説明

低温再生デシカント空調機

【課題】潜熱負荷と顕熱負荷を別途に制御することが可能であり、室内の温湿度制御の精度が高くてエネルギーの無駄がない低温再生デシカント空調機を提供する。
【解決手段】外気経路6の外気と還気経路7の還気との間で顕熱および潜熱を交換する熱全熱交換器200と、全熱交換器バイパス経路201と、全熱交換器を通る外気経路と全熱交換器バイパス経路とを切替える第1の経路切替装置としての第1の全熱交換器通気制御用ダンパ202、第2の全熱交換器通気制御用ダンパ203、と、外気経路の外気から湿気を収着して還気経路側で還気により湿気を脱着させて再生するデシカントロータ102と、デシカントロータバイパス経路150と、デシカントロータを通る外気経路とデシカントロータバイパス経路とを切替える第2の経路切替装置をなす第1のデシカントロータ通気制御用ダンパ151、第2のデシカントロータ通気制御用ダンパ152を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温再生デシカント空調機に関し、デシカントロータの効率的な使用に係るものである。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、特許文献1に記載するものがある。この装置は、蒸発器と再生式湿気交換器を備え、被管理空間に供給される空気の温度と湿度を制御する。この装置において、供給空気は、蒸発器を通すことによって冷却および除湿され、回転する再生式湿気交換器を通すことによってさらに除湿される。
【0003】
また、特許文献2に記載する装置は、空気供給路にエンタルピー熱交換器として作用する乾燥剤ホイール、その下流側に冷却器として作用する熱交換器と、除湿器として作用する乾燥剤ホイールを備え、供給空気の温度と湿度を制御する。
【0004】
この装置において、供給空気は、一つ目の乾燥剤ホイールでエンタルピーと湿度の両方が下げられ、さらに熱交換器で冷却、除湿されて後に、二つ目の乾燥剤ホイールでさらに除湿される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−228234号公報
【特許文献2】特表平2−503948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1の構成において、冷房モードには、被管理空間に供給する空気の温度と湿度を冷却器によって制御するので、空気の温度と湿度を個別に制御することはできず、暖房モードには、再生式湿気交換器によって空気の温度と湿度を制御するので、加湿を十分に行うことができず、被管理空間に供給する空気の湿度が不足する。このため、快適な温度と快適な湿度を同時的に実現することが困難である。
【0007】
また、特許文献2の構成においては2つの乾燥剤ホイールが動作しており、外気の温度や湿度の空気条件によっては、乾燥剤ホイール(除湿器)の熱容量によるエネルギーの無駄が発生する。
【0008】
本発明は上記した課題を解決するものであり、潜熱負荷と顕熱負荷を別途に制御することが可能であり、室内の温湿度制御の精度が高くてエネルギーの無駄がない低温再生デシカント空調機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の低温再生デシカント空調機は、外気を室内へ給気する外気経路と、室内からの還気を排気する還気経路と、外気経路の外気の潜熱を制御する潜熱制御部と、外気経路の外気の顕熱を制御する顕熱制御部と、外気と還気との間で顕熱および潜熱を交換する全熱交換器部を備え、全熱交換器部は、潜熱制御部へ通気する外気経路の外気と潜熱制御部を通過した還気経路の還気との間で顕熱および潜熱を交換する全熱交換器と、全熱交換器の上流側および下流側で外気経路に連通して全熱交換器を迂回する全熱交換器バイパス経路と、全熱交換器を通る外気経路と全熱交換器バイパス経路とを切替える第1の経路切替装置を有し、潜熱制御部は、外気経路の外気から湿気を収着して還気経路側で還気により湿気を脱着させて再生するデシカントロータと、デシカントロータの上流側および下流側で外気経路に連通してデシカントロータを迂回するデシカントロータバイパス経路と、デシカントロータを通る外気経路とデシカントロータバイパス経路とを切替える第2の経路切替装置を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の低温再生デシカント空調機において、第1の経路切替装置および第2の経路切替装置の制御指標として外気のエンタルピーを測定するエンタルピー測定手段を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の低温再生デシカント空調機において、潜熱制御部の下流において還気経路と外気経路を連通する還気の戻り経路を有することを特徴とする。
本発明の低温再生デシカント空調機の運転方法は、室内へ給気する外気の潜熱を潜熱制御部で制御し、潜熱制御部を通過した外気の顕熱を顕熱制御部で制御し、顕熱制御部を通過した外気を室内へ給気し、室内からの還気を潜熱制御部を通して排気し、全熱交換器によって潜熱制御部へ通気する外気と潜熱制御部を通過した還気との間で顕熱および潜熱を交換し、エンタルピー測定手段により外気のエンタルピーを測定し、外気のエンタルピーを制御指標として第1の経路切替装置を操作することで、全熱交換器の上流側の外気経路と下流側の外気経路とに連通して全熱交換器を迂回する全熱交換器バイパス経路と全熱交換器を通る外気経路とを切替えるとともに、外気のエンタルピーを制御指標として第2の経路切替装置を操作することで、デシカントロータの上流側の外気経路と下流側の外気経路とに連通してデシカントロータを迂回するデシカントロータバイパス経路と、デシカントロータを通る外気経路とを切替えることを特徴とする。
【0012】
本発明の低温再生デシカント空調機の運転方法において、冷房モードに外気のエンタルピーが設定したエンタルピーより高い場合は、第1の経路切替装置を操作して全熱交換器を通る外気経路を選択するとともに、第2の経路切替装置を操作してデシカントロータバイパス経路を選択し、冷房モードに外気のエンタルピーが設定したエンタルピーより低い場合は、第1の経路切替装置を操作して全熱交換器バイパス経路を選択するとともに、第2の経路切替装置を操作してデシカントロータを通る外気経路を選択し、暖房モードには第1の経路切替装置を操作して全熱交換器を通る外気経路を選択するとともに、第2の経路切替装置を操作してデシカントロータを通る外気経路を選択することを特徴とする。
【0013】
本発明の低温再生デシカント空調機の運転方法において、冷房モードに外気のエンタルピーが還気のエンタルピーより高い場合は、第1の経路切替装置を操作して全熱交換器を通る外気経路を選択するとともに、第2の経路切替装置を操作してデシカントロータバイパス経路を選択し、冷房モードに外気のエンタルピーが還気のエンタルピーより低い場合は、第1の経路切替装置を操作して全熱交換器バイパス経路を選択するとともに、第2の経路切替装置を操作してデシカントロータを通る外気経路を選択し、暖房モードには第1の経路切替装置を操作して全熱交換器を通る外気経路を選択するとともに、第2の経路切替装置を操作してデシカントロータを通る外気経路を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、室内に取り入れる外気の湿度を制御することにより室内の潜熱負荷を調整することと、温度制御による顕熱負荷を調整することとを別々に処理するので、室内の温湿度制御の精度が高くなる。また、デシカントロータは還気により湿気を脱着させて再生するので、再生のための加熱源を基本的には必要とせず、エネルギーの無駄がなくなる。
【0015】
外気のエンタルピーを制御指標として第1の経路切替装置および第2の経路切替装置を操作し、全熱交換器バイパス経路と全熱交換器を通る外気経路とを切替えるとともに、デシカントロータバイパス経路とデシカントロータを通る外気経路とを切替えることで、全熱交換器とデシカントロータを使い分けて冷却機器や加熱機器の能力を無駄なく使用する運転が実現できる。
【0016】
冷房モードの外気のエンタルピーが設定値より高い場合は、デシカントロータを停止させてデシカントロータによる顕熱移動のロスを避け、全熱交換器により外気の熱負荷を低減して省エネルギー化を実現できる。
【0017】
冷房モードの外気のエンタルピーが設定値より低い場合は、デシカントロータで除湿することで、冷却機器の能力を最小とし、加熱機器による再熱のエネルギーを小さくすることができる。
【0018】
暖房モードは、全熱交換器で外気の熱負荷を低減し、加熱機器でデシカントロータを再生することで、還気より吸収した水分を給気側で加湿に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の他の実施の形態における空気調和機の構成を示し、冷房モードの外気のエンタルピーが設定値より高い場合の運転状態を示す模式図
【図2】同実施の形態における冷房モードの外気のエンタルピーが設定値より高い場合の空気線図
【図3】同実施の形態における空気調和機の冷房モードの外気のエンタルピーが設定値より低い場合の運転状態を示す模式図
【図4】同実施の形態における冷房モードの外気のエンタルピーが設定値より低い場合の空気線図
【図5】同実施の形態における空気調和機の暖房モードの運転状態を示す模式図
【図6】同実施の形態における暖房モードの空気線図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1、図3、図5において、低温再生デシカント空調機は、ケーシング1に外気口2、給気口3、還気口4、排気口5を有しており、ここでは外気口2から給気口3までの通気路を外気経路6とし、還気口4から排気口5までの通気路を還気経路7として説明する。
【0021】
外気経路6には上流側から下流側へ順次に、プレフィルタ8、全熱交換器200、外気ファン9、潜熱制御部10、プレフィルタ11、中性能フィルタ121、顕熱制御部12、給気ファン13を介装しており、給気口3に接続した給気ダクト14には給気湿度センサ15を介装している。
【0022】
還気経路7には上流側から下流側へ順次に、プレフィルタ16、潜熱制御部10、全熱交換器200、排気ファン17を介装しており、還気口4に接続した還気ダクト18には還気温度センサ19および還気湿度センサ20を介装している。潜熱制御部10の外気経路6における下流側には、還気経路7と外気経路6とを連通する還気の戻り経路21と、還気の戻り経路21に設けた還気ダンパ22を有している。
【0023】
全熱交換器200は外気経路6のプレフィルタ8を通過した外気と、還気経路7の潜熱制御部10を通過した還気との間で熱と水分を交換するものであり、全熱交換器200としては回転型、静止型があるが、何れの形態であってもよい。
【0024】
外気経路6には全熱交換器バイパス経路201が設けてあり、全熱交換器バイパス経路201は全熱交換器200の上流側および下流側で外気経路6に連通して全熱交換器200を迂回する経路をなす。
【0025】
全熱交換器200を通る外気経路6と全熱交換器バイパス経路201とを切替える第1の経路切替装置として、第1および第2の全熱交換器通気制御用ダンパ202、203を設けている。
【0026】
第1の全熱交換器通気制御用ダンパ202は全熱交換器バイパス経路201に介装してあり、第2の全熱交換器通気制御用ダンパ203は全熱交換器200の上流側で、かつ全熱交換器バイパス経路201の分岐点より下流側の外気経路6に介装している。
【0027】
潜熱制御部10は、外気経路6に上流側から下流側へ順次に冷温水コイル101、デシカントロータ102、気化式加湿器103を介装し、還気経路7に上流側から下流側へ順次に温水コイル104、デシカントロータ102を介装している。
【0028】
デシカントロータ102は、冷房モードでは外気経路6に対応する処理側で外気から湿気を収着し、還気経路7に対応する再生側で還気により湿気を脱着させて再生するものであり、暖房モードでは還気経路7に対応する処理側で還気から湿気を収着し、外気経路6に対応する再生側で外気により湿気を脱着させて再生するものである。
【0029】
デシカントロータの収着材としては、ゼオライト、塩化リチウム、シリカゲルなどの乾燥剤や高分子収着材を用いるのがよく、本実施の形態では、低温再生での吸湿性が高い高分子収着材からなる。
【0030】
冷房モードでは、冷温水コイル101がデシカントロータ102へ通気する外気を冷却する外気予冷部として作用し、温水コイル104がデシカントロータ102へ通気する還気を加熱する還気予熱部として作用する。
【0031】
暖房モードでは、冷温水コイル101がデシカントロータ102へ通気する外気を加熱する外気予熱部として作用し、気化式加湿器103がデシカントロータ102を通過した外気を加湿する外気加湿部として作用する。
【0032】
外気経路6にはデシカントロータバイパス経路150が設けてあり、デシカントロータバイパス経路150は冷温水コイル101より下流側で、かつデシカントロータ102の上流側で外気経路6に連通するとともに、デシカントロータ102の下流側で外気経路6に連通してデシカントロータ102を迂回する経路をなす。
【0033】
デシカントロータ102を通る外気経路6とデシカントロータバイパス経路150とを切替える第2の経路切替装置として、第1および第2のデシカントロータ通気制御用ダンパ151、152を設けている。
【0034】
第1のデシカントロータ通気制御用ダンパ151はデシカントロータバイパス経路150に介装してあり、第2のデシカントロータ通気制御用ダンパ152はデシカントロータ102の上流側で、かつデシカントロータバイパス経路150の分岐点より下流側の外気経路6に介装している。
【0035】
顕熱制御部12は、外気経路6に上流側から下流側へ順次に冷水コイル122、温水コイル123を介装している。
還気温度センサ19は顕熱制御部10を制御する指標としての還気の温度を検知し、還気の温度に基づいて冷水コイル122、温水コイル123の各バルブ124、125を開閉制御もしくは開度制御する。
【0036】
還気湿度センサ20は潜熱制御部12を制御する指標としての還気の湿度を検知し、還気の湿度に基づいて冷温水コイル101、気化式加湿器103、温水コイル104の各バルブ107、108、109を開閉制御もしくは開度制御し、還気の湿度に基づいてデシカントロータ102の運転の起動、停止もしくは回転数を制御する。
【0037】
給気湿度センサ15は潜熱制御部10を制御する指標としての給気の湿度を検知し、給気の湿度に基づいてデシカントロータ102の運転の起動、停止もしくは回転数を制御する。
【0038】
第1の経路切替装置および第2の経路切替装置の制御指標として外気のエンタルピーを測定するエンタルピー測定手段を設けており、本実施の形態ではエンタルピー測定手段として外気の温度を測定する外気温度センサ301と外気の湿度を測定する外気湿度センサ302を設けている。
【0039】
外気温度センサ301と外気湿度センサ302はそれぞれ、第1の全熱交換器通気制御用ダンパ202、第2の全熱交換器通気制御用ダンパ203、第1のデシカントロータ通気制御用ダンパ151、第2のデシカントロータ通気制御用ダンパ152に接続している。
【0040】
第1の全熱交換器通気制御用ダンパ202、第2の全熱交換器通気制御用ダンパ203、第1のデシカントロータ通気制御用ダンパ151、第2のデシカントロータ通気制御用ダンパ152の制御部は、外気温度センサ301と外気湿度センサ302の測定値を受けて外気のエンタルピーを算出するとともに、予め設定したエンタルピーと比較して開閉動作を制御する。
【0041】
本実施の形態では、外気のエンタルピーと設定値のエンタルピーとを比較した。しかしながら、外気温度センサ301と外気湿度センサ302に加えて、還気温度センサ19と還気湿度センサ20をそれぞれ、第1の全熱交換器通気制御用ダンパ202、第2の全熱交換器通気制御用ダンパ203、第1のデシカントロータ通気制御用ダンパ151、第2のデシカントロータ通気制御用ダンパ152に接続する構成とすることも可能である。
【0042】
この構成では、第1の全熱交換器通気制御用ダンパ202、第2の全熱交換器通気制御用ダンパ203、第1のデシカントロータ通気制御用ダンパ151、第2のデシカントロータ通気制御用ダンパ152の制御部において、外気温度センサ301と外気湿度センサ302の測定値を受けて外気のエンタルピーを算出するとともに、還気温度センサ19と還気湿度センサ20の測定値を受けて還気のエンタルピーを算出し、還気のエンタルピーと外気のエンタルピーを比較して開閉動作を制御する。
【0043】
上述した本実施の形態においては、プレフィルタ8、11と中性能フィルタ121および外気ファン9は必ずしも必要ではなく、必要に応じて設置するものであり、温水コイル104は冷房モードの基本的な運転においては不要であるが、冷温水コイル101の予冷による除湿能力が不足する時にデシカントロータ102へ通気する還気を加熱する還気予熱部として作用し、デシカントロータ102を加熱再生して除湿能力を確保するバックアップ機能を果すものである。
【0044】
以下、上記した構成における作用を説明する。本実施の形態の低温再生デシカント空調機の基本的な作用は以下のものである。すなわち、還気の戻り経路21を通して還気が合流する還気混合前に、外気経路6を流れる外気の潜熱(湿度)を潜熱制御部10で制御し、還気混合後に還気を含む外気の顕熱(温度)を顕熱制御部12で制御して室内へ給気し、室内からの還気を潜熱制御部10を通して排気する。
【0045】
つまり、潜熱制御部10において室内に取り入れる外気の湿度制御を行うことで室内の潜熱負荷を処理し、顕熱制御部12において外気と還気の混合空気の温度制御を行うことで室内の顕熱負荷を処理する。このように、室内の潜熱負荷と顕熱負荷を別々に処理することで室内の温湿度制御の精度が高くなり、エネルギーの無駄がなくなる。
冷房モード1(外気のエンタルピーが高い)
図1および図2において、冷房モードの外気のエンタルピーが設定値のエンタルピーもしくは還気のエンタルピーより高い場合の冷房モードの運転について説明する。
第1の全熱交換器通気制御用ダンパ202、第2の全熱交換器通気制御用ダンパ203、第1のデシカントロータ通気制御用ダンパ151、第2のデシカントロータ通気制御用ダンパ152の制御部は、外気温度センサ301と外気湿度センサ302の測定値を受けて外気のエンタルピーを算出する。還気のエンタルピーを算出する場合には制御部が還気温度センサ19と還気湿度センサ20の測定値を受けて還気のエンタルピーを算出する。
【0046】
制御部は、算出した外気のエンタルピーと予め設定した設定値のエンタルピーもしくは還気のエンタルピーとを比較してダンパの開閉動作を制御する。
例えば、算出した外気のエンタルピーが予め設定した設定値のエンタルピーもしくは還気のエンタルピーより高い場合には、第1の全熱交換器通気制御用ダンパ202を閉操作し、第2の全熱交換器通気制御用ダンパ203を開操作し、第1のデシカントロータ通気制御用ダンパ151を開操作し、第2のデシカントロータ通気制御用ダンパ152を閉操作する。
【0047】
この冷房モード1においては、デシカントロータ102を停止させてデシカントロータ102による顕熱移動のロスを避けて、全熱交換器200により外気の熱負荷を低減して省エネルギー化を実現する。
【0048】
すなわち、外気を冷温水コイル101で冷却し、潜熱制御部10を通過した外気に還気の戻り経路21を通して還気RAを混合し、還気混合後の外気OAを顕熱制御部12へ通気させて冷水コイル122により冷却し、顕熱(温度)を制御して顕熱負荷を処理し、顕熱制御部12を通過した給気SAを室内へ送気する。
【0049】
潜熱制御部10および顕熱制御部12は還気湿度センサ20で検知する還気RAの湿度および還気温度センサ19で検知する還気RAの温度を指標として制御する。
すなわち、還気湿度センサ20は潜熱制御部10を制御する指標としての還気RAの湿度を検知し、還気RAの湿度に基づいて冷温水コイル101のバルブ107を開閉制御もしくは開度制御して冷水の流量を制御して除湿量を制御し、室内へ供給する空気の絶対湿度を制御する。
【0050】
還気温度センサ19は顕熱制御部12を制御する指標としての還気RAの温度を検知し、還気RAの温度に基づいて冷水コイル122のバルブ124を開閉制御もしくは開度制御して冷水の流量を制御し、室内へ供給する空気の温度を制御する。
冷房モード2(外気のエンタルピーが低い)
図3および図4において、冷房モードの外気のエンタルピーが設定値のエンタルピーもしくは還気のエンタルピーより低い場合について説明する。
【0051】
算出した外気のエンタルピーが予め設定した設定値のエンタルピーもしくは還気のエンタルピーより低い場合には、第1の全熱交換器通気制御用ダンパ202を開操作し、第2の全熱交換器通気制御用ダンパ203を閉操作し、第1のデシカントロータ通気制御用ダンパ151を閉操作し、第2のデシカントロータ通気制御用ダンパ152を開操作する。
【0052】
この冷房モード2においては、デシカントロータ102で除湿することで、冷温水コイル101の能力を最小にした運転が実現できる。
すなわち、デシカントロータ102へ通気する外気OAを冷温水コイル101により冷却し、その乾球温度および絶対湿度を低減させる。予冷した外気OAはデシカントロータ102の外気経路側を通過し、外気OAの湿気をデシカントロータ102が収着して除湿し、その絶対湿度を低減させて潜熱(湿度)を制御する。デシカントロータ102は還気経路側で還気RAにより湿気を脱着させて再生する。このため、還気RAのエネルギーをデシカントロータ102の再生エネルギーとして有効に利用でき、デシカントロータ102を別途の熱源による加熱を要することなく再生でき、省エネが図られる。
【0053】
そして、潜熱制御部10を通過した外気OAに還気の戻り経路21を通して還気RAを混合し、還気混合後の外気OAを顕熱制御部12へ通気させて冷水コイル122により冷却し、顕熱(温度)を制御して顕熱負荷を処理し、顕熱制御部12を通過した給気SAを室内へ送気する。
【0054】
潜熱制御部10および顕熱制御部12は還気湿度センサ20で検知する還気RAの湿度および還気温度センサ19で検知する還気RAの温度を指標として制御する。
すなわち、還気湿度センサ20は潜熱制御部10を制御する指標としての還気RAの湿度を検知し、還気RAの湿度に基づいて冷温水コイル101のバルブ107を開閉制御もしくは開度制御して冷水の流量を制御して除湿量を制御し、還気RAの湿度に基づいてデシカントロータ102の運転の起動、停止もしくは回転数を制御し、室内へ供給する空気の絶対湿度を制御する。
【0055】
還気温度センサ19は顕熱制御部12を制御する指標としての還気RAの温度を検知し、還気RAの温度に基づいて冷水コイル122のバルブ124を開閉制御もしくは開度制御して冷水の流量を制御し、室内へ供給する空気の温度を制御する。
【0056】
また、給気湿度センサ15は潜熱制御部10を制御する指標としての給気の湿度を検知し、給気の湿度に基づいて潜熱制御部10の運転の起動、停止を制御する。すなわち、給気湿度が冷水コイル122で冷却除湿が生じる湿度となる場合、例えば給気の湿度がRH85%を超えた場合には、冷水コイル122で冷却除湿になり、デシカントロータ102での除湿の効果が小さくなるので、デシカントロータ102の回転を停止し、冷温水コイル101の冷水供給を停止する。
【0057】
そして、冷水コイル122と温水コイル123により除湿冷却と再熱制御を行う。還気湿度センサ20で検出する還気RAの相対湿度が設定値+10%の範囲内になったらデシカントロータ102および冷温水コイル101の運転を再開する。この運転制御により、デシカントロータ102におけるエネルギーロスを低減できる。
【0058】
上述したように、デシカントロータ102を使用することで、例えば26℃以上の高温低湿(28℃、RH40%)の室内条件を過冷却なしで実現できる。また、室内負荷はドライコイルで顕熱冷却するので衛生的な空気を室内に供給できる。
【0059】
冷温水コイル101の予冷による除湿能力が不足する時には、還気RAを温水コイル104で加熱してデシカントロータ102へ通気することでデシカントロータ102を加熱再生して除湿能力を確保する。
【0060】
低温再生デシカント空調機の冷房運転終了時には、停止に先立って、デシカントロータバイパス経路150により潜熱制御部10の外気経路6におけるデシカントロータ102の上流側と下流側を連通させて外気OAを通気し、外気OAがデシカントロータ102の処理側を迂回し、デシカントロータ102の再生側に還気RAが通気する状態で一定時間運転し、デシカントロータ102を乾燥させてその後に空調機を運転停止させることにより、カビ発生を防止できる。
暖房モード
図5および図6において暖房モードの運転について説明する。暖房モードにおいては、第1の全熱交換器通気制御用ダンパ202を閉操作し、第2の全熱交換器通気制御用ダンパ203を開操作し、第1のデシカントロータ通気制御用ダンパ151を閉操作し、第2のデシカントロータ通気制御用ダンパ152を開操作する。
【0061】
この暖房モードでは、冷温水コイル101でデシカントロータ102を再生することで、還気RAより吸収した水分を給気側で加湿に使用することができる。
すなわち、デシカントロータ102へ通気する外気OAを冷温水コイル101により加熱する。予熱した外気OAはデシカントロータ102の外気経路側を通過し、外気OAでデシカントロータ102から湿気を脱着させて再生し、外気OAを加湿する。デシカントロータ102は還気経路側で還気RAから湿気を収着する。このように、室内からの水分を外気OAに移行させることで、加湿に必要な水の使用量を低減させることができる。
【0062】
そして、潜熱制御部10を通過した外気OAに還気の戻り経路21を通して還気RAを混合し、還気混合後の外気OAを顕熱制御部12へ通気させて温水コイル123により加熱し、顕熱(温度)を制御して顕熱負荷を処理し、顕熱制御部12を通過した給気SAを室内へ送気する。
【0063】
潜熱制御部10および顕熱制御部12は還気湿度センサ20で検知する還気RAの湿度および還気温度センサ19で検知する還気RAの温度を指標として制御する。
すなわち、還気湿度センサ20は潜熱制御部10を制御する指標としての還気RAの湿度を検知し、還気RAの湿度に基づいて冷温水コイル101のバルブ107を開閉制御もしく開度制御して温水の流量の制御により加熱を調整し、デシカントロータ102における加湿量を制御するとともに、還気RAの湿度に基づいてデシカントロータ102の運転の起動、停止もしくは回転数を制御し、室内へ供給する空気の絶対湿度を制御する。加湿が不足する場合には、気化式加湿器103により外気OAを加湿する。
【0064】
還気温度センサ19は顕熱制御部12を制御する指標としての還気RAの温度を検知し、還気RAの温度に基づいて温水コイル123のバルブ125を開閉制御もしくは開度制御して温水の流量を制御し、室内へ供給する空気の温度を制御する。
【0065】
上述した実施の形態では、室内顕熱負荷を処理するのに必要な風量を確保するために還気の戻り経路21を設けて、外気OAと還気RAを混合するようにしていたが、外気風量だけで室内顕熱負荷を賄える場合や別途空調機を設けたりする場合は、還気の戻り経路21を設けない構成であってもよい。
【0066】
上述した実施の形態では、還気温度センサ19、還気湿度センサ20は、還気ダクト18に設けられていたが、ケーシング1内の還気経路7や、被管理空間の室内に設けてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ケーシング
2 外気口
3 給気口
4 還気口
5 排気口
6 外気経路
7 還気経路
8 プレフィルタ
9 外気ファン
10 潜熱制御部
11 プレフィルタ
12 顕熱制御部
13 給気ファン
14 給気ダクト
15 給気湿度センサ
16 プレフィルタ
17 排気ファン
18 還気ダクト
19 還気温度センサ
20 還気湿度センサ
21 還気の戻り経路
22 還気ダンパ
101 冷温水コイル
102 デシカントロータ
103 気化式加湿器
104 温水コイル
107、108、109、124、125 バルブ
121 中性能フィルタ
122 冷水コイル
123 温水コイル
150 デシカントロータバイパス経路
151 第1のデシカントロータ通気制御用ダンパ
152 第2のデシカントロータ通気制御用ダンパ
200 全熱交換器
201 全熱交換器バイパス経路
202 第1の全熱交換器通気制御用ダンパ
203 第2の全熱交換器通気制御用ダンパ
301 外気温度センサ
302 外気湿度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を室内へ給気する外気経路と、室内からの還気を排気する還気経路と、外気経路の外気の潜熱を制御する潜熱制御部と、外気経路の外気の顕熱を制御する顕熱制御部と、外気と還気との間で顕熱および潜熱を交換する全熱交換器部を備え、
全熱交換器部は、潜熱制御部へ通気する外気経路の外気と潜熱制御部を通過した還気経路の還気との間で顕熱および潜熱を交換する全熱交換器と、全熱交換器の上流側および下流側で外気経路に連通して全熱交換器を迂回する全熱交換器バイパス経路と、全熱交換器を通る外気経路と全熱交換器バイパス経路とを切替える第1の経路切替装置を有し、
潜熱制御部は、外気経路の外気から湿気を収着して還気経路側で還気により湿気を脱着させて再生するデシカントロータと、デシカントロータの上流側および下流側で外気経路に連通してデシカントロータを迂回するデシカントロータバイパス経路と、デシカントロータを通る外気経路とデシカントロータバイパス経路とを切替える第2の経路切替装置を有することを特徴とする低温再生デシカント空調機。
【請求項2】
第1の経路切替装置および第2の経路切替装置の制御指標として外気のエンタルピーを測定するエンタルピー測定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の低温再生デシカント空調機。
【請求項3】
潜熱制御部の下流において還気経路と外気経路を連通する還気の戻り経路を有することを特徴とする請求項1または2に記載の低温再生デシカント空調機。
【請求項4】
室内へ給気する外気の潜熱を潜熱制御部で制御し、潜熱制御部を通過した外気の顕熱を顕熱制御部で制御し、顕熱制御部を通過した外気を室内へ給気し、室内からの還気を潜熱制御部を通して排気し、全熱交換器によって潜熱制御部へ通気する外気と潜熱制御部を通過した還気との間で顕熱および潜熱を交換し、エンタルピー測定手段により外気のエンタルピーを測定し、外気のエンタルピーを制御指標として第1の経路切替装置を操作することで、全熱交換器の上流側の外気経路と下流側の外気経路とに連通して全熱交換器を迂回する全熱交換器バイパス経路と全熱交換器を通る外気経路とを切替えるとともに、外気のエンタルピーを制御指標として第2の経路切替装置を操作することで、デシカントロータの上流側の外気経路と下流側の外気経路とに連通してデシカントロータを迂回するデシカントロータバイパス経路と、デシカントロータを通る外気経路とを切替えることを特徴とする低温再生デシカント空調機の運転方法。
【請求項5】
冷房時に外気のエンタルピーが設定したエンタルピーより高い場合は、第1の経路切替装置を操作して全熱交換器を通る外気経路を選択するとともに、第2の経路切替装置を操作してデシカントロータバイパス経路を選択し、冷房時に外気のエンタルピーが設定したエンタルピーより低い場合は、第1の経路切替装置を操作して全熱交換器バイパス経路を選択するとともに、第2の経路切替装置を操作してデシカントロータを通る外気経路を選択し、暖房時には第1の経路切替装置を操作して全熱交換器を通る外気経路を選択するとともに、第2の経路切替装置を操作してデシカントロータを通る外気経路を選択することを特徴とする請求項4に記載の低温再生デシカント空調機の運転方法。
【請求項6】
冷房時に外気のエンタルピーが還気のエンタルピーより高い場合は、第1の経路切替装置を操作して全熱交換器を通る外気経路を選択するとともに、第2の経路切替装置を操作してデシカントロータバイパス経路を選択し、冷房時に外気のエンタルピーが還気のエンタルピーより低い場合は、第1の経路切替装置を操作して全熱交換器バイパス経路を選択するとともに、第2の経路切替装置を操作してデシカントロータを通る外気経路を選択し、暖房時には第1の経路切替装置を操作して全熱交換器を通る外気経路を選択するとともに、第2の経路切替装置を操作してデシカントロータを通る外気経路を選択することを特徴とする請求項4に記載の低温再生デシカント空調機の運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−145247(P2012−145247A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2630(P2011−2630)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(000104836)クボタ空調株式会社 (31)
【出願人】(390003333)新晃工業株式会社 (46)
【Fターム(参考)】