ = 約102ksi(705MPa)
・ 最小極限引っ張り強さ(UTS) = 約90ksi(625MPa)
・ 最大極限引っ張り強さ = 約120ksi(825MPa)
・ 破損時延び率 = 約20%を超える
・ YS/UTS = 約0.93以下。
【0039】
他の態様において、約8mm以上で、約35mm未満のWTをもつ鋼管は以下の特性をもって形成することができる:
・ 最小降伏強さ(YS) = 約90ksi(625MPa)
・ 最大降伏強さ = 約112ksi(775MPa)
・ 最小極限引っ張り強さ(UTS) = 約100ksi(695MPa)
・ 最大極限引っ張り強さ = 約133ksi(915MPa)
・ 破損時延び率 = 約18%を超える
・ YS/UTS = 約0.95以下。
【0040】
前記の各態様において、形成される管は更に以下の衝撃および硬度の特性を示すことができる:
・ 最小衝撃エネルギー(平均/個別、約−70℃における):
・= 約250J/約200J(70ksiおよび80ksi等級に対し)
・= 約150J/約100J(90ksi等級に対し)
・ 平均剪断面積(約−70℃におけるCVN;ISO148−1)
・= 最低約80%
・ 硬度
・= 最大約248 HV10(70ksiおよび80ksi等級に対し)
・= 最大約270 HV10(90ksi等級に対し)。
【0041】
前記の各態様において、形成される管は更に、硫化物応力腐食(SSC)亀裂および水素誘発亀裂(HIC)に対し以下の抵抗を示すことができる。SSCテストは約720時間のテスト期間により、溶液Aを使用してNACE TM0177に従って実施される。HICテストはNACE溶液Aとテスト期間96時間を使用して、NACE TM0284−2003 第21215項に従って実施される:
HIC:
・亀裂の長さの比率、CLR = 5%以下、
・亀裂の厚さの比率、CTR = 1%以下、
・亀裂の感受性の比率、CSR = 0.2%以下、
SSC:
・90%の特定最小降伏応力における破損寿命、
・= 70ksiおよび80ksi等級に対し、約720時間を超える、
・72%の特定最小降伏応力における破損寿命
・= 90ksi等級に対し、約720時間を超える。
【0042】
図1に関して、管状棒を製造するための方法100の一態様を表すフロー図が示される。方法100は、製鋼操作102、熱形成操作104、オーステナイト化106A、焼き入れ106B、焼き戻し106Cを含むことができる熱処理操作106、および仕上げ操作110を含む。方法100はより多数の操作またはより少数の操作を含むことができ、その操作は、必要に応じて、図1に示されたものと異なる順序で実施することができることは理解することができる。
【0043】
方法100の操作102は好ましくは、鋼の加工および穿孔、圧延されて、金属の管状棒を形成することができる固形金属鋼片の製造、を含んでなる。更なる態様において、鋼組成物の原料を調製するために、特定の鋼スクラップ、鋳鉄および海綿鉄を使用することができる。しかし、鋼組成物の調製には、鉄および/または鋼の他の原料を使用することができることを理解することができる。
【0044】
鋼を熔融し、リンと他の不純物を減少させ、そして特定の温度を達成するために電気アーク炉を使用して、一次製鋼を実施することができる。更に、タッピングと脱酸素、並びに合金元素の添加を実施することができる。
【0045】
製鋼工程の主要な目的の一つは不純物の除去による鉄の精錬である。とりわけ、硫黄とリンはそれらが鋼の機械的特性を劣化させるために、鋼に不利益である。一つの態様において、特定の精錬工程を実施するために、一次製鋼後に、レードル炉とトリミングステーションにおいて、二次的製鋼を実施することができる。
【0046】
これらの操作期間中に、鋼内に非常に低い硫黄含量を達成することができ、カルシウム包含処理を実施し、そして包含物浮選が実施される。一つの態様において、包含物と不純物を浮遊させるために、レードル炉内で不活性ガスを泡立てることにより、包含物浮選を実施することができる。この方法は不純物と包含物を吸収することができる流体スラッグを生成する。この方法で、包含物含量の低い、所望の組成を有する高品質の鋼を提供することができる。
【0047】
表1は別記されない限り重量パーセント(重量、%)における、鋼組成物の態様を表す。
【0048】
【表1】

【0049】
炭素(C)は、鋼組成物へのその添加が、鋼の強度を安価に高め、そして微細組織を精錬し、それにより変態温度を低下させることができる元素である。一つの態様において、鋼組成物のC含量が約0.05%未満であると、幾つかの態様においては製造製品、特に管状製品に所望される強度を得ることが困難であるかも知れない。他方、他の態様においては、鋼組成物が約0.16%を超えるC含量を有する場合には、幾つかの態様においては、靭性が損なわれ、溶接性が減少する可能性があり、それにより、接合がねじ接合により実施されない場合は、あらゆる溶接工程を、より困難で高価なものにさせる可能性がある。更に、高い焼き入れ性をもつ鋼における、焼き入れ亀裂の発生の危険が、炭素含量とともに増加する。従って、一つの態様において、鋼組成物のC含量は約0.05%〜約0.16%間の範囲内、好適には約0.07%〜約0.14%間の範囲内、そしてより好適には約0.08%〜約0.12%間の範囲内に選択することができる。
【0050】
マンガン(Mn)は、鋼組成物に対するその添加が、鋼の焼き入れ性、強度および靭性を増加するのに有効であることができる元素である。一つの態様において、鋼組成物のMn含量が約0.20%未満であると、幾つかの態様においては、鋼に所望の強度を得ることが困難である可能性がある。しかし、他の態様において、Mn含量が約0.90%を超えると、幾つかの態様においては、バンド構造が著明になり、靭性とHIC/SSC抵抗
が減少する可能性がある。従って、一つの態様において、鋼組成物のMn含量は約0.20%〜約0.90%間の範囲内、好適には約0.30%〜約0.60%間の範囲内、そしてより好適には約0.30%〜約0.50%間の範囲内に選択することができる。
【0051】
ケイ素(Si)は、鋼組成物に対するその添加が、製鋼過程中に脱酸素効果をもつことができ、更に鋼の強度を増加する可能性がある(例えば、固溶体の強化)元素である。一つの態様において、鋼組成物のSi含量が約0.10%未満である場合は、幾つかの態様における鋼は製鋼工程中に脱酸素が低く、高濃度の微細包含物を示す可能性がある。他の態様において、鋼組成物のSi含量が約0.50%を超えると、幾つかの態様で鋼の靭性と形成性の双方が減少する可能性がある。表面の酸化物(スケール)の付着が鉄カンラン石形成により増加し、表面の欠陥の危険が高まるために、鋼が酸化雰囲気中で、高温(例えば、約1000℃を超える温度)で処理される時には、約0.5%を超える鋼組成物内のSi含量はまた、表面の品質に有害な影響を有することが認められる。従って、一つの態様において、鋼組成物のSi含量は約0.10%〜約0.50%間の範囲内、好適には約0.10%〜約0.40%間の範囲内、そしてより好適には約0.10%〜約0.25%間の範囲内に選択することができる。
【0052】
クロム(Cr)は、鋼組成物に対するその添加が、焼き入れ性を増加し、変態温度を低下し、そして鋼の焼き戻し抵抗を増加することができる元素である。従って、鋼組成物に対するCrの添加は高い強度と靭性レベルを達成するために望ましい可能性がある。一つの態様において、鋼組成物のCr含量が約1.2%未満である場合は、場合により、所望される強度と靭性を得ることが困難かも知れない。他の態様において、鋼組成物のCr含量が約2.6%を超える場合は、価格が過剰であり、そして幾つかの態様においては、粒子の境界における粗いカーバイドの高い堆積により、靭性が減少するかも知れない。更に、生成される鋼の溶接性が減少され、それにより、接合がネジ接合により実施されない場合は、溶接工程を更に困難で、高価なものにさせる可能性がある。従って、一つの態様において、鋼組成物のCr含量は、約1.2%〜約2.6%間の範囲内、好適には約1.8%〜約2.5%間の範囲内、そしてより好適には約2.1%〜約2.4%間の範囲内に選択することができる。
【0053】
ニッケル(Ni)は、鋼組成物に対するその添加が、鋼の強度と靭性を増加する可能性がある元素である。しかし、一つの態様において、Niの添加が約0.5%を超えると、スケールの付着に対する不利な効果が認められ、表面の欠陥形成の危険が高い。更に、他の態様において、約1%を超える鋼組成物内のNi含量は、硫化物応力腐食亀裂に有害な効果をもつことが認められる。従って、一つの態様において、鋼組成物のNi含量は、約0.05%〜約0.5%間の範囲内、より好適には約0.05%〜約0.2%間の範囲内で変動することができる。
【0054】
モリブデン(Mo)は、鋼組成物に対するその添加が、固溶体と微細沈殿物により焼き入れ性と硬化を改善することができる元素である。Moは焼き戻し中の柔軟化を遅らせる助けをし、それにより非常に微細なMCとMC沈殿物の形成を促進することができる。これらの粒子はマトリックス内に実質的に均一に分布され、そして更に、有益な水素トラップとして働き、それにより亀裂の核部位として振舞う、通常は粒子の境界において、危険なトラップに向かう原子水素の拡散を遅らせることができる。Moは更に、粒子の境界へのリンの分離を減少し、それにより粒子内破損に対する抵抗を改善し、水素脆弱化を被る高強度の鋼は粒子内破損形態を示すため、SSC抵抗に対しても有益な効果を伴う。従って、鋼組成物のMo含量を増加することにより、より良い靭性レベルを促進する、より高い焼き戻し温度で、所望の強度を達成することができる。一つの態様において、その効果を発揮するために、鋼組成物のMo含量は約0.80%以上であることができる。しかし、他の態様において、鋼組成物内のMo含量が約1.2%を超える場合は、焼き入れ性
に対する飽和効果が認められ、溶接性が減少される可能性がある。Moの鉄合金は高価であるため、一つの態様において、鋼組成物のMo含量は約0.8%〜約1.2%間の範囲内、好適には約0.9%〜約1.1%間の範囲内、そしてより好適には約0.95%〜約1.1%間の範囲内に選択することができる。
【0055】
タングステン(W)は、鋼組成物に対するその添加が、場合により実施され、そして二次的硬化を形成するタングステンカーバイドを形成することにより、室温および高温で強度を増加することができる元素である。Wは好適には、高温で鋼の使用が必要な時に添加される。Wの動態は焼き入れ性に関してはMoの動態に類似しているが、その効果はMoの効果の約半分である。タングステンは鋼の酸化を減少し、そして、その結果、高温における再加熱処理期間に、より少ない缶石が形成される。しかし、その価格が非常の高いので、一つの態様において、鋼組成物のW含量は約0.8%以下であるように選択することができる。
【0056】
ニオビウム(Nb)は、鋼組成物に対するその添加が、場合により実施され、そしてカーバイドおよびニトリドを形成するために提供され、そして更に熱間圧延および焼き入れ前の再加熱中に、オーステナイトの粒度を精錬するために使用することができる元素である。しかし、Cr、MoおよびCのような他の化学元素の適当なバランスにより、低い変態温度が促進される時に、主要なマルテンサイト組織が形成され、そして、粗いオーステナイト粒子の場合ですら、微細なパケットが形成されるので、オーステナイト粒子を精錬するために、本発明の鋼組成物の態様にはNbは必要ではない。
【0057】
カーボニトリドとしてのNb沈殿物は粒子の分散硬化により鋼の強度を増加することができる。これらの微細な丸い粒子は、マトリックス内に実質的に均一に分布され、そして更に水素トラップとして働くことができ、それにより、亀裂の核部位として振舞う、通常粒子の境界における、危険なトラップに向かう原子水素の拡散を有益に遅らせることができる。一つの態様において、鋼組成物のNb含量が約0.030%を超えると、靭性を損なう、粗い沈殿物の分布が形成される可能性がある。従って、一つの態様において、鋼組成物のNb含量は約0.030%以下、好適には約0.015%以下、そしてより好適には約0.01%以下であるように選択することができる。
【0058】
チタン(Ti)は、鋼組成物に対するその添加が、場合により実施され、そして高温工程においてオーステナイト粒度を精錬して、それによりニトリドとカーボニトリドを形成するために提供されることができる元素である。しかし、それが、特に25mmを超える肉厚をもつ管の場合に、焼き入れ性を改善する固溶体中に残るホウ素を保護するために使用される場合を除いて、本発明の鋼組成物の態様には必要でない。例えば、Tiは窒素を結合して、BN形成を回避する。更に、特定の態様において、Tiが約0.02%より高い濃度で存在する場合に、靭性を損なう粗いTiNの粒子が形成され得る。従って、一つの態様において、鋼組成物のTi含量は約0.02%以下、そしてより好適には、ホウ素が約0.0010%未満である時に、約0.01%以下であることができる。
【0059】
バナジウム(V)は、鋼組成物に対するその添加が、焼き戻し中にカーボニトリドの沈殿により強度を増加することができる元素である。これらの微細な丸い粒子はまた、マトリックス内に実質的に均一に分布され、そして有益な水素トラップとして働くことができる。一つの態様において、V含量が約0.05%未満である場合に、場合により、所望の強度を得ることが困難かも知れない。しかし、他の態様において、鋼組成物のV含量が0.12%より高い場合には、大容量分率(a large volume fraction)のバナジウムカーバイド粒子が形成されて、その後に靭性を減少させることができる。従って、特定の態様において、鋼組成物のNb含量は約0.12%以下、好適には約0.05%〜約0.10%間の範囲内、そしてより好適には約0.05%〜約0.07%
間の範囲内であるように選択することができる。
【0060】
アルミニウム(Al)は、鋼組成物に対するその添加が、製鋼工程中、脱酸素効果を有し、そして鋼粒子を精錬する可能性がある元素である。一つの態様において、鋼組成物のAl含量が約0.040%より高い場合には、靭性を損なうAlNの粗い沈殿物および/または、HICおよびSSC抵抗を損なうAl濃度の高い酸化物(例えば、非金属包含物)が形成され得る。従って、一つの態様において、鋼組成物のAl量は約0.04%以下、好適には約0.03%以下、そしてより好適には約0.025%以下であるように選択することができる。
【0061】
窒素(N)は、一つの態様において、V、Nb、MoおよびTiのカーボニトリドを形成するために、鋼組成物内のその含量が好適には約0.0030%以上であるように選択される元素である。しかし、他の態様において、鋼組成物のN含量が約0.0120%を超えると、鋼の靭性が劣化される可能性がある。従って、鋼組成物のN含量は約0.0030%〜約0.0120%間の範囲内、好適には約0.0030%〜約0.0100%間の範囲内、そしてより好適には約0.0030%〜約0.0080%間の範囲内に選択することができる。
【0062】
銅(Cu)は鋼組成物の態様には必要でない不純物元素である。しかし、製造工程に応じて、Cuの存在は不可避である可能性がある。従って、鋼組成物内のCu含量はできるだけ低いように限定することができる。例えば、一つの態様において、鋼組成物のCu含量は約0.3%以下、好適には約0.20%以下、そしてより好適には約0.15%以下であることができる。
【0063】
硫黄(S)は、鋼の靭性と作業性の双方、並びにHIC/SSC抵抗を減少させることができる不純物元素である。従って、幾つかの態様において、鋼組成物のS含量はできるだけ低く維持することができる。例えば、一つの態様において、鋼組成物のS含量は約0.01%以下、好適には約0.005%以下、そしてより好適には約0.003%以下であることができる。
【0064】
リン(P)は高強度の鋼の靭性とHIC/SSC抵抗を減少させることができる不純物元素である。従って、鋼組成物のP含量は、幾つかの態様において、できるだけ低く維持することができる。例えば、一つの態様において、鋼組成物のP含量は約0.02%以下、好適には約0.012%以下、そしてより好適には約0.010%以下であることができる。
【0065】
カルシウム(Ca)は、鋼組成物へのその添加が、包含物の形状の制御および、微細な、実質的に丸い硫化物を形成することによりHIC抵抗の促進を補助することができる元素である。一つの態様において、これらの利点を提供するために、鋼組成物のCa含量は、鋼組成物の硫黄含量が約0.0020%を超える時は、約0.0010%以上であるように選択することができる。しかし他の態様において、鋼組成物のCa含量が約0.0050%を超える場合には、Ca添加の効果は飽和されて、HICとSSC抵抗を軽減する、Ca濃度の高い、非金属包含物の塊を形成する危険が増大する可能性がある。従って、特定の態様において、最少のCa含量は約0.0010%以上、そして最も好適には約0.0015%以上であるように選択することができるが、鋼組成物の最大Ca含量は約0.0050%以下、そしてより好適には約0.0030%以下であるように選択することができる。
【0066】
ホウ素(B)は、鋼組成物へのその添加が、場合により実施され、そして鋼の焼き入れ性を改善するために提供されることができる元素である。Bはフェライト形成を妨げるた
めに使用することができる。一つの態様において、有益な効果は約0.0020%を超えるホウ素含量により飽和され得るが、これらの有益な効果を提供するための鋼組成物のB含量の下限は約0.0005%であることができる。従って、特定の態様において、鋼組成物のB含量は約0〜0.0020%間の範囲内、より好適には約0.0005〜約0.0012%間の範囲内、そして最も好適には約0.0008〜約0.0014%間の範囲内にすることができる。
【0067】
ヒ素(As)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)およびビスマス(Bi)は鋼組成物の態様には必要でない不純物元素である。しかし、製鋼工程により、これらの不純物元素の存在が不可避である可能性がある。従って、鋼組成物内のAsとSn含量は約0.020%以下、そしてより好適には約0.015%以下であるように選択することができる。SbとBi含量は約0.0050%以下であるように選択することができる。
【0068】
ジルコニウム(Zr)とタンタル(Ta)はNbおよびTiと同様な、強力なカーバイドおよびニトリド形成物として働く元素である。これらの元素はオーステナイト粒子を精錬するためには、本発明の鋼組成物の態様には必要でないので、鋼組成物に、場合により添加されることができる。ZrとTaの微細なカーボニトリドは粒子の分散硬化により鋼の強度を増加し、そして更に有益な水素トラップとして働き、それにより危険なトラップの方向への原子水素の拡散を遅延させることができる。一つの態様において、ZrまたはTa含量が約0.030%以上である場合には、鋼の靭性を損なう可能性がある、粗い沈殿物の分布が形成され得る。ジルコニウムはまた、鋼中の脱酸素元素として働き、硫黄と結合するが、球体の非金属包含物を増進するための、鋼に対する添加物としてはCaが好まれる。従って、鋼組成物中のZrとTaの含量は約0.03%以下であるように選択することができる。
【0069】
鋼組成物の総酸素(O)含量は可溶性酸素と、非金属包含物(酸化物)中の酸素の合計である。それは実際的には、十分に脱酸素された鋼中の酸化物中の酸素含量であるので、高すぎる酸素含量は、非金属包含物の高い容量分率およびHICとSSCに対する少ない抵抗を意味する。従って、一つの態様において、鋼の酸素含量は約0.0030%以下、好適には約0.0020%以下、そしてより好適には約0.0015%以下であるように選択することができる。
【0070】
前記のような組成を有する流体スラグの製造後に、鋼は、鋼の軸に沿って実質的に均一な直径を有する丸い固形の鋼片に鋳型することができる。例えば、約330mm〜約420mm間の範囲内の直径を有する丸い鋼片をこの方法で製造することができる。
【0071】
このように加工された鋼片は熱形成工程104により管状の棒に形成することができる。一つの態様において、清浄な鋼の、固形の、円筒形の鋼片は約1200℃〜1340℃、好適には約1280℃の温度に加熱することができる。例えば鋼片は回転ヒース(heath)炉により再加熱することができる。鋼片は更に圧延機にかけることができる。圧延機内で、鋼片は、特定の好適な態様において、マネッスマン法を使用して穿孔することができ、熱間圧延を使用して、長さを実質的に増加させながら、管の外径と肉厚を実質的に減少させる。特定の態様において、マネッスマン法は約1200℃〜約1280℃間の範囲内の温度で実施することができる。得られる中空の棒を更に、保持マンドレル連続圧延機内で約1000℃〜約1200℃間の範囲内の温度で熱間圧延することができる。正確なサイジングはサイジング圧延機により実施することができ、継ぎ目なし管は冷却床中でほぼ室温に空気冷却される。この方法で、例えば、約6インチ(約15cm)〜約16インチ(約40cm)間の範囲内の外径(OD)をもつ管を形成することができる。
【0072】
圧延後、温度をより均一にするために、室温で冷却することなしに、中間炉により、管
をインラインで加熱することができ、正確なサイジングはサイジング圧延機により実施することができる。その後、継ぎ目なし管を冷却床中で室温に空気冷却することができる。約16インチ(約40cm)を超える最終ODをもつ管の場合に、中間サイジング圧延機により製造される管は回転膨張圧延機により加工することができる。例えば中間サイズの管は移動(walking)ビーム炉により約1150℃〜約1250℃間の範囲内の温度に再加熱され、約1100℃〜約1200℃間の範囲内の温度でエクスパンダ圧延機により所望の直径に膨張され、そして最終的サイジングの前にインラインで再加熱されることができる。
【0073】
限定されない例において、固形の棒は、約6インチ(約15cm)〜約16インチ(約40cm)間の範囲内の外径および、約8mm以上で、約35mm未満の肉厚、を有する管に前記の通りに熱形成されることができる。
【0074】
形成された管の最終的微細組織は、操作102に提供される鋼の組成および、操作106において実施される熱処理、により決定されることができる。組成と微細組織は順次、形成される管の特性を与えることができる。
【0075】
一つの態様において、マルテンサイト形成の増進は、パケットサイズ(亀裂の生長に対する、より高い抵抗を与える高角度の境界により分離された領域のサイズ、ずれが高いほど、亀裂が境界を横断するために要するエネルギーが高い)を微細にし(refine)、そして与えられた降伏強さに対する鋼管の靭性を改善することができる。焼き入れされたままの管中のマルテンサイト量を増加すると更に、与えられた強度レベルに対して、より高い焼き入れ温度の使用を許すことができる。更なる態様において、焼き入れされたままの管中のベイナイトをマルテンサイトと置き換えることにより与えられた焼き入れ温度に対して、より高い強度レベルを達成することができる。従って、一つの態様において、比較的低温で、主としてマルテンサイトの微細組織を達成することが本方法の目的である(例えば、約450℃以下の温度におけるオーステナイトの変態)。一つの態様において、マルテンサイトの微細組織は約60%以上のマルテンサイトの容量パーセントを含んでなることができる。更なる態様において、マルテンサイトの容量パーセントは約90%以上であることができる。更なる態様において、マルテンサイトの容量パーセントは約95%以上であることができる。
【0076】
他の態様において、鋼の焼き入れ性、すなわち、焼き入れされる時にマルテンサイトを形成する鋼の相対的能力、は組成と微細組織により改善することができる。一つの様相において、CrとMoのような元素の添加は、マルテンサイトとベイナイトの変態温度を低下させることに有用であり、焼き戻しに対する抵抗を増加する。有益なことには、その場合、与えられた強度レベル(例えば、降伏強さ)を達成するために、より高い焼き戻し温度を使用することができる。他の様相において、比較的粗いオーステナイト粒度(例えば、約15μm〜約100μm)は焼き入れ性を改善することができる。
【0077】
更なる態様において、鋼の硫化物応力腐食亀裂(SSC)抵抗は組成と微細組織により改善されることができる。一つの様相において、SSCは管内のマルテンサイトの増加した含量により改善されることができる。他の様相において、非常に高温における焼き戻しは以下に更に詳述されるように、管のSSCを改善することができる。
【0078】
約450℃以下の温度でマルテンサイト形成を促進するために、鋼組成物は更に等式1を満たすことができ、その各元素の量は重量%で与えられる:

60C% + Mo% + 1.7Cr% > 10 等式1

【0079】
焼き入れ後に有意量のベイナイト(例えば、約40容量%未満)が存在する場合は、実質的に高ベイナイトまたは粒状ベイナイト(ベイナイト状のずれた(dislocated)フェライトおよび、高Cのマルテンサイトと保持されたオーステナイトの島の混合物)を含まない比較的微細なパケットを増進するためには、ベイナイトが形成する温度は約540℃以下でなければならない。
【0080】
約540℃以下の温度でベイナイト形成(例えば、低ベイナイト)を増進するためには、鋼組成物は更に等式2を満たすことができ、そこで各元素の量は重量%で与えられる:

60C% + 41Mo% + 34Cr% > 70 等式2

【0081】
図2は、膨張計測(dilatometry)により示された、表1に示された範囲内の組成をもつ鋼の連続的冷却変態(CCT)図を表す。図2は、高いCrとMo含量の場合でも、フェライトの形成を実質的にに回避し、そして約50容量%以上のマルテンサイト量を有するためには、約20μmを超える平均のプライアー(prior)オーステナイト粒度(AGS)および約20℃/秒以上の冷却速度を使用することができる。更に、約100%のマルテンサイトの微細組織を提供するためには、約40℃/秒以上の冷却速度を使用することができる。
【0082】
明らかに、約8mm〜約35mm間の肉厚の管に対する約800℃と500℃間の典型的平均冷却速度は約5℃/秒より低いので、焼きならし(例えば、オーステナイト化とその後の静止空気冷却)は、所望のマルテンサイト微細組織を達成することができない。管の壁の中央付近において所望の冷却速度を達成し、そしてそれぞれ約450℃と約540℃より低い温度でマルテンサイトと低ベイナイトを形成するためには、水の焼き入れを使用することができる。従って、圧延したままの管は炉内で再加熱され、熱間圧延から空気冷却後に、焼き入れ操作106Aにおいて水で焼き入れされる。
【0083】
例えば、オーステナイト化操作106Aの一つのの態様において、炉の領域の温度は、管に、約±20℃より小さい許容範囲を伴う目標のオーステナイト化温度を達成させるように選択することができる。目標のオーステナイト化温度は、約900℃〜約1060℃間の範囲内に選択することができる。加熱速度は約0.1℃/秒〜約0.3℃/秒間の範囲内に選択することができる。浸漬期間、すなわち管が最終目標温度マイナス約10℃を達成する時間と、炉からの排出時間との間の期間、は約300秒〜約3600秒間の範囲内に選択することができる。オーステナイト化温度と保持時間は、化学組成、肉厚および所望のオーステナイト粒度に応じて選択することができる。炉の出口において、管は表面酸化物を除去するために、スケールを除去され、水の焼き入れシステムに早急に移される。
【0084】
焼き入れ操作106Bにおいて、管の壁の中央付近で所望の冷却速度(例えば、約20℃/秒を超える)を達成するために、外部および内部冷却を使用することができる。前述されたように、この範囲内の冷却速度は、約60%を超える、好適には約90%を超える、そしてより好適には約95%を超えるマルテンサイトの容量パーセントの形成を促進することができる。残りの微細組織は低ベイナイト(すなわち、通常約540℃より高い温度で形成される高ベイナイトの場合におけるように、ラス境界に粗い沈殿物を伴わずにベイナイトのラス(laths)内に微細な沈殿物を含む典型的な形態をもつ約540℃より低い温度で形成されるベイナイト)を含むことができる。
【0085】
一つの態様において、焼き入れ操作106Bの水による焼き入れは、撹拌された水を含
むタンク内に管を浸漬することにより実施することができる。管は、熱の移動を、高く、均一にさせ、そして管のゆがみを回避するために、焼き入れ期間中、急速に回転することができる。更に、管内に発生する蒸気を除去するために、内部の水噴射を使用することもできる。特定の態様において、焼き入れ操作106B期間中の水温は、約40℃以下、好適には約30℃未満であることができる。
【0086】
焼き入れ操作106B後に、焼き戻し操作106Cのために管を他の炉内に導入することができる。特定の態様において、比較的低いずれ(dislocation)密度のマトリックスと、実質的に丸い形状(すなわち、高度の球状化)をもつ、より多いカーバイドを生成するように、焼き戻し温度を十分に高いように選択することができる。ラスと粒子の境界における針型カーバイドは、より容易な亀裂経路を提供することができるので、この球状化は管の衝撃靭性を改善する。
【0087】
より球状の、分散されたカーバイドを生成するのに十分に高い温度でマルテンサイトを焼き戻しすることは、粒子を横断する亀裂および、より良いSSC抵抗を増進することができる。亀裂の生長は多数の水素捕捉部位をもつ鋼においてより遅いことができ、そして球形をもつ、微細な、分散された沈殿物は、より良い結果を与える。
【0088】
結束(banded)微細組織(例えば、フェライト−パーライトまたはフェライト−ベイナイト)と反対に、焼き戻しマルテンサイトを含む微細組織を形成することにより、鋼管のHIC抵抗は更に増加することができる。
【0089】
一つの態様において、焼き戻し温度は、鋼の化学組成と目標の降伏強さに応じて、約680℃〜約760℃間の範囲内に選択することができる。選択された焼き戻し温度の許容範囲は約±15℃の範囲内にあることができる。管は、選択された焼き戻し温度まで、約0.1℃/秒〜約0.3℃/秒の間の速度で加熱することができる。管は、更に、約600秒〜約4800秒間の範囲内の期間中、選択された焼き戻し温度に維持することができる。
【0090】
明らかに、パケットサイズは焼き戻し操作106Cにより有意には影響を受けない。しかしパケットサイズは、オーステナイトが変態する温度の低下とともに低下することができる。約0.43%未満の炭素当量を含む伝統的な低炭素鋼においては、焼き戻しベイナイトは本適用内の焼き戻しマルテンサイトの値(例えば、約6μm以下、例えば約6μm〜約2μmの範囲内)に比較して、より粗いパケットサイズ(例えば、7〜12μm)を示すことができる。
【0091】
マルテンサイトのパケットサイズは平均オーステナイト粒度とはほとんど独立しており、比較的粗い平均オーステナイト粒度(例えば、15μmまたは20μm〜約100μm)の場合でも、微細(例えば、約6μm以下の平均粒度)のままであることができる。
【0092】
仕上げ操作110はそれらに限定はされないが、歪取りまたは曲げ操作を含むことができる。歪取り操作はほぼ焼き戻し温度より下〜約450℃より上の温度で実施することができる。
【0093】
一つの態様において、曲げ操作は熱誘導曲げにより実施することができる。熱誘導曲げは、誘導コイル(例えば、加熱リング)と、曲げられる構造物の外面上に水を噴霧する焼き入れリングにより規定される、ホットテープと呼ばれる狭い領域内に集中する熱変形過程である。真っすぐな(母)管が、管の前方が円形経路を表すように拘束されたアームに固定されながら、その背部から押し込まれる。この拘束が全構造物上に曲げのモーメントを誘発するが、管は実質的にホットテープの対応(correspondence)内で
のみ可塑的に変形される。従って、焼き入れリングは2種の同時の役目を果たす:可塑的変形下で区域を規定し、そして熱ベンドをインラインで焼き入れる。
【0094】
加熱リングと焼き入れリング双方の管径は、母管の外径(OD)より約20mm〜約60mm大きい。管の外面および内面双方の曲げ温度は高温計により連続的に測定することができる。
【0095】
従来の管加工において、ベンドは、曲げおよびインラインの焼き入れ後に、最終的機械特性を達成するために、ベンドを比較的低温に加熱し、保持する工程を含む応力緩和処理を受けることができる。しかし、仕上げ操作110期間中に実施されるインラインの焼き入れと応力緩和操作は、オフラインの焼き入れと焼き戻し操作106B、106Cから得られるものと異なる微細組織を製造することができることが認められる。従って、本開示の一つの態様において、操作106B、106C後に得られる微細組織を実質的に再生するために、操作106B、106Cにおいて前述されたものと同様なオフラインの焼き入れと焼き戻し処理を実施することができる。従って、ベンドは炉内で再加熱され、次に撹拌水を含む焼き入れタンク内に早急に浸漬され、次に炉内で焼き戻しされる。
【0096】
特定の態様において、水中で焼き入れ期間中、管を回転させ、そして水はノズルを使用して管内に流入することができるが、他方、焼き入れ期間中、ベンドは固定されてノズルは使用されない。従って、ベンドに対する焼き入れ効果はわずかに低いかも知れない。更なる態様において、オーステナイト化と焼き戻し期間中の加熱速度はまた、異なる性能/生産性をもつ炉を使用することができるために、わずかに異なる可能性がある。
【0097】
一つの態様において、曲げおよび焼き入れ後の焼き戻しは、約650℃〜約760℃間の範囲内の温度で実施することができる。管は約0.05℃/秒〜約0.3℃/秒間の範囲内の速度で加熱することができる。目標の焼き戻し温度が達成された後に、約600秒〜約3600秒間の範囲内の保持時間を使用することができる。
【0098】
図3は開示態様に従って形成される焼き入れたままの管の微細組織を表す光学顕微鏡写真(2%ナイタール(nital)エッチング)である。管の組成は0.10%のC、0.44%のMn、0.21%のSi、2.0%のCr、0.93%のMo、0.14%のNi、0.05%のV、0.01%のAl、0.006%のN、0.0011%のCa、0.011%のP、0.003%のS、0.14%のCuであった。管は約273mmの外径(OD)と約13.9mmの肉厚を有した。図3に示したように、焼き入れしたままの管は主としてマルテンサイトおよび幾らかの低ベイナイトである微細組織を示す。実質的にフェライト、高ベイナイトまたは粒状ベイナイトは検出されない。オーステナイト化は約600秒の短い浸漬時間の期間中、約980℃で実施されたので、リニアルインターセプトとしてASTM E112に従って測定された焼き入れしたままの管の平均のプライアーオーステナイト粒度(AGS)は約20μmであった。
【0099】
図4Aと4Bは、その浸漬時間が約2400秒である、開示態様に従う焼き入れと焼き戻し後の管の微細組織を示す光学顕微鏡写真である。図4Aは低い倍率(例えば、約200×)の光学顕微鏡写真を示し、図4Bは、プライアーオーステナイト粒子の境界を示すことができる選択的エッチング後の、焼き入れしたままの管の微細組織を表す高い倍率(例えば、約1000×)における光学顕微鏡写真を示す。図4Aと4Bに示されるように、プライアーオーステナイト粒度は大きく、約47μmであり、約90%を超えるマルテンサイトの容量百分率を伴って、焼き入れ性を更に改善することができる。明らかに、焼き入れ後のプライアーオーステナイト粒度が約20μm以下であり、マルテンサイトの容量百分率が約60%を超える時は、高角度の粒子境界により分離される領域の平均サイズ(すなわち、パケットサイズ)はほぼ6μmより小さい。
【0100】
プライアーオーステナイト粒子がより大きくなる時でも、主要なマルテンサイト組織(例えば、約60容量%より大きいマルテンサイト)が形成され、低ベイナイトが比較的低温で(例えば、<540℃)形成される場合は、焼き入れと焼き戻し後の鋼のパケットサイズはほぼ6μm未満に維持されることができる。
【0101】
パケットサイズは、電子逆散乱回折(EBSD)信号を使用し、そして高角度境界を約45°より大きいずれ(misorientation)をもつものと考えて、走査電子顕微鏡(SEM)により採られた画像上の平均リニアルインターセプトとして測定することができる。
【0102】
境界のずれ(misorientation)が示される逆ポール図の一例が図5に示される。約3°未満の境界のずれは細線として示され、他方、約45°を超えるずれを示す境界は太線として示される。
【0103】
微細組織中のマルテンサイトの量が約95%より大きかったために、プライアーオーステナイトの粒度は約47μmの平均値を有したが、リニアルインターセプト法による測定は、約5μmの平均パケットサイズ値を伴って図6に示した分布を与えた。
【0104】
焼き入れおよび焼き戻し管上において、約80nm〜約400nm間の範囲内の平均粒径をもつ、タイプMC、MCおよび/またはM23の粗い沈殿物に加えて、約40nm未満の粒度をもつ、MX、MXタイプ(ここで、Mは、MoまたはCr、あるいは存在する場合はV、Nb、Tiであり、そしてXはCまたはNである)の微細沈殿物もまた、透過電子顕微鏡(TEM)により検出された。
【0105】
非金属包含物の総容量百分率は約0.05%未満、好適には0.04%未満である。約15μmより大きい粒度をもつ酸化物の検査面積の平方mm当たりの包含物数は約0.4/mm未満である。
実質的に修飾された丸い硫化物のみが存在する。
【実施例】
【0106】
以下の実施例において、前述の製鋼法の態様を使用して形成された鋼管の微細組織の特性および機械的特性および衝撃が考察される。とりわけ、前述の組成物および熱処理条件の態様に対して、オーステナイトの粒度、パケットサイズ、マルテンサイトの容量、低ベイナイトの容量、非金属包含物の容量および約15μmより大きい包含物を含む微細組織のパラメーターを調べた。更に、降伏強さおよび引っ張り強さ、硬度、延び率、靭性およびHIC/SSC抵抗を含む対応する機械的特性も考察される。
【実施例1】
【0107】
80ksi等級に対する焼き入れおよび焼き戻し管の機械的および微細組織の特性
表2の鋼の微細組織および機械的特性を研究した。微細組織のパラメーターの測定に関連しては、オーステナイトの粒度(AGS)はASTM E112に従って測定し、パケットサイズは電子逆散乱回折(EBSD)信号を使用する走査電子顕微鏡(SEM)により採られた画像上の平均リニアルインターセプトを使用して測定され、マルテンサイトの容量はASTM E562に従って測定され、低ベイナイトの容量はASTM E562に従って測定され、非金属包含物の容量百分率はASTM E1245に従って光学顕微鏡を使用する自動画像分析により測定され、そして沈殿物の存在は抽出複製法を使用する透過電子顕微鏡(TEM)により研究された。
【0108】
機械的特性に関しては、降伏強さ、引っ張り強さおよび延び率はASTM E8に従っ
て測定され、硬度はASTM E92に従って測定され、衝撃エネルギーはISO148−1に従って、横方向シャルピーV−ノッチ試験片上で評価し、亀裂先端開口位置のずれはBS7488の第1部に従って約−60℃で測定され、HIC評価はNACE溶液Aと96時間の試験期間を使用してNACE基準TM0284−2003、第21215項に従って実施された。SSC評価はNACE TM0177に従って、試験溶液Aと、約90%の特定最小降伏応力において約720時間の試験期間とを使用して実施した。
【0109】
表2に示した化学組成範囲をもつ約90tの熱がアーク炉により製造された。
【0110】
【表2】

【0111】
タッピング(tapping)、脱酸素および合金添加後に、レードル炉とトリミングステーション中で二次的冶金学的操作を実施した。次に、カルシウム処理および真空脱気後に、液体鋼を約330mm直径の丸い棒として垂直鋳造機上で連続的に鋳造した。
【0112】
鋳造したままの棒を約1300℃の温度まで回転ヒース炉により再加熱し、熱穿孔し、中空物を保持マンドレルの複数スタンド管圧延機により熱間圧延し、図1において前述された方法に従って、熱サイジングにかけた。製造された継ぎ目なし管は約273.2mmの外径と約13.9mmの肉厚を有した。生成された圧延されたままの継ぎ目なし管上で測定された化学組成は表3に報告される。
【0113】
【表3】

【0114】
その後、圧延されたままの管を移動ビーム炉により約2200秒間、約920℃の温度に加熱することによりオーステナイト化し、高圧水ノズルにより缶石除去し、そして撹拌水を含むタンクと内部の水ノズルを使用して、外部そして内部から水で焼き入れした。オーステナイト化加熱速度は約0.25℃/秒であった。焼き入れ中に使用された冷却速度は約65℃/秒を超えた。焼き入れされた管は約5400秒の総合時間および約1800秒の浸漬時間にわたり、約710℃の温度における焼き戻し処理のために、他の移動ビーム炉に早急に移された。焼き戻し加熱速度は約0.2℃/秒であった。焼き戻し後に使用された冷却は、約0.5℃/秒未満の速度で静止空気中で実施された。すべての焼き入れおよび焼き戻し(Q&T)管は熱により歪みとりを実施された。
【0115】
実施例1の管の微細組織と非金属包含物の特徴を表す主要なパラメーターは表4に示される。
【0116】
【表4】

【0117】
実施例1の管の機械的特性および腐食特性は表5、6および7に示される。表5は焼き入れおよび焼き戻し管の引っ張り、延び率、硬度および靭性の特性を表す。表6は2種のシミュレートされた溶接後の熱処理、PWHT1とPWHT2、後の降伏強さを表す。溶接後熱処理1(PWHT1)は、加熱および、約5時間の浸漬時間を伴って約650℃の温度までの、約80℃/時間の速度の冷却、よりなった。溶接後の加熱処理2(PWHT2)は、加熱および、約10時間の浸漬時間を伴って約650℃の温度までの約80℃/時間の速度での冷却、よりなった。表7は焼き入れおよび焼き戻し管の、測定されたHICおよびSSC抵抗を示す。
【0118】
【表5】

【0119】
【表6】

【0120】
【表7】

【0121】
前記の試験結果(表5、表6および表7)から、焼き入れおよび焼き戻し管は80ksi等級を形成するのに適し、以下の特徴を示すことが認められた:、
・ 降伏強さ,YS:最小約555MPa(80ksi)および最大約705MPa(102ksi)、
・ 極限引っ張り強さ,UTS:最小約625MPa(90ksi)および最大約825MPa(120ksi)、
・ 硬度:約250 HV10未満、
・ 伸び率、約20%以上、
・ YS/UTS 比率、約0.93以下、
・ 横方向シャルピーV−ノッチ試験片に対し約−70℃において約250J/約200J(平均/個別)の最低衝撃エネルギー、
・ 基準ISO148−1に従ってテストされた横方向シャルピーV−ノッチ試験片において測定された、50%FATT(約50%剪断面積をもつ破損出現の変態温度)および80%FATT(約80%剪断面積をもつ破損出現に対する変態温度)に関して優れた靭性、
・ 約−60℃において優れた縦の亀裂先端開口部のずれ(CTOD)(約0.8mmを超える)、
・ シミュレートされた溶接後の熱処理後[加熱および、約80℃/時間の冷却速度、約650℃の浸漬温度;浸漬時間:5時間(PWHT1)および10時間(PWHT2)]、に最小約555MPaの降伏強さ,YS、
・ HIC(NACE 溶液Aおよび約96時間の試験期間を使用して、NACE 基準
TM0284−2003 第21215項に従ってテスト)並びにSSC(試験溶液Aおよび、約90%の特定の最小降伏強さ、SMYSで応力をかけた約1バールのHSを使用して、NACE TM0177に従ってテスト)に対して良好な抵抗。
【実施例2】
【0122】
90ksi等級に対する焼き入れおよび焼き戻し管の機械的および微細組織の特性
表8の鋼の微細組織および機械的特性は実施例1に関して前述されたように研究された。表8に示した化学組成を使用して約90tの熱処理物(heat)をアーク炉により製造した。
【0123】
【表8】

【0124】
タッピング、脱酸素および合金添加後に、レードル炉とトリミングステーション内で二次的冶金学的操作を実施した。次に、カルシウム処理および真空脱気後に、液状鋼を約330mm直径の丸い棒として垂直鋳造機上で連続的に鋳造した。
【0125】
鋳造されたままの棒を回転炉により約1300℃の温度まで再加熱し、熱穿孔し、中空物を保持マンドレルの複数スタンドの管圧延機により熱間圧延し、図1において前述された方法に従って熱サイジングにかけた。製造された継ぎ目なし管は約250.8mmの外径および15.2mmの肉厚を有した。製造された圧延されたままの継ぎ目なし管上で測定された化学組成は表9に報告されている。
【0126】
【表9】

【0127】
次に、圧延されたままの管を移動ビーム炉により、約2200秒間、約900℃の温度に加熱することによりオーステナイト化し、高圧水ノズルにより缶石除去し、そして撹拌水を含むタンクと内部の水ノズルを使用して外部そして内部から水で焼き入れした。オーステナイト化加熱速度は約0.2℃/秒であった。焼き入れ期間中に使用された冷却速度は約60℃/秒を超えた。焼き入れされた管は約5400秒の総時間と約1800秒の浸漬時間の期間、約680℃の温度における焼き戻し処理のために他の移動ビーム炉に早急に移された。焼き戻し加熱速度は約0.2℃/秒であった。焼き戻し後に使用された冷却は約0.5℃/秒未満の速度で、静止空気中で実施された。すべての焼き入れおよび焼き戻し(Q&T)管が熱による歪取りを実施された。
【0128】
実施例2の管の微細組織および非金属包含物の特徴を示す主要パラメーターは表10に示される。
【0129】
【表10】

【0130】
実施例2の管の機械的特性は表11に示される。表11は焼き入れおよび焼き戻し管の張力、伸び率、硬度および靭性の特性を表す。
【0131】
【表11】

【0132】
前記の試験結果(表11)から、焼き入れおよび焼き戻し管が90ksi等級を形成するのに適し、以下の特徴をもつことが認められた:
・ 降伏強さ,YS:最小約625MPa(90ksi)および最大約775MPa(112ksi)、
・ 極限引っ張り強さ,UTS:最小約695MPa(100ksi)および最高約915MPa(133ksi)、
・ 硬度:約270 HV10未満、
・ 伸び率、約18%以上、
・ YS/UTS 比率、約0.95以下、
・ 横方向シャルピーV−ノッチ試験片に対し約−70℃において、約150J/約100J(平均/個別)の最小衝撃エネルギー、
・ 基準ISO148−1に従って試験された横方向シャルピーV−ノッチ試験片において測定された50%FATT(約50%の剪断面積をもつ破損出現の変態温度)および80%FATT(約80%の剪断面積をもつ破損出現に対する変態温度)に関する優れた靭
性、
・ ・ 亀裂の長さの比率,CLR=0
・ 亀裂の厚さの比率,CTR%=0
・ 亀裂の感受性の比率,CSR%=0
を伴う、HIC(NACE 溶液Aおよび約96時間のテスト期間を使用して、NACE
基準 TM0284−2003 第21215項に従ってテスト)に対して良好な抵抗。
【0133】
良好なSSC抵抗も試験片中に認められた。3個の試験片において約720時間後に何の破損も認めなかった。試験は、約1バールのHS圧力下で特定の最小降伏強さ(SMYS)の約72%以上の応力値を伴い、試験溶液Aを使用してNACE TM0177方法Aに従って実施した。
【実施例3】
【0134】
焼き入れおよび焼き戻し管の比較例
本比較例において、0.4%の低炭素当量を含む典型的なライン管鋼でできた、約324.7mmの外径と約15.7mmの肉厚をもつ焼き入れおよび焼き戻し管を使用して、以前に説明された方法の態様を使用して、熱誘導ベンドを製造し、オフラインで焼き入れ、そして焼き戻しをした。
【0135】
【表12】

【0136】
生成された継ぎ目なし管は、移動ビーム炉により、前述のように約2200秒期間、約920℃でオーステナイト化された。管を更に高圧水ノズルにより缶石除去し、そして撹拌水を含むタンクと内部水ノズルを使用して外部そして内部から水で焼き入れした。焼き入れした管を約660〜670℃における焼き戻し処理のために他の移動ビーム炉に早急に移した。すべての焼き入れおよび焼き戻し管を熱により歪取り処理を実施した。
【0137】
Q&Tベンドの微細組織と非金属包含物の特徴を示す主要パラメーターが表13に示される。
【0138】
【表13】

【0139】
これらの焼き入れおよび焼き戻し管は、それらが微細オーステナイト粒子(約12μm)を有する鋼を使用して製造されているので、マルテンサイトを形成するのに十分な焼き
入れ性を形成しないことが認められた。従って、微細組織は、幾らかの低ベイナイトと、更に幾らかの量の粗いフェライト(図7と表13を参照されたい)を含む主要な粒状ベイナイト微細組織を示す。更に、パケットサイズは実施例1と2のものより大きい。
【0140】
更に、これらの焼き入れおよび焼き戻し管は約555MPa(等級80ksi)の最小降伏強さを達成することができるが、それらの異なる微細組織により、実施例1と2に比較して、より高い変態温度を伴い、より低い靭性を有することが認められた(表14)。
【0141】
【表14】

【実施例4】
【0142】
焼き入れおよび焼き戻し管におけるベンドの微細組織および機械的特性
実施例1の焼き入れおよび焼き戻し管を使用して、管の外径の約5倍の半径をもつ(5D)ベンドを製造した。
【0143】
管は約850℃±25℃の温度への加熱およびインラインの水焼き入れによる熱誘導曲げを受けた。次にベンドはカーファーネス中で、約15分間の保持のために約920℃の温度に再加熱され、水槽に移され、撹拌水中に浸漬された。ベンドの最低温度は水槽中に浸漬直前に約860℃より高く、水槽の水温は約40℃未満に維持された。
【0144】
焼き入れ操作後、焼き入れされたままのベンドを、約20分の保持時間を使用して約700〜約710℃間の範囲内の温度に設定された炉内で焼き戻しした。
【0145】
【表15】

【0146】
【表16】

【0147】
前記の試験結果(表15、表16)から、オフラインで焼き入れおよび焼き戻しされたベンドは80ksi等級を形成するのに適し、以下の特徴を示すことが認められた:
・ 降伏強さ,YS:最小約555MPa(80ksi)および最大約705MPa(102ksi)、
・ 極限引っ張り強さ,UTS:最小約625MPa(90ksi)および最大約825MPa(120ksi)、
・ 最大硬度:約25 0HV10未満、
・ 伸び率、約18%以上、
・ YS/UTS 比率、約0.93以下、
・ 横方向シャルピーV−ノッチ試験片に対して、約−70℃において250J/200J(平均/個別)の最小衝撃エネルギー、
・ 横方向シャルピーV−ノッチ試験片において測定された、50%FATT(約50%剪断面積をもつ破損出現の変態温度)および80%FATT(約80%剪断面積をもつ破
損出現に対する変態温度)に関する優れた靭性、
・ 約−45℃における優れた縦方向の亀裂先端開口部のずれ(CTOD)(約0.8mmを超える)、
・ HIC(NACE 溶液Aおよび約96時間のテスト期間を使用する、NACE 基準 TM0284−2003 第21215項に従うテスト)並びにSSC(試験溶液Aおよび、約90%の特定の最小降伏強さ,SMYSで応力をかけた約1バールのHSを使用するNACE TM0177に従うテスト)に対して良好な抵抗。
【実施例5】
【0148】
70ksi等級に対する焼き入れおよび焼き戻し管の機械的特性
表17の鋼の機械的特性を実施例1に関して前述されたように研究した。表17に示した化学組成範囲をもつ約90tの熱処理物がアーク炉により製造された。
【0149】
【表17】

【0150】
タッピング(tapping)、脱酸素および合金添加後に、レードル炉およびトリミングステーション内で二次的冶金学的操作を実施した。カルシウム処理および真空脱気後に、液体鋼を垂直鋳造機上で、約330mm直径の丸い棒中で連続的に鋳造した。
【0151】
鋳造したままの棒を回転ヒース炉により約1300℃の温度に再加熱し、熱穿孔し、そして中空物を、保持されたマンドレルの複数スタンドの管圧延機により熱間圧延し、そして図1において前述された方法に従って熱サイジングにかけた。生成された継ぎ目なし管は約273.1mmの外径および約33mmの肉厚を有した。生成された圧延されたままの継ぎ目なし管上で測定された化学組成は表18に報告される。
【0152】
【表18】

【0153】
次に圧延されたままの管を移動ビーム炉により約5400秒間、約920℃の温度に加熱することによりオーステナイト化し、高圧水ノズルにより缶石除去し、そして、撹拌水を含むタンクと内部の水ノズルを使用して、外部そして内部から水で焼き入れした。オーステナイト化する加熱速度は約0.16℃/秒であった。焼き入れ期間中に使用された冷却速度は約25℃/秒であった。焼き入れ管は約8600秒の総合時間および4200秒の浸漬時間中、約750℃の温度における焼き戻し処理のために他の移動ビーム炉に早急に移された。焼き戻し加熱速度は約0.15℃/秒であった。焼き戻し期間に使用された冷却速度は約0.1℃/秒未満であった。すべての焼き入れおよび焼き戻し(Q&T)管は熱により歪取りされた。
【0154】
実施例5の管の機械的特性および腐食抵抗はそれぞれ表19と表20に示される。表20は焼き入れおよび焼き戻し管の張力、伸び率、硬度および靭性の特性を示す。
【0155】
【表19】

【0156】
【表20】

【0157】
前記の試験結果(表19、表20)から、焼き入れおよび焼き戻し管は70ksi等級を形成するのに適し、以下の特徴を示すことが認められた:
・ 降伏強さ,YS:最小約70ksi(485MPa)および最大約92ksi(63577MPa(80ksi)、
・ 極限引っ張り強さ,UTS:最小約83ksi(570MPa)および最大約110ksi(760MPa)、
・ 最大硬度:約248 HV10未満、
・ 伸び率、約18%以上、
・ YS/UTS比率、約0.93以下、
・ 横方向シャルピーV−ノッチ試験片に対し約−70℃における約200J/約150J(平均/個別)を超える最小衝撃エネルギー、
・ 横方向シャルピーV−ノッチ試験片において測定された50%FATT(約50%剪断面積をもつ破損出現の変態温度)および80%FATT(約80%剪断面積をもつ破損出現に対する変態温度)に関して優れた靭性、
・ HIC(NACE 溶液Aおよび約96時間の試験期間を使用する、NACE 基準
TM0284−2003 第21215項に従うテスト)並びにSSC(試験溶液Aお
よび、約90%の特定の最小降伏強さ,SMYSで応力をかけた約1バールのHSを使用する、NACE TM0177に従うテスト)に対して良好な抵抗。
【0158】
以上の説明は、本教示の基礎的な新規の特徴物を示し、説明しそして指摘したが、示された装置の詳細の形状の様々な省略、置き換えおよび変更並びにそれらの使用は、本教示の範囲から逸脱せずに、当業者により実施されることができることは理解されると考えられる。従って、本教示の範囲は、以上の考察に限定されるべきではなく、付記の請求の範囲により規定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.05重量%〜0.16重量%の炭素;
0.20重量%〜0.90重量%のマンガン;
0.10重量%〜0.50重量%のケイ素;
1.20重量%〜2.60重量%のクロム;
0.05重量%〜0.50重量%のニッケル;
0.80重量%〜1.20重量%のモリブデン;
0.005重量%〜0.12重量%のバナジウム;
0.008重量%〜0.04重量%のアルミニウム;
0.0030重量%〜0.0120重量%の窒素;および
0.0010重量%〜0.005重量%のカルシウム;
を含んでなる鋼組成物:を含んでなる継ぎ目なし鋼管であって、
鋼管の肉厚が8mm以上で、35mm以下であり、そして
鋼管が550MPa(80ksi)を超える降伏強さをもつように加工され、そして鋼管の微細組織が60%以上の容量百分率のマルテンサイトおよび40%以下の容量百分率の低ベイナイトを含んでなる、継ぎ目なし鋼管。
【請求項2】
鋼組成物が更に、
0〜0.80重量%のタングステン;
0〜0.030重量%のニオビウム;
0〜0.020重量%のチタン;
0〜0.30重量%の銅;
0〜0.010重量%の硫黄;
0〜0.020重量%のリン;
0〜0.0020重量%のホウ素;
0〜0.020重量%のヒ素;
0〜0.0050重量%のアンチモン;
0〜0.020重量%の錫;
0〜0.030重量%のジルコニウム;
0〜0.030重量%のタンタル;
0〜0.0050重量%のビスマス;
0〜0.0030重量%の酸素;
0〜0.00030重量%の水素;および
鉄と不純物を含んでなる組成物の残り:
を含んでなる、請求項1の鋼管。
【請求項3】
鋼組成物が
0.07重量%〜0.14重量%の炭素;
0.30重量%〜0.60重量%のマンガン;
0.10重量%〜0.40重量%のケイ素;
1.80重量%〜2.50重量%のクロム;
0.05重量%〜0.20重量%のニッケル;
0.90重量%〜1.10重量%のモリブデン;
0〜0.60重量%のタングステン;
0〜0.015重量%のニオビウム;
0〜0.010重量%のチタン;
0.050重量%〜0.10重量%のバナジウム;
0.010重量%〜0.030重量%のアルミニウム;
0.0030重量%〜0.0100重量%の窒素;
0〜0.20重量%の銅;
0〜0.005重量%の硫黄;
0〜0.012重量%のリン;
0.0010重量%〜0.003重量%のカルシウム;
0.0005重量%〜0.0012重量%のホウ素;
0〜0.015重量%のヒ素;
0〜0.0050重量%のアンチモン;
0〜0.015重量%の錫;
0〜0.015重量%のジルコニウム;
0〜0.015重量%のタンタル;
0〜0.0050重量%のビスマス;
0〜0.0020重量%の酸素;
0〜0.00025重量%の水素;および
鉄と不純物を含んでなる組成物の残り:
を含んでなる、請求項2の鋼管。
【請求項4】
鋼組成物が
0.08重量%〜0.12重量%の炭素;
0.30重量%〜0.50重量%のマンガン;
0.10重量%〜0.25重量%のケイ素;
2.10重量%〜2.40重量%のクロム;
0.05重量%〜0.20重量%のニッケル;
0.95重量%〜1.10重量%のモリブデン;
0〜0.30重量%のタングステン;
0〜0.010重量%のニオビウム;
0〜0.010重量%のチタン;
0.050重量%〜0.07重量%のバナジウム;
0.015重量%〜0.025重量%のアルミニウム;
0.0030重量%〜0.008重量%の窒素;
0〜0.15重量%の銅;
0〜0.003重量%の硫黄;
0〜0.010重量%のリン;
0.0015重量%〜0.003重量%のカルシウム;
0.0008重量%〜0.0014重量%のホウ素;
0〜0.015重量%のヒ素;
0〜0.0050重量%のアンチモン;
0〜0.015重量%の錫;
0〜0.010重量%のジルコニウム;
0〜0.010重量%のタンタル;
0〜0.0050重量%のビスマス;
0〜0.0015重量%の酸素;
0〜0.00020重量%の水素;および
鉄と不純物を含んでなる組成物の残り:を含んでなる、請求項2の鋼管。
【請求項5】
降伏強さが625MPa(90ksi)を超える、前記請求項のいずれか1項の鋼管。
【請求項6】
鋼管の微細組織がマルテンサイトと低ベイナイトよりなる、前記請求項のいずれか1項の鋼管。
【請求項7】
鋼管の微細組織がフェライト、高ベイナイトおよび粒状ベイナイトの1種または複数を
含まない、前記請求項のいずれか1項の鋼管。
【請求項8】
マルテンサイトの容量百分率が95%以上であり、低ベイナイトの容量百分率が5%以下である、前記請求項のいずれか1項の鋼管。
【請求項9】
マルテンサイトの容量百分率が100%である、請求項8の鋼管。
【請求項10】
パケットサイズが6μm以下である、前記請求項のいずれか1項の鋼管。
【請求項11】
40μm以下の平均粒径を有する、組成MXまたはMXをもつ1種または複数の粒状物が鋼管内に存在し、式中MがV、Mo、NbおよびCrから選択され、そしてXがCとNから選択される、前記請求項のいずれか1項の鋼管。
【請求項12】
延性から脆性への変態温度が−70℃より低い、請求項1の鋼管。
【請求項13】
シャルピーV−ノッチエネルギーが250J/cm以上である、請求項1の鋼管。
【請求項14】
鋼管が、降伏応力の90%の応力にさらされ、NACE TM0177に従って試験される時に、720時間後に少なくとも一部は応力腐食亀裂による破損を示さない、請求項1の鋼管。
【請求項15】
炭素鋼組成物を提供し、
該鋼組成物を、8mm以上で、35mm以下の肉厚をもつ管に形成し、ここで形成後の管内の平均オーステナイト粒度が15μmを超える、
形成された鋼管を第1の加熱操作で、900℃〜1060℃間の範囲内の温度に加熱し、
形成された鋼管を20℃/秒以上の速度で焼き入れし、ここで焼き入れされた鋼管の微細組織は焼き入れ後に60容量%以上のマルテンサイトと40容量%以下の低ベイナイトである、
焼き入れ鋼管を680℃〜760℃の間の範囲内の温度で焼き戻しする、ここで、焼き戻し後の鋼管は、80ksiを超える降伏強さおよび−70℃で100J/cm以上のシャルピーV−ノッチエネルギーを有する、工程:
を含んでなる、鋼管を製造する方法。
【請求項16】
鋼組成物が
0.05重量%〜0.16重量%の炭素;
0.20重量%〜0.90重量%のマンガン;
0.10重量%〜0.50重量%のケイ素;
1.20重量%〜2.60重量%のクロム;
0.05重量%〜0.50重量%のニッケル;
0.80重量%〜1.20重量%のモリブデン;
0.005重量%〜0.12重量%のバナジウム;
0.008重量%〜0.04重量%のアルミニウム;
0.0030重量%〜0.0120重量%の窒素;および
0.0010重量%〜0.005重量%のカルシウム:
を含んでなる、請求項15の方法。
【請求項17】
鋼組成物が更に、
0〜0.80重量%のタングステン;
0〜0.030重量%のニオビウム;
0〜0.020重量%のチタン;
0〜0.30重量%の銅;
0〜0.010重量%の硫黄;
0〜0.020重量%のリン;
0〜0.0020重量%のホウ素;
0〜0.020重量%のヒ素;
0〜0.0050重量%のアンチモン;
0〜0.020重量%の錫;
0〜0.030重量%のジルコニウム;
0〜0.030重量%のタンタル;
0〜0.0050重量%のビスマス;
0〜0.0030重量%の酸素;
0〜0.00030重量%の水素;および
鉄と不純物を含んでなる組成物の残り:を含んでなる、請求項16の方法。
【請求項18】
鋼組成物が
0.07重量%〜0.14重量%の炭素;
0.30重量%〜0.60重量%のマンガン;
0.10重量%〜0.40重量%のケイ素;
1.80重量%〜2.50重量%のクロム;
0.05重量%〜0.20重量%のニッケル;
0.90重量%〜1.10重量%のモリブデン;
0〜0.60重量%のタングステン;
0〜0.015重量%のニオビウム;
0〜0.010重量%のチタン;
0〜0.20重量%の銅;
0〜0.005重量%の硫黄;
0〜0.012重量%のリン;
0.050重量%〜0.10重量%のバナジウム;
0.010重量%〜0.030重量%のアルミニウム;
0.0030重量%〜0.0100重量%の窒素;
0.0010重量%〜0.003重量%のカルシウム;
0.0005重量%〜0.0012重量%のホウ素;
0〜0.015重量%のヒ素;
0〜0.0050重量%のアンチモン;
0〜0.015重量%の錫;
0〜0.015重量%のジルコニウム;
0〜0.015重量%のタンタル;
0〜0.0050重量%のビスマス;
0〜0.0020重量%の酸素;
0〜0.00025重量%の水素;および
鉄と不純物を含んでなる組成物の残り:
を含んでなる、請求項17の方法。
【請求項19】
鋼組成物が
0.08重量%〜0.12重量%の炭素;
0.30重量%〜0.50重量%のマンガン;
0.10重量%〜0.25重量%のケイ素;
2.10重量%〜2.40重量%のクロム;
0.05重量%〜0.20重量%のニッケル;
0.95重量%〜1.10重量%のモリブデン;
0〜0.30重量%のタングステン;
0〜0.010重量%のニオビウム;
0〜0.010重量%のチタン;
0.050重量%〜0.07重量%のバナジウム;
0.015重量%〜0.025重量%のアルミニウム;
0.0030重量%〜0.008重量%の窒素;
0〜0.15重量%の銅;
0〜0.003重量%の硫黄;
0〜0.010重量%のリン;
0.0015重量%〜0.003重量%のカルシウム;
0.0008重量%〜0.0014重量%のホウ素;
0〜0.015重量%のヒ素;
0〜0.0050重量%のアンチモン;
0〜0.015重量%の錫;
0〜0.010重量%のジルコニウム;および
0〜0.010重量%のタンタル;
0〜0.0050重量%のビスマス;
0〜0.0015重量%の酸素;
0〜0.00020重量%の水素;および
鉄と不純物を含んでなる組成物の残り:
を含んでなる、請求項17の方法。
【請求項20】
鋼管の降伏強さが焼き戻し後に625MPa(90ksi)より大きい、請求項15〜19のいずれかの方法。
【請求項21】
鋼管の微細組織がマルテンサイトと低ベイナイトよりなる、請求項15〜19のいずれかの方法。
【請求項22】
焼き入れ速度が40℃/秒以上であり、そして焼き入れ後の鋼管の微細組織が100容量%のマルテンサイトである、請求項1〜19のいずれかの方法。
【請求項23】
焼き入れ後の鋼管の微細組織がフェライト、高ベイナイトおよび粒状ベイナイトの1種または複数を含まない、請求項15〜22のいずれかの方法。
【請求項24】
焼き入れ後のマルテンサイトの容量百分率が90%以上であり、低ベイナイトの容量百分率が10%以下である、請求項15〜19のいずれかの方法。
【請求項25】
焼き戻し後の鋼管のパケットサイズが6μm以下である、請求項15〜24のいずれかの方法。
【請求項26】
焼き戻し後に、40μm以下の平均粒径をもつ、組成MXまたはMX、ここでMはV、Mo、NbおよびCrから選択され、そしてXはCとNから選択される、を有する1種または複数の粒状物が鋼管内に存在する、請求項15〜25のいずれかの方法。
【請求項27】
焼き戻し後の鋼管の延性から脆性への変態温度が−70℃未満である、請求項15〜26のいずれかの方法。
【請求項28】
鋼管内のマルテンサイトの容量百分率が90%以上であり、そして低ベイナイトの容量百分率が10%以下である、請求項18〜27のいずれかの方法。
【請求項29】
焼き戻し後の鋼管のパケットサイズが6μm以下である、請求項18〜28のいずれかの方法。
【請求項30】
40nm以下の平均粒径をもつ、組成MXまたはMX、ここでMはV、Mo、NbおよびCrから選択され、そしてXはCとNから選択される、を有する1種または複数の粒状物が焼き戻し後の鋼管内に存在する、請求項18〜29のいずれかの方法。
【請求項31】
0.10重量%〜0.13重量%の炭素;
0.40重量%〜0.55重量%のマンガン;
0.20重量%〜0.35重量%のケイ素;
1.9重量%〜2.3重量%のクロム;
0.9重量%〜1.10重量%のモリブデン;
0.001重量%〜0.005重量%のカルシウム;
0.050重量%〜0.07重量%のバナジウム;
0.010重量%〜0.020重量%のアルミニウム;を含んでなり、
鋼管の肉厚が8mm以上、35mm以下であり、そして
鋼管が、熱間圧延、その後の室温への冷却、900℃以上の温度への加熱、40℃/秒以上の冷却速度での焼き入れ、および680℃〜760℃間の温度における焼き戻し、により加工されて、20〜80μmのプライアーオーステナイト粒度、3μm〜6μmのパケットサイズ、および90容量%以上のマルテンサイトと10容量%以下の低ベイナイトを有する微細組織を形成し、そして鋼管が550MPa(80ksi)と705MPa(102ksi)間の降伏強さ(YS)、625MPa(90ksi)と825MPa(120ksi)間の極限引っ張り強さ(UTS)、20%以上の延び率および0.93以下のYS/UTS比率を有する、
550MPa(80ksi)等級の継ぎ目なし鋼管。
【請求項32】
0.10重量%〜0.13重量%の炭素;
0.40重量%〜0.55重量%のマンガン;
0.20重量%〜0.35重量%のケイ素;
1.90重量%〜2.30重量%のクロム;
0.9重量%〜1.10重量%のモリブデン;
0.001重量%〜0.005重量%のカルシウム;
0.050重量%〜0.07重量%のバナジウムおよび
0.010重量%〜0.020重量%のアルミニウム;
を含んでなり、
鋼管の肉厚が8mm以上、35mm以下であり、そして
鋼管が、熱間圧延、その後の室温への冷却、900℃以上の温度への加熱、20℃/秒以上の冷却速度における焼き入れ、および680℃〜760℃間の温度における焼き戻し、により加工されて、20〜60μmのプライアーオーステナイト粒度、2μm〜6μmのパケットサイズおよび95容量%以上のマルテンサイトと5容量%以下の低ベイナイトを有する微細組織を形成し、そして鋼管が625MPa(90ksi)と775MPa(112ksi)間の降伏強さ(YS)、695MPa(100ksi)と915MPa(133ksi)間の極限引っ張り強さ(UTS)、18%以上の延び率および0.95以下のYS/UTS比率を有する、
625MPa(90ksi)等級の継ぎ目なし鋼管。
【請求項33】
0.10重量%〜0.13重量%の炭素;
0.40重量%〜0.55重量%のマンガン;
0.20重量%〜0.35重量%のケイ素;
2.00重量%〜2.450重量%のクロム;
0.9重量%〜1.10重量%のモリブデン;および
0.001重量%〜0.005重量%のカルシウム;
を含んでなる鋼組成物を含んでなり、
鋼管の肉厚が8mm 以上、35mm以下であり、そして
鋼管が、熱間圧延、その後の室温への冷却、900℃以上の温度への加熱、20℃/秒以上の冷却速度における焼き入れ、および680℃〜760℃間の温度における焼き戻しにより加工されて、20〜100μm のオーステナイト粒度、4〜6μmのパケットサイズおよび60容量%以上のマルテンサイトと40容量%以下の低ベイナイトを有する微細組織を形成し、そして鋼管が485MPa(70ksi)と635MPa(92ksi)間の降伏強さ(YS)、570MPa(83ksi)と760MPa(110ksi)間の極限引っ張り強さ(UTS)、18%以上の延び率および0.93以下のYS/UTS比率を有する、
485MPa(70ksi)等級の継ぎ目なし鋼管。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−197507(P2012−197507A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−23271(P2012−23271)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【出願人】(512030348)ダルミネ・ソチエタ・ペル・アチオニ (2)
【Fターム(参考)】