説明

低温焼成用熱硬化性電極ペースト{THERMOSETTINGELECTRODEPASTECOMPOSITIONFORLOWTEMPERATURE}

本発明は低温焼成用熱硬化性電極ペーストに関するものであって、本発明による電極ペーストは優れた付着力、高解像度、低い接触抵抗、優れた保管安定性および電気比抵抗を示して、無線認識タグ、印刷回路基板、太陽電池など幅広い分野に適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低温焼成用熱硬化性電極ペーストに関するものであって、本発明による電極ペーストは優れた付着力、高解像度、低い接触抵抗、優れた保管安定性、および電気比抵抗を示すことができる。
【背景技術】
【0002】
従来は導電性粉末、エポキシまたはウレタンなどの熱硬化樹脂、単量体、硬化剤、および溶媒などを混合して電極ペーストを製造した。しかし、このような電極ペーストを加熱硬化して生成された電極はセラミック基板、シリコン基板で密着性が優れない短所がある。また、従来電極ペーストの製造に使用されたポリイソシアネート(polyisocyanate)の場合、加熱硬化によって生成されるウレタン(urethane)化合物は反応速度が遅くて長時間の硬化時間を必要とするだけでなく、セラミック基板に対して密着性が低下される問題点がある。
【0003】
また、アミン系硬化剤を使用する場合、常温(25℃)保管中に順次に硬化が行われてペースト粘度が上昇する安定性問題を示すこともある。エポキシ樹脂や単量体を使用する場合、熱硬化反応時ペーストの急激な収縮によってパターン電極の割れ現象が発生したり基材(または基板)から剥げる短所がある。また、焼成過程で付与される熱エネルギー(200〜300℃未満)によって樹脂の酸化分解が発生し電極の脱落現象が起こる問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、優れた付着力、高解像度、低い接触抵抗、優れた保管安定性、および電気比抵抗を示して無線認識タグ(radio frequency identification:RFID)、印刷回路基板(printed circuit board:PCB)、太陽電池(solar cell)など幅広い分野に適用可能な低温焼成用熱硬化性電極ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明は、
(a)導電性粉末、
(b)熱硬化性オリゴマー、
(c)熱硬化開始剤、
(d)バインダー、および
(e)溶媒
を含む、低温焼成用熱硬化性電極ペーストを提供する。
【0006】
また、本発明は、前記低温焼成用熱硬化性電極ペーストを基材上に印刷した後、乾燥および焼成して形成された電極;および前記電極を含む電子材料を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明による低温焼成用熱硬化性電極ペーストは下記のような効果を示す。
【0008】
第一に、硬化度が優れ低温(300℃以下)でも優れた電気比抵抗特性を示す。
【0009】
第二に、乾燥温度が低い温度(200℃未満)でペーストの硬化が行われるため電極線幅の広がり現象がない。
【0010】
第三に、低温焼成温度(150〜300℃未満)で基板との付着力が優れている。特に、ペースト内にチオール系またはシラン系化合物を用いる場合、導電性粉末周囲を−S−または−Si−形態に囲み、熱を加えれば芳香族炭素環が切れながら、基板との付着力をさらに増大させる。
【0011】
第四に、太陽電池の電極形成に用いた場合、ガラスフリットのないペーストであるため、形成された電極での接触抵抗を減少させることができる。
【0012】
第五に、ペーストのレオロジー特性が優れ高い縦横比(aspect ratio)を実現することができる。
【0013】
第六に、粘度変化が少なく、特にペースト内のチオール系またはシラン系化合物が導電性粉末周囲を囲んでいて分散性、および保管安定性がより良い。
【0014】
第七に、ポリマー、ガラス、金属、セラミックなど基板材質に関係なく高い接着力を示し、無線認識タグ(radio frequency identification:RFID)、印刷回路基板(printed circuit boardd:PCB)、太陽電池(solar cell)など幅広い応用分野に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は電極ペーストの製造時に熱硬化性オリゴマーを用いることによって、電極形成時電極ペーストの収縮によって発生する内部応力を減らすことができ、単量体に比べて多くの作用基を含む熱硬化性オリゴマーによって同量の開始剤使用時硬化時間を短縮させることができる。また、前記熱硬化性オリゴマーを用いた電極ペーストで製造された電極塗膜は強度が優れち密であり、基板付着力だけでなく電気伝導性が優れている。即ち、本発明は電極品質の改善および工程時間短縮による生産性を向上させることができる、オリゴマーを用いた電極ペーストを提供することを特徴とする。
【0016】
また、本発明による電極ペーストは常温(25℃)保管中に硬化反応が発生しないように熱硬化性陽イオンまたはラジカル開始剤を含むことによって優れた保管安定性を示すことができる。
【0017】
即ち、本発明による低温焼成用熱硬化性電極ペーストは、
(a)導電性粉末、
(b)熱硬化性オリゴマー、
(c)熱硬化開始剤、
(d)バインダー、および
(e)溶媒
を含む。
【0018】
好ましくは、本発明による電極ペーストは(a)導電性粉末30〜95重量%、(b)熱硬化性オリゴマー1〜30重量%、(c)熱硬化開始剤0.01〜10重量%、(d)バインダー0.1〜30重量%、および(e)残量の溶媒を含む。
【0019】
本発明の「低温焼成用熱硬化性電極ペースト」には、積層構造体からなる電子デバイスや、単層または多層からなる配線板のような回路形成用材料として使用されるペーストを含む。したがって、太陽電池、ディスプレイ素子、およびRFID素子などに使用される電極だけでなく、これら装置に使用される電気配線もここに該当する。
【0020】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0021】
(a)導電性粉末
【0022】
本発明で使用可能な粉末としては、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)など通常電極の製造時に導電性粉末として使用されるものであれば特別な制限なく使用することができる。好ましくは、銀粉末を使用することができる。
【0023】
前記導電性粉末は平均粒径が0.05乃至10μmの粉末を用いることができ、好ましくは、0.1乃至5μmの粉末を使用することができる。前記導電性粉末は多様な粒子の大きさと形状を有する2種以上混合して使用することができ、この場合、平均粒径が0.05〜2μmの粉末と平均粒径が2〜10μmの平均粒径を有する粉末を2種以上混合して使用することができる。前記導電性粉末の形状は球形、非球形、そして板状を使用することができ、これらを2種以上混合して使用することができる。
【0024】
多様な粒子形状と大きさを有する金属粉末を混合して使用することが、印刷の精密性を高め、太陽電池への適用時に太陽電池の曲線因子(Fill Factor、以下、「FF」という)を大きく向上させて効率を高めることができるため好ましい。
【0025】
このような導電性粉末は固形分中に30乃至95重量%で含まれることができる。前記金属粉末の量が30重量%未満である時はペーストの粘度が低すぎ、印刷して高解像度の電極パターンを形成することが難しく、基板に電極が形成されても電極の広がり現象が非常に激しくてパターンの縦横比が非常に低くなり、また金属粉末の量が95重量%を超過する時は粘度が非常に高くて印刷が容易でないため基板上での電極形成が難しいだけでなく、有機物含量が低くて基板との接着力が良くなくて、乾燥後電極の脱落現象が生じる。
【0026】
(b)熱硬化性オリゴマー
【0027】
本発明で使用可能な熱硬化性オリゴマーとしては、アクリル系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー(エポキシアクリレート共重合体)、ポリエステルアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマーなどを単独または2種以上混合して使用することができる。前記アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は500〜1500の範囲が適合する。
【0028】
前記アクリル系オリゴマーとしては、多官能ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートオリゴマー、グリシジルメタアクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレートを使用することができる。また、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを用いた共重合体を使用することもできる。
【0029】
また、前記アクリル系オリゴマーを含む混合物としては、商業的に市販されるEBECRYL1200(製品名、サイテック社、米国)、HSOL−500(製品名、ハンス化学、韓国)などを使用することができる。
【0030】
前記エポキシアクリレート系オリゴマーを含む混合物としては、商業的に市販されているMiramer ME 2010(製品名、ミウォン商社、韓国)、CN150/80(製品名、Sartomer社、米国)、EPA1300(製品名、ハンス化学、韓国)または3020−A80(製品名、AGI社、米国)、架橋密度の高いビスフェノールAジアクリレートオリゴマーなどを使用することができる。
【0031】
前記熱硬化性オリゴマーの含量は1〜30重量%含むことができる。前記熱硬化性オリゴマー含量が1重量%未満である場合には硬化反応が充分でなくて基板との付着力が不充分であり、オリゴマーの含量が30重量%を超過する場合にはオリゴマーの残存によって電気的な絶縁体の役割を果たして接触抵抗を高くする。
【0032】
(c)熱硬化開始剤
【0033】
本発明で使用可能な熱硬化開始剤としては陽イオンまたはラジカル開始剤を使用することができる。
【0034】
前記陽イオン開始剤はオリゴマーの熱硬化を低温で高速で行われるようにする。具体的な例としては、アンモニウム/アンチモンヘキサフルオライド、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩、トリアニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(トリクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ヨードニウム(4−メチルフェニル)(4−(2−メチルプロピル)フェニル)ヘキサフルオロホスフェート、オクチルジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジアリルヨードニウム塩、ベンジルスルホニウム、フェナシルスルホニウム、N−ベンジルピリジニウム塩、N−ベンジルピラジニウム塩、N−ベンジルアンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヒドラジニウム塩、アンモニウムボレート塩、トリフェニルメチルクロライドおよびこれらの混合物が挙げられ、好ましくは、アンモニウム/アンチモンヘキサフルオライド、トリアニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルメチルクロライドなどが挙げられる。
【0035】
前記ラジカル開始剤の具体的な例としては、ベンゾイルパーオキシド(benzoylperoxide)、ラウロイルパーオキシド(lauroylperoxide)、ジアセチルパーオキシド(diacetylperoxide)、またはジ−t−ブチルパーオキシド(di−tert−butylperoxide)などのパーオキシド系化合物(peroxides);クミルヒドロパーオキシド(cumylhydroperoxide)などのヒドロパーオキシド系化合物(hydroperoxides);およびシアノ(−CN)官能基を有するα,α'−アゾビスイソブチロニトリル(α,α'−azobisisobutyronitrile、AIBN)、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−(1−ヒドロキシブチル))プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス[N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド]、2,2'−アゾビス[N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド]、およびジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物などが挙げられる。この中でもアゾビス(cyclohexane−carbonitrile)系化合物は、100℃以上で分解されて反応するため乾燥温度(100〜200℃未満)領域から硬化反応が行われて電極パターンの広がり現象が抑制され、その結果高解像度パターンを実現することができ、また常温では硬化反応が抑制されて25〜40℃保管条件下で粘度変化がないので、より好ましい。
【0036】
前記熱硬化開始剤の含量は0.01乃至10重量%が含まれることができる。前記熱硬化開始剤の含量が0.01重量%未満である場合、オリゴマーとの架橋化が十分でなくて未反応オリゴマーによる硬化度低下が発生するようになり、開始剤の含量が30重量%を超過する場合、不必要な開始剤の残存で接触抵抗を高くするだけでなく非経済的である。
【0037】
(d)バインダー
【0038】
本発明で使用可能なバインダーとしては、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシセルロースなどのセルロース誘導体、イソブチルメタアクリレート、n−ブチルメタアクリレート、またはこれらの共重合体であるアクリル系樹脂が挙げられる。
【0039】
また、商業的に市販されるアクリル系樹脂は、ELVACITE2045(製品名、ELVACITE社、米国)、ELVACITE2046(製品名、ELVACITE社、米国)などを使用することができる。
【0040】
本発明で前記バインダーの含量は0.1〜30重量%を含むことができる。前記バインダー含量が0.1重量%未満である場合には印刷性が良くなくて電極形成に困難があり、基板との付着力も良くない。また、バインダー含量が30重量%を超過する場合には焼成後バインダーの残存量増加によって伝導性粉末間の密着度低下を引き起こして比抵抗特性を低下させ、太陽電池セルでの接触抵抗を高めて電池の効率を落とす。
【0041】
(e)溶媒
【0042】
前記(a)〜(d)の成分は溶媒中で混合分散されて使用される。
この時使用可能な溶媒としては、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、ブチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチルエーテルプロピオネート、テルピネオール、テキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアミノフォルムアルデヒド、メチルエチルケトン、γ-ブチロラクトン、エチルラクテート、エチレングリコール、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ブチルピロリドン、テトラヒドロフラン、およびセルソルブ誘導体などを単独または2種以上混合して使用することができる。好ましくは、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオールまたはこれらの混合物を使用することができる。
【0043】
前記溶媒は(a)〜(d)の成分は除いた残量を含むことができる。
【0044】
(f)接着増進剤
【0045】
本発明による電極ペーストは前記成分以外に接着増進剤、好ましくはチオール系またはシラン系芳香族炭素化合物を選択的にさらに含むことができる。この接着増進剤はペースト内導電性粉末の表面に−S−あるいは−Si−形態に結合しているが、熱を加えれば(低温:200℃以内)芳香族炭素化合物の環が切れながら基板に化学的結合をすることにより付着力を増進させる効果がある。したがって、基板を別途に表面改質する必要がなく、熱を加える前には電極内分散性も良く常温でも安定した状態を維持する。
【0046】
前記接着増進剤の具体的な例としては、チオール系化合物としてブタンチオール、ペンタンチオール、およびこれらの混合物が挙げられ;アルコキシシラン系化合物としてビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルブチレントリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ)シラン、ビニルトリ(β−エトキシ)シラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシカルビトールトリメトキシシランテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、トリブチルエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ノナフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、ノナフルオロブチルエチルトリエトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリイソプロピルシラン、3−トリメトキシシリルプロピルペンタデカフルオロオクテート、3−トリエトキシシリルプロピルペンタデカフルオロオクテート、3−トリメトキシシリルプロピルペンタデカフルオロオクチルアミド、3−トリエトキシシリルプロピルペンタデカフルオロオクチルアミド、2−トリメトキシシリルエチルペンタデカフルオロデシルスルフィド、2−トリエトキシシリルエチルペンタデカフルオロデシルスルフィド、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、4−(パーフルオロトリル)トリメトキシシラン、4−(パーフルオロトリル)トリエトキシシラン、ジメトキシビス(ペンタフルオロフェニル)シラン、ジエトキシビス(4−ペンタフルオロトリル)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよびこれらの混合物が挙げられ;前記アルコキシ基の代わりにビニル基、エポキシ基、メタクリル基、メルカプト基、またはイソシアネート基を1つ以上有するシラン系化合物も使用することができる。
【0047】
本発明で前記接着増進剤は0.1〜30重量%の量で含むことができる。前記接着増進剤の含量が0.1重量%未満である場合には目的する効果を得ることができず、30重量%を超過する場合にもそれ以上付着力が増加しない。
【0048】
(g)モノマー
【0049】
本発明による電極ペーストはモノマーを選択的にさらに含むことができる。
【0050】
前記モノマーとしては、(メタ)アクリル系モノマーとしてメタアクリレートモノマー、またはエポキシモノマー、またはこれらの混合物を用いることができ、具体的な例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アクリロイルオキシエチルスクシネート、フェノキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、アリールメタアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、グリセロールジメタアクリレート、ペンタメチルジペリジルメタアクリレート、ラウリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシレーテッドトリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシレーテッドトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエポキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセリンプロポキシレーテッドトリアクリレート、およびメトキシエチレングリコールアクリレートからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0051】
前記モノマーは20重量%以下で使用されることが好ましい。前記含量範囲を外れる場合、反応に参加していないモノマーが不純物として残存して、硬化速度が低下する恐れがある。好ましくは、0.01乃至15重量%で含むことが良い。
【0052】
(h)その他の添加剤
【0053】
前記以外にも本発明による電極ペーストは通常ペーストに含まれる添加剤を必要によってさらに含むことができる。前記添加剤の例としては増粘剤、安定化剤、分散剤、脱泡剤、界面活性剤、およびこれらの混合物が挙げられ、これら成分は0.1〜5重量%で使用されるのが好ましい。
【0054】
このような組成を有する本発明の電極ペーストは、前記記載した必須成分と任意の成分を所定の比率により配合し、これをブレンダーまたは3軸ロールなどの混練機で均一に分散して得ることができる。
【0055】
好ましくは、本発明のペーストは、ブルックフィールド(Brookfield)HBT粘度計を用いて#51スピンドルとして温度25℃下でせん断率(shear rate)3.84sec−1条件で測定する場合、1乃至300Pa・Sの粘度を有することができる。
【0056】
本発明による電極ペーストは、ペーストの収縮によって発生した内部応力がないので基板との付着力が優れ、乾燥温度(100〜200℃未満)でペーストがはやく硬化して電極の広がり現象がないため高解像度(high resolution)を示すことができる。また、乾燥温度(200℃未満)で硬化度が優れて低温(300℃以下)でも優れた電気比抵抗特性を得ることができる。そのために本発明の電極ペーストは幅広い分野に適用が可能である。その中でも太陽電池分野に適用した場合、ガラスフリットがないペーストで焼成後にシルバーパウダーの密集性が高いので電極の接触抵抗を減少させることができ、特に非晶質/結晶質シリコン異種接合太陽電池に適用する場合に効果がさらに大きい。
【0057】
本発明はまた、前記電極ペーストを基材上に印刷した後に乾燥および焼成して形成された電極、および前記電極を含む電子材料を提供する。前記電子材料は無線認識タグ、印刷回路基板、または太陽電池であることができ、好ましくは前記電子材料は太陽電池であり、さらに好ましくは非晶質/結晶質シリコン異種接合太陽電池である。
【0058】
本発明の電子材料電極形成時、本発明の前記低温焼成用熱硬化性電極ペーストを用いることを除いては、基材、印刷、乾燥、および焼成は通常電子材料の電極製造に使用される方法を用いることができるのはもちろんである。一例として、前記基材はSi基板であることができ、前記電極はシリコン太陽電池の前面、後面電極であることができ、前記印刷はスクリーン印刷であることができ、前記乾燥は100〜250℃で行うことができ、前記焼成は150〜300℃の低温で10分乃至60分間行われる低温焼成を行うことが良く、前記印刷は10乃至50μmの厚さに印刷をすることが良い。
【0059】
このように形成された本発明の電極は精密性が高く、本発明による電極ペーストを用いて製造された電極を含む太陽電池は高効率、高解像度であって、特に低温焼成に適して量産性が優れ、非晶質/結晶質シリコン異種接合太陽電池に適用する場合に効果がさらに良いという長所がある。
【0060】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるのではない。
【実施例】
【0061】
実施例1乃至6、および比較例1および2
下記表1に記載された成分および含量で混合した後(重量%)3ロール混練機で混合分散させて電極ペーストを製造した。
【0062】
【表1】

【0063】
前記表1に記載された具体的な成分名は次の通りである。
−銀粉末:平均粒度2.5μmを有する板状型銀粉末
−セルロース系樹脂:ヒドロキシセルロース
−アクリル系樹脂:ELVACITE 2045
−エポキシ樹脂:ビスフェノールA系統樹脂
−アクリル系オリゴマーとエポキシアクリレートオリゴマー:EBECRYL−1200とMiramer ME 2010を4:1重量比率で混合
−アクリル系モノマー:TMPTAとHDDAが7:3重量比率で混合
−アミン系硬化剤:ポリアマイド
−ラジカル開始剤1:アゾビスイソブチロニトリル(Azobisisobutyronitrile)
−ラジカル開始剤2:ベンゾイルパーオキシド
−陽イオン開始剤:トリフェニルメチルクロライド
−チオール系化合物:ブタンチオール:ペンタンチオール=5:5重量比の混合物
−シラン系化合物:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
−脱泡剤:シリコン系脱泡剤
−分散剤:アルキロールアンモニウム塩
【0064】
前記実施例1乃至6、および比較例1および2で製造された電極ペーストに対して下記のような方法で比抵抗、基板付着力、解像度、接触抵抗、縦横比、および粘度変化率をそれぞれ測定した。その結果を下記表2に示した。
【0065】
1)比抵抗(*10−5Ω.cm)
電極ペーストをそれぞれ基材に印刷した後に180℃で15分、200℃で15分および220℃で15分で硬化した後、4−ポイントプローブ(4−point probe)を用いて比抵抗を測定した。
【0066】
2)基板付着力
格子付着性評価(ASTMD3359)に基づいて、基材上に印刷されて硬化されたペーストにクロスカットナイフ(crosscut knife)で100個の格子紋を作って、金属付着力専用テープ(3M、#610)を付けてから取り外し、剥げた格子数を記録した。
【0067】
3)解像度(μm)
線幅が60〜110μmパターンを有する解像度マスクで印刷、乾燥、焼成した後、パターンの線幅変化率が10%以内である場合を解像度として記録した。
【0068】
4)接触抵抗(mΩ.cm)
電極ペーストを太陽電池セル(cell)の後面にスクリーンプリンティング技法で印刷し、熱風式乾燥炉を用いて乾燥させた。そして、前面に線幅110μmの電極パターンを印刷して160℃で5分間乾燥させた。前記過程で製造されたセル(cell)を焼成炉を用いて220℃で15分間焼成した。このように製造されたセル(cell)に対してコアスキャン(Correscan)を用いて接触抵抗を測定した。
【0069】
5)縦横比(%)
焼成後に電極パターンの高さおよびパターン線幅をそれぞれSEMで測定し、パターンの高さ/パターン線幅比率を求めて縦横比(%)を記録した。
【0070】
6)粘度変化率(%)
電極ペーストを25℃で1ヶ月間保管後、粘度変化をブルックフィールド(Brookfield)HBT粘度計を用いて#51スピンドルとして温度25℃下でせん断率(shear rate)3.84sec−1条件で測定して、粘度変化率を観察した。
【0071】
【表2】

【0072】
前記表2に示されているように、オリゴマーを含む本発明による実施例1乃至6による電極ペーストは、オリゴマーを含まない比較例1および2の電極ペーストと比較して、電気比抵抗、基板付着力、解像度、接触抵抗、縦横比および粘度変化率面で顕著に改善された効果を示した。
【0073】
以上で本発明は特定実施態様と関連して説明されたが、添付した請求範囲によって決められる本発明の範疇内で当該分野の熟練者は本発明を多様に変形および変化させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)導電性粉末、
(b)熱硬化性オリゴマー、
(c)熱硬化開始剤、
(d)バインダー、および
(e)溶媒
を含む、低温焼成用熱硬化性電極ペースト。
【請求項2】
(a)導電性粉末30〜95重量%、
(b)熱硬化性オリゴマー1〜30重量%、
(c)熱硬化開始剤0.01〜10重量%、
(d)バインダー0.1〜30重量%、および
(e)残量の溶媒
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の低温焼成用熱硬化性電極ペースト。
【請求項3】
前記導電性粉末が銀粉末であることを特徴とする、請求項1に記載の低温焼成用熱硬化性電極ペースト。
【請求項4】
前記熱硬化性オリゴマーが、アクリル系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマー、およびこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の低温焼成用熱硬化性電極ペースト。
【請求項5】
前記熱硬化開始剤が陽イオンまたはラジカル開始剤であることを特徴とする、請求項1に記載の低温焼成用熱硬化性電極ペースト。
【請求項6】
前記熱硬化開始剤がアゾビス系化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の低温焼成用熱硬化性電極ペースト。
【請求項7】
前記バインダーがセルロース系誘導体またはアクリル系樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の低温焼成用熱硬化性電極ペースト。
【請求項8】
前記電極ペーストが接着増進剤を追加的に含むことを特徴とする、請求項1に記載の低温焼成用熱硬化性電極ペースト。
【請求項9】
前記接着増進剤が、ブタンチオール、ペンタンチオール、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルブチレントリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ)シラン、ビニルトリ(β−エトキシ)シラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシカルビトールトリメトキシシランテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、トリブチルエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ノナフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、ノナフルオロブチルエチルトリエトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリイソプロピルシラン、3−トリメトキシシリルプロピルペンタデカフルオロオクテート、3−トリエトキシシリルプロピルペンタデカフルオロオクテート、3−トリメトキシシリルプロピルペンタデカフルオロオクチルアミド、3−トリエトキシシリルプロピルペンタデカフルオロオクチルアミド、2−トリメトキシシリルエチルペンタデカフルオロデシルスルフィド、2−トリエトキシシリルエチルペンタデカフルオロデシルスルフィド、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、4−(パーフルオロトリル)トリメトキシシラン、4−(パーフルオロトリル)トリエトキシシラン、ジメトキシビス(ペンタフルオロフェニル)シラン、ジエトキシビス(4−ペンタフルオロトリル)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよびこれらの混合物、および前記アルコキシ基の代わりにビニル基、エポキシ基、メタクリル基、メルカプト基、またはイソシアネート基を1つ以上有するシラン系化合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項8に記載の低温焼成用熱硬化性電極ペースト。
【請求項10】
前記電極ペーストが接着増進剤を0.1〜30重量%含むことを特徴とする、請求項8に記載の低温焼成用熱硬化性電極ペースト。
【請求項11】
前記電極ペーストがアクリル系モノマーを追加的に含むことを特徴とする、請求項1に記載の低温焼成用熱硬化性電極ペースト。
【請求項12】
前記電極ペーストが増粘剤、安定化剤、分散剤、脱泡剤、界面活性剤、およびこれらの混合物からなる群より選択される添加剤を追加的に含むことを特徴とする、請求項1に記載の低温焼成用熱硬化性電極ペースト。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちのいずれか一項の電極ペーストを基材上に印刷した後、乾燥および焼成して形成された電極。
【請求項14】
請求項13の電極を含む電子材料。
【請求項15】
前記電子材料が太陽電池であることを特徴とする、請求項14に記載の電子材料。
【請求項16】
前記太陽電池が非晶質/結晶質シリコン異種接合太陽電池であることを特徴とする、請求項15に記載の電子材料。

【公表番号】特表2013−500571(P2013−500571A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522748(P2012−522748)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004646
【国際公開番号】WO2011/013927
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(502081871)ドンジン セミケム カンパニー リミテッド (62)
【Fターム(参考)】